(生物園生命科学専攻長奥村克純 ( 副 専 攻 長 岡 垣 壮
学位論文審査の結果の要旨
氏 名 山 本 康 介
副 査
授 授 授 授 教 教 教 教
田 丸 浩 主 査
審 査 委 員 副 査 副 査
奥 村 克 純 幹 渉 粟 冠 和 郎
論 文 題 目 (題目変更の有無)
⑤ ・ 無
Clostridium cellulovoransゲ、ノム解析に基づく糖質分解酵素に関する研究 (Study on glycosyl hydrolases based on genomic analysis of Clostridium
cell ulovorans) (論文審査の結果の要旨)
本論文は、植物バイオマスを有効利用するためのバイオリファイナリー技術の開発において、
嫌気性細菌Clostridiumcellulovoransのゲノム情報をもとにして、比較ゲノム解析および、プロテ オーム解析を行うことで、各種ノミイオマスの糖化に有効な酵素群の探索法およびセルロースの分解
.糖化におけるメカニズ、ムについて研究したものである。
第1章では、エネルギー自給率および化石燃料の燃焼による大気中の二酸化炭素濃度上昇およ び地球規模の気候変動を引き起こっている現状を例に挙げ、環境保全や生態系の維持には二酸化炭 素削減が人類共通の喫緊の課題であることを述べている。さらに、日本においてはクリーンエネル ギーとして期待されていた原子力発電が、 2011年の東日本大震災による津波の被害によって停止を 余儀なくされ、再生可能エネノレギーである太陽光、水力、風力、地熱、潮力、バイオマスの利用促 進が急務となっていることを紹介するとともに、バイオリファイナリー研究の現状と課題を指摘し た。
第2章では、バイオリファイナリーを推進するためには、バイオマスの前処理、糖化、発酵、
および精製のプロセスが必要であり、植物バイオマスの構成の複雑さと安定性が、前処理と糖化の 行 程 の 低 コ ス ト 化 を 困 難 に し て い る 現 状 を 指 摘 し 、 本 研 究 に お け る モ デ 、 ノ レ 微 生 物 で あ る Clostridium cellulovoransおよび本菌が生産する高分子酵素複合体 セルロソーム"について、
ゲノム情報をもとにしてドックリン・ドメインと呼ばれる骨格タンパク質のコヘシン・ドメインに 結合することができるタンパク質構成サブユニットについて探索をおこない、 53個の配列を見出す
氏 名 山 本 康 全 とともに、 4個の骨格タンパク質が存在することを明らかにした。
第3章では、バイオマスの一種であるマンナンを主要な骨格とするローカストピーンガムに対し て、 C. cellulovoransがどのような酵素群を分泌して分解しているのかについて、全ゲノム情報を 探索するとともに、プロテオーム解析をもとにしてマンナン分解に寄与するユニークなマンナナー ゼについて分子生物学的ならびに酵素学的研究を行った。その結果、 C. cellulovorans由来のマン ナナーゼの中でも、 Man26Eに糖質結合モジュールCBM59が存在することを報告し、本酵素遺伝子は 恐らくクロストリジウム属以外から伝播してきた可能性があることを明らかにした。
第4章では、セルロソーム生産菌に特有な糖質分解酵素ファミリーGH9およびGH48を用いて、両 酵素のセルロース分解における相乗効果ならびに分解産物であるセロピオースに対する阻害活性に ついて明らかにした。すなわち、 C. cellulovorans由来のセルロソーム構成酵素であるEngHお よ び EngK (ともにGH9)およびExgS (GH48)を組み合わせて、リン酸膨、潤セノレロースに対する分解活性 を測定した。その結果、 EngKを添加した酵素の組み合わせにおいて、 5mg/mlセロビオース存在下 でも反応生成物阻害がかからないことを明らかにした。以上のことから、 C. cellulovorans由来の セルロソームにおける糖質分解酵素ファミリーGH9の多様性を明らかにするとともに、セルロース の主要な分解産物であるセロピオースが存在した際のセルロソーム構成酵素の分解の作用機構を初 めて明らかにした。
以上、本研究により得られた本申請論文の主要な内容は、 iBioMed Research InternationalJお よび iAMBExpressJにおいて2報の原著論文として公表されている。したがって、本審査委員会 では、申請論文が当該学問分野において十分な内容と新規性を有し、博士学位論文として適格であ ると全員一致で判断した。