環境職痕 と畷痕担保責任
熊 田 裕 之
Umwe l t f e h l e ru n dS a c h m盆 n g e l g e wa h r l e i s t u ng
Kumat a,Hi r oyuki
Abs t r ac t
De m S c hu l d v e 佃 s r e c htw ir dbe id e rRe gu n e r ung umwel t bez ogenerKonf li kt eweni geBede ut ung z uge me s s e n. Zwa r z a h l td i eRe gu l i e r ung6 ko l o g is c he r Ri s i kenni c htz udenor i g in畠 r enAuf ga bendes Ve rbT a gS r e C ht . Ab e ra uc hd a sVe I 廿 喝S r e C ht be z i e ts i c h m
i t t e l ba ru nd m i t t e l ba ra u fd i eUmwe l t r is i ke n.Ei n Be i s p i e l d a Ri ri s t Sa c l m a n ge l h a L t u ng.
M i td i e s e rAr be i t,u m d i eRo l l ede sVe r t r a gs r e c ht i m Umwe l t r e c htz uf es t s t el l e n,wi r dei nVe r s uc h un t e mo mme n,d i eFr a gez up r u f e n,o bd e rVe r ka de r e i ne rSa c hede n muf e rA i rUmwe l t f e hl e rha f t e t . A ls di e konkr e t e Pr obl ems , ( 1 ) der Be gr i f fdes Umwe l t f e hl e r ,( 2 )d i eAus we i t u n gd e sFe hl e r be g r i f f s a ufGe f a hr e nv e r da c ht ,( 3 )de rGr enz we r tunddi e Wa hr nehmba r kei ta l sFehl e r i ndi ka t or ,( 4 )di e Ge f a hr B be r ga n g,We r de nna c hdi eRe c ht s pr e c hung u ndL it e r a t u ri nDe u t c he l a ndu ndJ a p a n u nt e r ge s uc ht .
序
環境 問題 の解決お よび環境汚染 の予防 に法律 は重 要 な役割 を果 た して きたが、我が 国にお ける環境法 の出発点 となったのは,法律 の中で も,民事法,特 に民法 であ った
1)。我 が 国の環境 問題 の原点で ある 公害の被害者が加害企業 に対 す る損害賠償 の法 的根 拠 とした民法上の不法行為法が、環境法 の生成 と発 展 のス ター トとなったのであ る2 ) 。 しか し、その後、
環境問題 を解決す るため には、損害賠償 とい う方法 で事後 的に被害者 の救済 を図 るだけでは不十分であ り、事前 に環境 の汚染 を防止すべ きである との認識
受領年 月 日 平成 1 2 年 5 月 8 日 長崎大学環境科学部助教授 受理年月 日 平成 1 2 年 9 月 1 8 日
が深 ま り、環境法 の中心領域 は民事法か ら行政法規、
つ ま り公法分野へ と移動 した。現在 では環境法 とい えば、 イコール行政法 といった観 さえある。
しか し、環境問題の解決 に民法が力 を失 ったわけ ではない。他人の違法 な行為 によって環境が悪化 し たため生命 ・身体等 に損害 を被 った場合 には、依然 として不法行為法が重要 な役割 を果 た している
。し か しなが ら、民法 の中で も契約法が環境 問題 の解決 に果たす役割 やその意義 はほ とん ど評価 されること はなか った。環境 問題 を契約法 の視 点か ら研究 した 文献が少 ない ことが、それ を物語 っている
。我が国 の環境法発展 における私法 ( 学)史 をひ もといて も、
不 法行為 に関す る出来事 ばか りであ る3 ) 。現在 出版 されている代表的 な環境法の体系書 のなか に も契約 法 に関す る記述 は見 られない。
こう した こ とは伝統 的 な契約法 の理解 に従 えば当 然 の ことであ る
。す なわち契約法 は人が契約 によ り 私 的利益 を追求す る こ とを保 障す る ものであ って、
環境 といった人の私的利益 を超 える公共 の利益 、あ るいは公共 の リス クをその対象 とす る ものではない と考 え られて きたか らである。環境利益 の保護 、環 境 リス クの規制 は契約法のオ リジナルな課題で はな い とい う考 えが支配的であった。
しか し、契約法 は環境 とまった く無 関係ではない。
契約法 は環境 問題 の解決、環境汚染 の防止 に無力で はない。契約法上 の制度 ・ 理論 に よ り環境保護 に役 立 ち うるのである
。契約法 は環境利益 ・環境 リス ク と直接 的、間接 的 に係 っている。子細 に考察すれば、
従 来、判例 お よび学説 に よ り環境が契約法 の対象 と
されて きたのであ る
。例 えば、マ ンシ ョンの売主は
熊田 裕之
契約上、隣地 に日照 ・ 通風等の環境 を悪化 させ る建 物の建築計画 について調査 ・ 通知義務があるか どう かが裁判で争われてお り4 ) 、 また、契約終了後 も当 事者であった者は相手方の環境上の利益 を悪化 させ てはな らない義務 を負 い続 けるのか
5)、あるいは、
より一般的に契約の当事者 は契約法上、環境安全配 慮義務 一公害防止あるいは環境保全 に配慮すべ き義 務 を負 っているか、 といった問題が文献のテーマ と
して取 り上げ られている6 ) 。 さらに、環境行政の新 たな手法 として公害防止 「 協定 」 を再評価する見解 や、契約 による自然保護に関する論考 も公表 されて いる。 この見解は、規制行政の法的枠組みの中に公 害防止協定 を位置づけようとするものなので、必ず しも民法上の契約その ものの評価 に直結するもので はないが、契約的手法 を環境問題解決のために利用 しようとする新たな動 きではある7 ) 。
このように契約法の視点か ら環境問題の解決 を図 ることは法政策的にみても望 ましい ものであ り、今 後 も環境法の中心 を行政法が占めることは否定で き ないが、環境法 に占める契約法の役割は今 より増す であろう
。なぜ なら、廃棄物処理の問題 に典型的に 見 られるように、従来は自治体の義務 として処理 さ れて きた環境問題が、排出者 と処理者 との契約関係 として処理 されるようにな りつつあるように、環境 問題の処理が民営化の方向に動いている傾向がある か らである。環境問題の解決およびその予防をすべ て国・自治体の義務 とすることは得策ではない。私 人が処理で きる、また、それが望 ましい場合 には、
私人に環境問題の解決および予防を任せるべ きであ る
。公的処理 よりも、迅速かつ効率的に解決が図 ら れるであろうし、自治体の費用軽減 という観点か ら して もメ リッ トがある。 しか し、契約法 にも当然、
限界がある
。本稿では、 こうした基本的認識 に立って、環境 に 関連する紛争 を取 り扱 う契約法上の道具の一つであ る鞍庇担保責任 を取 り上げ、契約の 目的物 に環境 と の関係で欠点 ・ 欠陥,すなわち環境澱庇がある場合 に、塀庇担保責任 を追求することがで きるか とい う 問題 について検討 を加 えることによって、環境梶庇 の判断基準 を明 らかにするとともに、その限界 を指 摘 したい。
Ⅰ 我が国の判例 ・ 学鋭
1.判例
快適な住環境 に対する意識の高 ま りとともに、近 時、売買 目的物である不動産 ( 一戸建建物 ・ 区分所 有建物)に騒音 ・日照・ 眺望 などの環境上の欠点一環 境塀庇があるか どうかが争われた裁判例が増えてい る。ただ し、鞍庇 を肯定 した裁判例 は僅かであ り、
売買 目的物である居住用建物 にまつわる嫌悪すべ き 歴史的背景一建物内で過去 に首吊 り自殺あったこと を原因 とする心理的欠陥を澱庇 と認めた例
8)と、購 入 した分譲マ ンションの南側 に建物が建てられたた めに、売主 との合意で専用庭 に設けた温室の 日照が 阻害 された場合 に塀庇 を認めた例
9)が散見 されるだ けである。平成 3 年 までに下 された、不動産の環境 鞍庇 に関する裁判例 を分析 した潮見教授 は、その特 徴 を次のように指摘する
10)。すなわち、第一に、環 境上の利益が法的保護の対象 となるためには、合理 人の感覚 を基準 として判定 されてお り、具体的買主 の個人的な「 感情利益」の侵害だけで直ちに「 撮庇」と されているわけではない。第二に、堪庇担保責任の 対象 とされる環境上の利益 は、物の使用 ・収益 に伴 うものでなければならず、物の所有 ・占有 を離れて 独 自の評価対象 となる価値 としての周辺環境か らの 利益享受では足 りない というのが裁判例の基本的態 度である。第三に、当該環境上の利益 について売主 の了知可能性 を掛酌する方向性が見 られる。第四に、
動産売買では等価性の考慮が重視 されているが、不 動産の環境鞍庇事例では、 目的物の利用可能性や交 換価値 に着 日し、契約 日的‑の適合性 を考慮 して環 庇の有無が判断される傾向が強い、 という特徴が見
られのである
。平成 4 年以降、不動産の環境梶庇 に関する裁判で 特徴的なことは、売買 目的物である不動産の近隣に 暴力団事務所があることが「 隠れた鞍庇」にあたるか が争われた事案が増えたことである
。以下にそれを 紹介する
。1 ) 東京地判平成 7 年 8 月 29 日 判例 タイムズ 926 号200 貫
不動産業 を営むⅩ会社は、事務所兼賃貸マ ンショ ンを建設するために、同 じく不動産業 を営む Y 会社 か らその所有する土地 を購入 した。 ところが、本件 土地が面する交差点 を隔てた対角線 に位置する建物 に本件売買契約締結前から暴力団事務所があったこ とが明 らかになった。そこで、Ⅹは請求原因として、
詐欺 ・ 錯誤 ・ 契約締結上の過失の他 に、本件土地の存
する地域 は、歓楽街 と異な り、暴力団事務所が存在 す ることが通常予想 されない地域であるか ら、暴力 団事務所が存在することは、売買 目的物が通常保有 すべ き品質 を欠 くことにな り、本件土地の暇庇 にあ たるとして、; 暇庇担保責任 による解除に基づ く代金 の返還 ・ 損害賠償 を Y に求めた。
本判決は 「 小規模店舗、事業所、低層共同住宅等 が点在す る地域 に所在する本件土地の交差点 を隔て た対角線 の位置 に暴力団事務所が所在す ることが、
本件宅地 としての用途 に支障 を来た し、その価値 を 減ず るであろうことは、社会通念 に照 らし容易 に推 測 されるところ」であ り、「 鑑定の結果 によって も、
暴力団事務所の存在その ものが、本件土地の価値 を 相当程度減 じていることは明 らかである」か ら 「 本 件土地は、宅地 として通常有すべ き品質 ・ 性能 を欠 いている もの といわざるを得ず、暴力団事務所の存 在 は、本件土地の梶庇 にあたる 」 として、代金額の
2 割 にあたる損害賠償 を認めた。
2 )東京地判平成 9 年 7 月 7日 判例時報 1 605 号 71 頁
XはYか ら分譲マ ンシ ョンの専有部分及び敷地利 用権 を買い受けたが、同 じマ ンシ ョン内に暴力団の 幹部が住 む専有部分があることが分か り、多 くの暴 力 団貝が出入 りす るな どして、迷惑 を被 っていた。
そこで、Ⅹは暴力団員以外の専有部分の居住者 にと って専有部分の住み心地の良 さを欠 き、居住の用 に 適 さない と感ず るに至っ てお り、その鞍庇 を契約当 時認識することがで きなかった し、客観的にも知る ことがで きなかったか ら、本件専有部分 には隠れた 蝦庇があるとして、澱庇担保 による解除に基づ く代 金返還 または損害賠償 を Y に請求 した。
本判決 は、 まず: 暇庇概念 について 「 民法 5 7 0 条 に い う蝦庇 とは、客観的に目的物が通常有すべ き設備 を有 しない等 の物理 的欠陥が存す る場合 のみ な ら ず、 目的物の通常の用途 に照 らしその使用の際に心 理的に十全 な使用 を妨げ られるとい う欠陥、すなわ ち心理的欠陥 も含む ものであるところ、建物 は継続 的に生活する場であるか ら、その居住環境 として通 常人にとって平穏 な生活 を乱すべ き環境が売買契約 締結時において当該 目的物 に一時的ではない属性 と して備わっている場合 には、同条 にい う蝦庇 にあた るもの とい うべ きである 」 と定義 した うえで、本件 マ ンシ ョンは、暴力団月の出入 り等 によって、通常 人にとって明 らかに住み心地の良 さを欠 く状態 に至 っているもの と認め られ、右状態 は、管理組合の努 力 によって も現在 までに解消 されていないことに加
え、右事情 は もはや一時的な状態 とは言 えないか ら、
本件事情 は本件不動産の澱庇である」 と判断 し、損 害賠償 を認めた。
右の二つの裁判例 にも従来の裁判例の特徴がみ ら れる
。まず、 ともに通常人、すなわち合理人を基準
として鞍庇 を判断 している。ただ、 【11 判決では暴 力団事務所の存在 による不動産価値の低下が主に考 慮 されているのに対 し、【21 判決では、直裁 、心理 的蝦庇 も澱庇概念 に含 まれるとしている
。第二 に、
両裁判例で も、まさに売買 目的物である不動産の使 用 ・ 収益上の支障が環境利益 の問題 として論 じられ ている。第三 に、両裁判例では、買主の特別な利用 日的が問題 になっているわけではないので、売主の 了知可能性 とい うものは特 に論 じられていないが、
売買 目的物である不動産の近隣に暴力団事務所が存 在 しない とい うことについて売主は了知可能であっ た といえるであろう
。第四に、 目的物の利用 目的が 考慮 されているのは もちろんであるが、暴力団事務 所があることによる価値の低下が問題 とされている ので、等価性 も裁判例では考慮 されている
。2. 学説
塀庇の判断基準 について我が国の通説は、後 に取 り上げる ドイツの通説 と同 じく、塀庇の有無 を第一 次的に当事者の合意 または当事者が契約上前提 とし た使用 目的への適合性 により、それがない場合 には 当該物の通常の使用 目的‑の適合性 により決定す る 主観的一客観的鞍庇概念 を採用 しているので、一般 的に、物 と環境 との関係 もそれが長期 にわた り、か つ、使用性 に影響 を与える可能性がある限 り蝦庇の 基準 とな りうる と解釈 されている1 1 ) 。具体的 に も、
住宅 に とって 日照 ・ 通風 ・ 眺望 ・ 騒音等の居住環境 の
いかんはその性能の判断上欠 くべか らざるものであ
るか ら、合意や契約上の前提がな くて も、住宅 とし
て通常有すべ き品質 ・ 性能に含 まれる と明言す る見
解 もある
12)。 しか し、近時は、裁判例 における環境
程庇 は契約締結後 に生 じてお り、原始的なものでは
ない との理由で、環境鞍庇 に民法 5 7 0 条戦痕担保責
任 は適用すべ きではない と解す る説 1 3 ) や、主観的暇
庇 に鞍庇担保責任 は適用 されない とす る説1 4 )さらに
は環庇担保責任が 目的物 と代金 との等価関係 を調整
する機能 を有 していることに鑑みて、環境澱庇の場
合 には対価的均衡 とい う観点を抜 きに して蝦庇担保
責任 を拡大す ることになるか らとの理由で、環境鞍
庇 を一般的に鞍庇担保責任 に取 り込むことに否定的
な見解 もある1 5 ) 。 また 、5 7 0 条の適用 を認め るとし
熊田 裕之
て も特殊 な事案 一隣地所有者 との契約 を第三者 に対 抗で きない とい う特殊性 ‑が存在する場合 に限定す べ きであるとす る説1 6 )や、契約締結時における潜在 的な澱庇の存在 を認めるが、少 な くともその時点 に おいて隣地の具体的な建築計画が存在する場合 に限 って認める説
17)が主張 されている
。Ⅰ ドイツ民法における噸庇概念
1. 噸庇概念 とその判断基準
ドイツ民法 ( 以下 BGB と略記)では、物の売主は、
その危険が買主 に移転する時点で、通常の または契 約で前提 とされた使用 に対する価値 または適性 を消 滅 または減少 させ る 「 欠点 ( Fe hr e r ) 」 について塀 庇担保責任 を負 わなければならない ( 45 9 条 1 項 1 文)。 ただ し、価値 または適性 を僅 かに減少 させ る に過 ぎない欠点 について責任 を負 わない ( 同項 2 文)。 また、危険移転 の時点で保証 した性質 につい て も責 任 を負 わ な けれ ば な らない とされ て い る ( 4 5 9 条 2 項) 。担保責任の内容 は、代金減額 と解除で あるが、売主が保証 した場合お よび欠点 を悪意で黙 秘 した場合 には、買主は代金減額 または解除に代 え て不履行 に基づ く損害賠償 を請求することがで きる ( 46 3条) 0
物の欠点の対象 について、判例 ・通説 は、物それ 自体 に内在する ものだけでな く、物 と外界 との事実 的関係 にも及ぶ と解 している。例 えば、ある土地か ら特定の山が眺望で きることはその土地の性質 を構 成するか ら、山 との間にその眺望 を遮 る建物が建築 される可能性が存在 したことは売買 された土地の蝦 庇 にあたるとして、 目的物の環境が欠点の対象 にな ることが判例 によ り認め られている
18)0「 欠点」 の 判断基準 について ドイツの判例 ・ 通説 は、物の 「あ るべ き性状 ( So l l be s c ha f fe nhe i t ) 」 と 「 現 にある性 状 ( I s t be s c ha f fe n he i t ) 」 との間に買主 に不利 な尭離 が存在 す る こ とであ る と定義 してい る1 9 ) 。 そ して
「あるべ き性状」の程度 については、主観的‑客観 的環庇概念説 と客観的鞍庇概念説が対立 している。
判例 ・ 通説の立場である主観 的一客観 的塀庇概念説 ( 以下、単 に主観説 と略記) によれば、物の 「 ある べ き性状」 は次の三つの基準 によって定 まる2 0 ) 。す なわち、第一 に保証がある場合 には、保証内容 によ り目的物のあるべ き性状が定 まる
。保証がない場合 には、第二 に、契約上前提 とされた使用 に対す る適 性が基準 となる
。その前提 を欠 くときは、第三 に、
通常の使用 に対する価値 または適性が基準 となる。
これ に対 し、客観 的鞍庇概念説 は、物 に欠点があ るといえるためには、 まず物ががその物 として通常 有 していなければならない性質 を欠いていなければ ならず、契約上前提 とした使用 に適するか どうかは 二次的な判断基準 にす ぎない と解する
21)。主観説の判断基準 は一見すると条文上明確 に見 え るが、環境澱庇 との関係で主観説の支持者のなかに も次 の ような疑問や異論が提起 されている
。まず、
第一の基準である保証、す なわち BGB45 9 条 2 項の 枠内における従属的性質保証は、売主の責任が危険 移転時 まで とされていること等 に鑑みれば、あ くま で も売主の支配下にあ り、売主がその実現 につ き影 響力 を有する性質 について成立 し、売主が影響 を及 ぼす ことので きない環境的要素は従属的保証の枠外 にあるとされている
22)。以上の ことは第二の基準 に ついて も当てはまるであろう。契約の当事者 は 目的 物が環境お よび健康 に適 した性質 を有す ることを契 約上の前提 とす ることがで きるが、あ くまで も契約 の当事者が 目的物の環境適性お よび安全性 について 支配 を及 ぼす こ とがで きる場合 に限 られるのであ る。 なお、欠点は物の価値 を消滅 または減少 させ る ものでなければならないが、その価値 とは交換価値 の ことであるか ら、環境意識の高い買主が個人的に 目的物 に環境価値 を置いていた として も、擬症 には あた らない2 3 ) 0
鞍庇 の第三の判断基準 となる通常性 ・ 標準 とい う 概念 も、環境環庇の判断においては説得力 に欠ける ものであるとい う批判がある2 4 ) 。例 えば殺虫剤 に含 まれている化学物質は人体 にはまった く含 まれてい ない、つ まり人体 にとってはゼロであるか ら、殺虫 剤 は常 に欠点のあることになって しまい、妥当では ない。すべての有毒物質 ・ 環境負荷 が必ず しも環痕 にあたるわけではない。危険ゼロはあ りえない。環 境危険 を受忍すべ きか否かは、通常値 だけで決め ら
れる ものではな く、例 えば、経済的な必要性や社会 的 または個人的な受容性 によって決 まる。また逆に、
通常値であって も、健康侵害 を生 じさせ る ものは受 忍限度 を超 える もの と考 えるべ きである。 さらに、
通常性 ・ 標準性 といって も、例 えば場所、性、個人、
学問的根拠 によって変わる催であるか ら、絶対的な 基準 として利用 し難い と批判 されている。
2. 危険の疑い ( 疑惑 ・ 不安)への噸庇概念の拡大
売買の 目的物が健康や環境 にとって危険な性質 を
有 しているか もしれない との疑いがある場合 に、現
にその事実が確定で きな くとも、危険の疑いだけで 梶痕 を肯定することがで きるか どうかが ドイツでは 争われている。 この間題が争われた著明な事件 にサ ルモネラ菌 に汚染 されたウサギ肉事件がある2 5 ) 。被 告 Y は原告 Ⅹか らウサギの肉を転売 目的で購入 し、
引渡 を受けた。 Ⅹは契約の時 に肉の原産国 を Y に伝 えなかった。 ところが、その肉はサルモネラ菌 に汚 染 されている疑いがあるアルゼ ンチ ン産の肉である ことが判明 したため、市の保健局 により差 し押 さえ られた。その後 、 Ⅹが肉の一部 について専 門家 に検 査 を依頼 した ところ、汚染の事実がなかったので差 押 えが解 かれた。 しか し、その後、再 び、新聞で、
汚染 されたアルゼ ンチ ン産の肉が輸入 されたことが 報道 された。 Yは転売することがで きな くなった と して、肉の引取 をⅩに要求 した。逆 にⅩは代金の支 払いを求めて訴えを起 こした。
この裁判では、危険移転の時点で肉に蝦痕があっ たか どうか、 したが って Y が解除で きるか どうかが 争点 となった。 Ⅹは肉が現 にサルモネラ菌 に汚染 さ れていたことが確定で きなければ、蝦庇 はない と主 張 した。連邦通常裁判所 は、以下の理由により、本 件事情 の下では肉に BGB45 9粂 1 項 の意味 における 蝦痕があるとみなす ことがで きると判断 した。すな わち、a ) 本件売買契約が締結 される以前 に、既 に相 当量のアルゼ ンチ ン産の肉が汚染 されている事実が 確認 されていた。 こうした具体的かつ重要 な事実が あるので、本件肉の中に汚染 されている肉が含 まれ ている との疑いを抱 いた として も無理か らぬ ものが あ り、その疑いには十分 な根拠がある
。肉の一部 に ついて汚染 されていない との専 門家の検査結果が出 た として も、 Y の疑 いは取 り除かれなかった。疑い を取 り除 く唯一の方法 は引渡 を受 けた肉全部 につい て検査 をすることであろうが、それには間違いな く 商品以上の費用がかかるであろうか ら、その検査 を Y に期待す る ことはで きない。 b) 危険移転時 に既 に存在 していた、肉を転売することがで きない とい う本件の蝦庇 は、商品それ 自体 に基づ くものであ り、
商品の価値評価 に とって重要 な物的関係 に基礎 をお くものである
。本件 の ような事情の下ではこうした 澱庇 も BGB45 9 条の広い輯庇概念 にふ くまれる
。し たが って、 Y は BGB4 6 2 条 によ り解除す ることがで きると判示 した。
本判決は、具体的かつ重要 な事実 に基づ き、売買 目的物の危険性 につ き疑いを抱 き、かつその疑いを 容易 に取 り除 くことがで きない場合 に、 目的物の澱 庇 を容認 した ものである
。危険移転時に有害物質が
含 まれていた事の証明は必要 とされていない。
連邦通常裁判所 は、 この判決で危険移転時 に蝦庇 は既 に存在 していた と解 したがその理由を明 らか に していなかった。しか し、連邦通常裁判所はその後、
上記事案 と同 じく、転売 目的で購入 したウサギ肉が サルモネラ菌 に汚染 されているのではないか との疑 い を引渡後 に抱いた事案で、塀庇が危険移転時の存 在 したか どうか を決定す る基準時は、環庇が顕在化 した時ではな く、蝦庇の原因が生 じた時である、換 言すれば、汚染 されているか もしれない との嫌疑が 危険移転後、つ ま り引渡後 に生 じた場合であった と して も、その嫌疑 を基礎付 ける事実が、知 られては い なか ったが既 に危険移転前 か ら存在 す る ときに は、危険移転時に蝦庇が存在す ると明言 した2 6 ) 。
さらに、連邦通常裁判所 は、ワインが売買 された 後 にグリコールが含 まれているのではないか との嫌 疑が生 じた事案で、 ウサギ肉判決で示 した要件 を一 部変更 し、引 き渡 された商品は健康 を害する性状 を 有す る との嫌疑が生 じていた として も、後 日、その 疑 いが根拠 のない ものである事が判明 した場合 は、
物 に鞍庇 はない と判断す るに至 った2 7 ) 。
この ように危険の疑 いに拡大 された梶庇概念 は、
環境 に関連す る他の契約類型 に も適用 されている。
一例 を挙 げれば、発癌性のあるコークスの残淳が埋 め られている土地の賃貸借 に関する事案で、貸借人 が損害 を被 って初めて程庇 となるのではな く、賃借 人が危険が現実化するおそれの中で賃貸物 を利用 し ているとい う理由だけで澱庇 にあたるとした裁判例 がある ( ただ し、根拠のないおそれは除 く) 2 8 ) 。
以上の ように、判例では、 目的物の危険が移転 し た後 に、その物が健康 または環境 にとって危険な物 質 を含 んでいるとの嫌疑が生 じた場合、( ∋買主や貸 借人 に期待 しうる措置 によってその疑いを払拭す る ことがで きず、かつ、( 参引渡後 にその疑いが根拠の ない ものである事が判明 しなかった ときには、現 に その物 に有害物質が含 まれている事が積極的に証明 されな くて も、その物の梶庇が肯定 されている
。鞍庇が認定 されるためには、 まず、疑いを抱いた 者がその疑いを払拭す るために期待 しうる措置 をと らなければならない。 しか し、あ くまで も期待可能 な措置 に限定 される。判例 は、 ウサギ肉事件 におい て、費用の面か ら期待可能な措置 を限定 しているが、
これはアル トラステンの場合 にも適用 しうる
29)。
第二の要件 として、疑いが根拠のある ものである
か どうかが基準 とされている
。単 なる疑いでは蝦庇
にあた らないのである
。しか し、 この判断は非常 に
熊田 裕之
難 しい。売買 された土地が過去 において産業用地 と して利用 されていた土地であることは、アル トラス テンであるか もしれない との疑いを生 じさせる根拠 となる
。また、ある物質が土壌中に存在すれば疑い もな く処理の必要なアル トラステンになるであろう 物質を使 っていた、あるいはそれを製造 していた工 場が過去 にその土地に存在 していたとい うことが確 認 された場合 にも、疑いの根拠 となった具体的な事 実を承認すべ きであるとされている3 0 ) 。
しか しなが ら、多 くの場合、疑いの根拠 を科学的 に証明することは難 しい。裁判例 には、立証の負担 を軽減す るため、、有害物質 によって汚染 されてい る可能性のある土地が問題 となった事案 において、
これが BGB6 3 3 条の意味における取庇 にあたるかに つ き、地中のごみか ら人間お よび地下水 にとっての 危険が生 じていることを究極の確実性 をもって排除 することがで きない以上、澱庇があると判示 した も のがある
31)。
3. 噸庇の判断基準 としての限界値
判例では、暇庇の判断基準である 「 あるべ き性状」
の基準 として、ある物質の限界値、例 えば法律で定 め られている有毒物質の最高濃度、私的または公的 に基準化 された限界値、更には公的機関による推奨 億が よく用い られてお り、契約上の給付がその値 を 上回っているときは、畷庇の存在 を肯定する傾向が ある。 とりわけ賃貸借や請負ではこの傾向が明白で ある3 2 ) 0
例 えば、「 飲料水法 に規定 された限界値 を超 えれ ば畷庇 となる。それによって事実上客観的に健康上 の危険が生 じるか どうかは重要でない。飲料水法 に 規定 された限界値 を上回る硝酸塩の負荷 により素人 である消費者が健康 に重大な影響 をもたらすのでは ないか と疑いを持 ったことが環庇の判断においては 決定的なことである
。当該事件 においては具体的な 健康危険は存在 しない とい う専門家の鑑定 も、その ことを変 えるものではない 。 」 と解す る裁判例があ る3 3 ) 。 また、 フォルムアルデ ヒ ドを放散する木材部 品を使 って制作 した家具や建物 に請負契約や賃貸借 契約上の鞍庇があるかが争われた事案で も、限界値 が畷庇 の判 断基準 として利用 されてお り、例 えば
「 危険物質令 ( Ge B d l r S t O 瓜r e r o r dn ung)に定め られて いる限界値 は、請負人の撮庇担保責任 につ き、使用 する木材が決 して超 えてはな らない最高値であ り、
それを超 えた場合 は、取引通念 に従 えば、請負 に暇 庇があるとみなされる」 とした裁判例がある3 4 ) .法
律や命令だけでな く、推奨 された億が重要 な基準 と して使われ、その値 を下回る場合 には鞍庇がない と 判断されている
35)。
しか し、多 くの判決では限界値 を判断基準 とする ことについて法的な説明や理由付 けはおこなわれて いない。限界値への依拠 は自明の もの として行われ ているか、法的安定性お よび法的明確性 に基づ き、
健康への危険に対する規範的な要件 を定めるのに最 も有用であるとい う実際的な理由により限界値が用 い られている。有害物質の限界値 を定めた諸規定は、
もちろん直接 的 に売買、請負 、賃貸借 の 目的物 の
「あるべ き性状」 を定めた ものではない。それ らは 公法的性質の ものである
。しか しなが ら、主観的一 客観的梶庇概念の もとで、明示 または黙示の性状合 意がない場合 に、取引通念上、給付の 「 あるべ き性 状」 を確定す る基準 として役 に立つ限 りにおいて、
私法上の契約 にとって も意義 を有す るものであると 判例では考えられている3 6 ) 。
学説 において も、限界値 を擬症の判断基準 とする 判例の基本的傾向は承認 されているようであるが、
限界値 を唯一の基準 とすることには異論がある
。た とえば、私法が公法 により影響 を受ける事 を認めな が らも、公法 に対する私法の 自治 とい う観点か ら、
判例の傾向に異 を唱える見解3 7 ) 、あるいは、公法上 の限界値 は危険の疑いを肯定する一つの指標 として の効力 しかな く、限界値 を遵守 していた場合で も、
物 には健康 を危殆化する危険が十分あるとされるこ とがあるので、公法上の限界値お よび行政上の推奨 億 に絶対的な意義 を付与することはで きない と主張 されている3 8 ) 。 また、裁判例 のなかに も、「 撮庇担 保責任 にとって重要な畷庇概念 は、危険物質令 に定 め られている限界値 によって正確 に確定 された り、
制限された りしない。同令 は請負契約の 目的物が木 材 によって完成 された物である場合 に、そのあるべ き性状の必要条件 を直接的に定めた ものではない。
同令 は化学薬品法 ( Che mi ka l ie nges e t z ) に基づいて 制定 されたものであるか ら公法上の性格 を有するも のである。従 って、民法上の梶庇担保責任は、危険 物質令 に規定 されている限界値 を超 えたか否かでは な く、 フォルムアルデヒ ドの放散お よびそれに伴 う 健康侵害のゆえに住居 に居住す ることをもはや期待 することがで きないか どうかによって判断 される」
と解 した もの もある3 9 ) 。
4. 噸庇の判断基準 としての感光可能性
契約の 目的物 に健康や環境 にとって有害な物質が
含 まれてい る場合 、買主 ・ 賃借 人等 は喉 の痛 みや咳 が出るな どその危険性 を感覚 で知覚 で きるこ とがあ る
。ドイツの判例 で は蝦庇 の確定 に感覚可能性 とい う基準 が用 い られてい る
。侵害が既 に感覚 的 に確定 で きる ものである場合 には、 もはや限界値 を超 えて い るか どうかは重要 で な くなる
40)。 しか し、客観 的 に受忍 で きない程度以上 で感覚 された もので なけれ ばな らない。
では、当該個 人が主観 的 に特別 な感受性 を有 して い る場合 には、それは頼庇 の確 定 に どの ような影響 を及 ぼすであろ うか。裁判例 には この点 に関 し対立 す る ものがあ る
。フォルムアルデ ヒ ドの放散 による 侵害 に関 して、特別 な感受性が一定 の役割 を果 た し てい ることを完全 に排 除す るこ とがで きなか ったに もかかわ らず、客観 的 に知覚 しうるフ ォルムアルデ ヒ ド等 の嫌 な匂 い を畷庇 と判 断 した裁判例
41 )がある 一方で、同 じくフォルムアルデ ヒ ドの放散 に関 して、
大多数の人 々に とっては侵害 にな らないが、特 に感 受性 に強い人 に とってだけ侵害 となる場合 には、澱 庇 にあた らない と判断 した裁判例 もある4 2 ) 。
なお、人が感覚 しうる場合 であ って も、有害で な い感覚 的侵害、経済的 または 自然保護 の理 由 によ り 回避す るこ とので きない感覚 的侵害 は受忍 しなけれ ばな らない。 た とえば、銅製 の水 道管 か ら流 れ出る 水 によ り無毒 の喚覚侵害 を被 った として も鞍庇 には あた らず4 3 ) 、 また、触媒 として用 い られていた硫化 水 素 に よ り腐 った卵 の ような匂 いが して も、当時の 技術水準 で は回避す るこ とはで きず また危険 はない ので、逆 に有害物質削減のため に受忍 しなければな
らない4 4 ) 。
以上の ように、感覚可能性が澱庇 の判 断基準 とし て用 い られてい るが、環境 に とって危険で有毒 な物 質 は、ほとん どの場合 、知覚で きない ものなので、基 準 としては限界があ る と指摘 されている4 5 ) 。
5. 危 険の移転時
BGB45 9 条 に よれば、売買契約 の 目的物 に蝦庇 が あ ったか どうかは、危険が移転 した時、す なわち原 則 と して引渡 の時 ( 4 46 条 1項 ) を基準 として決定 され る
。使用賃貸借 で は賃借物 を貸借 人 に委 ねた時 (z urz ei tdert J ber l a s s ung) 、 請 負 で は 引 取 ( Ab na l m e) の時である
。この ように塀庇 の判 断時期 は明文 を もって定 め ら れているが、人体 または環境 に とって有害 な物質の なか には、引渡 の時点で は契約 の当事者 は もちろん の こと一般 の人々 もその危険性 を認識 してい なか っ
たが、その後の科学 の進歩 によ りその危険性 または 危 険性 の疑 いが認識 で きる ようになる場合 が あ る。
判例 は、 こう した場合 で も、給付 には最初 か ら梶庇 が あ った と判 断 してい る
46)。 た とえば 「 性状 を評価 す る際 には、後 に得 られた科学上 または技術上の認 識 も考慮 しなければな らない。請負企業 は、請負給 付 に仕事 の引取 の後 には じめて認識 され るに至 った 鞍庇 が付着 してい ない こ とについて も結果責任 を負 わ なけれ ばな らない」 と明言 す る裁判例 が あ る4 7 ) 。
しか し、 これ を否定す る裁判例4 8 )もあ り、かつて コ ー クス製造 のため に利用 されていた土地が売買 され た事案で、その土地 には建物 を建築す ることがで き ないあるいは著 しく制 限 され ることが引渡後 には じ めて判明 した場合 、 アル トラステ ンは売買契約 の履 行後 には じめて認識 された との理 由で、危険移転 時 における土地の三 股庇 を否定 した。本件土地が売買 さ れたのは 、1 9 7 2 年 の こ とである
。この土地 は 1 9 世紀 か らコー クス製造工場 お よびア ンモニア工場 として 利 用 され て い たが 、1 929 年 に操 業 が停 止 され た
。1 9 7 2 年 当時、工場 の操業 による土壌汚染 お よびそれ が健康 に とって危 険 な ものであることは、知 られて いなか った。買主 は 1 9 8 6 年 に建築 を開始 したが、取 得 した建築確認 には土壌 浄化 の負担条項がついてい た。判決で は、澱庇 は 1 9 7 2 年 の後 に、す なわち危険 の移転後 に初 めて知 られた、す なわち鞍庇 が生 じた
との理 由で、畷庇担保責任 を否定 した。
この判決 は、当然 の ご と く、学説 によ り批判 され た。例 えば 、Re u t e rは、売買 目的物 に危険の移転 の 時点で鞍庇 があ ったか否 かは、その時点 における認 識可能性 で な く、鞍痕 の発生 の起源 によって決定す べ きであ り、た とえ澱庇 が認識 されたのは危険移転 後であ った として も、危険移転前 に鞍庇 の原 因が存 在 していれば、いわゆる潜在 的 な暇庇 が肯定 される と主張す る。ただ し Re ut e r 、土壌汚染 の事実が改良 さ れた検査方法 によ り危険移転後 には じめて証明で き た場合 には、澱庇 の存在 を肯定すべ きであ るが、危 険移転後 の環境意識 の変化 に よって土壌浄化すべ き アル トラステ ンであるこ とが承認 された場合 は、危 険移転後 における法律 上 の要件 の増加 は買主の負担 に属す るか ら、鞍庇 を否定すべ きである と解す る
49)。m o c he はこの説 を次 の ように批判す る5 0 ) 。す なわち、
ここ 2 0 年 間で高 まったアル トラステ ンに関す る環境 意識 は、時代 の精神 の変化 に起 因す る ものではな く、
今 日アル トラステ ンと確認 されてい る物 質が どの程
度の毒性 を有 し、環境 や人体 に とって危険 な もので
あ りのか を知 りうる ようになったのは、つい最近 の
熊田 裕之
ことに過 ぎない。売買 された土地の澱庇 は、本件で は、環境や健康 に とって危険 な土壌 の性質その もの である
。これは、危険移転の前か ら存在 していたの である。土壌 が汚染 された後 に売買 された土地 は、
た とえ当時の不完全 な評価方法や知識 によって土壌 中の物 質の危険性 が認識 され てい なか った と して も、危険移転時 において危険が潜在 していたのであ るか ら、潜在 的な輝庇がある といえるのである と主 張する。
結びに代 えてI E l本法への示唆
前章で論 じた ドイツ民法上 の環境鞍庇 の概念お よ びその判断基準 は、我が民法の解釈 にとって有用 な ものであろ うか。 もちろん、両輝庇担保法の間には 要件 ・ 効果上 の差異があ るので、前者 を後者 にその まま持 ち込 むことはで きないが、我が国の判例 ・ 通 説が支持す る梶庇概念 は、 ドイツ法の影響 を強 く受 けた ものであるこ とに鑑みれば、環境輝庇 について も、以下 に概略す るように、 ドイツ法は 日本法の解 釈 に有用 な示唆 を含 む ものであるといえよう
。第一 に、売主が責任 を負 わなければな らない粧庇 は、売主が支配影響力 を有す る環境撮庇 に限 られる とい う点は、我が国において も同様 に解すべ きであ ろう。粧庇担保責任 は確 かに無過失責任ではあるが、
いかなる環境の変化 について も売主 に責任 を負 わせ るものではない。支配影響力の及 ばない環境蝦庇 に ついて まで責任 を負 わすべ きではない。ただ し、注 意すべ き点がある
。我 が国では、住宅 ・ マ ンシ ョン の売買 において契約後の 日照や眺望 を阻害す る建物 が隣地 に建設 された場合 に、売主 には隣地への支配 影響力がない との理由で、蝦庇 を否定す る考 え も可 能であるが、既 に建築計画が立て られている場合 に は、その実現 によって隣地ではな く、売買 目的物の 環境 に影響が出るのであるか ら、 この場合 には梶庇 を肯定すべ きである。 この間題 は、あ くまで も目的 物 自体 の支配影響力の問題 として考 えられるのであ る
。第二 に、根拠のある危険の疑いだけで澱庇 を肯定 す ることがで きるか とい う問題 については、我が国 には裁判例が存在せず、 これに関す る学説 も見当た らない。 日的物 自体 に鞍痕 が付着 していない以上 、 い くら根拠 のあるもの とはいえ、程庇がある との疑 いだけで澱庇担保責任 を肯定することは難 しいであ ろう。
第三 に、限界値 を撮庇の判断において考慮するこ とは、従来の我が国の裁判例 にもみ られることであ
†
り、異論はないであろ う
。第四に、感覚可能性 は澱庇 の判断基準 である受忍 限度 を超 えているか どうかの評価 において考慮すべ
きであろう。
第五 に、塀庇が顕在化 したのは危険が移転 した後 であって も、その原因が既 に危険移転前か ら存在 し ていた場合 には、我が国において も環庇 を肯定すべ きである
。ただ し、危 険移転後の科学技術 の発展 、 あるいは法律 の改正 によって 目的物が塀庇ある物 に なった と して も、売主 に責任 を負 わすべ きで はな
い 。