周 防灘 南部 沿 岸域 の発 電所 港 湾 にお け る シル テ ー シ ョンにつ いて
全文
(2) 577. 周 防灘 南部 沿岸域 の発 電所 港湾 に お ける シルテ ー シ ョンにつ いて. パ タ ー ン1. パ ター ン2. 平年並みの 地形変化(パ ターン1) 図‑4. 高波浪年 の地形変化(パ ターン2). 地 形 変 化 パ タ ー ンの 模 式 図. 図 に 例 示 され た2004年7月. 〜2005年7月. り,こ れ 以 前 で は,1989年12月 図‑2. の期 間 の み で あ. 〜1990年11月. の期 間 にま. で遡 って一 例 のみ認 め られ る. パ ター ン1の 地 形 変 化 に よ る航 路 ・泊 地 の平 均 堆 積 厚 は. 年 間地 形変化 の代 表 的パ ター ン. 数cm/年 程 度 で あ り,こ れ が続 く限 りは水 深 管 理 を計 画 的 に行 う ことは 困 難 で は な い.し か しなが ら,パ ター ン2が 出 現 して取 水 塔 トレンチへ の埋 没 が生 じた場 合 に は早 急 な 対 策 が 必要 とな る ことが 多 く,パ ター ン2の 発 生 機 構 を把 握 す る こ とは効 率 的 な 維持 凌 渫 の計 画,さ. らに は埋 没 対 策. 工 を検 討 す る上 か ら も重 要 で あ る. 図‑3は1997年. 以 降 の苅 田 地 点 の ナ ウ フ ァス デ ー タ を対. 象 に年 毎 の 時 化 の 回 数 を整 理 した もの であ るが,パ 2が 現 れた2004年7月. 〜2005年7月. ター ン. の期 間 は他 と比 べて ピー. ク波 高 の大 きな時 化 の出 現 回 数 が 多 い ことが わか る.こ れ らの ことか ら,上 記 の地 形 変 化 パ ター ンに対 して 図‑4の 模 式 図 の よ うな機構 が 推 定 さ れ る.す なわ ち,比 較 的 穏 や か な波 浪 条 件 の下 で は発 電所 航 路 区域 の西 側 を 始 め とす る周 辺 か らの埋 没 が 主 体 とな るが,激 区域 に侵 食 域 が 現 れ,さ. しい高 波 浪 の下 で は航 路. らに奥 の取 水 塔 トレンチ に著 しい. 堆 積 を生 じる とい う もので あ る. 図‑3. なお,当 地 点 は苅 田 地 点 か ら南 東 に15Km程. 時化 の 出現回 数. 度 離 れて い. るが,両 地 点 の局 地 波 浪推 算 デ ー タベ ース を比 較 して良 好 な相 関 を有 す る こ とを確 認 した上 で,当 地 点 の地 形 変 化 と 波 浪 特 性 の 関係 を論 じる際 に苅 田地 点 の ナ ウ フ ァスデ ー タ. 図‑2で あ る. 当 地 点 の地 形 変 化 は,2001年8月. 〜2002年7月. の期間. の 例 に み られ るよ うに,周 辺 海 域 よ り も深 く掘 り下 げ られ た 形 とな って い る航 路 ・泊地 域 が全 般 的 に堆 積 傾 向 を 示 す もの(パ ター ン1)と2004年7月. 4.. 数 値 シ ミ ュ レー シ ョン に よる検 討. にみ られ る. 当 地 点 の地 形 変 化 に対 す る上 記 の考 察 に力 学 モ デル に よ. よ うに航 路 区 域 内 に侵 食 域 を伴 い つつ 取 水 塔 トレ ンチ へ集. る裏 付 けを与 え る こ とを 目 的 と して 数 値 シ ミュ レー シ ョ ン. 中 して 堆 積 が 生 じる もの(パ タ ー ン2)に. によ る検討 を行 った.. お,パ. 〜2005年7月. を用 いた.. ター ン2が 現 れ た2004年7月. 分 類 され る.な. 〜2005年7月. の期 間. で は冷 却 水 の取 水 が行 わ れ て い る間 に は顕 著 な 高 波 浪 は来 襲 して いな い.. (1) 数 値 モデ ルの 概 要 数 値 シ ミュ レー シ ョ ンに は3次 元 の潮 流 モ デル と巻 き上 げ項 と沈 降項 を有 す る3次 元 の移 流 拡 散 モ デル を用 いた.. ほ とんどの年 の地 形 変 化 はパ ター ン1に 分 類 され,パ ター. 予 め計 算 した屈 折 ・砕 波 ・浅 水 係 数 の 場 に モ デル 化 され た. ン2に 分 類 され るの は,近 隣 の 苅 田地 点 のナ ウ フ ァス デ ー. 波 高 時系 列 を乗 じて得 られ る波 高 ・底面 せ ん 断 応 力 場 の下. タが 安 定 して取 得 され るよ うにな った1997年 以 降 に 限 れ ば. で シル テ ー シ ョ ンモ デ ルを駆 動 させ,一. 時化 単 位 で の地 形.
(3) 578. 海. 岸. 工. 学. 論. 文. 集. 第55巻(2008). 変 化 を計 算 す る もので あ る. 山 口県 光 市 と大分 県 国東 市 を結 ぶ ライ ンを潮 流 計 算 の境 界 条 件 と し,周 防 灘 全 域 を対 象 とす る広 領 域(格 10Km)か. 子間隔. ら豊 前 火 力 発 電 所 と宇 島港 を含 む2Km×1.6Km. の 最 狭 領 域(格 子 間 隔20m)ま. で を ネ ステ ィン グによ り離. 散 化 した.層 分 割 は レベル モ デ ル を採 用 し,D.L.+2mを 静 水 面 と し,そ. こか ら4mの. 厚 さを 有 す る 最 上 層 の 下 に. 1m間 隔 で層 を配 置 した. 計 算 に用 い る入 射 波 高 時 系 列 は,過 去 の 台 風 の 例 を 参 考 に15時 間 で ピーク波 高 まで上 昇 した後 に10時 間で 静 穏 状 態(波 高25cm)ま 波 高 は,図‑3の. で低 下 す るよ うに モデ ル化 した.ピ ー ク 波 高 分 割 の各 段 階 の代 表 値 で あ る1.5m,. 2.25mお よび3.25mに1.0mを. 加 え た4段 階 を設 定 した.今. 回 の計 算 で は,い ずれ の ケ ース も波 高 時 系 列 と潮 汐 の 位 相 関係 は,波 高 ピーク時 に下 げ潮,す なわ ち航 路 区域 西 側 か らの 流 れが 最 強 とな るよ うに設 定 した. シル テ ー シ ョ ンモ デル の巻 き上 げ項Eお. よび沈 降項Dは,. 以下 に示 す よ うに,細 川 ら(1986)に お いてOwen型. と分 類. され る タイ プの ものを 用 い,各 パ ラメ タ は深 浅 測 量 に対 す る再 現 性 が 得 られ るよ うに同 定 を行 い,巻 き上 げ 限界 掃 流 力 τeは0.2Pa,巻 き上 げ定 数Mは0.2g/m2/s,沈. 降 限界 掃 流. 力 τdは0.05Paと した.沈 降 速 度wsは0.8mm/sと. し,浮 遊. 土 粒 子 濃 度 によ らず 一 定 と した.底 面 濃 度Ckは. 各地点 の. 最 下 層 にお け る浮遊 土 粒 子 濃 度 を用 い た.. (1). (2) 当 地 点 の よ うな底 泥 域 で の航 路 埋 没 問 題 には高 濃 度 浮 泥 層 の挙 動 が 問題 とな るこ とが知 られ て お り,鶴 谷 ら(1994) の よ うに ビンガ ム流 体 と して の 特 性 を考 慮 したfluid mud の モデ ル(Odd るが,こ. and Cooper;1989)を. 導 入 して い る例 が あ. こで は,ブ シネス ク近 似,静 水 圧 近 似 に基 づ く密. 度 流 計 算 に お いて次 式 に よ って算 定 され る流 体 密 度 を用 い る単 純 な方 法 を試 した.. (3) こ こ で,ρwは. 浮 遊 粒 子 を含 ま な い場 合 の 流 体 の 密 度. (1.03に設 定),ρsは 浮 遊 粒 子 の密 度(2.65に 設 定)で 浮 遊 土 粒 子 濃 度Cの. 単 位 はmg/Lで. あ り,. あ る.. (2) 計 算 結 果 図‑5は,波. 高 段 階 別 の一 時 化 あ た りの地 形 変 化 計 算 結. 果 を 示 した もの で あ る.ピ. ー ク波 高1.5m以. 下 で は航 路 区. 域 の ほぼ 全 域 が堆 積 域 とな ってお り,平 年 並 の地 形 変 化 で あ るパ ター ン1と の対 応 が推 定 さ れ る.一 時 化 あた りの 堆 積 厚 は10cmに 3.25mの. 達 して い な い.ピ. ー ク波 高 が2.25mお. よび. ケー ス は航 路 区 域 内へ の侵 食 域 の侵 入 と取 水 トレ. 図‑5. 波 高段 階別 の一 時化 あ た りの地 形変 化計 算結 果.
(4) 周 防灘南 部沿 岸域 の発 電所 港湾 にお け る シル テー シ ョ ンにつ いて ンチへ の集 中 した堆 積 が 認 め られ,高 波 浪 年 にみ られ る地. 図‑6は,地. 579. 形 変 化 パ ター ン2の 特 徴 の うち取 水 トレ ン. 形 変 化 で あるパ ター ン2の 特 徴 を有 して い る.一 時化 あ た. チへ の集 中 的 な堆 積 の発 生 機 構 に つ いて検 討 す る 目的 で,. りの取 水 トレ ンチ へ の堆 積 厚 は ピー ク波 高2.25mの. ピー ク波 高3.25mの. 10cm,ピ. ー ク波 高3.25mの 場 合 で40cmと. 場合 で. い う計 算 結 果 と. ケ ース に対 して最 下 層 濃 度 の変 化 を示. した もので あ る.波 高 最 大 時 を含 む5時 間 の状 況 を密 度 流 の効 果 を考 慮 した場 合 と しな い場 合 につ いて 比 較 した.密. な って いる.. 浮遊土粒子濃度による密度流を考慮. 浮遊土粒 子濃度による密度流を考慮せず 図‑6. 最 下 層 濃 度 の 変 化(ピ. ー ク 波 高3.25mの. ケ ー ス).
(5) 580. 海. 2001年8月. 〜2002年7月(パ. 岸. 工. 学. 論. 文. 集. 第55巻(2008). ター ン1). 図‑7. 度 流 を 考 慮 しな い場 合 は,宇 島 港 東 側(図. 2004年7月. 〜2005年7月(パ. ター ン2). 年 間 の地形 変化 に対 す る再 現性. の 右 上)と 発. 電 所 用 地 沖側 を 中心 に濃 度 が上 昇 して い るが泊 地 や取 水 ト. 変 化 につ いて は計 算 によ る堆 積 域 が 泊地 部 の沖 側,宇. 島港. 防 波 堤 の西 側 に集 中 し過 ぎて い る感 が あ るが,取 水 トレン. レ ンチ へ高 濃 度 が波 及 す る様 子 は認 め られ な い.こ れ に対. チへ の顕 著 な堆 積 が生 じて い な い とい う点 で は,こ の年 の. して,密 度 流 を考 慮 した場 合 は,宇 島 港 東 側 か ら航 路 区 域. 地 形 変 化 の 特 徴 が表 現 され て いる といえ る.. の沖 側(図 の 左上)へ 向 けて高 濃 度 浮 遊 泥 が 流 入集 積 す る とと もに,こ れ らが 航 路 に沿 って取 水 塔 トレ ンチ に まで 流. 5.. おわ りに. れ込 んで い る状 況 を読 み取 る こ とが で きる.取 水 塔 トレン. 比 較 的穏 やか な時 化 の下 で は発 電 所 航 路 西 側 等 か らの埋. チへ の高 濃度 浮遊 泥 の流 入 は波 高 ピー ク時 の2時 間後 に は. 没 が 卓 越 し,激 しい高波 浪 時 に は航 路 区域 に一 部 侵 食 域 を. 終 息 に 向 か って お り,こ の現 象 は短 時 間 に集 中 して生 じる. 伴 い なが ら取 水 塔 トレンチ部 に集 中 した シル ト堆 積 が 生 じ. もの と思 われ る.. る とい う当地 点 の特 徴 的 な地 形 変 化 機 構 が シル テー シ ョン. 当 地 点 にお いて は,こ の よ うな現 象 に関 す る実 測 デ ー タ. モデ ル によ って再 現 ・解 明 され た.. が存 在 す るわ けで は な いが,浮 遊 土 粒 子 に よ る下 層 密 度 流. 取 水 トレンチへ の堆 積 には,高 濃 度 浮 遊 泥 の密 度 流 的 な. が底 質 の移 動 に重 要 な役 割 を担 う こと は広 く知 られ て お り. 挙 動 が 大 き く影 響 して い る可 能 性 が 高 く,平 年 並 の侵 食 ・. (例え ば,福 嶋 ・Parker;1985),地. 形 変 化 パ ター ン2に お. 堆 積 傾 向 か ら類 推 す る こ とは困 難 で あ り,底 泥 堆 積 域 で の. ける取 水 塔 トレ ンチ へ の集 中 した堆 積 は高 濃 度 浮 遊 泥 の密. 航 路 ・泊 地 の運 用 ・管 理 にお いて 力 学 モ デル に基 づ く地 形. 度 流 と して の挙 動 によ る もので あ る可 能 性 が高 い.. 変 化 予 測 が 重 要 な役 割 を果 た す こ とを示 す もの で あ る.. 図‑7は,対. 象 期 間 の波 高 段 階 別 の 時 化 の来 襲 回 数 に応. じて 図‑5の 計 算 結 果 を重 ね合 わ せて 深 浅 測 量 によ る地 形 変 化 と比 較 した もの で あ る.地 形 変 化 パ ター ンを 明 瞭 にす るため 侵 食 ・堆 積 の境 界 線 を実 線で 示 した. 高 波 浪 年 の 代 表 例 で あ る2004年7月. 〜2005年7月. 形 変 化 につ いて は,ピ ー ク波 高2.25m以. の地. 上の一時化あた り. 地 形 変 化 にお いて再 現 されて い た領 域 西 側 で の侵 食 域 が 年 間 の地 形 変 化 で は再 現 され て いな い ものの,泊 地 ・取 水 塔 ト レ ンチで の堆 積 パ タ ー ンに は概 ね 良 好 な 再 現 性 が み ら れ る. 平 年 並 の 代 表 例 で あ る2001年8月. 〜2002年7月. の地形. 参. 考. 文. 献. 鶴 谷広 一 ・村上和 男 ・入 江 功 ・笹嶋 博 ・糸井正 夫(1994): Fluid mudを 考慮 した三 次元 シルテーシ ョン予 測モデルにつ いて, 海岸工学論文 集, 第41巻, pp.1011‑1015. 福嶋祐介 ・G..Parker (1985): 自己加速 する泥水 流に関す る研究, 海岸工学 論文集, 第41巻, pp.1011‑1015. 細川恭史 ・田 中則 男 ・,久高 将信 ・佐 藤勝弘(1986): トレンチ内 に堆積 す る浮泥量 の予測 手法 と現 地への適 用例, 第33回 海 岸工学講 演会論文集,pp.312‑316.. Odd, N.V.M and A.J.Cooper(1989): A two-dimensionalmodel of movementof fluid mud in a high energyturbid estuary, Jour. of Coastal Res., Special issue No.5, High Concentration CohesivesedimentTransport, pp.185-193..
(6)
関連したドキュメント
For unreal pressure oscillation in fluid particles due to MPS method, two algorithms which corrected the source term in the Poisson equation are compared with original MPS method..
The field survey basin is about 5 km 2 area and about 3.6km length of channel and then six-stations are decided for measuring points of water quality such as temperature,
To evaluate each source of anoxic water in navigation channels and dreged trenches, we first proposed a practical method for estimating the amount of sulfide in each water using
Changes in pennation with joint angle and muscle torque: in vivo measurements in human brachialis muscle. Correlation of whole-body impedance with total body
To clarify modem sediment transportation related to the coastal erosion at the near shore zone, is very important for preservation of the coast at present and the future.. In
The diffusion of colored sand with different grain sizes placed on the shoreline and at a depth of 4 m was predicted and compared with the results of a field observation using
The spectral characteristics of the changes of the longest component 600s- with the time lapse are very different from those of shorter components.. The wave height longevities of
In this study, a numerical simulation on a wave-induced erosion process of sea cliff is carried out by using a fluid-elastoplastic hybrid particle method with scouring model.