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関東畑作地域における生業複合と生活感覚

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Academic year: 2022

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(1)人間科学研究 Vol. 19, Supplement (2006) 修士論文要旨. 関東畑作地域における生業複合と生活感覚 A Composite Livelihood and Sense of Life in the Dry Field Farming Area of Kanto. 吉川. 文絵(FumieYoshikawa). 指導:矢野. 敬生教授. 関東地方は日本でも有数の畑作卓越地域として知られて. ていくつかの明確な生産儀礼が存在することである。つぎ. いる。本論文の意図は、日本民俗学の立場から関東畑作地. に年中行事や人生儀礼の諸場面において、小麦粉と陸稲の. 域の生業・生活の特質を明らかにすることである。. もち米がさまざまに利用されていることがわかる。とはい. 第1章 畑作生業論の構想. えそれは「畑作物」の利用ではあっても、麦作や陸稲作と. 民俗学における畑作研究には焼畑偏重の傾向があり、常. 直接にかかわるものではない。. 畑は等閑視されてきた。一方、生業研究をリードする生業. 第5章. 複合論は、もともと水田稲作地域に依拠して構想され、畑 作卓越地域に充分目配りするものではない。本章では生業. 本章ではまず1軒の茶工場経営家を事例に、本格的製茶業 の成立過程を跡づける。とくに製茶用のナマハの確保の形態が、. 複合論を批判的に継承し、フィールドワークに基づいた常 畑中心の生業論を構想する。. 畦畔茶時代の個別的な取引形態から、自園製茶を重視する形 態に変化してきたことを指摘する。一方、大規模製茶の成立以前、. 第2章 入間郡と狭山丘陵地域. そうしたナマハの取引に関与していた「半農半商」の家が村落内. 茶をめぐる生産と移動. 本研究のフィールドは埼玉県所沢市三ケ島堀之内・椛谷. に存在した。この種の家が多様なモノの動きを生み出す結節点と. という2つの村落である。両村落がもと属していた入間郡. しての役割を果たしていたことを、製茶のナマハや養蚕の桑の売. を単位として、地域的な特質を押さえる。埼玉県域の産業. 買の事例をもとに明らかにする. 類型は、 「米作卓越型」の東部低地、 「複合畑作型」の中央. 第6章. 部、および「養蚕業卓越型」の西部山間地の3つに分けら れる。さらに入間郡は、東端の荒川低地、西端の秩父山地、中. 畑作生業論の課題と展望. 本章では既述をとりまとめ、畑作生業論の課題をいくつ か提示する。. 央の武蔵野台地にわかれ、いわば埼玉県の縮図とみなすこ. ひとつの問題は農繁期・農閑期の性格である。聞き書き. とができる。対象村落は、武蔵野台地と狭山丘陵が接する 地域に立地し、平地林・畑地に狭小な谷戸の水田をまじえ. では6‑7月の「忙しさ」が強調されるが、ここから多く の生業要素を密に組み合わせながら「忙しさ」に対応する. た産業基盤をもつ。. 畑作農家の才覚がみえてくる。あわせて生業と生活を、ひ とびとに内在する感覚から捉えていく視角を提示したい。. 第3章 畑作村落の生業史と生産暦 本章では、地域の生業の動向に対して、家としての生業 史を縦軸、生産暦を横軸とした把握を試みる。. つぎに、養蚕が生産暦・年中行事のうえに占める役割の大 きさを指摘できる。堀之内・椛谷では盆行事が7月20日〜23. 生業史の記述を通じて明らかになることは、対象地域が. 日という異例の時期に設定され、これは養蚕の出荷にあわ. 常畑畑作を軸に茶業・養蚕・畜産などを組み合わせた、高. せたものだと説明されている。入間郡域では同様の事例は. 度に複合的な生業形態をとってきたことである。いわゆる. 多く盆の期日が一定していない。このように養蚕が既存の. 高度経済成長下にはこれが再編されてゆく。つぎに生産暦. 民俗行事を拘束する力をもつことも興味ある問題である。. の分析を通じて、上記の常畑畑作の技術上の特質を明らか. 最後に麦をめぐる問題がある。麦作は生産暦の上で基礎. にする。畑作の特質のひとつは耕地の通年利用であり、農 繁期・農閑期の性格も水田卓越地域のそれとは差異をもつ。. をなす位置にありながら儀礼的には疎であり、初夏に農繁 期が生じるのもあくまで他の要素と重なるためである。麦. また畑作生産暦の基礎をなす冬の麦作は、間作と呼ばれる 技術によってさまざまな夏作との接続を可能にする包容力. 作はこのように微妙な性格をもつのであるQ 麦が単独では畑作地域の生活を支配するはどの力をもた. を備えた作物といえる。. ないという事実が同時に意味しているのは、常畑畑作研究. 第4章 年中行事と生産儀礼. もまた単独の作物に依拠した立論を避けるべきだというこ. 前章でみた畑作を軸とする生産暦の特質は生活レベルに. とである。従来の民俗学の生業論は、稲に対抗する要素を. はどのように反映されているかを、年中行事を分析の対象. 里芋や麦に求めてきたが、あらためて畑作生業の全体像を. として検討する。. 敵密に把握し、ここから水田稲作研究を捉え返さねばなら. まず確認されるのは、当該地域には麦の播種などに際し. ないであろう。. ‑17‑.

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