(1)中小企業の技術・
経営を支える取組
中小企業が、経営資源の充実にどのように取り組んでいく必要があるかについて、技術力及び経
営力の維持・強化の観点から分析を行う。
(2) 第
1
節
中小製造業の現状
■
中小製造業の企業数、従業者数、付加価値額
経済産業省「工業統計表」に基づき、中小製造
業の企業数の推移を見ていく。第3-1-1図を見る
と、中小製造業の企業数は、2000年から2009年
まで減少傾向にあり、特に、2009年は、企業数
が大幅に減少している。また、2000年からの企
業数の増減率を従業者規模別に見ると、おおむね
従業者規模が小さな企業ほど企業数が減少してい
ることが分かる。
第3-1-1図 従業者規模別の中小製造業の企業数の推移
18.6
16.4
14.7 15.3
13.3 14.3
12.4 12.0 12.9
11.1
5.5
5.7
5.3 5.2
5.0 4.7
4.8
4.9 4.7
4.4
4.4
4.2
3.9 3.8
3.8 3.7
3.7 3.8 3.7
3.4
1.5
1.4
1.3 1.3
1.3 1.3
1.3 1.3 1.3
1.2
0.9
0.9
0.9 0.9
0.9 0.9
0.9 0.9 0.9
0.8
0.1
0.1
0.1 0.1
0.1 0.1
0.1 0.1 0.1
0.1
0
5
10
15
20
25
30
35
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09
4∼10 人 11∼20 人 21∼50 人 51∼100 人 101∼300 人 300 人超
資料:経済産業省「工業統計表」再編加工
(注) 従業者数 4 人以上の事業所単位の統計を、企業単位で再集計している。
(万企業)
2000 年からの
増減率
(年率換算)
0.1%
▲1.3%
▲2.3%
▲2.8%
▲2.5%
▲5.6%
(年)
31.0
(総計) 28.7 26.3 26.7 24.5 25.1 23.3 23.1 23.6 21.1 (万企業)
第
1
章
中小企業のものづくり人材の育成
我が国の中小製造業は、様々な構造的課題を克服し、我が国経済を支えてきた。震
災復興に取り組む我が国にとって、競争力の源泉であるものづくり技術の維持・強化
が不可欠であり、技術の担い手である、ものづくり人材の育成は、重要な課題となっ
ている。こうした課題に対して、独自に取り組む企業がある一方、経営資源が限られ
る中小企業が、地域や産学で連携して乗り越えていこうとする動きもある。
本章では、各種指標から中小製造業を取り巻く環境の変化を概観し、人材の育成を
始めとした、中小製造業が抱える課題を分析する。
(3)次に、中小製造業の企業数の推移を経営組織
別・資本金階層別に見てみると、資本金のある会
社企業では、資本金規模が小さな企業ほど、企業
数の減少が顕著となっている一方で、資本金が
5,000万円超の企業数は、2000年から2009年まで、
ほぼ横ばいで推移していることが見て取れる(第
3-1-2図)。会社企業以外の経営組織(組合・その
他の法人・個人)では、2000年から2009年まで
に、企業数が年率で▲8.4%となっており、資本金
が300万円以下の企業数の減少率を上回っている。
第3-1-2図 経営組織別・資本金階層別の中小製造業の企業数の推移
6.4
5.4 4.7 5.1
4.1 4.5
3.6 3.3 3.8 2.9
5.9
5.4
4.9 5.1
4.6 4.8
4.5
4.4 4.6
4.0
12.5
11.7
10.9 10.7
10.1 10.1
9.6
9.6 9.6
8.7
4.9
4.8
4.5 4.5
4.4 4.3
4.2 4.3 4.2
4.1
1.4
1.4
1.3 1.3
1.3 1.3
1.3 1.4 1.4
1.4
0
5
10
15
20
25
30
35
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09
組合・その他の法人・個人
1,000 万円超∼ 5,000 万円
300 万円以下
5,000 万円超
300 万円超∼ 1,000 万円
資料:経済産業省「工業統計表」再編加工
(注) 従業者数 4 人以上の事業所単位の統計を、企業単位で再集計している。
(万企業)
31.0
(総計) 28.7 26.3 26.7 24.5 25.1 23.3 23.1 23.6 21.1 (万企業)
(年)
▲4.3%
▲3.9%
▲2.0%
▲0.1%
▲8.4%
2000 年からの
増減率
(年率換算)
第3-1-3図は、従業者数3人以下の事業所も調
査対象とした、2000年及び2008年の「工業統計
表」を用いて、中小製造業の経営組織別企業構成
を示したものである。両年を比較すると、中小製
造業では全体における会社企業の割合が上昇し、
個人企業の割合が低下していることが分かる。個
人企業は、2000年、2008年ともに、ほとんどが
従業者数20人以下の小規模企業で構成されてい
ることから、企業数の減少は特に小規模企業で大
きくなっている。
第
1
節
(4)第3-1-3図 中小製造業の経営組織別企業構成
235,275
(77.6%)
67,797
250,701
(99.7%)
789
303,072
【54.7%】
251,490
【45.3%】
資料:経済産業省「工業統計表」再編加工
(注) 1.事業所単位の統計を、企業単位で再集計している。
2.組合・その他の法人を除いて集計している。
3.従業者数 3 人以下の事業所は、1 社 1 事業所として扱っている。
会社
個人
うち
小規模
企業
うち
小規模
企業
2000年
【 】内は全企業数に占める割合
( )内は各経営組織の企業数に占める割合
189,690
(76.4%)
58,712
163,320
(99.7%)
436
248,402
【60.3%】
163,756
【39.7%】 会社
個人
うち
小規模
企業
うち
小規模
企業
2008年
中小製造業の企業数を開業と廃業に区分して増
減を見てみると、企業数の減少が年々進行する中
でも、開業数は一定数存在しており、製造業内で
新陳代謝が進んでいる(第3-1-4図)。
第3-1-4図 中小製造業の企業数の変化率と開業・廃業の内訳
資料:経済産業省「工業統計表」再編加工
(注) 1.従業者数 4 人以上の事業所単位の統計を、企業単位で再集計している。
2.企業数変化率は、当該期間の純減数を期首の企業数で除して算出している。
3.廃業数は期首において存在したが期末において存在しない企業の数、開業数は期首において存在しないが期末において
存在した企業の数として算出した。
4.廃業数と開業数は、期首と期末で接続可能な事業所を企業単位に集計して算出したものである。このため両者の差分は、
実際の中小企業の純減数とは完全には一致しない。
70,257
56,928
54,481
27,221
22,920 26,691
▲14.0
▲12.8
▲9.5
▲16.0
▲14.0
▲12.0
▲10.0
▲8.0
▲6.0
▲4.0
▲2.0
0.0
0
10,000
20,000
30,000
40,000
50,000
60,000
70,000
80,000
00∼03 03∼06 06∼09
(%)
(企業)
(年)
廃業数(左軸) 開業数(左軸) 企業数変化率(右軸)
(5)3-1-1
事 例
ものづくりの街で創業し高い技術力で成長する企業
福岡県北九州市のアジア技研株式会社(従業員25名、
資本金3,000万円)は、スタッド溶接システム、工業用
ファスナー等の製造・販売を行う企業である。スタッド溶
接とは、金属板にネジ等(スタッド)を、穴を開けずに
溶接する技術で、自動販売機、住宅アルミ外壁、船内艤
装、電子機器筐体等幅広い分野で使われている。スタッ
ド、溶接機、溶接ロボット等を自社で一貫して製造・販
売することが、同社の強みであり、また、研究開発では、
取扱いが難しいマグネシウム合金のスタッド溶接技術を
確立し、「第2回ものづくり日本大賞優秀賞」を受賞し、
「北九州オンリーワン企業」にも認定されている。
同社の溶接機
同社社長の溝口純一氏が会社を設立し、事業を開始し
たのは1994年で、その後、事業の拡大とともに、北九州
市内で3度の本社・工場の移転を行い、現在に至ってい
る。2008年からは製品の輸出業務も行っており、海外で
の生産拠点の設立も視野に入れた事業展開を行っている。
人材確保にも積極的に取り組んでおり、被災地域の若者
を2名採用した。溝口社長は、「続けて働き本人が希望す
れば地元に近いところで働けるようになるまで事業を拡大
したい。」と、更なる挑戦への意欲を示している。
同社の溶接技術
さらに、第3-1-5図①は、中小製造業1企業当
たりの付加価値額と従業者数を示したものである
が、1企業当たりの従業者数は、2000年から2009
年までおおむね増加していることが見て取れる。
一方、パネルデータを用いて、2000年から2009
年まで存続した企業のみで見ると、1企業当たり
の従業者数は、2009年にリーマン・ショックの
影響で大きく減少したものの、2000年から2008
年まで、ほぼ横ばいで推移していた
1
(第3-1-5
図②)。
2000年から2009年まで存続した企業の従業者
数が、ほぼ横ばいにもかかわらず、第3-1-5図①
のように1企業当たりの従業者数が増加している
のは、従業者規模の小さな企業を中心に廃業や合
併等が進んでいることを裏付けている。
1 2009年の企業規模別の製造業付加価値額については、付注3-1-1を参照。
第
1
節
(6)第3-1-5図① 中小製造業1企業当たりの付加価値額と従業者数の推移
177.6 179.9
177.7
176.5
197.5 195.6
211.5
218.5 204.9
192.8
20.9
21.7
22.2
21.7
23.2 22.8
24.4
25.2
24.1
24.9
20
21
22
23
24
25
26
150
160
170
180
190
200
210
220
230
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09
資料:経済産業省「工業統計表」再編加工
(百万円)
(年)
(人)
1 企業当たり従業者数(右軸)
1 企業当たり付加価値額(左軸)
第3-1-5図② 中小製造業1企業当たりの付加価値額と従業者数の推移(パネルデータ)
263.1
251.8 240.9 243.7 253.4
256.0
260.3 261.7
253.5
213.3
29.3 29.0
28.4 28.4 28.6 28.6
29.0
29.2
28.7 27.0
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
200
210
220
230
240
250
260
270
280
290
300
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09
1 企業当たり付加価値額(左軸) 1 企業当たり従業者数(右軸)
資料:経済産業省「工業統計表」再編加工
(注) 1.従業者数 4 人以上の事業所単位の統計を、企業単位で再集計している。
2.従業者数 29 人以下の事業所は粗付加価値額で集計している。
3.図②では、2000 年時点において中小企業に格付けられ、かつ、2009 年まで存続した企業を対象としている。
(百万円)
(年)
(人)
■
中小企業の強み、位置付け
中小製造業では、小規模な企業を中心に、多く
の企業が廃業するなど、厳しい環境に直面してい
る。他方、以下の事例に見られるように、国内に
は高い技術力を有する企業が多数存在している。
ここでは、製造業を対象に行った「技能・技術承
継に関するアンケート調査
2
」の結果をもとにして、
中小製造業の強みや位置付けについて見ていく。
中小企業は、どのような分野の技術を得意と
し、他社との差別化を図ってきたのであろうか。
第3-1-6図は、競争優位に寄与している技術を示
したものである。これを見ると、「多品種・ロッ
ト変動等への適応力」と回答する企業が約4割、
「納期短縮を実現する技術」や「難度の高い加工
を実現する技術」と回答する企業が 3 割程度と
なっている。
2 中小企業庁の委託により、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)が、2011年12月に製造業の法人企業17,000社を対象に実施したアンケート調査。回収率
14.2%。ただし、岩手県、宮城県、福島県の大震災により甚大な被害(津波被害、地震被害等)を受けた地域に本社が所在する企業は対象外とした。
(7)第3-1-6図 競争優位に寄与している技術(複数回答)
5.5
1.7
1.8
9.0
15.0
19.5
24.6
27.8
31.0
40.4
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45
その他
省エネ技術
資料:中小企業庁委託「技能・技術承継に関するアンケート調査」(2011 年 12 月、三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング(株))
(注) 従業員 300 人以下の企業を集計している。
小型・軽量化を実現する技術
機械では実現できない高精度の実現
現場のノウハウ・工夫を開発・
設計にフィードバックする技術
大量生産時の品質を安定化する技術
コストダウンを実現する技術
難度の高い加工を実現する技術
納期短縮を実現する技術
多品種・ロット変動等への適応力
(%)
(n=2,109)
3-1-2
事 例
大手自動車メーカーとの共同開発により高機能製品を生み出し、
国内外で高いシェアを持つ企業
愛知県弥富市の東洋精鋼株式会社(従業員61名、資
本金2,500万円)は、自動車や航空機の部品加工に欠か
せない、ショットピーニング加工に使用される投射材の製
造・販売を行っている。ショットピーニングは、無数の金
属粒を高速度で金属表面に衝突させる加工の一種であり、
この加工を施すと、疲労強度向上等の効果が得られるこ
とから、主に、自動車のサスペンション、歯車の製造で
利用されている。
同社は従来、金属加工品のバリ取り等に使われる投射材
(ワイヤー状の鋼材を切断したカットワイヤー)を製造して
いたが、1989年に、ショットピーニングに使う球状の投射
材を、トヨタ自動車株式会社と共同で開発した。我が国で
初めてのラウンドカットワイヤーである。当時使われてい
た鋳鋼製の投射材は、耐久性が低く、すぐ破損してしまう
欠点があった。しかし、同社が開発した投射材は、鋳鋼
製に比べて価格は3倍だが、耐久性が高く、使用量が7
分の1で済むため、大幅なコストダウンが可能となった。
こうした利点により、トヨタ自動車株式会社以外の自動
車メーカーでも、同社製品は採用されるようになり、今で
は、国内のピーニング用の投射材で、9割以上のシェア
を確保している。また、国内自動車メーカーの海外展開
に伴って、輸出を始め、今では、海外自動車メーカーと
の取引も増え、25か国・地域に輸出するようになった。
同社は、自動車業界で培った技術力を活かし、航空機
部品加工用の投射材で航空機業界への参入を進めている。
耐久性の高い同社の投射材は、ボーイング、GE、P&W
等の大手航空機関連メーカー各社から品質認定を受ける
など、幅広く評価されている。
球状のラウンドカットワイヤー ショットピーニング装置
第
1
節
(8)3-1-3
事 例
高い技術力を背景に、航空宇宙産業で存在感を発揮する企業
神奈川県横浜市の株式会社山之内製作所(従業員77
名、資本金3,200万円)は、航空機部品や人工衛星のエ
ンジン部品等の宇宙機器部品を開発・製造する企業であ
る。創業当初より、切削による精密加工を行っており、他
社が断るような難度の高い製品の加工を積極的に引き受
け、その要求に応えるために、高性能工作機を導入し、
技術力を高めてきた。同社では溶接技術を一切使わず、
切削のみの加工を行うことで、継ぎ目のない複雑形状部
品の超精密加工を実現しており、「熱に強いどんな難削材
でも高精度に削る」との定評がある。
大規模受注・少量生産、長いリードタイムという性格
を持つ航空宇宙産業界では、常に、高い品質管理・保証
が要求される。同社では、航空宇宙産業における品質マ
ネジメントの国際規格であるJIS9100に加え、航空宇宙産
業界の特殊工程に関する世界唯一の統一認証プログラム
であるNadcap3
認証を取得している。
同社の超精密加工を実現する技術力と品質管理・保証
体制は、参入障壁が高い航空宇宙産業界においても高く
評価されており、国内大手重工メーカーから受注を獲得
している。
同社が製造したエンジン部品を搭載する航空機
3-1-4
事 例
産学連携と、職人の技による加工技術で高い競争力を維持する企業
大阪府東大阪市の大阪精密機械株式会社(従業員66
名、資本金7,250万円)は、歯車の精密加工等に必要と
なる測定機の開発・製造を行う企業である。同社は、デ
ジタル技術であるソフトウェアを活用した補正と、アナロ
グのキサゲ加工の融合により、高い測定精度を実現し、
国内測定機市場においては、約7割と圧倒的シェアを占
めている。キサゲ加工とは、職人がノミのように先端が平
らな手工具(キサゲ)を使い、機械加工では不可能な、
超高精度に平面を仕上げる技術である。
同社は現在、先端技術と技術課題を解決するアイディ
アの吸収を目的に、電気通信大学等3校と連携し、ソフト
ウェア改良による自動測定速度の向上等について共同研
究を実施している。
同社の本田正守取締役は、「これまで、熟練技能を持
つ職人は、ベテラン中心であったため、技能伝承は進ん
でこなかったが、近年では若手の中から、適性のある社
員を見抜き、OJTを中心とした、現場での取組により育成
を進めた結果、最盛期と同じ人数で加工技術を維持して
いる。」と話す。
同社のキサゲ加工
3 National Aerospace and Defense Contractors Accreditation Programの略称。
(9)中小企業の技術競争力の位置付けを、5年前と
比較してみると、8割強の企業で、技術競争力が
高まっている、あるいは、従来の水準を維持して
いると回答している一方、2割弱の企業で、技術
競争力が低下していると回答している(第3-1-7
図)。
第3-1-8図は、技術競争力が低下していると回
答した中小企業に、その理由を尋ねた結果を示し
たものである。これを見ると、中小企業は、様々
な課題を抱えていることが見て取れるが、その中
でも「技術・技能承継がうまくいっていない」と
回答する企業の割合が特に高く、技術・技能承継
が大きな課題となっていることが明らかとなって
いる。
第3-1-7図 技術競争力の位置付け
(5年前との比較)
高まっている
7.0%
やや高まっている
27.3%
従来の水準を
維持している
49.0%
やや低
下して
いる
13.2%
低下している
3.6%
(n=2,149)
資料:中小企業庁委託「技能・技術承継に関するアンケート調査」
(2011年12月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株))
(注) 従業員 300 人以下の企業を集計している。
第3-1-8図 技術競争力が低下している理由(複数回答)
69.6
16.2
13.0
12.2
10.7
7.5 7.5
0
10
20
30
40
50
60
70
80
その他
資料:中小企業庁委託「技能・技術承継に関するアンケート調査」(2011 年 12 月、三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング(株))
(注) 技術競争力が「低下している」、「やや低下している」と回答した従業員 300 人以下の企業を集計している。
(%) (n=345)
技術・技能承継が
うまくいっていない 海外企業等の技術力向上 同一技術を他社が保有 技術流出により 機械化
・
IT
化進展
による技術の一般化 機械化
・
IT
化への
対応が遅れた 代替技術が出現した
第
1
節
(10) 第
2
節
技術・技能承継の取組
前節では、中小製造業において、技術競争力が
低下している最大の理由が、技術・技能承継の問
題であることを明らかにした。技術・技能の承継
に関しては、熟練技術・技能の可視化や技術・技
能人材
4
の育成を中心とした、企業努力に大きく
左右される。本節では、そうした中小企業の技
術・技能承継の取組状況について見ていく。
■
熟練技術・技能の可視化を始めとした取組
第3-1-9図は、技術・技能承継の取組実施度を
示したものである。技術・技能承継がうまくいっ
ている中小企業と技術・技能承継がうまくいって
いない中小企業を比較すると、「熟練技術・技能
の標準化・マニュアル化」を実施している企業の
割合が、前者では約6割に対して、後者では3割
弱となっており、前者が後者の取組実施度を上
回っている。また、「OJT による人材育成」や
「Off-JTによる人材育成」に関しても、前者と後
者では取組実施度に乖離が生じている。こうした
結果を踏まえると、技術・技能を円滑に承継して
いくためには、熟練技術・技能の可視化や技術・
技能人材の育成、さらには社内制度の整備等が重
要であり、技術・技能承継がうまくいっている企
業では、こうした項目にバランス良く取り組み、
技術・技能承継の課題を克服してきたと考えられ
る。
第3-1-9図 技術・技能承継の取組実施度
58.9
33.9
53.5
47.5
44.0
47.4
52.7
54.7
12.0
15.0
26.2
11.0 35.7
20.1
24.3
30.4
37.3
50.1
18.0 9.2
熟練技術・技能の標準化・マニュアル化
熟練技術・技能の機械化・IT 化での代替
OJT による人材育成
Off-JT による人材育成
資格・認定制度等による技術・技能の評価
目標設定・達成度評価
職能給等による処遇の充実
定年延長
熟練技術・技能を要する業務の外部委託
外部企業等との連携
資料:中小企業庁委託「技能・技術承継に関するアンケート調査」(2011年12月、三菱UFJリサーチ&コンサルティ
ング(株))
(注) 1.従業員 300 人以下の企業を集計している。
2.各項目によって回答者数(回答比率算出時の分母)は異なる。
3.技術・技能承継について、「かなりうまくいっている」、「うまくいっている」と回答した企業を技術・技
能承継がうまくいっている企業として集計し、「全くうまくいっていない」、「うまくいっていない」と回
答した企業を技術・技能承継がうまくいっていない企業として集計している。
技術・技能承継がうまくいっていない企業(n=393)
技術・技能承継がうまくいっている企業(n=660)
0
10
20
30
40
50
60
(%)
4 ここでは、研究業務、製品開発・技術開発業務、品質・生産管理業務、製造・加工業務の4業務に従事する従業員を技術・技能人材として捉える。
(11)中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する
法律及び戦略的基盤技術高度化支援事業
我が国製造業の国際競争力の強化及び新たな事業の創出を行うことを目的とする「中小企業のものづくり基盤技術の
高度化に関する法律(以下「中小ものづくり高度化法」という)」に基づき、中小企業庁では、鋳造、鍛造、切削加工、
めっき等の中小企業のものづくり基盤技術の高度化に資する取組を支援している。同法に基づき、経済産業大臣が技術
開発の方向性を示した指針を策定し、指針に沿って中小企業が作成した研究開発計画を認定している。認定を受けた研
究開発計画を実施する中小企業は、予算措置(戦略的基盤技術高度化支援事業(以下「サポイン事業」という))や低
利融資等による支援を受けることができる。
特定ものづくり基盤技術の指定(第 2 条第 2 項)
法律に基づく支援を行う対象の特定ものづくり基盤技術を経済産
業大臣が指定。現在まで22技術を指定。
技術高度化指針(技術別指針)の策定(第 3 条)
特定ものづくり基盤技術ごとに、「中小企業が目指すべき技術開
発の方向性」を「指針(大臣告示)」として策定。
研究開発等計画の認定(第 4 条)
「指針」に基づいて、中小企業等が自ら行う研究開発計画を作成
し、経済産業大臣が認定。
支援措置
サポイン事業、(株)日本政策金融公庫の低利融資、中小企業信
用保険法の特例、特許料等の特例等
中小ものづくり高度化法の概要
鍛造 塗装 熱処理 動力伝達 部材の締結 組込みソフトウェア
鋳造 真空 位置決め 繊維加工 金属プレス加工 プラスチック成形加工
発酵 溶接 冷凍空調 切削加工 高機能化学合成 電子部品・デバイスの実装
金型 めっき 粉末冶金 溶射・蒸着
特定研究開発等計画の認定件数(技術分野別)
0
50
100
150
200
250
300
350
400
450
500
組込みソフトウェア 金型 電子部品・デバイス実装 プラスチック成形加工 粉末冶金 溶射 鍛造 動力伝達 部材結合 鋳造 金属プレス加工 位置決め 切削加工 織染加工 高機能化学合成 熱処理 溶接 めっき 発酵 真空の維持
(件)
461
267 284 249
63
37 75 70 35
171201
155
317
100 111 94 98132
155
65
20 の特定ものづくり基盤技術の合計で 3,140 件を認定
(2012 年2月末現在)
【対象事業】
中小ものづくり高度化法に基づく認定を受けた特定研究開発
等計画を基本とした研究開発が対象
【実施者】
認定を受けた中小企業者を含む共同体
(中小企業、ユーザー企業、研究開発機関等で構成)
【研究開発期間・規模】
○2年度若しくは3年度の委託事業
○初年度 4,500 万円
2年度目 初年度の2/3
3年度目 初年度の1/2
国 中小ものづくり企業A
中小ものづくり企業B
大企業・大学・公設試験研究機関等
委託
事業責任者
<アドバイザー>
川下ユーザー(自動車、情報
家電等)、大学等
プロジェクトリーダー
(総括研究代表者)
サポイン事業の概要
サポイン事業
これまでの予算・応募・採択状況
予算額
(億円) 応募件数 採択件数 採択倍率
2006年度 64.0 323 80 4.0
2007年度 93.6 218 89 2.4
2008年度 88.0 134 48 2.8
2009年度 54.0 200 44 4.5
2009年度補正 132.5 658 253 2.6
2010年度 150.1 977 308 3.2
2010年度予備費 95.0 564 125 4.5
2011年度 150.0 732 137 5.3
2011年度3次補正 49.8 263 51 5.1
累計 877.0 4,069 1,135 3.6
特定ものづくり基盤技術(鋳造、鍛造、切削加工、めっき等)の高度化に
資する中小企業の研究開発から試作まで含む取組を支援。
コラム
3-1-1
第
2
節
(12)3-1-5
事 例
サポイン事業を活用し、金型の高精度化・微細化に成功した企業
北海道室蘭市の株式会社キメラ(従業員140名、資本
金2,800万円)は、精密金型の設計・製作、精密金属機
械加工を行う企業である。2007年度から2009年度にサ
ポイン事業を活用し、金型の高精度化・微細化及び製造
工程のデータベース化に取り組んだ。
情報家電の小型化・高機能化に伴い、微細なコネク
ター部品を大量に、一定の品質を保ちながら、短期で供
給することが求められている。同社は、こうした要求に対
応するため、型彫放電加工及びその加工に要する精密微
細電極の高速切削加工、ワイヤーカット放電加工におい
て最適な加工条件を確立し、金型の微細化に成功した。
これまで、市販のコネクター部品は、最小0.2mmピッチ
であったが、本研究開発では0.1mmを達成している。ま
た、これまで熟練技能者に蓄積していた型彫放電加工、
ワイヤーカット放電加工、高速切削加工の最適加工条件
等のノウハウを、誰でも活用できるようデータベース化し
た。その結果、材質・硬度・加工面の面積・加工方法等
の加工に必要な諸データを入力すると、最適加工条件を
出力することができるようになり、納期の短縮にも大きく
貢献している。
0.1mmピッチの金型部品
グローバル技術連携支援事業
技術をめぐるグローバル競争が一層激化する中、世界市場を目指す中小企業にとって、高い技術力に加え、付加価値
と模倣困難性を高めるような技術を獲得していくことが必要であるが、中小企業が単独で海外展開に取り組むには、模
倣品被害・技術流出に遭う可能性が高く限界がある。
中小企業庁では、「グローバル技術連携支援事業」を通じて、海外展開を目指す中小企業が連携して取り組む技術流
出防止等を考慮した技術開発とその販路開拓を支援している。
単独では模倣品被害・技術
流出に遭ってしまう
複数の中小企業が連携して
模倣品被害・技術流出を防止
海外展開
単独
連携
グローバル技術連携支援事業
○中小企業1社(部品単体)での海外展開は、模倣品被害・
技術流出に遭う可能性が高い。
○複数の中小企業の連携による技術・製品を組み合わせ
たパッケージ化、分解されても製法・技術が解明でき
ないブラックボックス化が重要。
海外展開を目指す中小企業が連携して取り組む技術流出
防止等を考慮した技術開発とその販路開拓を支援
【平成 24 年度予算 6 億円】
中小企業が連携
技術開発
海外市場動向把握
ブラックボックス化等
海外市場の
獲得
コラム
3-1-2
(13)■
技術・技能人材
第3-1-10図は、技術・技能人材の年齢構成を
示したものであるが、中小企業の技術・技能人材
の年齢構成は、大企業に比べて「ベテラン中心」
の年齢構成となっている割合が高い。
さらに、技術・技能人材の年齢構成別に技術・
技能承継の円滑度を比較すると、技術・技能人材
がベテラン中心の中小企業では、技術・技能承継
がうまくいっていると回答する企業の割合が他の
年齢構成の企業より低い(第3-1-11図)。
第3-1-10図 中小企業の技術・技能人材の年齢構成(大企業との比較)
資料:中小企業庁委託「技能・技術承継に関するアンケート調査」(2011 年 12 月、三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング(株))
(注) ここでいう中小企業とは、従業員 300 人以下の企業をいい、大企業とは、中小企業以外をいう。
14.6
12.7
17.4
14.8
14.6
11.0
14.6
32.3
39.0
29.3
(%)100
0
大企業
(n=213)
中小企業
(n=2,079)
若手中心 各世代均等 中堅不足 ベテラン中心 中堅中心
高
年齢
低
第3-1-11図 技術・技能人材年齢構成別の技術・技能承継の円滑度
2.3
1.1
0.9
2.3
3.9
33.7
16.9
26.3
38.4
39.9
50.5
53.2
54.5
47.9
45.0
12.0
22.1
17.4
10.5
10.1
1.5
6.7
0.9
1.0
1.2
(%)
100
0
中堅中心
(n=600)
ベテラン中心
(n=656)
中堅不足
(n=224)
各世代均等
(n=305)
若手中心
(n=258)
かなりうまくいっている うまくいっている どちらともいえない
うまくいっていない 全くうまくいっていない
資料:中小企業庁委託「技能・技術承継に関するアンケート調査」(2011年12月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株))
(注) 従業員 300 人以下の企業を集計している。
第
2
節
(14)3-1-6
事 例
綿密な人材育成計画を社内全体で共有し、社を挙げて人材育成に取り組む企業
東京都品川区の株式会社三ツ矢(従業員320名、資本
金1,500万円)は、めっき加工を行う企業である。同社は、
独自の人材育成制度により、若手人材の定着率向上に取
り組むなど、その独自性から、2011年度「東京都中小企
業ものづくり人材育成大賞知事賞」の大賞を受賞した。
同社の人材育成制度では、社員は個々に、目指す職位
に応じて、習得すべき専門知識、技能を具体化し、計画
的に社内外の研修や支援を受けることができる。また、
各社員の目標や計画は、工場長や熟練技能者等の多くの
人が関わって策定し、その後、進捗状況を細かく確認、
修正を行うなど、人材育成が社内全体の重要な取組とし
て位置付けられている。
特に、専門知識、技能の向上に力を入れており、同社
の現場社員から構成される検討委員会では「めっきがで
きるとは?」からスタートし、専門知識と実技から成る資
格認定制度を設け、実力を客観的に評価する工夫をして
いる。専門資格の認定は、手当にも反映されるため、社
員は、高いモチベーションで自己研鑽に励み、結果とし
て、同社の技術力が高まることにつながっている。
近年では、新入社員研修にジョブローテーションを導入
し、今後は、熟練技能者向けの「教える側の教育」も検
討している。将来的には、社内人材を磨き上げる育成力
を同社の強みとすることを目指している。
OJT研修の様子
■
若手人材の確保
技術・技能承継の問題を考えるに当たって、技
術・技能人材の年齢構成がベテラン中心となって
いる中小企業では、技術・技能を承継すべき若手
人材の確保ができていないことにより、技術・技
能の承継がうまくいっていないとも考えられる。
第3-1-12図は、若手の技術・技能人材の採用
状況を示したものであるが、中小企業では、若手
の技術・技能人材を、計画通りに採用できている
と回答する割合が、大企業に比べて低く、若手の
技術・技能人材を十分に確保できていないことが
考えられる。さらに、中小企業では「採用を計画
していない」と3割弱が回答しており、採用を計
画したものの、計画通りにできていない現状も含
め、中小企業を取り巻く若手人材の採用は、厳し
いものとなっている。
第3-1-12図 中小企業の若手の技術・技能人材の採用状況(大企業との比較)
15.8
6.0
50.5
29.7
22.5
19.2
5.4
17.1
5.9
28.0
(%)
100
0
大企業
(n=222)
中小企業
(n=2,129)
計画通りに採用できている まずまず計画通りに採用できている あまり計画通りに採用できていない
計画通りに採用できていない 採用を計画していない
資料:中小企業庁委託「技能・技術承継に関するアンケート調査」(2011年12月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株))
(注) ここでいう中小企業とは、従業員 300 人以下の企業をいい、大企業とは、中小企業以外をいう。
(15)それでは、中小企業が若手の技術・技能人材を
確保するためには、どういった取組が必要なので
あろうか。第3-1-13図は、若手の技術・技能人
材が採用できている要因を示したものであるが、
これによると「景気後退に伴う雇用情勢の悪化」
と回答する企業が最も多い一方で、「大学、高校
等とのつながりを強化」と回答する企業が約3割、
「ものづくりの魅力を伝える取組」と回答する企
業が2割を超えるなど、中小企業側の能動的な取
組が奏功し、若手の技術・技能人材を採用できて
いることも分かる。
第3-1-13図 若手の技術・技能人材が採用できている要因(複数回答)
7.5
8.8
14.2
17.7
18.3
22.1
29.6
63.6
0 10 20 30 40 50 60 70
その他
新聞・雑誌等に取り上げられた
資料:中小企業庁委託「技能・技術承継に関するアンケート調査」(2011 年 12 月、三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング(株))
(注) 若手の技術・技能人材を「計画通りに採用できている」、「まずまず計画通りに採用できている」と回答した従業員 300 人以
下の企業を集計している。
給与等の労働条件の改善
採用活動で意識のズレを
生じさせない工夫
採用後の教育・研修体制の充実
ものづくりの魅力を伝える取組
大学、高校等とのつながりを強化
景気後退に伴う雇用情勢の悪化
(%)
(n=747)
こうした中、インターンシップ等を活用し、も
のづくりの魅力を伝えることによって若手の技
術・技能人材を確保している企業も存在する。
3-1-7
事 例
インターンシップを実施したことによって若手人材の確保に成功した企業
兵庫県高砂市の三和鉄工株式会社(従業員27名、資
本金1,000万円)は、船舶機関用部品、発電機用部品等
の製造・加工を行う企業である。同社は、大手製鉄メー
カーとの各種素材の共同開発で蓄積してきたノウハウを
活かして、他社には真似のできない、あらゆる金属素材
の加工技術を強みとしている。
同社は新卒採用に積極的であり、地域の工業高校から
の要望に応えて、インターンシップによる学生の受入れを
行った。同社のインターンシップは、集合形式の研修で
はなく、学生にものづくりの現場を見てもらうことを重視
している。就業経験のない学生にものづくりの魅力を伝え
ることで、イメージを具体化してもらうことができ、学生
間での同社の認知度向上にも効果があった。こうした取
組により、地域の工業高校からは、毎年入社希望の学生
10名程度の応募があり、その中から継続的に新規採用を
している。
また、インターンシップは、学生への指導等を通じて、
社員向け教育ツールの作成に役立ったほか、技術者の指
導力が向上するなどの、副次的な効果も得られている。
第
2
節
(16)地域中小企業の人材確保・定着支援事業
前掲第3-1-12図で示したように、中小企業と大企業では、若手人材の採用に関して大きな差が生じており、中小企業
は、厳しい状況に置かれている。中小企業が若手人材を円滑に確保できる環境を整えることは、重要な課題であり、中
小企業庁では、様々な支援を行い、中小企業をめぐる若手人材の諸課題に対し、万全を期している。
優秀な若手人材を確保していくためには、地域特性に応じて、大学等との日常的な顔が見える関係づくりから、マッチ
ング、新卒者の採用・定着までの支援を、一体で行う体制の構築が必要となっている。
こうした中、中小企業庁と全国中小企業団体中央会が連携し、「地域中小企業の人材確保・定着支援事業」を通じて、
地域で学んだ大学生等を地域において、円滑に採用でき、かつ定着させるための自立的な仕組みの整備を目指している。
ステップ 1 大学・学生等との恒常的な連携関係づくり
(例:中小企業経営者による大学等での出張講座、若手従業員との交流会等)
ステップ 2 豊富な情報を活かしたマッチング
(例:合同就職説明会、職業紹介等)
ステップ 3 地域全体での人材育成・定着支援
(例:地域単位での新人研修、地域レベルでの「同期」づくり等)
○予算
平成 23 年度 3 次補正予算額 15 億円
○事業内容
コラム
3-1-3
(17)大学卒業予定者の中小企業への就職希望理由
以下は、大学卒業予定者に対し、中小企業の選考に応募した理由を尋ねたものである。これによると、「やりたい仕
事に就ける」が最も高く、次いで「企業として独自の強みがある」、「会社の雰囲気が良い」と続いている。こうした考え
を踏まえ、若者の企業志向に合った取組を行うことによって、中小企業が若手人材を円滑に確保でき、ひいては、若者
の就業が促進されることにもつながると考えられる。
大学卒業予定者の中小企業を就職先として希望した理由(複数回答)
10.5
13.3
18.0
21.9
22.5
23.2
31.8
40.2
40.8
46.5
0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 40.0 45.0 50.0
早い時期に選考が始まる
将来性がある
内定を取りやすい
転居を伴う転勤がない
経営者が魅力的
仕事の裁量が大きい
出身地・地元に本社がある
会社の雰囲気が良い
企業として独自の強みがある
やりたい仕事に就ける
資料:(株)ディスコ「日経就職ナビ 2012 就職活動モニター調査」(2011 年 10 月)
(注) 2012年3月卒業予定の大学4年生(理系は大学院修士課程2年生を含む。)を対象としたアンケート調査。上位10位を抜粋。
(%)
(n=512)
コラム
3-1-4
■
連携の可能性
ここまで、中小企業が技術競争力を強化してい
くための最大の課題である技術・技能承継の取組
について示してきた。前掲第3-1-9図を見ると、
技術・技能承継がうまくいっている企業では、熟
練技術・技能の可視化や人材育成、さらには社内
制度の整備等、自社内での取組を積極的に進めて
いる一方、外部企業等との連携に関しては、他の
項目に比べて実施度が低く、社外との連携には課
題も残している。
中小企業が地域の企業等と効果的に連携し、課
題に対処していくことは、それぞれの中小企業の
課題解決に有効であると考えられる。自社だけで
は解決が困難な課題に直面しつつも、地域の企業
と連携しながら、高度なものづくりを目指してい
る企業グループも存在する。
第
2
節
(18)3-1-8
事 例
高度なものづくりを目指した地域密着型の試作加工の企業グループ
京都府の京都試作ネットは、域内に所在する機械金属
関連の企業が2001年に共同で立ち上げたグループであ
り、共同受注を通じて、京都を「試作加工集積地」にす
ることを目指している。
同ネットは、切削や表面加工等の高度な技術を持った
企業がネットワークを形成することで、単独の企業では不
可能な複数工程を実現し、難度の高い試作の依頼も引き
受けている。こうした部品加工から装置開発まで一貫した
体制整備を行ったことで、2001年の設立以来、約3,400
件の申込を受け、そのうち約840件が成約、17億円の売
上が上がっている。
同ネットでは、顧客からの問い合わせ案件を、会員企
業の中で技術力が高い企業に優先して振り分けるルール
になっている。そのため、技術力が低い企業は、必然的
に技術力を鍛えることになり、会員企業同士が切磋琢磨
する環境が整っている。
また、同ネットで培った技術力とノウハウを活かし、会
員企業の中には、医療機器分野へ進出した企業も誕生す
るなど、同ネットの活動が会員企業のレベルアップにもつ
ながる相乗効果が生まれている。
今後は、会員企業の数を増やし、グループとしての魅
力をより一層高め、「試作であれば京都に」という流れを
作ろうと努力している。
以上、中小企業の技術競争力を強化していくた
めには、技術・技能承継を始めとした中小企業が
抱える課題に対しての取組が、不可欠であること
を示してきた。技術・技能承継の問題を解決する
に当たっては、熟練技術・技能の可視化を始めと
した取組等により、ベテランが培ってきた技術・
技能を円滑に承継すると同時に、若手の技術・技
能人材を確保・育成していくことで、技術・技能
人材の質の向上と量の確保を目指していくことが
重要である。そうした総合的な対策によって、中
小企業が技術競争力を高め、我が国経済の発展に
寄与していくことが期待される。