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教室が児童にとって居場所になるための実践とその効果

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Academic year: 2021

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教室が児童にとって居場所になるための実践とその効果 . 小谷津 美咲・堀井 俊章 . Practice and Effectiveness of Making Ibasho . for School Children in Classrooms. Misaki KOYATSU and Toshiaki HORII . 問 題 . 1980 年代後半の不登校の増加を契機に,学校に居場所がない子どもたちのた. めの居場所づくりに関する言及が散見されるようになった。文部省(現文部科. 学省)は 1992 年に居場所について言及し,学校が心の居場所としての役割を果. たす必要があると述べている(文部省 , 1992)。また, 2003 年には,「自己が大. 事にされている,認められている等の存在感が実感でき,かつ精神的な充実感. の得られる」場所として,心の居場所について言及している(文部科学省 , 2003)。. 国立教育政策研究所( 2012)によると,居場所は「児童生徒が安心できる,自. 己存在感や充実感を感じられる場所」であり,そのような場づくりが教職員に. 求められ,今日「居場所づくり」という表現が生徒指導において広く用いられ. るようになった。 . 近年,文部科学省( 2017)は,小学校学習指導要領(平成 29 年告示)におい. て,児童の「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改革を行うこと. を各教科等の指導目標に掲げている。それに関連し,国立教育政策研究所( 2015). は,特別活動において重視したい指導・支援について,「児童生徒に『自己存在. 感』を与える」こと,「教師と児童生徒の信頼関係及び児童生徒相互の『共感的. な人間関係』を育てる」こと,「『自己決定』の場や機会をより多く用意し,児. 童生徒が自己表現の喜びを味わうことができるようにする」ことを挙げている。. また,木下( 2013)によると,児童が活躍したり自分の意見を聞いてもらっ. たりする経験は,被受容感を高め,精神的安定につながる。長峰・澤( 2009). は,「学級の雰囲気」をポジティブにする教師の指導行動・態度として,「児童. が主役となって授業や学習活動に関心意欲を持って取り組めるような工夫をす. ること」,「教師自らが児童との関係性を大事にすること」,「児童同士の関係を. 良好にするためのルールを伝えていくこと」があると述べている。また,角南. ( 2013)は,期待や承認を交えた「受容的関わり」は,問題解決だけではなく. 日常場面においても,子どもの自己肯定感を育み,肯定的変化を促す要因の一. つになると述べている。 . これらの知見は「居場所づくり」と関連すると考えられるが,従来,教師が. 実際に取り組んでいる「居場所づくり」の手立てについて明確にしている研究. や,その効果を検討している研究は少ない。したがって,教師による居場所づ. くりの具体的な手立て,つまり,教室が児童にとって居場所になるための具体. 的な手立てに焦点を当て,その効果を検討することは,学校教育において意義. があると考えられる。 . 200. 目 的 . 本研究では,教室が児童にとって居場所になるための具体的な手立てとその. 効果について検討することを目的とする。予備調査では,教室が居場所になる. ために教師が行っている具体的な手立てを明らかにし,その手立てを児童が経. 験している程度を測定する尺度項目を構成することを目的とする。本調査では,. 教師が行っている手立ては,教室が児童にとって居場所になることに効果があ. るのかを検討することを目的とする。 . 予 備 調 査 . 目的 . 教室が居場所になるために教師が行っている具体的な手立てを明らかにし,. カテゴリー化した結果に基づき,本調査で用いる児童の学級生活経験尺度項目. を構成することを目的とする。 . 方法 . 調査時期および調査協力者 2018 年 6 月 26 日から 7 月 13 日にかけて,首都. 圏公立 A 小学校の教師 15 名(男性 4 名,女性 11 名)を対象に質問紙調査を実. 施した。 . 手続き 学校長より調査の了承を得た A 小学校に質問紙を持参し,教師 15. 名に調査の趣旨および倫理的な配慮に関して文書と口頭で十分に説明し,全員. より合意を得た。調査は個別・無記名式,回答時間は 5 分から 10 分程度であっ. た。 . 質問紙の構成 質問紙は以下の 3 点から構成された。 . 1.フェイスシート 調査協力者の性別と教職経験年数,担任を経験したこ. とのある学年について記入を求めた。 . 2.教室が児童の居場所になることにつながる手立ての有無 国立教育政策. 研究所( 2012)による居場所の定義「児童生徒が安心できる,自己存在感や充. 実感を感じられる場所」を明示した上で,「児童と関わるときに実践しているこ. との中で,教室が居場所になることにつながると思うものはあるか」について,. 「はい」「いいえ」「わからない」で回答を求めた。 . 3.教室が児童の居場所になることにつながる手立てについて 「児童と関. わるときに実践していることの中で,どのようなことが,教室が児童の居場所. になることにつながると思うか」について,自由記述方式で回答を求めた。 . 結果と考察 . 「児童と関わるときに実践していることの中で,教室が居場所になることに. つながると思うものはあるか」という項目に対して,15 名全員が「はい」と回. 答した。 . 教室が児童の居場所になることにつながる手立てについては,KJ 法(川喜田 ,. 1967)を援用し,自由記述データを切片化し,42 項目が得られた。心理学を専. 攻する大学生 4 名と大学院生 1 名の評定者でカテゴリー分類を行った結果,「声. をかける」( 12 項目),「関わる場面を増やす」( 6 項目),「ほめる」( 8 項目),「児. 童間のつながりを強める」( 16 項目)の 4 カテゴリーに分類された。また,従. 来の居場所に関する知見を参考に,上記の 4 カテゴリーに属さない 5 項目を追. 201. 加した。 . 次に,これらの 47 項目で示された教師の手立てについて,その手立てを児童. が,どの程度経験しているかを測定する尺度を構成するため,ワーディング処. 理を行い,内容的妥当性を検討し,計 40 項目から成る学級生活経験予備尺度を. 構成した。 . 本 調 査 . 目的 . 教師が行っている具体的な手立ては,教室が児童の居場所になることに効果. があるのかを検討することを目的とする。 . 方法 . 調査時期および調査協力者 2018 年 11 月 27 日から 12 月 3 日にかけて,首. 都圏公立 A 小学校の 5 年生 82 名(男子 41 名,女子 41 名),6 年生 74 名(男子. 41 名,女子 33 名),合計 156 名を対象に質問紙調査を実施した。 . 手続き 調査の了承を得た A 小学校に質問紙を持参し, 5 年生 3 学級, 6 年. 生 3 学級の各学級の学級担任に質問紙調査の実施を依頼した。調査の趣旨およ. び倫理的な配慮に関して文書と口頭で十分に説明し,合意を得た児童を調査対. 象とした。調査は集団・無記名式,回答時間は 10 分から 15 分程度であった。 . 質問紙の構成 質問紙は以下の 3 点から構成された。 . 1.フェイスシート 調査協力者の学年と性別について記入を求めた。 . 2.学級生活経験予備尺度 予備調査で作成した学級生活経験予備尺度( 40. 項目)を使用した。この尺度は,学級担任の手立て(児童の視点から捉えた学. 級担任による関わりや活動(学級担任の手立てによって実現された状況))を児. 童が経験している程度を測定するものである。教示文は,「あなたは,今のクラ. スで,次のようなことをどのくらい経験していますか。あてはまる数字を 1 つ. 選んで,○をつけてください。」とした。各項目に対する回答は,「まったくな. い( 1 点)」,「ほとんどない( 2 点)」,「あまりない( 3 点)」,「ときどきある( 4. 点)」,「よくある( 5 点)」,「いつもある( 6 点)」の 6 件法で求めた。 . 3.居場所感尺度 西中( 2014)によって作成された小学生の居場所感を測. 定する尺度を使用した。この尺度は「被受容感(誰かが側にいてくれる気がす. るなど,他者を想定し受け入れてもらえている感覚を表す)」,「充実感(やる気. いっぱいだなど,明るい生き生きした感覚を表す)」,「自己存在感(自分はかけ. がえのない存在だなど,自分で自分を価値ある存在だと思える感覚を表す)」,. 「安心感(穏やかな気持ちだなど,ほっと安心できる感覚を表す)」の 4 つの下. 位尺度(全 18 項目)から構成されている。本研究では「今のクラス」における. それぞれの感覚の程度を 6 件法で回答を求めた。 . 結果と考察 . 学級生活経験尺度の因子パターンおよび信頼性の検討 . 学級生活経験予備尺度 40 項目から天井効果およびフロア効果が見られた 3. 項目を除外した 37 項目について,主因子法・プロマックス回転による因子分析. を行った。固有値 1.0 以上と因子の解釈可能性から 4 因子を抽出し,回転及び. 項目の取捨選択を繰り返し,その結果,4 因子 31 項目から成る因子パターンが. 得られた(Table 1)。因子間相関は .11 から .57 を示し,中程度以下であった。 . 202. Table 1 学級生活経験尺度の因子パターン . Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ. 38. 授業中、担任の先生が一人ずつ声をかけてくれる .83 ‐.20 .06 ‐.04. 23. 担任の先生が一人ずつ声をかけてくれる .78 ‐.03 ‐.13 ‐.02. 22. 担任の先生が一人ひとりのよいところをクラスのみんなに 伝える. .77 ‐.17 ‐.09 .29. 17. 落ち込んでいるときに、担任の先生がなぐさめてくれる .54 .10 .15 ‐.13. 30. 担任の先生に自分の考えを言えたことをほめられる .53 .28 ‐.01 ‐.15. 28. 担任の先生が話を聞く時間をつくってくれる .52 ‐.06 .13 ‐.03. 15. 授業中、担任の先生が自分の近くに来てくれる .47 .08 .16 ‐.00. 33. 担任の先生に自分のよさを具体的にほめられる .46 .19 .19 .08. 34. 授業中、担任の先生が目をあわせてくれる .44 .13 .15 ‐.02. 13. クラスで、友だちとほめ合う活動がある .44 .09 .02 ‐.05. 1. すすんで当番や係活動をしている ‐.14 .70 .09 ‐.06. 18. 授業中、グループでの話し合い活動がある ‐.08 .66 ‐.11 .17. 32. 担任の先生が笑顔で過ごしている .14 .60 ‐.12 ‐.07. 40. 自分が発表したことを担任の先生が黒板に書いてくれる .03 .58 .07 ‐.07. 6. 教室を出入りするときに、担任の先生から「行ってらっしゃ い」「おかえり」と言われる. .14 .56 ‐.26 .01. 4. グループ活動がある ‐.05 .55 ‐.08 .18. 16. クラスのみんなで一生懸命、係活動をしている ‐.05 .52 .19 .15. 2. 担任の先生が話しかけてくれる .37 .50 ‐.02 ‐.08. 36. 授業中、グループ活動の時間がある ‐.07 .48 ‐.05 .21. 39. クラスのみんなのために仕事をしている ‐.00 .47 .18 .02. 27. 朝、担任の先生から元気よくあいさつされる .24 .39 .13 .07. 12. 担任の先生が話を聞いてくれる .28 .39 ‐.13 ‐.12. 35. 担任の先生と外で遊ぶ .18 ‐.19 .83 .07. 20. 休み時間、担任の先生と一緒に遊ぶ .12 ‐.13 .82 .01. 8. 授業中、クラスのみんなのお手本として選ばれる .25 .21 .31 ‐.03. 25. 教室に置いてある本を読む ‐.07 .10 .30 .10. 24. クラスでお楽しみ会がある ‐.17 .02 .10 .57. 21. 係や学習班の中に、一人ずつ役割がある .36 ‐.06 ‐.09 .56. 5. 担任の先生がノートにシールやはんこをつけてくれる ‐.14 .24 .16 .40. 10. クラスのみんなで遊ぶ時間がある ‐.15 .12 .28 .38. 7. グループ活動のとき、一人ひとつの役割がある .22 .18 ‐.09 .32. Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ. 因子間相関 Ⅰ - .57 .43 .34. Ⅱ - .30 .49. Ⅲ - .11. Ⅳ -. 集団における役割付与. 因子. 学級担任による主体的関わり. 児童の主体性尊重. 学級担任との水平的関わり. 203. 第 1 因子は,「授業中,担任の先生が一人ずつ声をかけてくれる( .83)」,「担. 任の先生が一人ずつ声をかけてくれる( .78)」など,学級担任による児童への. 直接的な関わりを表す項目が高い負荷量を示していた。これらの関わりは学級. 担任が主体となって行われていることから,「学級担任による主体的関わり」と. 命名した。 . 第 2 因子は,「すすんで当番や係活動をしている( .70)」,「授業中,グループ. での話し合い活動がある( .66)」など,児童が主体となり,互いに関わり合っ. て取り組む活動を表す項目が高い負荷量を示していたことから,「児童の主体性. 尊重」と命名した。 . 第 3 因子は,「担任の先生と外で遊ぶ( .83)」,「休み時間,担任の先生と一緒. に遊ぶ( .82)」など,学級担任と児童が同じ立場になって関わる場面を表す項. 目が高い負荷量を示していたため,「学級担任との水平的関わり」と命名した。. 第 4 因子は,「クラスでお楽しみ会がある( .57)」,「係や学習班の中に,一人. ずつ役割がある( .56)」など,集団に所属し,その集団において児童個人に役. 割があることを表す項目が高い負荷量を示していたことから,「集団における役. 割付与」と命名した。 . 各因子に負荷量 .30 以上を示した項目のまとまりを下位尺度とし,4 下位尺度. (全 31 項目)から成る尺度を,学級生活経験尺度とした。各下位尺度について,. Cronbach のα係数を算出した結果,「学級担任による主体的関わり」が .88,「児. 童の主体性尊重」が .86,「学級担任との水平的関わり」が .72,「集団における. 役割付与」が .65 であった。「集団における役割付与」はやや低めではあったが,. 全体的に学級生活経験尺度は十分な内的整合性を備え,心理尺度として一定水. 準以上の信頼性(内的整合性)をもつことが確認された。 . 学級生活経験尺度および居場所感尺度の性差 . 学級生活経験尺度および居場所感尺度の性差を検討するために,両尺度の各. 下位尺度得点について t 検定を行った(Table 2)。その結果,学級生活経験尺度. の「児童の主体性尊重」において,男子よりも女子が有意に高い得点を示した。. このことから,男子よりも女子の方が,クラスで「児童の主体性尊重」を(主. 観的に)経験する程度が高いことが示唆された。居場所感尺度については,い. ずれの下位尺度も有意な性差が認められなかった。 . Table 2 学級生活経験尺度および居場所感尺度の性差 . M SD M SD. 学級生活経験尺度 学級担任による主体的関わり 46.00 10.26 46.62 8.34 ‐0.41. 児童の主体性尊重 53.96 9.08 57.50 6.36 ‐2.84 **. 学級担任との水平的関わり 13.60 3.95 13.50 3.34 0.17 集団における役割付与 21.82 3.65 22.22 3.49 ‐0.70 居場所感尺度 被受容感 26.07 6.67 27.23 5.01 ‐1.23 充実感 17.74 4.92 17.72 4.11 0.04 自己存在感 17.00 5.02 17.04 4.73 ‐0.05 安心感 13.40 3.75 13.85 3.29 ‐0.79. 男子(n=82) 女子(n=74) t. **p<.01 . 204. 学級生活経験尺度と居場所感尺度の相関分析 . 学級生活経験尺度と居場所感尺度の関連を検討するために,回答者全体,男. 子,女子ごとに各下位尺度間の相関分析を行った(Table 3)。その結果,回答. 者全体ではいずれも有意な正の相関が示された。男子では,学級生活経験尺度. の「集団における役割付与」と居場所感尺度の「自己存在感」の相関を除き,. 有意な正の相関が示された。女子では,学級生活経験尺度の「学級担任との水. 平的関わり」と居場所感の「被受容感」「自己存在感」「安心感」の相関を除き,. 有意な正の相関が示された。 . Table 3 学級生活経験尺度と居場所感尺度の相関分析の結果 . 被受容感 充実感 自己存在感 安心感. 回答者全体. 学級担任による主体的関わり .49 *** .52 *** .42 *** .43 ***. 児童の主体性尊重 .59 *** .57 *** .45 *** .50 ***. 学級担任との水平的関わり .32 *** .40 *** .32 *** .37 ***. 集団における役割付与 .28 *** .34 *** .20 * .29 ***. 男子. 学級担任による主体的関わり .51 *** .52 *** .39 *** .46 ***. 児童の主体性尊重 .59 *** .59 *** .51 *** .54 ***. 学級担任との水平的関わり .42 *** .47 *** .42 *** .48 ***. 集団における役割付与 .24 * .27 * .10 .28 *. 女子. 学級担任による主体的関わり .47 *** .52 *** .46 *** .40 ***. 児童の主体性尊重 .58 *** .58 *** .40 *** .44 ***. 学級担任との水平的関わり .17 .28 * .18 .20. 集団における役割付与 .34 ** .45 *** .32 ** .29 *. 学級生活経験尺度 居場所感尺度. *p<.05, * *p<.01, * * *p<.001. 学級生活経験尺度と居場所感尺度の重回帰分析 . 学校生活経験尺度を独立変数,居場所感尺度を従属変数とした重回帰分析(強. 制投入法)を回答者全体,男子,女子ごとに行った(Table 4 および Figure 1 か. ら 3)。多重共線性の問題がないことは確認されている。 . 回答者全体では,学校生活経験尺度の「学級担任による主体的関わり」から. 居場所感尺度の「被受容感」「充実感」「自己存在感」への標準偏回帰係数は有. 意傾向の正の値であった。学校生活経験尺度の「児童の主体性尊重」から居場. 所感尺度の「被受容感」「充実感」「自己存在感」「安心感」への標準偏回帰係数. は有意な正の値であった。学校生活経験尺度の「学級担任との水平的関わり」. から居場所感尺度の「充実感」「自己存在感」「安心感」への標準偏回帰係数は. 有意もしくは有意傾向の正の値であった。 . これらのことから,回答者全体では,「学級担任による主体的関わり」は「被. 受容感」「充実感」「自己存在感」を高め,「児童の主体性尊重」は「被受容感」. 「充実感」「自己存在感」「安心感」を高め,「学級担任との水平的関わり」は「充. 205. 実感」「自己存在感」「安心感」を高める可能性が示唆された。 . 次に男子では,学校生活経験尺度の「児童の主体性尊重」から居場所感尺度. の「被受容感」「充実感」「自己存在感」「安心感」への標準偏回帰係数は有意な. 正の値であった。学校生活経験尺度の「学級担任との水平的関わり」から居場. 所感尺度の「被受容感」「充実感」「自己存在感」「安心感」への標準偏回帰係数. は有意な正の値であった。学校生活経験尺度の「集団における役割付与」から. 居場所感尺度の「自己存在感」への標準偏回帰係数は有意な負の値であった。 . これらのことから,男子では,「児童の主体性尊重」と「学級担任との水平的. 関わり」は「被受容感」「充実感」「自己存在感」「安心感」を高める可能性が示. 唆された。その一方で,「集団における役割付与」は「自己存在感」を低める可. 能性が示唆された。 . 次に女子では,学校生活経験尺度の「学級担任による主体的関わり」から居. 場所感尺度の「被受容感」「充実感」「自己存在感」「安心感」への標準偏回帰係. 数は有意な正の値であった。学校生活経験尺度の「児童の主体性尊重」から居. 場所感尺度の「被受容感」「充実感」「安心感」への標準偏回帰係数は有意な正. の値であった。 . これらのことから,女子では,「学級担任による主体的関わり」は「被受容感」. 「充実感」「自己存在感」「安心感」を高め,「児童の主体性尊重」は「被受容感」. 「充実感」「安心感」を高める可能性が示唆された。 . Table 4 学級生活経験尺度と居場所感尺度の重回帰分析の結果 . 被受容感 充実感 自己存在感 安心感. 学級担任による主体的関わり .17 † .18 † .18 † .10. 児童の主体性尊重 .51 *** .41 *** .36 *** .39 ***. 学級担任との水平的関わり .10 .17 † .14 † .19 *. 集団における役割付与 ‐.11 ‐.02 ‐.13 ‐.03. R 2 .39 *** .39 *** .26 *** .30 ***. 学級担任による主体的関わり .07 .05 ‐.07 ‐.08. 児童の主体性尊重 .55 *** .52 *** .61 *** .50 **. 学級担任との水平的関わり .22 * .28 ** .33 ** .35 **. 集団における役割付与 ‐.18 ‐.15 ‐.31 ** ‐.07. R 2 .41 *** .43 *** .39 *** .38 ***. 学級担任による主体的関わり .27 * .28 * .36 ** .24 †. 児童の主体性尊重 .48 *** .37 ** .19 .31 *. 学級担任との水平的関わり ‐.07 .04 ‐.04 .01. 集団における役割付与 ‐.20 .12 .08 .02. R 2 .39 *** .43 *** .26 *** .24 **. 学級生活経験尺度 居場所感尺度. 回答者全体. 男子. 女子. † p<.10, *p<.05, * *p<.01, * * *p<.001 . 206. †p<.10 *p<.05 * * *p<.001 . Figure 1 回答者全体のパス図 . *p<.05 * *p<.01 * * *p<.001. Figure 2 男子のパス図 . †p<.10 *p<.05 * *p<.01 * * *p<.001 . Figure 3 女子のパス図 . 207. まとめと今後の課題 . 本研究の主な結果と,その結果に基づく,教師(学級担任)に向けた提言は,. 以下の 4 点である。 . 第 1 に,「児童の主体性尊重」は,児童の居場所感をかなり高める可能性が示. 唆された。そのため,教室が児童にとって居場所になるために,学級担任は授. 業中にグループ活動を取り入れたり,児童が自ら係活動に取り組むことを支援. したりするなどして,児童の主体性を十分に尊重していく必要がある。 . 第 2 に,「集団における役割付与」は,居場所感を高めず,男子に至っては,. 「自己存在感」を低める可能性も示唆された。そのため,児童に役割を与える. 際には,学級担任が児童に一方的に役割を課すのではなく,児童がその役割を. 納得できるよう働きかけ,児童が主体的に取り組めるよう支援することが求め. られる。 . 第 3 に,「学級担任との水平的関わり」は,男子において居場所感を高める可. 能性が示唆された。そのため,教室が男子にとって居場所になるために,学級. 担任は,児童と一緒に遊ぶなどして,学級担任と児童が同じ立場になって関わ. る必要がある。 . 第 4 に,「学級担任による主体的関わり」は,女子において居場所感を高める. 可能性が示唆された。そのため,教室が女子にとって居場所になるために,学. 級担任は,児童一人ひとりに声をかけたり,ほめたりするなどして,児童と直. 接的に関わる必要がある。 . なお,本研究は今回特定の小学校を調査対象とし,対象学年については高学. 年に限定した。そのため小学校の結果として一般化することに限界がある。今. 後は他の小学校や中学年・低学年に対象に広げ,分析していくことが望まれる。. また,今回は横断的研究を行ったが,学級担任の手立てによって,児童の居場. 所感がどのように変化するのか,縦断的に研究することが求められる。このよ. うな研究を実施することによって,教室が児童にとっての居場所になるための. 効果的な手立てを更に明確にすることができる。 . 引 用 文 献 . 川喜田 二郎( 1967).発想法―創造性開発のために― 中央公論社 . 木下 智彰 (2013).児童の心の居場所をつくる教育実践の検討 奈良教育大学教職. 大学院研究紀要(学校教育実践研究), 5, 31-40. . 国立教育政策研究所 (2012).生徒指導リーフ「『絆づくり』と『居場所づくり』」 . 国立教育政策研究所 (2015).生徒指導リーフ「特別活動と生徒指導」 . 文部省 (1992).登校拒否(不登校)問題について―児童生徒の「心の居場所」づ. くりを目指して― 学校不適応対策調査研究協力者会議 . 文部科学省 (2003).今後の不登校への対応の在り方について(報告) 不登校問題. に関する調査研究協力者会議 . 文部科学省 (2017).小学校学習指導要領(平成 29 年告示) . 長峰 伸治・澤 祐紀恵 (2009).小学校の担任教師の指導行動・態度と児童の学級. 適応感の関連について 金沢大学人間社会学域学校教育学類紀要, 1, 53-67.. 西中 華子 (2014).心理学的観点および学校教育的観点から検討した小学生の居場. 所感―小学生の居場所感の構造と学年差および性差の検討― 発達心理. 学研究, 25, 466-476. . 角南 なおみ (2013).子どもに肯定的変化を促す教師の関わりの特徴―修正版グ. ラウンデッド・セオリー・アプローチによる仮説モデルの生成― 教育心理. 学研究, 61, 323-339. . 208

Table 1  学 級 生 活 経 験 尺 度 の 因 子 パ タ ー ン   Ⅰ   Ⅱ   Ⅲ   Ⅳ 38. 授業中、担任の先生が一人ずつ声をかけてくれる         .83 ‐.20     .06 ‐.04 23

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