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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博士(地球環境科学)   島村道代

    学 位 論 文 題 名

Control factors of coral skeletal stable isotopic compositions     ●

    and the application for monsoon proxleS

  ( サ ン ゴ 骨 格 安 定 同 位 体 組 成 の 制 御 要 因 と モン ス ーン 指 標 への 応 用 )

学位論文内容の要旨

  熱帯〜 亜熱帯浅 海域に生育 する造礁 性サンゴ は,生存 期間が長く,年間の骨格成長Iが大 きいた め、過去 の環境記録 を連続的かつ高い時間解像度で有すると考えられている。特に骨 格の炭 酸カルシ ウムを構成 する酸素 同位体比 (以下,6王80c)は,形成時の水温および海水 の酸素 同位体比 (塩分と正 相関)によって決定されるため,サンゴの生育地域を問わず,観 測記録 のない過 去の水温や 塩分の復 元が可能 であると 言える‐ しかしサンゴ骨格6180cを用 いた長 期古環境 復元の現状 は,水温もしくは塩分どちらか―方の変動が卓越する熱帯域に研 究が集 中し,水 温・塩分が ともに変動する亜熱帯やモンスーン海域での復元例は極端に少な い.こ の原因を 解く鍵とし て,これまでに報告されてきた,水温・塩分の環境記録がある現 世サン ゴ骨格6180c研 究に共通す る地域特 性を整理 してみる .すると,熱帯域では水温もし くは塩分の年間変動が亜熱帯に比ベ小さいにも関わらず,骨格の6 ̄8く冫c変動が明瞭に現れか つ年間 変動量も 比較的大き いのに対し,亜熱帯やモンス―ン海域では水温・塩分の年間変動 が大き いのにも 関わらず, 骨格の6180c年 間変動が 比較的小 さくなる傾向が認められる.つ まり, 熱帯域以 外では何ら かの原因で6 ̄80c変動シグナルが弱められるため,解釈が困難に なると 言える. ―方6 ̄80cと同 時に分析される,骨格の炭酸カルシウムを構成する炭素の同 位体比(以下,6 ℃c)には,複数の制御要因があるとされ;未だ制御要因と6 ̄℃cとの定量 的関係 が明らかになっていない.このため,―度の分析で6 ̄ Oc.613Ccの2種類のデータが 得られ るにも関わらず,制御要因が未解明な6 ̄ Ccデータは,環境復元に利用されずそのま ま放置 されるの が現状であ る.そこで本研究では,サンゴを用いた古環境復元の空白域であ る亜熱 帯モンス ―ン地域の 南シナ海から採取したサンゴ骨格を利用して,61 Oc変動シグナ ルと環 境との関 係および6 Ccの主た る制御要 因の解明 と,そこから得られた知見を基に 6 ̄80c.6 ̄3Ccからモンスーン指標を抽出することを目的とした・

  6180c変動 シグナル 制御要因の 解明のた め約1年に わたり, 研究海域 である南シナ海北部 海南 島東岸のShalao地区沖合で 水温・塩 分を約20分 間隔で自 動現場観 測しこれを記録,海

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水酸素 同位体比用 水試料を 約月1回採取した.さらにこの期間に成長したサンゴ骨格の6180c を高時 間分解能分 析し,直 接の制御要因である水温・塩分との詳細な対比を行った‐その結 果,6180cは 大局的には 水温と塩 分の変動 に対応す るため,この海域で見られる冬モンス―

ンによ る水温低下 パターン(12‑2月)と, 夏モンス ーンによ る降水の 変動パター ン(6月)

を示していた.しかし大局的な変動パターンは示すものの,石灰化に適さない条件(水温22℃ 以下, 塩分27以下) 下では骨 格の形成 自体が物 理的に停 止するた め,従来記 録の欠損 が無 くほぼ完全に連続的であると考えられてきた6 ̄8・ocにも,記録が残らない条件があることが 明らかとなった.さらに,6 ̄ 眦実測値と水温・塩分の観測記録の詳細な対比は,月程度の 間隔で 骨格に時系 列を入れ ることも可能にした.その結果,これまでほぼ一定と考えられて きたサ ンゴ骨格の 成長速度 は,水温や塩分の影響を受け,季節によりかなり大きく変わるこ とが示された。

  これら 水温や塩分 の大きな 変動に由来する,6 ̄ Oc記録の不連続や骨格成長Iの季節変動 は6180cの変 動に直接影 響を与え ることか ら,熱帯 以外の地域でシグナルを弱めている原因 である と考えられ る.また シグナルの歪みからも明らかなように,本研究海域で得られるサ ンゴ骨 格の6180cをその まま水温 や塩分の 復元に用 いると,誤った環境条件を復元すること にもな る.このよ うに,6 ̄80c記録は場合により不完全であるという全く新しい知見は,古 環 境 復 元 が 難 し い 海 域 で の 分 析 結 果 の 解 釈 に 新 た な 道 筋 を も た ら し た と 言 え る .

  6 ̄3Ccの 制御要因 解明では,前述の6 ̄80cの検討で用いたサンゴ骨格について検討を行っ た. このサン ゴでは既に 詳細な時系列が確立されているため,主要な制御要因であるとされ る海 水中の全 炭酸の炭素 同位体比 と光量が613Ccに与える 影響を評価した.海水中の全炭酸 の炭 素同位体 比について は,前述 の海水の 酸素同位 体比用水試料と同じく,約月1回の割合 で採取し,光量に関してはKubota et al. (2002)で報告された該当地域の月平均海面日射Iデ

―夕 を用いた .海水中の 全炭酸の 炭素同位 体比と613Ccを 対比した結果,両者の変動幅およ び変動パタ―ンは大きく異なり,相関係数も非常に低かった(R=O.16).従って,海水中の 全炭酸の炭素同位体比は6 3Cc主たる制御要因ではないと結諭づけられる.ー方,6 ̄3Ccと海 面日 射Iとの間 には非常に 高い相関(賠O.75)があり,変動パターンもほぼ―致することか ら613Ccは主に光Iにより制御されていると考えるのが妥当である.

  618・く冫cおよび613Ccの制御要因が明らかとなったため,環境記録の得られる1990年代に関 して骨 格同位体 比の分析を行い,環境記録と対比を行った.前述の詳細分析の結果により,

本研究 海域から 得られたサ ンゴ骨格6180c変動から,直接水温や塩分を復元することはでき ないが,6180c の変動パターンにはモンスーンによる季節変動パターンが保存されているた め,こ れを時系 列決定に利 用した. ―方,613Ccは主に光量によって制御されていることか ら ,海 面 日射Iとの 関係を検 討した. その結果 ,6月の613Ccは夏 モンスー ン中の降 水休止 期間の 日射Iを反 映し,12〜2月 の6 ̄3Ccは冬 モンスー ンの北東 風流入に 伴う層雲形成で,

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日射量が低下する様子を反映していた.特に冬モンスーン期間の北東風は,その風が強いほ ど明らかに層雲の形成を促し,日射量を低下させる傾向が見られた.また,この北東風強度 は,東南アジアにおける冬モンスーン強度の指標としてそのまま用いられることも多いこと から,サンゴ骨格に記録された12〜2月の613Ccは,直接冬モンスーン強度を表していると 言える.以上をまとめると,本研究海域では6月の613Ccは夏モンス―ン期間の降水小休止 期の海面日射Iを復元可能であり,12〜2月の613Ccは冬モンスーンの強度を表す指標とし て用いることが可能である.さらに,これらのモンス―ン指標を利用して過去のモンス―ン を復元することによって,この変動と他の気候変動現象との関係を解明することができると 期待される.

(4)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査 副査 副査 副査

教授 名誉教授 教授 教授 助 教 授 助 教 授 助 教 授

川 雅 男 場 忠 道 本 敦 子 野 有 五 尾 誠 也 本 正 伸 田 和 弘

    学位 論文題名

Control factors of coral skeletal stable isotopic compositions     ●

    and the application for monsoon proxies

  (サ ンゴ骨格安 定同位体組 成の制御要因とモンスーン指標への応用)

  造礁性サンゴは,生存期間が長く,.年間の骨格成長量が大きいため、過去の環 境記録を連続的かつ高い時間解像度で有すると考えられている。特に骨格の炭酸 カルシウムを構成する酸素同位体比(以下,8180c)は,形成時の水温および海水 の酸素同位体比(塩分と正相関)によって決定されるため,サンゴの生育地域を 問わず,観測記録のない過去の水温や塩分の復元が可能である。しかしサンゴ骨 格8180cを用いた古環境復元は,水温もしくは塩分の変動が卓越する熱帯域で研究 されることが多く,水温・塩分がともに変動する亜熱帯やモンスーン海域での復 元例は少ない。そこで本研究では,水温・塩分の環境記録がある現世サンゴ骨格 8180c研究に共通する熱帯域では、水温もしくは塩分の年間変動が亜熱帯に比べ小 さいにも関わらず,骨格の8180c変動が明瞭であり、年間変動量も比較的大きいの に,亜熱帯やモンスーン海域では水温・塩分の年間変動が大きく,骨格の8180c年 間変動が比較的小さくなる傾向があるので,熱帯域以外では8180c変動シグナルが 弱められる要因があると推定した。また8180cと同時に分析される,骨格の炭酸カ ルシウムを構成する炭素の同位体比(以下,813Cc)は,複数の制御要因があって 未だ813Ccと環境要因との関係が明らかにをっていない。このため,813Ccにっい ては,環境復元に充分利用されずにきた。本研究では,8180c変動シグナルと環境 との関係、および813Ccの主たる制御要因にっいてより詳細な研究を行うことによ り、8180c.813Ccの同時解析方法を確立すること、およびその方法にもとづぃて亜 熱帯モンスーン地域の解析指標を得ることを目的として行った。サンゴ試料iま、

過 去 の 研 究 が 限 ら れ て い る 南 シ ナ 海 の 海 南 島 よ り 採 取 し た 。   研究海域である南シナ海北部海南島東岸のShalao沖合の観測点で水温・塩分を

南 大 杉 小 長 山 豊

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約1年 に わ た り 自 動現 場観 測し 、8180w分 析用 海水 を月1回採 取し た。 さら にこ の 期間 に成 長した サン ゴ骨 格の8180cを 高分解能で分析し,両者の対比を行った。そ の結 果,8180cは大 局的 には 水温 と塩 分の変動に対応するものの、骨格の形成に適 さな いと される 条件 下( 水温22℃ 以下 ,塩 分27以下 )で はサ ンゴ に記録が残らな い時 期が あるこ とが 明ら かと なっ た。 これ はサ ンゴ 記録 が連 続的 であると考えら れて きた 従来の 考え 方を 覆す 発見 であ った 。こ の結 果を うけ 、記 録欠損時期を考 慮し て復 元する こと によ り、 この 海域 で見 られ る冬 モン スー ンに よる水温低下パ ターン(12丶一丶2月)と,夏モンスーンによる降水の休止に伴う変動パターン(6月)

によ って 特徴付 けら れる この 海域 の環 境変 化を ,よ り現 実的 に復 元することがで き , 骨格 に1月 程 度の 間隔 で時 系列 スケ ール を入 れるこ とが 可能 とな った 。水 温 や塩 分の 大きな 変動 に由 来す る8180c記録の不連続や骨格成長量の季節変動は、亜 熱帯 ・モ ンスー ン海 域の サン ゴ記 録パ ター ンに 広く 影響 を与 えて いる可能性があ ると 指摘 した。 ここ で見 いだ した8180c記録の限界は、同様の環境条件下にある海 域 で のサ ン ゴ 骨 格 の 分 析 結 果 の 解 釈 に 新 た な 考 慮を加 える 必要 性を 提起 した 。   8180cの 研究 で詳 細な 時間 スケ ール を与え られ た同 一サ ンゴ 骨格 にっいて813Cc の変 化要 因の研 究を 行っ た。 主要 な制 御要 因と 考え られ てい る海 水中の全炭酸の 813Cと海 表面に達する光量について主に検討した。海水中の全炭酸の813Cは,前述 の海 水と 同じ水試料を分析し,約月1回のデータを得た。光量に関してはKubota et al.(2002)で 報 告 され た該 当地 域の 月平 均海 面日 射量デ ータ を用 いた 。海 水中 の 全炭 酸の 炭素同 位体 比と813Ccを 対比 した結果,両者の変動幅およぴ変動パターン は大 きく 異なり,相関係数も非常に低かった(R〓0.16)。従って,海水中の全炭 酸の813Ccは主たる制御要因ではないと結論づけた。一方,81℃cと海面日射量との 間に は非 常に高い相関(R=0.75)があり,変動パターンもほば一致することから 813Ccは主に光量により制御されていると結論づけた。

  8180cお よび813Ccの変動要因が明らかとなったため,実測記録との比較が可能な 1990年代 の骨格 同位 体比 の分 析を 行い ,気 象要 素と の比 較を 行っ た。前述の詳細 分析 の結 果によ り, 本研 究海 域か ら得 られたサンゴ骨格8180cの変動パターンには モン スー ンによ る季 節変 動パ ター ンが 保存 され てい るた め, これ を時系列決定に 利用 した 。ー方 ,813Ccは主 に光 量に よって制御されていることから,海面日射量 との 関係 を検討 した 。そ の結 果,6月 の813Ccは 夏モ ンス ーン 中の 降水休止期間の 日射量を反映し,12丶一‑2月の813Ccは冬モンスーンの北東風流入に伴う層雲形成で,

日射 量が 低下す る様 子を 反映 して いた 。特 に冬 モン スー ン期 間の 北東風は,その 風が 強い ほど明 らか に層 雲の 形成 を促 し, 日射 量を 低下 させ る傾 向が見られた。

また ,こ の北東 風強 度は ,東 南ア ジア にお ける 冬モ ンス ーン 強度 の指標としてそ のま ま用 いられ るこ とも 多い こと から ,サ ンゴ 骨格 に記 録さ れた12ー2月の813Cc は, 直接 冬モン スー ン強 度を 表じ てい る。 この 結果 から サン ゴ骨 格の6月の813Cc は夏モンスーン期間の降水小休止期の海面日射量を復元可能であり,12丶一丶2月の 61℃ cは 冬 モ ン ス ー ン の 強 度 を 表 す 指 標 と し て 用 い る こ と を 示 し た 。   本 研究 で示した解析方法をさらに古い時代のサンゴ試料に適用することにより,

過去 のモ ンスー ンの 強度 や変 化を 復元 し, 他の 気候 変動 現象 との 関係をより詳し く解明することができると期待される。

  審 査員 一同は 、こ の成 果を 高く 評価 し、 また 申請 者が 大学 院博 士過程において 誠実 かつ 熱心に 研究 して きた 実績 と修 得し た単 位数 とを 考慮 した 結果、申請者が 博士 (地 球環境 科学 )の 学位 を受 ける のに 充分 な資 格を 有す るも のと判定した。

1559 ‑

参照

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