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園芸作物栽培における

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 松 原 陽 一

学 位 論 文 題 名

園芸作物栽培におけるarbuscular 菌根菌の利用に      関する基礎的研究`

学位論文内容の要旨

  園 芸 作物 栽 培技 術 のー っ とし てarbusc ular菌根 菌 (以 下AM菌 ) 接種 を利 用 す るこ と を目 的 とし て 、数 種園 芸作物にお けるAM菌の感 染およぴ 共生関係 成立による 植物体生長 促進効果に ついて、主に宿主植物の組織・

細胞 の 特 性に 視 点を お いた 組 織学 的見 地から調査 した。内容 の概要は以 下の通り である。

1.AM菌[Glomusピtunicロtum(GE)、Glomus intrロrロdicビS(GI)     お よ ぴ Gigロ sporロ mロ rgロ ritロ ( GM) ] の 諸 特 性   GEお よ ぴGIの 胞 子 は 、 直 径70〜130 imで あ り、 色 は黄 色 〜茶 褐 色 で あ っ た 。 一 方 、GMの 胞 子 は 、 直 径200〜400Pmで あ り 、 白 色 〜 黄 白 色 であ っ た 。菌 胞 子の 発 芽特 性 を調 ぺた 結果、胞子 発芽率およ ぴ菌糸伸長 は、GEおよ ぴGIで は25℃ 、pH5.0〜8.0で良好 であり、GMで は25゜、30゜ およ ぴ35℃ 、pH5.0〜8.0で 良好 で あっ た 。 また 、3種 の 菌の い ずれ にお い て も 、 胞 子 密 度 が 菌 糸 伸 長 に影 響 を及 ぽ すこ と が明 ら かに な っ た。

2.数 種園芸作物 へのAM菌の接 種検定

  8科22種 類 の 園 芸 作 物 実 生 の 根 へ のAM菌3菌 種 (GE、Glお よ ぴGM) の接種検 定の結果、 ネギ、アス バラガス、 サヤエンドウ、セルリ−、キュ ウり お よ びり ン ゴに お いて 、AM菌 接種に よる植物体 生長促進効 果が大き く現 れ た 。用 い た3菌 種と も 、7科19種類( アブラナ科 作物を除く )の園 芸作物の 根に感染し、感染部位率(1個体の根系における感染部位の割合)

は植 物 体 生長 促 進効 果 が大 き く現 れた 作物におい て高かった 。ネギ、タ マネ ギ お よぴ ニ ラで は 主根 お よぴ 側根 に感染した が、これ以 外の野菜に おい て は 、側 根 にお い ての み 感染 が認 められた。 菌根依存性 (接種効果

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の大きさ)は、ユリ科作物(アスバラガス、ネギ、タマネギおよぴニラ)

およぴりンゴで高く、菌根依存性とAM 菌感染部位率との問には、高い正 の相関(r=0.57 ‥)がみられた。

3 . AM 菌 感 染 お よ ぴ 植 物 体生 長 促 進 効 果 に 及ぽ す 各 種 要 因 の 影響   GE およぴGM の胞子接種濃度がアスバラガス実生の生長およぴ感染部 位率に及ぽす影響について調べた結果、感染による植物体生長促進効果 を発現させるための至適胞子接種濃度は菌種によって異なり、GE では 1000 〜 3000 胞 子 /g 接種物 、 GM では 20 〜 100 胞子 /g 接種 物が 適当で あ ることがわかった。

  AM 菌感染ネギ実生における植物体生長促進効果は、床土への炭化材添 加(粉末状ナラ炭70g を10kg の床土に混合)によりさらに促進され、炭 化 材 添 加 は 根 系 に お け る 感 染 部 位 率 を 高 め る こ と が わ か っ た。

  AM 菌感染アスバラガス実生の生長に及ぽす温度の影響について調ぺた 結果、AM 菌の胞子発芽およぴ菌糸伸長に適する温度条件と、共生状態に おいて植物体生長促進効果が発現するのに適切な温度条件とは異なって おり、また、それらの適切な温度条件は菌種によっても異なることが明 らかになった。

4 . AM 菌の感染機構

   宿主作物の根における AM 菌感染過程を、電子顕微鏡を用いて組織学的 に観察した結果、アスバラガス実生におけるGM の感染過程は4 つの主要 なステージに区分され、GE では5 つに区分された。また、キュウリ、ナ ス、ネギおよぴりンゴ実生の根の皮層細胞における樹枝状体(菌と宿主 の物質交換器官)の形成状態は、アスバラガス実生のそれと同様である ことが確認された。

  AM 菌感染による宿主植物の地上部組織構造の変化について調べた結果、

ネギおよぴァスバラガスのAM 菌感染植、物体では、葉身または茎における 細胞の増加・肥大や維管束組織の発達がみられ、非感染部位である地上 部組織も、根部の感染により、間接的な影響を受けていることが明らか になった。

   根の組織・細胞におけるべクチン質およぴ繊維成分(セルロ―ス、ヘ ミセルロース、リグニンおよぴスベリン)とAM 菌感染との関係について

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調べた結果、根組織における非感染部位では、組織・細胞の状態が強固 であるという共通した特徴が認められた。これには、ベクチン質を含む 中層、およぴ細胞壁( 1 次およぴ2 次)の形成状態が関係していることが わかり、植物体の根の組織学的特性(細胞の表層構造お,よぴ組織の中層 の 状 態 ) が AM 菌 感 染 に 影 響 を 及 ぼ し て い る こ と が わ か っ た 。 5 . 宿 主 植 物 の 組 織 内 成 分 含 量 に 及 ぽ す AM 菌 感 染 の 影 響    アスバラガス実生においては、AM 菌感染により植物体中の無機養分

(特にりン)濃度、遊離糖含有率およぴ遊離アミノ酸含有率の上昇がみ られたことから、これらの成分が感染による植物体生長促進効果に関係 していることが明らかになった。また、AM 菌感染による植物体生長促進 効果が大きく現れた作物(アスバラガス、ネギおよぴりンゴ)では、感 染による植物体中リン濃度の上昇も大きく、一方、外観上生長促進効果 がみられなかった作物(トマトおよぴピーマン)においても、感染によ り 植 物 体 中 リ ン 濃 度 が 上 昇 し て い る こ と が 明 ら か に な っ た 。 6 . AM 菌感染植物体の圃場検定

   アスバラガス、ネギ、セルリ―、ナスおよぴキュウりのAM 菌感染植物 体を圃場で生育させたところ、圃場においても共生関係成立による植物 体生長促進効果がみられ、収量が増加した。一方、ネギでは葉鞘部が長 くなり、また、セルリニでは第一節間部の伸長が促進されるなど、形態 的特徴およぴ収穫物利用上の効果が現れた。キュウりでは、AM 菌感染植 物体においては、子づるにおける雌花着花数およぴ雌花着花率の増加が みられた。また、AM 菌を感染させたナス幼植物を、半身萎ちょう病菌汚 染圃ヘ定植したところ、AM 菌感染個体では、半身萎ちょう病の発病遅延 およぴ軽減がみられるとともに、AM 菌感染による根の皮層細胞のりグニ ン化の促進が認められ、これが半身萎ちょう病菌の感染を抑制したもの と考えられる。

7 .組織培養由来幼植物への AM 菌の接種検定

   組織培養由来アスバラガス幼植物の鉢上げ時にAM 菌接種を行い、その

後の順化・生育に対するAM 菌接種の効果について調べた結果、アスバラ

ガスの 3 品種 ( MW500W 、    Welco me およぴ NJ green )の

組織培 養由 来幼植 物と AM 菌の 3 菌種( GE 、 GI およぴ GM )との全ての組

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合せにおいて感染および植物体生長促進効果がみられ、感染により植物 体中リン濃度が上昇することも明らかになった。さらに、順化終了後、

温室内で新たな床土に感染植物体を移植した場合におぃても、共生関係 成立による植物体生長促進効果が持続し、その後、これを圃場に定植し て生育させた場合においても植物体生長促進効果が発現することがわかっ た。

   以上のように、本研究では、数種園芸作物におけるAM 菌の感染およぴ

共生関係成立による植物体生長促進効果について新たな知見を得るとと

もに、園芸作物栽培技術のーっとしてAM 菌接種を利用するための基礎を

築き、その可能性を実証した。これらのことは、今後、園芸作物栽培技

術の向上に大きく寄与するものと考えられる。

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学位論文審査の要旨 主査    教授

副査    教授 副査    教授 副査    教授

原田 生越 但野 冨田

学 位 論 文 題 名

    隆     明 利秋 房男

園芸作物栽培における arbuscular 菌根菌の利用に      関する基礎的研究

  本論文は、緒言、本論8章、摘要、引用文献96、図74、表28を含む199頁の和文論文 で、別に参考論文4編が添えられている。

  園芸作物栽培においては、arbuscular菌根菌(以下AM菌)の接種・感染を栽培技術の ーっとして利用することにより、生育促進、収量増加、各種障害の軽減を図ることが望ま れているが、未だ、充分な技術として確立されるまでに至っていない。本研究は、数種園 芸作物におけるAM菌の感染および共生関係成立による植物体生長促進効果について、主 に宿主植物の組織・細胞の特性に視点をおいて検討したもので、内容は以下のように要約 される。

1.AM菌[Glomus etunicatum(GE)、Glom us  intraraめcゼJ(GI)およぴGfg甜pDrロ     m卿ぴffロ(GM)]の諸特性

  GEおよびG【の胞子は、直径70〜130ルm、黄色〜茶褐色であり、GMの胞子は、直径 200〜400Pm、白色〜黄白色であった。胞子発芽および菌糸伸長は、GEおよびGIでは、

25℃、pH5.0〜8.0で良好であり、GMでは25°、30゜およぴ35℃、pH5.O〜8.Oで良好 であった。

2.数種園芸作物へのAM菌の接種検定

  8科22種類の園芸作物実生の根にAM菌3菌種(GE、GIおよびGM)を接種したところ、

7科19種類(アブラナ科作物を除く)の園芸作物の根に感染し、ネギ、アスバラガス、サ ヤエンドウ、セルリ−、キュウ1Jおよびりンゴにおいて、AM菌感染による植物体生長促 進効果が大きく現れた。感染部位率(1個体の根系における感染部位の割合)は植物体生 長促進効果が大きく現れた作物におぃて高かった。ネギ、タマネギおよぴニラでは主根お

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よぴ側枳に感染したが、これ以外の野菜においては、側根においてのみ感染が認められた。

3.  AM菌 感 染 お よ び 植 物 体 生 長 促 進 効 果 に 及 ぽ す 各 種 要 因 の 影 響   アスバラガス実生においては、感染による植物体生長促進効果を発現させるための至適 胞子接種 濃度は菌 種によって異なり、GEでは1000〜3000胞子/g接種物、GMでは20〜 100胞子/g接種物が適当であることがわかった。

  AM菌感染ネギ実生における植物体生長促進効果は、床土への炭化材添加(粉末状ナラ 炭70gを10kgの床土に混合)によりさらに大きくなり、炭化材添加は根系における感染部 位率を高めることがわかった。

4. AM菌の感染機構

  電子顕微鏡を用いた組織学的観察により、アスバラガス実生におけるGMの感染過程は4 つの主要なステージに区分され、GEでは5っに区分された。また、アスバラガスにおける 樹枝状体(菌と宿主の物質交換器官)の形成状態は、キュウリ、ナス、ネギおよぴりンゴ 実 生 の 根 の 皮 層 荊 ‖ 胞 に お い て も 同 様 で あ る こ と が 確 認 さ れ た 。   ネギおよびアスバラガスのAM菌感染植物体では、葉身または茎における細胞の増加・

肥大や維管束組織の発達がみられ、非感染部位である地上部組織も、間接的な影響を受け ていることが明らかになった。

  また、根の組織・細胞におけるべクチン質および繊維成分(セルロース、ヘミセルロ ース、リグニンおよびスペリン)とAM菌感染との関係について調べた結果、非感染部位 では、組織・細胞が強固であるとぃう共通した特徴が認められた。これには、ベクチン質 を含む中層、およぴ細胞壁(1次および2次)の形成状態が関係していることがわかり、

根の組織学的特性(細胞の表層構造およぴ組織の中層の状態)がAM菌感染に影響を及ぽ していることがわかった。

5.宿主植物の組織内成分含量に及ぼすAM菌感染の影響

  アスバラガス実生においては、AM菌感染により植物体中の無機養分(特にりン)濃度、

遊離糖含有率およぴ遊離アミノ酸含有率の上昇がみられ、植物体生長促進効果が大きく現 れた作物(アスバラガス、ネギおよぴりンゴ)では、感染によって植物体中リン濃度が大 きく上昇することが明らかになった。

6.AM菌感染植物体の圃場検定

  アスバラガス、ネギ・ 、セル1J−、ナスおよびキュウりのAM菌感染植物体を圃場で生育 させたところ、圃場においても植物体生長促進効果が発現し、収量が増加した。一方、ネ ギでは葉鞘部が長くなり、また、セルリーでは第一節間部の伸長が促進されるなど、形態

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的特徴およぴ収穫物利用上の効果が現れた。キュウりでは、AM菌感染植物体においては、

子づるにおける雌花着花率および雌花着花数の増加がみられた。また、AM菌を感染させ たナス幼植物を、半身萎ちょう病菌汚染圃場へ定植したところ、AM菌感染個体では、半 身萎ちょう病の発病遅延および軽減がみられるとともに、根の皮層細胞のりグニン化が促 進 さ れ 、 こ の こ と が 半 身 萎 ち ょ う 病菌 の 感 染 を 抑 制 し た も の と 考 え ら れ る 。 7.組織培養由来幼植物へのAM菌の接種検定

  鉢 上げ ・ 順 化 時 に 、 ア ス バ ラ ガ ス3品 種 ( MW500W 、Welcome お よび NJ green )の組織培養由来幼植物にAM菌3菌種(GE、GIおよびGM)をそれぞれ接種する とぃずれも感染し、植物体生長促進効果がみられるとともに、植物体中リン濃度が上昇す ることが明らかになった。また、これを圃場に定植して生育させた場合においても、植物 体生長促進効果が発現し持続することがわかった。

  以上のように、本研究は、数種園芸作物におけるAM菌の感染および共生関係成立によ る植物体生長促進効果について新たな知見を加えるとともに、園芸作物栽培技術のーっと してAM菌接種を利用するための基礎を築いたもので、園芸作物栽培技術の向上に寄与す るものと考えられる。

  よって審査員一同は、最終試験の結果と合わせて、本論文の提出者松原陽一は博士(農 学)の学位を受けるのに十分な資格があるものと認定した。

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参照

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