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2018年度 国際文化情報学会 各部門最優秀賞・奨励 賞

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Academic year: 2021

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2018年度 国際文化情報学会 各部門最優秀賞・奨励

著者 法政大学 国際文化学部

出版者 法政大学国際文化学部

雑誌名 異文化. 論文編

巻 20

ページ 1‑110

発行年 2019‑04‑01

URL http://hdl.handle.net/10114/00021672

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ポスター部門

「地域」で生きる

エコネット・美(ちゅら)

― 基地に頼らず命の自立

今泉裕美子ゼミ

河 原 裕 子   小 林 寛 子   長 澤 穂 乃 花

奨励賞

報告の目的

今泉ゼミでは 2018 年 8 月に沖縄県でゼミ合宿を行 い、名護市にあるエコツアーグループ「エコネット・

美」を訪れた。その際に設立者の 1 人である輿石正さ ん、娘のアンナさんからお話を伺った。エコネット・

美の経験をきっかけに、遠く感じていた沖縄・辺野古 新基地建設問題に関心を持ったことから、同グループ が掲げる「基地に頼らず命の自立」とは何かを考察す る。先行研究としてエコツアーの視点からエコネット・

美の独自性や存在意義を考察した石川紗衣花の「基地 からの自立の手段としてのエコツーリズム-エコネッ ト・美にみる地域の自立-」を用いる。

エコネット・美と嘉陽という「地域」

エコネット・美は沖縄本島北部名護市嘉 陽で、エコツアー「じんぶん学校」を運営 しているグループである。嘉陽は、辺野古 とともに旧久志村 13 区の 1 区を構成し、名 護市街から山を隔てた太平洋側東海岸の小 集落である。2015 年現在人口 73 人中、65 歳以上は 34 人という過疎地だが、ジュゴ ンやウミガメが訪れるサンゴ礁、イノシシ、

アカショウビンを育む山に囲まれた、本島 でも稀有とされる自然豊かな地域を持つ。

住民たちは主に稲作で生計を立てていたが、 出典: 名護市役所「年度当初の行政区画および世帯数(平

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生活の中で海とも関わってきた。その地に「基地を持ってこさせない地域おこし」を目指し て 1998 年に設立された。

沖縄県東海岸という地域

沖縄県東海岸は経済面において貧しい地域である。主な大型リゾートや観光地は西海岸に 集中しており、東海岸は開発が進んでおらず、手付かずの自然が多く残る地域である。1970 年代には石油備蓄基地(CTS)と原子力発電所建設の計画が持ち上がり、これに反対する住 民運動が起こった(CTS 闘争)。

エコネット・美での体験

「じんぶん学校」とは、火おこし、島豆腐作り、シュノー ケリングなど沖縄の自然を活かしたアクティビティが 体験できるエコツアーである。「学校」といえども体験 すべきことが順序立てて決められているわけではなく、

何をするか、どう過ごすかは参加者自身に委ねられて いる。「言葉にならぬものを体中深く染み込ませたガイ ドという人間と、お客さんというまた別の言葉になら ぬものをもった人間との交流」が活動の核であり、こ れは他のエコツアーとは違う、じんぶん学校ならでは の活動ということができるのではないだろうか。子供 向けの「こどもじんぶん学校」、修学旅行、大学のゼミ 合宿、家族旅行など老若男女が参加できる。

命薬(ヌチグスイ)−沖縄の方言で「食べもの」−

自分たちで火をおこし、食材を集め、調理していただく。島豆腐作りでは臼で大豆を少 しずつ挽いて、ニガリには海水を使った。自分たちの手足を動かして作った、添加物を使 わない料理は、特別に美味しく感じた。

ヌーファの浜−嘉陽の住民の共有の浜−

ウミガメやジュゴンが訪れ、何千年も生きているサンゴや色とりどりの魚たちが泳ぐ美 ら海。ウミガメが生きられなくなるということは、自分たちの命も脅かされるということ である。自分たちの命を守るためにもウミガメの産卵する浜を守っている。

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山原(ヤンバル)−共存してきた自然−

じんぶん学校の設備はスタッフの手づくりで、自然の恩恵を享受してきた先人たちの知 恵に基づいて作られている。じんぶん学校に向かう山道は、土砂崩れを防ぐために、木の 根を傷つけないように作られている。

エコネット・美の「じんぶん」

エコネット・美のガイドの方々は、「難儀」、「愛着」、

「人間力」という言葉を繰り返し用いている。あえて 面倒をかけて、「難儀」して作ったものだからこそ、「愛 着」が湧き、それを守っていこうという気持ちが生ま れてくる。

沖縄の米軍基地建設への見返り振興策として名護市 に作られた、国立沖縄工業高等専門学校や国際海洋 環境情報センターにはその過程が抜けており、 その結 果住民の生活には直接関わりのない「箱モノ」だけが 残ってしまう。「人間力」とは、全身で自然に働きかけ、

お金に頼らず手や足で自然と関わり、ものを作り、家 族や地域のみんなで助け合い、自然の恵みをいただい て成り立たせる「じんぶん」である。

つまり、エコネット・美の「じんぶん」とは、おじい・おばあが自然と共生する中で培っ てきた知恵であり、沖縄がたどってきた 歴史の中で積み上げられてきた生きるための知恵 である。

エコネット・美、3 つの実践 地域おこし

名護東海岸側の歴史、ウミガメが来る浜などの自然とともに生きるという文化と、住民が 出資して運営する共同販売店を地域ごとに運営してきた経験を踏まえて、自然と伝統文化を 守り、この地域にふさわしい豊かさを作り出していくことが「じんぶん」である。エコネット・

美は名護市嘉陽に基地を持ってこさせない地域おこしを掲げ、その起爆剤として持続可能な 地域づくりを実践している。普天間の米軍基地を辺野古沖に移設するうえでの「見返り振興 資金」に頼らないために、過疎化した嘉陽で地元に根差した経済活動によって、 若者の雇用 を生み出すこともエコネット・美の目的である。

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自然保護

自然資源を活用しながら保全を図ることは、地域社 会が当たり前のこととしてやってきたことである。し かし、地域の文化や生活習慣を深く理解していない、

あるいは理解したつもりでいる外部の者が介入し、取 り決めを作って自然を保護しようとなれば、伝統は失 われ、地域の同意は得られずうまく機能しない。まず、

「自然は守るべきもの」という先入観に縛られた自然 の捉え方を根本的に疑う。「自然を大切にしたいと思 うには、まず自分が自然の中に入って自然を知り、く らしと自然のつながりを感じること」が大切であり、

エコネット・美はそれを実践している。エコネット・

美における自然保護とは、自然治癒力が有効な範囲内 で自然の恩恵を受けて生活することである。これは、

自然をありのまま残すこととは違う。生き物の命をい

ただくという謙虚さや、先人たちが自然とどう関わってきたかという「じんぶん」をもとに、

現代の暮らしに合わせ、暮らしをみなおしながら、自然を活用し保護することを実践している。

「基地に頼らず命の自立」

エコネット・美の活動は、「基地に頼らないこと」

と「命の自立」を分かち難いものと考えて実践してい る。基地があったがゆえに、沖縄の人びとは沖縄戦を 経験し、ベトナム戦争に加害者の立場で関わるという 認識ももつようになった。食べていくためや安全保障 のためといった理由にかかわらず、戦争につながる基 地を支え、戦争に関わることに苦しんだ人々の経験か ら得た「じんぶん」である。基地は人の命を奪うため の場所であり、基地で働くことや、基地を置くことは、

戦争につながる。つまり、基地に頼るとは間接的に戦 争に加担していることであり、基地を持ってこさせな いこと により自分の命も、「脅威」とされている相手 の命も守る ことになる。

また、エコネット・美が対象としている命は人間だ

けではなく全ての生物、自然である。人間は他の生物、自然に支えられてこそ生きている。

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基地建設により、ウミガメの来る浜や豊かな海、自然が破壊されることは、人間が命の支え を失うことであり、その代わりに政府から与えられるお金に依存することで、生きていくた めの「人間力」が失われてしまう。エコネット・美は沖縄の歴史的経験から基地の存在を否 定するとともに、地域おこしや自然保護の実践を通じて、「基地に頼らず命の自立」を実現さ せようとしている。

結論

エコネット・美でのわたしたちの体験をきっかけに、

遠く感じていた沖縄・辺野古での新基地建設問題に関 心を持ち、同グループが掲げる「基地に頼らず命の自 立」を考察した。基地とは命を奪うための場所であり、

命の自立を阻むものであった。沖縄の歴史的経験を通 じて、沖縄の人びとは人を殺す機能を持つ基地の存在 を否定している。加えて、基地建設により、護岸工事 や水質汚染が起こり自然環境に影響を及ぼす。ウミガ メやジュゴンの来る豊かな海が破壊されることで、人 間が海の恵みを受けられなくなることにもつながる。

また与えられたお金をもらい生活していくことで「人 間力」を失ってしまう。エコネット・美はこれらの考 えから、「じんぶん」を実践することを通じて「基地 に頼らず命の自立」を目指していた。遠く感じていた

沖縄の基地問題を、「じんぶん」への理解を通じて自分たちにひきよせることが出来た。輿石 正さんから「東京の生活だって足下を掘り下げれば、沖縄の問題につながる」という宿題を 頂いた。これが、ゼミ生ひとりひとりがとり組む次の課題である。

参 考 文 献 ・ 資 料

<一次資料>

・安里清信『海はひとの母である―沖縄金湾から』晶文社、1981 年。

・嘉陽誌編纂委員会編『嘉陽誌』沖縄県名護市嘉陽区事務所、1994 年。

・具志堅勇、島袋安奈他「《インタビュー》シマへのこだわりと自立の模索―六周年を迎えた「エコネッ ト・美」―」新沖縄フォーラム編『けーし風』第 44 号、2004 年。

・輿石正「『エコネット・美』奮闘記」新沖縄フォーラム編『けーし風』第 20 号、1998 年

・エコネット・美「エコネット・美ホームページ」http://www9.big.or.jp/~chura/index.html(参照日 2018/11/21)

・エコネット・美「美ら海通信」第 0 ~ 54 号、1998-2015 年、http://www9.big.or.jp/~chura/siryousitu/

siryo%20top.html(参照日 2018/11/21)

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・沖縄県「沖縄の産業のわり合い(平成 26 年度)」https://www.pref.okinawa.jp/site/kodomo/sangyo/

uchiwake.html(参照日 2018/11/23)

・名護市役所「年度当初の行政区別人口および世帯数(平成 30 年 4 月 1 日現在)」http://www.city.

nago.okinawa.jp/about/population(参照日 2018/11/23)

<二次資料>

・石川紗衣花「基地からの自立の手段としてのエコツーリズム―エコネット・美にみる地域の自立―」

『2016 年度 法政大学国際文化学部国際文化学科今泉ゼミ 卒業論文集』2017 年。

・鹿野政直『沖縄の戦後思想を考える』岩波書店、2011 年。

・多田治『沖縄イメージの誕生―青い海のカルチュラル・スタディーズ』東洋経済新報社、2004 年。

参照

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