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生徒の態度評価による体育授業診断法の作成の試み

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(1)

奈良教育大学学術リポジトリNEAR

生徒の態度評価による体育授業診断法の作成の試み

著者 高橋 健夫, 鐘ヶ江 淳一, 江原 武一

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

巻 35

号 1

ページ 163‑181

発行年 1986‑11‑25

その他のタイトル Studies on Developing an Instrument for the Student Evaluation of the Instructional Effectiveness in Physical Education Class URL http://hdl.handle.net/10105/2140

(2)

奈良教育大学紀要 第35巻 第1号(人文・社会)昭和61年 Bull. Nara Univ. Educ, Vol.35, No.1 (cult. & soc.), 1986

生徒の態度評価による体育授業診断法の作成の試み

高橋健夫・鐘ケ江淳一・江原武一

(奈良教育大学体育学教室)(近畿大学女子短期大学)(京都大学) (昭和61年4月30日受理)

Iはじめに

体育授業の成否を評価するための一つの有効な方法として、小林が作成した「態度測定による 体育授業診断法」(1'があげられる。この方法は広く教育現場で受け入れられるとともに、これを 活用した授業研究も数多く発豪されている(2)

。われわれも、この診断法の意義を評価し、いくつ かの授業研究に通用してきた(3)

。その結果、この方法が授業全体の成否を総合的に判断するうえ

で有効な示唆を与えるが、一歩進んでその成否の原因がどこにあり、いかなる授業改善に立ちむ かうべきかを検討しようとする時、それほど具体的かつ有効な示唆を与えないということも明ら かになった。

そこで、われわれは小林の調査項目を批判的に検討することによって問題点を明らかにし、(4'さ らにこれらの問題点を踏まえつつ、体育授業をより包括的・具体的に評価できるような調査項目 の作成と診断基準の作成を意図して、中学校生徒を対象に体育授業に対する生徒の態度構造を再 検討してみた。その結果は「奈良教育大学教育研究所紀要」(1986、No.21)等に詳しく報告し たが、(5)そこでは①体育授業に対する態度構造が「楽しさ」「成果」「仲間」「先生」の4次元から 構成されること、②「楽しさ」次元は、態度の変容がより不変的な「愛好的態度」の領域とより 可変的な「心理的充足」の領域のあっに区分できること、④「成果」次元については、「運動に 関わる成果」領域と「社会的行動に関わる成果」領域に区分され、「認識に関わる成果」はそれ ら2つの領域に分散・吸収されること、④これら「楽しさ」次元と「成果」次元の諸項目は、体 育の「情意目標」「運動(体力・技能)目標」「社会的行動目標」「認識目標」に対応しており、

2つの次元の諸項目に着目すれば、体育目標の達成度が評価できること、くわえて⑤「仲間」次 元は授業場面における人間関係に関わった態度であり、「先生」次元は教師の指導のしかたやパ ーソナリティに対する態度であること、等々が明らかにされた。

そこで本研究では、これら4次元からなる態度構造を基礎にしてより簡便な調査票を作り、こ の調査を学期始めと学期の終わりの二度にわたって実施することから、‑学期間の生徒の「態度 スコア‑」の変化量を求め、これによって授業診断のための評価基準を作成しようとする。さら に、このようにして作成された診断法(調査票および診断基準)を、実際の体育授業の評価のた めに通用し、特に小林の診断法との比較においてその有効性を確かめてみることにした。

I研究方法 1.調査項目の選定

体育授業を診断するための調査項目は次のような手順で選定された。すなわち、生徒の体育授 業に対する態度構造として新たに抽出された「楽しさ」「成果」「仲間」「先生」の4次元を生か 163

(3)

lォ! 高橋 健夫・鐘ヶ江津‑・江原 武一 表1新 し く 作 成 さ れ た 調 査 票

体育の授業にかんする調査

お ね が い

この調査は、体育の授業に役立たせるためのものです。成績にはいっさい関係ありませんので、あなた の思っている考えをそのまま答えてください。

この調査票には、体育の授業について述べた短い文章が数多くあげてあります。この短文が自分の考え にあてはまるものについては〇、あてはまらないものには×、そしてどちらともいえない場合には△を、

マスの中に記入してください0 ‑つもぬかさずに全部の質問に答えてくださいo

1

番l氏名

1.私は体育の授業がすきだ。

2.体育の授業は、できることなら休みたいという気持ちになる。

3.私は将来にわたってスポーツを楽しみたい。

4.体育の授業は、自分から積極的に汗を流し、体をきたえようという意欲をおこさせる。

5.体育の授業は、こころや体の緊張をほぐしてくれる。

6.体育の授業のあとは、こころよい興奮がのこる。

7.体育の授業でいろいろな人といっしょに活動することが、私はとても楽しい。

8.体育の授業では、精一杯がんばったという満足感を味わうことができる。

9.体育の授業は、体力づくりに役立つ。

10.体育の授業では、体力づくりの方法について学ぶことができる。

ll.体育の授業は、キビキビした動きのできる体をつくる。

12.日分の運動技能をのばすことができる。

13.体育の授業では、正しい運動のしかたについて理解することができる。

H   M   n  

^   i n   i o   N   o o

14.体育の授業では、運動のやり方だけではなく、その基本となる理論を学ぶことができる 14.

15.体育の授業では、チームプレー(コンビネーションプレー)の行ないかたを理解できる   15.

16.体育の授業で、良いチームプレー(コンビネーションプレー)の発展を期待するのはむりだ 16.

17・体育の授業では、フェアプレーやスポーツマンシップなどのマナーの大切さを学ぶことが17.

できる。

18.体育の授業で、良いチームワークをつくりだすことはむりだ      18.

19.体育の授業では、友だちと教え合うことがある      19.

20.体育の授業は、おたがいに助け合い、協力しあう習慣を身につけることができる。    20.

21.体育の先生は、熱心に指導してくれる。

22.体育の先生は、生徒の意見をとくとりあげてくれる。

23.体育の先生は、ユーモアがあって楽しい。

24.体育の先生の教え方や授業のすすめ方に満足している。

25.体育の先生は、授業中に適切な助言を与えてくれる。

26.体育の授業では、能力の高いものやずうずうしいものがのさばる。

27.体育の授業では、仲間関係でいやな思いをすることがある。

28,体育の授業で、運動のよろこびを味わえるのは一部の人にすぎない。

29.体育の授業では、人間の利己主義がむきだLになる。

30.体育の授業のときの仲間は、その場かぎりの仲間にすぎない。

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(4)

生徒の態度評価による体育授業診断法の作成の試み し、かつ各次元の内部構造の特性を

大切にしなから、調査項目を30項目 に限定した。その際、できるだけ簡 便な諦査項目を作成するため、原則 としてそれぞれの因子に高い因子負 荷(・ 4以上)を示した項目を選定 し、類似した項目を削除した。その 結果、表1に示す30項目が選定され たが、各次元の項目について簡単に 説明をくわえておく。

まず、「楽しさ」次元には、体育 の情意目標を意味するもので、特に、

授業によって容易に達成される態度 (心理的充足)に関わるものとして 5項目、その態度変容に長期の時間 を必要とする不変的な態度(愛好的 態度)として3項目を選定した。

「成果」次元は、体育目標に関連 の深い12項目が含まれている。それ ら12項目のうち、 (事体力づくり・技 能つくり(運動領域)に関するもの が6項目、 ④運動の社会的行動(ル ール、マナー、戦術)や仲間つくり に関するものが6項目である。

次に、 「仲間」次元は5項目から なるが、それらは授業中の仲間関係 によって生じる「いやな経験」を表 わすものである。 「先生」次元も5 項目からなるが、それらは教師の指 導法や態度を評価するものである。

以上、このような手順で「楽し

次 元 項目番号

25

蓑2 選定した30項目の回転後の因子負荷行列 項   目   名  FI FI FID チームプレーの方法

キビキビした動き 体力づくり チームプレー発展 体力づくりの方法 マナーの学習 正しい運動の方法 チームワーク発展 協力の習慣 運動の基本的理論 運動技能の向上 友だちが教え合い 授業が好き 授業を休みたくない 生涯スポーツ 積極的活動意欲 心身の緊張ほぐす こころよい興奮 集団活動の楽しさ

がんばった満足感 教え方・すすめ方 軌亡、な指導 ユーモアで楽しい 生徒の意見をとりあげる 適切な助言

みんなの活動 みんなのよろこび 仲間関係 利己主義の抑制 永続的な仲間

165

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5 淵 蝣

‑ 1

‑ 1

さ」 ‑8項目、 「成果」 ‑12項目、 「仲間」 ‑5項目、 「先生」 ‑5項目かなる30項目が選定され た。ちなみに、選定された30項目が安定した因子構造(4次元)を備えているかどうかを検証す るために、再度,因子分析を行ったが、その結果、表2に示すように、すべての項目が4つの次 元に位置づき、しかも、それぞれの項目は各因子に対して・ 4以上の因子負荷量を示した。

2.診断基準作成のための調査と結果の処理

診断基準作成のための調査は、昭和59年5月(学期始め)と7月(学期終り)の2回にわたっ て、奈艮県下の4校の中学生(1‑2‑3学年)、 34学級、男女1288名を対象に実施された。(6)な お、調査結果の統計処理はSPSSプログラムパッケージを用い、大型電算機を通して行われたO また、診断基準の作成は、先行研究である小林や梅野らの方法に従って行われた。C1)'(2'

(5)

166

高橋 健夫・鐘ヶ江淳一・江原 武一 3. 「授業診断法」検証のための実験授業

新しく作成した授業診断法の有効性を検討するために、次の2つの実験授業を試みた。 1つは、

奈良県T私立中学の1年生男子クラス(47名‑T教諭担当)が対象とされた。調査は昭和60年5 月上旬と7月上旬に実施されたが、この期間(1学期)には、組み合わせ単元で、 ①体操・トレ

ーニング、 ②ドッヂボール、 ③マット運動の3教材が取り扱われた。しかし、体操・トレーニン グが主教材でこの期問に一貫して指導された。把導計画は表3に示す通りである。

2つめの実験授業は、奈良県A中学の3年生男子クラス〔28名‑M教諭担当)が対象とされた。

調査は、同様に昭和60年5月上旬と7月上旬に実施された。この期間(1学期)には、ハードル 表3 体 操 の 授 業 計 画 と 特 徴

<その他の授業の特徴>

①体操の授業のあり方をめぐって、 「必要論」と「動きづくり論」の主張があるが、この授業では、

力づくりの必要性の認識を高め、合理的なトレーニングを行うことに主眼をおいた。

②トレーニング効果をあげるという点から18時間を配当したが、教材の性格や生徒の欲求を配慮し、組 み合わせ単元(ドッチボール・マット運動)で各授業時間の10分間をトレーニングに配当した。しか

し実際的には、 15分程の時間がトレーニングに費やされた。

⑨学習形態はペアー学習とし、互いに負荷になりあったり、測定・記録をとるようにして、協力的に学 習させようとした。

(6)

生徒の態度評価による体育授業診断法の作成の試み

167

走のみが教材として取り扱われた。据導計画は表4に示す通りである。なお、これら2つの実験 授業に対しては、小林の診断法による結果と比較するために、小林の30項目を全て含めた46項目 からなる調査票を作成して診断調査を実施した。

表4 ‑ ‑ ド ル 表 の 授 業 計 画 と 特 徴

<単元のねかい>

0日分にあったインターバルで5台の‑一ドルを3歩の1)ズムで走りきる。

○合理的なハードリング技術を習得し、フラット走のタイムに近づける(‑一ドルの記録を高める) o互いに観察しあったり、教え合ったりして協力的に学習を進める0

<ハードルの授業の展開>

時l 展     開

オリエンテーション ストライド計測

匝‑云感覚n <

試走I

オリエンテーションⅡ

3歩のリズム習得 白う?‑,<<ん探し 試走J

オリエンテーションⅢ

画王げ足   二「:「

ボディーバランス 踏み切り 抜き足とディップ

か'.*!L*中りt∴

総合練習 塾毎会

まとめ

学    習    内    容

授業の進め方、インターバル決定のためのス

ティ

雨樋Ijゥ方蔭

*50メートルフラット走での20‑30メ=ヒル区間のスライド計測 )インターバル決定

前時決定のインターバルによる3歩のリズム感覚づくり(ねかした‑I ドルの高さ38センチメートル)

50メートルハード 頂さ亮面

EBaaansi声IaHi

フラット走計時 整理及び課題(ハードル目標タイ

‑一ドルの歴史 3歩あー ‑) ズム習得 自分にあったイ

Eu^sa

**I自分にあったインターバルの探索

ンクーバルでの50メ‑

走計時、ビデオ撮影 トル‑一ドル走計時及びフラット ビデオ観察による技術分析、課題発見(特に達し '・・・ V,

を?旦旦ぢ星の振り出し

まっすぐに走る(コースの中央に白線を入れる) svf.ネ!#o存置(‑‑ト上:Lt)手前1.8‑2.0*ニトJl‑I三 み切り練習

スピードを落とさず、ハードルを越え 振り上げ足のかいこみによりブレーキ

きき見る)

マーク)

たLt)と 右xu‑xに 今までの総合練習(各グループで計時も可) ・

5O′、二千ル走亙CK50メ二 「ま 7ラッ ト患.汁時 記録の整理とまとめ

注) *20‑30メートよ区間(トップスピードと予想される区間)のストライド計測 全ストライドの和÷歩数‑平均ストライド

平均ストライド×4歩‑インターバル

**机上計算でのインターバルとの違いがあると予想されるため、実際に‑一ドルをとばせながら自 分にあったインターバルを見つけさせた。

<その他の授業の特徴>

① 「学習形態」 ‑はじめは一斉指導から入り、インターバルが定着したところで、同じインターバル ごとにグループを編成し、グループ学習で授業を進めた。理解すべき内容(知識)については資料を 配布し指導したが、グループ学習では、できる限り、各グループのメンバーによる観察・教え合いに よって学習を進め、自主的に課題を解決させるように努めた。したがって、全クラスに対する教師の 介入指導は少なくなるようにした。

⑧ 「学習場面」 ‑‑3歩のリズムの習得に重点をおき、自分にあったインターバルを各生徒にみつけさ せようとした。スタートラインから第‑ハードルまでの距離は12メートルに固定したが、 6コースに 別々の間隔(6メートル、 6.5メートル、 7メートル、 8メートル、8.5メートル)で‑一ドルを設定

し、自分にあったコースで走れるようにした。

③常に、スターティング・ブロックを使用し、タイム・トライアルを行う時は、ピストルを使用してム ードをもり上げた.

④4時間目の「3歩のリズム感覚づくり」では、ねかした‑一ドル(高さ38センチメートル程)を利用 し、恐さのない高さでリズムをつかませるようにした。他の場合は、立てた状態(高さ60センチメー

トル)で実施した。

⑤学習課題のウェ‑トのおき方として「3歩のリズム」に4割、 「まっすぐな振り上げ足」と「踏み切 り位置」にそれぞれ2割、 「ディップと抜き足」 「振り上げ足のかいこみ」にそれぞれ1割の配分で設 定し、計画・指導するようにした。

(7)

168

高橋 健夫・鎗ヶ江淳一・江原 武一

Ⅱ 結果 と考察 1.診断基準の作成

く4次元の態度スコア一に関する診断基準>

表5 各次元の平均得点と 標準偏差

・学年差の検定

「楽しさ」

1年>2年 1年>3年

P<0.1 P<0. 001 1年>2‑3年 P<0.001

「先生」

2年<3年  P<0.05

衷6 各次元の学級態度スコア一に関する診断基準

A

賓t1章(1年)

成  果 仲  間 先  生

‑5. 60

、3. 87

‑8. 78

・1. 99

‑3. 25

5. 59‑4. 28】4. 27‑2. 95 3.S0‑2.OS2.07‑i.4'J

3. 24‑2. 322. 31‑.1. 37

【利用のしかた】

2. 94‑1. 65 1. 48‑‑0. 33 4. 82‑2. 89 0. 38‑‑0. 3 1. 36〜0. 44

1.64‑

0.32‑

2QQ.o0‑‑

‑0.39‑

0.43‑

各次元に含まれる項目の得点(項目点)の和を求めたものが、

各次元の学級態度スコア‑である。成果次元に含まれる12項目 の項目点の和が5.66であれば、診断基準によりCランクと診断 する。

表5は、 4つの次元における学年別の平均得点と標準偏 差を示している。表から明らかなように、 「楽しさ」次元 の態度スコア一には、 1学年と2 ・ 3学年との問に有意差 がみられたため、 1学年と2 ・ 3学年に分けて診断基準を 作成することにした。 「先生」次元についても2学年と3 学年の間に5%水準の有意差がみられたが、この次元の得 点は、特に学校差が損著であったため、学年別の診断基準 は作成しなかった。 「成果」 「仲間」の次元については、学 年間に有意差はみられなかった。

表6は、各次元ごとの態度スコア一に関する診断基準を示している。これは学期始めの調査結 果に基づいて作成されたもので、学級別に各次元の態度スコア‑の平均得点と標準偏差を求め、

そこから5段階評定法で診断基準が設定された。

次に、図1‑4は態度スコア‑の変化量からみた診断基準を示している。この基準は、一定期 間における4次元の態度スコア‑の変化量の平均値と標準偏差から算定された。すなわち、学期 始めの態度スコアーならびにその変化量の平均値から回帰直線を求め、 5段階評定の基準を作っ たものである。いずれの次元においても有意な負の相関関係がみられ(7㌧ 学期始めに学級態度ス

コア‑が高いほどそのスコア‑の維持が困難であることを示唆している。

<各項目に関する診断基準>

表7は、各項目ごとに平均得点、標準偏差および診断基準を示したものである。表から明らか なように概して各意見項目の平均得点および標準偏差が高いため、ここでは3段階評定の診断基

(8)

生徒の態度評価による体育授業診断法の作成の試み

アIの増減学期始めと比較した学期末のスコ

0 1 2 3 4 5 6

学期始めのスコアーの学級平均値 図1 「楽しさ」次元の変化量に関する診断基準

学期始めのスコア‑の学級平均値 図2 「 「成果」次元の変化量に関する診断基準

CO<M Tt?

1

アIの増減学期始めと比較した学期末のスコ

169

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9

学期始めのスコア‑の学級平均値 図3 「仲間」次元の変化量に関する診断基準

e o   c

* f t   V

ア‑の増減学期始めと比較した学期末のスコ

学期始めのスコア‑の学級平均値 図4 「先生」次元の変化量に関する診断基準

〔図1‑4の利用のしかた〕

学期始めの態度スコア‑を横軸に、学期始めと学期 末のスコア‑の差、すなわち、スコア‑の変化量を縦 軸にとり、それらが交わるところで診断を行う。例え ば、成果次元において、学期始めスコア‑が、 4点で、

変化量が‑2点であれば診断は、 5段階評価の2のレ ベルになる。

(9)

170

表7

高橋 健夫・鐘ヶ江淳一・江原 武一

調査項目の平均点と標準偏差、並びに項目点の診断基準

    元

楽l好度

成 果

項頁町号

項     目  l X

摂裏二子寸t 

̲選果を休みたくない

̲些甚至ボーッ"I̲

積極的活動意欲 心身の緊張ほぐす こころよい興奮 R国活動の拳返し̲

がんばった満足感 運   動一社会的行動 ぷ=

i(̲̲ 0 づくりの方乾p キビキビした動き 技能の向上

畢しい運動の方堕̲̲

運動の基本的理轟̲

チームプレーの方法

テu‑o痛

と二9̲畢犀 ちとの教え合い 協力の習慣 I', J)「:>,!,!'サ蝣旨:‑nJ‑J

23 みんなのよろこび 24  Lfij古主義の抑制 問  ̲Z4̲ ̲!'Jt早手畢Y!聖Ill'J

25 永続的な仲間 26 熱心な指導

I.‑ 2丁'Ilkl'‑駐I 二」̲‑:

F‑B Yit'l f靭l

‑^v. ';手ナ

̲'fe

30 !適切な助言

【利用のしかた】

診 断 基 準

標準以上〜標準以下

37 .34 .55

豊J│2J .36!‑霊

・14 .34̲!̲.JO

・20】 .37 .40

と× (1点)の数の差を求め、その値を被調査 数で割り、小数以下第二位まで計算する。こうして求められたものが「項 目点」である。診断基準から標準以上の項目には○印を標準以下の項目に は×印をつけて考察するとよい。

準が作成された。すなわち、 IIT均得点から標準偏差の半分以上のものを「標準以上」、逆に半分 以下のものを「標準以下」とした。

次に表8は、項目点の変化に関する診断基準を示している。この基準も先の4次元の態度スコ ア‑の変化に関する診断基準と同様に回帰直線によって求められ、 「標準以上」 「標準」 「標準以 下」の3段階で示した。

以上、 「各次元の学級態度スコア‑および変化量に関する診断基準」 「各調査項目の項目点およ び変化量に関する診断基準」を示したが、これらの基準の利用のしかたについては、表6、図1

‑4、表7、表8の注釈に示した通りである。なお、小林の診断法では、各次元の診断結果を総 合して授業全体に対する「総合診断基準」を示しているが、われわれはそれを作成しなかった。

その理由は、一つには、われわれの診断法を構成する各次元の項目数が均等ではなく、したがっ て各次元を均等の重みで評価するには問題があるためである。また、論理的に考えてみて、次元

(10)

表8 項 目 点 の 変 化 の 診 断 基 準

【利用のしかた】

学期末の項目点と学期始めの項目点の差を求め、その値が表中の 左側の値以上であれば、標準以上の伸び(記号/)、右側の値以下 なら標準以下の伸び(記号\)と診断する。表中の数値は、小数値 を省略しており、 ‑05は‑0.05と読む。

拝 辞 日 報 柵 期 首 c J : . 5 幕 瑚 蒲 独   尊 秤 ゥ f t 熟 ゥ K < 7 >

ト・▲

‑1トー

(11)

172

高橋 健夫・鐘ヶ江淳一・江原 武一 表9 体力診断テスト・ 5分間走テストの結果

荏)生徒数‑(前‑47名 後35名)

*P<0.05

**P<0. 01

の異なる評価を単純に総和することによ って授業全体の評価を下すことには疑問 が持たれるため、あえて「総合診断基 準」は作成しないことにした。この判定 基準がなくとも、各次元の診断基準と各 項目の診断基準から授業を評価すること は十分可能であり、またさまざまの反省 材料が得られると考えている。

2.新たな診断法の有効性の検討 このようにして作成された診断法のメ リット・デメリットを明らかにする目的 から、これを実際の授業実践に通用し、

特に小林のそれとを比較検討することに した。

<体操の授業とその評価>

中学1年生の体操・トレーニングを中 心教材とした授業に、この診断法を通用してみた。また、この授業における学習成果を客観的に 捉えるために、単元始めと終わりに「体力診断テスト」、 「5分間走」および若干の意識調査を実

表10 体力トレーニングの授業についての調査結果

(12)

生徒の態度評価による体育授業診断法の作成の試み Hm 施した。表9、表10はそれらの結果を示している。表9から明らかなように、単元始めと終わり に有意差のみられた項目は2つのみであったが、ほぼ全ての項目の記録は向上しており、一応の 成果が認められる。また、表10は、この単元の終わりに実施された意識調査の結果を示している。

そこでも十分とはいえないが、生徒は体操の授業の成果を一応認めているといってよいであろう。

しかし、この授業を担当したT教諭は、 ①トレーニングの実施期間中、生徒は自らの計画にし たがって実践していたが、あまり意欲的に取り組んでいたとはいえなかったこと、 ⑧組み合わせ 単元であったため、他の教材の学習時間が限定され、授業のまとまりがつきにくかったこと、 ③

トレーニング効果を十分あげるには、期間が短かったこと等を反省点としてあげた。

さて、次にこの授業を「生徒による授業評価」の面から捉え直してみよう。まず、小林の診断 法を用いた結果(表11)からみると、総合診断は始めの「やや高いレベル」から「やや低いレベ ル」へとスコア‑が落ち、 「やや失敗」の授業と評価されたO次元別にみても、 「よろこび」次元 の変化量は2でCからDレベルへ、 「評価」次元の変化量は3でBからCレベルへと低下した。

表11小林式診断法による「体操」の授業診断

項目点(〇一×) /n

診  断

総   合

調査人員

学期始め 47人 学期末 47人

こころよい興奮 心中y&'i言‑一丁 生活のうるおい 苦しみより喜び 団活動の楽しみ

:二*蝣, K‑''r v**了

積極的活動意欲 自主的思考と活動 体育科目ゐ 加商

蝣sreMigMimsfr

態̲皮̲ス rコ ア uE33El農工rSm冒

tt ti l く り

明朗活発な性格 精トl' h L)j!」¥X んぼる里堪

̲協力 の 習 慣 墨奉的理論の学習

深 い 感 動

闇‑s‑mゥep *

度 ス コ ア

チーA7‑ク 尭鹿 みんなの活動 みんなのよろこび 利己主義の抑制 永続的な仲間 主体的人間の育成 甥遍と実践の匪二 授業のねらい 教師の存在価値 科目の必要性

L窟 度 ス コ ア

①学期始め ①学期末

M.‑ll' ii.IU霊

‑0.12

‑0. 09

‑0.06

‑0. 07

‑0.13

‑0.09

3.01二手盃

‑0.14 0. 01

‑0.03

‑0. 17

‑0. 17

0.ll

‑0.14

変     化

×一×FXPX

a x 盟 * m 高 い レ ベ

かなり高いレベル やや高いレベル ふつうのレベル やや低いレベル かなり低いレベル

低 い レ ベ ル ア ン ノヾ ラ ン ス

成か や横やか失 ア ぺ >

‑ j   ‑ : .   ‑ r '

り     ぼ     り A .    

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(13)

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成 果

高橋 健夫・鐘ヶ江淳一・江原 武一 表12 新しく作成した診断法による「体操」の授業診断

学 期 始[学 期 終I変   化

態 度 ス コ ア

21 みんなの活動 22 仲間関係

みんなのよろこび 利己主義の抑融

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2̲6 】熱心な指導

生徒の意見をとりあげる

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教え方、すすめ方̲pl̲

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「価値」次元の変化量は3でこの次元についてのみCレベルで変化がなかった。総じて、小林の 診断法からは「失敗」の授業と診断された。

しかし、われわれが作成した診断法でみると(表12)、一概にこの授業が失敗であったと決め つけるわけにはいかない。すなわち、 「楽しさ」次元はBレベルで変化がなく、 「成果」次元、

「仲間」次元ともCレベルで変化していない。逆に「先生」次元はEからCレベルに向上してい る。

次元別にもう少し詳しくみると、 「楽しさ」次元の「愛好的態度」の鋸域は全て向上し、しか も項目点は標準以上であった。しかし、 「心理的充足」の領域についてみると、単元始めは全て の項目が標準以上であったが、単元終わりには全てのスコア‑が低下した。このことは、この授 業がいかに楽しさを欠落させたものであったかを物語っている。

「成果」次元についてみると、 「社会的行動」債域では、 19 「友だちとの教え合い」を除く全 ての項目のスコアーを低下させた。取り扱った教材が体操とマット運動(個人程目)であったた め、止むを得ない面もあるが、集団学習‑の配慮を欠いていた点が強く反省されるべきである。

しかし、 「運動」領域の項目では、 ll 「キビキビした動き」を除いて全てが向上した。このこと は、先にあげた表の体力づくりの成果に対応している。くわえて、 10「体力づくりの方法」、 13

(14)

生徒の態度評価による体育授業診断法の作成の試み

175

「正しい運動の方法」、 14 「運動の基本的理論」などのスコア‑が向上したことから、運動の認 識面での学習成果が認められた。したがって、 T教諭のたてた単元のねらい(トレーニングの基 礎的理論を理解し、自己の体力を強化することができるようになる)は一応達成されたと評価し てよい。

「仲間」次元については、 「成果」次元の「社会的行動」領域のスコア一に対応して、 3項目 のスコア‑が低下した。 「先生」次元では、 27 「生徒の意見をとりあげる」の項目点の変化量は 少なかったが、全ての項目点が向上した。したがって、体力づくりに対する教師の意図は生徒に 十分理解され、また教師の授業への取り組みについても評価されたとみてよい。

結局、この体操を中心とした授業では、 「先生」の意図(要求)が理解され、運動の成果があ がり、体育授業に対する価値観も高めることができた。しかし、他方、生徒の運動欲求(楽し さ)を充足することができず、また、集団の凝集性を高めることもできなかった。このような結 果は、 「体力づくりの必要性を認識させ、トレーニングによって体力の向上を図る」とした単元 のねらいや計画に原因して導かれたといってよい。したがって、これらの点を次の授業で改善し ようとすれば、改めて体操の特質や体操の授業についての基本的な考え方を問題にし、体操が楽 しい集団活動になるような工夫が必要とされよう。(8)

くハードル走の授業とその評価>

次に、中学3年生の‑〜ドル走の授業に通用した事例を取り上げるが、最初にこの授業を通じ て次のような学習成果のあったことを確認しておきたい。すなわち、 ①「三歩のリズムで走りき る」という技術的課題は全ての生徒によって達成された。 ㊨ 「ハードル走の記録を高め、フラッ

ト走の記録に近づける」という目標も、豪13にみるようにおおむね達成された。また④グループ の協力的学習というねらいも、担当教師の観察からかなり円格に行われていたと判断された。

表13 「‑一ドル走」の授業における記録の伸び

ii3

記 録

項 目 \

ハードル走(50m) フラット走(50m)

ハードル走とフラ

ット走の差

このような授業成果を小林の診断法からみると(表14)、この授業は「やや低いレベル」から

「かなり高いレベル」に向上し、 「かなり成功」と評価された。次元別には、 「よろこび」次元は 変化量が4でCからBレベルに、そして「評価」次元は変化量が5でCからBレベルへ、 「価値」

次元は変化量が3でDからCレベルに向上した。特に、 「よろこび」次元と「評価」次元に著し い変化がみられた。

再び、この授業をわれわれが作成した診断法から捉え直してみよう(表15)。 「楽しさ」次元に ついてみると、学期始めには「愛好的態度」の領域は全て標準以上であったが、 「心理的充足」

の領域において標準以上の項目はなかった。しかし、学期終りには、双方の額域のスコア‑が向 上し、 4 「積極的活動意欲」を除く全ての項目が標準以上のスコア一になったo したがって、変 化量は4になり、この次元はBからAレベルに向上した。これは、小林による「よろこび」次元

(15)

176

高橋 健夫・鐘ヶ江淳一・江原 武一 表14 小林式診断法による「‑一ドル走」の授業診断

総   合

。&;.;│. ;告

3P生活のうるおい

」‑」」:l士I ',二H 集団活動の楽しみ wmmgEx&mm j川'" ll'j tu Jlr憶欲

自主的思考と活動

書要語直宴

態 度 ス コ

キビキビした動き 体 力 づ く り

明朗活発な性格 精神力の養成 元譜Iz,習慣 協 力 の 習 慣 基本的理論の学習 深 い 感 動 授業のまとまり 授 業 の 印 象 態 度 ス

三「「テ 2.35

21Lチームワーク発展 0.35 云21みんなの活動 0.07

みんなのよろこ 和古書轟面画

び 一 制

至急賢孟鵠賢十霊

0.25  0.ll 0.29  0. 12 0.25 0. 68 0.43

0̲・坦し.

0. 14 3.92

0.32 0. 33

‑0.21 0.36

‑0.18 1.57 0.46  0.ll

理論と実践の統一 0.10 i 0.'ー1『!二車重

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0.130.05 0.21‑│0.04OJ‑

0.21I1743‑Yx‑>‑

0.21 0.21土塁04 43二耳チ工 0.540

‑‑‑‑‑‑‑1L 0.500.08 哩̲葦のねらい 0.39 ; 0.54 教師の存在価値ト0.25 十0.39

0.15

‑0.14

体育科目の必要性 0.46  0.57  0.ll 態 度 ス コ ア 1.95  2.92

×一

0.97  D

4 0

\ ; × j O 3 i C

期 の授業

学期始め

高 い レ ベ ル

かなり高いレベル やや高いレベル ふつうのレベル やや低いレベル かなり低いレベル

低 い レ ベ ル ア ン ノヾ ラ ン ス

成成

y

失失

ゃな

ン バ ラ ン ス

を凌ぐ評価であった。いずれにせよ、この結果から、 ‑一ドル走の授業は生徒にとって楽しいも のであり、体育の価値的態度にもよい影響を与えたと評価できる。

「成果」次元は、 DからCレベルに向上した。学期始めはDレベルで評価が低く、特に「社会 的行動」領域は5項目中3項目が標準以下であった。 「運動」領域においても標準以上の項目は 皆無であった。しかし、この単元を通じて、特に「運動」領域の項目点が著しく向上し、 5項目 中4項目が標準以上になった。このことは、ハードル走の記録向上という成果にくわえて、運動 の理論的学習の面でも大きな成果をあげたことを示唆している。このような成果は、小林の診断 法からは評価しえないことがらである。

「社会的行動」債域のスコア〜については、いずれも標準以上にあげることはできなかったが 18 「チームワークの発展、 19 「友だちとの教え合い」については、標準以上の大きな変化量を示 した。 15 「チームプレーの方法」、 16「チームプレーの発展」は、個人種目である‑一ドル走の 授業では評価し難いものであるため、この点については止むを得ない面がある。以上のことから、

(16)

生徒の態度評価による体育授業診断法の作成の試み 表15 新しく作成した診断法による「‑一ドル走」の授業診断 次 元l番号F  項     目 !学 期 始l学 期 終F変   化

177

軍票が埠き デ持;f..Jjこ/i:二号∴ 、 生井スボーーy

社会的行動仲   間一

積極的活動意欲

・I‑.J"ト沖・;ト・T・十十‑

こころよい興奮 集団活動の楽しさ

&んばぺ王藩坦感 蜜I え 3 テI ‑I 華力づく̲̲り

体力づくりの方法 キビキビした動き

・!.一蝣一蝣・'蝣1 1 二

iiaL、運動の方法 ̲.̲‥

運動の基本的理論 チームプレーの方法

Zと二旦畢昼 の学習

ワークの発展 との教え合い 施囲fillソ

態 度 ス コ ア

みんなの活動 蘭画関係W ‑ll みんなのよろこび wsmmmgEStffiM

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態 度̲ 子 3 T‥̲̲I̲

熱心な指導

'+.徒の

意見をとりあげ ユーモアで楽しい

頂言方こ御方

/

「成果」次元の伸びはDからCレベルの変化であったが、しかし、運動学習の成果は大きく、個 人種目教材としては高く評価できる授業であったといえる。

「仲間」次元でスコア‑を下げた項目はなく、 CからBに向上した。このことはグループ学習 が比較的円滑に進められていたことを教えている。 「先生」次元は、 26 「熱心な指導」を除いて 全ての項目が向上し、 CからBレベルとなった。 26 「熱心な指導」でスコア‑を下げたのは、生 徒の自主的なグループ学習を促進させようとする教師の意図から、教師の積極的な介入が少なく なったことに原因があると考えられるL,

このように、この授業は、情意目標、運動目標、認識目標をかなりのレベルで達成した。この ことは、生徒の主体的な活動によって「三歩のリズム」の習得と記録向上をはかろうとした教師 のねらいが生徒によって高く評価されたことを教えている。しかし、社会的行動(特に運動の社 会的行動)の面では十分な成果をあげたとはいえない。それは多分に個人的運動教材である‑〜

ドル走という教材の特性が影響しているものと推察されるが、それでもなおこの診断結果は、集 団学習のあり方について工夫すべき点のあることを示唆しているといえる。

以上、二つの授業に新しく作成された診断法を適用し、これによって具体的にどのような事柄 が評価でき、次の授業改善にどのような示唆を与えるかについてみてきた。その結果、授業全体

(17)

178

高橋 健夫・鐘サ江淳一・江原 武一

の評価については、ほぼ小林の診断法のそれと同様の傾向を示すが、特に「楽しさ」次元や「成 果」次元については、小林のそれよりも多くの情報を与えることが分かった。すなわち、小林の それは、授業の具体的なねらいや内容に関わって評価したい項目が欠落しているため、次の授業 改善にむけて具体的に示唆するところが少なかったが、それに対して新しい診断法は体育授業の 目標に関わる項目が構造的に設定されているため、授業での目標達成の度合がより明確に評価さ れたといえる。同様に、 「先生」次元についても、教師自身が授業の進め方や態度を反省するう えで有意義な情報を与えることが分かったが、この次元の評価がどのような「教師行動」に関係

して決定されるかということは、今後の研究課題である。

Ⅳ ま  と  め

小林の体育授業診断法に批判的検討をくわえ、授業改善に向けてより具体的で的確な情報を得 ることのできる診断法を作成しようと試みた。われわれは、先の研究で中学校生徒の体育授業に 対する態度が、 「楽しさ」 「成果」 「仲間」 「先生」の4次元で構成されることを報告したが、木研 究では、これらの4次元からなる態度構造を基礎にしながら、体育の授業評価に活用できる簡便 な「調査票」と「診断基準」を作成しようとした。くわえて、この診断法を実際の授業に通用し、

その有効性を確かめようとした。

1)調査票は、 「楽しさ」 「成果」 「仲間」 「先生」の態度次元に対して因子負荷量の高い植(.4) を示した項目を抽出し、全30項目で作成された。そして、これら30項目に対して再び因子分析を 行い、因子構造の安定性が確認された。

「楽しさ」次元は8項目、 「成果」次元は12項目で構成された。これら「楽しさ」次元と「成 果」次元の20項目は、すべて体育目標に対応するもので、具体的には①深い情意(愛好的態度)

④浅い情意(心理的充足) ④体力づくり④運動技能⑤認識⑥運動の社会的行動⑦社会的行動(協 力)に関わる学習成果を評価することができる。 「仲間」次元と「先生」次元は、それぞれ5項 目で構成された。 「仲間」次元から授業場面での人間関係の適否を評価することができ、 「先生」

次元は、教師白身が自分の授業の進め方や態度について反省すべき材料を提供する。

2) 1984年5月め7月の2度にわたって実施した調査から、この期間に生じた態度スコア‑の変 化量の平均と標準偏差を測定し、これに基づいて授業診断の基準を作成しようとした。その結果、

① 「各次元別の態度スコア‑の診断基準」 ㊨ 「各次元別の態度スコア‑の変化量からみた診断基 準」 ⑨ 「各項目別の態度スコア‑の診断基準」 ④ 「各項目別の態度スコア‑の変化量からみた診 断基準」が作成された。小林は、この他、各次元の診断結果を総合して、授業の「総合診断基 準」を示しているが、われわれはそれを作成しなかった。その理由は、一つには、われわれの診 断法を構成する各次元の項目数が均等でなく、各次元を均等の重みで評価するには問題があるた めである。また論理的に考えてみて、次元の異なる評価を単純に総和することによって授業全体 の評価を下すことには疑問が持たれるため、あえて「総合診断基準」は作成しなかった。

3)このようにして作成された診断法の有効性を検討するために中学校での2つの体育授業に適 用した。その結果、少なくとも小林の診断法よりも、より多くの情報を与えることが確認できた。

すなわち、小林のそれは、授業のねらいや内容に関わって評価したい項目が欠落しているため、

次の授業改善にむけて具体的に示唆するところが少なかったが、それに対して、新しい診断法は、

目標に関わる項目が構造的に設定されているため、授業における目標達成の度合いがより明確に

(18)

生徒の態度評価による体育授業珍断法の作成の試み

179

評価されたといえる。同様に、 「先生」次元についても、教師自らが授業の進め方や態度を反省 するうえで有意義な情報を与えることがわかった。

4) しかしながら、この診断法は、末だ完成されたものとはいえず、いくつかの問題を残してい る。第一に、診断基準作成のための対象校、対象学級、対象生徒のサンプルが制限されており、

より客観的な基準を作成するためには、それらの対象をより拡大して再調査・再分析する必要が ある。

第二に、先に指摘したように、この診断法では授業を総合的に評価するための「判定基準」を 作成しなかったが、その是非は別にしても、各次元あるいは下位領域レベルでの項目数を統一し た方が望ましいと考えている。この点についても将来改善したい。

そして第三に、 「仲間」次元の項目について再検討する必要を感じている。つまり、この次元 の項目内容から、論理的には「成果」次元の「社会的行動」の諸項目と深く関係すると考えられ るが、統計的には相関が低かったnわれわれは、その理由の1つとして「仲間」次元の項目がす べて「非好意的表現」 (例えば、 "体育の授業では能力の高いものやずうずうしいものがのさば る")で示されていることに深く関係しているのではないかと推察している。したがって、将来 これらの項目の記述表現を変えて再調査してみたいと考えている。

注 の 脚

小林篤、 「体育の授業研究」、大修館書店、 1978、 pp. 169‑222。

徳永幹雄・荒井貞光、 「体育実技に対する態度変容とその要因」、九州大学体育学研究、 Vol.4‑No.5, pp.

27‑36、 1972。

徳永幹雄・荒井貞光、 「学生の体育実技に対する態度変容とその要因(節二報)」、体育学研究、 Vol.18‑

No. 5, pp. 287‑295、 1974。

徳永幹雄・橋本公雄、 「学生の体育実技に対する態度変容とその要因(第三報)」、九州大学体育研究、 Vol.

5‑No. 3、 pp. 34‑40、 1975。

長沢邦子・丹羽肋昭、 「体育実技への態度を規定する要因の検討」 ‑女子大生の場合‑、日本体育学会第 29回大会号、 pp.141、 1978c

浅井修、 「体育実技への態度を規定する要因の検討」一女子大生の運動部経験を中心に‑、大阪樟蔭女子 大学論集、 No.18、 pp.171‑177、 1981。

梅野圭史・辻野昭、 「体育科の授業に対する態度尺度作成の試み」、体育学研究、 Vol.25‑No.2、 pp.139‑

148、 1980。

梅野圭史・辻野昭、 「体育科における学習形態と児童の授業に対する態度との関係」、体育学研究、 pp・

Vol.27‑No. 1、 pp. 1‑15、 1982。

(3)高橋健夫他、 「バレーボール教材の初心者指導の方法に関する比較研究‑中学1年男子生徒を対象にして

‑」、奈艮教育大学紀要、 Vol. 30‑No. 1、 pp. 93‑116、 1981。

高橋健夫他、 「バレーボール教材の初心者指導の方法に関する比較研究川)」、奈良教育大学紀要、 Vol. 31

‑No.1、 pp.85‑106、 1982。

(4)鍾ケ江津‑ ・江原武一・高橋健夫、 「生徒による授業評価の検討(1)」、体育科教育、 Vol.33‑No.5、 pp.52‑

56、 1985c

(5)錆ケ江津‑ ・高橋健夫・江原武一、 「体育授業に対する生徒の態度構造に関する研究」、奈良教育大学教育 研究所紀要、 No. 210

鐘ケ江淳一・江原武一・高橋健夫、 「生徒による授業評価の検討(2)」、体育科教育、 Vol.33‑No.6、 pp.52‑

56、1985。

(19)

180

高橋 健夫・鐘ヶ江淳一・江原 武一

(6) 1回目(5月)の調査は、奈良県下6校の中学生男女2045名を対象に実施した。 2回目(7月)は、調査 協力校の都合で奈良県下4校の中学生男女1288名が対象とされた。各次元および各項目点の基準作成は、

対象とするサンプル数が多いことが望ましいことから、 1回目の調査結果に基づいて行われた。

(7) 「成果」次元に関しては、他の3つの次元に比して偏差が大きくなる傾向がみられる。これは対象とした 学級によって取り上げられた教材が異なっていたことによるものと予想される。しかし、 「成果」次元の 態度スコア‑が、取り扱う教材の種矧こよってどのように増減するかということについては、今後研究さ れるべき課題として残された。

(8)高橋健夫、 「いま、なせ『体操』の授業は変わらなければならないか」、体育科教育、 Vol.32‑No.11、 pp・

14‑17、 1984c

高橋健夫、谷敏光、広瀬裕司、 「授業研究一二つの体操の授業」、学校体育、 Vol.28‑No.2、 pp. 111‑125、

1985。

(20)

181

Studies on Developing an Instrument for the Student Evaluation of the Instructional E斤ectiveness in

Physical Education Class

Takeo Takahashi

(Department of Physical Education, Nara University of Education, Nara 630, Japan) Junichi KANEGAE

(Department of Physical Education, Women s Junior College of Kinki University, Fukuoka 820, Japan) and

Takekazu Ehara

{Department of Pedagogy, Kyoto University, Kyoto 606, Japan) (Received April 30, 1986)

The purposes of this paper were to develop an instrument for the student evaluation of the instructional effectiveness in physical education, and to examine the availability of the instrument by actually using it for the evaluation of the instructions. The investiga‑

tions to develop the instrument were done twice in May and July, 1984. The subjects were 1288 students of junior high school in Nara Prefecture.

Main results were as follows.

1) On the basis of the results reported in our previous studies, a form for student evaluation of the instructional effectiveness was developed of the 30 items divided into four factors; "Pleasure" (8 items), "Outcome (12 items), "Relatioship of Class Mate" (5 items) and "Teacher (5 items).

2) The standards to evaluate the e仔ectiveness of the instruction were made by measur‑

ing the magnitude of the change in the attitude score concerning the items of the form among a school term (about four months).

3) The availability of the instrument was clarified by actually using it for the evalua‑

tion of the instructions. Especially, it could well evaluate to what degree the objectives of the instruction had been achieved, because the items of "Pleasure and "Outcome" were equivalent to the objectives of physical education. And also, through analyzing the atti‑

tude scores of the items in "Teacher'Factor, we could get the effective informations to reconsider how to teach and hale attitude to" the instruction.

4) It was pointed out that there was a couple of problem to reform in this instrument.

参照

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