栄養生理学
脳と神経系の生理
参考書
:
山本ら 第
4
、7
~8
章 藤田pp227
~277
Mader
第13
章この講義で身に付けること
• ニューロンの解剖および活動電位の伝導メ カニズムを理解する
• 中枢神経と末梢神経の解剖とメカニズムを 理解する
• 脳の解剖と機能を理解する
• 認知症・うつと葉酸の関係を学ぶ
神経の概要
中枢神経 知覚神経
運動神経 自律神経
交感神経
消化器系 以外を活発化
動悸 息切れ 瞳孔散大
副交感神経
消化作用促進 排尿・排便 その他は抑制
ペアになって 反対の作用
体性運動神経 遠心路
運動コマンド 求心路
知覚情報
効果器 受容器
中枢神経と末梢神経
• 神経は中枢神経系( CNS) と末梢神経系
( PNS) に分類される
• CNS は脳と脊髄 ホメオスタシスの維持
• PNS は神経線維 刺激を情報として脳
に伝えその反応を末端に伝える
• 2 種類の細胞に分類できる
–
神経細胞(
ニューロン)
–
グリア細胞(
支持細胞)
ニューロンとは ?
•
神経系の構成・機能的単位である神経細胞•
細胞体・軸索・樹状突起で構成されている–
樹状突起:外部からの情報を受け取る
興奮する–
軸索を通って終末に運ばれて(
興奮伝導)
興奮を伝える
(
興奮伝達)
•
神経を伝わっている信号=神経の興奮•
神経に沿って興奮が伝わること=興奮の伝導•
伝導の速度は計算可能– 1m/sec
から100m/sec
まで様々•
神経などを興奮させる環境の変化=刺激ニューロン ( 神経細胞 ) の種類
1) 感覚ニューロン ( 感覚神経細胞 ) :捉えた刺 激を感覚として CNS に伝える
2) 運動ニューロン ( 運動神経細胞 ) :脳からの 指令を筋や腺 ( 効果器 ) に伝える
3) 介在ニューロン ( 介在神経細胞 ) : CNS 内
で情報を神経細胞から神経細胞に伝える
ニューロンの種類と構造
http://www.geocities.jp/ululu_o_ululu/report-07-0101.jpg
支持細胞 ( グリア細胞 )
•
中枢神経に4
種類–
上衣細胞:脳室内での脳脊髄液の循環や脳室から脳 実質への物質輸送–
アストログリア(
アストロサイト)
:栄養補給、ダメージの 修復、ホルモン生産–
ミクログリア:破損した神経細胞や老廃物の除去–
オリゴデンドログリア(
稀[
希]
突起膠細胞・オリゴデンド ロサイト)
:髄鞘を形成し栄養補給と神経細胞の維持•
末梢神経に2
種類–
衛星細胞:神経節で神経細胞の核周部を覆う–
シュワン細胞:末梢神経に存在。髄鞘を分泌髄鞘 ( ミエリン鞘 ) とシュワン鞘
•
軸索にはオリゴデンドログリアやシュワン細胞が巻き つく–
中枢神経:オリゴデンドログリア–
末梢神経:シュワン細胞•
髄鞘(
ミエリン鞘)
:オリゴデンドログリアやシュワン細胞 の細胞膜が巻きついて形成•
シュワン鞘:シュワン細胞の細胞質が取り巻く部位•
ミエリン(
スフィンゴ脂質)
髄鞘の主成分
絶縁能力 が高い–
髄鞘と髄鞘の間
ランビエ絞輪–
興奮の伝導と神経線維が成長するための通路髄鞘の有無と存在部位
•
髄鞘のあることを有髄、シュワン鞘のあることを 有鞘という•
神経細胞によって軸索が髄鞘やシュワン鞘で 覆われているかに違いがある1)
無髄無鞘線維:中枢 灰白質2)
無髄有鞘線維:末梢 自律神経(
節後線維) 3)
有髄無鞘線維:中枢 白質4)
有髄有鞘線維:末梢 体性神経(
運動・知覚)
静止電位と活動電位
• ニューロンには「興奮」か「静止」のどちら かの状態しかない ( 全か無かの法則 )
• 軸索の内部が外部と比べてマイナス (-) に 帯電している状態=静止時 静止電位
• 特定の強さの刺激を受けると興奮する
• 興奮するかしないかの境界値=閾値
• 興奮によって起きる軸索の細胞膜の極性
( 電位差 ) の変化=活動電位
電位差のメカニズム
• 軸索の細胞膜を挟んでイオンの分布に違 い
–
軸索の外部ではNa +
濃度が高い–
軸索の内部ではK +
濃度が高い• 濃度の違いを一定に保つメカニズム
–
ナトリウムーカリウムポンプ(
能動輸送)
– Na +
とK +
は常に拡散で細胞膜を透過して行く が、細胞膜はK +
に対してより高い透過性を持 つ
常に外部により多い+イオンが存在する–
ーに荷電したイオンが軸索の細胞質に存在http://stevebambas.com/AP%20210%20Neurons%20Images/AP%20210%20Action%20Potential%20Two.jpg
•
活動電位が起きると1) Na +
チャネルが最初に開く
軸索内の電荷が-から+に変化する
(
脱 分極)
2) Ka +
チャネルが開く
軸索内の電荷が-に 戻る(
再分極)
興奮の伝導
活動電位
軸索
軸索
跳躍伝導
• 有髄神経線維には髄鞘が巻かれている
–
電気を通さないので電流はランビエ絞輪だけ 流れる– ↑
伝導スピード&脱分極の面積が少なくてす む
エネルギー節約http://im-ctu.com/essay/media/6/20080902-ランビエ絞輪二.png
神経線維の種類
種類 直径 伝導速度(
m/sec)
髄鞘 機能A α 20
~12 120
~60
有髄 運動および知覚β 14
~8 80
~30 γ 8
~2 55
~15 δ 3
~1.5 30
~6
B 3 15
~3
有髄 自律神経節前線維C 1 0.8
~0.3
無髄 自律神経節後線維、皮膚感覚の一部
• 伝導速度による分類方法
• 直径の違いによる分類方法もある
教科書
p99
軸索輸送と変性
•
ニューロン内部ではタンパク質などが生産され て終末に向けて輸送される(
軸索輸送)
–
逆行する物質もある•
神経が切断されると2
~3
日で軸索の消失
一 週間後にシュワン細胞による中空管の形成&切断
2
~3
日後から切断部での再生の開始(
ウォーラーの変性)
•
細胞体に近い部位で切断が起こると変性が細 胞体に達する
ニューロンの完全な消失シナプスでの伝達
• 他の樹状突起や細胞体に面している軸索 の先端 軸索終末
• 面している領域=シナプス
–
シナプス前膜(
要素)
・シナプス間隔・シナプス 後膜(
要素)
• 活動電位は神経伝達物質を使いシナプス を渡る=伝達
–
広範囲に広がる発散とシナプスが集約するこ とによる集中統合
http://www2j.biglobe.ne.jp/~fkamiya/HB/images/F1206b.jpg
シナプスでの伝導メカニズム
http://www.colorado.edu/intphys/Class/IPHY3430-200/image/11-13.jpg
活動電位
Ca 2+
チャンネル軸索終末
中枢神経と 末梢神経
•
中枢神経(CNS)
–
脳と脊髄•
末梢神経(PNS)
– CNS
の外に存在する神経と神経節
–
神経=軸索の束–
脳神経(12
対)
+脊髄 神経(31
対)
–
体性神経系(
知覚神 経+体性運動神経)
と自律神経系 坂井、橋本、2011、p77
CNS :脳と脊髄
-髄膜と脳脊髄液の解剖-
坂井、橋本、2011、p115
–
脳脊髄液で生産・貯蔵される
静脈に排水できなくなると障害発生灰白質と白質
坂井、橋本、2011、p79 灰白質:細胞体と無髄神経線維 白質:有髄神経線維
有髄神経線維が束になって伝導路を形成
ニューロンの密集体は
PNS
にも存在
神経節脊髄
http://www.mypsychologyblog.com/wp-content/uploads/2010/03/SpinalCord.jpg
前灰白質
(
前柱)
後灰白質
(
後柱)
後根入口後根神経節 前索
側索 後索
後正中溝 後中間溝
軟膜 クモ膜
硬膜 前正中裂
脊髄神経節
脊髄神経
(
前根・後根)
脊柱管の中に脊髄が伸びている
•
椎骨の間から脊髄神経(
末梢 神経の一部:31
対)
が伸びる•
知覚ニューロン(
求心路・上行 路)
と運動ニューロン(
遠心路・下行路
)
が存在する•
ベル・マジャンディの法則–
求心路(
知覚)
は後根から–
遠心路(
運動)
は前根から•
求心路・遠心路は経路過程で 交差する
脳が支配する体の 部位は左右逆•
反射の中枢坂井、橋本、2011、p86
無条件反射 ( 条件反射と区別 )
•
反射中枢が脊髄にあるもの=脊髄反射•
先天的に持っている定期的反応•
体性反射と自律性反射•
反射弓:受容器
求心性神経
反射中枢
遠 心性神経
効果器•
反応が起きるまでの時間=反射時間• 例:膝蓋腱反射・対光反射 ( 瞳孔の収縮の 確認 ) で延髄の異常を確認 ( 呼吸と循環を 司る部位 )
–
異常があるときでは反応が違う
診断条件反射
• 条件反射:条件付け ( 経験 ) することで起 きる反射
–
酸味の食品を見ると 唾液が出る• イワン・パブロフが 犬を使って実証した
• 1904 年ノーベル生 理学・医学賞受賞
http://iespinardelarubia.centros.educa.jcyl.es/sitio/upload/img/Pavlov.jpg
Ivan Petrovich Pavlov
1849 -1936
脳の構造
坂井、橋本、2011、p114
•
大脳・間脳・小脳・脳幹に分類
•
左右の脳は脳梁で 連絡–
左脳は言語・計 算機能–
右脳は認知・立 体的構成の把握•
血液脳関門•
ブドウ糖のみをエ ネルギー源として 利用http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/b/b5/Brain_diagram_ja.svg
脳毛細血管の選択的透過性
• 機械的保護は頭蓋骨・髄膜・髄液
• Blood-Brain-Barrier( 血液脳関門 ) で血液 からの有害物質を防いでいる
–
タイト(
密着)
結合:隣接する細胞膜のタンパク質同 士の結合
不浸透性の確保–
アストロサイト• 通過可能:水・酸素・二酸化炭素・グル コースなど
• 通過不可:色素・ Na + ・ K + ・ Mg 2+ や有害物
質 ( アルコールやニコチンなど一部を除く )
アルコール
• GABA(
抑制伝達物質)
やグルタミン酸(
興奮性伝達物質
)
の受容体と結合
脳機能の抑制–
判断能力・運動能力の低下–
脳萎縮の推進•
純アルコール摂取が20g
を超えると死亡率が 増加するとの報告がある平成19年度厚生労働科学研究「わが国における飲酒の実態ならびに飲酒に関連する生活習慣病、公衆衛生上の諸問題とその 対策に関する総合的研究」
中心溝に沿って切ると運動野 ( 前方 ) と 感覚野 ( 後方 ) に分けられる
坂井、橋本、2011、p119
http://2.bp.blogspot.com/_CVxm5d_3xFU/SjD6HxeIUEI/AAAAAAAAAiY/J18dzJPK_8Q/s320/TaylorIMMjbSamuelGeorgeMortonM.jpg
Samuel George Morton
1799-1851
http://www.gustavslibrary.com/images/goniometer.gif http://www.gustavslibrary.com/crania300.gif
Pierre Paul Broca
(28 June 1824 – 9 July 1880)
http://www.brainclinic.co.za/images/paul_broca.png
http://antiquescientifica.com/craniometer_Paul_Broca_Mathieu_illustration.jpg
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/d/d2/BrocasAreaSmall_(ja).png/250px-BrocasAreaSmall_(ja).png
間脳と脳幹
•
間脳:視床、視床 下部•
下垂体や松果体•
脳幹(
中脳・橋・延 髄・[
間脳])
:–
情報の橋渡し–
生命活動を維持する中枢
–
呼吸・体温調節・血圧調節
–
脳神経が集中•
後脳:橋と小脳•
菱脳:延髄と橋 http://facstaff.gpc.edu/~jaliff/brastem2.gif橋
間脳
中脳
延髄
後脳
菱脳
ラットによる研究結果
各群
8
匹の実験でHFCS(
異性化糖)
の長期摂取が 体重増加と腹部脂肪の増加が見られた(
オスでより 顕著な結果)
Bocarsly et al. Pharmacol Biochem Behav 2010Cha SH, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2008; 105(44):16871-16875.
小脳
•
橋と延髄の背側にあ る•
随意筋の調節と協調•
速い運動に対しての 平衡・姿勢維持・運動 の調和小脳
http://www.memorylossonline.com/glossary/images/cerebellum.jpg
http://www.healthaid.jp/image/healthaid/healthy2/healthy4.gif
•
神経節が存在– CNS
から神経節=節前神経
–
神経節から臓器=節後神経
•
交感神経:エネルギー 消費、ストレス対応•
副交感神経:エネル ギーの蓄積•
節前神経・節後副交感 神経はコリン作動性•
節後交感神経はアドレ ナリン作動性「自律神経の二重支配」
プリオン病
•
脳に空洞が出来てスポン ジ状になる疾患•
牛海綿状脳症(BSE)
やク レイビー(
羊)
、クロイツフェルト・ヤコブ病
(
ヒト)
•
タンパク質物質であるプ リオンの異常が原因とす る説が有力•
感染経路–
遺伝子の突然変異–
外部からの感染•
肉骨粉http://sciencelife.uchospitals.edu/2010/01/29/linkage-129-the-prions-job-antivax-smackdown/#more-1867
十分な睡眠による脳の発達
• 5
-18
歳の子供290
名の睡眠習 慣と脳における 白質と灰白質の 体積をMRI
を使 い調査•
睡眠時間が長 い子供ほど海 馬の灰白質の 体積が多い傾 向が見られたTaki et al. Neuroimage. 2011
朝ごはんが脳に与える影響
Taki et al. Plos One, 2010
、川島隆太 講演スライド• 5
-18
歳までの男女(
各145
名)
に対してMRI
を実施•
年齢、性別、SES
などを調整した後でも、朝食にごはん を食べる子供のほうが脳内の灰白質の割合が高かった•
成長期ほど割合の差が大きくなった• GI
の違い(
低GI
食の方が安定したグルコースを供給)
食育と認知機能
東北大学 川島隆太教授 講演スライド
認知症とうつ
•
認知機能障害–
脳血管型とアルツハイマー型•
ビタミンB
摂取不足と血中ホモシステイン(
アミノ酸 の一種)
値の上昇が認知力の低下と関係(Tucker et al. Am J Clin Nutr, 2005)
•
血中ホモシステインの上昇はうつの発症とも関係(Almeida et al. Arch Gen Psychiatr, 2008; Nanri et al. EJCN, 2010)
http://alzheimersinfo.info/
魚油と脳生理
•
魚油は多価不飽和脂肪酸のドコサヘキサエン 酸(DHA)
とエイコサペンタエン酸(EPA)
が多い• DHA
はシナプス膜の流動性を高める⇒情報伝 達機能が高まる–
老化によるシナプス機能の回復• DHA
を多く摂取⇒学習能力やIQ
向上(
脳機能の 発達に関与)
• DHA
の血栓・動脈硬化予防による血流量増加 やシナプス膜機能の変化⇒認知症改善•
脳神経系機能の維持・向上にはDHA
の総摂取 量が一日に1.0g
は必要http://www.miyakenvora.com/img/horensou.jpg
葉酸と認知症・うつ予防
http://www.eiyoukeisan.com/calorie/img/gram/kaisou/nori_yaki_3.JPG
• 葉酸の効果
–
ホモシステインの増加予防 から血管の損傷を防ぐ–
アミロイド前駆体を合成す る遺伝子を抑制• 2010 年日本人の食事摂
取基準
–
成人(
推奨量)240μg/
日–
耐容上限量:1300
~1400μg/
日血中ホモシステインの上昇
認知症 脳梗塞 心筋梗塞
野菜 嫌 い
体 質
(遺 伝 子
)
うつ病
骨 粗 鬆 症 脊
椎 二 分 症
、低 体 重
児 推奨量
240μg
は高齢者、15%
の遺伝子多型で不足葉酸は寝たきり高額医療費の 3大病因を予防
副学長講義スライド
0 1 2 3 4 5 6
0 1 2 3 4 5 6 7 8
気づかない脳梗塞
ホモシステイン (nmol/ml) ホモシステイン (nmol/ml)
Araki et al.
Geriatr Gerontol Inter
2003; 3: 15-23**
症状のある脳梗塞
ホモシステインが高いと脳梗塞が5.5-7.5倍に増加
*
*** ***
<6.8 6.9-8.1 8.2-10.2 ≥10.3 <6.8 6.9-8.1 8.2-10.2 ≥10.3
葉酸欠乏による
脳 梗 塞 の発 見 頻 度
厚 労省 の葉 酸策 定 基準 は
13
副学長講義スライド
葉酸添加に対する国際的な動き
2012
年8
月現在: 74
ヶ国が小麦製品に少なくとも鉄お よび/
もしくは葉酸を添加することが必須となっている2 年間の坂戸市葉酸プロジェクトで坂戸市医 療・介護費を合計で約 22.3 億円節減
国枝寛: 日本公衆衛生学雑誌 学会抄録集56 :167