研 究 課 題 高級衣料製造のグローバルな拠点――倉敷市児島の事例研究
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(2) ※ ホームページ等で公表します。 (様式2-1) 立教SFR-個人-報告. 研究成果の概要(図・グラフ等は使用しないこと。) 研究の背景 1 9 7 0 年 代 以 降 の グ ロ ー バ ル 経 済 の 進 行 は 、先 進 国 諸 都 市 の 経 済 を 衰 退 に 向 か わ せ た 。そ の た め「 何 が 都 市 の 成 長 を 促 す の か ? 」と い う 現 実 的 な 問 い が 、近 年 の 都 市 社 会 学 に た い し 求 め ら れ て い る 。 今 の と こ ろ こ の 問 い に た い し 、「 知 識 生 産 が 都 市 成 長 を 促 す 」 と い う 答 え を 、 都 市 社 会 学 は み い だ し て い る ( Sassen, 2001) 。 この認識をもとに、ニューヨーク、ミラノや東京を事例とした衣料文化生産の研究が、 都 市 社 会 学 で も 活 発 に な り は じ め て い る ( Bovone, 2005; Lloyd, 2006; 三 田 , 2012; 2013 ) 。 日 本 の 都 市 社 会 学 で は 、東 京 都 渋 谷 区 神 宮 前 の 住 宅 街 で あ っ た 細 街 路 が 、高 級 衣 料 デ ザ イ ンのグローバルな研究開発拠点へと変容した過程を明らかにしたケーススタディがある ( 三 田 , 2 0 1 2 ; 2 0 1 3 )。 こ の 研 究 で は 、 そ の 要 因 を 1 9 8 0 年 代 の グ ロ ー バ ル 経 済 の 進 行 と 、 そ れ に 伴 う 土 地 資 産 バ ブ ル の 盛 衰 に 求 め て い る 。そ の う え で 、都 市 成 長 の 原 動 力 と し て の 衣 料 文 化 生 産 に 重 要 な 要 素 を 、衣 料 デ ザ イ ナ ー の グ ロ ー バ ル な ネ ッ ト ワ ー ク で あ る こ と を 明 ら か に し た ( 三 田 , 2 0 1 2 ; 2 0 1 3 )。 こ れ ら 先 行 研 究 の 考 え 方 は 、古 典 的 都 市 社 会 学 が 追 求 し て き た 研 究 の 問 い と は 対 照 的 な も の で あ る 。な ぜ な ら 、1 9 7 0 年 代 ま で の 都 市 社 会 学 は 、 「都市の成長が何を生み出すのか?」 という問いにたいする答えを追求してきたからである。とくに近年の都市文化生産研究 は 、現 代 ア ー ト や 衣 料 デ ザ イ ン と い っ た 、知 識 生 産 に 焦 点 を あ て た 調 査 研 究 が な さ れ て き た 。そ の た め 、財 の 製 造 と い う 観 点 か ら 衣 料 文 化 生 産 に 深 く 言 及 し て い な い と い う 研 究 課 題 が 残 さ れ て い る 。と く に 衣 料 文 化 生 産 は 、デ ザ イ ン 部 門 と 製 造 部 門 の 取 引 と 流 通 網 の 発 達 に よ り 成 立 し て い る 。そ れ ゆ え 、製 造 の 観 点 か ら 文 化 生 産 を 捉 え 、そ れ を 既 存 の 都 市 文 化生産研究と結び付けることが必要不可欠となる。 1980 年 代 の 日 本 の 社 会 学 に お い て も 、 衣 料 製 造 業 都 市 の 研 究 が 、 学 生 服 製 造 と し て 有 名 な 、 倉 敷 市 児 島 を 事 例 と し て お こ な わ れ て き た ( 布 施 , 1 9 8 5 ; 西 尾 , 1 9 8 5 ; 浅 野 , 1 9 8 5 )。 ま た 、日 本 の 地 理 学 や 経 営 学 で も 、1 9 8 0 年 代 に 学 生 服 の へ の 需 要 が 落 ち 込 み 、カ ジ ュ ア ル 高 級 衣 料 製 造 に シ フ ト し て き た 児 島 の 再 成 長 を 、産 業 集 積 論 の 観 点 か ら 明 ら か に さ れ て き た ( 猪 口 ・ 小 宮 , 2007 ; 立 見 , 2004; 藤 井 ・ 戸 前 ・ 山 本 ・ 井 上 , 2007; 坂 倉 ・ 河 口 ・ 宮 崎 ・ 原 田 , 2 0 0 8 )。 布 施 、西 尾 や 浅 野 に よ る 先 行 研 究 は 、幕 藩 体 制 期 の 干 拓 事 業 を 契 機 と し た 綿 花 栽 培 か ら 軍 服・学 生 服・制 服 の 生 産 拠 点 へ と 変 化 し て き た 過 程 が 詳 細 に 記 述 さ れ て い る 。と く に 児 島 の 衣 料 製 造 部 門 が 中 堅 企 業 か ら 零 細 企 業 と 工 縫 層( 家 庭 内 手 工 業 )に よ り 支 え ら れ て い る こ と が 明 ら か に さ れ た ( 布 施 , 1 9 8 5 ; 西 尾 , 1 9 8 5 ; 浅 野 , 1 9 8 5 )。 日 本 の 地 理 学 や 経 営 学 で は 、マ イ ケ ル ・ ポ ー タ ー の「 産 業 ク ラ ス タ ー 」 ( P o r t e r, 1 9 9 0 = 1 9 9 2 )の 枠 組 み で 児 島 を 捉 え 、 児 島 の 産 業 集 積 に か ん す る 説 明 が な さ れ て い る ( 坂 倉 ・ 河 口 ・ 宮 崎 ・ 原 田 , 2 0 0 8 )。 ま た 、 ピ オ レ と セ ー ブ ル の 『 第 二 の 産 業 分 水 嶺 』( P i o r e a n d S a b l e , 1 9 8 4 = 1 9 9 3 ) に 代 表 さ れ る ポ ス ト ・ フ ォ ー デ ィ ズ ム 論 の 観 点 か ら も 、児 島 の 高 級 デ ニ ム 製 造 拠 点 を 、産 業 集 積 の 成 功 事 例 と し て 捉 え た 研 究 も あ る ( 立 見 , 2004; 藤 井 ・ 戸 前 ・ 山 本 ・ 井 上 , 2007) 。 じっさい近年の児島を代表とする瀬戸内海沿岸都市や、播磨灘沿岸都市(加古川・姫 路・西 脇 )の 小 規 模 衣 料 製 造 部 門 は 、国 内 外 の 大 都 市 衣 料 デ ザ イ ン 部 門 と 、グ ロ ー バ ル な ネ ッ ト ワ ー ク を 形 成 し 、取 引 を 強 化 し な が ら 発 達 し て き た 。こ の ネ ッ ト ワ ー キ ン グ と 取 引 の 強 化 が 、衣 料 産 業 の グ ロ ー バ ル な 再 編 を 促 し 、デ ザ イ ン と 製 造 を め ぐ る グ ロ ー バ ル な 都 市間分業体制を形成してきた。 しかし上述の社会学、地理学、経営学における先行研究においては、衣料産業のグロー バ ル な 再 編 と 、グ ロ ー バ ル 都 市 特 有 の 知 識 生 産 と 関 連 付 け な が ら 、高 級 衣 料 製 造 業 都 市 を 捉 え き れ て い な い 。グ ロ ー バ リ ゼ ー シ ョ ン の 観 点 か ら 製 造 業 都 市 の 空 間 再 編 を 捉 え る こ と の 重 要 性 は 、 海 外 の 研 究 者 に よ っ て も 提 唱 さ れ は じ め て い る ( F l e w, 2 0 1 3 )。 とりわけ、高級衣料のデザインと製造をめぐる都市間分業を捉えることは、近年の都市社 会学のメインテーマのひとつであるグローバル都市と、国内外の製造業都市のあいだの密接 な関係性を示すことができるという現代都市社会学研究としての学術的意義がある。 (次頁に続く).
(3) ※ ホームページ等で公表します。 (様式2-2) 立教SFR-個人-報告. 研究成果の概要(つづき) そこで本研究は、国内地方都市における高級衣料製造のグローバルな拠点機能が、どのよ うに発達してきたのか?この問いを明らかにするため、国内高級デニム衣料製造が活発な、 倉敷市児島の記述をおこなう。そのうえで、事例記述を、都市社会学の枠組みで考察を深め た。 調査方法 主な調査対象者は、児島に事業所をおく製造職人、デザイナー(東京出身)そして児島商 工会議所の総務課長である。また児島商工会議所、倉敷市発行の資料と、児島商工会議所、 倉 敷 フ ァ ッ シ ョ ン セ ン タ ー 、 倉 敷 市 や 、 JR 西 日 本 が 発 行 し て い る 児 島 に か ん す る 広 報 資 料 、 および倉敷市統計書を収集し、記述のための参考資料として利用した。 ま た 児 島 の 事 業 所 と の 取 引 状 況 と 衣 料 産 業 の グ ロ ー バ ル な 動 向 を 把 握 す る た め 、2 0 1 4 年 1 2 月 末 か ら 2015 年 1 月 上 旬 に か け て 、ア ム ス テ ル ダ ム と パ リ に 渡 航 し 、調 査 を お こ な っ た 。具 体 的 に は 、 ま ず ア ム ス テ ル ダ ム の 新 都 心 Zuid( ザ イ ト ) で 衣 料 デ ザ イ ナ ー か ら ハ ウ ス オ ブ デ ニムと児島の関係にかんする聞き取り調査を実施した。サンプリングの方法は、筆者の友人 である、東京南青山のアシスタントデザイナーの紹介にもとづくものである。パリの現地調 査 で は 、パ リ 12 区 を 拠 点 と す る デ ザ イ ナ ー を 対 象 と し た 聞 き と り 調 査 を 行 っ た 。 調 査 倫 理 の 遵守、および調査対象者の個人情報管理を徹底した。また調査対象者の経済活動に支障をき たさないように、情報管理を徹底した。調査結果の公表にかんしては、調査対象者からの承 認を得ている。 調査結果の概要 児島は、幕藩体制における綿花栽培から一貫して繊維業に特化しつづけてきた。それが要 因 と な り 、 戦 前 は 軍 服 、 戦 後 は 学 生 服 、 そ し て 1990 年 代 以 降 は 、 デ ニ ム 製 の 高 級 衣 料 製 造 の グローバルな拠点へと転換してきた。近年では、国内外の高級衣料デザイン部門と活発な取 引をおこなってきた。また国内外のデザイナーとの相互作用が頻繁に行われてきた。こうし て児島の事業所は、グローバルな純粋生産志向のニーズにこたえられる、最先端のデザイン にも対応できるカジュアル高級衣料製造を可能にした。 幕藩体制の時期においては、高梁川の土砂と交易船が捨てたニシンのくずが生み出した、 肥沃な海域を埋め立てた。この肥沃な土壌が、良質な塩田開拓を促した。塩田のあと、厚手 で 高 級 な 綿 花 栽 培 を 促 し た 。そ の 後 児 島 で は 足 袋 製 造 が 発 達 し た も の の 、第 一 次 世 界 大 戦 後 、 朝鮮半島や中国などアジア近隣諸国による足袋製造業の発達により衰退した。戦後は、戦時 中 の 軍 服 製 造 技 術 を 応 用 し 、学 生 服 の 製 造 拠 点 へ と 変 容 し た 。と く に 1 9 6 2 年 の 全 総 に も と づ く水島の臨海工業地帯開発により、合成化学繊維の開発が促された。児島は、合繊メーカー の系列企業集積地帯となり、学生服の国内製造拠点となった。その後生産過剰と学生服需要 の落ち込みにより、児島の地域衰退を招いた。しかし過去の縫製技術を応用したデニム素材 のカジュアル高級衣料製造を成功させた小規模事業所が、国内外の高級衣料デザイン部門と の取引を活発化させた。 また児島の事業所が、国内外の大都市衣料デザイン部門とのグローバルな法人間取引を可 能にした。その要因は、綿花栽培農家、製糸工場、紡績工場、染色工場、加工組み立て工場 とデザイン事務所が参加する、素材国際展示会への児島の事業所が参加したことにある。こ の素材展示会をつうじ、衣料分野における製造(素材)をめぐるグローバルなネットワーク が形成されていることが明らかになった。このグローバルな素材展示会開催のさい、児島の デニム素材を用いた高級衣料製造のスキルの高さにかんする情報が共有されはじめた。この ことが契機となり、パリやニューヨークの高級衣料ブランド大資本が、児島の工場に衣料製 造委託を行いはじめた。 ※ この(様式2)に記入の、成果の公表を見合わせる必要がある場合は、その理由及び差し控え期間 等を記入した調書(A4縦型横書き1枚・自由様式)を添付すること。.
(4) ※ ホームページ等で公表します。 (様式3) 立教SFR-個人-報告. 研究発表 (研究によって得られた研究経過・成果を発表した①~④について、該当するものを記入してください。該当するものが多 い 場合は主要なものを抜粋してください。 ) ①雑誌論文(著者名、論文標題、雑誌名、巻号、発行年、ページ) ②図書(著者名、出版社、書名、発行年、総ページ数) ③シンポジウム・公開講演会等の開催(会名、開催日、開催場所) ④その他(学会発表、研究報告書の印刷等). ① 誌論文 三田知実, 2015,「高級衣料のグローバルな製造拠点――倉敷市児島における高級カジュアル衣料製造部門の事例研究 ――」日本都市社会学会年報第 33 号, 日本都市社会学会.(査読付論文として投稿。2015 年 5 月 6 日に掲載決定。 9 月に公表) ②図書 現在のところ、後述の研究報告書を出版物としてリライトする予定である。そのため、継続調査を行い、研究のブ ラッシュアップを行う。問題はデータが膨大にあることである。論旨がぶれないよう、安定性の維持につとめる。 ③シンポジウム・公開講演会等の開催 スケジュール調整が長引き、2015 年度に、調査対象者に還元するための公開講座を開催するよう、鋭意準備を進 めている。なお④最下部に掲載のとおり、調査対象者への知財還元を行っているので、そちらを参照されたい。 ④その他(学会発表・研究成果報告書) ■研究成果報告書 三 田 知 実 , 2 0 1 5 , 「 高 級 衣 料 製 造 の グ ロ ー バ ル な 拠 点 に 関 す る 都 市 社 会 学 的 研 究 」( 研 究 代 表 者 三 田 知 実 立 教 大 学 社 会 学 部 現 代 文 化 学 科 ・ 助 教 )立 教 大 学 学 術 推 進 特 別 重 点 資 金 ( 立 教 S FR) 2014 年 度 個 人 研 究 研 究 成 果 報 告 書 ■ 学 会 報 告 ・ 研 究 会 報 告 ( 1) 「衣服製造のグローバル都市・倉敷市児島 ―ジンメルからサッセンまでの都市社会学を基盤とした実証的研究―」 報 告 大 会 : 2014 年 度 ジ ン メ ル 研 究 会 大 会 開催機関:ジンメル研究会 開 催 場 所 : 大 学 利 用 施 設 UNITY( ユ ニ テ ィ ) 神 戸 市 西 区 発 表 日 時 : 2014 年 9 月 20 日 (土 ) 14:00 報告者氏名: 三田 知実 報告種別: 単独 ■ 学 会 報 告 ・ 研 究 会 報 告 ( 2) 「 衣 料 産 業 の グ ロ ー バ ル な 再 編 と 都 市 間 分 業 体 制 ― ― 東 京 青 山・原 宿 エ リ ア と 倉 敷 市 児 島 の比較研究――」 報 告 大 会 :「 第 2 回 創 造 産 業 の 持 続 的 発 展 に 関 す る 研 究 会 」 開催機関:同志社大学創造経済研究センター 開催場所:同志社大学今出川キャンパス 発 表 日 時 : 2014 年 10 月 4 日 (土 ) 14:00 報告者氏名: 三田 知実 報告種別: 単独 ■調査対象者への還元事業 児島ジーンズストリートに事業所を構える衣料製造職人への知財 (デザインおよびレーベルの企画立案に関するデータ)の提供 ※ 東 京 青 山 の 広 告 代 理 店 の デ ザ イ ン 部 門 に 勤 務 さ れ て い る 方 、ま た ラ イ タ ー と し て 都 内 企 業 に ご 勤 務 さ れ る 方 の ご 協 力 を 経 て 、 2014 年 12 月 に デ ー タ ( 動 画 ・ 画 像 等 ) を 提 供 。 ※ 2014 年 10 月 に 、 お 二 方 の ご 協 力 を 経 て 、 3 名 で 児 島 に 向 か い 、 児 島 の 製 造 職 人 の 方 と 企画会議を行った。その会議を通じた知財として位置づけられる。.
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