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ペットボトルロケットの鉛直打ち上げにおける運動 特性
著者 増井 壮太, 中村 元彦, 松山 豊樹
雑誌名 奈良教育大学紀要. 自然科学
巻 69
号 2
ページ 1‑7
発行年 2020‑12‑25
URL http://doi.org/10.20636/00013399
ペットボトルロケットの鉛直打ち上げにおける運動特性
増 井 壮 太
奈良教育大学大学院修了中 村 元 彦
奈良教育大学理科教育講座(物理学)松 山 豊 樹
奈良教育大学理科教育講座(物理学)Motion Characteristics in Vertical Launch of PET Bottle Rocket
MASUI Sota
(Graduate School of Education, Nara University of Education)
NAKAMURA Motohiko
(Department of Physics, Nara University of Education)
MATSUYAMA Toyoki
(Department of Physics, Nara University of Education)
Abstract
The inquiry activity of science and mathematics in high school is one of very important educational issues. The PET bottle rocket is considered to be a good theme because it requires a wide range of knowledge in high school physics, including the laws of energy conservation, mass conservation and momentum conservation and the state equation of gas. Though the experiment of PET rocket is popular, the detail of the theoretical mechanism is not understood well still now. In this paper, we consider a vertical Launch of PET Bottle Rocket. We derive a theoretical equation that takes into account the air resistance in the motion of a PET bottle rocket, and then perform numerical simulations for solving the equation. To know a power of thrust, the PET bottle rocket is fixed and the water level change in the container is measured by filming the super-slow motion.
We compare the simulated values derived from the theoretical equation with the actual measured values by firing the PET bottle rocket. It verifies the validity of the theoretical equation
キーワード: ペットボトルロケット,鉛直打ち上げ, 理数探求
Key Words:PET bottle rocket, Vertical launch, Inquiry of science and mathematics
1.はじめに
ペットボトルロケットとは,水を入れたペットボトル に空気を注入することでボトル内を高圧にし,圧縮空気 の膨張により水を噴出させて飛ばすロケットのことであ る(1)。火薬などを使わずに水だけで飛ばすので安全であ り,身近なペットボトルを使うので安く簡単に作成する ことができる。打ち上げ時には相当な迫力があり,飛距 離が100 mを超えることもある。ペットボトルロケット の面白さはより遠くに飛ばすためにロケットの形状,入 れる水の量や圧縮空気の圧力,打ち上げ角度などを変化 させることができるなど,さまざまな工夫ができるとこ
ろにある。また,ロケットがなぜ飛ぶのかをロケットの 打ち上げを通して実験的に学習することができるので,
小中学校などで物理授業の一環として盛んに取り上げら れている(1)。さらに教材としてだけではなく,ペット ボトルロケットの軽量で水に浮く,100 m以上飛ばせる,
夜間での使用も可能などの特徴から,近年水難救助用の ペットボトルロケットの開発なども行われている(2)。 高等学校の物理の運動量保存の演示実験としてペット ボトルロケットの実験は非常に人気がある。また,空気 だけでこの実験を行えば空気ロケットになり,さらに容 器を固定すれば断熱膨張の実験になる(3)。また,ペット ボトルロケット運動を考えるにはエネルギー保存の法
増 井 壮 太・中 村 元 彦・松 山 豊 樹 2
則、気体の状態方程式、質量保存の法則、運動量保存の 法則など幅広い高校物理の知識を要するため、応用課題 として活用できるテーマである(4)。平成29・30年改訂学 習指導要領では、理数探求という教科が導入されること になり、様々な事象や課題に知的好奇心を持って向き合 い、探求するために必要な基本的な知識及び技能を身に 付け、多角的複合的に事象を捉え、粘り強く考えて行動 し課題の解決に向けて挑戦しようとする態度を養うこと などを目標にしている(5)。そこで、ペットボトルロケッ トは、迫力のある発射で生徒の興味を惹くことができ、
その運動特性を考察するにはこれまでに学習してきた 様々な物理の基礎知識を複合的に組み合わせる必要があ るので、探求的な学習のテーマとして最適なもののひと つであると考えられる。
小学校でも扱えるテーマであるにも関わらず、変化さ せることができるパラメータが多く、その軌道を捉える ことは困難である。ペットボトルロケットを理数探求に おける探求的な活動の教材として用いるためには、まず 教員自らがその運動特性について十分に把握し、教材研 究を行う必要がある。ペットボトルロケットの運動にお ける理論式については文献(3)に記載があるが空気抵抗は 考慮されていない。
そこで本研究では、まずペットボトルロケットの運動 における空気抵抗を加味した理論式の導出、および数値 計算によるシミュレーションを行う。(第 2 章)その後、
導出した理論式の妥当性を確認するためにスーパース ローモーションカメラを用いて実験を行い、検証するこ とを目的とする。(第 3 章)
2.ペットボトルロケットの運動シミュレーション
2. 1. 概要
ペットボトルロケットの運動は大きく分けて 3 つの フェイズが存在する。ひとつは発射直後に水を噴出し、
推力を得て加速するフェイズである。(水ロケット)続 いてもう一つは水を噴出しきった後、ペットボトル内の 気圧が大気圧よりも大きい場合に空気を噴出し、推力を 得て加速するフェイズである。(空気ロケット)最後に、
ペットボトル内の気圧が大気圧と同じ気圧になった後、
重力と空気抵抗のみを受けながら慣性に任せて運動する フェイズである。(慣性運動)これらを一つの運動の式 として表すことは非常に困難であり、それぞれのフェイ ズに分けて考える必要がある。
そこで、今回は 4 次のルンゲ・クッタ(RK)法を用いて、
それぞれのフェイズにおける運動のシミュレーションを 行い、それらを一つの運動としてみることにする。ル ンゲ・クッタ法とは、常微分方程式 (ODE) の初期値 問題(IVP)を近似的に解く数値解法であって、高次の
方法としてよく知られたものである(6)。今回は文献(3)に 記載されているBasicを用いたプログラムを参考にExcel
(2013)を用いてシミュレーションを行うことにした。
Excelを用いることで、高校教育においても新たなシミュ レーション・ソフトを導入することなく数値解析が可能 となる。また、斜方投射を想定すると式が複雑になるた め、今回は鉛直打ち上げを想定した運動を考えることに する。2.2節では水の噴出による推力が働く場合の運動 の理論計算を、2.3節では空気の噴出による推力が働く 場合の運動の理論計算を、2.4節では重力と空気抵抗の みを受けながら慣性に任せて飛行する場合の運動の理論 計算を述べる。2.5節ではそれぞれのフェイズにおける 運動の理論式をもとにシミュレーションを行い、それら を一つの運動としてみた時の結果を示す。
2. 2. 水ロケットの運動
水を噴出するフェイズについて考える。文献(3)になら い、以下のようなパラメータを設定した。図1のような 断面積S1、長さLの円柱に断面積Sの小さな噴出口のつ いた容器内に空気と密度ρの水が入っており、容器内の 気圧をPとし、大気圧をPAとする。円柱を固定して容器 の底面を基準としてX軸をとり、容器内の水面の位置を xとする。
使用する記号の説明のためも、文献(3)の水の噴射速度 vの導出をまとめておく。定常状態におけるベルヌーイ の定理より
02+ = v2+ (1-1)
が成り立つ。一方、空気の膨張は断熱膨張であると見な せるので
P(S1x)γ=P(S0 1x0)γ (1-2)
が成り立つ。ここで,P0,x0はそれぞれP,xの初期値で あり,γは比熱比CP/CVで,2 原子分子からなる空気の
12 P ρ 1
2 PA ρ
図 1 水ロケットの模式図
場合7/5である。
式(1-1), (1-2)より
v= (1-3)
を得る。このとき、水の質量保存の法則より
ρS1 =ρSv (1-2’) が成り立つ。
空気抵抗を無視した場合、運動方程式は文献(3)によっ て与えられる以下の式 (2-1)となる。
M =ρSv2−Mg (2-1)
ここでVはロケットの速度である。
各記号の時間依存性は,P, x, v, Vは時間の関数であり, 他は定数である。
我々は上式に,新たに空気抵抗を加味し,理論式を拡 張した。空気抵抗係数をkとし,ペットボトルロケット の速度の二乗に比例する空気抵抗がはたらいている場 合,式(2-1)は
M =ρSv2−Mg−kV2 (2-1’) となる。また,M0を初期のペットボトルロケットの質 量とするとMは
M=M0+ρ(L−x)S1
となるので,これを式 (2-1’) に代入して,
= = −g (2-2)
を得る。式(2-2)を 4 次のルンゲ・クッタ法で数値計算 することにより,ロケットの速度V(t)と位置X(t)が得 られる。
具体的には,式(1-2’),(1-3)よりv(t)を消去したx(t)
に対する微分方程式
ρS1 =ρS
を解いてx(t)を得る。求まったx(t)に対して式(2-2)を 解いてV(t)を求める。
2. 3. 空気ロケットの運動
空気を噴出するフェイズについて考える。文献(3)にな らい,以下のようなパラメータを設定した。図 2 のよう な体積V0の容器内の空気の圧力,密度,温度,モル数を それぞれP,ρ,T,nとし,噴出口の断面積をS,空気 の噴出速度をvとする。また,容器外の空気の圧力,密度,
温度をP' ,ρ' (定数),T'とする。
式(3-1)は文献(3)によって明らかとなった空気ロケッ トの運動方程式である。
M =ρ'Sv2−Mg (3-1)
ここで,ベルヌーイの定理及び断熱変化の式から,γ=
のときは,
v=
である。上式に空気抵抗を加味し,理論式を拡張する。
空気抵抗係数をkとし,ペットボトルロケットの速度の 二乗に比例する空気抵抗がはたらいている場合,上式は M =ρ'Sv2−Mg−kV2 (3-1’) と書ける。ここで,M0を容器の質量とするとMは M=M0+ρV0
となるので,これを式(3-1’)代入して,
= −g (3-2)
を得る。ただし,
V0 =−ρ'Sv
で,空気のみのときは,ρは時間の関数であり,ρ'は定 数である。式(3-2)をルンゲ・クッタ法で数値計算する ことにより,ロケットの速度V(t)と位置X(t)が得られ る。
図2 空気ロケットの模式図
このとき,エネルギー保存と気体の状態方程式より =−
(
CvT'+12ρ'v3+PAv)
(3-3)となる。ただし
T'=
で(γ= ,cは容器内の音速)ある。(7)そして質量保存よ り
=− ρ (3-4)
となるので,式(3-3)と(3-4)を連立させてPとρを求め,
その解を用いて微分方程式(3-2)を解く。
2. 4. 慣性に従う運動
最後に重力と空気抵抗のみを受けながら慣性に任せて
γ−PA
P0
x0
x
ρ2
dxdt
dV dt
dVdt
dVdt d2X
dt2 ρSv2−kV2 M0+ρ(L−x)S1
dxdt
γ−PA
P0
x0
x
ρ2
dV dt
75
2/7
7 1− P pA ρP
dVdt
dVdt ρ'Sv2−kV2 M0+ρV0
dρdt
dPdt RS CvV0
ρ'vm0
T 1− 1 5
v2 c2
7 5
dPdt S V0
PA 7/5
P
1− 2/7
7 PA
P
ρP
増 井 壮 太・中 村 元 彦・松 山 豊 樹 4
飛行する場合の運動を考える。運動方程式は,
M =−Mg−kV2 (4-1)
となる。ここでM=M0であり,
M =− −g (4-1’) となる。式(4-1’)より,ロケットの速度V(t)と位置X(t)
が得られる。
2 .5. シミュレーション結果
例として,初期水量300 ml,初期圧力 5atmとした場 合のペットボトルロケットの速度変化V(t)(図 3 ),位 置変化X(t)(図 4 ),加速度変化a(t)(図 5 ),質量変化 M(t)(図6),推力変化F(t)(図 7 ),ペットボトル内の圧 力変化P(t)(図 8 )のシミュレーション結果を示す。
その他のパラメータとして,噴出口の断面積を6.4×
10−5(m2),ペットボトルの断面積を2.4×10−3 (m2),ペッ トボトルの体積を5.0×10−4(m3),大気圧を1 (atm),
空気1 molの質量を2.9×10−2(kg/mol),容器の質量を 6.0×10−2(kg),空気の定積モル比熱を21 (J/(mol・K)),
空気の比熱比を1.4,水の密度を1.0×103 (kg/m3),気体 の温度を300(K)とした。
新たに導入した空気抵抗係数を7.2×10-4) (kg/m)(1)
とし,dt=0.0002(s)とした。
dVdt
dVdt kV2 M0
図 8 ペットボトル内の圧力変化P(t)
図3 ペットボトルロケットの速度変化V(t)
図 4 ペットボトルロケットの位置変化X(t)
図 5 加速度変化a(t)
図 6 質量変化M(t)
図 7 推力変化F(t)
図 3 ~ 8 中の1本ないしは 2 本の垂直な点線はそれぞ れフェイズが切り替わるタイミングの時間を表してい る。
シミュレーションの結果から,初期水量300 ml,初期 圧力 5 atmとした場合,水を噴出するフェイズはわずか 0.3秒程度,空気を噴出するフェイズはさらに短く,0.02 秒程度であると想定されることがわかった。ペットボト ルロケットに推力が与えられる時間がこれだけ短いにも 関わらず,図 3 に示すペットボトルロケットの速度変化 より最高速度は約22.6 m/s,図 4 に示すペットボトルロ ケットの位置変化より最高到達点は24 m以上にのぼる と想定されることがわかった。図 5 に示す加速度変化を みると,0.25~0.3sあたりで加速度がわずかに上昇して いることがわかる。通常は推力が減少すると加速度も小 さくなるが,ペットボトルロケットの場合は同時に質量 も減少しているので,それらの相互作用から加速度がわ ずかに上昇したと考えられる。さらに,0.3~0.5sあたり では,ペットボトルはまだ上向きに速い速度を持つため 空気抵抗によってブレーキがかかり,下向きに20 m/s2 程度の加速度が生じている。図 6 に示す質量変化,図 7 に示す推力変化,図 8 に示すペットボトル内の圧力変化 をみると,水を噴出するフェイズにおいては指数関数的 に減少しているようにもみえる。
3.ペットボトルロケットの水位変化の測定
3. 1. 実験方法
ここまでは理論式からペットボトルロケットの運動を 考察してきた。しかし,実際の運動と理論式に隔たりが あってはいけない。そこで,ペットボトルロケットの運 動の要となる水の推力によって運動するフェイズに注目 し,実験を行った。まず,今回実験に用いたペットボ トルロケットを図 9 に示す。500 mlの炭酸用ペットボト ル(表面に凹凸のないもの)を 2 本用意し,1 本を中央 辺りで輪切りにし,もう 1 本に被せるかたちでビニー ルテープを用いてつなぎ合わせた。全長0.36 m,水のタ
ンク部分(ペットボトル 1 本分の底から口まで)の長さ 0.24 m,ペットボトルの半径0.03 m,噴出口の半径0.004 m であった。
続いて,図10に示すような測定装置を組み立て,ペッ トボトル内の水位変化をデジタル4Kビデオカメラレ コーダー(SONY FDR-AX700)を用いてスーパース ローモーションで撮影した。撮影は撮影フレームレート を960 fps,記録設定を60 pとし,16倍スローでの撮影を 行った。図11は実際にスローモーションカメラで撮影し た映像である。ペットボトルには20 mlごとに目盛りを 振り,測定中に軸がぶれないように固定した。また,ペッ トボトル内の初期圧力は圧力計を搭載した空気入れ(株 式会社フルプラ製)を用いて測定した。ペットボトル内 の水位変化を測定した理由として,単位時間当たりの ペットボトル内の水位変化が分かれば,噴出する水の速 度が計算できるので,水による推力の時間変化が求めら れる。今回は初期水量を180 mlに固定し,ペットボトル 内の初期気圧を 3,4,5,6 atmに変化させた時の時間 変化を測定した。測定は各初期気圧に対して, 一人 5 回 行い, 2 人で合わせて10回行った。よって,それぞれの 初期気圧で水位変化の10回の平均値を得た。
得られた数値をもとに,水の密度を 1 g/cm3として,
単位時間当たりの水量変化を計算した。それぞれの内圧 図 9 実験に使用したペットボトルロケット
図10 水位変化測定装置の模式図
図11 スローモーションで撮影したカメラの映像
増 井 壮 太・中 村 元 彦・松 山 豊 樹 6
の時の水量変化を図12に示す。
水量が減ってくると水面が乱れ,正確に目盛りを読む ことができなかったため,今回は残り40 mlになるまで の水量変化を測定した。図12において,丸印( )は 内圧が 3 atmの時の水量の時間変化を,四角印( )は 内圧が 4 atmの時の水量の時間変化を,三角印( )は 内圧が 5 atmの時の水量の時間変化を,バツ印( )は 内圧が 6 atmの時の水量の時間変化を表している。図12 から,内圧が大きくなればなるほど水量の減少速度が速 くなる,すなわち噴出する水の速度が速くなることがわ かる)
3. 2. 実験結果とシミュレーションとの比較
続いては,2.5節で示したシミュレーションと,今回 の実験で求めた水量の時間変化を比較し,理論式の妥当 性について考察する。図13に内圧が 3 atmの時の比較を,
図14に内圧が 4 atmの時の比較を,図15に内圧が 5 atm の時の比較を,図16に内圧が 6 atmの時の比較を示す。
シミュレーションとの比較により,理論式から導かれ たシミュレーションの値と実験値は非常に近い値であっ
たことから,ペットボトルロケットの軌道に大きく関 わっている水を噴出するフェイズにおける理論式の妥当 性を確かめることができた。また,誤差が生じた理由と しては,水の噴出時にペットボトル内の水面が波打つこ とがあり,正確な水量を測定できなかった可能性が考え られる。
4.まとめ
今回,ペットボトルロケットの運動における空気抵抗 図12 水量の時間変化(180 ml,3 ~ 6 atm)
図13 180 ml,3 atmの比較
図15 180 ml,5 atmの比較
図16 180 ml,6 atmの比較 図14 180 ml,4 atmの比較
を加味した理論式の導出,および数値計算によるシミュ レーションを行い,導出した理論式の妥当性を確認する ためにスーパースローモーションカメラを用いて水噴出 時のペットボトル内の水位変化を測定する実験を行い,
運動特性を検証した。シミュレーションの結果から,初 期水量300 ml,初期圧力 5 atmで鉛直上向きに打ち上げ た場合,水を噴出するフェイズはわずか0.3秒程度,空 気を噴出するフェイズはさらに短く,0.02秒程度である と想定されることがわかった。また,ペットボトルロ ケットに推力が与えられる時間がこれだけ短いにも関 わらず,ペットボトルロケットの最高速度は約22.6 m/
s,最高到達点は24 m以上にのぼると想定されることが わかった。また,加速度変化をみると0.25~0.3 sあたり で加速度がわずかに上昇していることがわかる。通常は 推力が減少すると加速度も小さくなるが,ペットボトル ロケットの場合は同時に質量も減少しているので,それ らの相互の関係から加速度がわずかに上昇したと考えら れることがわかった。質量変化,推力変化,ペットボト ル内の圧力変化をみると,水を噴出するフェイズにおい ては指数関数的に減少しているようにもみえることがわ かった。
続いて,ペットボトルロケットを固定した状態でボト ル内の水位変化を測定した実験の結果から,内圧が大き くなればなるほど水量の減少速度が速くなること,すな わち噴出する水の速度が速くなることが確認された。ま た,その結果をシミュレーションの値と比較したところ,
非常に近い値であることを確認し,ペットボトルロケッ トの軌道に大きく関わっている水を噴出するフェイズに おける理論式の妥当性を確かめることができた。
今回行なった実験は,高性能な高速度カメラを用いな いと行うことができない。しかし,空気を噴出するフェ イズや慣性に従って運動するフェイズにおける理論式に ついて実験的検証を行い,その妥当性を確認することが できれば,実際のペットボトルロケットの発射から着地 までのトータルの運動を計算することができる。そうす ると,高性能なカメラを使用しなくても,ロケットの飛 距離や最高到達点など一般的な高等学校でも比較的測定 しやすいものから,学習した内容を実験的に確かめるこ とが可能な教材として活用できると考えられる。今後は 空気を噴出するフェイズ,およびその後慣性に従って運 動するフェイズにおける理論式の妥当性についても実験 的検証をしていきたい。
ペットボトルロケットは,小学生に対しては,作用反 作用の説明をすることでロケットが飛ぶ原理について学 ぶことができる教材になる。また,実際に児童自身がロ
ケットを飛ばす中で,よく飛ぶ羽の形や水の量などを工 夫し,探求しようとする様子も過去の実践で見受けられ た。中学生に対しては,水を一気に噴出することでペッ トボトル内では断熱膨張が起き,雲が発生する様子を見 せることができる。高等学校においては,平成29・30年 改訂学習指導要領から理数探求という教科が導入される ことになっている。ペットボトルロケットの運動におけ る理論式の中には運動量保存やエネルギー保存,作用反 作用の法則など既に学習している内容も多く含まれてい る。それらにベルヌーイの定理や空気抵抗などの新しい 式も加えて考えなければいけないが,最終的な式として はそれほど複雑ではなく,高校生でも十分理解できると 考えられる。実際にロケットを作って飛ばすという実験 を交えることができる点において,理数探求の目的であ る知的好奇心を持たせるという部分を満たせると考えら れる。また,様々な既習の物理的知識および新しい知識 を複合的に組み合わせて考えなければならないという点 において,多角的複合的に事象を捉え問題解決に向けて 挑戦しようとする態度を養うという目的にも合致すると 考えられる。しかし,ペットボトルロケットというテー マを教材として採用するには,まだまだ教材研究が必要 である。具体的な授業案や指導計画等の作成が今後の課 題である。
謝辞
本研究において,ペットボトルロケットの水位変化の 撮影,および記録に協力してくれた本学学生,鎌田康平 さん,福本悠人さん,山下真由さんに心より感謝申し上 げます。
参考文献
( 1 ) 水ロケットにおける飛行最適条件の研究:本田貴之,梅 村 章 日本 航 空 宇 宙学 会 論 文 集 Vol.49 No.574 P.14
(2001).
( 2 ) 水難救助用ペットボトルロケットの開発:後藤恵之輔,
中尾祐一郎,上田晋弘,上田憲,後藤健介 安全問題研 究論文集 Vol.5 (2010).
( 3 ) 水ロケットと気体ロケット―断熱膨張の物理―:笹川民 雄 新潟県立三条高校 (1994).
( 4 ) ペットボトルロケット作製による高校物理の体験学習:
森和也,村山伸樹 工学教育研究講演論文集第60回年次 大会 P.1 (2012).
( 5 ) 高等学校学習指導要領(平成30年 3 月告示)解説 理数 編 P.18 (2018).
( 6 ) Runge-Kutta法―その過去,現在,未来―:三井友総合 講演・企画特別講演アブストラクト 日本数会1998年度 年会 P.93-101 (1998).
( 7 ) 流体力学2:ランダウ・リフシッツ 東京図書P.361 (1971).
令和 2 年 4 月24日受付,令和 2 年 8 月12日受理