招待論文
ボディエリアネットワークにおけるアンテナ技術
高橋 応明
†a)Antenna Technologies for Wireless Body Area Networks Masaharu TAKAHASHI†a)
あらまし ワイヤレス分野の中で期待されている分野の一つにボディエリアネットワーク(BAN)がある.本 論文では,BANにおけるアンテナの技術的な課題について報告するとともに,実際の検討例として2 GHz帯の On-body用アンテナ,2.45 GHz帯のIn-body用インプランタブルアンテナについて報告する.BAN用アンテ ナを設計するには,On-bodyでは人体方向に放射しないアンテナを用いること,In-bodyでは周囲の組織構造 を模擬して設計する必要があることを示す.
キーワード ボディエリアネットワーク,インプランタブルアンテナ,ファントム,MICS
1.
ま え が き携帯電話や無線
LAN
の普及により,大多数の人々 が小形無線端末を所持するものとなり,個人でも,携 帯電話,パーソナルコンピュータ,タブレット端末な ど複数の通信端末を所持し相互に連携して使用するよ うになってきている.これら情報端末を機能に応じて 身体の各所に配置するウェアラブルコンピュータが考 えられている.機器間の通信には,現在は有線が主流 だが,姿勢の自由度や装着の簡易さから無線通信が望 まれている.また,心電や体温などの各種センサを身 体に装着し,収集した生体情報を医療や介護などに利 用することも考えられている.そのほかにも個人認証 や娯楽などで,人体周辺の無線利用が提案されている.これら人体を中心とした無線ネットワークをボディエ リアネットワーク(
Body area network: BAN
)また はBody-centric wireless communication
という.BAN
では,図1
に示すように,身体に装着した 各 種 セ ン サ や 機 器 を 体 表(On-body
)ま た は 体 内(
In-body
)に設置し,その情報をアクセスポイントな ど外部(Off-body
)に直接送信するかデータロガーで 集約した後に送信する.現在,Bluetooth
などを用い て小形無線端末と連携し音楽を聞くヘッドホンや,心†千葉大学フロンティアメディカル工学研究開発センター,千葉市 Research Center for Frontier Medical Engineering, Chiba University, Chiba-shi, 263–8522 Japan
a) E-mail: [email protected]
拍を表示する時計,歩数を記録するランニングシュー ズなど人体に装着して使用するシステム(
On-body communications
)も広く利用され始めている.また,カプセル内視鏡という小腸を検査するために開発され た小形無線端末を体内に飲み込み,撮像画像を外部の 受信機へ伝送を行うシステムも利用されている(
In- to On-body communication
)[1]
.なお,カプセル内 視鏡と対外との通信に用いる周波数は,メーカにより433 MHz
,315 MHz
と異なるが,通信距離が10 cm
強と短いため,無線局の免許を必要としない微弱無線 局の扱いとなっている.In-body
通信として,VeriChip
をはじめとするID
情報を管理するためのマイクロチップがある[2]
.米粒 大の小形無線機器で135 kHz
のパッシブ型RFID
とし て動作し,管理のために犬猫や希少動物の首筋に注射 器で挿入するものである.欧米で普及・義務付けが行わ れ,日本でも環境省が普及を推進している.このマイ クロチップを人体の腕に植込みセキュリティ分野で利 用している企業もある.また,ID
だけではなく体温も 同時に測定できる製品も販売されている[3]
.総務省で は2005
年に「体内植込型医療用データ伝送システム」の導入に向けて技術的条件の改定を行い,心臓ペース メーカ等の体内植込み機器(インプランタブル無線機 器)のメンテナンスに,
400 MHz
帯の無線通信型プロ グラムヘッドを用いることを検討している[4]
.その他 の研究として,人工関節の管理にRFID
を用いる[5]
, 患者の管理に埋込型RFID
を使用する[6]
,義手等の制御や人工網膜のため
[7]
,脳のニューロン解析のため に脳波図(Electroencephalogram: EEG
)[8]
をワイ ヤレス送信する,心電図(Electrocardiogram: ECG
) や筋電図(Electromyogram: EMG
)を送信する,カ プセル内視鏡のUWB
通信[9]
,無線電力伝送[10]
な どがある.BAN
はワイヤレス分野の中で期待されている分野 の一つであるが,無線技術,特にアンテナ技術に関し ては,従来と大きく状況が異なっている.従来,アン テナ設計は自由空間内にアンテナが単独で存在する か,大地などの地板があるものとしてなされてきた.携帯電話のアンテナも当初はそのように設計がなされ ていたが,アンテナ近傍を手で保持することが多く,
内蔵型アンテナが大多数を占めるようになり,手や頭 部などの人体影響を考慮した設計が必要とされるよう になった
[11]
.BAN
は人体周辺での無線通信のため,人体の影響を考慮してシステムを構築する必要がある.
そのため,立位や座位,仰臥位など静止している状態 だけではなく歩行時など運動が伴った場合の研究もさ れている
[12]
.本論文では,
BAN
における人体に装着するアンテ ナを設計する難しさ,安全性などアンテナの技術的な図1 BAN通信機器 Fig. 1 Sensors of BAN.
課題を示すとともに,実際の検討例としてマイクロ波 帯の
On-body
用アンテナとIn-body
用アンテナにつ いて報告する.2. BAN
の周波数BAN
に利用される周波数帯を表1
に示す.国際的にMedical Implant Communications Service
(MICS
)[13], [14]
として402
〜405 MHz
が利用可能である.ま た,医療用テレメータに使用できる周波数帯があり,病 院等医療機関において420
〜450 MHz
が利用できる.更に
2012
年に周波数の変更があったRFID
やスマート メータに利用される特定小電力無線の916
〜928 MHz
も利用できる.このほか,Industry Science Medical
(
ISM
)帯の2400
〜2500 MHz
帯がある.(ヨーロッパで は863
〜870 MHz
,アメリカでは902
〜928 MHz
も利 用できる.)この周波数帯は,無線LAN
やBluetooth
,ZigBee
でも使用されており,それらのシステムを使用 するBAN
も想定される.3.1
〜10.6 GHz
帯を用いるUltra Wide Band
(UWB
)[15]
や人体通信(Human Body Communication: HBC
)の21 MHz
,32 MHz
も想定されている.以上は,BAN
を想定し2012
年に 標準化されたIEEE802.15.6 [16]
で規定されている周 波数である.また,60 GHz
を用いたBAN
の研究[17]
もなされている.
図
2
の送信機を人体臍部に装着した際の周波数ごと の電界分布を図3
に示す[18]
.送信機は間隔4 mm
の表1 BANに利用可能な周波数 Table 1 Frequencies for BAN.
図2 送 信 機
Fig. 2 Structure of the transmitter.
(a) 30 MHz
(b) 300 MHz
(c) 3 GHz 図3 人体周辺の電界分布 Fig. 3 Electric field distributions.
平行平板構造をしており,給電部は電極の中央である.
送信機は,ケース等を考慮して下部平板電極から人体 表面まで
4 mm
離してある.人体は身長172 cm
の男 性で均質の筋肉媒質で構成し,靴を履いている状態を 想定し大地から2 cm
浮いた状態とした.電界分布は入 力電力を1 mW
,500 V/m
を0 dB
として示してある.図
2 (a)
のHBC
帯30 MHz
では,人体を包み込む ように電界が分布しており,電界強度は人体前部では 強く,送信機の逆側である背部にも強度は弱くなるが 回り込んでいる.同図(b)
の300 MHz
では,電界分布 の広がりが狭くなる.更に,同図(c)
の3 GHz
では,波長が短くなるため,人体前部でも多数のナルが発生 し,背部には回り込まない.このように静止状態の人 体でも周波数により電界分布は大きく異なる.これか らも分かるように,周波数が高くなると,
On-body
通 信での受信電界強度は不安定になるため,通信品質を 確保するためにダイバーシチなどの技術が必要となる.文献
[19]
では,2.45 GHz
において2
本のモノポール アンテナを5.3 cm
離して配置することにより,腹部 と背部間の通信を安定して行っている.3. BAN
用アンテナの課題BAN
用アンテナは体表若しくは体内にあるため様々 な制約及び課題があり,それを図4
にまとめて示す.まず,アンテナ周囲の媒質の影響を強く受ける.具体 的には,皮膚や脂肪,筋肉などの組織が想定されるが,
これらの組織は周波数によって電気定数が異なってい る.例として
2.45 GHz
の電気定数を表2
に示す[20]
. 併せて,均質媒質としてよく用いられる2/3
筋肉等価 媒質の値を示す[21]
.脂肪は比誘電率が5.3
,導電率 が0.1
,筋肉は比誘電率が57.7
,導電率が1.7
と大き な違いがある.そのため,自由空間用に設計したアン テナでは人体と接触すると入力インピーダンスが大き く変化し使用できなくなるので,装着部位に応じたア ンテナ設計をする必要がある.人体は高誘電率の媒質 のため,アンテナサイズは波長短縮の効果もあって小 形になるが,インピーダンス整合が取り難く,周波数 帯域は狭帯域になる傾向にある.また,組織の導電率が高いため,人体による吸収損 が大きい.この損失のため,電気的に近距離間の通信 システムが多い.通信距離が短いため遠方界で定義さ れているアンテナ利得でシステム設計,評価ができず,
近傍界領域の電界分布で議論されることが多い.また,
伝搬経路上が均質媒質ではない状況がほとんどである.
図4 BAN用アンテナの課題 Fig. 4 Problems of BAN antenna.
表2 2.45 GHz帯各組織の電気定数 Table 2 Electric constants for 2.45 GHz.
In- to On-body
通信の場合,体内無線機器と外部ア ンテナとの通信となるが,臓器を構成する組織は少な く見積もっても,筋肉,脂肪,皮膚などで成り立って おり,場所によってその厚さも異なる.その伝搬経路 も図5
に示すように機器間の位置関係で複雑に変化す るマルチパス環境となり,個人による偏差も大きい.On-body
通信の場合は,腕の振りや体のひねりなど姿 勢の変化による影響が大きい.また,体表に対して垂図5 In-bodyアンテナのマルチパス Fig. 5 Multipath of the In-body antenna.
直な電界成分の方が水平成分に比べ伝搬損が小さくて 伝搬距離が長く,回り込みもしやすいため,
BAN
で はよく用いられる[22]
.実験も非常に困難である.アンテナの周囲環境を 再現する必要があるが,人体に植え込んだりして実 験することは不可能である.
In-body
だけではなく,On-body
通信でも給電ケーブルの取り回しに注意を要するため,人体を模擬する必要がある.実際には,
市販されている新鮮な豚肉(豚は組織が人体に近い.
新鮮なものを使う理由は,血液が喪失すると電気定数 が変化するため)や,ファントムを使用して実験が行 われている.
BAN
では,ファントムは携帯電話用な どに使用されているシェル(容器)構造のものは使用 できない.シェル自体が人体と比べ誘電率が非常に低 く,実際の環境を再現できない.そのため,ゲル状ま たは固体のファントムを使用する.更に組織構造を模 擬しようとすると層構造のファントムを使用する必要 があり,ファントムの製作だけでも大変である.ファ ントムなどは温度により電気定数が変化するため,温 度・湿度管理も必要となる.また,グランド電位の扱いにも注意をする必要があ る.
BAN
用小形無線端末はバッテリなどで駆動する ため,グランド電位が浮いている状態である.しかし,実験の際にはケーブルを接続して測定するため,測定 器のグランド電位がアースされている.その結果,小 形無線端末の受信電力などが実際と異なってしまう.
そこで,バッテリ駆動による測定や
E/O
(電気/
光)変換を用いる測定などを行う必要がある.
BAN
用通信機器には,更に生体影響も考慮する必 要があり,防護指針に定められている比吸収率SAR
(
Specific Absorption Rate
)も適用される[23]
.図6 On-body通信用アンテナ Fig. 6 Structure of the on-body antenna.
4. 2 GHz
帯On-body
通信用アンテナOn-body
通信用アンテナとして,HBC
では電極構 造のアンテナ,マイクロ波帯ではモノポールアンテナ や逆F
アンテナ[24]
,指輪型アンテナ[25]
などが提案 されている.また,人体の組織構造がOn-body
用ア ンテナに与える影響について報告されている[26]
.こ の報告では,2
〜10 GHz
で腕にダイポールアンテナを 近づけていくと,アンテナの入力インピーダンスや放 射効率が均質構造の組織と異なることを計算及び実験 で示している.本節では,On-body
用アンテナとし て,組織構造の影響を受けにくいアンテナを示す.図
6
に2 GHz
帯On-body
通信用アンテナの構造を 示す.板状逆F
アンテナとなっている.このアンテナ を図7
で示す腕ファントムに設置する.腕ファントムは,直径
50 mm
で,皮膚,脂肪,筋肉,骨を模している.腕ファントムを図のような層構造とした場合と
2/3
筋肉等価の均質構造とした場合のアンテナの反射 係数を図8
に,放射パターンを図9
に示す.アンテナ と腕ファントム間の距離d
を2 mm
とした.どちらも よく一致しており,人体の組織構造に影響されていな い.これはダイポールアンテナと異なり,図6
のアン テナは人体方向に放射しないアンテナであり,アンテ ナの地板人体側の電流分布が小さいためである.これ はUWB
帯を用いたOn-body
通信用アンテナでも同 様である[27]
.On-body
用アンテナは,人体とアンテナの距離が運動や装着状態で変化しやすく,汗などで電気定数も 変化するため,できるだけ人体の影響を受けないアン テナを用いる必要がある.そのためには,本章で示し たような人体側の電流分布が小さく,放射が小さいア ンテナを用いる必要がある.
図7 腕ファントム Fig. 7 Arm phantom.
図8 反 射 係 数 Fig. 8 Reflection coefficient.
図9 放射パターン Fig. 9 Radiation pattern.
5. 2.4 GHz
帯In-body
通信用アンテナIn-body
通信用アンテナは,On-body
通信用アンテ ナと異なり,アンテナは全て人体組織に囲まれており,On-body
通信用アンテナの設計とは異なる.本章では,
In-body
通信用(体内植込み型:インプランタブ ル)アンテナの実際の解析例を示す.MICS
バンドで ある400 MHz
帯については,スパイラルアンテナや メアンダラインアンテナ等を用いた体内植込みアンテ ナの研究報告があり[28]
〜[36]
,筆者らはペースメー図10 In-body通信用アンテナ Fig. 10 Structure of the In-body antenna.
(a)全体図 (b)断面図
図11 直方体3層モデル Fig. 11 Rectangular 3 layered model.
カ用アンテナの検討も行っている
[37]
.アンテナを植 え込むモデルが均質構造と層構造では,解析結果が大 きく異なること,層構造と高精細数値人体モデルでは よく一致することを示している[38]
.また,2.45 GHz
帯でも研究報告がなされている[39]
.本章では,人体に注射器で挿入可能な
2.45 GHz
帯 インプランタブルアンテナについて解析及び実験結果 を示す.5. 1
直方体3
層モデル図
10
に,2.45 GHz
帯インプランタブルアンテナ の構造を示す[40]
.注射器で挿入できるように直径1.0 mm
,長さ17.7 mm
の円柱型とした.シート状の 折返しダイポールアンテナを直径0.8 mm
の二重らせ ん状とし,全体を直径1 mm
の円柱ガラス(ε
r= 5 . 0
) 内に封入する構造である.折返しダイポールアンテナ の線幅を等しくすると,インピーダンスが非常に大き くなるため,線幅が0.4 mm
,1.4 mm
と異なる二重ら せんとすることにより,50 Ω
でインピーダンス整合す るよう設計した.図11 (a)
にアンテナを植え込む人体 モデル,図11 (b)
にその断面図を示す.人体モデルは 腕部を想定し,ファントムの寸法は60 × 180 × 60 mm
3 の直方体とした.皮膚,脂肪,筋肉の厚さはそれぞれ,2 mm
,4 mm
,54 mm
とし,表2
で示した2.45 GHz
図12 製作したアンテナ Fig. 12 Fabricated antenna.
図13 製作したファントム Fig. 13 Fabricated phantom.
における各組織の電気定数とした.アンテナは図に示 すようにファントムの皮膚との境界に接するよう脂肪 層へ植え込んだ.なお,アンテナ特性算出には,有限 要素法による
Ansoft
社HFSS Ver.10
を用いて解析 した.図
12
に製作したインプランタブルアンテナを示す.直径
18 mm
の10
セント硬貨とほぼ同じアンテナ長で ある.数値解析では,折返しダイポールアンテナを,円 柱ガラス(ε
r= 5 . 0
)内に封入した構造としていたが,製作の簡易化のため,エポキシパテとアルミ粉末の混 合物(
ε
r= 5 . 02
,σ = 0 . 01 S/m
)を芯とし,シリコ ンとアルミ粉末の混合物(ε
r= 4 . 95
,σ = 0 . 01 S/m
) を外皮とすることでガラスの代用とした.人体ファントムは角柱構造の代わりに,図
13
に示す ような簡易化した平板層状のファントムを使用した.ア ンテナ入力特性に影響がないことを確認している[41]
. 製作したファントムの電気定数は目標値の10%
以内 に収まっており,電気特性に与える影響は無視でき る[42]
.インプランタブルアンテナは,ファントムの 皮膚と脂肪層の間へ植え込んだ状態で測定を行った.図
14 (a)
に 本 ア ン テ ナ の 入 力 イ ン ピ ー ダ ン ス , 図14 (b)
に 反 射 係 数 を 示 す.動 作 周 波 数 で あ る2.45 GHz
における入力インピーダンスの計算値及び測定値はそれぞれ
60 . 1 − j 2 . 75 Ω
,65 . 3 + j 2 . 82 Ω
,(a) Input impedance (b) Reflection 図14 入力特性(直方体3層モデル)
Fig. 14 Input characteristics (Rectangular 3 layered model).
図15 高精細数値人体モデル Fig. 15 Realistic human model.
反射係数はそれぞれ
− 20 . 4 dB
,− 19 . 2 dB
とよく一致 しており整合が取れている.5. 2
高精細数値人体モデル人体腕部を模擬した直方体
3
層モデル内のインプ ランタブルアンテナの特性の算出及び測定結果を示 したが,簡易化した人体腕部モデルの妥当性の検証が 必要である.そこで,高精細数値人体モデル[43]
にア ンテナを植え込んだモデルを用いて,FDTD
(Finite Difference Time Domain
)法によりアンテナ特性を 算出した.図15
に,高精細数値人体モデルを示す.インプランタブルアンテナは直方体
3
層モデルを使 用した場合と同様,人体腕部の脂肪層内に皮膚,脂 肪の境界面に接するように植え込んだ.解析領域は390 × 547 × 1338
セルとし,セルサイズはアンテナ周 辺で最小0.02 mm
,自由空間で最大2 mm
とした.ま た,境界条件はPML
(8
層)を用いた.図
16
に入力特性の計算値を示す.2.45 GHz
におけ る入力インピーダンス,反射係数は,高精細数値人体 モデルを使用した場合は58 . 1 − j 7 . 78 Ω
,− 19 . 7 dB
で あり,先の直方体3
層モデルの値とよく一致している.図
17
に放射特性の計算値を示す.人体方向であ(a) Input impedance (b) Reflection 図16 入力特性(高精細数値人体モデル)
Fig. 16 Input characteristics (Realistic human phantom).
(a)xyplane
(b)yzplane 図17 放 射 特 性 Fig. 17 Radiation patterns.
る
−y
方向は大きく異なっているものの,最大放射 方向(+ y
方向)の半面は非常によく一致している.利得の最大値は,直方体
3
層モデルでは− 14 . 0 dBi
(
φ
,θ = 90
◦),高精細数値人体モデルでは,xy
面 で は− 13 . 8 dBi
(φ = 83
◦),yz
面 で は− 13 . 4 dBi
(
θ = 96
◦)となっている.以上のことから,直方体
3
層モデルを用いたアンテ ナ設計及び特性評価は,計算時間やメモリ使用量の削 減など有利性もあり,十分に可能である.6.
む す び本論文では,ワイヤレス分野の中で期待されている 分野の一つであるボディエリアネットワークについて,
アンテナ技術に関する技術的な課題を報告した.人 体に装着するため,アンテナの設計が難しい上,安全 性も考慮する必要がある.また,人体が動いたときに 伝搬経路が変わるため,チャネルモデルの構築やダイ バーシチ受信などの対策も必要となる.
実際の検討例として
2 GHz
帯のOn-body
通信用ア ンテナ,2.45 GHz
帯のIn-body
通信用インプランタ ブルアンテナについて報告した.BAN
用アンテナを 設計するには,On-body
通信では人体方向に放射し ないアンテナを用いること,In-body
通信では周囲の 組織構造を模擬して設計する必要があることを示した.文 献
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(平成25年1月2日受付,4月3日再受付)
高橋 応明 (正員:シニア会員)
平元東北大・工・電気卒.平6東工大大 学院博士課程了.同年武蔵工大・工・電気・
助手.同年講師を経て,平12東京農工大・
工・電気電子・助教授.平16千葉大・フロ ンティアメディカル工学研究開発センター・
准教授.衛星放送受信用アンテナ,平面ア ンテナ,小形アンテナ,RFID,RLSA,環境電磁工学,人体と 電磁波の相互作用の研究に従事.工博.IEEEシニア会員.