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博 士 ( 文 学 ) 三 重 野    卓

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Academic year: 2021

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博 士 ( 文 学 ) 三 重 野    卓

学 位 論 文 題 名

福祉政策の社会学一共生システム論への計量分析 学位論文内容の要旨

  本 論 文 は 、 福 祉 社 会 研 究 、 「 生 活 の 質 」 (QOL) 研 究 、 福 祉 政 策 科学 、 共 生社 会 、 社 会 指 標、 「 社会 の 質 」(QOS)、 社 会 計画 、 福祉 国 家 論な ど を 含む 福 祉社 会 学 分野 の 体 系 的 な研 究 成果 で あ る。

  第I部 「 高 度 産 業 社 会 と 福 祉 政 策 」 で は 、序 章 の問 題 意 識を 受 けた 第 .1章 「社 会 変 動 の 現 在と 福 祉政 策 」 が総 論 とし て 扱 われ 、 福 祉国 家 論を 取 りこん だ「福祉 サービス」

供 給 主 体 論 が 展 開 さ れ た 。 第2章 「 福 祉 政 策 と 価 値 意 識 」 で は ` 価 値 意 識の 分 析 図式 を ま と め た う え で 、 い く っ か の 「 国 民 生 活 意 識 」 調 査 結 果 が 数 量 化m類 の手 法 や ロジ ス テ ィ ック 回 帰分 析 法 によ っ て細 か く 整理 さ れ た。

  こ れ ま で 氏 が か か わ っ て 独 自 に 収 集 され た 四つ の 社 会デ ー タ と意 識 調査 デ ー タを 用 い た 多 変量 解 析の 結 果 とし て 、「 福 祉 政策 を め ぐる 政 策意 識 、共生 意識、『 生活の質』

た ど の 関 連 図 式 、 そ れ ら の 規 定 要 因 に っ い て の 知 見 」 が 得 ら れ た 。   具 体 的 に は 、 現 代 社 会 に お け る 平 等 感や 格 差拡 大 意 識に っ い ての 分 析が 進 め られ 、 職 業 、 年 収 、 学 歴 と い っ た 階 層 要 因 、 年 齢な ど が規 定 要 因と し て重 要 で あり 、 と りわ け 、 非 正 規 雇 用 者 の 不 平 等 感 の 存 在 が 判 明し た 。ま た 、 福祉 政 策領 域 た とえ ば 子 育て 支 援 、 高 齢 者 対 策 、 失 業 者 対 策 な ど へ の 政府 に 対す る 国 民の 選 好の 構 造 、福 祉 政 策に 対 す る 価値 意 識な ど が 明ら か にさ れ た 。

  第u部 「 目 標 概 念 と し て の 生 活 の 把 握 の ため に 」第3章 「 『 生活 の 質』 、 社 会指 標 、 主 観 指 標 」 で は 、 社 会 指 標 論 の 歴 史 的 展 開と 概 念の 精 緻 化が 精 力的 に 行 われ て い る。

第4章 「 将 来 の 生 活 を め ぐ る 意 識 」 で は 、 生 活 満 足 論 、 リ ス ク 論 、 ア ノ ミー 論 な どに 基 づ き 、現 代 の不 安 意 識の 多 次元 的 な 解明 が な され た 。

  第5章 「『 生 命の 質 』 と生 命 倫理 」では高 齢者と高 齢社会に 視点を置 き、生命 、身体、

社 会 の 関連 で 、「 生 命 の質 」 が社 会 的 背景 と と もに 特 に医 療 福祉面 からも論 じられた。

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併行して氏 は、初期か らの研究領 域である社会指標についての反省を加えて、氏が参 加された内閣府における三つの客観的な指標体系について見直して、「暮らしの改革指 数」では、 指標と測定 すべき概念 の対応にとりわけ注目し、指標の妥当性を確保しよ うとした。

   その延長線 上に、高齢 社会対策大 綱のために高齢者類型を意図した「高齢社会の指 標体系」を 構成し、共 生の観点か ら、高齢者分野、青少年分野、障害者分野を横断す る「共生社会の指標体系」も構築した。これからは、氏カミ 197 0 年前後に隆盛した社会 指標運動の 反省に立っ て、90 年代か らの学際的な政策評価や行政評価を取り込んだ独 自の社会学的な政策科学志向をうかがうことができる。

   第6 章 「包括的な『生活の質』の定式化ヘ向けて」では、アマルティア・センの「ひ とのケイパビリティ」論に準拠して、ウェルビーイングの構造が、「ひとの潜在能力」

と社会的資 源との組み 合わせを軸 として、独自にモデル化されている。ごれを受けた

「補 論 政策 評 価の 論 理と方法」 では、文字 通り政策評 価の仕方が 、インプッ トとア ウトプットの流れの中で検討された。

   第ni 部「関係 性をめぐる 様々な論理 」の第7 章「共生的 関係、社会 関係資本、社会 的包摂」で は「共生」 と「共生シ ステム」をめぐり、その定義と指標が幅広く論じら れている。 この中心は ブルデュー 、コールマン、パットナム以来のソーシャル・キャ ピタル論に 置かれてい る。同時に 「排除と包摂」のメカニズムを活用して、連帯や格 差が取り上 げられた。 注目したい のは、格差の中に共生と競争を並存させる論理が提 示されたところである。

   第8 章 「共生社会 の指標体系 とモデル化 」では、そ の形成促進 の立場を表明して、

現状認識に 有効な指標 体系が一覧 表の形で示された。そして、それを使った全国調査 結果が多変 量解析の手 法によって まとめられている。共生の軸をなす他人のカ、助け 合い、愛着 感などが社 会学の手法 によって変数化されたうえで、それぞれに結びっい ていることが示された。

   第1V 部「福祉 社会論の再 構築ヘ向け て」に含ま れる第9 章「社会構 想としての『社

会の質』」 と第10 章「福 祉国家、福 祉社会、共生社会」ならびに終章「公共政策のた

め の社 会 学」 で は、 OECD の 「社 会 支出 デ ータ 」 に着 目 し、 グ ロー バ ル 化や 高 齢化

との関係を 考慮に入れ ながら解釈 し、クラスター分析により、先進諸国のクラスター

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化を行った。

   総合的結諭として、日本はアメリカ合衆国などの自由主義型福祉国家に近く、国際 的には、格差を維持したまま、それぞれのクラスターの中で、収斂していることが判 明した。

   表現形式は異なるものの、第 IV 部は総合的な福祉社会研究における成果の到達点を 要約して、本人だけではなく同じ分野の研究を志す次世代今後の研究課題をわかりや すく論じたものである。

  30 年を超える着実な研究成果が体系化され、時代に適合した方法と領域がこのよう ぬ形でまとめられたことは、福祉社会学の水準を高めるものであると判断される。

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学位論文審査の要旨 主査    教 授    金子    勇 副査   准教授   平澤和司 副査    教 授    菱谷晋介

学 位 論 文 題 名

福祉政策の社会学ー共生システム論への計量分析

  本 論 文 は 氏 の 総 合 福 祉 社 会 学 に おけ る 集大 成 を なし 、 こ の30年間 と り わけ 直 近の10 年 間 にわ た る 氏の 研 究を 総 括 する も の であ る 。氏 の 単 著には『 福祉と社会 計画の理 論』

( 白桃書房、1984年)、『 「生活の質」の意味』(白桃書房、1990年)、『「生活の質」と 共 生 』 ( 白 桃 書 房 、2004年 ) の3冊 があ り 、本 論 文 は4冊目 の 単著 で あ る。 本 論 文に よ っ て 、 福 祉 か ら 「 生 活 の 質 」を 経 由 して の 「共 生 」 に広 が って き た 研究 テ ー マを 包 括 す る著作が誕 生したこ とになる 。

  本論 文 は4部 構成 で あり 、 そ れぞ れ 相 互に 関 連す る10章 と 補論 か ら 成り 立 っ てい る。

具 体 的 に は 、 第I部 「 高 度 産 業 社会 と 福 祉政 策 」、 第u部 「 目標 概 念と し て の生 活 の把 握 の ため に 」 、第 皿 部「 関 係 性を め ぐ る様 々 な論 理 」 、第IV部「 福祉社会論 の再構築 ヘ 向 け て 」 に な る 。 そ こ で は 、総 論 と して 、 社会 科 学 が科 学 とし て 成 り立 っ た めの 条 件 で あ る 理 論 の 構 築 、 実 証 的 分析 、 規 範科 学 ない し は 政策 科 学と し て の提 言 が なさ れ て い る 。 審 査 で は 、 ま ず こ の よ う を4部 構 成 を 行 っ て の 福 祉 社会 学 の 体系 化 に つい て 議 論 が交わされ 、全体と して評価 された。

  本 論 文 の 理 論 的 背 景 に は 、 福 祉 ニー ズ 論、 欲 求 論、 リ ス ク論 、 アマ ル テ ィア ・ セン の ケ イ パ ビ リ テ ィ の 理 論 、 さら に シ ステ ム 論、 エ ス ピン ・ アン デ ル セン の 自 由主 義 型 福 祉 国 家 、 大 陸 型 福 祉 国 家 、社 会 民 主主 義 型福 祉 国 家に 依 拠す る レ ジー ム 論 など が あ る 。 長 年 の 研 鑽 に よ り 、 そ れら を 包 括し た 理論 的 な 展開 が 至る と こ ろで 読 み 取れ る 。 そ の 計 量 的 手 法 を 含 む 理 論 研究 の 水 準は 高 く、 最 終 的に は 「生 活 の 質」 論 に 焦点 が 合 わ さ れて い る 。「 生 活の 質 」 論は 最 近 の医 学 や看 護 学 でも活用 されており 、新しく 「生 命 の 質 」 と し て 注 目 さ れ は じめ て い るが 、 元来 は 社 会科 学 的な 概 念 であ り 、 氏は30年     ‑ 89―

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前 からその研究に取り組んできた。これらの研究分野については日本国内ではほとん ど 事例 がない ので 、本 論文 で展開 され た幅 広い学 識や その 独創 性も称賛に値する。

   また、世界のグローバル化と先進社会のアノミー状況・が強まる中で、日本だけでは なくヨーロッパやアメリカでも注目されているソーシャル・キャピタル、社会的排除、

社 会的包摂、社会的凝集性などの概念も利用して、福祉社会論が展開されている。そ し て、それらを多様性や異質性を基盤にして、協働し、葛藤し、自省しながら共生す るという理論構築が試みられる。それは本論文の観点に、「生活の質」を超えた「社会 の 質」 (oos ) につい ての 多角 的検 討があるところからもうかがえる。現実認識を科 学 的に追求する過程において、徐々にテーマを拡大していく姿勢は、後続の若い世代 にとっても学ぶところが大きいと審査では判断した。

     「社会の質」は、これまでの社会的包摂や社会的凝集性とともに、社会・経済的保 障 、社会的エンパワーメントを含む総合的で包括的概念であり、氏は「社会の質」理 論の構築に向けて積極的に取り組まれている。

   研究成果としては、本論文の大きな特徴に、独自の工夫による研究成果のモデル化 があげられる。「社会の質」と「生活の質」をめぐるモデル、「共生社会と福祉社会」

関 連のモデルをはじめ随所に提示された複数のモデルは、30 年間にわたり福祉社会研 究に関連した4 冊の単著を刊行された氏にふさわしい理論的総括でもあ る。これらは 氏 の研究成果を鮮明にしており、次世代の研究者にとっては新しい研究の出発点をな すものでもある。

   以上の成果を総合的にみて、本書は学位請求論文として学術的に集大成された高水 準 にあると審査委員会では判断し、博士(文学)にふさわしいという結論に至った。

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参照

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