損傷制御型RC系有壁架構の開発研究ー壁脚部にスリットを有する耐震壁の構造性能とひび割れ性 [ PDF
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(2) 試験体の実験変数は,アンボンド鉄筋の配筋位置と. 表 1 に試験体の一覧を示す.表 2 と表 3 に試験体に用. 種類とした.試験体はアンボンド鉄筋の配筋位置の違. いた材料の力学的性質を示す.. いにより O シリーズと I シリーズの 2 通りがある.アン. 3.2. ボンド鉄筋には,D10-SD295とD13-SD490を使用し,各. 図 4 に加力装置の概略図を示す.鉛直荷重は 5MN 試. シリーズを 2 体ずつ,合計 4 体の試験体を製作した.な. 験機により載荷し,実験中は鉛直荷重を一定に保持し. お,I シリーズでは,2 本の束ね鉄筋をアンボンド鉄筋. た.なお,軸力比は壁脚部の断面(140 × 410mm )を. として用いた.配筋位置の詳細は図 3 を参照されたい.. 用いて算定した.水平力は 1MN 油圧ジャッキにより正. アンボンド鉄筋の付着除去には,鋼製の30 のシース管. 負交番で繰返し載荷を行い,載荷点の水平変位により. を使用し,シース管の上下部分に防水処理を施し,管. 制御した.載荷プログラムは漸増振幅繰返し型とし,. 内の鉄筋を乾いた状態に保った.ここで,付着除去長. R= ± 0.25/100rad. から R= ± 1.00/100rad. まで変位振幅. さ L は以下の(1)式により算定した.. 増分を 0.25/100rad. とし,各変位振幅で 3 回ずつ載荷を. L. R l/2. (1). y. 加力装置と測定方法. 行い,以降はR= ±1.50/100rad.を 3回,R=±2.00/100rad.. 式中の R,l, y は順に,壁の部材角,アンボンド鉄筋間. を 1 回,合計 16 回の繰返し載荷を行った.. の距離,アンボンド鉄筋の降伏ひずみである.また,ア. 表 1 試験体一覧. ンボンド鉄筋の付着除去長さは,D10-SD295 は R=0.70/. 試験体 O-295-0.3. 100rad.,D13-SD490はR=1.00/100rad.でそれぞれ降伏す. O-490-0.3. B×D. るように設定した. 810. 35 40 40 40 40 40 120 40 40 40 40 40. 140. 200. A. D10@40ダブル (SD295). 横筋. 35 40. D10@80ダブル (SD295). アンボンド鉄筋. D10-SD295. D13-SD490. D10-SD295. D13-SD490. (配筋位置). (外側配置). (外側配置). (内側配置). (内側配置). 2. Fc (N/mm ). 24. 36. 軸力比. 0.3程度. 0.25程度. 150. 表 2 鉄筋の力学的性質. 35 40. 29 29. 140. B. 150. 試験体. 規格. B-B 断面図 O シリーズ. 810 150. 2. 2. 降伏比. (μ). (N/mm ). D-10 (SD295). 355. 1730. 466. 0.762. D-13 (SD490). 539. 2630. 662. 0.814. D-19 (SD345). 387. 1890. 548. 0.706. D-10 (SD295). 359. 1753. 488. 0.736. D-13 (SD490). 541. 2638. 662. 0.817. D-19 (SD345). 384. 1875. 542. 0.708. 35 40. 29 29. I シリーズ. 300. 140. 35 40 40 40 40 40 120 40 40 40 40 40. 降伏強度 降伏ひずみ 引張強度 (N/mm ). B. 20. I-490-0.25. 810 35 40 40 40 40 40 120 40 40 40 40 40. 1862. 140mm×410mm. 縦筋. A-A 断面図. A. シース管. 1300 (付着除去区間). B×D (脚部). 810. 410. 29 29. 200. I-295-0.25. 140mm×810mm. 410. 配筋図. 表 3 コンクリートの力学的性質. 脚部断面図. (a) O シリーズ試験体 810. 810. 200. 40 40 40 40 40 65 120 40 40 40 40 40 120 65 40. 140. 410. A. 呼び強度. 圧縮強度. スランプ. 空気量. (N/mm ). (kN/mm ). (cm). (%). 2. ヤング係数 2. O シリーズ. 24. 30.3. 27.9. 21.5. 4.5. I シリーズ. 36. 43.6. 33.3. 16.3. 4.8. カウンターバランス装置. 29 29. 200. 試験体. A. カウンターバランス装置. 軸力. A-A 断面図. 5MN試験機. 810. シース管. シャフト. 140. B. 29 29. B. W. ロードセル 加力梁. 1200 (付着除去区間). 1800. 40 40 40 40 40 65 120 40 40 40 40 40 120 65 40. ピン. 自在クレビス. テフロンシート 水平力載荷用PC鋼棒 H. B-B 断面図. ロードセル 1MN油圧ジャッキ. 810. 面外補剛装置. 面外補剛装置 試験体. W. 40 40 40 40 40 65 120 40 40 40 40 40 120 65 40. 140. 450. 29 29. 20. 410. 配筋図. PC鋼棒. 脚部断面図. (b) I シリーズ試験体. PC鋼棒. Iビーム. GL ローラー. 図 3 試験体詳細. ローラー. 図 4 加力装置と測定位置 62-2. PC鋼棒.
(3) 図 4に測定した主な変位を示す.変位は,載荷点位置. 生じた.R=1.50/100rad. の繰返し載荷では,壁脚部にお. において水平変位と鉛直変位を測定した.壁の部材角R. いて新たなひび割れとかぶりコンクリートの剥落が観. は,載荷点の水平変位を載荷点高さ(1600mm)で除し. 察された.. た値として定義した.なお,本試験体は壁脚部にスリッ. O-490-0.3の実験経過について述べる.R=0.29/100rad.. トを設けており,この部分ですべり破壊が懸念される. で露出鉄筋が降伏し,R=0.51/100rad.で壁脚部の縦筋が. ため,壁脚部において水平変位を測定した.また,ひず. 降伏した.その後,R=1.11/100rad. でアンボンド鉄筋が. みゲージを用いて鉄筋の挙動を観察した.. 降伏するまで,耐力の上昇は続いた.損傷状況はO-295-. 3.3. 0.3 と同様であった.ただし,R=2.00/100rad.の繰返し載. 耐力評価. 表 4に各試験体の計算耐力を示す.なお,耐力の計算. 荷で壁側面のコンクリートの剥落が観察された.これ. には,壁脚部の断面せい(410mm)を使用した.. は,シース管のかぶり厚さが不十分だったことが要因. 曲げ耐力時のせん断力 Qf は,壁脚部の RC 断面(140. として考えられる.. × 410mm)の全塑性モーメントに,アンボンド鉄筋と. 上記の破壊性状に対して,Iシリーズではアンボンド. 露出鉄筋の負担曲げモーメントを足し合わせ,載荷点. 鉄筋を配筋位置を変更することで改善を試みた.. 高さ(1600mm)で除した値とした.せん断耐力 Qs は文. I-295-0.25 の実験経過について述べる.載荷直後に露. 献 2)のせん断終局強度式により算定し,パンチングシ. 出鉄筋が降伏し,R=0.25/100rad.で壁脚部の縦筋が降伏. ア耐力 Qp は以下の(2)式により算定した.. した.その後,R=0.61/100rad. でアンボンド鉄筋が降伏. Q p. y. A. 3. するまで,耐力の上昇は続いた.損傷状況は,R=0.75/. (2). a n. 100rad. の繰返し載荷で壁脚部に薄いひび割れが生じ, 2. ここで,. min. . N ,T A. 2. 2. T. 2. 2. ,. B. R=1.00/100rad.の繰返し載荷でひび割れが顕著になり始. 2. 2. めた.R=1.50/100rad.の繰返し載荷で壁脚部に新たなひ. 2. び割れが生じ,さらに露出鉄筋が破断し始めた.露出 0.33. 鉄筋の破断後,耐力低下が見られた.. B. 式中の A, y,a,n,N, B は順に,壁脚部の断面積,鉄. I-490-0.25 の実験経過について述べる.載荷直後に露. 筋の降伏強度,鉄筋 1 本当たりの断面積,鉄筋の本数,. 出鉄筋が降伏し,R=0.25/100rad.で壁脚部の縦筋が降伏. 軸力,コンクリートの圧縮強度である.この式は,モー. した.その後,R=1.07/100rad. でアンボンド鉄筋が降伏. ル円より得られる最大せん断力に壁脚部の縦筋のダボ. するまで,耐力の上昇は続いた.損傷状況は I-295-0.25. 耐力を足し合わせたものである.. O-295-0.3. 計算値 (kN). 力 Qp が,曲げ耐力時のせん. 試験体. 断力 Qf を上回っている.試. O-295-0.3. 124. O-490-0.3. 163. I-295-0.25. 141. I-490-0.25. 173. 験体は,脆性的な破壊が生 じる以前に,曲げ破壊が先. 水平力 (kN). 耐力Qs とパンチングシア耐. 表 4 計算耐力一覧 Qf. Qs. Qp. 202. 546. 238. 604. 200. 200. 100. 100 水平力 (kN). 表に示すように,せん断. O-490-0.3. 0. -100. 0. -100. -200. -200 -2.0. 行することが予想される.. -1.0. 0.0. 1.0. 2.0. -2.0. -1.0. 部材角 (×10-2rad.). 4 実験結果. 0.0. 1.0. 2.0. 部材角 (×10-2rad.). (a) O シリーズ試験体. 4.1 実験経過と荷重−変形関係. I-295-0.25. I-490-0.25 200. を示す.図の縦軸は載荷点高さの水平力 H ( kN) で,. 100. 100. 横軸は壁の部材角 R(× 10-2rad.)である. O-295-0.3の実験経過について述べる.R=0.23/100rad.. 水平力 (kN). 200. 水平力 (kN). 図 5 に実験より得られた各試験体の荷重−変形関係. 0. -100. 0. -100. で露出鉄筋が降伏し,R=0.50/100rad. で壁脚部の縦筋が -200. 降伏した.その後,R=0.63/100rad. でアンボンド鉄筋が 降伏するまで,耐力の上昇は続い た.損傷状況は,. -200 -2.0. -1.0. 0.0. 1.0. 2.0. -2.0. -1.0. 部材角 (×10-2rad.). R=0.75/100rad.の繰返し載荷まで顕著な損傷は観察され. (b) I シリーズ試験体. ず,R=1.00/100rad. の繰返し載荷で壁脚部にひび割れが. 図 5 荷重−変形関係. 62-3. 0.0. 1.0. 部材角 (×10-2rad.). 2.0.
(4) と同様であった.R=1.50/100rad. の繰返し載荷以降,壁. アンボンド鉄筋については,いずれの試験体も概ね. 脚部のかぶりコンクリートの剥落が観察され,露出鉄. 想定した部材角で降伏した.アンボンド鉄筋は小変形. 筋の座屈や破断による耐力低下が見られた.. 時には弾性を維持しているが,これは剛性確保と自己. 4.2 破壊性状. 復原性を意図したものである.しかしながら,後者に. 図 6 に各試験体の最終的な損傷状況をスケッチした. ついてはその効果を確認できなかった.これについて. ものを示す.いずれの試験体もひび割れ領域は壁脚部. も,今後の検討課題としたい.. に留まり,壁板自体は健全な状態を保持している.た. 露出鉄筋については,いずれの試験体も小変形時に. だし,試験体によっては,壁脚部のかぶりコンクリー. 全て降伏し,エネルギー吸収デバイスとして機能した. トの剥落や,露出鉄筋の破断が見られた.しかしなが. と考えられる.ただし,I シリーズでは露出鉄筋に著し. ら,こうした挙動は部材角R=1.50/100rad.以降の繰返し. く大きい塑性ひずみが観察され,最終的にスリット部. 載荷で生じたものであり,設計上の変形のクライテリ. 分で破断した.しかしながら,露出鉄筋が破断した場. アとして設定した部材角 R=1.00/100rad.以内では,顕著. 合であっても,損傷を壁脚部に留めつつ,耐力低下の. な損傷は観察されていない.最終的な損傷度合いも,従. 少ない履歴性状を示すことが確認できた.. 来の耐震壁に比して軽微なもので,試験体は優れた損. 4.3 最大耐力. 傷制御性能を有することが確認できた.. 表5に各試験体の最大耐力の実験値と計算値を示す.. 本試験体は脚部にスリットを有するため,壁脚部で. 実験値Hexp については,正側加力時と負側加力時の各最. すべり破壊が懸念されたが,そのような破壊は生じな. 大耐力の平均値とした.計算値 Hf1 については,表 4 で. いことが実験的に示された.ただし,表4で示したパン. 示した曲げ耐力時のせん断力Qf と同じ値である.なお,. チングシア耐力に対して,提案する耐震壁がどの程度. Iシリーズについては,露出鉄筋に顕著な塑性化が見ら. のせん断余裕度を持っていたかは調査する必要がある.. れたため,露出鉄筋のひずみ硬化を考慮した計算値 Hf2. これについては,今後の検討課題としたい.. も示す.表に示すように,いずれの試験体も安全側に 精度良く評価できている . 表 5 実験値と計算値の比較 最大水平力 試験体 H exp (kN ). H f 1 (kN ). H exp / H f 1. O-295-0.3. 131. 124. 1.06. H f 2 (kN ). H exp / H f 2. O-490-0.3. 165. 163. 1.01. I-295-0.25. 159. 141. I-490-0.25. 185. 173. 1.13. 150. 1.06. 1.07. 182. 1.02. 5 まとめ 実験より得られた知見を以下に列挙する. O-295-0.3. O-490-0.3. 1)壁試験体の履歴性状は,変形のクライテリアである 部材角 R=1.00/100rad. 以内では,急激な耐力低下を. (a) O シリーズ試験体. 示すことなく,安定した履歴挙動を示した. 2)壁試験体の損傷は,部材角 R=1.00/100rad. 以内では ほとんど観察されなかった.損傷領域は壁脚部に留 まり,最終的な損傷度合いも軽微なもので,提案す る耐震壁の優れた損傷制御性能を確認できた.ま た,アンボンド鉄筋の配置を変更することで,壁板 の損傷をさらに抑制できることを確認した. <参考文献> 1) 中原浩之,高橋恵介,Nasruddin JUNUS:TRC 柱とスパンドレ ルビームからなる柱降伏型骨組の構造性能に関する実験的研. I-295-0.25. 究,コンクリート工学年次論文,Vol.33,No.2,pp.1153-1158,. I-490-0.25. (b) I シリーズ試験体. 2011.7. 2) 日本建築学会:鉄筋コンクリート造建物の終局強度型耐震設計. 図 6 実験後の損傷状況. 指針・同解説,pp.106,1990.11.. 62-4.
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