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博士学位論文審査報告書

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Academic year: 2022

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(1)2019年6月22日. 博士学位論文審査報告書 大学名. 早稲田大学. 研究科名. スポーツ科学研究科. 申請者氏名. 馬 思慧. 学位の種類. 博士(スポーツ科学). 論文題目. The effects of a ketogenic diet on endurance capacity and post-exercise recovery. ケトン食による持久力、運動後回復への影響 論文審査員 主査 早稲田大学教授. 鈴木 克彦. 博士(医学)(弘前大学). 副査. 早稲田大学名誉教授 樋口 満. 教育学博士. (東京大学). 副査. 早稲田大学教授. 副査. 早稲田大学専任講師 谷澤 薫平 博士(スポーツ科学) (早稲田大学). 坂本 静男 医学博士(聖マリアンナ医科大学). スポーツの競技力向上のためには栄養摂取が重要である。スポーツ栄養の目的は、ア スリートのコンディション維持とパフォーマンス向上の 2 つに大別できる。さまざまな 条件によって、エネルギーや栄養素の摂取量は異なる。長時間にわたる持久性競技に対 して、現在のエネルギー補給対策では、アスリートが高炭水化物食を摂取することを奨 励している。一方、一般的にアスリートは人体で最大のエネルギー貯蔵量である脂肪を 積極的には使用しない。低炭水化物・高脂肪ケトン食は、持久系アスリートの身体が脂 質を利用することを促進するスポーツ栄養学的アプローチである。ケトン食は減量、筋 肉内の脂肪利用率の向上、その他の有益な効果と関連しているが、それがパフォーマン スの優位性につながるかどうかは現在のところ明確な証拠はない。ヒトを対象とした実 験は、常に様々な理由で制限されており実施が難しいが、それに比べ動物実験は臓器レ ベルでの影響評価や機序究明についてより深く検証できる。そこで本研究では、持久性 運動能力に対するケトン食の影響を詳細に調べるために、マウスを対象に 8 週間のケト ン食適応実験を行った。 本博士論文は第 1 章から第 5 章で構成されており、各章の内容は以下の通りである。 第 1 章では、本研究の背景として、ケトン食が代謝過程において、いかに役割を果た しているか、その基本的なメカニズムに関する過去 10 年間(2007 年- 2018 年)の運動 ベースでのヒト実験と動物研究をレビューした(論文1)。ケトン食はさまざまな臨床.

(2) 応用の可能性が示されている。例えば、体重管理、糖尿病治療、疼痛と炎症治療、癌治 療ならびに通常の人々またはトレーニング中のアスリートの栄養供給に使用されてき た。ケトン食は万能ではなく、それによる肝障害や耐糖能障害が引き起こされる可能性 があるという報告もある。そのため、ケトン食がさまざまな代謝状態においていかに機 能するかと、そのメカニズムをさらに詳細に検討する必要があることが本レビューから 明らかになった。 第 2 章では、持久性運動能力に対するケトン食の効果を評価するために、マウスに 8 週間ケトン食を摂取させた後に疲労困憊まで走運動を行わせ、マウスの走行時間を調べ た(論文2)。その結果、ケトン食給餌マウスは、通常食給餌マウスより多くのエネル ギーを摂取したにもかかわらず、通常食給餌マウスと比べて体重は減少した。ケトン食 給餌マウスの走行時間は通常食餌マウスよりも長く、筋損傷マーカーも低かった。また、 糖・脂質代謝に関する血液生化学指標の分析により、その潜在的なメカニズムに関して、 脂肪の輸送・代謝能力の向上が関与する可能性が示された。さらに、急激な運動によっ て引き起こされる臓器損傷に対して、ケトン食による予防効果が示された。以上の結果 より、ケトン食は持久的運動能力の向上に貢献する可能性が示唆された。 3 章では、オープンフィールドテストを用いて運動の 24 時間後の疲労回復、バイオ マーカー、筋肉および肝臓の酸化状態の測定を通じて、ケトン食が運動後の回復に影響 するか否かを調べた(論文3)。その結果は次の通りであった。運動誘発損傷を示すい くつかの生化学的マーカーはケトン食によって改善された。筋肉の酸化的ストレスはケ トン食によって増加したが、肝臓の酸化的損傷の悪化は認められなかった。運動によっ て誘発された疲労とその回復は傷害の血液バイオマーカーからも確認された。オープン フィールド実験では、ケトン食の適用が疲労困憊運動後の 24 時間の休息後の活動量の 増加につながることを示した。以上の結果より、ケトン食が疲労予防や回復を促進する 食事アプローチとして、使用できる可能性が示唆された。 第 4 章では、8 週間の間に、ケトン食がどのように脂肪酸動員、脂肪酸酸化およびケ トリシスに関連する遺伝子の発現を変えるかを調べた(論文4)。食事の脂肪摂取量を 調整すれば、ミトコンドリアの生合成と脂肪酸酸化に影響を与えることで、運動能力を 向上し得ることが報告されている。しかし、炭水化物の摂取量が十分に制限されていな い高脂肪食は、運動選手の体重を増加させ、脂肪の利用を減少させる可能性がある。一 方、8 週間のケトン食が運動能力を改善することはすでに報告され、そのメカニズムは 脂肪分解とケトリシスの亢進であることも示唆されていることから、ケトン食は脂肪酸 動員、脂肪酸酸化およびケトリシスに関連する遺伝子の発現を高める可能性がある。今 回の実験では、以下の結果が得られた。ケトン食が脂質代謝プロファイルを改善し、運.

(3) 動能力に影響を与えることに寄与する可能性がある。ケトリシス、脂肪分解および脂肪 酸酸化適応に関する遺伝子の発現増加が運動パフォーマンスの向上に寄与する可能性 を見出した。ケトン食は IL-6 の遺伝子発現と分泌プロファイルを変え、脂肪酸動員、 ケトリシス、脂肪分解と筋肉損傷の予防に貢献している可能性が示された。ケトン食に よる脂質代謝関連遺伝子および IL-6 の発現は両方とも遅筋線維特異的と考えられた。 以上の結果より、ケトン食がケトリシスと脂肪酸酸化に関する遺伝子の発現を亢進する ことによって運動パフォーマンスを高める可能性が示唆された。 第 5 章では、第 2 章から第 4 章までで提示した実験結果を総括した。今までの実験で は、ケトン食は栄養性ケトーシスを誘発する可能性があったが、時間の経過につれ、身 体は主要なエネルギー源としてケトン体を使用するようになり、ケト適応に達する。そ こで、ケト適応は、安定で速やかにエネルギーを提供することによって、運動能力を改 善する。ケトン食は、その抗炎症作用と抗酸化作用によって筋肉の健康に貢献すること を通じて運動による疲労や損傷を防ぐ。ここでは、持久力、疲労からの回復、運動誘発 性の筋肉ならびに内臓傷害の予防に焦点を当てて、持久性運動中のスポーツ栄養学的ア プローチとしてのケトン食の可能性について、最近の研究を要約することを目的とした (論文5)。ケトン食に着目し、その持久力を向上する効果とメカニズムを明らかにし たことは、ケトン食の運動能力向上効果にも科学的な裏付けをもたらし、スポーツ栄養 技法として確立する基盤と応用となる意義のある研究と評価できる。. 上記の評価を得て、本審査委員会は、馬思慧氏の学位申請論文が博士(スポーツ科学) の学位を授与するに十分値するものと認める。. 本学位論文に関連した学術誌掲載学術論文は以下の通りである。 1.. Ma, Sihui; Suzuki, Katsuhiko; Potential Application of Ketogenic Diet to Metabolic Status and Exercise Performance: A Review. EC Nutrition, 13, 469-499, 2018.. 2.. Ma, Sihui; Huang, Qingyi; Yada, Koichi; Liu, Chunhong; Suzuki, Katsuhiko; An 8-Week Ketogenic Low Carbohydrate, High Fat Diet Enhanced Exhaustive Exercise Capacity in Mice. Nutrients, 10, 673, 2018.. 3.. Huang, Qingyi; Ma, Sihui; Tominaga, Takaki; Suzuki, Katsuhiko; Liu, Chunhong; An 8-Week, Low Carbohydrate, High Fat, Ketogenic Diet Enhanced Exhaustive Exercise Capacity in Mice Part 2: Effect on Fatigue Recovery, Post-exercise Biomarkers and Anti-oxidation Capacity. Nutrients, 10, 1339, 2018.. 4. Ma, Sihui; Huang, Qingyi; Tominaga, Takaki; Liu, Chunhong; Suzuki, Katsuhiko; An 8-Week.

(4) Ketogenic Diet Alternated Interleukin-6, Ketolytic and Lipolytic Gene Expression, and Enhanced Exercise Capacity in Mice. Nutrients, 10, 1696, 2018.. 5. Ma, Sihui; Suzuki, Katsuhiko; Keto-adaptation and Endurance Exercise Capacity, Fatigue Recovery and Exercise-induced Muscle and Organ Damage Prevention: A Narrative Review. Sports, 7, 40, 2019.. 以. 上.

(5)

参照

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