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「十津川サマースクール」の教育的意義について 

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

「十津川サマースクール」の教育的意義について 

−チームによる活動をとおして見えてきたこと−

著者 河合 保秀

雑誌名 奈良教育大学教職大学院研究紀要「学校教育実践研

究」

巻 5

ページ 63‑70

発行年 2013‑03‑29

その他のタイトル A Study of Pedagogical Effects through Totsukawa Summer School −Suggestions from Collaborative Works−

URL http://hdl.handle.net/10105/9417

(2)

「十津川サマースクール」の教育的意義について

-チームによる活動をとおして見えてきたこと-

A Study of Pedagogical Effects through Totsukawa Summer School

Suggestions from Collaborative Works

河合 保秀

Yasuhide Kawai

奈良教育大学大学院教職開発講座

School of Professional Development in Education Nara University of Education

<あらまし> 平成24年8月に中教審が公表した「教職生活の全体を通じた教員の資質能 力の総合的な向上の方策について(答申)」では、これからの教員に求められる資質能力の 一つに「総合的な人間力」を挙げている。その具体的な能力として、「コミュニケーション 力」などとともに、これまでの答申では示されていなかった「同僚とチームで対応する力」

を明記された。

この報告は、十津川村教育委員会と奈良教育大学教職大学院とが共同開催している「十津 川サマースクール」に参加した院生にとって、有意義な取組となっているのかを事後アンケ ートをとおし考察を行ったものである。結果として、複数名のチームで教材開発を行い、チ ーム・ティーチングによる指導を展開したことが、中教審答申で示された「チームで対応す る力」や「コミュニケーション力」の向上に関係しているという傾向が見られた。

<キーワード> チームで対応する力 コミュニケーション力 チーム・ティーチング アクティブ・ラーニング

1. はじめに

平成24 年6月5日、文部科学省は日本が直面す る課題や将来想定される状況をもとに、目指すべき 社会、求められる人材像・目指すべき新しい大学像 を念頭におきながら、大学改革の方向性を「大学改 革実行プラン」として発表した。そこでは、実行プ ランの主要事項の一つに「主体的に学び・考え・行 動する力を鍛える大学教育の質的転換」を挙げ、「①

「答えのない問題」を発見、最善解を導くために必 要な専門的知識及び汎用的能力を鍛えること」「② 実習や体験活動などの教育によって知的な基盤に裏 付けされた技術や技能を身に付けること」の必要性 を述べている。

また、平成24年8月28日、中央教育審議会は「新 たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて

~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学 へ~」を答申した。その答申では、学士課程教育の 質的転換として、「従来のような知識の伝達・注入を 中心とした授業から、教員と学生が意思疎通を図り つつ、一緒になって切磋琢磨し、相互に刺激を与え ながら知的に成長する場を創り、学生が主体的に問 題を発見し解を見出していく能動的学修(アクティ ブ・ラーニング1))への転換が必要である。」と指摘 している。

さらに、同日、中央教育審議会は2年間の審議を 経て「教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総 合的な向上の方策について(答申)」を公表した。こ こでは、これからの教員に求められる資質能力とし て、「教職に対する責任感、探求力、教職生活全体を 通じて自主的に学び続ける力」「専門職としての高

(3)

度な知識・技能」「総合的な人間力」があげられてい る。特に「総合的な人間力」とは、具体的に「豊か な人間性や社会性、コミュニケーション力、同僚と チームで対応する力、地域や社会の多様な組織等と 連携・協働できる力」と示している。教員に求めら れる資質能力は、平成18年7月に「今後の教員養 成・免許制度の在り方について(答申)」でも示され ているが、前者は、初任者が実践的指導力やコミュ ニケーション力、チームで対応する力などが十分に 身に付いていないという現状が反映されており、特 に「総合的な人間力」として「同僚とチームで対応 する力」が加えられたことは注目すべきである。

これらの答申等を鑑みると、これからの教員に求 められる資質能力を養うためには、グループ・ディ スカッション、グループワーク等による課題解決型 の能動的学修(アクティブ・ラーニング)が、教職 課程において不可欠だといえるのではないだろうか。

そこで、学長裁量経費を活用して教職大学院が実 施している「十津川サマースクール」について、平 成24年度の成果を中心に検証し、アクティブ・ラ ーニングを提供するプロジェクトとしての教育的意 義を考察する。

2. 「十津川サマースクール」の概要

2. 1. 目的と経緯

「十津川サマースクール」は平成22年度に、「へ き地教育の状況を調査研究し、教員としての専門性 と実践力を高めるとともに、子どもたちとの学習を とおした触れあいの機会を持つことによって、子ど もたちに学ぶ喜びや多くの人間と接する楽しさを伝 える機会とする」ことを目的として企画した教職大 学院主催の取組である。8月の3日間、十津川村立 十津川第一小学校で、同校の5・6年生の児童(希 望者)を対象に、院生よる国語・算数・理科の授業 や業間のレクリエーション等の学習交流を行った。

また、児童の下校後には、「へき地教育懇談会」を 実施し、十津川村教育長、教育委員会事務局職員、

十津川第一小学校校長から十津川村の教育やその現 状等について話を聞き、所期の目的の達成を図った。

参加した 14名の児童すべてが「参加して良かっ た」と答え、保護者、会場校の先生方、十津川村教 育委員会教育長を始め関係者にも好評であった。

平成23 年度からは、十津川サマースクールの3 日間を十津川村立小・中学校の初任者教員の研修機 会として位置づけ、十津川村教育委員会と教職大学 院が共催し、参加対象児童も十津川村内4小学校の 5・6年生に拡大することとなった。

2. 2. 平成23年度の取組概要

2. 2. 1. 日程及び授業計画

引率教員(山本・河合)を含めた第1回打合せで は、「十津川サマースクールの趣旨」及び「へき地教 育の現状と課題」について研修し、その後、授業実 施する教科と内容等を以下のとおり決定した。

8/17 8/18 8/19

8:40 9:25

開校式 5年 算数

6年 算数

5年 算数

6年 算数 9:30

10:15

国語① 国語③

10:15 10:30

リフレッシュタイム 閉校式 10:30~

11:15

理科 国語② 11:20~

12:05

英語活動 12:05

13:00

昼食及び

下校児童の見送り 13:00

15:00

自習の支援 15:00

17:00

研究協議

(片付け及び準備)

それぞれの授業は、2~3人のチーム ティーチン グ(Team Teaching, 以下TTとする)で行い、子 どもたちが楽しく活動的に取り組める授業展開の工 夫を目指し、各担当の院生で教材準備を行った。各 授業の主題は以下のとおりである。

国語①:接続詞を用いた単文づくり

国語②:接続詞を活用して、身近な発見を紹介 国語③:思い出新聞の作成

5年算数:量り方の工夫(油分け算)

6年算数:測り方の工夫(伊能忠敬に学ぶ測量)

理科:風とゴムのはたらき(写真1)

英語活動:How's the weather?

2. 2. 2. 「へき地教育現場」からの想定外の学び

十津川村は日本最大の面積をもつ村であり、子ど もたちの通学距離も非常に長く、多くは通学バスを 利用している。

写真1 理科ワークシート 河合 保秀

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最終日、前夜からの激しい雨のため雨量道路規制 が発令され、村内の道路が通行止めとなり、当日予 定していた授業等を実施することができなかった。

十津川村では、このような交通規制のために臨時休 校が年間に数回あるという。現地に行ってこそ体験 できた「へき地教育の現状」からの学びであった。

また、平成23 年9月に紀伊半島を南部を襲った 台風12 号は、十津川村にも洪水や土砂崩れ、道路 や電気・水道などのライフラインの断絶など、甚大 な被害をもたらした。なかでも、「十津川サマースク ール」に参加した児童1人が父・祖父母とともに洪 水で流され、児童は今なお行方不明になっている。

このことは十津川村の児童や教育関係者だけでなく、

教職大学院にとっても衝撃的な出来事であった。

この被害に対し、少しでも子どもたちを励ますこ とができればと、「十津川サマースクール」に参加し た院生全員でビデオレター「十津川サマースクール に参加したみんなへ-夢に向かって日々前進-」(写 真2)を作成し、十津川村教育委員会及び十津川村 立十津川第一小学校に送付した。

こうした出来事は、突発的な課題に対する対応力 を試される学びの機会にもなったといえる。

3. 平成24年度の取組と成果

「十津川サマースクール」の目的は、大きく2つ の柱がある。1つは、「へき地の教育の現状に学ぶ」

こと、もう1つは、「子どもたちとの学習をとおし、

教員としての実践的指導力の向上を図る」ことであ る。平成23年度のTTによる授業展開を観察し、さ らに3つ目の柱として「コミュニケーション力やチ ームで対応する力の向上を図る」ことを加えること ができるのではないかと感じた。平成24年度は、

参加した院生にこれら3つの目的を意識させながら 取り組ませた。

また、十津川村の子どもの特性・課題を事前に十

分レクチャーし、その特性・課題を踏まえた教材開 発、学習展開の工夫に取り組ませた。その概要と成 果について述べる。

3. 1. 取組の概要

3. 1. 1. 「十津川サマースクール」の特徴

教職大学院では、2年間で合計3ヶ月間の授業実 践の機会(学校実践Ⅰ~Ⅳ)が設定されている。そ うした学校実践と「十津川サマースクール」での授 業実践の違いは、次のとおりである。

①へき地校で実施すること

②村内4小学校の児童が集まっていること

③異学年(5・6年生)の集団であること

④グループによる学習形態が基本であること

TTによる指導を展開すること

3. 1. 2. 十津川村の子どもの特性・課題

十津川村教育委員会等が独自で実施されている調 査などの結果では、十津川村の子どもの特性・課題 として、以下のような傾向にあることが指摘されて いる。

・全般的に学習に対する関心・意欲等が低く、家 庭での学習習慣が確立されていない

・就寝時間が遅く、テレビの視聴時間が長い

・自分に自信をもつ子どもの割合が低い など これらは、都市部から遠隔地で教育情報等が不足 しがちであること、過疎化等の影響から人数の少な い固定化した人間関係のなかで育っていること、居 住地域が広範で子ども同士の交流等が自由にできず 様々な体験が不足していることなど、へき地の抱え る実情に因るところが大きいといえるのではないだ ろうか。

3. 1. 3. 授業計画及び改善点

「十津川サマースクール」では、子どもたちの特 性・課題を踏まえ、子どもたちが活動をとおして楽 しく学び、わかった喜び、達成した満足感などを味 わわせることが求められる。また、異なった小学校 の5・6年生がともに学ぶことに配慮しつつ、グル ープ学習の形態を生かした、教材開発に取り組むこ とが「十津川サマースクール」における院生の最も 重要な学びである。

平成24年度は平成23年度より、より詳細な学習 指導案を立案させることで教材観をしっかり意識さ せ、TT による指導を明確にするため、指導案の中 に「学習活動」「指導上の留意点」に加え、「院生の 動き」の欄を設定させることで、チームで対応する 意識をより強くもたせようと試みた。

また、平成23 年度は様々な時間の制約から、授 業後の研究協議に当該授業を行った院生しか出席で 写真2 ビデオレターCDカバー

(5)

きない現状があったが、平成24年度は全員出席で 実施できるよう、当日の片付けや翌日の準備等をよ り計画的に行った。平成24 年度の計画は以下のと おりである。

8/21 8/22 8/23

8:40 9:25

開校式 国語① 社会② 9:30

10:15

社会① 国語②

10:15 10:30

リフレッシュタイム 閉校式 10:30~

11:15

理科 算数 11:20~

12:05 12:05 13:00

昼食及び

下校児童の見送り 13:00

15:00

自習の支援 15:00

17:00

研究協議

国語①:日本で使う文字

国語②:スクラップブックを作ろう

社会①:情報を伝える~十津川村PR大作戦~

社会②:情報を伝える~十津川村PR大作戦~

算数:拡大図と縮図

理科:物質の状態の変化「ろうそくのひみつ」

3. 1. 4. 授業の概要及び授業者の反省

授業の概要及び授業後の反省について、「平成24 年度十津川サマースクール記録集」より要約して示 す。

国語①:日本で使う文字

「平仮名は漢字から発生したことを知ること」

「平仮名の成り立ちを理解し、正しい筆順で書ける こと」に配慮しつつ、百人一首で遊ぶ活動をとおし、

日本の伝統文化に対する興味や関心を高める。「タ イムラリー」を取り入れ、5カ所のチェックポイン トであらかじめ置かれた百人一首等に関する問題

(巻物仕立て)を解き、一定の時間でゴールする活 動を取り入れる。タイムラリーは「子どもたちの閉 鎖的な人間関係を広げる」というサマースクールの 目標を意識し設定した活動である。

反省:タイムラリーでは、授業の前半に学習した 内容を生かし、班員で協力し楽しげに取り組んでく れた。授業全体をとおして、教材研究の甘さを実感 した。児童に正確な知識を教えるという教師の授業 に対する責任を感じた。

国語②:スクラップブックを作ろう

サマースクールの思い出(各授業の感想等)を「ス クラップブック」に残すことをとおし、伝える力を 育む授業である。

どうような工夫が読み手を引きつける表現になる のか、どうすれば伝わりやすくなるのかなどを考え させることで、文章を書く力や文章を魅力的にする 力の向上を図る。

反省:児童は各自好きな色のアルバムと、コメン トカードを選び、意欲的にスクラップブックの作成 に取り組んでいた。各班にサポートの院生がいたお 陰で、文章を書くことが苦手な児童への支援も適切 で、ほとんどの児童がスクラップブックを完成して くれた。「どうすれば自分たちが伝えたいことが相 手に正確に伝わるだろうか」を主発問とする計画で あったが、実際は「どうしたら思い出しやすいか」

と言ってしまったことが一番の反省点である。

社会①:情報を伝える~十津川村PR大作戦~

児童がこれまでの生活の中で積み重ねてきた十津 川村の知識や経験を「PR」という観点で、必要に応 じて情報を収集し、その情報を的確に選択する力を 養うことを目的としている。十津川村に対する捉え 方や思いを意見として出し合い、その思いを一つの 形に作り上げることで、郷土に対する愛情を深め、

郷土に魅力や誇りに思えるよう指導したい。

反省:前半は資料の提示や作業の手順の説明であ ったため、講義形式となってしまった。後半のグル ープワークではTTの院生がいたため、児童どうし で相談し合ったり、考えたりする時間が確保できた。

今回、十津川村についてPRするテーマを数多く設 けたため、それぞれのテーマに基づいた教材研究、

教具等の取り扱いが不十分であった。

社会②:情報を伝える~十津川村PR大作戦~

社会①の授業を受け、班ごとにPRの内容を完成 させ、発表するものである。発表の方法は、「何を調 べたか」「どのようにして調べたか」「発見した十津 川村のすばらしいところ」の3つのポイントを伝え るよう指導する。

反省:児童の作品にはそれぞれ個性があり、自分 の地域のすばらしさを伝えようという思いが感じら れた。実際に家の人にインタビューをしたり、写真 を貼ったりするなどの工夫があった。また。放課後 の自習時間を活用して、友だち同士で情報交換しな がら作業を進めている者もいた。他の班の工夫した 作品や十津川村のすばらしさに関心をもっていて発 表を聞いていた児童の姿に感心した。

河合 保秀

(6)

算数:拡大図と縮図

本単元の「拡大図と縮図」は、新たに第6学年に 位置づけられたものである。この学習をとおし、中 学校で学ぶ「相似」の理解の基礎となる経験を積ま せたい。本時ではグランドに十津川村の村章を拡大 して画く活動を行う。そうした活動をとおし、「形を 変えないで大きくする・小さくする」という概念を 理解させたい。

反省:拡大の概念を理解させるために、図形専用 のミニ黒板教具を作製したが、用語の説明や指示が 曖昧で、拡大の仕組みを正確に指導するには困難で あった。グランドに300倍の拡大図を画いたことは、

「学習交流をとおして、学ぶ喜びや多くの人と接す る楽しさ」を実感できる授業になったのではないか。

理科:物質の状態の変化「ろうそくのひみつ」

ろうそくは、一見単純に燃えているようだが、フ ァラデーの「ロウソクの科学」によると一定のプロ

セスによって燃焼が行われている。日常の何気ない 光景の中にも科学が利用されていることに気づかせ

たい。後半はグラデーションキャンドルを制作する。

反省:「ろうそくは固体・液体・気体と変化して、

その気体が燃えることに気づく」「ろうそくの燃え る仕組みを意識して、ろうそくをつくる」という目 標は、おおむね達成できた。しかし、ろうを溶かす 際、安全を考えて湯煎を用いることや子どもがやけ どをしたときの応急措置については準備不足であっ た。今後も実験中の安全を忘れることなく、子ども たちに科学の不思議について触れることができる授 業を展開していきたい。

各授業者はそれぞれの反省のなかでTTによる指 導体制のメリットについて触れていた。授業後の研 究協議においては、「1人の指導者では成立しなかっ た授業も、TT だからこそ成立した」との指摘があ ったことを追記しておく。

3. 2. 取組の成果(院生アンケートより)

平成24年度「十津川サマースクール」に参加し た院生8名に、図1のアンケートを実施した。

図1 十津川サマースクール2012 アンケート

(7)

図2は、「十津川サマースクール」に参加して、「発 想力」「企画力」「調整力」「協調性」「実践的指導 力」「コミュニケーション力」「チームで対応する 力」の7つの能力について、それぞれ「向上したと 思うか」の質問に対する回答である。

なお、この7つに能力は、普段の学びとは異なり 院生各自が「十津川サマースクール」を創造してい

く活動であること、すべての授業をTTによる指導 で行うものであることを踏まえて設定した能力であ り、向上を期待する能力でもある。また、特に「協 調性」「実践的指導力」「コミュニケーション力」

「チームで対応する力」は、先の中教審答申におい て、これからの教員に求められる資質能力として挙 げられている能力である。

「企画力」を除いては、「十津川サマースクール」

に参加したすべての院生が、「(どちらかといえば)

向上した」と答えている。特に「チームで対応する 力」は全員が「向上した」と答え、「協調性」「実践 的指導力」「コミュニケーション力」が向上したと感 じている院生の割合が高い。

また、それぞれの能力が向上したと思う場面につ いて、「事前教材作成時」「事前指導時」「授業中」

「授業後の反省会」「自己で振り返りをしたとき」か ら選択(複数回答可)した回答結果は、図3~9の とおりである。

図2 向上したと思う力

図3「発想力」が向上したと思う場面

図4「企画力」が向上したと思う場面

図5「調整力」が向上したと思う場面 向上したと思う力

河合 保秀

(8)

「発想力」「協調性」は、教材を作成している事前 準備時に向上したと感じている院生が多い。これは、

各授業をチームで担当しながら教材開発を行なう、

いわゆる「十津川サマースクール方式」によるとこ ろが大きいといえる。学校実践での授業は、各自が 責任をもって1人で行うもので、特に「協調性」の 向上を期待するものではない。学校実践では得られ ない学びが「十津川サマースクール」における学修 にはあるといえる。

「実践的指導力」「コミュニケーション力」「チー ムで対応する力」が向上したと思う場面は、「授業 中」と回答した院生が多い。特に「チームで対応す る力」は、全員がそのように感じている。このこと は、すべての授業をTTによる指導体制で実施して いることに起因していると考えられる。

また、「十津川サマースクーは、あなたが教師を目 指す上で有意義なものとなったか。」の問いには、図 10のとおり、全員が「はい」と回答している。

「特に有意義だったこと」についての記述のなか で、「チームで対応する」ことに関するものは以下の とおりである。

・みんなで創るダイナミックな授業は、教師の幅を 広げることにつながると思う。

・1人ではできないことをTTを行うことで、指導 の行き届いた授業を展開できた。

・仲間が協力し合うことの大切さを実感した。

以上のことから、複数名を1チームとした「十津 川サマースクール」の活動そのものが能動的な学修

(アクティブ・ラーニング)であり、その学修がこ れからの教員に求められる資質能力の育成に大いに 関係しているということが見えてきた。

. チームによる指導の確立に向けて

先述のとおり、平成24年度はTTによる指導をす べての授業で展開した。今後、TT 指導をするに当 たっての注意すべきこと、気づいたことの院生の回 答は以下のとおりである。

・全体の授業の流れを全員がしっかり把握しておく こと

図6「協調性」が向上したと思う場面

図7「実践的指導力」が向上したと思う場面

図9「チームで対応する力」が 向上したと思う場面 図8「コミュニケーション力」が

向上したと思う場面

10「十津川サマースクール」は教師を

目指す上で有意義なものとなったか

(9)

・問題が起こったときに対応できる柔軟な対応力

(サブになる者が、いつでもメインの代行が出来 ること)

・事前の綿密な打合せ

・相手に依存するのではなく、それぞれが自立して 責任をもって授業に臨む必要がある。

・相手が「してくれるだろう」「してくれているだ ろう」という憶測はだめ

・全体指導と個別指導の連携

・指導観の統一(ぶれない指導)

・授業者とサブとの指導方針についての共通理解の ための事前の密な打ち合わせ

・授業中の連携

・メイン指導者だけでは気づかった視点や事実の共 有のための振り返り

・指導者相互の意思統一と役割分担の明確化

・指導細案(マニュアル)の作成

・児童の状況をメイン指導者へ伝えること

・授業中の目配りとより柔軟なチークワークの確立 TTによる指導は、指導者相互の理解、指導内容・

方法等の共有が十分になされて成果の上がるもので ある。院生の気付きは、TT による指導の留意点と して適切であるといえる。今後はこの反省を生かし つつ、チームによる指導法の工夫を目指した取組に 発展させる必要がある。そのためにも、学習指導案 の様式を工夫することが求められる。これまでの「学 習者」と「指導者」に関する記述だけでなく、「学習 者」と「メイン指導者」、「学習者」と「サブ指導者」、

「メイン指導者」と「サブ指導者」との動きを一見 して共有できる様式を考えたい。また、「サブ指導 者」の指示・説明事項についても、「メイン指導者」

と同様に十分吟味しておくことが重要である。

. 今後の課題

今回、「十津川サマースクール」に参加した院生に 事後アンケートを実施し、事前準備から事後の反省 等に至る活動をとおし、どのような能力が向上した かを考察することで、その教育的意義を見出そうと した。しかし、「十津川サマースクール」に参加した 数少ない院生の集計であるため、経年的なデータの 積み重ねが必要であると感じている。

ただ、教材開発、授業計画、授業展開、振り返り 等の様子や、特に十津川村の宿舎に着いた後も夜遅 くまで打合せや最後の教材準備をしている姿には、

「子どもたちにわかってもらおう、楽しませよう、

喜ばせよう・・・」とする教員に必要な使命感や教 育的情熱を感じたことは確かである。

今後、「十津川サマースクール」が院生にとっても 参加した子どもたちにとっても、アクティブ・ラー ニングによる学びを体験するプロジェクトして確立

できるよう、院生とともにさらに工夫・改善をして いきたい。

また、「十津川サマースクール」の教育的意義の検 証については、キャリア教育や学校教育における特 別活動の視点からも検証することも必要であると考 えている。そのことにより、本プロジェクトの教育 的意義がより明確になると確信している。

謝辞

「十津川サマースクール」の実施にあたり、多大 の協力をいただいている十津川村教育委員会、会場 を提供していただいている十津川村立十津川第一小 学校の先生方に改めてお礼申し上げます。

1) 教員による一方的な講義形式の教育とは異なり、

学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・

学習法の総称。学修者が能動的に学修することによ って、認知的、論理的、社会的能力、教養、知識、

経験を含めた汎用的能力の育成を図る。発見学習、

問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、

教室内でのグループ・ディスカッション、ディベー ト、グループ・ワーク等も有効なアクティブ・ラー ニングの方法である。

―「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に 向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成す る大学へ~(答申)」 用語集―

参考文献

文部科学省(2012)「大学改革実行プラン~社会の 変革のエンジンとなる大学づくり~」

中央教育審議会(2012)「新たな未来を築くための 大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、

主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)」 中央教育審議会(2012)「教職生活の全体を通じた の資質能力の総合的な向上の方策について(答 申)

中央教育審議会(2006)「今後の教員養成・免許制 度の在り方について(答申)

河合 保秀

参照

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