カレントアウェアネス NO.299 (2009.3)
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CA1683
光/磁気ディスク、フラッシュメモリの 劣化と寿命
る日本のリポジトリのうち、レコード数が 10,000 件以上の機関の 数(国立情報学研究所(NII)も含む。2008 年 12 月 17 日時点)。
Registry of Open Access Repositories.
http://roar.eprints.org/.(accessed 2008-12-17).
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⒇ CDDL-IMMK. Greenstone Support for South Asia . http://greenstonesupport.iimk.ac.in/.(accessed 2008-12-17).
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Ref.Mittal, Rekha et al. Digital Libraries and Repositories in India: an Evaluative Study. Program: Electronic Library and Information Systems. 2008, 42(3), p. 286-302.
Mahesh, G. et al. Digital Libraries in India: A Review. Libri. 2008, 58
⑴ , p. 15-24.
はじめに
今や世界中で膨大なデジタル情報が日々生産されて いるが、それらを保存し後世に伝えていくには、まだ 数多くの不安要素が解決されず残っている。
その中には、記録メディアの寿命の問題がある。紙 の本は 1,000 年の時を超えて保存に耐えてきた実績が あるが、デジタル情報の記録メディアは歴史が浅く、
その寿命について確かなところがわかっていない。
本稿では、現在の主な記録メディアである光ディス ク、ハードディスク及びフラッシュメモリについて、
構造や原理を概観した上、その劣化と寿命についてこ れまでに行われてきた研究等の成果を紹介する。
光ディスク
CD・DVD 等の光ディスクは安価で大容量のデジタ ル記録メディアとして盛んに利用されてきた。反射膜 がついた記録層に強いレーザー光を当てて、状態が変 化した部分を作り出すことでデータを記録し、データ を読み出す時はそこに弱いレーザー光を当て反射光の 変化を読み取るというのが基本的な原理である。
・劣化の原因と寿命
光ディスクの劣化原因としては、まず高温多湿な環 境が挙げられる。反射膜や記録層に水分が浸入する と腐食し、データが読み出せなくなることがある。ま た、記録層に色素を用いている CD-R、DVD-R 等の場 合、一定以上の光を浴びると、色素が分解してデータ が失われることがある。ゆえに、『IFLA 図書館資料 の予防的保存対策の原則』(CA1680 参照)
⑴では、光
ディスクは「涼しくて(温度 20℃以下),適度に乾燥 した(相対湿度 40%)ところで保管しなければなら ない」「直射日光のもとにディスクを置いてはならな い」とされている。
光ディスクは、再生時に一部正しく読み出せない ビット列があったとしても、同時に記録された誤り訂 正用データを用いてデータを修復することができる。
ただし、この訂正能力にも限界があり、ディスクの 劣化が進んで誤り発生率がある一定の値を超えると、
データの訂正ができなくなる。このとき光ディスクが
「寿命」を迎えることになる。
日本記録メディア工業会の Web サイトでは、DVD に記録されたデータの寿命について「通常の使用環 境で 10 年以上持つといわれています」としている
⑵。 国内 DVD メーカーの Web サイト等においては「数 十年の保存に耐える」
⑶、「DVD-R ディスクの耐久期 間はおそらく 20 年〜 30 年以上」
⑷、「保証するもので はありませんが 100 年後の寿命予測(生存確率 99%
以上)」
⑸等の記載が見られ、保存環境にもよるが、
概ね数十年程度の寿命を想定しているようである。だ が、問い合わせを行うと 10 年と回答するメーカーが 多かったとの調査
⑹もあり、確かなところはわからな い。
また、書き換え可能な光ディスクはアモルファス合 金に結晶相と非晶質相を作り出すことによってデータ を記録しているが、書き換え可能な回数には限界があ り、CD-RW、DVD-RW が 1,000 回程度、DVD-RAM が 10 万回程度といわれている
⑺。
・寿命に関する調査研究
デジタルコンテンツ協会が、国内・海外メーカー製 の数種類の DVD-R、DVD-RAM、DVD-RW について、
温湿度試験、耐光試験、耐ガス試験などから保存寿命 を評価する一連の調査研究を行っている
⑻⑼⑽⑾。これ らで用いられたのは、過酷な条件下で劣化を加速させ た場合の寿命を測定し、そこから通常使用時の寿命を 推定する加速劣化試験という手法である。
温湿度試験では、85℃、80℃、75℃、65℃の 4 温度
(湿度はいずれも 80%RH)という条件下でそれぞれの 温度における寿命を求め、常温における寿命の中央 値及び 95% 生存寿命を推定している。中央値のデー タによると、温度 25℃、湿度 80% の条件下で DVD-R が 17 〜 157 年、DVD-RW が 28 〜 27,925 年、DVD-RAM が 39 〜 611 年という推定寿命が得られている。
耐光試験では、太陽光に近い光を連続照射して記録
再生特性を評価している。DVD-R は 8 枚のうち 1 枚
が 48 時間後、もう 1 枚が 120 時間後に、記録層が褪
色し測定できない程劣化した(蛍光灯の下に置いた場
合に換算すると 48 時間は 106 日程度、120 時間は 266
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日程度に相当)。DVD-RW と DVD-RAM には大きな 問題はなかった。
耐ガス試験では、光ディスクに影響を与える可能性 のあるガスとして温泉地の数百倍の濃度の硫化水素 を用い、長時間暴露状態として評価を行った。その結 果、通常の環境では問題のない耐ガス性を持つと結論 付けられている。
またこの調査では、加速劣化試験の前に全てのディ スクについて初期の記録品質の評価が行われている。
その結果、一部の海外製ディスクにおいて、データ を記録した当初からデータ誤り率が規格値を大幅に 超えている「寿命 0 年」のものもあった。同様に、初 期品質に関する調査を行ったものに、記録ディスク
(DVD-R)と記録ドライブとの組み合わせにより記録品 質が悪くなる場合があることを実証した森島の研究
⑿がある。
書き換え可能な DVD の寿命については、入江らも 評価を行っている
⒀。これは、加速劣化試験と一般室 内環境下での保管試験を組み合わせて実施したもの で、結果として 50 〜 100 年以上の寿命が推定されて いる。
なおデジタルコンテンツ協会は、光ディスクの寿命 評価法について「これから製造する光ディスクの品質 を保証するための規格」と「記録済み光ディスク上の デジタルデータの品質を監視する規格」の 2 つの規格 の国際標準化の動向を紹介している。前者は CD-R と DVD-R の寿命推定法の規格として、2007 年に ECMA
(欧州電子計算機工業会)の承認を経て
⒁、2008 年に ISO 規格
⒂として制定されている。後者は関連する JIS 規格
⒃等を基に検討が重ねられ、2009 年に ISO 規 格化
⒄された。3 年毎にエラーチェックを行い、劣化 の度合いによって媒体移行を行う基準が定められてい る。
ハードディスク(HDD)
ハードディスク(HDD)は記録メディアの主流と して、携帯オーディオプレーヤー、パソコン、録画 機、大規模ストレージ等に幅広く利用されている。高 密度化が急速に進み、現状では最も大容量が実現でき る。その構造は、アルミニウム等の薄い円板に磁性体 を塗布した磁気ディスク(プラッタ)を回転させ、磁 気ヘッドによりデータの読み書きを行う、というもの である。
・劣化の原因と寿命
HDD は熱に弱く、高温がコントロールチップの暴 走、プラッタの変形、磁気情報の変質、モーターの潤 滑剤の化学変化といった劣化の原因を生み出す場合が ある。また、HDD に衝撃が与えられたり、電源を切っ たりすると磁気ヘッドとプラッタが接触し破損する可
能性がある。さらに、磨耗粒子が飛散し、データ記録 部分を傷つけることもある
⒅。
・寿命に関する調査研究
ベンダーは HDD の仕様に関する様々なデータを公 表しており、その中で一般的に寿命に相当する指標と されるのが、平均故障寿命(MTTF:Mean Time To Failure) で あ る。 だ が、MTTF が 100 万 時 間(114 年)となっていても、その HDD が 114 年間故障しな いことを保証するわけではない。MTTF はあくまで
「期待値」であるためである。
この MTTF の値については、シュローダー(Bianca Schroeder)らが調査を行っている
⒆。ベンダーが公 表する MTTF が 100 万時間以上とされている 10 万 台の HDD について、5 年以上にわたりその年間故障 率(AFR:Annualized Failure Rate) を 調 査 し た と ころ、AFR は約 3%であったという。ここから、実 際の MTTF は 30 万時間程度であったことが推計さ れる。
また、Google 社のピニェイロ(Eduardo Pinheiro)
らは、同社で使用する 10 万台を超える HDD から、
ほとんどの HDD が備えている自己監視機能の SMART
( S e l f - M o n i t o r i n g , A n a l y s i s a n d R e p o r t i n g Technology)の情報をはじめとする各種データを収 集し、HDD の故障予測について調査を行っている
⒇。 結果として、先行する研究で繰り返し指摘されてき た「高い温度と高い利用レベルが故障率を上げる」と いう相関関係は確認できなかったこと、SMART 情 報 の う ち 4 項 目(Scan Error、Reallocation Count、
Offline Reallocation、Probational Count)は故障率と 高い関連性を持つことが確認できたが、SMART 情報 だけでは故障予測に限界があること等の指摘がなされ た。
このほか、HDD の劣化や寿命に関する研究として は、HDD 冷却ファンの振動によるダメージに関する 研究 や Internet Archive の HDD 故障率に関する研 究 等がある。
フラッシュメモリ
フラッシュメモリは、書き換え・消去が可能で、不 揮発性の(電源を切っても内容が消えない)半導体メ モリである。主にデジタルカメラ等の記録メディアと して使われる小型メモリカードや、USB メモリ等の パソコン用の可搬記録メディアとして普及している。
フラッシュメモリ内には無数の半導体素子(メモリセ
ル)が配置され、そのメモリセルに電圧をかけること
により、電荷を出し入れして記憶・読み出し・消去を
行う仕組みである。記録・再生に HDD のようなモー
ター機構を必要としないという特徴がある。
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・劣化の原因と寿命
メモリセルは、電荷を蓄えるために絶縁機能を持つ
「トンネル酸化膜」を用いているが、電荷の移動が頻 繁に行われると酸化膜が次第に劣化して電荷を蓄える ことができなくなる。このため、特定のメモリセルに 書き込みが集中しないように、書き込みを分散して行 う等の仕組みを持っている製品もある。
寿命に関する指標としてはデータ書き換え可能な回 数があり、概ね 1 〜 10 万回といわれる。また、デー タを保持できる期間は約 10 年間といわれている。こ れらの値は各メーカーが公表している場合もある。
ただし実際には、コネクターの接触部分の磨耗や破 損など寿命以外の要因により使えなくなってしまう ケースが多いと考えられ、強い磁気や電気の発生源に 近づけることも故障の原因となる
⑺。
・寿命に関する調査研究
光ディスクのようにサンプルから寿命推定値を算 出した論文や報告書等は見当たらなかった。だが、フ ラッシュメモリを含む半導体デバイスは製造元によっ て、製造から輸送及び使用期間中に受けると推定さ れる(熱的、機械的、電気的などの)ストレスに関し て、加速あるいは限界ストレスを印加し,故障なく動 作することの確認及び寿命を推定するための信頼性試 験を経ている 。各メーカーが公表している書き換え 可能回数やデータ保持期間はこのような試験を基にし ていると考えられる。
このほか、Linux 上で繰り返し書き込みを行うプロ グラムを用い microSD カードの書き込み耐性の調査 を行っている個人のブログ や、USB メモリがデータ 書き換え可能回数を超え故障した場合にどのような現 象が起きるかをレポートした記事 、書き込み・消去 方式がフラッシュメモリの信頼性に与える影響を調査 した論文 なども見られる。
新世代記録メディア
これまで見てきたものよりも大容量・長寿命化を目 指し、新しい記録メディアの開発・研究が行われつつ ある。
例えば、米国のカリフォルニア大学サンタクルズ校 のストーラー(Mark W. Storer)らは、「100 年デー タ保存」が可能な新技術として、HDD とフラッシュ メモリを組み合わせた長期保存技術「Pergamum」を 開発した 。また、京都大学の越智らは、読み出し 専用の半導体メモリであるマスク ROM をガラスディ スクに密封し、非接触のアクセスを行う、新しい長期 保存メディアの研究を行っている 。
また既存メディアの改良も進められている。産業技 術総合研究所は、東京大学と共同で、従来のデータ書 き換え可能な回数の1万倍とされる、1 億回以上の書
き換えが可能なメモリセルを 2008 年に開発している 。 GENUSION 社と東北大学が 2009 年の製品化を目指 し共同開発したフラッシュメモリは、100 万回の書き 換え回数のほか、20 年間の連続読み出し、150℃で 10 年間のデータ保持能力が確認されている 。
おわりに
デジタル情報は一度失われてしまうと復旧が難し く、その損失も大きい。記録メディアの寿命について は、様々な研究が行われ、改善も図られているとはい え、まだ紙媒体に匹敵する年月が蓄積されていない以 上、試験等を基にした推定値にとどまる。新しい記録 メディアや技術が登場するまでは、確実なバックアッ プや適切な環境での保存と利用を心がける等の対応を とることが求められる。
(関西館電子図書館課:大島茂樹)
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⑺ 記 録 メ デ ィ ア の 寿 命 は ど れ く ら い? . 日 経 TRENDYnet.
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