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思いやりと共感との関係についての一考察

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Academic year: 2021

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思いやりと共感との関係についての一考察

学校教育専攻 人間形成基礎コース 津 田 佳 菜

1.序論

本研究では,共感をFeshbach(1968)に従 い,

r

他者情動的反応を知覚する際に,その他者 と共有する情動的反Þ~J と定義し,向社会的行 動をEisenberg(1992)に 従 い 援 助 行 動 や , 分与行動,他人を慰める行動といった他者に利 益となるようなことを意図してなされる自発的 な行動jと定義した。本研究は,この両者の関 係、を検討することを意図するもので、あった。共 感 と 向 社 会 的 行 場jと の 関 係 に つ い て は 桜 井 (1986)など多くの研究において検討されてい るが,本研究ではそれらに加えて,人間,文化,

自然の3領域にわたるふれあい経験度数を調べ,

それが共感や思いやり行動にどのような影響を 及ぼすかを検討することにした。

本研究目的は,第1に,児童が共感性(共感 する気持ち)をどの程度持っているか,そして 向社会的行動(思いやり行動)をどの程度でき ているかを理解すること,第2に,ふれあい経 験の量が共感性や向社会的行動に及ぼす影響を 見ること,第 3に,上記の 2つのことについて,

性差および学年差を検討すること,第4に,以 上の3つのことを通して共感性や向社会的行動 を育てる要因は何かを考察すること,以上4つ で、あった。

2.方法

共感性の測定には,浅川・松岡 (1984)なら びに加藤・高木(1980)の共感測定尺度を参考

指導教官 皆 川 直 凡

にして作成した, 24項目から成る自己評定方式 の質問紙 (ESC200I)を用いた。このESC2001 には,浅川・松岡 (1984)が共感性を構成する 3因 子 で あ る こ と を 見 出 し た 原 初 的 な 情 動 表出, r司情の程度J・「他者の情動表出に対する 受容や評価j・「情動の共有jの内容が網羅され ており,また,喜怒哀楽や心配,愛の気持ちが バランスよく含まれており,そして,現代の小 学生の気質や生活を反映することが留意されて いた。ふれあい経験度数の測定には人間,自然 および文化との関わりを取り入れた 12項目か ら成る自己評定方式の質問紙(ふれあい経験質 問紙)を用いた。また,向社会的行動の測定に は,桜井(1986)による他者評定方式の質問紙 (PBI)を用いた。これは,クラスごとにその クラスにおいて心配,協力,援助,世話の4種 類の向社会的行動をよくする友だちの名前をあ げることを求め,名前をあげられた頻度を各児 童の得点とする質問紙である。これら 3つの質 問紙を小学校 5・6年生を対象として合計 264 名(男子 148名,女子 116名)に実施した。

3.結果および考察

その結果,共感性については,大きな個人差 があるが,平均的な共感性を示す児童が多いこ

と,全体として女子の共感性が男子よりも高い こと,そして女子の共感性は 5年生から 6年生 にかけて上昇する傾向にあるが,男子のそれは あまり変化しないことがそれぞれ明らかとなっ

(2)

た。共感性の結果については,次のように考察 した。小学校高学年の児童で、は,女子の方が男 子よりも精神面での発育が早いことから生まれ た結果であろう。

ふれあい経験については,女子の方が男子よ りも,人間を含めたさまざまな事象とのふれあ いを数多く経験しているということが明らかと なった。ふれあい経験の結果については,次の ように考察した。現代の親たちは子どもたちの 可能性を引き出すことに熱心で,子どもたちが 習いごとを始めることに積極的に協力している ようである。その中でも,メディアに敏感な年 頃の女子に人気のあるおけいこごとを習う;女子 が年々増えてきていることが挙げられる。しか しここで注意すべき点は,ふれあい経験とは 習いごとをすることだという意味ではない。

向社会的行動については,女子の方が男子よ りも向社会的行動をよくしており,学年に比例 して向社会的行動の頻度が噌すということが明 らかとなった。向社会的行動の結果については,

次のように考察した。女子の育児法は,向社会 的行動の発達を促進するということが知られて いる。また,多くの文化では,女子の方が男子 よりも他人を助けることや養育することでは適 していると考えられている。向社会的行動の結 果は,これらのことなどから生まれたものでは ないだろうか。発達的要因としては,児童は学 年が上がるにつれて周囲の者に気を配る余裕が できてきたり,ますます相手の気持ちを考えて 行動することができるようになってくるので協 調性も芽生えてくるのだろう。

共感性と向社会的行動の聞には,正の相関関 係があることが示唆され,桜井(1986)の結果 を支持した。また,ふれあい経験と共感および 向社会的行動との関係にも 3者間の密接な関係

が示唆された。すなわち,共感性が高い児童は 低い児童と比べて人間,協力,援助,世話の各 種向社会的行動をよくしていることが明示され た。以上の結果は, Cokeら (1978)の共感的 感情が援助を動機づけたとし、う研究結果に対応 していると考えられる。そして, Hoffman 

(1977)が,女児が一般的に向社会的行動をと る傾向や他者の視点に立脚した思考の傾向など を示すことから,女児は共感反応においても男 児よりも高い得点を示しうる, と示唆したが,

本研究結果はこの見解と一致しているものと考 えられる。

4.論議

上記の結果に基づいて,児童の共感性と思い やりを育てるさまざまな要因について議論した。

その結果,共感性の育成には,幼少期からの多 様な経験が関わっているということが明らかと なった。親の養育態度,家族関係,高齢者との 交流,人と動物の関係,親以外の大人や仲間か らの親切な行為,教師の言葉がけなど豊かな環 境が共感性を育てる。自然体験や子ども同士の ふれあい,人を含めたさまざまな環境と関わる ことによって,喜び・怒り・悲しさ・楽しさを 経験することが,共感性を育むということなの である。

5.結論

本研究から,人や動物,自然および文化など との交流が児童の共感性と思いやりの育成には,

特に重要であることがわかった。家庭や学校,

社会に「共感性Jを取り戻すことが,今最も求 められている。そのためには,家庭や学校,社 会といったさまぎまな場面で,おとなは子ども とのコミュニケーションを忘れず,さらに教師 は,実際に教育現場で実践する豊かな環境づく

りに取り組んでいかなければならない。

参照

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