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論文の要旨

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Academic year: 2021

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- 1 - 論文の要旨

申請者 赤井 亮介

研究論文題目

マウスの発達期の脳における全身麻酔薬の神経毒性と細胞内代謝の関連

1 目 的

生後 6 日のマウスを用い、吸入麻酔薬が持つ発達期の中枢神経への毒性と糖 代謝の関連を明らかにし、毒性のメカニズム解明及び小児の麻酔中の血糖管理に 資すること。

2 対象並びに方法

生後 6 日齢の C57BL/6 マウスに D-グルコースを経管胃内投与し、直後から 全身麻酔薬セボフルランに曝露し、曝露終了後に血糖値、ウェスタンブロット法 を用いて脳内の開裂 PARP(アポトーシスマーカー)、4-ヒドロキシノネナール

(4HNE、酸化ストレスマーカー)付加タンパク質およびカルボニル化タンパク質

(酸化ストレスマーカー)を、サンドイッチ ELISA 法を用いて血漿中インスリン 濃度、化学発光法を用いて脳内 ATP 濃度、脳内乳酸濃度、糖取り込み能を測定し た。セボフルラン曝露も D-グルコース投与も行わない群をコントロールとした。

3 成 績

セボフルラン曝露によって脳内アポトーシスが増加したが、セボフルラン 曝露下に D-グルコースを投与するとさらにアポトーシスが亢進した。一方、D-グ ルコース投与のみではコントロールと変わらなかった。また、4HNE 付加タンパク 及びカルボニル化タンパク質の発現はセボフルラン曝露および D-グルコース投 与によって増強した。

血糖値は D-グルコース投与によって上昇したが、セボフルラン曝露下では高 血糖が遷延した。セボフルラン曝露のみでは血糖値は変化しなかった。血漿中イ ンスリン濃度は D-グルコース投与によって上昇したが、セボフルラン曝露下では その上昇は有意に抑制された。

セボフルラン曝露と D-グルコース投与によりアポトーシスおよび酸化スト レスが増大する原因を追究するため、細胞内糖代謝およびミトコンドリア機能へ の影響を調べた。脳内 ATP 濃度は D-グルコース投与によって上昇したが、セボフ ルラン曝露により抑制された。脳内乳酸濃度はセボフルラン曝露によって上昇し たが、D-グルコース投与では影響を受けなかった。細胞内への糖の取り込みはセ ボフルラン曝露によって変わらなかった。

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- 2 - 4 考 察

セボフルラン曝露によって脳内の酸化ストレスが増大し、D-グルコースによ っても解除されない脳内 ATP 濃度の低下があることから、脳内ミトコンドリアの 機能低下が起こっていると考えられた。セボフルラン曝露に加えて D-グルコース を投与すると脳内アポトーシスおよび酸化ストレスが増大することから、ミトコ ンドリアの機能低下状態でのグルコースの過剰供給が活性酸素種の産生を促した 可能性が考えられた。セボフルラン曝露によって脳内乳酸濃度が上昇したことか らピルビン酸からアセチル CoA への変換が抑制されたと考えられるが、その機序 はミトコンドリアの機能低下からのフィードバック制御かもしれない。また、セ ボフルラン曝露によってインスリン分泌が抑制され高血糖が遷延したが、これに よりミトコンドリアの機能低下状態への過剰な糖の供給を増長し、脳内酸化スト レスの更なる増加の一因となっている可能性が考えられた。

5 結 論

発達期のマウスの脳において、全身麻酔薬はミトコンドリアの機能を抑制し、

正常な糖代謝を阻害する。発達期のマウスにおいて、全身麻酔薬は血糖上昇によ るインスリン分泌を抑制し、高血糖状態を遷延させる。発達期のマウスの脳にお いて、全身麻酔中の過剰な糖負荷は酸化ストレスを増やし、アポトーシス増加の 要因となる。

参照

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