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学位論文題名Induction of Calcification in MC3T3−El Cells by Inorganic Polyphosphate

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Academic year: 2021

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博 士 ( 歯 学 ) 川 添 祐 美

     学位論文題名

Induction of Calcification in MC3T3 −El Cells by     Inorganic Polyphosphate

(ポリリン酸によるMC3T3 ―El 細胞の石灰化促進効果に関する研究)

学 位論文内容の要旨

  ポ リリン酸 はりン酸 が直鎖 状に結合 した高 エネルギ ー化合物で、バクテリアから高等 真 核 生物 に 至 る まで ほ と んど す べ ての 生 体 内お よ び 組織 内 に 存在 す る 生 体高 分子で ある 。これ までに行 われて きた研究 より、 微生物に おいては 、ポリ リン酸がATP合成の た め のエ ネ ル ギ ーリ ザ ー バー 、 ス トレ ス 応 答遺 伝 子 の発 現 調 節因 子 等 の 生理 機能を 有し ていることがわかっている。バクテリアではポリリン酸キナーゼやポリリン酸分解酵 素を はじめ とした多 数のポ リリン酸 代謝酵 素が発見 されているが、その中で注目されて いるのが、ポリリン酸をりン酸源とした各種リン酸化酵素である。そこで、ポリリン酸キナ ーゼ とポリ リン酸―AMPリ ン酸転移 酵素の2っを 用い、ポ リリン 酸をりン 酸源と してAMP

( ア デノ シ ン1リン 酸 ) から のATP再 生 系の 構 築 を行 っ た 。こ の 系 を 用い て 効率的 に ATPが再生 できるこ とから 、工業レ ベルへ の応用が 期待され ている 。しかし たがら高等 真 核 生物 に お け るポ リ リン酸の 役割に っいては 未だ不明 な点が 多く、真 核生物 でのポ リリ ン酸の 代謝につ いても ほとんど わかっ ていない 。最近になって、真核生物を対象と した ポリリ ン酸の生 理機能 に関する 研究が はじまり 、ポリリン酸が繊維芽細胞増殖因子 (FGF)を安定 化し、細 胞増殖 を促進す る効果 をもつこ となど がわかっ てきた。 ポリリン 酸 はFGFと 聶 吉合 し て そのタン パクを 安定化す るだけで なく、FGFレセ プター との結合 を強固にすることにより細胞増殖を促進していると考えられる。

また 、ヒト骨芽細胞にはポリリン酸が多く含まれており、エクソ型及びエンド型のポリリ ン酸 分解活 性も骨芽 細胞で 高いこと が報告 され、骨 分化とポリリン酸との関連が指摘さ れて いる。しかしながら、これまでポリリン酸が骨芽細胞の分化凵幾能に関与しているこ と を 直接 報 告 し た例 は な い。 歯 周 組織 内 に おい て も 骨芽 細 胞 は重 要 な 役 割を 果たし てお り、骨芽細胞分化とポリリン酸との関連が明らかとなれば、先に述べたポリリン酸の 繊 維 芽細 胞 増 殖 促進 効 果 と合 わ せ て、 歯 周 組織 再 生 にポ リ リ ン酸 が 積 極 的に 関与し てい る可能性を示すことができると考えられる。そこで私は、ポリリン酸が骨芽細胞の石 灰 化 に及 ば す 影 響に つ い て調 ベ 、 ポリ リ ン 酸を 歯 周 組織 再 生 へと 利 用 で きる 可能性     853

(2)

にっいて検索した。

  マ ウス頭 蓋骨由来 骨芽細胞 様細胞で あるMC3T3―El細 胞の培養 上清中に鎖 長40 から60程度 のポリリン 酸(終濃度O.lmM、0.5 mMおよびImM)を添加し、細胞のアル カリホスファターゼ活性およびポリリン酸分解活性、各種骨分化マーカー遺伝子の発 現量、細胞石灰化度にっいて、無処理あるいはオルトリン酸処理した陰性対照群、B

← グ リ セ ロ リ ン 酸 十 ア ス コ ル ビ ン 酸 処 理 陽 性 対 照 群 と 比 較 し た 。   アルカリホスファターゼ活性は細胞石灰化の際のりン酸供給に関与する酵素であり、

石灰化の指標として用いられている。陰性対照群においてアルカリホスファターゼ活 性は全く誘導されず、ポリリン酸処理によって誘導されたが、その効果は陽性対照群と 比較すると低かった。この結果より、ポリリン酸はアルカリホスファターゼ活性誘導に関 して積極的に働くことが示されたが、その効果が緩やかなものであったことから、細胞 をポリリン酸で処理した場合にはアルカリホスファターゼだけでなく、別のりン酸供給経 路が存在する可能性が示唆された。

  オステオポンチンやオステオカルシンは細胞石灰化の際に特異的に発現する遺伝 子である。各遺伝子の転写産物であるタンパクは細胞外へと分泌され、骨芽細胞と細 胞外マトリックスとの結合に重要な役割を果たしていることがわかっている。定量PCR 法を用い て骨分化マ ーカー遺 伝子であ るオステ オポンチ ン、オステオカルシンの mRNA発現量を調べたところ、両遺伝子の発現がポリリン酸により顕著に誘導され、そ れらの発現誘導効果が濃度依存的であることがわかった。オステオポンチン遺伝子は ポリリン酸濃度1 mMおよび0.5 mMにより発現誘導され、0.1 mMでは効果はみられな かった。オステオポンチン遺伝子はポリリン酸処理開始直後から発現誘導され、処理 後10日で発現量が最大となった。オステオカルシン遺伝子はポリリン酸濃度0.1 mM および0.5 mMで 発現誘導さ れ、1mMでは効果はみられなかった。オステオカルシン 遺伝子は ポリリン酸 処理開始 後約20日目 から発現 誘導され、処理後28日目で発現 量が最大となった。それぞれの結果から、オステオポンチンでは1 mMポリリン酸により、

オステオカルシンでは0.1 mMポリリン酸によりそれぞれの遺伝子発現誘導効果が最も 高くなることがわかった。

次に、アリザリンレッド染色により処理開始後31日目における各種細胞の石灰化度 を観察したところ、ポリリン酸処理を行った細胞で強染色像がみられ、陽対照群と比較 して石灰化度は顕著に高いことがわかった。また、同様の処理を繊維芽細胞である Balb/c 3T3細胞に対して行い、石灰化染色を行ったところ、ポリリン酸処理を行った場 合 で も 染 色 像 が み られ な か った こ とか ら 、 この 細 胞石 灰 化 は骨 芽 細 胞で あ る MC3T3−El細胞に特異的なものであることが確かめられた。

さらに、各処理を行った細胞の粗抽出液を用いてポリリン酸分解活性を調べた結果、

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(3)

ポリリ ン酸処 理群にお いてエ クソ型及 びエンド型のポリリン酸分解活性が顕著に誘導さ れ こと が わか った。 これらの 活性は ともに処 理開始 後11日目か らみら れ、その 後23日 目においても活性が見られた。ここで、エンド型ポリリン酸分解活性により産生される低 分子物 質は大 腸菌由来 エクソ 型ポリリ ン酸分解酵素によルオルトリン酸に分解され、そ れらが鎖長2から5の短鎖ポリリン酸であることが確かめられた。またエクソ型ポリリン酸 分解活性によルポリリン酸がオルトリン酸へと分解されることから、このポリリン酸分解活 性がア ルカリ ホスファ ターゼ 活性と相 補的に働くりン酸供給経路となる可能性が示唆さ れた。また、細胞外のオルトリン酸濃度が高くなることによルオステオポンチン遺伝子の 発現が誘導されることが報告されている。このことから、ポリリン酸処理群でオステオポ ンチン 遺伝子 の発現が 顕著に 誘導され るのは、ポリリン酸によってエクソ型及びエンド 型ポリ リン酸 分解活性 が上昇 し、その 結果オルトリン酸濃度が高められることに由来す ると考 えられ る。これ らの結 果は、ポ リリン酸が細胞石灰化の際のシグナル分子として 働くだけでなく、ポリリン酸自身が分解されることによって石灰化のりン酸源となりうる可 能性を示している。

上 記の 結 果よ り、ポ リリン酸 が骨芽 細胞の石 灰化を 顕著に誘 導するこ とが分 子レベル で 解明 さ れ、 硬組織 の再生に ポリリ ン酸が積 極的に 関与して いること が示唆 された。

‑ 855

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学位論文審査の要旨

    

学位論文題名

Induction of Calcification in MC3T3

E1 Cells by     Inorganic Polyphosphate

(ポリリン酸によるMC3T3 −

E1

細胞の石灰化促進効果に関する研究)

  

審査は、審査員全員が出席の下に、申請者に対して提出論文とそれに関連した 学科目について口頭試問により行われた。

最初に、申請者により学位論文に関する以下の説明がなされた。

  

ポリリン酸はりン酸が直鎖状に結合した高エネルギー化合物で、バクテリアか ら高等真核生物までほとんどすべての生体内および組織内に存在する生体高分子 である。これまでに、微生物ではポリリン酸がエネルギーリザーバーなどの生理 機能を有していることがわかっているが、高等真核生物における研究はまだほと ん ど 行 わ れ て お ら ず 、 ポ リ リ ン 酸 の 役 割 は 未 だ 不 明 な 点 が 多 い 。

  

申請者はヒト骨芽細胞にポリリン酸が多く含まれていることに注目し、ポリリ ン酸の骨芽細胞に対する影響を調べた。マウス頭蓋骨由来骨芽細胞様細胞である

MC3T3

ーEl 細胞の培養上清中にポリリン酸を添加し、細胞のアルカリホスファタ ーゼ活性およびポリリン酸分解活性、各種骨分化マーカー遺伝子の発現量、細胞 石灰化度について検索した。その結果、ポリリン酸はアルカリホスファターゼ活 性誘導に関して積極的に働くことが示されたが、その効果が緩やかなものであっ たことから、細胞をポリリン酸で処理した場合にはアルカリホスファターゼだけ でなく、別のりン酸供給経路が存在する可能性が示唆された。定量

PCR

法を用い て 骨分化マー カー遺伝子 であるオス テオポンチ ン、オステ オカルシンの

mRNA

発現量を調べたところ、両遺伝子の発現がポリリン酸により顕著に誘導され、ア リザリンレッド染色により細胞の石灰化度を観察したところ、ポリリン酸処理を

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信 明

正 邦

藤 木

進 鈴

授 授

教 教

査 査

主 副

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行った細胞で石灰化度は顕著に高いことがわかった。さらに、各処理を行った細 胞の粗抽出液を用いてポリリン酸分解活性を調べた結果、ポリリン酸処理群にお いてエクソ型及びエンド型のポリリン酸分解活性が顕著に誘導され、このポリリ ン酸分解活性がアルカリホスファターゼ活性と相補的に働くりン酸供給経路とな る可能性が示唆された。これらの結果は、ポリリン酸が細胞石灰化の際のシグナ ル分子として働くだけでなく、ポリリン酸自身が分解されることによって石灰化 のりン酸源となりうる可能性を示している。

  

上記の結果より、ポリリン酸が骨芽細胞の石灰化を顕著に誘導することが分子 レベルで解明され、硬組織の再生にポリリン酸が積極的に関与していることが示 唆された。

  

引 き 続 き 、 審 査 担 当 者 か ら の 質 問 が 行 わ れ た 。 主 な 質 問 項 目 は 、

1

.ポリリン酸によるエネルギー合成はあるのか。

2

.ポリリン酸のエネルギー結合について

3

. FGF の安定化はどのような機構でおこるのか、さらに生物学的メカニズムは?

4

. FGF の安定化とポリリン酸の濃度との関係

5

.細胞増殖におよばすポリリン酸の影響について

6

.アポトーシスとの関連性について等であった。

  

いずれの質問に対しても、申請者から明確な回答を得られ、さらに関連分野に

対する幅広い知識を有していることが示された。申請者から、今後の研究への展

望も示され、学位取得後も研究を発展させていく可能性が高いことが明らかにな

り、学位授与に値するものと考えられた。

参照

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