日機連21先端-3
平成21年度
宇宙回収システムの産業利用化に 向けた調査研究報告書
平成22年3月
社団法人 日 本 機 械 工 業 連 合 会 財団法人 資源探査用観測システム・
宇宙環境利用研究開発機構
この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。
http://ringring-keirin.jp
序
我が国機械工業における技術開発推進は、ものづくりの原点、且つ、輸出立国維持 には必須条件です。
しかしながら世界的な経済不況脱出で先進国の回復が遅れている中、中国を始めと するアジア近隣諸国の工業化の進展と技術レベルの向上は進んでいます。 そして、
我が国の産業技術力の弱体化など将来に対する懸念が台頭してきております。
これらの国内外の動向に起因する諸課題に加え、環境問題、少子高齢化社会対策等、
今後解決を迫られる課題も山積しており、この課題の解決に向けて、技術開発推進も 一つの解決策として期待は高まっており、機械業界をあげて取り組む必要に迫られて おります。
これからのグローバルな技術開発競争の中で、我が国が勝ち残ってゆくためには、
ものづくり力をさらに発展させて、新しいコンセプトの提唱やブレークスルーにつな がる独創的な成果を挙げ、世界をリードする技術大国を目指してゆく必要があります。
幸い機械工業の各企業における研究開発、技術開発にかける意気込みにかげりはなく、
方向を見極め、ねらいを定めた開発により、今後大きな成果につながるものと確信い たしております。
こうした背景に鑑み、当会では機械工業に係わる技術開発動向調査等の補助事業の テーマの一つとして財団法人資源探査用観測システム・宇宙環境利用研究開発機構に
「宇宙回収システムの産業利用化に向けた調査研究」を調査委託いたしました。本報 告書は、この研究成果であり、関係各位のご参考に寄与すれば幸甚です。
平成22年3月
社団法人 日本機械工業連合会 会 長 伊 藤 源 嗣
はしがき
宇宙利用活動は様々な分野で展開され、国際宇宙ステーション(ISS)の完成も真近 に迫り、宇宙実験を中心とした本格的な宇宙活動がすでに開始されています。しかし、こ のような巨大宇宙実験システムは膨大なコスト、利用開始までの大幅遅れによる実験意義 の低下、条件・調整が多くユーザーにとって敷居が高い等が大きな課題となっております。
又、ISSに関しては、2010年にはスペースシャトルの引退が予定されており、宇宙実 験では必須となる実験試料等物資の回収に関して見通しがない状態であります。
このような状況で、今後は、小型・軽量・簡便な安価で使い勝手のよい回収可能な無人 の宇宙実験システム利用の方向への可能性はかなり高いものがあり、ひいては宇宙実験機 会の増大が見込まれ、真の宇宙利用の活性化へつながると思われます。
以上の点から、本調査研究では、宇宙回収システムに関し、産業利用の観点を踏まえ、
国内外の周辺状況を把握し、日本が整備すべき位置づけを明確にして、小型・簡便を目指し た宇宙回収システムを体系的に整理・検討しその課題の抽出・解決策の検討を目的として 本調査研究を実施したものです。
本報告書にまとめられた成果が、今後回収可能な、使い勝手のよい宇宙実験システ ムの利用及びその開発の促進に貢献できれば幸いです。
最後に、当財団法人資源探査用観測システム・宇宙環境利用研究開発機構に対して、
本調査研究の機会を提供いただいた、社団法人日本機械工業連合会、財団法人JKA ならびに関係の方々に厚く御礼申し上げます。
平成22年3月
財団法人 資源探査用観測システム・宇宙環境利用研究開発機構 理事長 藤江 一正
平成21年度 宇宙回収システムの産業利用化研究委員会名簿
氏名 所属団体名
委員長 小林 康徳 元)宇宙科学研究所 名誉教授
委員 大平 充宣
大阪大学大学院
健康体育研究棟内 医学系研究科適応生理学 教授
委員 大石 浩隆
佐賀大学 医学部社会医学講座 環境医学分野
准教授
委員 久保 泰
(独)産業技術総合研究所 脳神経情報研究部門 部門長
委員 太田 尚
佐藤製薬株式会社 研究開発センター センター長
(順不同、敬称略)
目次
1.調査研究項目・スケジュール
1.1 調査研究目的 ··· 1 1.2 調査研究体制 ··· 3 1.3 調査研究内容 ··· 4 1.4 調査研究項目・スケジュール ··· 5 第1章 宇宙回収システムの低コスト化検討
1.1 目的 ··· 6 1.2 低コスト化項目の抽出 ··· 6
1.2.1 過去の宇宙回収システム ··· 6 1.2.2 低コスト化項目の検討 ··· 18 1.3 低コスト化システム案の検討 ··· 23 1.3.1 機器数削減による低コスト化 ··· 23 1.3.2 民生品利用による低コスト化 ··· 27 1.3.3 今後の課題 ··· 29 1.4 参考資料 ··· 30 第2章 運用シナリオ調査・検討
2.1 過去の宇宙実験調査 ··· 31 2.2 運用シナリオの検討 ··· 40 2.2.1 実験概要 ··· 40 2.2.2 運用検討 ··· 44 2.2.3 飛行計画 ··· 49 2.3 課題 ··· 57 第3章 ビジネスモデルの具体化検討
3.1 回収カプセル型生物実験システムのポジション ··· 58 3.2 実験インフラ構築 ··· 59 3.3 宇宙創薬におけるビジネスモデル ··· 59 3.3.1 宇宙創薬シナリオ ··· 59 3.3.2 状況 ··· 60 3.3.3 ビジネス形態案 ··· 61 3.3.4 課題と対策 ··· 62 別紙1 ··· 64
1 1.調査研究項目・スケジュール
1.1 調査研究目的
宇宙利用活動は様々な分野で展開され、国際宇宙ステーション(ISS)の完成も真近に 迫り、宇宙実験を中心とした本格的な宇宙活動が開始されている。しかし、このような巨 大宇宙実験システムは膨大なコスト、利用開始までの大幅遅れによる実験意義の低下、多 額の費用がかかる、条件・調整が多くユーザにとって敷居が高い等が大きな課題となって いる。
このような状況で、今後は、小型・簡便な安価で使い勝手のよい無人の宇宙実験回収シ ステムの利用の方向へ進むことは必至であり、ひいては宇宙実験機会の増大が見込まれ、
真の宇宙利用の活性化へと繫がると思われる。
しかしながら、この小型・簡便を目指した宇宙システムの使用を検討するにあたり、宇 宙実験では必須となる実験試料等物資の回収に関し、実験系(ミッション系)に適合する 回収システムは世界的に限定されている。しかも回収への要求も様々であり、今後宇宙実 験の主流となるであろう生物系実験では回収時の減速加速度や着地点へのアクセス性・試 料保存に関する要求がある。
内外の動向としては、既存の宇宙実験回収システムとしてはロシアのバイオコスモス等 が継続的に利用されているが、回収システムが大規模で、数年に1度と利用頻度は非常に 小さい。一方、国内完成済みの無人宇宙実験システム(USERS)もやはり規模が大きく、
生物系実験対応となっていない等の課題があり、継続的な利用までには至っていない。
更に、特に重要な点は、これら宇宙実験の成果が地上社会への還元、産業化への道筋を つけることが求められてきており、マウス等の宇宙環境の生態変化を解析し、マウスを回 収・分析して地上の創薬に貢献しようとの計画もその一環である。また、中国では植物種 子の回収に成功して農業への活用の取り組みを続けている。
以上の点から、今後の日本の宇宙利用活動の促進上、小型・簡便を目指し、産業へのつ ながりを見据えた、宇宙からの実験試料の適切な回収システムの具体的必要性や将来像等 の早急な検討が必要である。
これまでは、宇宙回収システムに関し、産業利用の観点を踏まえ、国内外の周辺状況を 調査し、日本が整備すべき位置づけを明確にして、小型・簡便を目指した宇宙回収システム を体系的に整理・検討しその課題の抽出を行った。
その調査研究結果を踏まえ、更に低コスト化・具体化を目指した回収システムの仕様の 検討、運用シナリオの調査・検討、エンドユーザ調査等に基づくビジネスモデルの掘り下 げを行う。
2
本調査研究により、国内外の回収システムの背景、現状、目的が明らかになり、日本が 整備すべき仕様・運用方法・実現性及び産業利用の観点からの必要性・課題が明確になり、
今後の宇宙利用分野促進に資する。
3 1.2 調査研究体制
本調査研究は、下記体制により実施した。
平成21年度 宇宙回収システムの産業利用化に向けた調査研究 調査研究体制
また、(財)資源探査用観測システム・宇宙環境利用研究開発機構内に宇宙実験に関する 有識者からなる「宇宙回収システムの産業利用化研究委員会」を設置して運営し、委員会 における助言を調査研究成果に反映した。
平成21年度 宇宙回収システムの産業利用化研究委員会名簿
氏名 所属団体名
委員長 小林 康徳 元)宇宙科学研究所 名誉教授
委員 大平 充宣
大阪大学大学院
健康体育研究棟内 医学系研究科適応生理学 教授
委員 大石 浩隆
佐賀大学 医学部社会医学講座 環境医学分野
准教授
委員 久保 泰
(独)産業技術総合研究所 脳神経情報研究部門 部門長
委員 太田 尚
佐藤製薬株式会社 研究開発センター センター長
(順不同、敬称略)
(社)日本機械工業連合会殿
(財)資源探査用観測システム・宇宙環境利用研究開発機構 委託
再委託 三菱重工業株式会社
調査研究委員会
4 1.3 調査研究内容
宇宙環境利用分野に精通した有識者やユーザ候補による「宇宙回収システムの産業利用 化研究委員会」を設置し、その指導を基に、各種文献調査や関係者へのヒアリングにより 業務を推進する。
(1) 宇宙回収システムの低コスト化の検討
実験系への適合性を考慮し、低コスト化を可能とするシステム構成及びサブシステム仕 様を検討し、課題を抽出する。特に、実験目的に必要な機能を抽出し、対応する機器や冗 長度について検討を行い、共通化等を考慮した削減案について検討する。
(2) 運用シナリオ調査・検討
回収システムを利用した過去の宇宙実験運用を調査し、打ち上げ前、軌道上、回収後の 運用手順、地上設備等を明確にして、実現性のある運用シナリオを策定する。検討にあた っては、候補となる打上軌道や回収領域、回収船の候補を具体化する。又、実現にあたっ ての課題を抽出する。
調査研究の実施に当たっては、業務の一部を再委託する。
(3) ビジネスモデルの具体化検討
想定するエンドユーザの意見を調査・集約して、昨年度の検討結果を踏まえ、ビジネス モデルをより具体化し、実現性の検討を行い、調査研究報告書にとりまとめる。
5 1.4 調査研究項目・スケジュール
調査研究内容の各項目については以下のスケジュールにて検討を実施した。
宇宙回収システムの産業利用化研究委員会は、9月、12月及び2月の3回実施した。
半期別・月別
平 平
成 成
21 22
年 年
/ /
項目 7 8 9 10 11 12 1 2 3
③ビジネスモデルの具体化検討
④委員会開催 ○ ○ ○
⑤成果報告書の作成・公表
①宇宙回収システムの低コスト 化の検討
②運用シナリオ調査・検討
上半期 下半期
6 第1章 宇宙回収システムの低コスト化検討 1.1 目的
宇宙回収システムの実現にむけた課題である低コスト化について以下を検討する。
・低コスト化項目の抽出 ・低コスト化システム案の検討
1.2 低コスト化項目の抽出
本項では宇宙回収システムにおいて、過去の回収システムのシステム構成を踏まえ、低 コスト化の可能性のある項目(運用・システム)を抽出し、そのアプローチを整理する。
1.2.1 過去の宇宙回収システム (a)調査対象について
過去に飛行した類似の宇宙回収システムにおけるシステム構成例を調査した。
調査の対象は以下基準に照らし、当該情報が入手可能な範囲で抽出する。
【調査基準;類似システムを抽出】
・飛行実績のあるもの
・実験ペイロードを搭載した回収システムであること (飛行そのものが目的の機体はのぞく)
・低軌道で一定期間軌道上に滞在するシステムであること ⇒調査候補及び適否の選択を表1.2.1-1に示す
(b)調査結果について
調査結果を以下にまとめる。
表1.2.1-2 :宇宙回収システム調査結果
7
表1.2.1-1 宇宙回収システム調査候補と適否整理
調査候補 実験回収の是非 低軌道滞在の是非 入手性(システ ム構成など)
評 価
OREX(日) ×
飛行実験
○
低軌道1周回
○
JAXA文献
×
HYFLEX(日) ×
飛行実験
× 弾道飛行
○
JAXA文献
×
USERS(日) ○
軌道上実験
(材料)
○
低軌道(40日以上)
○
USEF公開
情報
○
BION-M(露) ○
軌道上実験
(生物)
○
低軌道30~45日間
× ×
FOTON-M(欧露) ○
軌道上実験
(生物)
○
低軌道30~90日間
○
ESA公開情報
○
神舟(中) ○
軌道上実験(種子な ど)
○
低軌道滞在(日)
× ×
Raduga
(露)
△
ミール実験試料の回 収
△
ミールドッキング中 に滞在
△ ×
Biosatellite (米)
○ 生物実験
○
低軌道(4.5日)
△ △
Stardust (米)
○
彗星チリのサンプル リターン
× 太陽周回
(彗星邂逅)
○
NASA文献
×
SRE
(印)
× 飛行実験
○
低軌道(1周回)
× ×
()は実施国
⇒USERS及びFOTONについてシステム構成などを整理
8
表1.2.1-2 宇宙回収システム調査結果
項目 USERS FOTON-M 備考
イメージ
実験対象 ・高温超電導材料の結晶 成長実験
・民生技術・部品の軌道 上検証
・材料及びバイオテクノ ロジー系の実験
・流体系による排熱機構 あり
ペイロード 搭載重量
150kg・回収可 (船内外搭載900kg)
船内650kg 回収可
(船内外搭載900kg)
軌道上実験 継続期間
1000hr以上
(40日程度以上)
30~90日間
軌道高度 450~515km 約220~400km 打上ロケット H-IIA(F3) ソユーズ
射点 種子島 バイコヌール
モジュール構成 ・ サ ー ビ ス モ ジ ュ ー ル
(SEM)
・リエントリモジュール
(REM)
⇒図1.2.1-1参照
・Battery Module
・Re-Entry Module
・Service Module
⇒図1.2.1-4参照
運用シーケンス 図1.2.1-2参照 図1.2.1-5参照 システム構成 図1.2.1-3参照 図1.2.1-6参照
9 ○質量特性:
・REM:800kg ・SEM:900kg
○主要機能 ・電力 ・通信 ・データ記録 ・姿勢制御機能 ・軌道変換機能
・スピンアップ・デスピン機能
図1.2.1-1 USERS モジュール構成 リエントリ モジュール
(REM)
サービス モジュール
(SEM)
※USERS成果報告会資料 より
10
図1.2.1-2(1/2) USERS運用フロー(射場)
※USERS成果報告会資料 より
11
図1.2.1-2(2/2) USERS運用フロー(打上~帰還)※USERS成果報告会資料 より
12
図1.2.1-3(1/2) USERSシステム構成
※USERS成果報告会資料 より
13
図1.2.1-3(2/2) USERSシステム構成
略称については前頁参照 ※USERS成果報告会資料 より
14
図1.2.1-4 FOTON-Mモジュール構成
サービスモジュール 帰還モジュール バッテリモジュール ※EuropeanUsers Guide to Low Gravity Platforms より
15
図1.2.1-5(1/2) FOTON運用フロー(ユーザー) ※EuropeanUsers Guide to Low Gravity Platforms より
16
図1.2.1-5(2/2) FOTON運用フロー
【帰還①再突入】 ①RCS系起動 ②電気モジュール分離 ③軌道離脱燃焼 ④サービス(推進)モジュー ル分離 ⑤再突入
軌道周回 ⇒実験期間
【打上フェーズ】 ①打上 ②ブースタ段分離 ③フェアリング分離 ④⑤1段分離 ⑥衛星分離⇒軌道投入 【帰還②着陸】 ①大気圏飛行終了 ②パラシュート(パイロット)開傘 ③パラシュート(ドローグ)開傘 ④パラシュート(メイン)開傘 ⑤逆噴射ロケット作動⇒着地 ※EuropeanUsers Guide to Low Gravity Platforms より
17
図1.2.1-6 FOTONシステム構成
図1 2 1-6 FOTONシステム構成
通信用アンテナ
バ ッ テ リ 用 ラ ジ エータ
(熱制御系)
通信系
地球センサ
(姿勢制御用センサ)
構造系
誘導制御機器
スラスタ
(推進系)
軌道離脱用エンジン
(推進系)
熱制御系
熱制御系 分離機構
姿勢制御システム
(推進系)
窒素タンク
(推進系)
18 1.2.2 低コスト化項目の検討
(1)宇宙回収システムのシステム構成案
1.2.1項の調査結果に基づき、宇宙回収システムのシステム構成案を検討した。
検討結果を表1.2.2-1に示す。又設定の考え方/主要機能も併せて同表に示す。
(2)低コスト可能な項目の抽出
上記調査結果を受けて、本システムに適用する場合の低コスト化が可能な項目について 抽出した。結果を表1.2.2-2に示す。抽出は主に以下の観点から実施した。
・推進系など機能品(数、種類)の削減 ・搭載機器(アビオなど)の削減
抽出にあたっては、宇宙回収システムとして図1.2.2-1に示すとおりロケットの2 段をプラットフォームとして利用でき、又軌道上 1 周回程度で帰還する場合を想定して検 討した。
なお、個別機器自身の調達費用の低減などについては、仕様の具体化及び開発実施時期 や運用機数などに依存し、現状これらの項目は未定であるため、本検討では省略する。
19
表1.2.2-1 宇宙回収システムのシステム構成案
機能/考え方 備考
電気系モジュール
構造体 機器の搭載/外部環境からの機器の防 護(荷重/熱)のため
電池 太陽電池 電力分配装置
通信系 長期実験の場合軌道上のモニタが必要 となるため
姿勢制御センサ 軌道上での姿勢・位置を検知するため 姿勢制御アクチュエータ 軌道上制御のため
コントローラー 軌道上誘導制御計算のため またミッション系制御のため 熱制御系 軌道上での温度環境保持のため 分離機構(推進モジュール) 軌道離脱前に推進モジュールと分離する
ため
ロケット分離機構 ロケットからの分離のため 推進系モジュール
構造体 機器の搭載/推力の伝達のため
姿勢制御系(RCS) 軌道離脱前制御のため 軌道離脱系(OMS) 軌道離脱のため 推進薬タンク 推進薬保持のため
熱制御系 推薬等を所定の熱環境に維持するため 分離機構(帰還モジュール) 再突入前の帰還モジュールとの分離のた
め 帰還モジュール
構造体 再突入環境からミッション系内部機器を 防護
熱防護系 再突入時の空力加熱から熱の進入を防 ぐため
電池 再突入時の機器への電力供給のため
電力分配装置 再突入時の機器への電力分配のため 姿勢制御センサ(IMU等) 再突入時の姿勢制御のため
通信系 再突入時の回収設備等との通信のため コントローラー 再突入時の誘導制御計算のため データ記録系 ミッション系のデータ記録のため 熱制御系 軌道上及び再突入時の帰還モジュール
内の温度環境維持のため 姿勢制御系(RCS) 再突入中の姿勢制御のため 減速回収系
着地前の減速及び着地後の信号発信及 び回収条件保持のため(海水面での浮 遊)
ミッション系 最終的に回収する必要があるため帰還 モジュールに搭載
ロケットインターフェース(PAF) ロケット搭載及び信号送受信のため 地上設備
ペイロード搭載設備 レイトアクセスのため 管制設備
通信設備
捜索設備(航空機) 着地後の帰還モジュール捜索のため 回収設備(船舶) 再突入後の帰還モジュール回収のため
軌道上運用中の電力供給のため
衛星追跡及び飛行管制・データ取得のた め
システム構成案
20
表1.2.2-2 コスト低減可能な項目の抽出結果
削減案 削減の考え方 備考
構造体 ←
電池 ←
太陽電池 削除 ロケット2段に取り付けるため、
電池を搭載してリソースを供給
電池の追加は必要とな るが、コスト低減になると 考える。
電力分配装置 削除 カプセル側で兼用
通信系 削除 ロケット側機能を利用
姿勢制御センサ 削除 ロケット側機能を利用
姿勢制御アクチュエータ 削除 ロケット側機能を利用
コントローラー 削除 ロケット側機能を利用
熱制御系 ←
分離機構(推進モジュール) 削除 ロケットに固定するため不要
ロケット分離機構 移設
(帰還モジュール)
帰還モジュールのロケット分離 のため必要
構造体 ←
姿勢制御系(RCS) 削除 カプセル単体にて実施
軌道離脱系(OMS) ←
推進薬タンク ←
熱制御系 削除 短時間のため削除
分離機構(帰還モジュール) ←
構造体 ←
熱防護系 ←
電池 ←
電力分配装置 ←
姿勢制御センサ(IMU等) ←
通信系 ←
コントローラー ←
データ記録系 ←
熱制御系 ←
姿勢制御系(RCS) ←
減速回収系 ←
ミッション系 ←
ロケットインターフェース(PAF) ← ペイロード搭載設備 ←
管制設備 ←
通信設備 ←
捜索設備(航空機)
削除 定点誘導及びパラシュート減速 中にレーダ反射板を備えること で捜索機を不要化
回収設備(船舶) ←
削減した構成品数 10
構成品数全体 35
電気系モジュール システム構成案
推進系モジュール
2段機体が軌道離脱可 能な場合は、さらに削減 の可能性あり
⇒他機例を図1.2.2-
2に示す。
地上設備 帰還モジュール
21
打上 (X +0)
再突入 パラシュート 開傘 動物回収 (R+5 時間 )
軌道投入 (X +15 分 ) ダウンレンジ局
軌道離脱 (X +120m in ) 動物搭載 (X -1 日 )
コースティング (M icro-G) 着水 (R=X+170 分 )
©JAXA 図1.2.2-1 宇宙回収システム運用プロファイル
22 ロ ケ ッ ト 最 終 段 が 再 突入を実施。
目的;最終段のデブリ 化防止など
図1.2.2-2 上段(最終段)再突入例; ソユーズの場合
※Soyuz Users Manual より
23 1.3 低コスト化システム案の検討
1.2項の低コスト化可能な項目の抽出結果などを踏まえて、以下の項目に対する低コ スト化方法の検討を実施した。
・機器数削減による低コスト化 ・民生品利用による低コスト化
以下に結果を示す。
1.3.1 機器数削減による低コスト化
上記検討においては、H-IIA2段を極力活用し、コスト低減を狙った。結果を以下に示す。
・宇宙回収システム 低コスト化方法検討結果:表1.3.1-1、図1.3.1-1
上記結果に基づく、搭載機器ブロック図を以下に示す。
・宇宙回収システム ブロック図:図1.3.1-2
上記はロケット 2 段をプラットフォームとして利用したため、電気系モジュールについ て大幅な簡素化が可能となり、従来の宇宙回収システムに比べて低コストなシステム構成 になったと考える。
24
表1.3.1-1 低コスト化システム構成案
機能 備考
構造体
電池 軌道上電力供給
カプセル取付け部
軌道離脱モータ 固体モーター 機体構造
ロケット取り付け分離結合部 熱防護系 アブレータ
熱制御系 ヒートシンク/蓄熱材 スラスタ
RCSタンク・配管
バッテリー 再突入用
電力分配器 TLM/CMD 送受信機
データレコーダー データ処理装置 GPSR
コントローラ IMU
パラシュート
フローテーションバッグ ミッション部 実験機器
電気系モジュール
構造系
推進系モジュール システム構成案
推進系
減速回収 帰還モジュール
誘導制御系 電力系
データ通信系
25
減速回収系 熱制御系 構造系 電力系
電気系モジュール
データ通信系 熱防護系
実験機器 誘導制御系 帰還モジュール
バッテリ 推進系
ピギーバック衛星搭載部
電力系
主衛星 ロケット フェアリング
図1.3.1-1 宇宙回収システム システム構成案概要
26
図1.3.1-2 宇宙回収システム ブロック図概要
コントローラ OBC 電力信号 制御器 PSCU 帰還用電池 R-BAT
慣性センサ IMU ミッション系 PLS 地上支援装置 AGE
GPSR テレメータ 送信機 S-TX1 コマンド 受信機 S-TR1 軌道上電池 M-BAT
減速/回収系 (火工品) 軌道制御 装置 OMS
姿勢制御 装置 RCS 分離装置 SEP (火工品)
アルゴス 送信機 A-TX ロケット I/F
再突入モジュール 推進モジュール
OMS分離モニタ信号 ×2 軌道上モジュール
27 1.3.2 民生品利用による低コスト化
低コスト化方法として民生品を利用することにより低コスト化できる可能性がある。
JAXA が実施した「マイクロラブサット」やその技術を利用した「まいど 1 号」などは民 生品を利用している。
本宇宙回収システムでも同様のアプローチにより低コスト化できる可能性があるが、民 生品といえども電子機器では、耐放射線に対する確認が必要で1.2項でも述べたとおり、
仕様の具体化及び開発実施時期や運用機数などに依存する。
そこでここでは、電子機器以外(誘導系、電力系、通信系など)での民生品利用を検討 した。図1.3.1-1より電子機器系以外での民生品適用可能な項目を以下に示す。
・RCS系 ⇒ 民生品で当該システムへの適用なシステムはない(宇宙用のため)
・減速回収系 ⇒ 航空機などへの適用例は多数あるが、宇宙用と差が大きくなく コストメリットは小さい。
・熱制御系 ⇒ 蓄熱材など民生品多数あるため適用することによる コストメリットの可能性有り。
上記より、民生品の適用可能性があるのは熱制御系であるため、以下には民生品利用例 を図1.3.2-1に示す。下記ではレジンカプセル内のパラフィン融解開始温度を調整 することにより所定の温度に制御することが可能であり、今回の実験系及び飛行時間を考 慮すると適用可能であると考えられる。
28
加熱 (固化 )
固体 パラ フィ ン 液体 パラ フィ ン (融解 ) 冷却
加熱 (固化 )
固体 パラ フィ ン 液体 パラ フィ ン (融解 ) 冷却
熱吸収カプセ ルを ハニ カ ム 等に 充填
©Mitsubishi Paper Mills Ltd.©Mitsubishi Paper Mills Ltd.レジ ン カプ セ ル カ プ セ ル 機器取り付け面に適用 ⇒受動的に熱制御
民生品 図1.3.2-1 民生品利用による低コスト化検討;熱制御系
29 1.3.3 今後の課題
今後の課題として以下が考えられる。
・ 民生電子機器による低コスト化検討
更に低コスト化を目指すため、民生品の電子機器を適用した場合の調査を行い、システ ム検討の詳細化を踏まえて、本カプセルシステムに適用する場合に低コスト化が可能か 検討する必要がある。調査についてピギーバッククラスの衛星に搭載されている機器に つき、以下を実施する必要がある。
・ 調査内容:
(1)最新の小型衛星動向を調査し、調査対象となる衛星製作機関を調査
(2)製造機関などへの照会による、機器諸元情報の入手(RFIなどを実施)
・ 調査範囲:国内小型衛星製作機関(JAXA、大学、企業体、民間企業)
海外小型衛星機器メーカー(大学、企業ほか)
30 1.4 参考資料
(1)ST-GTD-SUM-01 - ISSUE 3 - REVISION 0 - APRIL 2001
(2)Soyuz User's Manual
(3)http://www.starsem.com/services/images/soyuz_users_manual_190401.pdf
(4)http://www.k-mpm.com/t-memory/powder/index.html
(5)http://www.usef.or.jp/simpo/seika_2.html
31 第2章 運用シナリオ調査・検討
国際宇宙ステーションも 9 割以上の完成を示し、2008 年に打上げられた日本の実験モ ジュール「きぼう」も順調に宇宙実験が実施されている。国際宇宙ステーションの運用は 当初2015年までとされていたが、各国からの要望により2020年までの延長が検討されて おり、実験機会の拡張が期待されている。しかし、その一方でスペースシャトルの退役に より宇宙ステーションからの物資の回収機会が減少し、実験試料などの回収はハードルが 高くなることが懸念されている。国内において公募される実験は「きぼう」に既に搭載さ れている実験装置の利用が条件とされることが多く、新規の実験装置の参入については敷 居が高いのが現状である。
我々は、宇宙実験を目指す新規ユーザーに対して機会を提供すべく、小型で軽量な回収 システムの提供を目指し検討を進めている。本章では、回収システムの実現化に向け、ユ ーザーの視点にたった運用を実施すべく過去の実験運用について調査を行い、これを参考 にマウスなどの小動物を用いたモデル実験を精査し、打上前から軌道上実験後に地球へ帰 還し回収されるまでの運用シーケンスなどについて検討を行った。検討結果を以下に示す。
2.1 過去の宇宙実験調査
USERS(Unmanned Space Experiment Recovery System)1は、地球周回軌道上から
宇宙実験成果物を帰還回収させることができる無人の自立帰還型回収システムである。
宇宙実験の実績をもつ USERS について、宇宙機の特徴や運用シナリオ、実験運用など の観点より調査を行った。
(1) USERS宇宙機特徴
ユーザー利用の観点からみたUSERSの特徴を以下に示す。
① 長期にわたる良好な微小重力環境:
長時間にわたり10-5G以下を維持
② 実験運用における柔軟性のある宇宙実験システム:
宇宙ステーションなどの有人システムを利用した場合に比べ、簡単な手続きで実 験条件、実験手順を変更することが可能
③ 実験期間、回収時期の自由度が高いシステム:
長期間軌道上で実験を行った後、軌道調整を行って実験成果を搭載したカプセル を計画した地点に正確に帰還/回収させることが可能
④ 実験への制約が緩やか:
有人システムと比較し人的被害を想定した安全上の制約が緩やか
⑤ 成果の管理が容易:
我が国独自の開発であり商業ベースを目指しているため得られた成果は公開不要
1 無人宇宙実験システム(USERS)利用ガイド 平成17年 3月((財)無人宇宙実験システム 研究開発機構(USEF))
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(2) USERS運用シナリオ
USERS は、軌道上で電力供給、通信サービス、軌道及び姿勢制御などを行うサービスモ
ジュールと、地上に自律帰還するリエントリモジュールの2つのモジュールから構成され ている。
最長約6ヶ月間の宇宙実験が可能であり、実験終了後は2つのモジュールは分離し、実 験機器を搭載したリエントリモジュールのみが軌道を離脱し大気圏へと再突入する。
パラシュートを用いて着水した後は、GPSデータがエンコードされたビーコン電波を発 し、これを基に航空機は探索を行い、近海に待機していた回収船により回収される。回収 後は直ちに工場へ輸送し、点検・分解を行った後、ユーザーに引き渡される。ユーザーの 要求によっては船上での受け渡しも可能である。
又、数年にわたる実験が必要で且つ回収を必要としない実験機器は、サービスモジュール に搭載することも可能である。
運用シーケンスの概要を図 2.1-1に示す。
図 2.1-1 USERS運用シーケンスの概要
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(3)USERS宇宙機の利用について
USERSの利用にあたっては、以下の2種類がある。
①ユーザーが準備した宇宙機器を搭載できる実験スペースを購入し、USEF に打上から 帰還回収までの実験運用を委託する。宇宙機器の準備 及び USERSを利用するための 費用を要する。
②USEF が実験計画作成から、実験機器の製作、打上げ、宇宙実験の実施、機器の回収 と引取りまでの全フェーズでユーザーの支援を行う。
ユーザーが申し込みを行い、プロジェクトが開始されると、インタフェースを確認しな がら作業を進めることとなる。プロジェクトの流れを図 2.1-2に示す。
図 2.1-2 プロジェクトの流れ(例)
34 (4)ユーザーの作業項目とスケジュール
ユーザーが実施する作業の概要を以下に示す。
① 実験構想立案
② 利用申し込み:
ユーザーは宇宙機の利用の申し込みを行う。USEFは実験内容などを確認した後、
宇宙機への搭載可否を確認する。確認事項は以下のとおり。USERS プロジェクト は、ミッションの基本仕様確定後約3年で宇宙実験が実現することを目標にし、利 用の申し込みは随時受け付けている。
・ 実験機器が打上から回収までの期間に USERS、射場関係者、回収作業関係者に人 的ダメージを与えないこと
・ USERSとのインタフェースに適合していること
③ 実験計画立案と調整:
ユーザーは、実験機器の設計・製作及び検証、宇宙実験計画作成のベースとするた め、実験計画書を作成する。
④ 実験機器の設計・製作:
ユーザーもしくは、USEFが設計・製作を委託し、搭載用実験機器を準備する。
搭載機器に必要な以下の作業を実施する。
・ インタフェースの調整 及び 合意 : 打上げ36ヶ月前
・ 要求の達成確認(検証)計画の合意 : 打上げ36ヶ月前
⑤ 実験機器の検証:
ユーザーは実験機器が宇宙で正常に機能することを単体試験で確認する。インタフ ェース試験はUSEFが実施する。
・ 単体試験:ミッションパネルに機器を設置し機器の動作確認
・ インタフェース試験(衛星システム試験Ⅰ):
電気系試験、振動試験や熱真空試験などの環境試験
⑥ 実験機器の最終組立(必要な場合) :
ユーザーは、検証を済ませた実験機器について必要に応じて衛星システム試験Ⅰ後 の評価、試料のフライト品への交換、ガス流体の補給、最終的な動作確認などフラ イトへ向けた最終準備を実施する。
⑦ 実験機器の搭載とインテグレーション試験:
USEFはユーザーの実験機器を受領し、USERS のリエントリモジュールに搭載し た後、サービスモジュールと結合させる。衛星システム試験Ⅱと言われる最終的な 電気系試験、動釣合試験などによりインタフェースの確認を行い、射場へと搬入す る。
搭載要領を図 2.1-3に示す。
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⑧ 射場での実験準備:
USERS が打上げられるまで、図2.1-4に示すようなフローに従って射場整備
を実施する。USERSの健全性を確認するためには約2~3週間程度の準備期間を要 する
⑨ 打上げ:図 2.1-1参照
⑩ 宇宙実験の準備
⑪ USERS/REMの帰還回収作業 :図 2.1-1参照
⑫ 実験機器及び成果物の受け渡し
図 2.1-3 実験機器のインテグレーションの流れ
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図2.1-4 USERS射場作業フロー
(5)宇宙実験の実施要領
打上げられてから軌道上実験を終わるまでにユーザーが実施することを以下に示す。
① 宇宙実験運用の準備
実験の計画段階(約12ヶ月前)に、ユーザーはUSEFと軌道上実験について調整を 実施する。これを基に、USEFは運用計画を立案し、ユーザーは実験装置を操作す るための手順書を作成する。
② 実験運用 (i) 打上げ時
基本的には、実施することはない。打上げ前、もしくは ロケット分離直後に 実験機器の状況を確認する必要がある場合には、ロケット射場もしくは USEF運用センターにて状況を確認する。
(ii) USERSの健全性確認
ロケットから切り離された後、確実な実験運用を実施するためにUSEFによ り健全性の確認が実施される。標準で 2 週間程度。軌道制御を実施するため に更に1週間程度必要な場合もある。
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(iii) 宇宙実験の開始
利用者の要求に基づき実験運用を開始する。実験は予め設定した手順により 自動実行される。ユーザーはデータをモニタし、実験手順を変更する必要が 生じた場合には次回の実験計画へ反映することができる。緊急事態が発生し た場合には、予め準備していたコマンドをリアルタイムで送信して実験シー ケンスを変更することも可能である。
運用計画立案は、1週間ごとに行うことを標準としている。
(iv) 実験機器/USERSの運用方法
USERSは、高度500kmの軌道上を約1時間30分で1周する。
図 2.1-5に飛行経路例 及び、USERSと更新できる設備(地上局)を赤い
○で示す。USERSと地上局が更新可能な状態を可視と呼ぶが、1可視あたり の時間は約10分である。
USEF の運用管制は、図 2.1-6に示すように宇宙航空研究開発機構 (JAXA)の筑波追跡管制センタの間を専用回線で結んだシステムで行う。探索 回収も同じシステムを利用する。実験運用及び USERS の運用は、予め実行 時刻を指定したコマンドを USERS に登録しておくことにより自動実行を行 う。このため、地上局との交信時間体に係らず、24時間実験運用を行うこと が可能である
(v) 実験データ授受の方法
実験データは、USERSのデータレコーダに一次記録保管され、可視時間中に
USERSからUSEF運用センタ内の共通データサーバに転送される。USERS
の標準の可視数(4)で降ろすことができるデータ量は約130Mbitである。
ユーザーは共通データサーバにアクセスすることによりデータのモニタが可 能であり、可視中にリアルタイムにモニタすることもできる。
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図 2.1-5 USERS飛行経路例
図 2.1-6 運用管制地上局ネットワーク
39 (6)実験機器及び成果物の受け渡し
リエントリモジュールの帰還運用フェーズから、利用者が回収された実験機器を受け取 るまでの流れを図 2.1-7に示す。
① 帰還回収
実験終了後、USERSの軌道修正、リエントリモジュールのチェックアウトなどの 帰還準備が進められ、この間にUSEF は実験試料の固定や排ガスといった帰還に 向けた最終準備を行う。
海上回収が一般的であり、回収場所は小笠原東方海上になる。帰還回収は、探索 回収作業を日中に行うために、日本時間の深夜に始まる。スタートからリエント リモジュール軌道離脱までの時間は約 6 時間で、リエントリモジュール軌道離脱 から着水までの時間は約40 分である。航空機によって探索された海上のリカバリ ービークル(REV)は、洋上に待機している回収船により回収される。着水後、船に 引揚げられるまでの時間は最大で10 時間であり、USERS 1 号機は、着水から船 への引渡し作業完了まで約3時間であった。
② 受け渡し
受け渡しを急がない実験機器は、回収海域から船で輸送し、陸揚げ後、通関手続 きを経て組立工場へ陸送する。ここでの通関手続きはREV として実施する。
回収から組立工場への搬入には約1 週間を予定し、組立工場へ搬入されたREV は、
組立工場で点検・分解を行う。原則として、実験機器はミッションパネルに搭載 した状態でユーザーに受け渡す。受け渡しは組立工場にて行い、外観などを利用
者とUSEF の双方で確認する。ユーザーへの実験機器の引渡は回収から約2 週間
を予定しているが、ユーザーの要求によっては船上で実験機器を受け渡すことも 可能である。
図 2.1-7 帰還回収運用から受け渡しまでの流れ
40 2.2 運用シナリオの検討
本システムの優位性は、国内での打上による実験準備の簡便性や 回収機能及びその設備 の充実である。これらの優位性は、打上直前までの準備を要し、地球帰還後すぐに回収し 適切な試料の処置を要するマウスなどの小動物を対象とした実験に有効である。
本システムの実用化を見据え、マウスを用いた微小重力実験に関する運用シナリオにつ いて検討を行った。
2.2.1 実験概要
(1) 小動物実験に期待される効果
重力環境は地上では変化させることが困難な唯一の環境である。
微小重力は、環境因子として生体の骨・筋へ重篤な影響を及ぼす。宇宙環境の生物への 影響は骨・筋だけでなく、心循環器・免役・中枢神経系など生体反応の全般にまで及び、老 化を促進させると言われている。実際に、宇宙飛行士による研究において、骨については 骨粗しょう症様が、筋については筋萎縮症様変化が認められている。宇宙での筋萎縮は遅 筋の速筋化現象が顕著なため、宇宙環境下では膵臓内ランゲルハウス島の細胞内インシュ リン輸送機能が急速に低下する可能性や、糖尿病発現のメカニズムの解明、又、落下塔実 験(数秒の微小重力実験)の結果より、パニック症候群などの中枢神経疾患メカニズム解 明などの新たな実験系を確立できる可能性が示唆されている。
網羅的遺伝子あるいはタンパク質解析や代謝系解析手法の確立により、これまでの宇宙 実験にはなかった種々の網羅的解析手法によるアプローチが可能であり、微小重力環境下 に曝されたマウスの生態変化により、精神疾患、骨粗しょう症、筋萎縮、老化病態など病 態メカニズムが解明されていない疾患ターゲットの遺伝子、タンパクなどのメカニズムの 解明が期待できる。
宇宙環境が人体に及ぼす影響、宇宙滞在時間と病態の関係を図 2.2-1に示す。
41 症状発現
ポイント
適応点 (1.5月)
放射線影響 宇宙環境
(μG)適応 点
地球環境 (1G)適応点
時間(月) 1 3 4 5 6
赤血球量
骨・カルシウム代謝
除脂肪体重 神経前庭系
体液シフト・電解質バランス 心循環器系
図 2.2-1宇宙環境が人体に及ぼす影響 2
(2) 搭載宇宙機:
本システムは、開発の初期段階にはピギーバッククラスの衛星を検証機として打上げ、
その後ピギーバック衛星による約 2 時間の微小重力実験を繰り返した後、最終的には大型 の副衛星を用いて2週間程度の実験を実施する。開発計画を表 2.2-1に示す。
本紙では、計画初期段階であるピギーバック衛星における運用を想定し検討を行う。
表 2.2-1回収システム開発計画(案)
2宇宙環境利用の展望 ~JAROS Review of Space Utilization 2007~、平成20年3月[元 文献:AE. Nicogossian、 CL. Huntoon、 SL. Pool Eds. Space Physiology and
Medicine: third edition. (1994) Lea and Febiger.]
42 (3) 実験プロセス
ピギーバックによるマウスを用いた微小重力実験について、実験準備から軌道上実験、
回収までの一連の流れを図2.2-2に示す。
実験に用いるマウスは、種子島にある打上げ設備の近くに設けた実験室にてロケットへ の搭載直前まで飼養するものとし、打上げ1日前にロケットへ搭載する。打上後は約 2 時 間の軌道上実験を行い、そのまま軌道上から離脱し、地球へ帰還する。航空機により回収 システムからのビーコンを受信して着水地点を特定した後は回収船によって引き上げられ、
回収したマウスは回収船内にて観察や剖検、固定などの処置を行う。
全体のタイムラインを表 2.2-2に示す。
図2.2-2実験運用フロー
実験準備
マウス飼養 搭載 打上 軌道上 実験 軌道上
実験 再突入 回収
観察 剖検 固定等
~軌道上~
地上(種子島) 海上
回収船 回収
回収機 地上対象群 飼養
(※)
観察・剖検 固定等
観察・剖検 固定 等 軌道上実験
地上対象実験
(参考:回収)
分析
地上(種子島) 地上(種子島)
各研究機関
(※)2回目以降の実験で、要すれば軌道離脱時にマウスの安楽死・固定を実施。
《実施場所》
《実施場所》
43
表 2.2-2 実験運用タイムライン
場所 作業時期(※) 作業内容【マウス匹数】 備考
種子島-実験室
X-2週 マウスの飼養開始【20匹】
X-1週 テレメトリ送信機の埋込み手術
【5匹】
施術済みマウス は、テレメ専用ケ ージで飼養 (ピギーバックをロケットへ搭
載)
X-1日
マウスを選定し、フライトケージ に入れ、ロケットへ搭載
【3匹 (内1匹はテレメマウス)】
残りのマウスは 地上対象群とす る【17匹】
H-2A X=0 打上
(軌道上)
X+15分 軌道上投入
~ 軌道上実験
X+110分 H-2Aと分離
X+120分 軌道離脱
X+150分 大気圏突入
(サンチャゴ沖海上) R=0、
X+170分 着水
回収船 R=4時間 ピギーバック(マウス)回収
回収船-実験室 R=4~(TBD)
時間 観察 剖検 固定など
対象群について は種子島にて、同 様の作業を実施
(各研究機関) (TBD) (固定化した試料を入手後)分析
(※)X:打上げ時基準、 R:着水時基準
44 2.2.2 運用検討
(1) 実験準備
(a) 実験室@種子島宇宙センタ
細胞や水棲動物、小動物などの生物実験を実施する場合、試料のコンディションを整え るために、打上げの数週間前から打上げ設備近くの現地にて準備を行う。宇宙ステー ションや BIONなどの海外の宇宙機を使用するため海外から試料を打上げる場合には、
国内から試料を持ち出す際に輸出法規や検疫などの考慮が必要である。
本システムは、H-Ⅱロケットで打上げるため、実験準備施設(以降、実験室)は種子島宇 宙センタ内へ設置する。そのため、海外で実施する際の輸出や検疫などの手続きは不 要であり、試料や急な物品の調達も容易に対応が可能である。
実験室の設置のための飼養環境条件を表 2.2-3に示す。
実験施設は、コンテナ内に設置しこれを適当な場所に配置する方法も考えられる。コ ンテナ形式であれば設備を有したまま移動することも可能であるため、同様のものを 二つ用意し、一つを射場に、もう一つを回収船に搭載することにより、同様の環境で 実験後のマウスの処置を実施することが可能である。
表 2.2-3 実験動物生産施設(飼育室)における環境条件の目標 3 (対象:マウス ラット ハムスター モルモット ウサギ)
項目 仕様
温 度 18~28℃ (急激な変化を防ぐ)
湿 度 30~80% (急激な変化を防ぐ)
換気回数 乱流方式 10~15回/時 (一方向気流方式 8~15回/時)
気流速度 13-18cm/秒
気 圧 静圧差で5mmH2O高くする 塵 埃 クラス10、000 *1)
落下細菌 自社内の生産施設・環境評価のために自主的に目標値を定める。*2) 臭 気 室内のアンモニア濃度で25ppm をこえない
照 明 150~300ルックス(床上85cm)
騒 音 65ホンをこえない(空室時)
*1) 米国航空宇宙局の分類によるクラス分け
*2 ) 9cm径シャーレ30分開放(血液寒天48時間培養)
3(財)日本実験動物協会 飼育管理ガイドライン
(URL:http://www.nichidokyo.or.jp/guideline.html)
45 (b) マウス飼養計画
回収システムはH-Ⅱロケットにより打上げられるが、気候などの影響により、打上げ スケジュールは延期される可能性がある。回収システムへ搭載するマウスは、打上げ 日当日に実験に適した週齢となるよう計画して飼養されるため、打上げ時期が 1 週間 以上延期された場合には、別途Back upを用意する必要がある。
9週齢のマウスを実験に使用すると仮定した場合のマウスの飼養計画(例)を表2.2-
4に示す。軌道上実験では、地上でテレメトリを埋め込んだマウスを用い、実験中の 血圧や心拍数などを計測する。マウスを搬入してから環境への適用期間1週間と テレ メトリ施術後の適用期間 1週間を考慮し、マウスの飼養は打上げの2週間前からとす る。
表2.2-4 マウス飼養計画(例)
打上予定
▽ (9週齢) テレメ施術
▽ (8週齢) 搬入[20匹]
▽ (7週齢) Group 3
(Back Up)
搬入[20匹]
▽ (7週齢) テレメ施術[5匹]
▽ (8週齢)
2Week 搬入[20匹]
▽ (7週齢)
1Week
打上予定
▽ (9週齢)
4Week
テレメ施術
▽ (8週齢) 打上予定
▽ (9週齢)
3Week
Group 2 (Back Up) Group 1
5Week
打上予定
▽ (9週齢) テレメ施術
▽ (8週齢) 搬入[20匹]
▽ (7週齢) Group 3
(Back Up)
搬入[20匹]
▽ (7週齢) テレメ施術[5匹]
▽ (8週齢)
2Week 搬入[20匹]
▽ (7週齢)
1Week
打上予定
▽ (9週齢)
4Week
テレメ施術
▽ (8週齢) 打上予定
▽ (9週齢)
3Week
Group 2 (Back Up) Group 1
5Week
1週間以内の打上遅延であれば、
本マウス(Group1)を使用
打上遅延を見越し、Back up要
1週間以内の打上遅延であれば、
本マウス(Group1)を使用
打上遅延を見越し、Back up要
(c)搭載匹数
軌道上実験を実施する場合、軌道上と地上との条件を比較するための地上対象群(コン トロール群)を準備する。コントロール群と軌道上実験群は、最初から選別するのでは なく、同時に搬入し同環境で飼養したマウスをその時々に応じて選別する。
回収カプセルに3匹のマウス(内、1匹はテレメトリ埋め込みマウス)を搭載する場合の マウスの飼養匹数を表 2.2-2に示す。基本的には20匹のマウスを飼養し、1週間 目に 5 匹のマウスにテレメトリの埋め込み施術を行い、打上げ直前の装置への搭載時 に、健常マウスから 2匹 及び テレメトリの施術済みマウスを1匹選別し、残りは地 上対象群(コントロール)とし、軌道上実験との比較用に飼育を続ける。
46 (2) 搭載 (レイトアクセス)
マウスを搭載する飼育環境部(ミッション部)は、そのまま軌道上へと打上げるため、ロケ ットへ搭載する際には、完全に外気と遮断した閉鎖環境にする必要がある。
ミッション部には、軌道上での実験中はもちろん打上げから最終的に地上へ帰還し回収さ れるまでの間のリソース(餌や水、酸素など)を搭載する必要があること。マウスは極力打上 げ直前に搭載することが望ましく、ロケットの打上げ準備などを勘案し打上げの 1 日前に 搭載するものとする。ロケットへ搭載するまでの手順を以下に示す。
(a)装置への搭載
バス部などを搭載した回収カプセルの本体は既に打上げ用ロケットへ搭載しているた め、マウスを飼育するためのミッション部にマウスを入れ、ロケット組立棟へと運搬 する。
(1)項で示したようにマウスは、打上げ直前まで種子島宇宙センタ内に設置された実験 室で飼養する。飼養室内にて、打上げ用のマウスを選定しミッション部へと搭載し、
搭載後は外部環境の影響などを排除するため、外気から遮断するようミッション部を 密閉する。
(b)試料運搬
密閉したミッション部は、そのまま放置すると酸欠やCO2過多、内部温度の上昇など、
マウスの生命が危険に晒されてしまうため、ロケットへ搭載するまでの間は運搬用の 空調・生命維持装置を接続し、内部の空調や排熱などを行う。生命維持装置を搭載し た運搬用台車のイメージを図 2.2-3に示す。
(c)ロケットへの搭載
ミッション部を台車から外し、ロケットに搭載されているバス部へと搭載する。
搭載後は、空調や電気インタフェース、環境モニタやリークチェックを行い、問題な いことを確認した上でロケットのアクセスドアを閉め、打上げに備える。
図 2.2-3運搬用台車 及び 生命維持装置
ミッション部
電源
空調・生命維持装置 モニタ用PC
電圧分配器 コントローラ
流量計