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に対する意識調査を踏まえて

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(1)

に対する意識調査を踏まえて

著者 柏原 清江

雑誌名 同志社政策科学研究

巻 8

号 1

ページ 31‑44

発行年 2006‑07‑25

権利 同志社大学大学院総合政策科学会

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000010973

(2)

あらまし

 近年、「企業再生」という言葉が、わが国にお いて頻繁に耳にされるようになってきた。日本 経済の長期不況が続くなかで個々の企業を過去 のしがらみから脱却させ、再出発させることの 重要さが理解されるようになり、政府や金融機 関による本腰を入れた「企業再生」への取り組み が始まった。

 筆者は、現在企業のM&Aに携わる業務を行う なかで、主に再建型法的手続を適用した企業に 買収監査(Due Diligence)を行い、管財人および 経営者、従業員の事情聴取を行ってきた。そのな かで、一番多く耳にしたのは、従業員が再生に対 しての管財人並びに旧経営陣の経営続投に対す る不安感であった。一方では、経営者たちも後継 者難の悩みを抱え、再生に対して、不安を募らせ ていた。また、経営者たちは「現状の再建型法的 手続では、大型倒産事件に関しては、社会的影響 から司法、行政が優先的に再生に関与するが、中 小企業の場合は関与さえされない。むしろ、中途 半端な再建をしなければならない状態である。」

これでは、敗者復活(再生)ができるのか不安で、

再建型法的手続を申立てる意味がない。

 本稿の目的は、以上の実務経験から再建型法 的手続の倒産処理において「企業再生」に何が必 要なのか。再建型法的手続の主旨である「企業再 生」を有効にかつ早期実現できるように、人的・

制度枠組みを提言したい。

1.はじめに

 経営者が主導して会社を倒産させることは、

決して「恥」ではない。むしろ、膿を出し切り、

新しい一歩を踏み出さなければ、何も解決はし ない。そのために、企業の再生を試みる再建型法 的手続が存在するのである。

 わが国では「倒産」に対するネガティブな風潮 が確立しており、経営者としても会社の延命に 奔走する余り、倒産法制を活用して事業の本格 的な再生に着手するタイミングは遅れがちに なっている。再建型法的手続を申し立てること に関して、強い心理的抵抗が存在していると言 える。最近、帝国データバンクの調査によると再 建型法的手続の申し立てが減少傾向にあるが、

上記の理由によるものからであって決して景気 が回復したからではない。再建型法的手続を早 期に着手すれば、ステークホルダーの被害も最 小限度に押さえることができる。また、再出発に より経営を一新できることで、会社は蘇ること ができるのである。

 2000 年4月の民事再生法施行、2003 年4月に は改正会社更生法施行と、企業倒産・再建に関す る法制度について、大きな変革が施された。一連 の倒産法制の改正によってわが国の法的倒産処 理のメニューは多様化し、また、事業再生の手法 もバラエティに富むものとなってきた。かつて は、経営が破綻し、キャッシュフローが行き詰 まった企業は、金融機関からの支援が受けられ ない限り倒産し、清算を破産管財人に委ねる処 理方法しか道がなかった。また、一端破綻した企 業には敗者復活の道は残されていなかった。す なわち経営に失敗しなければ企業寿命は永遠だ が、失敗すればそれまでである。これが 20 世紀

「再建型法的手続による企業再生の課題」

―適用企業に対する意識調査を踏まえて―

柏 原  清 江

  

(3)

  1  私的整理のメリットを生かすべく、政府や経済政策の意向を受けた金融業界や関係機関との間で指針がまとめられた。これが「私 的整理ガイドライン」と称されるものである。

  2  安易な債権放棄を回避することを目的に、基本的に金融機関を対象債権者とする調整のための準則を定めたものである。

の価値観だったわけである。

 わが国においても個々の企業を過去のしがら みから脱出させ、再出発させることの重要性が 理解されるようになり、再建型法的手続の存在 を改めて認識し、企業再生(敗者復活)の研究課 題に取り組みたい。

2.企業再生の手法選択 2.1 私的整理の再生特徴

 法律よって規定されている法的整理とは異な り、特に定まった手続の形があるわけではない。

債務者である再生企業と債権者である金融機関 や取引先との間で合意して初めて成立する任意 の手続である。すなわち、債権者が自らの債権を 免除したりリスケ(当初の弁済方法を延期など 変更すること)に応じることによって債務者の 債務を減免し、これにより債務者のキャッシュ フローや財務状態を改善させるのである。また、

任意かつ内密に再建手続を進められ、その企業 の事情に応じた再生手法を選択し、取引先企業 と関係を維持しつつ経営破綻状態を公に知られ ず再生を果たすことが可能である1。しかし、財 産の保全や担保権に対する制約など法的整理で は、可能な手段を持たないこと、債権者に対する 透明性や公正性という点で不安定である。さら にわが国では、法的整理が「倒産」としてネガ ティブなイメージで捉えられ、法的整理になる と事業が著しく毀損してしまうことから、私的 整理で解決しようとするインセンティブが強く 働くのが現状である。しかし、私的整理では債権 回収の最大化を目指す金融機関等の債権者と債 務者との間での調整のため、抜本的な再生計画 案が策定されにくいという問題がある。また、債 権放棄をめぐる金融機関調整では、メイン寄せ が働き、債権放棄に関して関係者全員の同意を 得るのは容易ではないという問題もある。私的 整理ガイドラインでは、上記の問題点を十分に 解消するものではなかった2。債権者調整に関し ては、金融機関が合理的に行動すれば、法的整理 によって事業価値が毀損し債権回収の可能額少

なくなるよりも、私的整理によってある程度の 債権放棄に応じたほうがよいのではあるが、こ れを妨げているのが、金融機関側の意識や融資 慣行の問題がある。最近は、それについては変化 が見られ、私的整理ガイドラインで取り上げる 案件でも極端なメイン寄せは少なくなってきた。

未だに「ゴネル」債権者は存在する。そこで、私 的整理が自律的に行われ、それを円滑化するた めに検討が必要である。

2.2 法的整理の再生特徴

 法的整理とは、法律の定めるところにより、裁 判所の監督の下に債権者の多数の同意によって 再建計画を策定し、その計画に従って強力に再 建を推進する手続である。

 法的整理の手続開始の申し立てがあると、手 続の開始決定があるまで債権者は弁済を受けた り強制執行をすることが禁止されることがあり、

担保権者は、担保権の執行を禁止されることが ある。手続の開始が決定されると債権者や担保 権者は、法的整理の手続と無関係に自由に権利 を行使できなくなる。例えば、債権者からの取立 て騒ぎになるケースでは、そのような債権者の 行為を抑えるための手段(保全)が必要で、法的 整理でなければかないません。また、不動産に設 定された担保権(抵当権・根抵当権)に対し、一 定の制約をかけられるのも法制的整理しか果た せない。その他、債権者に対する透明性や公正性 という点に関しても、裁判所や管財人の監督・管 理のある法的整理に分けがあり、それゆえに債 権者からの感情的な責めや実益のない異議を排 除できるのである。

 近年、2000 年民事再生法の制定、2003 年会社 更生法改正により法的整理の制度整備が進めら れてきた。しかしながら、依然として法的整理に なれば事業価値が大きく毀損するという見方が 大半である。したがって、米国の連邦倒産法チャ プター 11 のような、企業再生のために簡単に法 的整理を活用するという状況には至っていない。

この理由には、法的整理の制度上の問題もある が、社会的なイメージの問題が強いのである。

(4)

 このように、法的整理には法律によって再生 の機会が確保されているというメリットがある 反面、現在でもその公開性と全債権者が当事者 になってしまうことから、なお法律が予定して いない、あるいはカバーしきれない部分で影響 が生じ、そのことによるダメージで再生そのも のが立ち行かなくなることがある。ここに、法的 整理の手続の限界と、もう1つの選択肢である 私的整理が存在する理由がある。

2.3 小括

 過剰債務整理に対しては、私的整理が試みな され、それで調整がつかない時、法的整理に移行 する場合には事業価値の毀損が大きくなってし まう現状では、私的整理において可能な限り調 整が進むことが望ましいと考える。また、法的整 理に移行した場合には、その事業価値の毀損が 可能な限り回避されることが必要である。私的 整理から法的整理への連続性の確保があれば、

私的整理段階で合意するインセンティブが働く 可能性があり、そうすれば、法的整理移行に伴う 事業価値の毀損も回避することができると考え る。そのためには、私的整理を公平な第三者の下 で、厳格な要件に基づいて行われる必要がある。

また、法的整理に移行した場合には、プレ DIP ファイナンスや商取引債権の優先性を認めるな

ど、法的整理の手続を簡素化するなど法的整備 をすることが考えられる。

 現在、私的整理か法的整理かの何れかを選択 するには、その企業の経営状況を正確に判断し、

再生可能な手法を選択するしかないといえる。

以上のことから、私的整理と法的整理では、法的 整理の手続が早期企業再生を実現できると考える。

3.再建型法的手続おける企業再生 3.1 民事再生手続の再生

 2000 年4月に民事再生法が施行された当時、

長期化する景気低迷の中で、中小企業の「倒産」

が激増していた。このような状況下のなか、中小 企業が迅速かつ早期再生をするための再建型の 法的整理として施行された。民事再生法は、施行 されてから5年以上が経過し、倒産手続の一つ として一般に認知されてきた。さらに、民事再生 手続は、「再生」との名称が付されていることか らも明らかなとおり、再建型の手続と位置付け られる。

 民事再生法施行後、民事再生手続を申し立て た企業は、年間約 1,000 件程度の申し立てしてい ることがわかる。(図1参照)

 このように、民事再生手続が多く申し立てら れる理由は、企業が手続を申し立て後も①従来

再建型法的手続申立件数

754

992 902 829

615

15 67 22 66 21

0 200 400 600 800 1000 1200

2000 年度 2001年度 2002年度 2003 年度 2004 年度 年度

民事再生法 会社更生法

図1 再建型法的手続申立件数

(出所:「再建型申立件数」帝国データバンクより自主作成。2006 年2月。

(5)

の経営陣が経営権を持ち続け再生に取り組むこ とができる3。(経営)②手続にスピード性があ り、手続が簡素で迅速に進み企業の事業価値を 劣化させず、再生できることである。(事業)③ 企業の円滑な清算が行われることが考えられる。

また、民事再生手続は、負債のうち無担保一般債 権について、強制的にカットし、企業の過剰債務 を解消できる手続である。民事再生手続は、企業 の破綻処理を円滑かつ迅速に行うための有効な 手法として「再生」を目指す企業にとって利用し やすい手続であるといえる。

3.1.1 民事再生手続の M&A

4

 民事再生法では、M&A を行うには原則として 会社法上の手続が必要である。民事再生手続は、

会社更生手続とは異なり、株主の権利をカット し、企業の支配権や経営権を移転することは無 い。ただし、民事再生手続の場合でも、M&A を 活用するメリットがあるため、M&A を導入しや すいように2つの手続が用意されている。

①減資…裁判所の許可を得た上で再建計画案に 定めることによって、減資を行うことができる。

会社法上の手続である株主総会決議、債権者保 護手続5は不要である。

②事業譲渡…裁判所の許可により、事業譲渡を 行うことが出来る。会社法上の手続である株主 総会決議は不要である。

 民事再生手続の場合、再生計画の中で減資を することはできるが、増資は通常どおり会社法 上の手続(取締役会決議や株主総会決議)を行う

必要がある6

 民事再生手続は、会社更生手続とは異なり、申 し立てまたは開始決定後も原則として従来の経 営陣が経営を行うことから、経営陣の交代に よって事業が混乱・停滞することはない。また、

民事再生手続は、会社更生手続と比べて手続の 進行も早く、それゆえに、民事再生手続は、資産 価値の劣化をできる限り進行させずに、迅速か つ円滑に M&A(特に事業譲渡)を実行するのに 適した再建型法的手続である。

3.2 会社更生手続の再生

 会社更生法手続は、担保権の実行が原則とし て禁止されるなど、債権者に対する制約が最も 強力な再建型法的手続7であり、裁判所から必ず 管財人8(保全管理人)が選任され、裁判所によ る監督を行う管理型の手続である。会社更生法 は、2003 年4月1日改正法が施行され、会社更 生実務の運用に民事再生法の制度を取り入れる などによって、今まで以上に使いやすい手続と なった9

 会社更生手続では、①担保権付債権までが手 続に取り込まれる(担保権の実行が原則として 禁止され、場合によっては債権を一部カットさ れる。また、無担保一般債権だけではなく、優先 債権や担保付債権までもが手続に取り込まれ、

場合によってはカットの対象となる)。②管財人 が選任される。③会社更生手続を申し立てした 場合には、担保権の実行が禁止されるのである。

以上の点が、最大の特徴といえる。

  3  「DIP 型」手続と呼ばれている。「DIP」とは、Debtor-in-possession(占有を継続する債務者)の略で、従来の経営陣のことを意味 する。また、米国チャプター 11 を真似た再建型法的手続ともいえる。

  4  Mergers(合併)&Acquisition(買収)は、株式や事業部門など、会社の財産権を取得する行為を意味する。アメリカでは、一方 の会社が消滅する合併(吸収合併)を Merger、双方が消滅し新会社を設立する合併(新設合併)を Consolidation というように区 別して使かわれる。

  5  会社分割は、債権者の同意なしに債権が分割先の会社(承継会社)に移転するため、会社分割により債権者の権利が害されない ようにするための手続を行う必要がある。

  6  例えば、エア・ドゥの民事再生手続では、再生計画で 100%減資されましたが、増資は取締役会決議を行った上で、日本政策投 資銀行と全日空等が出資して設立した企業再生ファンド等へ第三者割当増資されました。

  7  従来の経営陣が経営権を失い、裁判所に選任された管財人が経営権を持って企業の再生に取り組む手続のこと。

  8  管財人とは、「財産を管理する人」という意味で、裁判所が企業の財産管理権、経営権を持つ人として選任する。通常は、弁護士 が選任されるが(法律管財人)、スポンサー企業の役員等が選任されることもある(事業管財人)

  9  会社更生法の改正法により、会社更生手続の手続が広がり、スピード化された。改正前は、裁判所が「更生の見込み」がある、つ まり企業が経済的に再生可能であると判断した場合のみ、手続の開始を認めることとなっていた。経営の素人である裁判所、及 び裁判所で選任された管財人(保全管理人)が「経済的に再建可能」を判断していたため、「開始」するか否かの判断が遅れてい たと考えられる。改正法により、民事再生手続にならって、申立時点で「明らかに更生計画案が作成できない。または、債権者 の可決が得られない」等と判断される企業でない限り、裁判所は手続の開始を認めることになった。また、更生計画案の提出期 限が法律で定められ、会社更生手続も実務の運用上スピード化した。

(6)

10  菅原雄二「再建型倒産処理実務の運用の現状と課題」『債権管理』No.91,社団法人金融財政事情研究4会 2001 年,5月,106

− 107 ページ。

11  増資とは、会社の資本額を増加させること。第三者割当増資とは、現在の全ての株主ではなく、特定の第三者に対して新株を割 当てて増資をするということ。

12  例えば、マイカルの会社更生手続では、更生計画で 100%減資され、イオンに第三者割当増資する。ことになっている。(マイカ ルの更生計画では、マイカルがグループ会社8社を吸収合併することも定められている)

13  例えば、1998年に会社更生手続を申し立てた日本リースの場合、リース部門について外資系のGEキャピタルに対し裁判所の許可を得て 事業譲渡を行った。

14  会社更生手続の申立から更生計画の策定・成立まで通常1年以上の期間を要する。日本リースがそのケースである。

15  合併には、吸収合併と新設合併があり、前者は、複数の当事者会社のうち1社(存続会社)の名の下に合体し、他社は消滅会社 となる。後者は、すべての当事者会社が一旦消滅し、新会社を設立するという形をとる。通常の合併の場合、コストや時間の点 で有利なため、前者の手続が採用される場合が多く見受けられる。

 現在は、企業再生の手法が確立化され、早期再 生の実現が可能となってきた。

3.2.1 会社更生手続の M&A

 会社更生手続では、担保権の実行を禁止して まで、企業を再建させようという強力な手続で ある。管財人(保全管理人)が、裁判所から選任 され、従来の経営陣に代わって、更生会社の再建 を進めていくことになる。管財人は更生計画の なかで減増資等を定めることによって、取締役 会、株主総会の決議を経ることなく、減資、増資 または合併等を実行することができるのである10。 これに基づき更生会社において、更生計画によ り100%の無償減資とスポンサーや取引先等に対 する第三者割当増資11が行なわれ、資本の再編成 がされている12。このように、更生会社の株式取 得による買収(100%子会社)は容易になってき ている。減増資には、①事業譲渡と異なり、スポ ンサーが引き継ぐ資産・負債・契約関係の選択 や、資産等を個別に移転させる手続は必要がな く、手続が簡単である。②株主は出資金以上の資 金を負担する必要はないため、スポンサーのリ スクが限定される。

 最近では、さらにリスクを限定するためにス ポンサー会社や新会社に事業譲渡する手法が多 く取られようになってできている。更生計画の 中で、あるいは更生計画外で、裁判所の許可を得 て管財人が事業譲渡13を実行することも可能であ る。このため近年、大型更生事件については、外 資系企業、投資銀行、ファンド、日本企業などが 更生会社の買収が盛んになってきている。

 会社更生手続は、手続の進行14が遅く、このた め減増資や事業譲渡などの M &Aの導入が遅く なり、結果として資産の劣化を招くことがある。

そのため、更生計画に頼らず、早期事業譲渡の手 法が取られている。

 このように、様々な資本・組織の再構成を円滑 に行うことが可能であることから、M&A(特に 合併)を行うのに適した手続となっている。

 会社更生手続は、申し立てと同時に経営陣が 退陣して保全管理人が選任されることから、こ れによって事業が一時的に混乱する可能性があ る。また、会社更生手続は、極めて厳格な手続で あり、更生計画の認可までに比較的時間を要す る。それゆえに、M&A の実行までに更生会社の 資産価値は劣化してしまう可能性がある。会社 更生手続においてM&Aを行う場合には、それら の点を注意する必要がある。

3.3 再建型法的手続の再生の方向性

 M&A は経営が困難な状態になった企業を「再 生」することを目的に行われる場合が多い。最近 は、このような再建型 M&A は、再建型法的手続 処理の中で行われるものが目立ち、スポンサー 側から見れば、再建型法的手続における企業の 資産・債務の透明化により、投資のリスクは最小 になり、また相対的に廉価な買い受けが可能と なるメリットがあるからであろう。また、再建型 法的手続の側から見ても、何らかの形での M&A は、株主・経営者等の従来の経営主体の責任を問 うために必要不可欠なものである。その意味で、

再建型法的手続におけるM&Aによる処理は、今 後重要性を増してくることは間違いないであろ う。以下では、最終的な目的との関係で、いかな る組み合わせが考えられるのかを簡単に説明し たい。まず、スポンサーが対象企業を完全に一体 化したいのであれば、合併15という手法になる が、この場合には、会社更生手続が一番望ましい

(7)

16  2003 年に民事再生法改正で、特別総会決議の省略が認められたが、取締役会決議の必要性は変わらない。

手続といえる。会社更生手続では、更生計画によ る合併が可能であり、会社法上の手続を履践す る必要がないからである。これに対して、民事再 生手続では、会社法の総会決議等の手続が必要 となり、余り実際的ではない。一般的には、倒産 企業を直ちに一体化することはスポンサーに とってリスクが大きいとすれば、むしろまず対 象企業を子会社化して、資産・事業内容等を見極 めたうえで合併等を図るということが考えられ る。このような子会社の目的を達成する手法と しては、会社更生手続における増減資の手法が 用いられる。このような手法は、今後とも有効で ある。これに対し、民事再生手続では減資は再生 計画でできるとされるが、株式発行は会社法上 の手続を経なければならず、相当な困難が予想 される16。いずれにせよ、目的に応じて多様な M&A の手法が開発または活用されていくこと が、再建型法的手続の可能性を広げ、企業再生の 選択肢を増加するという観点からもM&Aの手法 は多く取り入れられるだろう。

3.4 再建型法的手続の再生の課題

 再建型法的手続を申し立てた債務者会社は、

一般企業サイドから見れば、事業に失敗した場 合の再挑戦の機会として活用されていると認知 され、金融機関をはじめとした債権者サイドか らも、再建型は清算よりも回収額が多く見込め る可能性があることから、再建型法的手続を受 け入れるケースが目立っている。また、債務者会 社は「再生」を目指し、自助努力をしている。し かし、認知されているにも拘わらず、いまだ再建 型法的手続は「倒産」=「悪」というレッテルを 貼られ企業再生に不可欠である「信用」が難しい という問題が指摘される。

 経営者は、会社そのものの存在にこだわり、選 択肢が狭くなるケースが非常に多い。このよう な経営者の意識を変えない限り、再建型法的手 続の有効的な利用はできないと考える。また、経 営者のなかには、かつての倒産処理では、「M&A でやるような再建型法的手続は失敗例である。」

と言われた時期があった。企業再生をするのに 債権をカットし、カットした残金を 10 年、20 年

かけて返済し、返済した後初めて再生したと言 われるわけで、それを事業譲渡などの形で M&A をアレンジするのは邪道であると言われていた。

あるいは、スポンサーと称する者が現れて、会社 を合法的に乗っ取ることが当然であるように思 われていた。過去にわが国の倒産処理では、非合 法な会社整理屋などが暗躍した事実がある。現 在、弁護士が管財業務を行うのも、そうした不正 を防ぐためであった。このような過去の倒産処 理の歴史のなかで、日本特有の実務慣行が定着 してしまったのである。

 現在、会社更生法、商法と改正され、会社法も 2006 年5月から改正法が施行されるが、まだま だ不備な点はあり、何十年も判例や解釈で乗り 切るのには限界があり、そうした立法作業は常 時継続的に行われるべきである。政治学・社会 学・経営学などの分析を行い、その結果必要と判 断される法律はいつでも新規立法すべきであり、

問題が多いと判断される法律はいつでも早急に 改正されるべきである。常に時代の要求に合わ せた、経営観点から取り入れることが、効果的な

「企業再生」を可能にする。

3.5 小括

 企業再生の手段としては、資本の欠損の解消、

債務の再構築、資本の再構築が必要であるが、こ れらを行うためには、債権者、株主の同意および 会社法上の手続が必要となる。しかし、債権者、

株主の同意については同意を得られるかどうか、

また、反対者の存在によりできなくなるという 不確かな状況に陥る。会社法上の手続について は、時間がかかり時機を失うというリスクを伴 う。それでは、企業の再生はおぼつかない。そこ で活用されるのは、再建型法的手続である。再建 型法的手続においては、多数決原理により反対 債権者、反対株主の意思を押さえ込むことがで きるうえ、会社法上の手続を踏まなくして済む から再建手続成立の不安定さもカバーできる。

また、手続に要する時間を回避できるというメ リットがある。さらに、倒産予備軍の企業価値 は、時間の経過とともに劣化していき、経営破綻 が予測されるときは、早期に法的手続を申し立

(8)

てることが肝要である。いわゆる再建型法的手 続を早期に申し立てることは、企業価値におい て社会的損失を少なくできるわけである。また、

再建型法的手続は、ステークホルダーに対し公 正性・透明性による信頼性が強い。破綻した企業 には、社内外において感情的なトラブルが発生 しやすく、最小限に回避できるのである。このよ うに再建型法的手続は、企業再生に有意義な倒 産法であるといえる。

4.再建型法的手続を適用した企業に対す る意識調査

4.1 D.D 調査の概要

 本研究のビジネスデュ−ディリジェンスは、

再建型法的手続を適用した債務会社の企業再生 において現状の企業価値を再認識し、これを向 上させるため、買収先企業の実態を把握・分析し 最適な方法を見つけることを第1の目的としてい る。第2の目的は、再建型法的手続のリスクの把 握をし、再建型法的手続での企業再生の有効性 を問う。以上の目的をもってビジネスデュ−

ディリジェンスを買収先企業で行うなかで、直 接従業員・経営者に質問し、回答を得た。また、

再建型法的手続を専門とし、M&A を手がけてい る企業再生プレイヤーに直接質問を行った調査 結果が以下のとおりである。

1)調査の目的

再建型法的手続に対するイメージや再建に関 する意識・問題点を調査し、早期企業再生の方 向に向けた政策提言の参考とする。

2)調査項目

¡)再建型法的手続のイメージについて

)再建型法的手続の再建について

£)企業再建と社内状況について

3)調査対象

¡)再建型法的手続を適用した企業 50 社の従

業員・経営者

(内訳:民事再生法適用企業 40 社、会社更生 法適用企業 10 社)

™)従業員 130 人、経営者 125 人、企業再生プ

レイヤー 30 人

4)調査時期

¡

)2000 年6月〜 2005 年 12 月 5年間

5) 調査方法

¡)再建型法的手続を適用した 50 社の企業に

訪問し、デューディリジェンスを行うなか で、従業員・経営者の質問時間で調査を行っ た。

)企業再生プレイヤーは、企業再生コンサル タント、企業再生専門の弁護士、M&A 専門 の金融機関のプレイヤーに直接質問事項を 配布及び口頭質問を行った。

6)回収結果

100% の回答率(従業員・経営者・企業再生プ レイヤー)

4.2 従業員の意識調査Ⅰ

―民事再生法・会社更生法適用―

< 調査所見 >

質問1:従業員は、会社が再建型法的手続を申し 立てたことにより、倒産法の認識をしたとの回 答が多く、そのうえで、62%の従業員は、「適用 したのは妥当ではない」ことが明らかになった。

その理由としては、質問7の再建型法的手続のネ ガティブなイメージに関係していると思われる。

質問2:全従業員は、「倒産」という意味はマス コミや報道などによって理解しているが、再建 型法的手続(民事再生法・会社更生法)について の特徴などは、50%以上が認識していなかった。

一般に認知されにくい法律だということが考え られる。

質問3:60%以上の従業員は、現状の会社再建

(再生)が可能であると考えている。なぜならば、

「再建」しなければ職を失う不安があるからであ る。また、「再建できるかわからない」と回答し た 31%の従業員の理由は、現在の経営者の続投 や管財人等(経営陣)の経営資質に不満があり、

再建できるのか不安であるようだ。

質問4:「M&A」再建による不安は、52%以上の 従業員が抱えており、その不安とは特に雇用継 続(リストラ)問題が一番多く、さらに「再建型 法的手続=破産」という「悪=社会的制裁を受け る」のネガティブなイメージが根底にあり、早期 手続を終結して、この状態から(質問5の社内が 良好でない状態)脱却したいと思っているよう である。

質問5:社内体制は、再建型法的手続を申し立て

(9)

た以前も現在も良好な雰囲気ではない。また、従 業員は常に再建に不安があり、前向きな姿勢で 業務を遂行していないようである。さらに、管財 人が就任している会社では、管財人に対して経 営者としての資質に不満・不安が多いことが明 らかになった。

質問6:再建型法的手続を申し立てた債務者会 社の社内士気は低く(質問5の回答を含め)、優 秀な人材はすでに退職しており、再生に必要な 経営者人材(優秀で強力なリーダーシップを取 れる人材)を強く求めていることがわかった。

質問7:再建型法的手続のイメージは、再建(再 生)を前向きに捉える倒産法ではなく、「破産=

倒産」というネガティブなイメージが根底にあ ることが明らかであった。

4.3 経営者の意識調査Ⅱ

−民事再生法・会社更生法適用−

< 調査所見 >

質問1:経営者は、この決断がベストであること を信じ、再建型法的手続の申し立てを行ってい る以上、申し立ての妥当性を問うのに対して「は い」と回答する経営者が多いのは、当然であった。

(経営者自身の経営指針が問われることになる)

質問2・3:経営者は、経営が行き詰まった段階 で弁護士、企業再生アドバイザリー等に相談し、

再建型法的手続の申し立てを行っている。この 時点で再建型法的手続の知識を取得し、企業再 生プレイヤーによって再建のスキームまでアド バイスを受けるようである。また、申し立て段階 No   質問事項  回答  回答数  回答  回答数  回答  回答数 

1  はい  いいえ

 

3   

 

5   

 

優秀な 人材 

社会的に 恥ずかし

7   

会社が再建型法的手続 を適用したのは妥当だ と思いますか。 

再建型法的手続の特徴 等を知っていますか。

会社が再建型法的手続 を適用して再建出来る と思いますか。

再建(M&A)には不安 がありますか。 

現在、会社の雰囲気は 良いですか。

今、会社の再建(再生)

には何が必要だと思い ますか。

今、会社の再建(再生)

には何が必要だと思い ますか。

26

(20%)

80

(61.5%)

24

(18.5%)

わから ない

はい  46 いいえ

(35.4%)

64

(49.2%)

20

(15.4%)

わから ない

はい  78 いいえ

(60%)

11

(8.5%)

41

(31.5%)

わから ない

はい  68 いいえ

(52.3%)

45

(34.6%)

17

(13.1%)

わから ない

はい  52 いいえ

(40%)

78

(60%)

0

(0%)

わから ない

豊かな 資金力   102

(78.5%)

28

(21.5%)

0

(0%)

わから ない

再建出来 る倒産法 84

(64.6%)

23

(17.7%)

23

(17.7%)

わから ない

表1 会社再建に関する調査(回答数:130 名 調査方法:口頭質問 期間:2000 年〜 2005 年。)

(10)

で企業再生プレイヤーが会社再建を実現出来る ことを前提として、スポンサー探しが始まり、水 面下でスポンサー探しを行っているのが明らか になった。

質問4:経営者は会社再生を早期に実現したく、

「豊富な資金」を望んでいるようであるが、優秀 な人材をも望んでおり、両者のバランスの取れた 方法を模索しているようである。現実問題とし ては、財務面(キャッシュフロー)が先行し、優 秀な人材の登用などは後回しになっているのが 実態である。そのため、早期企業再生が遅れがち になっている。

質問5:再建が実現(再建型法的手続の終結)す るまでは不安があるが、申し立て段階で再建ス キームをスポンサー側と調整をしているので不 安はあまりないことがわかった。また、会社更生 法による裁判所の管財人の選任基準や経営資質 に疑問があるとの回答が多かった。

質問6:最近、経営者は、再建型法的手続を企業

再生の手段としての捕らえているようではある が、半数以上経営者は、やはり申し立てを行った 後、社会的な制裁(マスコミ報道など)を受けた ことにより、倒産法のネガティブなイメージは まだまだ存在している結果が明らかになった。

また、経営者が「敗者復活」を成し遂げられる再 建型法的手続(民事再生法)は、社会的にほど遠 いといえる回答が多かった。経営者自身、セカン ドチャンスの場として経営活動を続けることは、

社会的に許しがたいことであるようだ。

4.4 企業再生プレイヤーの意識調査Ⅲ

―再建型法的手続適用企業の再生経験者―

< 調査所見 >

質問1:現場(会社)で、第三者の立場としてD.D を行う中で、社内の士気が低下しているのは当 然である。(ガバナンス体制が崩壊している企業 No 質問事項  回答  回答数  回答  回答数  回答  回答数 

3 

再建型法的手続を適用した のは妥当だと思いますか。 

再建型法的手続の特徴等 を理解していますか。 

再建型法的手続を申請す るにあたり誰かにアドバ イスを依頼しましたか。ま た、再建に関する依頼を しましたか。 

今、会社の再建(再生)には

、何が必要だと思いますか。 

再建(M&A)には不安 がありますか。 

再建型法的手続のイメー ジはどのように思います か。 

はい  99 いいえ

(79.2%)

22

(17.6%)

4

(3.2%)

わから ない

はい  125 いいえ

(100%)

0

(0%)

0

(0%)

わから ない

いいえ  はい

(弁護士/

コンサル 系会社)

25

(100%)

0

(0%)

0

(0%)

その他

  26

(20.8%)

優秀な 人材

社会的に 恥ずかし

豊富な 資金力

99

(79.2%)

0

(0%)

わから ない

はい  42 いいえ

(33.6%)

62

(49.6%)

21

(16.8%)

わから ない

  62

(49.6%)

再建出来 る倒産法

63

(50.4%)

0

(0%)

わから ない

表2 会社再建に関する調査(回答数:125 名 調査方法:口頭質問 期間:2000 年〜 2005 年。)

(11)

が破綻を起こしている)

質問2:企業再生を早期に行うには「法改正が必 要である」という回答が多く、企業環境にあった 改正を常時行うべきであるとする意見がほとん どであった。

質問3:「豊富な資金力」(財政面)は、当然企業 再生を行う手段としては第一優先であるが、そ の担い手となる優秀な人材も必要であるのも事 実である。この両者のバランスが重要であるこ とが明らかになった。

質問4:企業再生プレイヤーは、金融機関出身者 が多く、財務・財政面や法務知識は兼ね備えてい るようである。しかし、経営資質とリーダーシッ プを兼ね備えている人材はいないようである。

特に早期再生を実現するには、経営資質を持つ 人材が必要である。

質問5:M&A では、買収側企業から従業員を数 名、買収先企業に派遣しているパターンがほと んどである。外部人材の登用やターンアラウン ド・マネージャー(企業再生請負人)団体から派

遣を行うのは、大企業が多いことがわかった。買 収先企業の文化を買収側企業の文化に変革する ことは、非常に困難である。そこで、外部人材の 登用が一気に社風を変えてしまうことがあるこ とが明らかになった。

質問6:企業再生プレイヤーは、私的整理よりも 法的整理の再建型法的手続で企業再生を行う手 段としては、M&A がしやすいとの意見がほとん どであった。

4.5 調査結果のまとめ

 D.D 調査より再建型法的手続を適用した企業 50 社の再建状況は、下記の図2のとおり 86%以 上が再建を果たしており、再建型法的手続が使 い易く「再建」には便利な倒産法であることが位 置付けられる。最近の企業再生には、併用する形 のものが非常に多くなっている。民事再生法に はプレパッケージの枠組みに第三者割当増資や No  質問事項  回答  回答数  回答  回答数  回答  回答数 

今まで再建型法的手続を 適 用 し た 企 業 の雰囲 気 はどうですか。 

再建型法的手続の法制度 には何が必要と思いますか。 

今、会社の再建(再生)には

、何が必要だと思いますか。 

再建(M&A)のプレイヤー

−には何が必要ですか。 

企業再生請負人を依頼も し く は 派 遣 し たこと が ありますか。 

再建型法的手続のイメー ジはどのように思います か。 

はい  3 悪い

(10%)

27

(90%)

0

(0%)

わから ない

財務知識 経営知識 法務知識

これから 10

(33.3%)

7

(23.3%)

13

(43.4%)

はい  10 いいえ

(33.3%)

15

(50%)

5

(16.7%)

法改正が 必要 

現行法で よい   25

(83.3%)

5

(16.7%)

0

(0%)

わから ない 優秀な

人材 

豊富な 資金力   14

(46.7%)

16

(53.3%)

0

(0%)

わから ない

社会的に 恥ずかし

再建出来 る倒産法 2

(6.7%)

28

(93.3%)

0

(0%)

わから ない

表3 会社再建に関する調査(回答数:30 名 調査方法:配布及び口頭質問 期間:2000 年〜 2005 年。)

(12)

事業譲渡を規定している点が重要である。すな わち、最初から再生型の M & A による企業再生 を前提とした法律なのであるが、この調査で経 営者の多くが、経営に行き詰まり仕方なく再建 型法的手続を申し立てざるを得なかったケース が目立っていた。再建型法的手続に対するネガ ティブなイメージが適用しずらくさせているこ とが明確になった。また、最近の企業再生の動向 は、再建型法的手続を申し立てする企業が減少 してきている。(この傾向は、景気が上向いたわ けではない)「倒産」=「悪」のイメージが影響 を及ぼし、払拭するには、まだまだ時間がかかる であろう。

 この調査で従業員、経営者、企業再生のプレイ ヤー達の声で多かったのは、制度的な枠組みは もちろんのこと早期企業再生には優秀な経営者 人材が必要であり、ターンアラウンド・マネー ジャーだけではなく、セカンド・マネージャー的 な存在も必要とされ、外部人材の登用と制度的 バランスが早期再生を実現するための重要課題 であることが明らかにされた。

5.企業再生の課題 5.1 企業再生の確立

 これから確立すべき新たな企業再生とは、事 業に変調が生じ始める早期の段階で企業再生に 向けた取り組みをスタートする体制を考案する。

 これを実現するには、倒産法制の整備だけで

は不十分である。わが国では、企業と銀行、株主 の間で、長期的な関係が重視されてきた。これか らは、事業の収益性に着目して、第三者の間で新 たなモニタリングの体制を構築し、早期着手が 自ずと促される仕組みを確立することが必要で ある。早期再生を実現させるには、倒産法の活用 を回避してはならない。倒産法制の活用は、会社 の「破綻」という側面と企業再生という二面性が ある。しかし、わが国では、前者が強調され、倒 産法制の活用が回避されてきた。これからは、企 業再生という側面を注目して、倒産法制を積極 的に活用する土壌を構築することが必要となる。

また、企業再生を迅速に果たすためにも、過去の 経営のしがらみを断ち切ることが必要で、内部 の人材を重用するだけではなく、外部の人材を 活用していくことが必要になってくる。このよ うな取り組みには、日本経済に深く根ざした意 識・慣行・しがらみを改革していくしかない。米 国では、企業再建を専門に請け負うビジネスが 成立するほど、企業再生の人材層は厚く、こうし た外部の専門家を躊躇なく活用して事業再生を 図る慣行が根づいている。この意味で、企業再生 の担い手として、必要ならば外部の専門家をう まく活用できる環境を組み込む必要がある。現 在、わが国では圧倒的に企業再生の専門家が不 足している。企業再生のためのアドバイザーを 早急に育成する必要がある。

5.2 再建型法的手続の制度的枠組み

再建型法的手続適用後の再建状況

7

2 1

34

0

6 0

10 20 30 40

M & A 自主再建 破綻

件 数

会社更生法 民事再生法

図 2 再建型法的手続適用後の再建状況

(出所:2000 年〜 2005 年 企業 50 社 D.D 調査より)

(13)

 再建型とは、企業あるいは事業の再生を目的 とした手法であり、企業再生といった場合には、

再建型の手法を指すことが多い。再建型の法的 整理の代表例として、民事再生法と会社更生法 が挙げられ、この2法の活用は盛んである。これ まで、売上や総資産といった企業の規模によっ て再生の手法が考えられており、大企業は会社 更生法、中小企業は民事再生法といった区分が なされてきた。しかしながら、本来は再生法の特 徴と再生をしようとする企業を取り巻く状況と の整合性によって決めるべきものである。

 制度的枠組みの全体像では、第1に債務者と 債権者といった当事者間での任意の合意に基づ く私的整理と、法的な枠組みを活用する法的整 理によるものである。第2にその企業・法人格を 清算するのか、あるいは再建を図るのかといっ たものである。こうした倒産手続の中で、企業な いしは事業を再生させるためには、最適な手法 を選択して活用しなければならない。また、現在 ではプレパッケージ型という私的整理と法的整 理の良い面を活用した複合的な手法や、産業活 力再生法といった特別措置法の活用も選択肢と して検討に値するであろう。このように再生手 法の制度的枠組みは、迅速な再生を進める上で 不可欠であり、現在はその基盤が整ってきたと いえるが、各手法の特徴や差異を検討し、どのよ うな状況下において、何を目的とした場合に、ど の手法を用いるべきかを検討するべきである。

例えば、企業の再生にあたり、現状を認識した上 で最初に考えるべき選択は、私的整理によるも のとするか、法的整理によるものとするか、であ る。私的整理は当事者間による柔軟な方法であ るのに対して、法的整理には、会社更生法と民事 再生法が存在し、裁判所による仲介など厳格な 法的手段を必要とする。法的な枠組みを必要と する理由は、企業再生における最も重要な問題 が利害関係者間の調整だからである。

 特に、債務者である企業の経営者がその地位 に留まろうとした場合や、再建のスピードを重 視する場合には、民事再生法を選択しがちであ る。しかし、担保権者の理解が得られずに再生計 画が頓挫するケースが珍しくない。民事再生法 では担保権者を拘束することが難しく、また原 則として経営者はその地位を継続することがで きる。また、100%減資が実施されないケースも あり、株主責任について曖昧な部分を残してい

る。

清算型の再生手法というのも存在する。清算型 は、既存法人格の消滅を伴うために、再生と結び つかないと考えられるかもしれないが、清算型 による再生も可能なのである。債権者との関係 がこじれている場合には、債権者の同意が得ら れにくく、民事再生法や会社更生法による申請 を行ったとしても、計画認可までの時間を要す る場合、その間の事業価値の劣化は避けられな い。こうした場合には、債権者の同意が不要な破 産法を活用することにより、法人格の消滅と事 業譲渡を受け皿会社に行うことで再生が可能と なる場合がある。問題は、倒産法制度以外の制度 慣行である。具体的には、金融行政における債務 者区分の扱い、法的整理案件を一律上場廃止と している証券取引所の上場廃止基準、法的整理 になれば、手続開始前債権の弁済禁止の影響が 不可避的に取引債権者にもおよぶという一般的 な認識、「法的整理=破綻」とする報道による取 り扱いといった点が指摘される。こうした法的 整理活用を妨げる要因について、改善の方向を 掲示する。

5.3 再建型法的手続の人的枠組み

 倒産法・商法の改正、会社法の改正と法制度は 整備されたものの、人的枠組みの制度が手薄に なっている状況である。これでは、企業再生の早 期着手や迅速的な再生を遅らせている原因であ ると考えられる。

 裁判所が再建型法的手続を申し立てた債務者 会社に法律管財人・監督委員(弁護士)、事業管 財人(経営者)の派遣を行う際に、両者の役割(法 律部門・経営部門)分担を明確にし、債務者会社 の経営状況を把握して外部人材を派遣する枠組 みを提言したい。なぜならば、更生管財人や再生 手続における申し立て代理人に就任する弁護士 は、経営活動のリーガル・チェックを日常業務と していることから特定の経済活動の合理性を チェックする知識、経験が備わっているわけで はない。また、意識調査からも裁判所から選任さ れる管財人の経営者としての資質に疑問がある との意見が多く、企業の再建の妨げになってい るようである。そして裁判所は、手続終結後再建 を果たした企業などで取締役等に就任している

(14)

17  事業再生がビジネスとして定着していくためには、適正な報酬が支払われることも必要である。事業再生を成し遂げた場合の経 済的価値を十分に評価した報酬が支払われることが求められる。

18  「事業再生実務協会」 http://www.turnaround.jp 参照。経済産業省、中小企業庁、日本商工会議所、東京商工会議所等の支援を得 て、事業再生の実務に携わる実務家のネットワークの形成、経営者への普及啓発の活動等を行っていく。

弁護士(管財人)の監視・チェック体制機能を設 置することである。また、そのような企業には、

ターンアラウンド・マネージャーを送り込む枠 組みを構築するべきである。

 抜本的な企業再建を実現するためには、フィ ナンシャル・アドバイザーやターンアランド・マ ネージャーといった外部の専門家をなるべく早 期に躊躇なく活用することである。

 わが国では終身雇用制のもと、内部で昇格し た者が企業経営に当たることが通常であり、従 業員の意欲を高め長期的な視野で経営を展開す ることを可能とするなどの意義が認められる。

しかしながら、事業が危機的な状況に陥り、過剰 な債務を抱えるような状況に立ち至った場合に は、外部人材を活用して、過去のしがらみから決 別した大胆な取り組みを実行するほうが企業再 建を成功に導きやすい。また、経営危機時におい ては円滑に外部人材の活用が進むこととなれば、

迅速な企業再建のみならず、経営の規律を高め、

早期企業再建への取り組にも資することになる。

こうした終身雇用制と整合的な人材活用の慣行 が根付くことが、新たな企業再建の枠組みを構 築する重要な要素となる17

 わが国では、企業再生ビジネスを日本に根付 かせるには、問題がある。それは、外部から経営 者が乗り込んでくることに対する拒絶感や、企 業を渡り歩くことを好ましく思わないという風 潮が依然根強い。このため、ある企業で企業再建 を成功させた人材は、そのまま社長や会長にと どまり、再建で培った経験を再び活かせないこ とが多い。また、わが国では、経営者の受け取る 報酬が欧米などに比べると少なく、経営再建と いう難しい責務を果たした人も、十分な報酬を 受けにくい企業風土がある。

 企業再生ビジネスの活性化を背景に、企業再 生の実務を担う人材を必要とする企業と企業再 生専門家を養成することを目的として、民間主 導により、「事業再生実務者協会」18が設立された。

本組織による企業再生に携わる①実務家のネッ トワークの形成、②経営者への普及啓発の活動 等、政府による適切な支援が必要であり、これを 如何に各地方自治体に根付かせ、一刻も裁判所

から派遣される人材登用の検討をしなければな らないと考える。

おわりに

 本稿は、企業の「再生」を実現させるために、

再建型法的手続の重要性を意識調査(D.D)にお いて課題および必要性について論じてきた。

 筆者は、グレーゾーンの企業が再建型法的手 続を適用することで、「企業再生」の近道として 有効活用を行ってほしい。また、再建型法的手続 の下で企業が再生するにあたり、経営者こそが 企業を再生可能にし、完成度の高い復活を成し 遂げる重要な役割であると信じる。会社が経営 困難で経営破綻が予測されるときは、早期に再 建型法的手続を申し立てることが肝要である。

企業の活力を復活させるには、何が必要か。すな わち、企業再生の「人的・制度枠組み」の確立が 必要となる。すでに制度の枠組みは、①社外取締 役制度の採用(コーポレートガバナンス強化)、

②直接金融へのシフト、③プロジェクト・ファイ ナンスや④シンジケート・ローンの活用、⑤ロー ン売買市場の整備、⑥株式の持ち合い構造の解 消、⑦企業再生ファンドの登場、⑧私的整理ガイ ドラインや企業再建法制の整備、⑨産業再生法 の改正や産業再生機構の設立など、⑩法制度や 慣行、実務など広汎な範囲にわたる改善が進め られている。企業再生の法制はかなり整備され てきており、世界のトップ水準までに達してい る。企業再生ファンドやDIPファイナンスなど再 生のための道具立ても整いつつある。現在、金融 や企業の現場では、企業の病巣を発見して、早め に治療を施し、経営資質を備えた人材(リストラ クチャリング・アドバイザーやターンアラウン ド・マネージャー)が必要である。

 再建型法的手続は、経済を活性化させる手段 という積極的な役割を担っている。企業再生は、

破綻企業の処理において①非常に効率的である こと、企業再建を行う場合②M&A手法が優れて いること、ただし、③ M&A は迅速性が要求され ること、それには再建型法的手続の活用が極め

(15)

て有効であり、企業再生の第三者の担い手が必 要である。再建型法的手続での企業再生の実現 を図るために司法(裁判所)・行政との協力を得 て、人的・制度枠組みを早急に確立しなければな らないと考える。

参考文献

1.  事業再生研究会機構編『事業再生の担い手と手法』商事 法務,2003 年。

2.  スチュアート・スラッター,デービット・ロベット『ター ンアラウンド・マネジメント』ダイヤモンド社 ,2003 年。

3.  高木新二郎『企業再生の基礎知識』岩波書店,2003 年。

4.  高木新二郎『アメリカ連邦倒産法』社団法人商事法務研 究会,1996 年。

5.  田作朋雄『民事再生法』東洋経済新報社,2000 年。

6.  中村裕昭著『ターンアラウンド・スペシャリスト』社団 法人金融財政事情研究会,2003 年。

7.  藤原総一郎『企業再生』日本経済新聞社,2003 年。

8.  藤原総一郎編著『企業再生の法務』社団法人金融財政事 情研究会,2004 年。

9.  松田純一『会社更生法改正』日本実業出版,2003 年。

10.  安田隆二『企業再生マネジメント』東洋経済新報社,

2003 年。

11.  日本弁護士連絡会・倒産法制検討委員会編『新破産法』

㈱商事法務,2004 年。

●雑誌論文

1.  商事法務研究会編『再生・再編事例集3 事業再生の決 断―再生の現場と志―情熱の結晶』社団法人商事法務 研究会,2004 年2月。

2.  事業再生研究会機構編『プレパッケージ型事業再生』社 団法人商事法務研究会,2004 年3月。

3.   菅原雄二「再建型倒産処理実務の運用の現状と課題」

『債権管理』91号,社団法人金融財政事情研究会,2001 年5月。

4.  藤田浩著『M&A ドキュメント事業売却』社団法人商事 法務研究会,2004 年3月。

5.  水元宏典・柳川範之・田昨朋雄編著「産業再生と倒産法」

『ジュリスト』No.1265 有斐閣,2004 年4月。

6.  社団法人金融財政事業研究会「M&A・事業再生−コー ポレートガバナンス」『事業再生と債権管理』110 号,

ぎんざい,2005 年 10 月。

7.  社団法人金融財政事業研究会「破産・再生実務の現状と 課題」『事業再生と債権管理』111 号,ぎんざい,2006 年1月。

●その他

1.  帝国データバンク「TEIKOKU NEWS」関西版3月号  帝国データバンク,2006 年3月号。

2.  「企業再生請負人(ターンアラウン・ドマネジャー)」掲 載記事 日本経済新聞,2004 年3月 28 日,6ページ。

3.  「企業再生請負人」掲載記事 京都新聞,2004 年2月 3日,4ページ。

参照

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