論文内容要旨
Effect of the Septal Adjustment Technique for Tricuspid Annuloplasty with an MC3 ring
General Thoracic and Cardiovascular Surgery
外科学 心臓血管外科学分野 川浦 洋征
背景:僧帽弁疾患に伴う2次性三尖弁閉鎖不全症(TR)は患者の遠隔期予 後に影響を及ぼすため、外科的介入をすべきとされ、ring annuloplasty
(TAP)の有用性が報告されている。しかし、三尖弁では交連が不明瞭で 適切なリングサイズ選択が困難なことがある。そのため、我々は MC3を用 いた TAP の際、前尖・後尖の弁輪へ固定した後、逆流テストで最も逆流が 減少する位置に中隔部のリングを固定する septal adjustment 法を導入し、
短期成績を検討した。
対象・方法:2008 年 1 月から 2014 年 9 月までに僧帽弁疾患に伴う2次性 TR に対して TAP を併施した 121 例のうち、MC3 ring を用いた 56 例(年齢 67.6±9.0 歳、男性:女性=28:28)を対象とした。MC3 のサイズは全症 例中隔尖の交連間距離に基づき選択された。2012 年 9 月までの 37 例では 弁輪に 2-0TiCron horizontal mattress suture をかけ、MC3を固定した
(Conventional 群;C 群)。2012 年 10 月からの 19 例では前尖、後尖に MC3 を固定した後、主肺動脈を用手的に圧迫し、三尖弁越しに右室内に挿入し
たネラトンから逆流テストを行いながら、MC3 の中隔尖への固定部を頭側 または尾側へ動かし、逆流が減少する場所を確認した後、最後に中隔尖の 弁輪に 2-0TiCron で horizontal mattress suture をかけ、MC3を固定した
(Septal Adjustment 群;A 群)。患者背景(年齢、性別、BSA、既往)、術 中因子(リングサイズ、手術時間)、術後合併症、術前術後の LVEF、TRPG、
TR を検討した。TR については経胸壁超音波での 4 腔像での到達距離によ る分類(grade0-4)、ジェットエリア(cm2)を計測し、術前術後の TR の変化量(ΔTR grade、area)を評価した。
結果:両群間での MC3リングサイズは A 群 30.0±1.9mm、C 群 29.1±2.3mm
(p=0.17)、術後 LVEF、TRPG に有意差はなかった。TR grade は術前 A 群 3.2±0.6、C 群 2.8±0.6(p=0.03)と有意差を認めたが、術後 A 群 0.9±
0.6、C 群 1.4±0.8(p=0.04)と A 群で有意に減少した。TR area は術前 A 群 5.97±2.4、C 群 4.23±3.4(p=0.05)、術後 A 群 0.75±0.7、C 群 1.17
±1.2(p=0.17)ともに有意差を認めなかったが、ΔTR area は A 群 5.21
±2.3、C 群 2.85±3.1(p=0.006)と A 群で有意に改善を認めた。
結論:MC3 リングを用いた TAP において septal adjustment 法は従来の TAP より TR が減少し、より有用であることが示唆された。