論文内容要旨
論文題名:Safety of diphtheria and tetanus toxoids and acellular pertussis (DTaP) vaccine in adults in Japan
日本語タイトル:ジフテリア・破傷風トキソイド・百日咳(DTaP)ワクチンの追加接種におけ る副反応の検討
掲載雑誌名:Japanese Journal of Infectious Diseases
(Vol. 74 No. 4-6, 2021 掲載予定)
専攻名:社会医学系衛生学公衆衛生学 氏家 無限 内容要旨:欧米では、乳幼児への沈降精製百日咳ジフテリア破傷風混合(DTaP)ワクチンの接種 後、追加接種時には接種後の有害事象(Adverse Events: AE)を避けるために、百日咳及びジフ テリアトキソイドの抗原量を減量した追加接種用のワクチン(Tdap)が使用されている。一方 で、日本では安全性に関する報告は限られているにもかかわらず、抗原量を減らさずにDTaPワ クチンを用いて思春期・成人に追加接種を実施できるよう、2016年に追加適応が薬事承認され た。本研究では、質問紙を用いた前向き観察研究として、10 歳以上のDTaP接種者を対象に、
2018年6月から2019年6月まで、DTaPワクチン接種から28日後までのAEの発生状況を調査 した。研究参加に同意した対象者250 名のうち、235 名(94%)から回答を得た。これら235 名のうち、133名(56.6%)がDTaP接種後のAEを報告し、39名が全身性AE(16.6%)を、
120名がDTaPワクチン接種に起因する局所AE(51.1%)を報告した。局所 AE の発生率は、
DTaP以外のワクチン接種時よりもDTaPワクチン接種時の方が明らかに高かった(51.1%対 10.5%)。また、DTaP 接種後の局所AEは、非DTaP接種後の局所AEと比較して、発現が有意に 遅く(p<0.01)、持続時間も長い(p<0.01)特徴を認めた。一方で、これらのAEの75%以上が7 日以内に自然軽快した。またDTaPワクチン接種と関連した重篤なAEは認められなかった。今 回の研究から得られた知見は、抗原量を減量しないDTaPワクチンが、Tdapの代替ワクチンと して成人に安全に広く追加接種できることを示唆するものである。今後の課題として、Tdapの 追加接種により得られる百日咳の抗体価は持続期間に課題があることから、抗原量を減量しな いDTaPワクチンの追加接種により得られる抗体価はより高値となることが期待される。また、
百日咳は学童期を中心に一般診療でも認められる呼吸器感染症であり、2019年には国内でも 1.5万人以上の感染者が報告されている。加えて、乳児が罹患した場合に重症化しやすいこと が知られており、欧米ではTdapワクチンを妊娠中期以降に接種することで、母体の百日咳に対 する抗体価を高め、母体からの移行抗体により出生児が定期接種を開始するまでの期間、百日 咳の感染を予防する戦略が取られている。このことから、現時点で、日本において妊婦にDTaP ワクチンを接種することは一般的な診療となっていないが、今後、国内においても妊婦に対し てDTaPワクチンを追加接種することの安全性と出生児を百日咳感染から予防する有効性に関す る臨床研究が必要となると考えられる。