智頭町を事例に
著者 小竹森 晃
雑誌名 同志社政策科学院生論集
巻 5
ページ 41‑52
発行年 2016‑03‑10
権利 同志社大学政策学部・総合政策科学研究科政策学会
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000014413
「地域おこし協力隊」の政策目的と実態
―鳥取県智頭町を事例に―
小 竹 森 晃
概 要
本論文では、筆者が「地域おこし協力隊」(以 下、「協力隊」という。)として、2012年
4
月 から2015
年3
月、鳥取県智頭町で活動してき た経験を参与観察的に分析し、協力隊の制度 について目的と実態の双方の観点から考察し たい。考察の方法として、まず、協力隊制度を 総務省の一つの政策として捉え、協力隊制度の 目的を明確にする。次に、総務省の政策策定段 階での目的が、市町村の政策実施段階では達成 できていないのではないか1という仮説を立て る。そして、協力隊制度の政策実施段階での実 態を分析し、政策実施段階での変容2を明らか にする。これらのことで、協力隊制度が抱えて いる問題点及びその要因が視えてくる。つまり、目的と実態の双方向から考察することは、協力 隊に携わる、総務省、市町村、協力隊導入地域 及び協力隊自身にとって、協力隊の制度を運用 していく上で、非常に有用なものであると筆者 は思っており、本論文で政策の実施から評価に あてはめて解明した実態を、広く世の中に伝え ていく必要がある。
はじめに
地域づくりにおいて、よそ者3の視点や人財
(アクター)としての活用が重要視されはじめ
て、20年近く経とうとしている。また、若い 世代の地方への移住・定住意識、すなわち「田 園回帰」の意識が高まっており、2005年に比 べ2014
年は、30代の農山漁村への定住願望 が17.0%から 32.7
%へ、40代では15.9%から
35.0%へと伸びている
4。そのような中、2009
年
3
月31
日、総務省の地域活性化政策として、地方へのよそ者(外部人財)の活用に対して人 件費が活用できる画期的な制度ともいえる、協 力隊制度が総務省より創設された5
。ちなみに、
協力隊の制度導入初年度の
2009
年度の協力隊 の人数は89
人であったが、2010年度257
人、2011
年度412
人と徐々に増え、筆者が協力隊 として活動し始めた2012
年度が617
人、2013 年度978
人、2014年度1,511
人と推移し、協力 隊が創設され6
年で1,000
人を超えている。加 えて、2014年6
月14
日、安倍内閣総理大臣が 地方創生関係で鳥取県、島根県への視察後の記 者会見で「協力隊の若い皆さん、彼らが本当に1 筆者の協力隊での経験による。小竹森 晃「智頭町山郷地区の生き方―「創造的昔帰り」を掲げた地区の事例と地域おこし協力隊―」
『自治体学』(自治体学会)第28-2号、2015年、17-19頁
2 政策過程で目的や内容が変わってしまうことを「変容」という。新川 達郎編著『政策学入門―私たちの政策を考える―』法律文化社、
2013年、33頁
3「よそ者」という概念には、四つの概念が含まれている。一つ目は、当該地域やその地域から地理的に離れた場所に暮らしている人。二 つ目は、外から当該地域へ移住してきて、その地域の文化や生活をよく理解していない人。三つめは、当該地域やその地域の文化にか かわると自認する人達によって「よそ者」のレッテルを与えられている人。四つ目は、利害や理念の点において、当該地域の地域性を 超え、普遍性を自認している人の四つである。鬼頭 秀一「環境運動/環境理念研究における「よそ者」論の射程―諌早湾と奄美大島 の「自然の権利」訴訟の事例を中心に―」『環境社会学研究』(環境社会学会)第4号、1998年、46頁
4 平成26年度 国土交通白書「1地方移住等地方へのヒト(定住人口)の流れ」より引用。http://wwwwp.mlit.go.jp/hakusyo/index.html
5地域社会の新たな担い手を外部から確保することにより地域力の維持・強化を図るため。「地域おこし協力隊推進要綱」http://www.
soumu.go.jp/main_content/000035200.pdf
地域で知恵を出して、そして、汗を出して、地 域の皆さんと一緒になって地域の活性化に大き な役割を果たしている」と述べ、「協力隊を
3
年間で今の1,000
人から3
倍の3,000
人にする こと」を総務大臣に指示した6。このようなこ
とから、今後、更に協力隊の人数が全国で増加 していくことが見込まれる。この安倍内閣総理 大臣の協力隊の表面だけを視た発言に対して、協力隊として活動してきた筆者の経験からいわ せて頂くと、ただ単に頭数を増やせば地域が活 性化するということではない。つまり、協力隊 の人数を増やす前に、総務省の結果を重視した 評価7だけではなく、政策実施段階における協 力隊の実態を分析し、評価することが必要であ る。したがって、今の協力隊制度に求められて いるものは、約
6
年間、協力隊制度を実施して きた中で気づいた問題点やその要因を把握し、改善することが必要であると筆者は痛感してい る。そこで、筆者が
3
年間協力隊として活動し てきた鳥取県智頭町での参与観察を基にして、協力隊制度の実態を分析し、評価をしたい。
以下、本論文の構成は、第
1
章で総務省の協 力隊制度の背景及び目的をまとめ、第2
章では、協力隊の活用事例として、筆者が参与観察して きた智頭町の協力隊制度の背景及び目的をまと める。第
3
章で、総務省と市町村の協力隊の背 景及び目的を照らし合わせ、政策実施段階での 変容を明らかにし、問題点やその要因を抽出し、第
4
章で、協力隊の役割すなわち、協力隊の活 用(展望)について考察する。なお、協力隊の英訳は、「第
2
回 地域おこ し協力隊全国サミット」で使用されているもの で、正式に定まったものはなく、今後も決める 予定はないとのことである8。
1.「地域おこし協力隊」とは
本章では協力隊制度の総務省の見解として、
第
1
節で協力隊制度創設の背景をまとめ、第2
節で協力隊の目的を考察する。さて、協力隊とは、過疎地域などを含む市町 村9が、都市部から人財の移住・定住を図る制 度である。協力隊はその市町村に住民票を移し て
1 〜 3
年10地域で生活し、市町村から委嘱 を受けた地域づくりに関わる活動(自分のスキ ルを活かす)を実践(サポート)する11。先に
も述べたが、人件費などの経費については、一 人当たり400
万円(人件費に充てられる部分は200
万円)が協力隊の導入市町村へ特別交付税 という形で措置される。つまり、協力隊の制度 を要約すると、市町村の「懐」は痛まず、都市 部からの人財の移住・定住が図れ、かつ、地域 づくりに活用できるという制度である。1. 1 「地域おこし協力隊」の背景
先にも触れたが、2009年
3
月31
日に協力隊 の制度が創設された。この制度が創設された背 景として、協力隊の創設の先頭に立って動い ていた、元総務省地域力創造審議官の椎川忍 氏によると、「直接的に都市部から地方へ、人 口、特に働き手の世代や若者が移住することを 後押しできる仕組みが考えられないかと思って いた12」という。さらに椎川忍氏は協力隊制度
創設の陣頭指揮を執る中で、常に「他の制度で は足らないところ、改良すべき点を、特別交付 税という地方一般財源による財源措置であると いう強みを活かしながら、他の制度を補完し連 携できる制度として設計し、任期終了後の定住6 政府の「骨太の方針2014(2014年6月24日閣議決定)」にも協力隊の拡充などが盛り込まれた。稲垣 文彦「初任者向け地域おこし協力隊・ 集落支援人を対象とした研修会について」『国際文化研修』(全国市町村国際文化研修所)第85号、2014年、24-29頁
7 任期終了後の定住状況に重きをおいているため、実態に即した評価とは言い難い。なお、定住率は約60%である。「平成27年度 地域
おこし協力隊の定住状況等に係る調査結果」http://www.soumu.go.jp/main_content/000376274.pdf
8 総務省の職員に確認済み。ちなみに「第1回 地域おこし協力隊全国サミット」では、「Community-reactivating cooperator squad」であっ
たが、内容も踏まえてより適当な英訳に変えたとのこと。
9 地域要件があり、導入できない市町村もある。「地域おこし協力隊員の地域要件について」http://www.soumu.go.jp/main_content/000335888.pdf
10 最長3年間となっており、延長はできない。「地域おこし協力隊の概要」http://www.soumu.go.jp/main_content/000380187.pdf
11 都市地域から過疎地域等の条件不利地域に住民票を移動し、生活の拠点を移した者を、地方公共団体が「地域おこし協力隊員」として
委嘱。隊員は、一定期間、地域に居住して、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこしの支援や、農林水産業への従事、
住民の生活支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取組。「地域おこし協力隊の概要」http://www.
soumu.go.jp/main_content/000380187.pdf
12 2008年に福田内閣の下で定住自立圏構想の制度化に携わり、「地域力創造プラン〜自然との共生を核として」を策定している最中であっ
た。椎川 忍編著『地域おこし協力隊 日本を元気にする60人の挑戦』学芸出版社、2015年、18-22頁
率を高められるようにする13
」という基本方針
を表明していた。なお、協力隊の制度を創設す るにあたり、参考にした制度として以下の四つ である。一つ目は総務省が2008
年8
月に過疎 対策として制度化された、「集落支援員」、二つ 目はNPO
法人地球緑化センターが1994
年から 実践している、「緑のふるさと協力隊」、三つ目 は2008
年の補正予算で農林水産省の「田舎で 働き隊」、そして四つ目として国際協力事業団 の「青年海外協力隊」が挙げられる14。なお、
協力隊制度の特徴は、市町村が直接15
、外部人
財16の活用が行える点で、政府として政策的に 地方における外部人財の活用を促進することが 必要だという小田切徳美氏の指摘に基づき、こ れらの制度に加えて創設された17。つまり、協
力隊制度創設時の目的は、都市部から地方へ若 者が移住すること(田園回帰)に対して、特別 交付税という財源措置によって金銭的にサポー トし、生業を創り、移住・定住を促そうという 制度である。1. 2 「地域おこし協力隊」の目的
協力隊の目的は、大まかに分けると二つある といえる。一つ目は制度を創設した椎川忍氏と、
市町村に協力隊制度の活用を推進している総務 省の目的。二つ目は協力隊制度を活用し、人財 の活用をしている市町村及び協力隊の導入地域 の目的である。なお、ここでは、一つ目の総務 省の目的について述べる18
。
さて、総務省の協力隊制度の目的は二つあり、
この二つの目的は「車の両輪」のような関係性 であり、どちらも欠けてはならないものである。
一つ目は、長期的(マクロな視点)な目的で、
人口減少や高齢化等の進行が著しい地方におい て、都市部の人財を積極的に誘致し、その定住
・
定着を図ることで、意欲ある都市住民のニーズに応えながら、地域力の維持・強化を図ってい くこと19であり、簡潔にいえば、よそ者(外部 人財)に移住をしてもらい、新参者として定住 してもらうことである。
二つ目は、短期的(ミクロな視点)な目的で、
市町村が協力隊へ地域づくり活動を委嘱し、農 林漁業の応援、水源保全・監視活動、住民の生 活支援などの各種の地域協力活動に従事しても らうこと20である。すなわち、市町村が地域づ くりに関わる活動であると判断できることであ れば、創意工夫をこらして自由に活用ができる 制度である21
。具体的には、地域資源の発掘、
地域の情報発信、都市部との交流、農商工の連 携、ソーシャルビジネスの立ち上げなどが挙げ られる。つまり、よそ者(外部人財)を地域づ くり活動に携わってもらい、生業を創り、定住 してもらうことが目的であるといえる。
2.鳥取県智頭町の事例
第
1
章では協力隊制度について、総務省の背 景や目的を考察したが、本章では、筆者が協力 隊として活動していた智頭町のむらづくり(ま ちづくり)の歴史について第1
節でまとめ、第2
節は協力隊導入の背景及び目的についてまと め、第3
節では、智頭町の行政からみた協力隊 と、協力隊の導入地域である地区振興協議会か らみた協力隊について考察する。さて、鳥取県智頭町は鳥取県の東南部に位置 し【図
1】、四方は 1,000m
級の中国山地に囲ま れている。その谷を縫って流れる川が千代川と なり日本海に注ぐ(智頭町は鳥取砂丘を育む千 代川の源流地域)。気候は日本海側気候に属し、冬に雪が多い22
。2015
年6
月の住民基本台帳 によると、人口7,608
人、世帯数2,759
世帯、高齢化率
37.2%である。また、面積の 93%を
13 推川、同書、19頁
14 推川、同書、10頁
15 緑のふるさと協力隊は、NPO法人地球緑化センターが市町村と協力隊のマッチングを行っており、田舎で働き隊も同じように、株式会
社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所が市町村と働き隊の仲介を行っている。
16 集落支援員は、地域の実情に詳しい身近な人財、すなわち、同じ市町村内の人財を対象としている。
17 推川、前掲書、11頁
18 市町村や地域の目的は第2章で述べる。
19 総務省のホームページ「地域おこし協力隊Q&A」http://www.soumu.go.jp/main_content/000035202.pdf
20 同上
21 ここの表現が抽象的であるため、良い意味でも悪い意味でも市町村の裁量で協力隊の募集ができる。詳しくは第3章で述べる。
22 小竹森、前掲書、17頁
山林が占めており、林業のまちとして栄えてい たが、1955年木材の輸入自由化23などが要因 となり、木材価格が下がっていき
(昨今では 「大
根一本よりも杉の木一本の方が安い24」と言わ
れる)、今現在、産業として成り立っていると は言い難い25。
2. 1 むらづくりの歴史
智頭町はむらづくり(まちづくり)では有名 まちであるが、ここに至るまでに様々なチャレ ンジがなされてきた。このむらづくりの歴史は、
協力隊の導入にも関わる話であるため、この節 で簡単にまとめておく。
さて、1983年、過去、林業のまちとして栄 えていた智頭町に
U
ターンした寺谷篤志氏は、「山林を所有するもの」と「持たざる者」の序
列の関係性が続いており、山林を所有するものイコール有力者という、閉鎖的で封建的な智 頭町に危機感を感じた26
。そのような中、自ら
様々な仕掛けを行っていき、役所任せではなく 市民自らの負担で汗をかき、必要に応じて町や 県も巻き込んでいく「智頭町活性化プロジェク ト集団(CCPT)」
を1988
年に結成した27。また、
1995
年には郵便局の集配業務を活用した「ひ まわりシステム28」、さらには、外部有識者とし
て、鳥取大学工学部教授の岡田憲夫氏29と共に、1996
年に智頭町役場の職員を中心とした智頭 町のグランドデザインの策定をコーディネート し、これからの地域づくりのキーワードとして「住民自治」「交流情報」「地域経営」の三つの
柱を明示し、住民自らが目標を立て計画を作り、それを実現していくという、集落の活性化運動
「日本ゼロ分のイチ村(1/0)おこし運動(以下、
「ゼロイチ運動」という。)
30」を策定した。
1996年にはじまったゼロイチ運動は、智頭 図 1 鳥取県智頭町の位置関係
(出典:智頭町ホームページ「智頭町について」より引用)
23 1964年に全面自由化となり、輸入木材の供給量増加。
24 出荷できるようになるまでの年月や経費(概ね、杉の木1本を育てるのに50年、大根1本半年)。筆者の参与観察での住民の話による。
25 林業が産業として盛んであった頃は、旧村にも銀行や製材所も複数あったが、今では無くなった。筆者の参与観察での住民の話による。
26郵便局長として広島市から故郷(智頭町)へ10年ぶり帰ってきた寺谷 篤志氏は「あまりにも寄らば大樹の陰と決め込む住民や、今日 が明日になると無気力化した行政職員、町民のことは主眼にない議員や首長に義憤・私憤・公憤が体の中を稲妻のように走った」と当 時の智頭町を述べている。寺谷 篤志、平塚 伸治『地域経営まちづくり―思考のデザイン編(version 0)』一般財団法人 日本・地域 経営実践士協会、2013年、57-72頁
27 田村 明『まちづくりの実践』岩波書店、1999年、191-194頁
28 家から出ない一人暮らしのお年寄りのところに、配達物がなくても郵便屋さんが回ってきて「元気でいるかい」などと声をかけ、ちょっ
とした病院や買い物の伝言メモを受け取って届けてくれるシステム。田村、同書、193頁
29 現在は、関西学院大学総合政策学部・総合政策研究科教授として教鞭をとられている。
30無から有を生む・オンリーワンの地域活性化活動を意味している。そして、1/0.0001=10,000というように小さくても光る一歩の事お こしに価値があることを表わすため「分数」表記をした。寺谷、前掲書、59頁
町内
89
集落中16
集落が住民全員参加の「集落 振興協議会(ホップ)【図2】」を立ち上げ、地
域資源の竹炭生産・味噌づくり・そばづくり・集落
NPO
法人化など、様々な活動がされてき た31。それぞれの集落振興協議会は、むらづく
りに汗を流し、住民同士で知恵を出し合った分 だけ覚醒化し、それぞれのドラマが花開き、村 が確実に動いた。しかし、集落振興協議会は生 活の場として、あくまでも隣近所の運動であっ たため、自分の集落として意識が強くなり、他 の集落との連携や地区(小学校区)全体での視 点が弱くなっていた32。
そこで、新たな仕掛けとして、これまで集落 単位で進められてきた「草の根住民自治33
」の
規模を拡大し、地区単位34のゼロイチ運動を推 進するために、地区と行政が互いに情報や課題 を共有しながら地域課題の解決を図りつつ、智 頭町独自の地域づくりを目指す組織として「地 区振興協議会(ステップ)【図2】」が設けられ
た35。
地区振興協議会は「創造的昔帰り
36」
をキー ワードに掲げ、2008年にはじまり、2015年現 在は智頭町内6
地区中5
地区で立ち上げられ、廃校となった小学校37の利活用など、地区ご とに様々な活動を展開している。しかし、地区
振興協議会の活動が活発になるにつれ、今度は、
そうした地縁型住民自治組織では解決できない 課題も数多く存在することが浮き彫りになって きた。
そこで、町長の寺谷誠一郎氏の強いリーダー シップにも後押しされ、テーマ型住民自治組織 として
2008
年に設置されたのが「智頭町百人委 員会38(ジャンプ) 【図 2】」
である。百人委員会は、智頭町の自立度を高めて、活力ある地域づくり を進めていくために、住民の声を町政(智頭町 全体のむらづくり)に反映することを目的とし ている。住民が身近で関心の高い課題を話し合 い、解決に向けた政策を行政に提案していくた めの組織であり、智頭町ならではの住民自治の 実践を目指している39
。
2. 2 「地域おこし協力隊」導入の背景と 目的
智頭町の協力隊の導入は
2012
年4
月からは じまり40、2015
年現在8
名の協力隊員が活動し ている。活動内容及び人数の推移は、2012
年は、地区振興協議会の事務局として
2
人、県の伝統 的建造物群保存地区の保存と活用のため1
人で31 鈴木 輝隆「鳥取県智頭町 地緑型からテーマ型の住民自治組織へ」―草の根・住民自治による「新たな公」の先駆者―」『地域活動
における自治体の支援・連携に関する調査研究』(財団法人 地方自治研究機構)2012年、150-175頁
32 寺谷、前掲書、64頁
33 まず集落で議論が起こり、それが地区に吸い上げられて議論が深まり、その上で最終的に町に上がってくる、という図式。【図2】を参照。
鈴木、前掲書、159頁
34 昭和の合併までは小学校区はそれぞれの一つの村であった。
35 鈴木、前掲書、159頁
36 地区振興協議会は一見旧村への昔帰りに見えながら、実は「偉大な創造」である。旧村では想像もできなかったような徹底したボトムアッ
プ(住民自治)の地区づくりである。この壮大な、かつ、他に類例のない「創造的昔帰り」は、この10年にわたって智頭町が住民と ともに展開してきたゼロ分のイチ運動があったればこそ可能となった。この点が全国各地で始まろうとしている地区の振興のための施 策とは一線をかくするものである。寺谷、前掲書、66頁
37 2012年3月に智頭町内にあった6校の小学校(旧村ごとに1校ずつ)のうち、5校が廃校となった。
38 委員は18歳以上の町民または町内勤務者から公募により選考され、任期は1年で再任も可能となっている。委員会は委員が会議で述べ た意見を町長に提出する、という項目とともに、町長は精読の上でこれを尊重し、地域発展と住民福祉向上のために町政に反映するこ とが明記されている。このほか、単に企画案を作成するだけではなく、予算案を含めて、公開予算ヒアリングで執行部へ企画提案する ことも百人委員会の特徴となっている。鈴木、前掲書、163頁
39 2009年「森のようちえん まるたんぼう」、2010年「木の宿場プロジェクト」などが実際に事業化されている。鈴木、同書、165-171頁
40 2010年4月、鳥取県下で智頭町と八頭町がはじめて協力隊を導入した。
図 2 智頭町の住民自治の流れ
(出典:筆者作成)
あった。2013年は、県の伝統的建造物群保存 地区の保存と活用のため
1
人、宿場町の国指定 重要文化財と国登録有形文化財の情報発信のた め2
人、林業や地域資源を活かした商品の企画 のため1
人であった。2014年は、宿場町の国 指定重要文化財の情報発信のため1
人であっ た。さらに、2015年は、地区振興協議会の事 務局として2
人、伝統文化継承に関する業務の ため1
人、獣害対策業務1
人・林業地での後継 者育成業務のため1
人が導入され、導入の目的 は年により様々である41。
さて、智頭町の協力隊導入の背景42は、小学 校区ごとに立ち上げられた、地区振興協議会の 事務局を地区の住民では担えないという課題が 生じてきていたことである。その為、智頭町と して鳥取県(厚生労働省)の「緊急雇用事業43
」
を活用し、2009年から町内外から事務員を派 遣してきたが、2011年度で緊急雇用事業自体 が打ち切りとなることとなった。加えて、緊急 雇用事業は単年度のため1
年ごとに事務局が変 わってしまうという、地区振興協議会の継続性 に係る新たな問題が浮かび上がってきた。更に、2012
年3
月末に智頭町内にあった6
校の小学 校の内、5
校の小学校が廃校となることとなり、利活用方法を地区の住民だけで考えるには難し く、外部の人財(よそ者)による新たな発想が 必要という地区の声も挙がってきていた点も大 きな要因となった44
。なお、2011
年に農林水 産省の「田舎で働き隊」制度を活用し、半年間 という短い期間ではあるが、よそ者が地域に入 り活動をしていた実績もある45。
つまり、協力隊の導入の背景及び目的は、人 財不足が背景となり、よそ者が欲しいと手を上 げた三つの地区振興協議会46で協力隊を事務 局として導入することが組織内で合意形成さ れ、2012年から智頭町役場は、地区振興協議 会の事務局として地域によそ者を導入すること を目的として、予算を組み協力隊の導入がス
タートした。
2. 3 智頭町の「地域おこし協力隊」制度 の認識と理解
協力隊の制度を活用し、協力隊を導入しても、
制度に対する認識や理解が不足していると、有 効に活用できないことはいうまでもないであろ う。
さて、智頭町の協力隊制度の認識と理解につ いては、行政からみた側面と、協力隊導入地域 の地区振興協議会からみた側面の二つの側面か ら視る必要がある。
まず、一つ目の側面の行政からみた側面は、
先にも述べたが、協力隊は特別交付税による財 源措置というのが大きな魅力で、智頭町として も常に「新しい風」を入れる必要性を感じてい た47
。並びに、地区振興協議会の事務局への外
部の人財(よそ者)が欲しいとの住民からの声 も上がっていた。しかし、協力隊導入した当初 の2012
年頃の行政職員の協力隊制度に対する 認識と理解は、ほんの一部の職員を除き、大半 の職員には認識されておらず、実態は、緊急雇 用事業の代替措置のようなものであった。つま り、協力隊の制度への理解不足が甚だ酷かった といえる。協力隊制度の導入から数年が経ち、最近では協力隊制度の認識も多少は広まってき ているが、依然として多くの職員に理解されて いるとは言い難い48
。加えて、現在の活用方法
では、地域づくりに携わっているが、協力隊の もう一つの目的である、生業を創り、移住・定 住へつながっていくのか先が見通せるとも言い 難い49。
次に、二つ目の地区振興協議会からみた側面 は、先にも述べたが、地区振興協議会の事務局 を地区の住民では担えないという現状(問題)
や、小学校の利活用などでよそ者の発想の必要 性を感じていることが、協力隊を導入した背景
41 2012年1人、2013年2人が、目的の違いなどのトラブルが原因となり、任期途中で辞める。
42 本論文では、2012年の地区振興協議会の事務局としての導入をベースに考察している。
43 地区振興協議会推進員事業として、旧村単位での村おこし運動に取り組んでいる地区へ事務員を派遣し、地区の振興に関わる計画策定
等に関わる事務を行う。「緊急雇用事業計画書(平成23年度)」www.pref.tottori.lg.jp/secure/388208/2kinkyu23s.pdf
44 廃校となる5校の地区では、2011年8月からそれぞれの地区で利活用検討委員会が立ち上げられ活用方法を考えることとなる。
45 智頭町のむらづくりには、学識経験者や学生などのよそ者が数多く参加しており、よそ者に対する免疫力はついている。
46 他の地区は、事務局は地元のことをよく知っている地区人がよいということで「集落支援員」の制度を活用した。
47 町長の寺谷 誠一郎氏自らも協力隊に向けて話していた。
48 なお、智頭町地域おこし協力隊員設置要綱は、協力隊の導入から約3年後の2014年12月26日告示、2015年1月1日から施行された。
49 現状では、協力隊の任期が終わる3年後に定住できる環境が整えられていない。
としてある。地区振興協議会の構成員からは、
「新たな風を注入してくれる」、「よそ者から視点
を地区振興協議会の活動に活かす」、「地域に溶 け込んでこの地域が何に向かって活動している か、自分に何かできるかなどを提案して欲しい」など、協力隊(よそ者)の導入の意義を感じて いるが、事務局として協力隊を導入しているた め、頼りきりな部分が感じられる50
。しかし一
方では、協力隊(よそ者)は活用するだけでは なく、地域の人たちの意識改革のために導入し ているという意見もあり、受け入れ側に課題が あるという認識も少なからず見受けられた。な お、地区振興協議会の構成員以外の多く住民は、協力隊制度を認識しているとは言い難く、よそ から来たお助けマンのように捉えられている51
。
つまり、智頭町の協力隊制度の認識と理解は、行政からみた側面、協力隊の導入地域の地区振 興協議会からみた側面も同様に、形式上は協力 隊であるが、協力隊制度の認識や理解の面から みると実態は協力隊といえるのか疑問である52
。
なお、行政や導入地域の協力隊に対する認識や 理解の不足は、智頭町に限らずほかの市町村で も生じている課題である53。繰り返しになるが、
協力隊の制度を理解することがそれぞれのアク ターにとってとても重要かつ有益なものとなる。
3.「地域おこし協力隊」の政策実施段階 での分析
本章ではまず、第
1節で、
第1章で明らかとなっ
た総務省の背景及び目的と、第2
章で明らかに なった智頭町の背景及び目的を比較し、協力隊 の目的及び認識の違いを明らかにする。次に第2
節で、協力隊の制度を政策過程にあてはめて、政策実施段階で変容がなかったのかを分析する。
さて、政策過程は、「問題の発見」⇒「課題 の設定」⇒「政策策定」⇒「政策決定」⇒「政
策実施」⇒「政策評価」という六つの段階に整 理ができる54
。加えて、政策過程はこれらの段
階を進んでいくだけではなく、「政策評価」の段 階で得られた結果が、「問題の発見」にフィード バックされるという循環過程を想定している55。
これを、協力隊制度にあてはめてみると、「問 題の発見」、「課題の設定」、「政策策定」は、総 務省及び市町村の協力隊制度の背景及び目的と いえるであろう。また、「政策決定」は、国会 の議決といえ、「政策実施」は市町村の協力隊 の活用といえる。そして、実態を分析するため に重要な「政策評価」は、総務省及び市町村が 協力隊制度の導入(活用)で生じた問題点の要 因を見出すことと、それを共有しフィードバッ クすることではないだろうか。3. 1 総務省の目的と市町村の目的
さて、総務省と市町村(智頭町)の協力隊
制度の目的を比較する上で、分かりやすくす る為に下記の表にまとめてみた【表1】。この
表からも分かるように、総務省と智頭町の目的 の大きな違いは「定住」というキーワードであ る。このことを批判する訳でもないが、智頭町 の場合は定住よりも地域づくり活動に携わるこ とにウエイトが置かれていることが伺える。こ の事例から考察すると、逆に、定住にウエイト を置くことも可能といえるであろう。ちなみに、2015
年9
月14,15
日に開催された「全国地域 づくり人財塾(課題解決編)」の交流会の場に おいて、総務省の職員とお話することができた。筆者は「協力隊制度の目的は、なぜ抽象的なの か」と聴くと、総務省の職員は「協力隊の制度 は、自分たちで考えて、地域の実状に即した形 で活用してもらうため、あえて抽象的にしてい る57
」とのことであった。この発言にも一利あ
ると思うが、抽象的、すなわち汎用性が高い分、市町村の活用の仕方によっては、総務省が思い
50 実際に、導入地域と協力隊のミスマッチが生まれドロップアウトした事例もある。
51 昭和の合併後も支所があったため、支所の職員さんと勘違いされることもあった。
52「名ばかり協力隊」といえる。小竹森、前掲書、19頁
53 地域の人が、地域おこし協力隊のことを知りません。便利屋さんと思っている人もいます。島根県中山間地域研究センター『地域おこ
し協力隊の先輩から後輩に伝えたい「心得集」』14頁
54 新川、前掲書、4頁
55 それぞれの段階においても、繰り返し評価しなおされ、問題が確認され、課題として設定され、決定を重ね、再度実施に移されていく
という小さな政策過程を繰り返している。新川、同書、4頁
56 智頭町「地域おこし協力隊」隊員募集要項2012年を参考にした。
57 総務省の職員へのヒアリング調査による。
もよらなかった、すなわち予期せざる結果が生じ る可能性も考えられる58
。つまり、次節で詳しく
論ずるが、総務省は、地域性や地域の発展を前 提として、画一的ではなく市町村の独自性を尊 重することを望んでおり、政策実施段階での変 容を容認しているともいえる。3. 2 政策実施段階での変容
ここまでの考察で、協力隊制度は、政策実施 段階での変容があるのではないかという仮説が 検証された。
さて、この節では、政策策定と、政策実施の 二つの段階に分けて変容を明確にする。
まず、政策策定段階(総務省)では、課題と して「都市部の人財、特に働き手の世代や若者 などが、人口減少や高齢化などが著しい地方へ、
移住する仕組みが考えられないか」。また目的 として「よそ者(外部人財)を地域づくり活動
に携わってもらい、生業を創り、定住してもら うこと」とまとめることができる。
次に、政策実施段階(智頭町)では、課題と して「人財不足でよそ者の新たな視点が欲し い」。また目的として「地区振興協議会の事務 局として、地域をコーディネートしてもらうこ と」とこちらまとめることができる。
上記の二つの段階を照らし合わせると、総務 省と智頭町の背景となる課題は、「都市部の人 財を地方へ」と解釈でき、同じといっても差支 えが無い。しかし、目的は
「地域づくりに携わる」
ところは同じだが、「生業づくりと定住」が智 頭町に欠けているため、同じとは解釈できない。
すなわち、総務省の政策策定の段階で掲げられ た目的が、智頭町の政策実施段階で変容してい ることがいえる。その要因として、先に述べた ように、協力隊制度の目的の認識と理解の不足 が挙げられる。加えて、協力隊制度の目的の認 識や理解の不足の要因には、現場の「裁量59
」
58抽象的な政策を具体化する過程で、当初の思いや期待とは違う結果になってしまうことを「予期せざる結果」という。新川、前掲書、
31頁
59 人間はそれぞれの価値観や思考をもっており、現場の状況は千差万別である。新川、同書、37頁60 新川、同書、40頁
図 3 政策実施過程での変容の因果関係
(出典:筆者作成)
総務省 智頭町
背 景 直接的に都市部から地方へ、人口、特に働 き手の世代や若者が移住することを後押 しできる仕組みが考えられないか
旧村単位での村おこし運動に取り組んで いる、地区振興協議会地区へ事務局を派遣 したいが、人財をどうやって確保するか 目 的 よそ者(外部人財)を地域づくり活動に携
わってもらい、生業を創り、定住してもら うこと
地区振興協議会の事務局として地域の活 動をサポートすること(廃校舎の利活用促 進に係る業務を含む)56
(出典:筆者作成)
表 1 総務省と智頭町の協力隊制度の背景と目的の比較
があることも推測できる。
つまり、協力隊制度の政策実施段階での変容 の因果関係としては、現場の裁量により、協力 隊制度の目的の認識と理解がされ、協力隊制度 の目的の認識と理解の不足により、政策実施段 階での変容が起こるという流れである【図
3】。
なお、政策実施段階での変容は、メリットとし て、政策を柔軟に適応させることを可能にする が、その反面、一歩間違えるとデメリットにな る可能性があるのも事実で、紙一重のような関 係である60
。要するに、政策実施段階での変容
に問題点がある場合には、その要因である協力 隊制度の目的の認識と理解を見直し、さらには そのまた要因である現場の裁量を見直す必要が ある。4.「地域おこし協力隊」の役割(評価)
本章ではまず、第
1
節で、協力隊制度の理解 不足で生じる問題発生を防ぐために作られた「地域おこし協力隊の公募に向けたチェックリ
スト」を紹介し、第2
節で、筆者の地域づくり における見解を述べておきたい。さて、協力隊の政策策定段階における本来の 目的は、3年後に定住できるように生業が創れ る仕組みをつくって、地域づくり活動に携わっ てもらうことである。しかし、協力隊の制度 は、地域性や地域の発展を前提として、画一的 ではなく市町村の独自性を尊重し、政策実施段 階で変容することを前提として創設されている ため、地域の実状に応じて、定住にウエイトを 置いても地域づくり活動にウエイトを置いても 問題ない。ウエイトの位置は現場(市町村と導 入地域の目的の共有)の裁量で決めることがで きるが、定住の要素と地域づくり活動の要素は、
「車の両輪」のような関係性であるため、双方
とも欠けてはならない要素であり、どちらかに 偏りすぎると問題が生まれる可能性が考えられる。その為には、市町村と導入地域の目的や情 報の共有が大変重要である。
まず、市町村と導入地域が共有する内容は、
一、「だれが募集するのか61
」二、「何のために
募集するのか・どのような地域づくりを目指す のか・何年先にこのような地域になっていたい のか62」三、「どのような活動を求めているの
か63」四、「どのような活動条件(人数)
な の か64」などの協力隊導入の目的や手段について
である。加えて「協力隊の身分をどのようにす るか」を決めることも必要で、これは、定住に ウエイトを置く場合、自由に動ける身分にして おく必要がある。次に、市町村と導入地域の目的や情報共有を 前提に、協力隊の募集をかけることになる。こ こで共有された目的が、外部人財である協力隊 自身の目的と合致するか否かである。つまり、
市町村と導入地域及び協力隊自身の目的及び情 報の共有、すなわち、マッチングが協力隊制度 の有用な活用における要となる。
4. 1 地域おこし協力隊の公募に向けた チェックリスト
先にも述べたように、協力隊制度がはじまっ て
6
年間で、約1,000
人の協力隊が全国で活動 しているが、協力隊制度の理解不足により、様々 な問題が生じている事例も見られている。その ため、地域サポート人ネットワーク全国協議 会65では、「地域おこし協力隊の公募に向けた チェックリスト」を作成しているので、下記に 紹介しておく【表2】。
4. 2 内発的要因と外発的要因(「地域お こし協力隊」)
この節では、地域づくりについて筆者の見解 について述べておきたい。
さて、地域づくりの主役はいったい誰なのだ
60 新川、同書、40頁
61 椎川、前掲書、232頁
62 椎川、同書、233頁
63 椎川、同書、234頁
64 椎川、同書、234頁
65 2010年、全国で活動している協力隊、集落支援員及び田舎で働き隊などのいわゆる「地域サポート人」のつながりや、人的ネットワー
クを築き、有効に機能させることで、その取り組みを支援することを目的として設立された。椎川、同書、275頁
ろうか。仮に、協力隊が地域づくりの主役であ るとするなら、協力隊の導入から
3
年間が経 ち、協力隊が定住しなかった場合、地域づくり ストップしてしまうだろう。加えて、地域住民 の主体性が損なわれてしまうだろう。つまり、地域づくりの主役は、地域の住民で、協力隊は 脇役66というスタンスを持っておかなければ、
地域づくりは継続していけないのである。言い 換えると、地域づくりは住民が主役という「内 発的要因」がベースにあり、協力隊の脇役とし ての「外発的要因」が、地域づくりのコーディ ネート、動機づけ、多様な価値観の導入などの イノベーション(新たな風)を起こしているの である。また、協力隊の導入においては、導入 地域の住民と協力隊の価値観の「ものさし」の 違いを、認識(気づく)ことが重要で、導入地 域の住民と協力隊がディスカッションを重ね、
地域の現状を分析することが必要である。
おわりに
本論文では、筆者が智頭町で協力隊として活 動してきたことを基に、協力隊制度を総務省の 一つの政策として捉えて政策目的を明確にし、
智頭町(市町村)での政策実施段階での政策目 的の変容を考察した。
考察の結果、明らかになったことは、総務省 の政策策定段階での政策目的である「地域づく り活動に携わることと、生業を創り定住しても らうこと」が、智頭町の政策実施段階において は目的が「地域づくりに携わる」のみに変容し ていることである。しかし、協力隊制度は、協 力隊の政策を画一的ではなく市町村の独自性を
(出典:地域おこし協力隊の公募に向けたチェックリストを基に筆者作成)
関係者間の認識の共有について
1.首長ほか行政内部で 「地域おこし協力隊」
の意義や狙いが十分共有できていますか?2.受け入れ地域は「おこし協力隊」の趣旨・目的を十分理解していますか?
3.受け入れ地域と行政(あるいは受け入れ団体)の連携体制は十分に協議できてい
ますか?4.受け入れ地域の主体性や当事者意識は十分ありますか?
5.隊員の任期終了後(定住するかどうかなど)について、受け入れ地域と行政とで
認識を共有できていますか?隊員の募集に当たって
6.隊員の活動内容を具体的に挙げることができますか?
7.受け入れたい人材像を描けていますか?
8.導入人数など活動体制のメリットとデメリット、また、デメリットを克服する方
法を検討されていますか?9.活動の地理的範囲は明確ですか?
10.隊員の定住も視野に入れて勤務体制を検討されていますか?
11.隊員の活動費について十分に検討されていますか?
12.隊員に対するサポート体制は検討されていますか?
13.隊員が地域外と交流する機会を想定していますか?
14.隊員の住居など、生活条件は十分に整っていますか?
15.生活・活動環境に対するサポートは検討していますか?
表 2 地域おこし協力隊の公募に向けたチェックリスト
66 協力隊は脇役として、主役を引き立てる(地域を化けさせる・操る)存在である。
尊重するため、政策実施段階での変容を前提と した制度である。
次に、変容の要因として、協力隊制度の認識 と理解の不足があり、その要因として現場の裁 量があることが明らかとなった。仮に政策実施 段階の変容でデメリット(問題点)が生じた場 合には、その要因を見直さなければ、問題点は 解決しない。加えて、これらの見直しを共有し、
フィードバックすることが、今後の協力隊制度 の活用及び導入において非常に重要となるであ ろう。
そして、協力隊を導入する上ので、最も大切 なことは、市町村と導入地域及び協力隊自身の 目的及び情報の共有、すなわち、マッチングが 協力隊制度の政策実施段階における問題の発生 を未然に防いでくれるのである。なお、智頭町 では、現場の裁量で協力隊が導入されたため、
協力隊制度の認識と理解不足が生じ、協力隊と 導入地域のミスマッチや目的の違いなどの問題 が生まれ、3人の協力隊がドロップアウトして しまった。しかし、この失敗があったからこそ、
協力隊制度の認識や理解の促進が少しずつでは あるが進んでいる67
。
筆者の思いは、この論文で明らかとなった以 上の点を、総務省、市町村、協力隊導入地域及 び協力隊自身、それぞれのアクターの一助とし て頂ければ幸いである。
最後に、本論文は協力隊制度について、智頭 町の政策実施段階に焦点を当て考察したため、
智頭町の事例だけでは考察できない実態がある ことも事実である。しかし、地域の住民との深 い関わりを持たないと視えてこない問題がある ことも事実である。今後筆者は、本論文で明ら かとなった事実を基として、他の協力隊を導入 している市町村の調査及び研究を行い、協力隊 の政策目的と実態の理論を深めていきたいと 思っている。
参考文献
参考 URL
67 筆者は、鳥取県内で新たに協力隊を導入する自治体には、「智頭町の協力隊導入のプロセスを反面教師にして協力隊を導入して下さい」
と訴えかけていた。
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化研修所)第85号、2014年、24−29頁
鬼頭 秀一「環境運動/ 環境理念研究における「よそ者」論の 射程―諌早湾と奄美大島の「自然の権利」訴訟の事例を中 心に―」『環境社会学研究』(環境社会学会)第4号、1998年、
44-59頁
小竹森 晃「智頭町山郷地区の生き方―「創造的昔帰り」を 掲げた地区の事例と地域おこし協力隊―」『自治体学』(自 治体学会)第28−2号、2015年、17-19頁
椎川 忍『地域に飛び出す公務員ハンドブック』今川書店、
2013年、166-190頁
椎川 忍編著『地域おこし協力隊 日本を元気にする60人の挑 戦』学芸出版社、2015年、10-11頁、18-22頁、230-285頁 島根県中山間地域研究センター『地域おこし協力隊の先輩から
後輩に伝えたい「心得集」』14頁
鈴木 輝隆「鳥取県智頭町 地緑型からテーマ型の住民自治組織 へ」―草の根・住民自治による「新たな公」の先駆者―」
『地域活動における自治体の支援・連携に関する調査研究』(財 団法人 地方自治研究機構)2012年、150-175頁
田村 明『まちづくりの実践』岩波書店、1999年、191-194頁 寺谷 篤志、平塚 伸治『地域経営まちづくり―思考のデザ
イン編(version 0)』一般財団法人 日本・地域経営実践士協会、
2013年、57-72頁
新川 達郎編著『政策学入門―私たちの政策を考える―』
法律文化社、2013年、1-14頁、30−43頁
国土交通省 平成26年度 国土交通白書「1地方移住等地方へ のヒト(定住人口)の流れ」http://wwwwp.mlit.go.jp/hakusyo/
index.html(最終アクセス2015年11月16日)
総務省「地域おこし協力隊推進要綱」http://www.soumu.go.jp/
main_content/000035200.pdf(最終アクセス2015年11月16日)
総務省「地域おこし協力隊員の地域要件について」http://www.
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総務省「地域おこし協力隊の概要」
http://www.soumu.go.jp/main_content/000380187.pdf(最 終 ア ク セ ス2015年11月16日)
総務省「地域おこし協力隊Q&A」
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鳥取県「緊急雇用事業計画書(平成23年度)」www.pref.tottori.
lg.jp/secure/388208/2kinkyu23s.pdf(最終アクセス2015年11月 16日)
日 時:2015年10月29日 15:00〜18:00 場 所:智頭町役場、R373 やまさと(旧山郷小学校)
ヒアリング調査
対 象:地域おこし協力隊の導入に関わった智頭町職員2人 山郷地区振興協議会の構成員7人