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米田埋め込みと米田の補題

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Academic year: 2021

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(1)

米田埋め込みと米田の補題

久木田水生

Cate20111020

米田埋め込みとは,任意の局所小圏CC上の前層presheafCopからSetへの関手圏)に埋め込む関 手である.本稿では関手のいくつかの性質の定義を導入し,米田埋め込みを定義する.そしてそれが実際に埋 め込みになっていることを確認する.米田埋め込みとは直接関係はないが,第1節では圏同値の二つの定義を 紹介し,それらの定義が等しいことを確認する.

1

関手の性質と圏同値

Definition 1.1 (単射的,全射的). 関手F :CDが対象に対して単射的injective on objectsであるのは 任意のA, B C0に対してF A=F BならばA =Bであるときである.F が対象に対して全射的である surjective on objectsのは任意のAD0に対してあるB C0が存在してF B=Aが成り立つときである.

射に対して単射的(全射的)injective (surjective) on arrowsという概念も同様に定義される.またF が対象 に対して実質的に全射的essentially surjective on objectsであるのは,任意のAD0に対してあるBC0

が存在してF B'Aが成り立つときである.

単射的,全射的の概念は大きな圏に対しても適用される.小さな圏の間での対象(射)に対して単射的(全 射的)関手は,対象部分(射部分)について単射(全射)である.

Definition 1.2 (忠実,十全). ある関手F :CDが忠実faithfulであるのは,任意のA, B C0, f, g : ABに対してF f =F gならばf =gであるときである.

ある関手F :CDが十全fullであるのは,任意のA, BC0, f :F AF Bに対してあるg:AB が存在してF g=f であるときである.

C,Dが局所小圏であるときFA,Bによって次のように定義される,C(A, B)からD(F A, F B)への関数を 表す:

FA,B(f) =F f (f C(A, B))

この記法を使うと,局所小であるC,Dに関してはFが忠実(十全)であることは任意のA, BC0に対し FA,Bが単射(全射)であることに等しい.

Example 1.3. (1)MonからSetへの忘却関手は忠実であるが十全ではない.

(2)PPosは前順序集合の圏とする.任意の前順序集合(P,)に対して'PP×P a'P b ⇐⇒ a bbaとして定義する.このとき明らかに'は同値関係.PPosからPosetへの関手F を次のように定 義する:

(2)

F P =P/'P,

F(f :P Q) =f /'P. このときFは十全だが忠実ではない.

(3)C×DからDへの投射関手は忠実かつ十全である.

忠実(十全)であることと射に対して単射的(全射的)であることの違いに注意.例えば上の例の(3)は忠 実であるが,射に対して単射的ではない.また例えばC

A f //B C g //D

という圏とし,D

X

α //

β //Y という圏とする.関手F :CD

F A=F C=X, F B=F D=Y, F f=α, F g=β と定義すると,Fは射に対して全射的であるが,十全ではない.

Exercise 1.4. SetからMonへの自由生成関手は忠実性,十全性を満たすか?

Definition 1.5 (圏同値). C,Dと関手F :CD, G:DCが圏同値equivalence of categoriesを構 成するのは,自然同型η:idCGF²:idDFGが存在するときである.

C,Dがある関手F :CD, G:DCとともに圏同値を構成するとき,CDは(圏として)同値 equivalent as categoriesであるといい,

CD

と書く.

Exercise 1.6. が反射性,対称性,推移性を満たすことを示せ.

圏同値には次の命題によって示される同値な定義がある.

Proposition 1.7. C,D, F :CD, G:DCが圏同値を構成する ⇐⇒ F :CDは忠実かつ十全 で,対象に対して実質的に全射的である.

Proof. を示す.C,D, F :CD, G:DCが圏同値を構成するとする.このとき自然同型η:idC GF²:idD FGが存在する.まずFが忠実であることを示す.A, B C0, f, g:AB, F f=F g とする.このときGF f =GF gηの自然性より

A ηA //

f

GF A

GF f

B η

B

//GF B

が可換.よってGF fηA=ηBf.同様にGF gηA=ηBgGF f =GF gよりηBf =ηBgηA

は同型射だからf =g.よってFは忠実である.Gが忠実であることも同様に示される.

(3)

次にF が十全であることを示す.f :F AF Bを考える.ηの自然性より任意のCCに対して

C ηC //

ηC

GF C

GF ηC

GF C η

GF C

//GF GF C

が可換.ηは自然同型だから

ηGF C1 GF ηC =ηCηC1=idGF C (1) 再びηの自然性より

GF A ηGF A //

Gf

GF GF A

GF Gf

GF B η

GF B

//GF GF B

が可換.ηは自然同型だから

GF Gf=ηGF BGfηGF A1 (2) 以上より

GfηGF A1 GF ηA=ηGF B1 GF ηBGf (1)より ηGF BGfηGF A1 GF ηA=GF ηBGf

GF GfGF ηA=GF ηBGf (2)より GF ηB1GF GfGF ηA=GF ηB1GF ηBGf

GFB1GfηA) =GFB1ηB)Gf

=GF(idB)Gf

=idGF BGf

=Gf Gは忠実だから

FB1GfηA) =f ηB1GfηA:ABだからFが十全であることが示された.

最後にF が対象に対して実質的に全射的であることは²:idD F Gが自然同型であることから直ちに帰 結する.

を示す.F :CDは忠実,十全かつ対象に対して実質的に全射的だとする.関手G:DCを次 のように定義する.対象について.AD0に対してあるB C0が存在してF B'Aである.このような Bを各Aに対して一つ選んでおき,それをGAの値とする.またAからF GAへの同型射を²Aとしてお く.射について.A, BD0, f :ABとする.Fの忠実性と十全性から,²Bf²A1:F GAF GB 対して一意的なg :GAGBが存在して,Gg =²Bf ²A1が成り立つ.各f に対して,このgGf の値とする.Gが実際に関手になることを示そう.G(dom(f)) =dom(Gf), G(cod(f)) =cod(Gf)は自明.

F GidA =²AidA²A1 =idF GA =F idGAF の忠実性よりGidA =idGA.よってGは恒等射を保つ.

f :AB, g:BCを考える.F G(gf) =²Cgf²A1=²Cg²B1²Bf²A1=F GgF Gf= F(GgGf)Fは忠実だからG(gf) =GgGf.よってGは合成を保つ.以上よりGが関手であること が示された.

(4)

次に自然同型η:idC GF, ²:idDFGを定義する.²に関しては上で各AD0に対して定めて おいた²Aを構成要素として持つものとする.これが自然であることはGの定義より明らかである.ηに関し て.Fの十全性より²F A:F AF GF Aに対してあるf :AGF Aが存在してF f =²F A.このようなf を各Aに対して選んでおき,それをηAとして定める.このときF ηA=²F Aηが実際に自然であることは 次のように示される.f :ABC1を考える.F ηA=²F A, F ηB=²F Bであり,²は自然であるから

F A F ηA //

F f

F GF A

F GF f

F B F η

B

//F GF B

が可換.よってF の忠実性より

A ηA //

f

GF A

GF f

B ηB //GF B が可換.よってηは自然変換.

最後に各ηA が同型射であることを示そう.F の十全性より²F A1 : F GF A F A に対してあるf : GF AAが存在してF f=²F A1.よって

F(fηA) =F fF ηA

=²F A1 ²F A

=idF A

=F idA

Fの忠実性よりfηA=idAηAf =idGF Aも同様に示される.従ってηAは同型射. ¤ Definition 1.8 (埋め込み). 関手F :CDが埋め込みembeddingであるのは,Fが忠実,十全,かつ対 象に対して単射的であるときである.

F :CDが埋め込みであるとき,F[C]Dの十全な部分圏である.

2

米田埋め込み

Definition 2.1(前層). 任意の圏Cに対してCopからSetへの関手からなる関手圏SetCopC上の前層 presheafと呼ぶ.

米田埋め込みは任意の局所小圏CからSetCopへの埋め込み関手である.本節では米田埋め込みの定義と 米田の補題の証明を行う.

Cは局所小圏とし,AC0とする.このとき任意のBC0に対してC(A, B)AからBへの射の集 合として定義される.またCの任意の射f :BCに対してC(A, B)からC(A, C)への関数C(A, f)を次 のように定義する:

C(A, f)(g) =f g (g:AB).

このときC(A,+)CからSetへの共変関手である.

(5)

同様にして反変関手C(, A) :Cop Setも定義することが出来る.具体的には任意のf :B Cに対 してC(f, A) :C(C, A)C(B, A)は次にように定義される関数である:

C(f, A)(g) =gf (g:CA).

任意のAC0に対して,この反変関手C(, A)yAによって表す.f :AB C1が与えられたと する.このとき任意のC C0に対してyAC=C(C, A))からyBC=C(C, B))への関数yfCを次の ように定義する:

yfC(g) =fg (g:CA).

このときyfyAからyBへの自然変換である.実際任意のg:CDh:DAに対して yBgyfD(h) =yBg(yfD(h))

=yBg(fh)

= (fh)g

=f (hg)

=yfC(hg)

=yfC(yAg(h))

=yfCyAg(h)

C

g

yAC yfC //yBC

D yAD

yAg

OO

yfD //yBD

yBg

OO

このときyCからSetCopへの関手である.

Exercise 2.2. (1)C(A,)C(, A)がそれぞれ関手になっていることを確かめよ.

(2)yCからSetCopへの関手になっていることを確かめよ.

この関手y:CSetCopに関して以下のことを確かめていく.

(I)任意のP :CAC0に関してSetCop(yA, P)P Aの間に一対一対応φA,P が存在する.

(II)φAP において自然である.すなわちすなわち任意のf :AB C1に対して SetCop(yB, P) φB,P //

SetCop(yf,P)

eval(P, B)

eval(P,f)

SetCop(yA, P)

φA,P //eval(P, A) が可換であり,任意のη:P QSetC1opに対して

SetCop(yA, P) φA,P //

SetCop(yf,η)

eval(P, A)

eval(η,A)

SetCop(yA, Q)

φA,Q //eval(Q, A)

(6)

が可換である.ただしeval(+,+) :SetCop×CSetは評価関手である.

以上が米田の補題の内容である.最後に米田の補題を使って次を示す.

(III)関手y:CSetCopは埋め込みである.

(I)について.まずφA,P :SetCop(yA, P)P Aを次のように定義する:任意のη:yAPに対して φA,P(η) =ηA(idA)

以後,これをη˜によって表す.次にψA,P :P ASetCop(yA, P)を次のように定義する.xP Aとする.

BC0に対して,

ψA,P(x)B(f) =P(f)(x) (f :B AC1) 以後,これをxと表す.

φA,P が一対一であることを示す.すなわちη˜=ηおよび˜x=xが成り立つことを示す.任意のf :B A に対してηの自然性より

yAA ηA //

yAf

P A

P f

yAB η

B

//P B

が可換である.よってidAyAAを考えると

P f(ηA(idA)) =ηB(yAf(idA)) P fη) =ηB(idAf)

˜

ηB(f) =ηB(f)

またx˜=xA(idA) =P(idA)(x) =idP A(x) =x.従って(I)が示された.

(II)について.まずAにおける自然性を示そう.f :ABを考える.このときeval(P, f)φB,P(η) = P fB(idB)).また

φA,P SetCop(yf, P)(η) =φA,Pyf)

= (ηyf)A(idA)

=ηAyfA(idA)

=ηA(yfA(idA))

=ηA(f idA)

=ηA(f)

ηの自然性より

yBB ηB //

yBf

P B

P f

yBA η

A //P A

が可換である.従ってidB yBBを考えればP fB(idB)) = ηA(yBf(idB)) = ηA(idBf) =ηA(f) よってφA,P Aにおける自然性は示された.

(7)

次にP における自然性を示す.² : P Q SetC1op を考える.η : yA P に対してeval(², A) phiA,P(η) = ²AA(idA)).一方φA,QSetCop(yA, ²)(η) = φA,Qη) =²AηA(idA) =²AA(idA)) よってPにおける自然性も示された.

以上から,

Proposition 2.3(米田の補題). 上で定義された関手y:CopSetと任意のP :CopSetAC0 対してSetCop(yA, P)P Aの間には一対一の対応があり,かつ,この対応はAPにおいて自然である.

最後に次の系を示す.

Corollary 2.4. y:CSetCop は埋め込みである.

Proof. yが対象に対して単射的であることは自明である.また任意のA, B C0に対して米田の補題より

SetCop(yA, yB)yBA=C(A, B))の間には自然な一対一の対応がある. ¤

参考文献

[1] S. Awodey. Category Theory. Oxford University Press, New York, 2006.

参照

関連したドキュメント

HIRSCHFELD: Projec $tive$ Geometries over Fin $ite$ Fields, Oxford University Press,.

Nicholson, Margaret (1957), A Dictionary of American English Usage, New York: Oxford University Press.

New York:

Schillemans (eds.) The Oxford Handbook of Public Accountability, 560-73, New York: Oxford University

Soskice(2001) Varieties of Capitalism : The Institutional Foundations of Comparative Advantage, Oxford England ; New York: Oxford

Composition in Black andWhite :The Life of Philippa Schuyler .New York :Oxford University Press, 1995.. Urbana :University of

1962 A History of Islam in West Africa , Oxford University Press, Oxford and New York. 1, London,

Macdonald, Symmetric Functions and Hall Polynomials, second ed., Oxford University.. Press,