一般名処方拡大のシナリオ
株式会社日医工医業経営研究所(日医工M P I)
資料作成:
菊地祐男
(
公社)
日本医業経営コ
ンサルタ
ント
協会認定
登録番号第4217
日医工M P Iレポート
http://www.nichiiko.co.jp/stu-ge/一般名処方加算(処方せん料)
処方せん料
1 7種類以上の内服薬の投薬を行った場合 40点
(臨時の投薬であって、投薬期間が2週間以内のものを除く。) 2 1以外の場合 68点
(注を追加)
一般名による記載を含む処方せんを交付した場合は、処方せんの交付1回につき2点を加算する。
なお、一般名処方を行った場合の処方せん料の算定においては、「薬剤料における所定単位当たり の薬価」の計算は、当該規格のうち最も薬価が低いものを用いて計算することとする。
後発医薬品のある医薬品について一般名処方が行われた場合に算定する。 処方せんに1品目でも一般名の記載があれば算定可能。
2点加算はシステム改修費用?
1日100人に一般名処方加算を算定すると年間60万円の増収となる (100人/ 日× 25日× 12か月× 2点=6万点/年)
6種類以下
7種類以上
処方せん料(
院外)
68点
40点
処方料(
院内)
42点
29点
内服薬の投薬が7種類以上になると薬剤料が10%減額となる
内服薬の投薬
診療報酬点数
一般名処方拡大の要因
一般名処方加算(
2
点)
一般名処方マスタ
の整備
(
一般名処方の書き方、
一般名処方加算の算定可否、
医療過誤防止など)
公正競争規約による接待規制の実施
厚生労働省によるジェ
ネリ
ッ
ク
推進支援(
ジェ
ネリ
ッ
ク
医薬品Q&Aなど)
療養担当規則への対応(
ジェ
ネリ
ッ
ク
選択の支援)
処方せん料アッ
プの可能性(
40点→68点)
3
一般名処方加算の混乱
配合薬の一般名処方の書き方は?
徐放性製剤の一般名処方の書き方は?
塩基の書き方は?
一般名処方加算が算定できるか?(
後発医薬品のある医薬品)
一般名処方マスタ
の整備
平成24年4月6日(
216規格)
平成24年7月1日(
949規格)
→ 一般名処方加算対象の「
成分・
規格」
が網羅さ
れた
「
昭和42年以前に承認・
薬価収載さ
れた医薬品のう
ち、
価格差のある後発医薬品があるも
のについては、
一般名処方加算対象になるのか?」
日医工MP Iの対応「
最初は不明」
└
→平成24年4月5日の問い合わせで算定は不可
└
→平成24年6月7日付けの厚生労働省疑義解釈で算定可
処方せん料変更の可能性(4 0 点→6 8 点)
5
処方せん料
1 7種類以上の内服薬の投薬を行った場合 40点
(臨時の投薬であって、投薬期間が2週間以内のものを除く。)
2 1以外の場合 68点
(注を追加)
一般名による記載を含む処方せんを交付した場合は、処方せんの交付1回につき2点を加算する。
なお、一般名処方を行った場合の処方せん料の算定においては、「薬剤料における所定単位当たり
の薬価」の計算は、当該規格のうち最も薬価が低いものを用いて計算することとする。
なお、
一般名処方を行っ
た場合の処方せん料の算定においては、
「
薬剤料における所定単位
当たり
の薬価」
の計算は、
当該規格のう
ち最も
薬価が低いも
のを用いて計算するこ
と
と
する。
何が問題だったのか?
医師が7種類以上の処方を考えた場合、先発品など高薬価薬剤で処方せん料が40点になる場合でも、安 価なジェネリックを想定し、205円ルールが適用されると6種類以下となる場合があり、処方せん料は68点に なる。そこで医師が低薬価を想定して医科レセプトは6種類以下の68点でレセプト請求を行った。
処方せんが一般名処方の場合、保険薬局は先発品でもジェネリックでも調剤が可能となる。よって在庫が あった先発品を調剤した場合に205円ルールが適用されなくなり7種類以上の処方せんとなることがある。 その場合、処方せん料の請求は40点としなくてはならなくなる。
今は突合点検が行われているため、医科(68点)レセプトと調剤(40点)レセプトの不一致となり医科レセプ トが査定される可能性が生じる。
薬剤の計算方法「剤」
通常は3剤7種類処方 でも1剤が20点(205 円)以下になると種類 数が減る場合がある
単位薬価 1日薬価 1日点数
① 「A」錠10㎎ 1回1錠 朝・昼・夕食後 1日3錠 40.0 120.0
② 「B」C p5㎎ 1回2錠 朝・昼・夕食後 1日6錠 33.5 201.0
321.0 32点
③ 「C 」顆粒50mg 1回50mg 朝・夕食後 1日100mg 10.0/ 10mg 100.0
④ 「D」顆粒20mg 1回20mg 朝・夕食後 1日40mg 38.0/ 10mg 152.0
252.0 25点
⑤ 「E 」錠5㎎ 1回5mg 朝食後 1日2錠 32.0 64.0
⑥ 「F 」錠10㎎ 1回10mg 朝食後 1日1錠 104.0 104.0
⑦ 「G」錠10㎎ 1回10mg 朝食後 1日1錠 235.0 235.0
403.0 40点
⑤ 「e」錠5㎎ 1回5mg 朝食後 1日2錠 18.0 36.0
⑥ 「f」錠10㎎ 1回10mg 朝食後 1日1錠 51.0 51.0
⑦ 「g」錠10㎎ 1回10mg 朝食後 1日1錠 117.0 117.0
204.0 20点 R p.1(朝・昼・夕食後の分3処方)
R p.2(朝・夕食後の分2処方)
R p.3(朝食後の分1処方)
R p.3 (朝食後の分1のジェネリック処方)
①②③④⑤ ⑥ ⑦
3剤5種類処方
①②③④⑤⑥⑦
3剤7種類処方
6種類以下
7種類以上
処方せん料(
院外)
68点
40点
処方料(
院内)
42点
29点
内服薬の投薬が7種類以上になると薬剤料が10%減額となる
内服薬の投薬
診療報酬点数
多剤投与の場合の薬剤料の算定方法
診療報酬では処方薬剤の種類数によって点数が異なる。6種類以下であれば 高い点数、7種類を超えてしまう場合は点数が低く設定されている
よって処方種類数の管理として、1剤1日あたり205円(20点)以下か、以上か、 が重要になる
この1剤1日あたり205円(20点) 以下であれば1種類とカウントする ルールを「205円ルール」という
7
ア
錠剤、
カ
プセル剤については、
1
銘柄ごと
に1
種類と
する。
イ
散剤、
顆粒剤及び液剤については、
1銘柄こ
と
に1種類と
計算する。
ウ
イ
の薬剤を混合し
て服薬できるよう
調剤を行っ
たも
のについては、1
種類と
する。
エ
薬剤料に掲げる所定単位当たり
(
1
剤1
日)
の薬価が205円以下(
20点以下)
の場
合は、1
種類と
する。
(
医科点数表より
)
服用時点と服用回数が同じ内服薬を1剤とする処方薬剤の種類数をカ
ウント
する
際、
その薬剤の合計額が205円以下
であれば、
1種類と
し
てカ
ウント
する
電子レセプト
対応
電子レセプト
不対応
不適用(
全て記載する)
例外適用
(
175円以下)
レセプト
記載省略
2001
年度まで適用
薬剤種類数のカウント
レセプト
記載省略
2002年度以降
現在(
2012年)
そのまま適用維持
(
205円ルール適用)
薬剤種類数のカウント
ルール
1
ルール
2
診療報酬明細書に、
薬剤名や投与
量、
投与又は使用の原因と
なっ
た傷
病などの記載の省略を認める
2 0 5 円ルールの変遷
2002年度(
平成14年)
診療報酬改定時にレセプト
請求
の透明化を図る観点から
見直さ
れた。
205円ルールには、
「
薬剤種類数のカ
ウント
」
と
「
レセプト
記載省略」
の2
つのルールがあっ
た。
いずれも
手書きレセプト
の時代のも
ので、
電子レセプト
の普及により
、
レセプト
請求の透明性
最も薬価が低いものを用いて計算した例
9
単位薬価 1日薬価 1日点数
① 「A」錠10㎎ 1回1錠 朝・昼・夕食後(1日3錠) 40.0 120.0 ② 「B」C p5㎎ 1回2錠 朝・昼・夕食後(1日6錠) 33.5 201.0
321.0 32点
③ 「C 」顆粒50mg 1回50mg 朝・夕食後(1日100mg) 10.0/ 10mg 100.0 ④ 「D」顆粒20mg 1回20mg 朝・夕食後 (1日40mg) 38.0/ 10mg 152.0
252.0 25点
⑤ 「E 」錠5㎎ 1回5mg 朝食後(1日2錠) 32.0 64.0 ⑥ 「F 」錠10㎎ 1回10mg 朝食後(1日1錠) 104.0 104.0 ⑦ 「G」錠10㎎ 1回10mg 朝食後(1日1錠) 235.0 235.0
403.0 40点 R p.1(朝・昼・夕食後の分3処方)
R p.2(朝・夕食後の分2処方)
R p.3(朝食後の分1処方)
単位薬価 1日薬価 1日点数
① 「A」錠10㎎ 40.0 120.0 ② 「b」C p5㎎ 18.3 109.8
229.8 23点
③ 「c 」顆粒50mg 6.0/ 10mg 60.0 ④ 「D」顆粒20mg 38.0/ 10mg 152.0
212.0 21点
⑤ 「e」錠5㎎ 18.0 36.0 ⑥ 「f」錠10㎎ 51.0 51.0 ⑦ 「g」錠10㎎ 117.0 117.0
204.0 20点 R p.1
R p.2
R p.3
①∼⑦の3剤7種類の処方(左表)について、それぞれ最も薬価が安いもので再計算したのが右表になる。 ①と④は先発医薬品しかなかったが、他の5銘柄を最低薬価のジェネリックに置き換えた。それでもR p1と R p2は205円(20点)以下にならなかったが、R p3は下回ったので、⑤ ⑥ ⑦ は1種類となり、この処方は3 剤5種類となるため、一般名処方にすると処方せん料は40点ではなく68点で請求できることになる。
最も安い薬価で計算した処方の例 先発医薬品等で計算した処方の例
一般名処方化による処方せん料のシミュレーション
<シミ
ュ
レーショ
ンの前提>
1日120人の外来患者のう
ち、
110人に処方せんを発行一般名処方で。
内、
100人の処方せんが一般名処方加算の対象になると
100人×
2点=200点/日と
なる。
またその内の10人の患者の処方数が7種類以上と
なり
処方せん料を40点を算定し
ている
場合で、
一般名処方により
処方数が6種類以下にカ
ウント
さ
れる患者が4人いると
すると
、
処方せん料は40点から
68点に変わり
、
+28点×
4人=112点増える。
その結果、(
200点+112点)
/100人=3.12点
と
なり
、
一般名処方による加点は、
一般名処方加算(
2点)
だけでなく
、
3点を超えるこ
と
になる。
(
7種類以上→6種類以下になる対象者が8人いれば4.24点)
処方せん発行なし
処方せんを一般名で発行
7種類以上の処方
一般名処方により6種 類以下の処方となる
120人の外来患者
処方せん数
一般名処方 加算
日 月 年間増収
100枚 2点 25日 12月 60万円 200枚 2点 25日 12月 120万円 500枚 2点 25日 12月 300万円
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一般名処方化による処方せん料のシミュレーション
該当 患者数
処方せん料 差額
日 月 年間増収
1人 28点 25日 12月 8万4千円 2人 28点 25日 12月 16万8千円 3人 28点 25日 12月 25万2千円 4人 28点 25日 12月 33万6千円 5人 28点 25日 12月 42万円 10人 28点 25日 12月 84万円 20人 28点 25日 12月 168万円
一般名処方加算の算定
68点−40点 一般名処方により7種類以上の処方せん料が
6種類以下の処方せん料になる患者
1日に一般名処方加算 を算定する処方せんを 100枚発行している医療 機関は、年間に60万円の 増収になる。処方せん料 が高くなる患者が4人い ると仮定すると、さらに33 万6千円の増収で約1.5倍 となる。
一般名処方拡大のシナリオ
(
1
)
2012年4月から
始まっ
た「
一般名処方加算」
は診療所が中心と
なり
進んでいる
(
2
)
病院で一般名処方が進まなかっ
た理由の中から
(
2
つの懸念)
①一般名処方のルールが不明確で、
疑義照会が増えるから
②一般名処方のルールが不明確で、
医療過誤が心配だから
(
3
)
2012年7月に「
一般名処方マスタ
」
が整備さ
れて、
いく
つかの懸念が解消さ
れた
(
4
)
一般名処方マスタ
に対応し
たレセコ
ン(
オーダリ
ングシステム)
の整備が進む
①一般名処方マスタ
に準じ
た記載方法に整備さ
れる
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一般名処方加算について
後発医薬品のある医薬品について一般名処方が行われた場合に算定する 処方せんに1品目でも一般名の記載があれば算定可能
一般名処方加算の対象となる「成分・規格」は、一般名処方マスタに全て網羅されている
後発医薬品のある先発医薬品について一般名処方した場合に一般名処方加算が算定できる 「先発医薬品」とは、昭和42年以後に新薬として承認・薬価収載されたもの
準先発医薬品についても一般名処方加算を算定できる
「準先発品=先発医薬品に準じたもの」とは、昭和42年以前に承認・薬価収載された医薬品のうち、 価格差のある後発医薬品があるもの
一般名処方について
一般名は「成分名」+「剤形」+「規格」で表記する
一般名処方を行うに当たっては、標準的な記載方法である「一般名処方マスタ」を用いることが望ましい 一般名の後ろに「屋号」を書くことはできない。
一般名の横に括弧で銘柄名を書くこともできない
一般名処方に変更不可を指定することはあり得ないとされている