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民事訴訟の充実迅速 と法曹養成

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(1)

民事訴訟の充実迅速 と法曹養成

加 藤 文 郎 ・ 春 日 修

1

民事訴訟の迅速化 とその問題点

現在の民事訴訟が、審理期間の短縮は図られているものの、一方で、口頭弁論の形骸化や陳述書の 多用な ど、直接主義、口頭主義の観点か ら、多 くの問題点を有 していることはよ く指摘されるところ である。確かに、地方裁判所第一審通常訴訟平均審理期間は平成 5年には 10. 1ケ月であったものが 平成 14年には 8. 3ケ月に、 うち対席で終結 した事件 についても、平成 5年に 17. 0ケ月要 していた ものが、 平成 14年には 12. 9ケ月へ と約 4分の 3に短縮 されている

(I)。

また、 平均審理期間ではな く、

審理期間中位数は平成 14年には 3. 7ケ月 となっている

(

2 ) 。

これを諸外国 と比べると、アメリカ連邦裁判所における民事訴訟第一審審理期間の中位数は 8. 7ケ 月、イギ リスにおける民事訴訟第一審の平均審理期間は 39. 8ケ月、 ドイツの地裁における民事訴訟 第一審の平均審理期間は 7. 0ケ月、フランス大審裁判所の民事訴訟第一審の平均審理機関は 9. 3ケ月 であって

(

3 ) 、日本の地裁第一審平均審理期間が 8, 3ケ月であるとい うのは優等生 と言える位置にある。

司法統計年報 によれば、平成元年の全地方裁判所第一審民事通常事件数は 11万 5582件であ り、

証人尋問の実施件数は 2万 9308件、本人尋問の実施件数は 3万 5525件であった。平成 14年の全 地方裁判所第一審民事通常事件数は 15万 5754件 と平成元年の約 1. 35 倍 に増 えているが、証人尋 問の実施件数は 2万 1211件 と平成元年に比べて減少 してお り、本人尋問の実施件数についても 3万 2984 件 と減少 している。

さらに、調べ られた証人の数を見ると、平成元年には延べ 6万 3696人の証人が調べ られているの に対 し、事件数が 1. 35 倍に増えた平成 14年には、延べ 4万 0471人の証人 しか調べ られてお らず、

平成元年に比べ る と、約 64%に減少 している。鑑定の実施件数は、平成元年には 2923件であった のに対 し、平成 14年には 1734件 しか実施 されてお らず、平成元年の 59%に減少 している。検証 についてみると、平成元年には 1 069 件実施されているのに対 し、平成 14年には 397件 しか実施さ れてお らず、平成元年の 37%に減少 している。

このように、民事訴訟の審理期間は確かに短縮されているが、それは、証人尋問や本人尋問の減少、

検証や鑑定の減少 と、それ らの陳述書、現場写真などによる代替によって達成されたものである。 こ のことは、口頭主義 と直接主義を原則 とする民事訴訟手続の大幅な変更であるといえる。

ところで、口頭主義は、裁判の公開主義に由来するものであって、裁判の公正を担保 し、審理の質

を高め、国民の民事裁判に対する信頼を確保するためのものであ り、その原則的な考え方は、平成

8

年における民事訴訟法の改正においても、今次の司法制度改革審議会において議論された方向におい

(2)

ても、同様である。 しかるに、民事訴訟の現状は決 してそのようなものではない。

このような民事訴訟の現状について、訴訟を経験 した国民は どのようにみているのであろうか。司 法制度改革審議会は、訴訟経験者を対象 とした民事訴訟利用者調査を行 ったが、同調査のまとめで は、「 今 回の調査の結果、訴訟の利用者は、原告被告を問わず、 自己利益の追求のみな らず、公正か つ明確な解決を求め訴訟に及んでいることが明 らかになった。 しか し、それに答えるべき裁判制度全 体への評価は、 必ず しも高いものではなかった。裁判制度に対 して満足 しているものは全体の 1 8. 6%、

利用 しやすい と答えたものは、全体の 22,4%に とどまっている。」 としている

(

4 ) 0

2

民事訴訟の充実と迅速化を実現する方策 と検討すべき課題

では、民事訴訟の充実 と迅速化を実現するには何が必要なのであろうか。ひ とつには、裁判官、弁 護士の数を増やす ことである。

平成元年の全地方裁判所第一審民事通常事件数は 11万 5582件であるのに対 し、平成 14年の全 地方裁判所第一審民事通常事件数 は 15万 5754件 と平成元年の約 1. 35 倍 に増 えてい るが、一方、

簡易裁判所判事を除いた裁判官の定員は平成元年の 2017人か ら平成 1 4 年は 2288人へ と 1. 1 3 倍 に しか増えていない。

また、 この間の弁護士数は 1万 3674人か ら 1万 8851人へ と 1 . 37倍に増えたに過ぎない

(5)0

最近の裁判所や弁護士の仕事量を考えるには、民事訴訟事件の件数だけを考慮するわけには行かな い。双方に とって大きな負担 となっているのは破産事件件数の爆発的な増加である。司法統計年報に よれば、破産事件は平成元年の 1万 031 9件か ら平成 1 4年の 22万 4467件へ と約 21. 8倍に増加 し ている。 こうした破産事件の急増が、裁判官 ・弁護士の民事事件処理にかける時間 と労力を奪 う結果 になっていることは明 らかである。

破産事件に時間 と労力を取 られている中で、民事訴訟の迅速化を図るため、民事訴訟の中で最 も時 間を要する証拠調べを減 らす ことが求め られてきたのである。民事訴訟の充実 と迅速化を図るために は裁判官 と弁護士の数の増加が必要である。

それでは、司法容量の増加 だけで民事訴訟の充実 と迅速化は図 られるのであろうか。現在の当事者、

法曹たる弁護士には問題点がないのであろうか。

3

現在の民事訴訟における弁護士のあ り方

平成 1

5

年に第

2

東京弁護士会発行の二弁 フロンティア編集部が、東京地裁の裁判官にアンケー ト 調査を し、 109名の裁判官か ら回答を得 た。その調査結果によると以下のとお りである

(6)

( 7

)

0

訴えの提起、訴状の作成について、「 背景事情を説明 しようとすると自分に不利な点 も書 く必要が

出て くるので、最低限の請求原因事実のみを書いておいて、相手方の答弁によって後か ら主張を追加

したほ うがよい」 とい う意見に対 して賛同す るか との質問に対 し、 1 09 人の裁判官の うち、賛同す

るとい う意見は

4

人であ り、89人の裁判官が賛同できない と回答 している。 また、「 必要な ら補正を

促 される し、変更 もき くので、少々不正確な ところがあっても取 り合えず訴えを提起 してお く」 とい

う意見について賛同するか との質問に対 し、82人の裁判官が容認できない と回答 してお り、 11人の

(3)

裁判官が、せめて欠席裁判が可能な程度の訴状を と回答 している。 さらに、「とりあえず最初に主張 するときには書証の引用までは必要ない。相手が争ったら書証を提出すればよ

い」

とい う意見につい て賛同するか との質問に対 しては

、88

人の裁判官が容認できないと回答 している。

次に、弁論、準備書面に作成について、「 相手の対応を見ながら、徐々に主張を追加すればよい」

との意見について賛同するか との質問に対 しては

、82

人の裁判官が容認できない と回答 している。

さらに、「 相手のすべての主張に反論 してお く必要がある」 とい う意見について賛同するか との質問 に対 しては

、66

人の裁判官が賛同できない と回答 している。

これ ら裁判官の多数意見は、いずれも、現行の民事訴訟法や施行規則からすれば、当然の内容であ る。問題は、そのような設問がなされていること自体にある。

つまり、訴えの提起をする際に、「 背景事情を説明 しようとすると自分に不利な点 も書 く必要が出 て くるので、最低限の請求原因事実のみを書いておいて、相手方の答弁によって後か ら主張を追加 し たほうがよい。 」 と考える弁護士や、「 必要なら補正を促される し、変更 もきくので、少々不正確なと ころがあっても取 り合えず訴えを提起 してお く。」と考える弁護士が決 して少な くないのである。また、

弁論や準備書面作成についても 「 相手の対応を見なが ら、徐々に主張を追加すればよい」 と考える弁 護士が少な くないのである。

これ らが審理の遅延につながることは明らかである。

4

弁護士に対する意識調査 訴訟提起前の行動について

二弁フロンティア編集部による調査は裁判官に対 して行われているので、 私は、 平成

15

12

月に、

盛岡地裁民事担当の裁判官

13

名 と岩手弁護士会所属の弁護士

46

名 ( 当時)に対 してアンケー ト調 査を行った。調査方法は文書によって行 った。回答は匿名 としたが、司法修習期についておおまかな 記載を求めた。回答数は

33

名であ り、 うち弁護士が

29

名、裁判官が

4

名であった。 ( アンケー ト結 果の詳細は本稿末)

訴訟提起前の当事者照会あるいは証拠開示に関 して、「 相手方に対 し、訴え提起前に、 こちらの主 張について回答を求めると、相手方にこちらの手の うちを見せることになるので好ましくない。 」 と の意見について賛否を求めると、弁護士

29

名の うち、賛同できる

7

名、賛同できない

16

名、場合 による

6

名であった。また、「 相手方から、訴え提起前に、相手方の主張について回答を求め られた 場合、回答すると、相手方にこちらの手の うちを見せることになるので好ま しくない。 」 との意見に ついて賛否を求めると弁護士

29

名のうち、賛同できる

8

名、賛同できない

16

名、場合による

5

名 であった。さらに、「 訴え提起前の交渉の際に、手持ち証拠のかな りの部分を提示することは、相手 方にこち らの手の うちを見せることになるので好ま しくない。 」 との意見について賛否を求めると、

弁護士

29

名の うち、賛同できる

8

名、賛同できない

14

名、場合による

7

名であった。 これ ら三つ の設問からすると、調査対象のほぼ半数の弁護士が、訴訟前の当事者照会あるいは証拠開示について、

積極的に対応すべきであると考えていることが うかがえるが、証拠開示については主張の開示よりも

やや消極的であることがうかがえる。 これは、訴訟前の交渉段階で主張を展開することは現在におい

てもよく見 られるのに対 し、証拠の訴訟前開示はあまり例がないことによるもの と思われる。なお、

(4)

訴訟前の交渉段階で主張を展開することに蒔緒する弁護士が、かな りの程度に存在することに注 目す べきである。 これは弁護士が少ない地域においては、訴訟提起前の交渉が十分に行われていないため と考えられる。 この点について、ある裁判官は本アンケー トの回答の中で次のように述べている。「 裁 判官 として民事訴訟を担当していると、訴状、答弁書段階で、双方の主張がかみ合っていなかったり、

どうみても証拠 と合わない主張を していた りするものが散見される。おそらく、手の うちを見せた く ないとい う意識か ら事前交渉をせず、 したがって依頼人に対する事情聴取が甘いまま訴訟に臨んでい るのであろうが、そ うなると裁判所が事前交渉の仲介か ら始めなければならな くな り、期 日がそれだ け無駄 となる。裁判官の目からすると当然予測されるような反論にも、準備が不十分な代理人を見か けることがあ り、当事者が気の毒になる。裁判官席からは、当事者が うんざ りとした顔で代理人をに らんでいるのがよく見えるものである。 」

弁護士が少ない地域では、弁護士の手持ち事件が多いことから、事前交渉をする時間が十分に取れ ず、その結果、事前交渉を余 りせずに訴訟を提起することが少な くない。また、自らが依頼を受けた ときに相手方に弁護士がついていないことが多 く、実ある事前交渉をすることができない ことから、

事前交渉を余 りせずに訴訟を提起することも少な くない。

しか し、今後はこのような弁護士のあ り方に変革が求め られる。

5

民事訴訟の充実迅速化にために必要な訴訟提起前における弁護士のあ り方

裁判迅速化法 と民事訴訟法の改正によって審理計画の策定が行われることにな り、第一審を

2

年以 内に終局させることが求め られるようになった。

その結果、間接事実が多数加わる事件や事実認定上の争点や法律上の争点を多数含むような事件に ついては、裁判上だけではな く裁判外においても、弁護士 どうLが主張整理を行 うことが必要 となる。

また、現状ではおよそ

2

年で終局できないと思われる公害訴訟や重大な損害賠償事件などでは、訴訟 前に当事者間で主張整理をほぼ終了させてお くことが必要 となる。 このことと、上記のような現状の 弁護士の意識 との間には相当の禿離がある。

6

弁護士の意識調査 訴えの提起について

訴えの提起について、「 訴状で背景事情を説明 しようとすると自分に不利な点 も書 く必要が出て く るので、最低限の請求原因事実のみを書いておいて、相手方の答弁によって後から主張を追加 したほ うがよい。」 との意見について賛否を求めると、弁護士

29

名のうち、賛同できる

13

名、賛同できな い

14

名、場合による

2

名 と意見が分かれた。弁護士の経験年数による差異はなかった。最近登録 し た弁護士は司法研修所において、 訴状には背景事情を記載すべ Lとの教育を受けていると思われるが、

実際に訴えを提起する段になると、相手方の様子をみようとするようである。

次に 「 訴状は必要なら補正を促されるし、変更 もきくので、少々不正確なところがあっても取 り合 えず訴えを提起 してお く。 」との意見について賛否を求めると、 弁護士

29

名の うち、 賛同できる

14

名、

賛同できない

10

名、場合による

5

名 とこれも意見が分かれたが、先の設問とは異な り、賛同できる

との回答が半数近かった。弁護士の経験年数による差異はなかった。

(5)

さらに、「 訴えの提起時には、書証は重要なもの、主要なものを添付 して、あ とは相手方の出方を 見てか ら決める。」 との意見について賛否を求めると、弁護士

29

名の うち、資同できる

23

名、賛同 できない

3

名、場合による

2

名 と圧倒的に賛同できるとの意見が多かった。弁護士の経験年数による 差異はなかった。

以上、訴えの提起についてみると、弁護士の経験年数に関わ らず、裁判所による補正やその後の訂 正 もできるので、 とりあえず訴状を提出 しようとする意識が強 く、訴状提出の際に手持ち証拠のすべ ては提出せず、相手方の様子を見ようとする意識が強いことが うかがえる。

この点について、ある裁判官は、本アンケー トに対する回答で 「 最低限の請求原因事実さえ書けば よい との意見は弁護士サイ ドか らよく聞 く話だが、そもそも、最低限の請求原因事実がきちんとそろ っている訴状にお 目にかかることは少ない、ろくに勉強 も事前準備 もしていない代理人を見ると、本 当に当事者が気の毒になる。今の 日本では、無能な弁護士を選任 した責任を当事者に負わせて敗訴さ せる社会的な合意ができていない と思われるので、かな り後見的な訴訟指揮を しているのが実際であ るが、このような実務の運用について、弁護士サイ ドか ら危機感が うかがわれないのが不思議である。

裁判所に頼 りきっている弁護士に将来はない と思 うが、その自覚さえないのでは憂苦になる。司法制 度改革は、裁判所に対する批判ではな く、弁護士を含めた司法制度全体に対する批判か ら生まれたも のであるとい うことを、一人一人の弁護士に自覚 してほ しい。 」 と述べている。

確かに、訴状の補正、訂正を裁判所頼みにするのは、裁判所の後見的な役割に期待する弁護士の意 識があるからであ り、極めて問題である。

7

弁護士の意識調査 主張と証拠の提出、争点整理について

主張の提出について、「 相手方が 自白することもあるので、主張を提出するときには書証の引用 ま でする必要ない。相手方が争ったら書証を提出すればよい。 」 との意見について賛否を求めると、弁 護士

29

名の うち、賛同できる

12

名、賛同できない

14

名、場合による

3

名 と意見が分かれた。弁 護士の経験年数による差異はなかった。

次に、「 先走った主張をすると墓穴を掘ることもあるので、相手方の対応を見なが ら、徐々に主張 を追加すればよい。 」 との意見について賛否を求めると、弁護士

29

名の うち、賛同できる

10

名、賛 同できない

16

名、 場合による

3

名 と意見が分かれたが、 賛同できない とする意見が半数以上を占めた。

弁護士の経験年数による差異はなかった。

調査対象の うち多数の弁護士は、主張の提出について、 自ら主張責任がある事実についても、相手 の様子を見ながら行 うとい う意識を持っているようである。

さらに、「 主張が足 らない場合は裁判官から釈明があるので、それを見なが ら、徐 々に主張を提出

すればよい。」 との意見について賛否を求めると、弁護士

29

名の うち、賛同できる

5

名、資同でき

ない

23

名、場合による

1

名 と圧倒的に賛同できない との回答が多数を占めた。 さすがに、 ここまで

は裁判所の後見的な役割を期待 してはいないとい うことであろうか。 しか し、一部の弁護士は裁判官

からの釈明を待って主張を提出するとい う意識を持っているようである。そのような弁護士は、弁護

士の経験年数に関わらず存在 している。

(6)

次に、「 弁護士は依頼者か ら聞き取 った生の事実をできるだけ裁判所に伝えるよう努めるべきで、

それを要件事実的に整理するのは裁判所の役割である。」 との意見について賛否を求めると、弁護士

29

名の うち、賛同できる

4

名、賛同できない

24

名、場合による 1名 と、 これについても圧倒的に 賛同できない との回答が多数を占めた。 しか し、これについても、要件事実的に整理するのは裁判所 の役割であるとい う意識を持つ弁護士が存在 している。 しかもこのように回答 した弁護士は、司法修 習

20

期代 と

30

期代のみであ り、調査対象の うち、 これ らの期に属する弁護士のほぼ半数が このよ うに考えている。司法修習

20

期代 と

30

期代の弁護士は、弁護士経験年数か らい うと

17

年か ら

36

年 とい うもっとも脂が乗った弁護士であ り、修習時代は要件事実教育が最も盛んに行われていた時期 にあたる。

また、「 証拠は最初に基本的なもののみを出 し、あ とは裁判所の心証を見なが ら、徐々に提出すべ きである。」 との意見について賛否を求めると、弁護士

29

名の うち、資同できる

15

名、資同できな い

11

名、場合による

3

名 と意見が分かれたが、賛同できるとする意見が半数を超えた。弁護士経験 年数による差異はなかった。 自らに立証責任がある事実について、積極的に立証 しようとする弁護士 は少数であった。

さらに、「 争点整理は裁判所の役割であるので、弁護士が積極的に争点を提示する必要はな く、相 手方 との応酬の中で、裁判所が争点整理をすればよい。 」 との意見について資否を求めると、弁護士

29

名の うち、資同できる

10

名、賛同できない

19

名 と意見が分かれた

。40

期代の弁護士のほとん どは資同できないと回答 しているが、その他の期では意見が括抗 している。争点整理については裁判 所の役割であって、弁護士の役割ではない とい う意識がかな り強いことを うかがわせる。

これ ら、主張、証拠の提出、争点整理について、ある裁判官は本アンケー トに対する回答の中で、「 争 点の設定をあいまいにすると、弁護士にとっても無駄な仕事が増える。争点が何であるかの理解はで きるだけ早 く共通認識を形成する必要があ り、その議論に主体的に関与すべきである。」と述べている。

また、ある裁判官は、「 法曹資格を持ち、当事者か ら報酬をもらっている代理人が第一次的に主張を 整理すべきであると思 う。 」 と述べている。

8

弁護士の意識調査のまとめ

以上の調査か らすると、訴状における主張や証拠の提出、その後の主張、証拠の提出について、 こ

れ らを早期に積極的に行い、主張整理や訴訟進行を主導的に行なってい こうとする弁護士は少数のよ

うである。調査対象の うち、多 くの弁護士は、相手方の出方を見極めたい とする意識を強 く持ってお

り、一部には裁判所の後見的な役割を期待する意識を右 している。相手方の出方を見極めるとい うの

も、つまりは裁判官の訴訟指揮な どか ら裁判官の心証を見極めて とい うことであるか ら、裁判官に訴

訟進行のかな りの部分をゆだねることを意味する。 これが、相手方からの反論を待 っての五月雨的主

張提出や裁判所か らの釈明を待っての五月雨的主張追加につなが り、民事訴訟の遅延につながってい

ると考えられる。

(7)

9

民事訴訟の充実迅速のために、あるべき弁護士の姿

当事者主義、弁論主義 という民事訴訟の基本原則からすれば、主張、立証は主張立証責任がある当 事者代理人弁護士が主導的に行 うべきである。 また、主張整理や訴訟進行のデザインは弁護士が主導 的に描 くべきである。さらに、主張提出や主張整理を弁護士が主導的に行 うためには、当事者代理人 である弁護士が、法的検討を十分に行 うべきである。

そ うすれば、弁護士 自らが審理計画をもって民事訴訟に臨む ことが可能にな り、五月雨的な主張立 証は少な くなる。その結果、証拠調べに費やす ことができる時間が今よりも多 くな り、充実 した審理 がなされることになる。 しか し、現在の ところ、そのような意識を持つ弁護士は少数であ り、多 くの 弁護士は訴訟進行のかな りの部分を裁判官に委ねている。

では、なぜ弁護士の多 くがそのような意識を持つに至っているのであろうか。

10

これまでの弁護士養成

わが国の民事訴訟法は大正

15

年の改正によって、職権進行主義に立つ事を明 らかに した他、裁判 資料の収集についても職権化が図られ、補充的ではあるが職権証拠調べが導入された。戦後において もその流れは変わらず、職権証拠調べの廃止 と交互尋問制の採用はなされたものの、刑事訴訟法にお けるような、当事者主義を基調 とする大幅な改正はなされなかった。

現行民事訴訟法においても職権進行主義が取 られているのはもちろん (

148

、152

条 1項

、157

、93

1

、129

条)、当事者について真実義務が課 されている

(230

条 1項

、209

1

項)結果、

一時期後退 していた裁判所による釈明義務の強化が再び図られるに至っている。

一方、日本における法曹養成制度は、明治初期のその出発点において、列強 と並ぶ ことを目的 とし、

そのために法治国家の外形を作ることが最 も重要な課題であったことから、裁判官の養成に主たる力 点が置かれ、民事訴訟の担い手である弁護士の養成については比較的冷淡 といわざるを得なかった。

確かに、戦後の改革によって、裁判官 と弁護士 とは同一の修習制度によって養成されるに至ったが、

判事補制度を中心 とする職業裁判官制度が維持されたことや、修習制度が最高裁判所のもとに置かれ たこととあいまって、 司法修習が主に裁判官を養成することに向けられたことは否めない事実である。

また、法曹一元制度が導入されなかったことや、冷戦期における裁判所、裁判官に対する官僚的な統 制強化の歴史か ら、弁護士は、官の裁判官に対する強い在野性を意識するようにな り、裁判官 と弁護 士の意識の乗離が生 じていった。 こうして、弁護士は司法制度の中に存在 しなが ら、司法制度を外か ら批判するようにな り、司法制度を運営する一員であるとの意識を十分に持ち得なかった。 こうした ことか ら、民事訴訟においても、訴訟手続はもっぱら裁判官が主導するものであ り、弁護士は、訴訟 指揮権者たる裁判官に対抗 しなければならないといった意識や、訴訟進行を裁判所任せにする意識が 生まれるに至った。

こうして、今 日に至るまで、 日本においては、法制度の面でも法制度の担い手の意識の面でも、民

事訴訟の基本構造たる当事者主義が十分に定着 したとは言えないのである。

(8)

11 今後の弁護士毒成

民事訴訟の基本構造が当事者主義である限 り、当事者代理人たる弁護士が、積極的に主張を展開 し て争点を形成 し、主導的に争点整理を行い、迅速かつ十分な立証を行 うのでなければ、民事訴訟の充 実 と迅速が実現されることはあ りえない。 また、第一審を

2

年以内に終局させるためには、裁判上だ けではな く裁判外においても弁護士 どうLが主張整理を行 うことが必要 となる。

法科大学院における民事訴訟教育においては、そのような民事訴訟の充実 と迅速に資する弁護士を 生み出すための教育が必要 となる。学生に対 し、民事訴訟の基本構造たる当事者主義を歴史的、制度 的によ く理解させ、当事者法曹が主導的に運営 してい くのが民事訴訟であることを十分にわか らせる ことが必要である。その ことによって初めて、 日本の民事訴訟における当事者主義の実現が図 られ、

法曹人口の増加 と偏在の解消 とがあいまって、民事訴訟の充実 と迅速化が図られるもの と考える。

(1 ) 最高裁判所事務総局裁判所デー タブック 2003年、33頁 ( 2)

34貢

( 3) 同 34貢

( 4) 司法制度改革審議会民事訴訟利用者調査報告書 ( 平成 1 3年)29‑ 30貢 ( 5) 最高裁判所事務総局裁判所デー タブック 2003年 24頁

( 6) 二弁 フロンティア平成 1 5年 11

月号

31貢か ら 36貢 ( 7) 二弁 フロンティア平成 15年 1 2

月号

31貢か ら 36貢

資料 アンケー ト結果

「 期」は修習期 「1 0期前」は弁護士経験年数 47年以上、「1 0期代」は弁護士経験年数 37年か ら 46年、「 20期代」は弁護士経験年数 27年から36年、「 30期代」は弁護士経験年数 17年から26年、

「 40期代」は弁護士経験年数 7年から 1 6年、「 50期代」は経験年数 1年から6年

設問

1

相手方に対 し、訴え提起前に、 こちらの主張について回答を求めると、相手方にこちらの手 の うちを見せることになるので好ま しくない。

弁護士の回答

合計 1 0期前 1 0期代 20期代 30期代 40期代 50期代

賛同できる 7 0 0 2 2 2 1

賛同できない 16 2 4 4 1 4 1

場合による 6 0 1 1 0 1 3

意見 ・いずれ訴 えが提起されれば明 らかになるのであるか ら差 し支 えない ( 1 0期代 1、40期代 1)

(9)

裁判官の回答

賛同できる

0

賛同できない

4

設問

2

相手方か ら、訴え提起前に、相手方の主張について回答を求め られた場合、回答すると、相 手方にこちらの手の うちを見せることになるので好ましくない。

弁護士の回答

賛同できる

合計 1 0期前 1 0期代 20 期代 30 期代 40期代 50 期代

8

1

0

1 2 3 1

賛同できない 1 6

0

4 5 1 4 2

場合による 6 1 1 1 0

0

2

意見 ・訴訟の際に抗弁の主張に影響が出る ( 40 期代)

裁判官の回答

賛同できる

0

賛同できない

4

設 問

3

訴え提起前の交渉の際に、手持ち証拠のかな りの部分を提示することは、相手方にこちらの 手の うちを見せることになるので好 ましくない。

弁護士の回答

賛同できる 賛同できない 場合による

裁判官の回答 賛同できる 賛同できない

合計

1 0 期前 1 0期代 20 期代 30 斯代 40期代 50期代

8

0

1 3 1 2 1

14

1 4 3 1

3 2

7 1

0

1

1 2 2

(10)

設問

4

訴状で背景事情を説明 しようとすると自分に不利な点 も書 く必要が出て くるので、最低限の 請求原因事実のみを書いておいて、相手方の答弁によって後か ら主張を追加 したほ うがよい

弁護士の回答

合計 1 0期前 1 0期代 20期代 30期代 40期代 50期代

賛同できる 1 3 2 2 2 3 2 2

賛同できない 1 4

0

3 4

0

4 3

場合による 2

0 0

1

0

1

0

意見 ・要件事実だけでは裁判所は理解困難である (1 0期代)

裁判官の回答

賛同できる

0

賛同できない

4

設問

5

訴状は必要なら補正を促される し、変更 もき くので、少々不正確な ところがあっても取 り合 えず訴えを提起 してお く

弁護士の回答

合計 1 0期前 1 0期代 20期代 30期代 40斯代 50期代

賛同できる 1 4 2 2 2 3 3 2

賛同できない 1 0 0 2 4

0

3 1

場合による 5

0

1 1

0

1 2

意見 ・特に急 ぐ事情がなければ充分に事実関係を調査 してか ら提訴すべきである ( 50斯代)

蓑押 」 官の回答

賛同できる 0

賛同できない

4

意見 ・但 し、詳細は詰めるまではできていないが、ほぼ充分な資料がそろった段階で早期解決をにら

んで とい うことな ら賛同できる

(11)

設問

6

訴えの提起時には、書証は重要なもの、主要なものを添付 して、あとは相手方の出方を見て か ら決める

弁護士の回答

合計 賛同できる 23 賛同できない 3

場合による 3

1 0期前 1 0期代 20期代 30期代 40期代 50期代

2 3 5 3

6

4

0

1 1

0 0 1

0

1 1

0 1 0

意見 ・立証を要する事項については提出 してお り小細工は していない

(l

o朔代)

裁判官の回答

賛同できる

0

賛同できない

4

意見 ・賛同できないがやむをえない場合 もある

・賛同できないが程度問題であ り、墳末なものまでは不要である

設問

7

相手方が 自白することもあるので、主張を提出するときには書証の引用までする必要ない。

相手方が争 ったら書証を提出すればよい

弁護士の回答

合計 1 0期前 1 0期代 20期代 30期代 40期代 50期代

賛同できる 12 1 1 4 2 2 2

賛同できない 14

1

2 3

1

4 3

場合による 3

0

2

0 0

1

0

意見 ・交渉経過などから、相手方の自白が予想される場合であればごく基本的なものを除き提出 しな くともよい ( 40期代)

・提出 しない と主張の信用性に影響がある ( 40期代)

・主張の段階で有利な心証を取ってもらったほうがよい ( 50期代)

裁判官の回答

賛同できる

0

賛同できない

4

(12)

意見 ・書証があるな らば出 してお くべきである。訴状審査の段階で書証 と照 らしてみたときに、請求 が誤っていることもある。

設問

8

先走 った主張をすると墓穴を掘ることもあるので、相手方の対応を見なが ら、徐々に主張を 追加すればよい

弁護士の回答

合計 賛同できる 1 0 賛同できない 1 6

場合による

3

裁判官の回答

賛同できる

0

賛同できない

4

1 0期前 1 0期代 20期代 30期代 40期代 50期代

2

1 3 1

2

1

0

4 3 2

4 3

0 0 1 0

1 1

意見 ・事件の本筋 と思われる主張は早期に出すべきである。ただ し、あまり見通 しの立たない主張を 出すのは問題である

・賛同できないがやむをえない場合 もある

・結果 として長期化、複雑化につなが りよ くない

設問

9

主張が足 らない場合は裁判官か ら釈明があるので、それを見なが ら、徐々に主張を提出すれ ばよ

い 。

弁護士の回答

賛同できる

合計 1 0期前 1 0期代 20期代 30期代 40期代 50期代

5 1 1 1 1 1

0

賛同できない 23

1

4 5 2

6

5

場合による 1

0 0

1

0 0 0

意見 ・基本的な主張は尽 くしてお くべきである ( 50期代)

・重要な点につき釈明がなされない ことがある ( 20期代)

・自分に必要な主張は釈明を待つべきでないのは当然である ( 40期代)

(13)

裁判官の回答

賛同できる 0

賛同できない

4

意見 ・主張、立証は当事者主義原則で実施すべ き

設 問 1 0 弁護士 は依頼者か ら聞き取 った生の事実をできるだけ裁判所 に伝えるよ う努めるべ きで、

それを要件事実的に整理するのは裁判所の役割である。

弁護士の回答

合計

賛同できる 4

賛同できない 24

場合による 1

1 0期前 1 0期代 20斯代 30期代 40期代 50期代

0 0

3 1

0 0

2 5 4 2

6

5

0 0 0 0 1 0

意見 ・訴訟代理人の役割である ( 40期代)

・要件事実を無視できないのは当然である ( 40期代)

・賛同できないが陳述書では生の事実を伝えるべきである。

裁判官の回答

賛同できる

0

賛同できない

4

意見 ・代理人が要件事実の検討をおろそかにすると、むだな立証活動にエネルギーを空費することに つながる。

設問 11 証拠は最初に基本的なもののみを出 し、あ とは裁判所の心証を見なが ら、徐 々に提出すべ きである。

弁護士の回答

合計 賛同できる 1 5 賛同できない 11

場合による 3

1 0期前 1 0期代 20期代 30期代 40期代 50期代

1 2 4 2 3 3

1

3 2 1 2 2

0 0

1

0

2

0

意見 ・立証責任のあるものは出すべきである

(14)

・基本的な証拠や主張に不可欠な証拠は必ず提出すべきであるが、補強証拠などは裁判所の心証 や相手方の対応に応 じて提出することもやむをえない

裁判官の回答

賛同できる 0

賛同できない

4

意見 ・心証が確認できるものならばそれでよいが

設問 12 争点整理は裁判所の役割であるので、弁護士が積極的に争点を提示する必要はな く、相手 方 との応酬の中で、裁判所が争点整理をすればよい

弁護士の回答

合計

1 0 期前 1 0期代 20 期代 30 期代 40期代 50 期代

賛同できる 1 0 1 2 2 2 1 2

賛同できない 1 9

1

3 5

1 6

3

場合による

0 0 0 0 0 0 0

意見 ・代理人 も何が争点 となっているか理解 しなければ訴訟の進行ができない

・最終的には裁判所が整理するのが当然だか、弁護士 も主張の仕方を工夫 して整理に努めるべき である ( 40期代)

・代理人が主導的に争点を整理すべきである ( 40斯代)

・争点 と無関係に主張 しても意味がない ( 40 期代)

裁判官の回答

賛同できる 0

賛同できない

4

意見 ・三者で一致 した争点を認識するためには当事者にも争点整理の必要を認識することが重要であ る。そうでない と、裁判所がピン トのずれた争点をもとに審理 しかねない

・争点の設定をあいまいにすると、弁護士にとってもむだな仕事が増える

争点が何であるかの

理解はできるだけ早 く共通認識を形成する必要があ り、その議論に弁護士が主体的に関与すべ

きである

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