論文内容要旨
The Effect of Film-coating on the Xanthan Gum Solution-Induced Delays in the Disintegration and Dissolution of Tablets
基礎医療薬学講座薬剤学部門 江畠 麗
【緒言】
近年,嚥下が困難な患者の誤嚥防止の目的で,医療機関や介護施設では,
食事や飲料水に増粘多糖類のキサンタンガム(XTG)を主成分とする,と ろみ調整食品で粘性を付与している.しかし,XTG を含有するとろみ調整 食品で調製された粘性溶液(以下 XTG-SOL)は錠剤の崩壊・溶出の遅延を 引き起こし,薬効を減弱させるという報告がある.先行研究ではいずれも 素錠が用いられており,XTG-SOL が素錠と接触することにより崩壊及び溶 出が遅くなると考えられる.そこで,XTG-SOL と素錠の接触をフィルムコ ーティングで妨げれば崩壊・溶出遅延を軽減できるか検討した.
【方法】
本試験では市販の XTG 含有増粘剤 3 g を蒸留水 100 mL に溶解し 0.9 %XTG-SOL として使用した.錠剤は 4 種のプラセボ錠(フィルムコー ティング錠 1 種,OD 錠 1 種,素錠 2 種)と市販のドネペジル錠 4 種(フ ィルムコーティング錠 1 種,OD 錠 3 種),ミチグリニド錠 3 種(微粒子コ ーティング OD 錠 1 種,OD 錠 1 種,素錠 1 種),アスピリン錠 1 種を用い た.第 17 改正日本薬局方に従い,プラセボ錠とアスピリン錠は崩壊試験 を,ドネペジル錠とミチグリニド錠は崩壊試験と溶出試験を行い HPLC 法 で定量を行った.試験群の錠剤は 0.9 %XTG-SOL に 1 分間浸漬後,各試験 を行った.
【結果】
XTG-SOL と有効成分との相互作用の可能性を除外するため,剤形の異な る 4 種のプラセボ錠について検討を行った.全ての錠剤は XTG-SOL に浸漬 した場合,コントロールと比較して崩壊時間は有意に遅延した.各錠剤間 で比較すると,フィルムコーティング錠の遅延が最も小さかった.次にド ネペジル製剤を使用し,HPMC コーティング錠と 3 種の OD 錠の XTG-SOL に よる崩壊及び溶出に対する影響を検討した.XTG-SOL 浸漬後の崩壊時間は
全錠剤で有意に遅延したが,コーティング錠の遅延が最も小さかった.
XTG-SOL 浸漬後の溶出はコーティング錠ではコントロールとの類似性が認 められたが,OD 錠では遅延した.ミチグリニド製剤でも XTG-SOL 浸漬後,
全錠剤で崩壊時間は有意に遅延し,微粒子コーティング OD 錠の溶出挙動 はコントロールと類似性が確認されたが,コーティングのない OD 錠では 遅延した.アスピリン腸溶錠の日局 2 液単独,及び日局 1 液から日局 2 液 での試験は,何れにおいても崩壊時間に有意な変化はなかった.
【考察】
XTG はフィルムコーティング層を透過できず,フィルムの内側にある錠 剤又は粒子と接触できない.したがって,コーティングがされている錠剤,
及び粒子を含有する錠剤は,XTG-SOL の影響が最小限となり,薬効へ及ぼ す影響が小さいと考えられる.以上より,XTG-SOL を用いて薬剤を内服す る際は,フィルムコートがされている錠剤を選択することが有効な服用方 法である可能性がある.