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論文の内容の要旨 氏名:黒

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Academic year: 2021

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論文の内容の要旨

氏名:黒

博士の専攻分野の名称:博士(歯学)

論文題名:Changes in Event-Related Potentials Related to Pattern Recognition of Teeth in Dental Students (歯科学生における歯のパターン認知に関する事象関連電位の変化)

臨床推論は,パターン認知が主要な部分を占めているといわれている。パターン認知は,与えられた刺 激に対して記憶の中にある概念を用いて,意味づけを行い判断することである。パターン認知のプロセス は,物理的特徴などの低次レベルの分析から高次レベルに情報処理を行うボトムアップ処理と,すでに自 分自身の記憶の中にある概念に基づいて高次レベルから情報処理を行うトップダウン処理に大別され,注 意や文脈などの影響も反映するといわれている。

パターン認知に関する研究方法には,脳の認知過程の性質,仕組みを明らかにするため事象関連電位

(ERP)が用いられている。当講座では,以前より歯種鑑別時のパターン認知をテーマとし,解剖学的特徴バ

ロメータの関与や左右鑑別時における自己中心参照枠の関与,また「歯」と異なるカテゴリーである「文 字」や「手」の認知情報処理過程との比較についての検討を行っている。これまで用いてきた被験者の 5 年次生は,歯の解剖学の知識と臨床各科の様々な専門知識を修得し,その知識を活用して患者実習を行っ ていることから,知識と経験を併せ持つ初学者である。しかし,初学者の認知情報処理過程を解明してい くには,経験の有無や知識量の違う人を対象に用いる必要がある。そこで,本研究は臨床実習や臨床科目 を経験していない歯の解剖学の教科書的知識しか持たない初学者の中でも初期段階である学生の認知情報 処理過程を明らかにすることを目的に検討を行った。

被験者は,歯の解剖学を受講した本学部2年次生19名,平均年齢19.5歳の男子学生である。測定条件 は,被験者をシールドルーム内にある椅子に安静な状態で座らせ,頭部を固定し 50cm 前方にあるモニタ ーに試料となる画像を呈示した。視覚刺激である画像をみた際に誘発される脳波信号およびアーチファク トとなる眼電位(EOG)をデジタル脳波計(日本GEマルケット SYNAFIT5800)にて記録し,脳波はFzCz Pz3箇所より導出し,そこからERPを抽出し解析処理を行った。各課題の詳細を以下に示す。

「歯」課題

呈示試料は,頬側が上方を向いた状態を基準として,時計回りに090180270度と回転させた模式 図である。標的刺激は下顎右側第一大臼歯,非標的刺激は上顎左側第一大臼歯,下顎左側第一大臼歯およ び上顎右側第一大臼歯を用いた。

「文字」課題

標的刺激は正立文字「ア」,非標的刺激は正立文字「マ」と「ア」「マ」の鏡映文字の模式図を用いて,「歯」

課題と同様に試料を90度ずつ回転させて呈示した。

「手」課題

標的刺激は右手の第2指,第3指を立てるジェスチャー,非標的刺激は左手の第2指,第3指を立てる ジェスチャー,右手の第4指,第5指を立てるジェスチャーおよび左手の第4指,第5指を立てるジェス チャーの模式図を用いて,「歯」「文字」課題と同様に試料を90度ずつ回転させて呈示した。

各課題について方向の異なる試料を呈示し,P300 潜時,P300振幅,反応時間および正答率を求め,主 観的難度を表した視覚的評価スケール(VAS)も含め比較検討した。また認知情報処理過程の違いを詳細に検 討するため,試料呈示から300ms間と300600ms間の波形について分けて相関関係を検討した結果,以 下の結論を得た。

1.正答率は,すべての課題で90%以上と高く,歯種鑑別において呈示角度による違いはなかった。

2「歯」は,主観的難度が「文字」と比べ有意に高かった。

3.反応時間は,すべての課題で呈示角度の増加に伴い延長し,270度で短縮したことから課題のイメージ を心的回転していることがわかった。

4P300潜時は,すべての課題でほぼ同じ値を示したことから,時間軸においては,呈示角度に関係なく,

同様な脳内処理を行っていることがわかった。

5P300振幅は,すべての課題で呈示角度の増加に伴い減少し,最小値の180度をピークに,270度で増 大したことから,呈示角度によって脳内の処理容量に違いがあることがわかった。

(2)

6「文字」と「手」は0度で弁別しやすい傾向がみられたが,「歯」は角度による違いがなく,鑑別が難し いことがわかった。

7.試料呈示から 300msまでの波形は,すべての課題において呈示角度間でかなり強い相関を認めたこと から,線・エッジ・形状などの基本的な情報処理は同様に行われていることがわかった。

以上のことから,歯の解剖学に関する教科書的知識しか持たない学生は,「文字」と「手」の弁別は,ト ップダウン処理とボトムアップ処理を行っているが,「歯」はボトムアップ処理による鑑別が有意に行われ ているレベルにあることが示唆された。

参照

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