教育改善政策下における大学の支出構造に関する実証的研究 [ PDF
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(2) 的に配分される経費があることを指摘している。そこで研 第2章 大学における財政と研究の視座. 究では、前者を直接教育費、後者を教育総経費とし、2 つの. 第2章では、大学の財務に着目するに当たってこれまで. 視点から教育費を見ていく。そしてその基準から、大学の. の大学財政の動向をまとめた。そして財務をみるうえで重. 役割である教育と研究を「直接教育費」と「直接研究費」. 要な点を考察し、その視点から先行研究を分析することで. で、それ以外を「運営費」として分類した。 「教育総経費」. 現状の学術研究における問題点と本研究における視座を考. はこの「運営費」を「直接教育費」と「直接研究費」の割. 察した。. 合で分割し、教育費分を「直接教育費」に合算することで. 第1節では大学財政の動向を、国立・公立・私立ごとに. 算出する。最後に、会計基準は国立・公立・私立で異なる. 記述した。国立大学の財政を支えてきた国による積算校費、. ため大学ごとの算出式を会計基準に沿って教育費の具体的. 公立大学の財政を支えてきた地方自治体からの運営費交付. な定義を行った。. 金、私立大学の財政を支えてきた学生納付金について、そ れぞれの制度体系や動向を説明している。これに加え、各 大学に共通する教育財政として 2000 年から取り組まれて. 第4章 分析における枠組み この章では、大学財務から教育費を分析するに当たり必. いる「国公私立を通じた大学教育改革の支援」を説明した。. 要となる財務についての子細な説明や研究において必要な. これは優れた教育実践に対し文部科学省が予算を配分する. 財務データの処理、そして教育費に与える要因をみるため. 政策であり、大学の教育財政においてはじめて競争的な性. の関係式を説明している。. 質を有した予算である。. 分析では教育機能の変移をみる目的から年度比較を行う。. 第2節では、これらの動向を踏まえたうえで大学の財務. 対象年度は法人化により国立・公立大学の個別財務データ. 研究に必要とされる視点を考察している。大学財務の動向. が入手可能となった 2004 年度と 2011 年度を比較する。使. から見られる傾向として、 「基盤的な収入の減少」 「収入源. 用する財務について、まず国立大学は 85 校(2006 年に創. の拡大」 「資金使途の自由化」 「大学間の財務多様化」が挙. 設された筑波技術大学は除く)の財務データを使用する。. げられる。. しかし公立大学は2004年に法人化したのは1校だけである. そしてこの点を踏まえて第3節では先行研究の分析とそ. ためサンプルが少ない。そこで翌年に法人化した 6 校を加. の問題点、そして本研究の位置づけを述べている。大学財. え 2007 年と 2011 年での比較を行う。私立大学は私立大学. 務の先行研究では主に「収入」に焦点があてられる。しか. 連盟に加盟する 124 校を対象とする。また、研究では大学. し収入は基盤的な予算ではなくなっていることや使途の自. の機能を分析する目的から付属学校や付属病院の財務デー. 由化もあり、収入からその用途を判別することが難しい。. タを除く。. 財務から教育の実態を見ていくには、どのような活動にど. 分析は高等教育の全体的な教育動向を探るマクロな視点. れだけの資源が使われたのかをあらわす「支出」から分析. と、大学個別で傾向や特性をみるミクロな視点から分析を. される必要がある。その支出の観点から教育を分析した研. 行う。マクロな視点では国立・公立・私立の全ての学校を. 究としては田中(2009)があるが、これは国立大学の運営. 扱うが、個別財務については公立のサンプルが少ないこと、. 費交付金のみを対象としており「収益源の拡大」の中にあ. 私立は大学のみの財務が入手できないことから、ミクロの. って教育の動向をみるには限界がある。そこで本研究では、. 分析は国立大学のみを対象とする。. 教育の動向についてすべての支出項目を対象に分析してい. 次に分析の視点について、研究では教育費の増減だけで. く。また「大学間の財務多様化」の中でどのような大学が. なくその要因についても考えていく。そこで以下の式から. 積極的に取り組んでいるのかを明らかにするため、マクロ. 要因を考えていくこととした。. とミクロの視点から分析を試みる。 教育費の増減式: 第3章 教育費の定義 第3章では大学の支出を分析していくに当たり、教育費 の定義を行った。. D1-D0=(G1-G0)×P0+(P1-P0)×G0+(P1-P0)(G1-G0) D:教育費 G:総支出 P:支出に占める教育費の割合 1 と 0:それぞれ 2004 年度と 2011 年度. を表す. まず支出項目の分類を行っている。2章で指摘した通り、 支出から教育の実態を見ていくに当たっては全ての支出項. (G1-G0)×P0 は「総支出」が増減したことによる教育費へ. 目を対象とする必要がある。しかし山本(2002)は教育に. の影響(総支出変化要因) 、(P1-P0)×G0 は「総支出に占め. 係る経費について、 「直接」的に配分される経費と「間接」. る教育費の割合」が増減したことによる教育費への影響(教.
(3) 育配分変化要因) 、 (P1-P0)(G1-G0)は 2 つの要因が共に増減し. (単位は千円。それぞれ大学の合計額から、大学数と学生. たことによる教育費への影響(交互作用要因) 、を表す。し. 数で割った数値。 ). かし相互作用要因については誤差項であり、分析の結果に. そして分析の結果から仮説の検証を行った。まず国立大. おいても十分小さい値であるため対象からは除く。本研究. 学では、総支出変化要因、教育配分変化要因ともに増加し. では総支出要因と教育配分変化要因から教育費の増減を考. ており仮説が支持された。総支出変化要因に起因する「総. えていく。. 支出」の増加、教育配分変化要因に起因する「総支出に占 める教育費の割合」も増加しているが、特に総支出変化要. 第5章 学校設置形態によるマクロ的分析 第5章では「国立・公立・私立における学校種別での分 析」を行った。 まず分析に当たって、次の仮説を設定した。国立大学に. 因の増加が大きい点が特徴である。しかし直接教育費と教 育総経費の増減に大きな変化がないことから、国立大学で は研究費の割合が依然高いことが推測される。 公立大学では、教育配分変化要因は仮説とおり大きな変. ついて、浦田(2010)が指摘するように収入増が発生して. 化はないが、総支出変化要因は仮説と異なり減少している。. いることから総支出変化要因は増加、また研究志向が強か. これについて、学校全体の収入は増加しており仮説の根拠. ったため教育改善の余地が大きいことから教育配分変化要. は正しいが、それに対応して学生数も増加しているため一. 因も増加する。公立大学について、渡部(2010)が大学の. 人当たりの「総支出」が減少していることが原因である。. 収入増加を指摘していることから総支出変化要因は増加、. しかし増減が少ない中でも 2011 年度の教育費の額は他大. 一方その予算は積算による計算が未だ基礎となっているこ. 学に比べても高い水準にある。. とから教育配分変化要因は変化がない。私立大学について、. 私立大学では、国立大学と同様に総支出変化要因、教育. 浦田(2004)が総収入の増加を指摘していることから総支. 配分変化要因ともに増加しており仮説が支持された。しか. 出変化要因は増加、また同研究で私立大学は S/T 比の向上. し国立大学と異なるのは、その寄与において教育配分変化. によって教育改善を行ってきていることから教育配分変化. 要因の額が高いことである。これは「総支出に占める教育. 要因も増加する。. 費の割合」の増加が高いためである。また直接教育費より. 分析を行った結果は以下の通りとなった。 ①直接教育費 2004から2011における増減 総経費に占める 直接教育費の増減 総支出 直接教育費の割合 国立大学 131 417 2.2% 公立大学 1 -50 0.7% 私立大学 123 241 4.1%. 教育費に影響する各要因の増減と教育費の増減 2011年度 総支出 教育配分 相互作用 直接教育費 直接教育費 変化要因 変化要因 要因 の増減 国立大学 74 48 9 131 518 公立大学 -12 14 0 1 496 私立大学 56 57 10 123 443 ②教育総経費 2004から2011における増減 総経費に占める 教育総経費の増減 総支出 教育総経費の割合 国立大学 188 417 2.7% 公立大学 -12 -50 0.4% 私立大学 204 241 7.0%. 教育費に影響する各要因の増減と教育費の増減 2011年度 総支出 教育配分 相互作用 教育総経費の 教育総経費 変化要因 変化要因 要因 増減 国立大学 118 58 11 188 805 公立大学 -21 8 0 -12 849 私立大学 90 97 17 204 722. も教育総経費で高い増加率を示していることから、大学全 体の支出が広く教育に向けられていることが分かった。 第6章 国立大学におけるミクロ的分析 第6章では、国立大学の 85 校を対象に教育費やそれに寄 与する要因の分析を行う。大学個別の財務データを統計的 に分析することで大学における教育費の増加傾向やその要 因、また大学ごとの特性を見ていく。 分析に当たって仮説の設定を行う。まず総支出変化要因 について、 「医学部を有する大学」と「大学院大」で増加、 教育配分変化要因について「文系学部を有する大学」と「大 学院大」で増加の傾向にあると考えられる。総支出変化要 因に寄与する「総支出」は、浦田(2010)において「医学 部を有する大学」と「大学院大」で増加していることを明 らかにしている。教育配分変化要因について、 「文系学部を 有する大学」は教育 GP の申請数がそれ以外の大学より高 いことから教育改善に積極的であると想定され「総支出に 占める教育費の割合」が増加すると予測される。一方「大 学院大」は学生数が少ないことから 2004 年度の G0 が高く なるため教育配分変化要因の増加額が増えると考えられる。 分析の結果は以下の通りとなった。 ①直接教育費.
(4) 総支出変化要因 β t値 定数 4.817 *** 医学部有無 0.537 5.914 *** 文系有無 -0.498 -5.555 *** 大学院大 -0.108 -1.224 調整済みR2=0.384. 教育配分変化要因 β t値 3.203 *** -0.47 -5.901 *** 0.288 3.662 *** 0.507 6.563 *** 調整済みR2=0.527. 直接教育費の増減 β t値 8.278 *** 0.158 1.51 -0.239 -2.313 ** 0.383 3.761 *** 調整済みR2=0.180. 大学の対応の実態やその要因を明らかにしたこと、また大 学多様化の中で大学間ごとの差異を明らかにした点で高等 教育研究に一定の貢献がなされたと考えている。さらに大 学の教育機能の充実は天野(2004)が指摘するように社会 的な要請でもあることから、その実態を実証的に明らかに したことは社会的にも意義をもつと考えられる。 一方、研究における課題もある。まず 1 つは情報収集に. ②教育総経費 教育総経費の増減 β t値 7.248 *** 0.319 3.238 *** -0.381 -3.918 *** 0.362 3.787 *** 調整済みR2=0.276. 限界があったことが挙げられる。公立大学は法人化の申請. そして分析の結果から仮説の検証を行った。総支出変化. られた上、さらに多様な分析が可能であった。また、支出. 要因では「医学部有無」で増加傾向にある点は仮説の通り. によって教育を分析する視点は指標の 1 つに過ぎないこと. であるが、 「大学院大」は増加しておらず仮説が当てはまら. も注意が必要である。教育の改善は有本(2007)が行った. なかった。これは公立大学同様、大学としての総額は増加. ような学生や教員への意識調査など、より多様な視点から. しているものの、学生数の増加により一人当たりの「総支. 分析されるべきである。同時に、支出による教育への効果. 出」が減少しているためである。 「医学部有無」では「総支. が実際にどの程度であるのか、このことについても分析す. 出」の増加により高い数値となっている。. る必要があると思われる。これらの点は今後の課題である。. 総支出変化要因 β t値 定数 4.644 *** 医学部有無 -0.523 5.731 *** 文系有無 -0.481 -5.342 *** 大学院大 -0.158 -1.786 * 調整済みR2=0.378. 教育配分変化要因 β t値 3.933 *** -0.315 -4.5 *** 0.176 2.539 ** 0.7 10.293 *** 調整済みR2=0.634. 時期が異なることから 7 校以外のデータを入手できず、私 立大学については付属学校の合算財務のみの公表のため大 学のみの個別財務が入手できなかった。そしてそれゆえ分 析に当たっては便宜的な設定を使用している。大学財務に 関する正確な情報を得られればより実態に即した結果が得. 教育配分変化要因については仮説通りとなった。 「文系を 有する学部」では「総支出に占める教育費の割合」が増加. 主要参考文献. していること、 「大学院大」では 2004 年度の総支出額 G0. ・天野郁夫(2004) 『大学改革』 東京大学出版会. が高いことが要因である。. ・有本章(2007) 「FD の制度化と質的保証」 『高等教育. 教育費の増減では「医学部を有する大学」と「大学院大」 で多いことが分かる。また医学部を有する大学は「直接教 育費」に比べ「教育総経費」のβ値が高いことから、運営 費を含めた全収入の増加が大きいと考えられる。. 研究叢書』広島大学高等教育開発センター ・浦田広朗(2004) 「私立大学財務の脆弱性と安定性」 『経 済社会総合研究センター WorkingPaper No.14』 ・浦田広朗(2010) 「国立大学法人の財源移行」 『国立大 学法人化後の経営・財務に関する研究』第 12 号、国立大. 第7章 総括 最後に本研究で得られた知見と、研究の限界や課題を記 している。 本研究で得られた分析結果として、教育費の増加は国立 大学と私立大学において高いこと、そのうち国立大学は「総. 学財務・経営センター研究部、77-84 頁 ・齊藤徹史・水田健輔(2009) 「戦後の積算校費の推移に関 する研究」 『国立大学財務・経営センター研究報告』 第 11 号、国立大学財務・経営センター研究報告、139-156 頁. 支出」の増加による要因、私立大学は「教育費の支出配分」. ・田中秀明(2009) 「高等教育における評価と資源配分」. が増加していることによる要因であることが示された。さ. 『RIETI Discussion Paper Series 09-J-008』経済産業研. らに国立大学内では、医学部を有する大学と大学院大にお. 究所. いて教育費の増加傾向が高く、医学部を有する大学では「総. ・山本清(2002) 「国立大学の法人化と大学間及び大学内資. 支出」の増加による要因、大学院大では「教育費の支出配. 源配分」 『広島大学高等教育研究開発センター大学論. 分」の増加による要因であることが示された。この結果か. 集』第 33 集、広島大学高等教育研究開発センター、. ら得られる知見として、まず大学の教育改善の実態が支出. 109-125 頁. の観点から実証的に明らかにされたことが挙げられる。同. ・渡部芳栄(2009) 「公立大学への公費負担の構造とその変. 時に国立・公立・私立の学校間や学校特性でその結果が異. 容」 『広島大学高等教育研究開発センター大学論集』. なっており、さらにその要因も多様であることが示された。. 第 41 集、広島大学高等教育研究開発センター、149-165. これは大学に教育機能の充実化が政策的に推進される中で. 頁.
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