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博 士 学 位 論 文

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Academic year: 2021

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(1)

(学)

博 士 学 位 論 文

論文内容の要 旨

及 び審査結果 の要 旨

11号 (平29年 4月 )

長 崎 純 心 大 学

(2)

本号 は学位規則 (昭28年4月 1日文部省令第9号)第 8条

よる公表 を目的 として、平成29年 3月18日 に本学 において博士の 学位 を授与 した者の論文内容の要旨及び論文審査の結果の要旨を 収録 した もの であ る。

学位番号 に付 した甲は学位規則第4条第 1項 (いわゆる課程博 )に よるものであ り、乙は学位規則第4条2項 (いわゆる論 文博 士)に よる もので あ る こ とを示 す。

(3)

  

名 。(本)

博士の専攻分野の名称 学 位 記 番 号 学 位 授 与 の 期 日 学 位 授 与 の 要 件 学 位 論 文 題 名 論 文 審 査 委 員

 

 

 

 (長崎県)

博 士 (学術 ・福祉)

甲第32号

平成29年 3月18日

学位規程第4条 1項該 当 (課程博 士)

介護福祉士 の看取 り後 の省察 に関 す る研 究 主査

 

教授

   

 

 

久美子

副査

 

客員教授

 

 

 

 

副査

 

教授

   

 

 

 

論文内容の要旨》

研究の背景 と目的】

介護福祉士 は、実践知 を見 出 し、専 門性 を高めてい く「省察

(rencction)」

ワ〕を必要 とす (藤江 ・佐 々木 2008)。 介護福祉領域 における省察 に関す る研 究の多 くは、実習後の学生 を 対 象 と してい たが (真 2004;真鍋 ・木野 2005;月 ヽ木 曽 。今 井 2010;大山 ら 2010;藤

2014)、 近年、現場 を対象 とした研 究が進め られつつある

(堀

2012;島田 ら2015)。 特 に、現 場 における看取 りは、看取 り後 に利用者か らのフイー ドバ ックを得 られない事やその精神的負 担か ら、省察のあ り方が よ り問われる。

この ような看取 り後に介護職が抱 える精榊的負担 に対する支援 の必要性 は、看取 り後に「振 り返 り」 をす る とい う観点で捉 え られ (櫻 2008;早 2010;遠 2011;岡 。新免 2014)、

看取 り後の精神的ケア、振 り返 りの機会 として振 り返 リカ ンファレンスの重要性が指摘 されて いる (早 2010;三菱総合研究所 2011;岡・新免 2014;島田 ら 2015;全国老 人福祉施設協 議会 2015)。 しか し、その質的なあ り方 については、振 り返 リシー トの作成

(日

本福祉大学終 末期ケア研 究会 2010;島田 ら 2015)な どケアの客観的な評価 に焦点が当てられてお り、看取 っ たことで起 こる様 々な感情 とどう対峙 してい くか とい うことについてはあまり言及 されていな い。

この ように、看取 り後の「振 り返 り」が とりあげ られるようになった背景には、看取 りが病 院だけではな く、高齢者施設 にも拡大 し、介護職が看取 りに関わる機会が増えて きたことが考 えられる。2015年度介護報西ll改定では、PDCAサイクル (体制の整備、看取 り介護、振 り返 り、

体制の改善)に よってその体制 を適宜見直す ことが新 たな要件 として追加 され、実施 した看取 り介護 の検証 と職員の精神的負担 の把握 と支援 の重要性が明確 に示 された。高齢者施設におけ る看取 りの質 とい うものが、今、社会的に問われている状況である。

以上 を踏 まえ、本研究では、「振 り返 り」 を「行為や、状況、感情 などの個別 の ことにつ い

‑1‑

(4)

て考 えること」、「省察」 を、BOyd and Falcs(1982)の 定義か ら、「経験 によ り引 き起 こされた 気 にかかる問題 に対する内的な吟味お よび探求の過程であ り、 自己に対する意味づけを行った り、意味 を明 らかにする ものであ り、結果 として概念的な見方 に対する変化 をもた らす」 プロ セス とする。そ して、「省察」 とい う観点か ら看取 り後のプロセス と支援 のあ り方 を明 らかに

してい く。

調査対象 は、高齢者施設の中で も、先駆 的に施設での看取 りに取 り組 んで きた、特別養護老 人ホームX施設、Y施設 に勤務す る養成校卒の介護福祉士 とす る。 日本介護福祉士会の生涯研

4笏制度図 (2012)に よる新任層、中堅層①及び中堅層② 、指導・管理層の3区分 を参考 に、実 践経験4年未満の介護福祉士 を新任介護福祉士 (以下、新任)、 実践経験4年以上11年未満 の 介護福祉士 を中堅介護福祉士 (以下、中堅)と した。そ して本研 究では、 まず、看取 りを複数 経験 して きた中堅 をとりあげる。中堅 は看取 って きた事例 によつて、様々な体験 をして きてい る と考 え られ るので、中堅 自身力ゞ「いい看取 りがで きたJと捉 えた事例 と、「いい看取 りがで きなか った」 と捉 えた事例 を分 けなが ら、それぞれの省察プロセスを検討することを研究1と す る。次 に、看取 りによつて中堅 よ りも大 きな衝撃 を受 けると推測 される新任 をとりあげ、そ の省察のプロセスを研究 2と 位置付 ける。

研究の方法、結果、考察】

(石汗究

1〉

研究の 目的 :中堅 の看取 り後の省察のプロセスについて把握す る。

調査対象者 :X施設、Y施設勤務 の養成校卒の介護福祉士、女性10名 (A、

B、 C、 D、 E、

F、 G、 H、

と、 」)。

データ収集方法 :半構造化面接。2012年 2月 、2014年 7月 、2015年 7月 〜10月 (面接時間は

1

1時間程度)に実施。

主 な質問チ貢目:こ れ まで看取 った実践で忘れ られない事例は何か、 どの ような振 り返 りを して きたか、今後 どの ような振 り返 りを したいかである。

分析方法 :イ ンタヴュー結果 を逐語化 し、

M―

GTA(木 2007)に よる分析 を行 った。分析 の 際 には個 人が特定 されない ようにICレ コーダーによる録音 は許可 を得て行い、研 究終了後 は責任 を持 って消去 し、研究の際 には個人が特定 されないよう倫理的配慮

を行 った。

結果及び考察     】イよサブカテ ゴリー、≪  ≫はカテゴリーを示す。

分析 の結果、「いい看取 りがで きた」 と捉 えた事例 においては、35の

'九

念 と9のサブカテ ゴ リー、7のカテ ゴ リーを生成 し、「いい看取 りがで きなかった」 と捉 えた事例 においては、37 の概念、15のサブカテゴリー、6のカテゴリーを生成 した。

1)中堅 が「いい看取 りができた」 と捉 えた事例 における看取 り後の省察のプロセス

中堅 は利用者 と「専門職」としてのかかわ りをす ると同時 に、切 り離せ ないもの として、「わ た し」 として人間対 人間のかかわ りを していた。「いい看取 りがで きた」 と捉 えた事例 におい ては、その両方で十分 にかかわった とい う実感 をもち、看取 り後 には≪利用者の死や看取 りに

(5)

対する否定的感情≫と同時に、≪利用者の死や看取 りに対する肯定的感情≫を抱 くことが多 かった。このように否定的感情だけでなく肯定的感情を抱いたことが≪「わたし」としての偲 びと喪の作業≫へ とつながったのではないかと思われる。そして、それが、「専門職」 として の視点からは、看取 り後の省祭が自己のケアの不十分だった点などの否定的側面に傾きやす く なるものを、否定的側面だけでなく肯定的側面にも目を向けることにつながっていたと思われ る。これらの≪「専門職」 としてのバランスのとれた評価≫が≪次のケアに活かすための新た な視点と「専門職」 としての前向きな自信≫へと前進させていた。

2)中堅が「いい看取りができなかった」と捉えた事例における看取 り後の省察のプロセス 中堅は、ターミナルケアや看取 りの際、《「専門職」 としてのケアに対する葛藤や困難感≫

を感 じる中、利用者の死に直面 し、【ショック】【後悔】【申し訳なさ】【無力感】【悲 しみ】【 満足感】といった≪「わたし」 と「専門職」 としての消イとできない否定的感情≫を抱えていた。

その感情を表出し、≪「専門職」 としての自己との対話≫を行うなかで、≪次のケアに活かす ための新たな視点≫を獲得 していたが、そのプロセスには≪重要な他者からの承認≫が影響 し ていた。

(研2)

研 究の 目的 :研 1によ り、省察 を支 えるため には、 まず看取 った こ とで起 こる様 々な感情 を 表 出 し気 づ くこ との重要性 が明 らか となった。新任 の場 合、看取 るこ とで、経験 を積 んだ介護福祉 士 よ りも大 き く感情 が揺 れ、強 い精神 的負荷 を抱 える と推測 さ れ るので、研 究2では、新 任 の省察 の プロセス を明 らか にす る。

調査対象者 :Y施 (プリセ プ ター シ ップ導入)に勤務 してい る養成校卒 の介護福祉士 、女性

4名 (K、

L、

M、 N)。

        

デー タ収集方 法 :半構 造化 面接 。2014年 7月 (面接 時 間は1人40分程 度)に実施 。

主 な質問項 目 :入職 して1〜 2年間で看取 った事例 の中で、最 も印象 に残 ってい る事例 につ い て どの ような振 り返 りを して きたか、 また職場 の人か らどの ようなサ ポー トを 受 けたか。

分析方 法 :イ ンタヴュー結果 を逐語化 し、TEM(安田・サ トウ 2012)に よる分析 を行 った。IC レコー ダーに よる録音 は許可 を得 て行 い、研 究終了後 は責任 を持 って消去 し、研 究 の際 には個 人が特定 され ない よう倫 理的配慮 を行 った。

結果及 び考察

4人の調査対象者 が語 った、最 も印象 に残 っている事例 は、

K、 L、

Mは初 め て臨終 の場 に 立 ち合 い、エ ンゼルケアを した事例 、Nは初 めて施設での看取 りを した事例 であ った。4人 そ れぞ れ に死 の悲 しみ を抱 えてい たが 、そ れ をす ぐに他者 に表 出 し共有 で きたの はKだけで あ つた。

L、

M、 Nが他者 に表 出で きなか った背景 には、人見知 りや弱 い 自分 を見せ る こ とが 苦手等 とい う性格 の問題 の他 に、「専 門職」 と してエ ンゼ ルケ ア をす る こ とへ の緊張 か らい ろ

んな感情 を飲 み込 む とい った、新任特有 の要 因 も関係 していた と考 え られた。

また、死 の前 の段 階の「わた し」 と しての利用者 との楽 しい思 い出な ども少 ない ことか ら、

‑3‑

(6)

利用者 との関わり合いや利用者に対する自分のそれまでのケアを肯定的には評価 しにくく、否 定的感情、否定的評価へと傾 きやすいということが明らかとなった。

結論】

以上の結果を踏まえ、介護福祉士の看殿 り後の省察においては、①看取 り後における様々な 感情を自覚 し、表出すること、②「わたしJと してのイ思びと喪の作業ができ、悲 しめること、

① 自己のケアの肯定的側面と否定的恨I面の両方を多面的にみることができるようになるための 契機の一つとしての、重要な他者からの承認、の3点 が重要であると結論づける。

そして、介護福祉士の看駅 り後の省察を支えるための支援のあ り方として、①介護福祉士が 感 じたあ りのままの感情を様々な形で表出する場を保障する、②振 り返 リカンファレンスは、

「専門職」 としての客観的な振 り返 りと共に、「わたし」 としての偲びと喪の作業の両方がで きる場にする、③数年の看取 りを体験 した後に、自分よりも看取 り経験のある介護福祉士に、

自らのこれまでの看取 りについて語る場を設定する、④振 り返 リカンファレンスや語 り合いの 場での看取 り後の省察の重要性を組織が十分に認識する、の4点 を提唱する。

介護福祉士は利用者の死を通 して、「専門職」 としても「わたし」 としても大 きく揺さぶら れる。看淑 り後の省察こそ介護福祉士を成長させる重要な機会であると位置付けること、その ような意識が、ターミナルケア・看取 りの質、ひいては介護福祉士の質の差につながっていく といえよう。

(7)

論文審査の結果の要旨》

論文の要 旨〕

1.課題 と方法

本論文 は、特別養護老人ホニムでの介護福祉士の看取 り後の省察 に関する研究である。

日本では、高齢者 は医療 の場である病院で亡 くなることが多いが、近年、生活の場である施 設で看取 るケース も徐 々に増 えつつある。諸外 国では、高齢者が施設で亡 くなる割合が増 えて お り、 アメ リカでは4分1近い人が施設で死 を迎 え、認知症高齢者 に限ると5割以上の人が 施設で亡 くなっている とす る報告 もある (詭

n Socst―

Poortvhet ct∬ .20H)。

本研究 は、 この ような施設での利用者 の看取 り後 に、介護福祉士が行 うケアについての「省 察」 に着 日した。省察 は介護福祉士が専 門性 を高めるための重要 なプロセスである。 しか し、

看取 りは利用者の死 とい う結末 を迎 えるために、利用者か らケアに対するフィー ドバ ックが得 られない。従 って、介護福祉士 にとって 自己のケアについて どの ような省察 を行 うかが難 しい 課題 となる。

これ まで、省察 に関するもの としては、ケアについての振 り返 リシー トの作成などが行われ ケアに対す る客観的評価 とい う役割 を呆た して きた。 しか し、看取 った介護福祉士が抱 くさま ざまな感情 とそれが省察 に与 える影響 についてはあまり言及 されてこなかった。介護福祉士 は、

利用者 と生活 を共 に してい くとい う職種 の特徴 のため、ケアを行 う「専門職 としての私」 と、

利用者 と日々の生活 を共 に して個別の関わ りを重 ねた「個 としての私」 を切 り離す ことがで き ない。従 って、ケア終了後 に、利用者の死 に対 してシ ョック、悲 しみ、無力感などさまざまな 感情が強 く生 じ、 これがケアの省察の しかたや深 まりに影響 を与 えることが推測 される。本研 究は、 この ような感情 に着 目し、複数の看取 りを体験 した中堅介護福祉士 と、看取 りにより強 い影響 を受けると思われる新任介護福祉士 を対象 に丹念な面接 を行い、語 りをM̲GTAと

TEM

によ り分析 した。

2.結果 と考察

中堅介護福祉士の省察のプロセスか ら、省察 を支 えるにはまず看取 ったことでおこるさまざ まな感情 を表出す ることの重要性が指摘 された。 また、新任の場合 は特 に自己のケアに対 して の評価が否定的に傾 きやすいこと、感情 を出す ことへの躊躇、エ ンゼルケアをすることへの緊 張 などによ り、感情 の表出 しに くさを抱 えていることを明 らかに した。そ して、プリセプター との個別 ノー トや対話、カンファレンスなど直接や間接、個別や集団によるさまざまな方法 に よって感情 を表出する場 を組織が設定す る必要性 を指摘 した。

また、本研 究は、介護福祉士が看取 り後 にネガティブな感情 を孝とえると、ケアに対す る省察 が否定的な方向に偏 りがちとなることに焦点 を当てた。そ して、 自己のケアの否定的な面だけ でな く肯定的側面 について も日を向け、バ ランス よく自己のケアについて省察 を深めるために は、重要 な他者である専門職か らの承認が重要であることを指摘 した。 さらに他者か らの承認 の場 として看取 リカンファレンスなどを施設がシステムとして設定することの重要性 について

‑5‑

(8)

考察 した。

評価〕

人生の最後 を生活 の場である施設で介護福祉士が最後 まで看取 るとい う新 しい社会の要請 と 動 きに着 目している。看取 りをする側 の専 門職の心理的負荷 は介護施設での看取 りが今後進ん でい く上では看過で きない点であ り、その心理 プロセスを丹念な聞 き取 りと分析 により明 らか にで きた。ケアを行 った介護福祉士が専 門職 としての振 り返 りと同時 に、「私 として」死 を悲 しむ部分 な どの、 これまであ ま り言及 されて こなかった感情面 に焦点 を当て、特 にネガテ ィブ な感情 を表 出す ることの重要性 を指摘 し、 さらに表出するさまざまな場 を提案で きた。 また、

利用者 を最後 まで看取 る とい う体験 によって強い影響 を受けることが椎測 される新任介護福祉 士の支援 とい う視点か ら、看取 り後 カンファレンスのあ り方について論 じた点 も評価で きる。

施設で看取 りを行 った後 に行われる省察 についての一つのモデルを提示することがで きた と考 えられる。

判定〕

本論文 は、施設での看取 りにおける省察のあ りかたについて新 たな視点 と知見 を含んでお り、

予備論文で指摘 された問題点 も適切 に是正 されている。従 って、主査・副査の合意 により、H果

程博士の水準 に達 している もの とし、可 と判定する。

なお、学位 は「学術 ・福祉」である。

(9)

最終試験の結果の要旨》

「最終試験 の結果」

平成29年 2月14日、主査、副査全員 出席 の下で、英文要約 の提 出を求め、口頭 による質疑応 答の最終試験 を実施 した。本論文の著者 は、介護福祉士の施設での看取 りによる新任 と中堅の 感情表出のプロセス、省察のあ りかたなどについての質問について適切 に回答 した。 また、外 国語 に関 しては、本論文 に関連す る質問、諸外 国での文献 についての質問、本論文で資料 とし て提 出 された英文要 旨への質問に適切 に回答 したことか ら、英語の読解 ・英訳の能力有 りと判 定 した。

「最終結果」

斗上、論文審査、最終試験に基づ き、本論文を博士 (学術・福祉)論文として、主査、副査 一致 して、合格と判定 した。

‑7‑

参照

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