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記者会見 開催のお知らせ

生殖細胞の染色体分配様式をつくりだす要のタンパク質を発見

〜酵母からヒトまで保存されていることが判明〜

1.会見日時: 平成 26 年 12 月 22 日(月)14:00~15:00 2.会見場所:東京大学分子細胞生物学研究所 生命科学総合研究棟B 3 階 301 号室会議室(弥生キャンパス内:文京区弥生 1-1-1) http://www.iam.u-tokyo.ac.jp/watanabe-lab/watanabe_lab/access.html 東京メトロ南北線「東大前」駅下車徒歩5 分 3.出席者: 渡邊嘉典(東京大学分子細胞生物学研究所 教授) 4.発表のポイント: ◆哺乳動物の生殖細胞で、減数分裂における染色体の分配様式を司令するタンパク質を発見 しました。 ◆減数分裂における染色体を分配する仕組みが、酵母からヒトまで共通であることを証明し ました。 ◆生物学の未解明であった問題を解決したのみならず、将来的にヒトの不妊、ダウン症など の原因の解明に大きく寄与する成果と期待されます。 5.発表概要: 両親の遺伝情報が子供へと伝わる背景には、両親のそれぞれの生殖細胞(精子や卵子)で染 色体(注1)が正確に半分に分けられ、精子が卵子に受精すると、分けられた染色体が再び合 わさる仕組みがあります。ヒトではこの染色体を半分にする過程(減数分裂)に異常をきたす ことが、ダウン症(注2)や不妊の原因であると知られています。しかし、ヒトを含む哺乳動 物では、減数分裂を制御する司令塔因子が同定されていませんでした。 東京大学分子細胞生物学研究所の金智慧(キム・ジヘイ)特任研究員と渡邊嘉典教授らは、 マウスを用いた研究により、生殖細胞のみに出現する染色体タンパク質マイキン(MEIKIN) を発見し、減数分裂の司令塔因子であることを明らかにしました。マイキンは、生殖細胞の分 裂に関与する染色体のつなぎ目(動原体、注3)にのみ結合することにより、減数分裂におい て染色体が分配される方向を制御していることが分かりました(図1)。さらに、マウスと酵 母を使った解析から、生殖細胞において染色体を分配する仕組みが、ヒトを含めた多くの生き 物において共通である(保存されている)ことを証明しました。 本成果は生物学において未解明であった問題を解いたのみならず、それがヒトの不妊あるい はダウン症の原因解明に大きく寄与すると期待されます。 6.発表内容: 細胞の分裂には、皮膚などの体細胞で起きているものと精子や卵子などを作り出す生殖細胞 で起きているものとがあります。体細胞が分裂する時期に、複製された染色体の動原体は、そ れぞれスピンドル微小管(注4)と反対方向の位置で結合し、続いてそれぞれの染色体が反対

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方向に均等に分配されます(図1)。一方、精子や卵子の染色体を半分に減らす減数分裂では、 体細胞分裂に比べて、父親と母親由来の対応する染色体(相同染色体)を分離する還元分配(注 5)が1 回余分に起きることが知られています(図1、右)。ここでは、体細胞分裂の場合と は異なり、複製された染色体の動原体は、それぞれスピンドル微小管と同じ方向の位置で結合 し(動原体の一方向性)、組み替え(注6)によってつながった相同染色体がそれぞれ反対方 向に分配されます。この相同染色体の分配の過程で、複製された染色体の動原体同士は接着し たままであることも知られていました(図1、右)。続いて、体細胞分裂と同じように、複製 された染色体がそれぞれスピンドル微小管と反対方向の位置で結合し、互いに反対方向に引っ 張られ分配されます。これまでに、渡邊教授らの研究グループが10 年前に報告したシュゴシ ン(注7)と呼ばれるタンパク質が、減数分裂の際に動原体の接着を守る役割を担っているこ とが明らかになっていました。しかし、動原体の接着だけではなくその方向性を含めた、減数 分裂に特徴的な染色体の分裂様式を作り出す根本的な“司令塔因子”の存在が予測されている 一方で、その実体は長い間謎に包まれていました。加えて、これまでに酵母細胞を用いた研究 で見つかっていた減数分裂の司令塔因子には保存性が見られず、ヒトなどの哺乳動物でその制 御がどうなっているか全く分かっていませんでした。 これまでの酵母細胞を用いた研究成果から、そのような司令塔因子が減数分裂に限って動原 体に局在することが予測されたため、本研究グループはツーハイブリッド法(注8)を用いて そのような因子を検索しました。その結果、これまで全く機能が分かっていなかった生殖細胞 特有の動原体タンパク質が見つかり、それをマイキン(減数分裂の動原体因子という意味)と 名づけました。マイキンの遺伝子を欠損した遺伝子改変マウス(マイキン欠損マウス)を作製 したところ、マウスは正常に発生・成長したものの、雌雄ともに不妊の症状を示しました。生 殖細胞の減数分裂過程を詳細に調べると、還元分配の特徴である、動原体の一方向性および接 着の維持がともに欠損していることが分かりました(図2)。すなわち、マイキンこそが、そ れまで探し求められていた減数分裂における染色体分配の司令塔であったと結論づけられまし た。 さらに、マイキンの分子機能の解析により、マイキンがポロキナーゼというタンパク質リン 酸化酵素を動原体に濃縮し、動原体タンパク質のリン酸化を介して、動原体のみを制御できる 仕組みが存在することを示しました。これらのマウスの解析結果から、それまで保存性および 機能の詳細が分かっていなかった酵母の減数分裂を制御する因子が、実は脊椎動物のマイキン と同じような働きをしていることも分かりました。これらの解析結果から、真核生物の減数分 裂の制御機構はその機構に関与するタンパク質までが、酵母からヒトまで広く保存されている ことが初めて明らかになりました。 ヒトの高齢な女性の卵子では、染色体数の異常が高頻度に見られることが、高齢出産におけ るダウン症などの出生異常を引き起こす主要原因となっていることが知られています。最近の 研究から、そのような卵子では減数分裂における染色体の分配機構が不安定になり、その結果、 染色体数の異常が引き起こされていることが明らかになってきました。本研究により発見され たマイキンは、ヒトにも保存されている減数分裂の司令塔であり、その機能欠損が不妊やダウ ン症の原因になっている可能性は十分にありえます。これら臨床応用への研究は、今後の解析 にゆだねられ、将来的にはヒトの不妊あるいはダウン症の原因解明に大きく寄与すると期待さ れます。 7.発表雑誌: 雑誌名:英国科学雑誌 Nature (article)の電子版に12月24日に発表される予定。

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論文タイトル:Meikin is a conserved regulator of meiosis-I-specific kinetochore function 著者:Jihye Kim, Kei-ichiro Ishiguro, Aya Nambu, Bungo Akiyoshi, Shihori Yokobayashi, Ayano Kagami, Tadashi Ishiguro, Alberto M. Pendas, Naoki Takeda, Yogo Sakakibara, Tomoya S. Kitajima, Yuji Tanno, Takeshi Sakuno, Yoshinori Watanabe*

DOI 番号:10.1038/nature14097 8.注意事項: 日本時間12 月 25 日(木)午前 3 時 (イギリス時間:24 日(水)午後 6 時)以前の公表は禁じ られています。 9.問い合わせ先: 渡邊 嘉典(わたなべ よしのり) 東京大学分子細胞生物学研究所 教授 〒113-0032 文京区弥生 1-1-1 TEL: 03-5841-1466 FAX: 03-5841-1468 E-mail: [email protected] HP: http://www.iam.u-tokyo.ac.jp/watanabe-lab/ <報道担当> 東京大学分子細胞生物学研究所 事務部総務チーム 〒113-0032 東京都文京区弥生 1-1-1 TEL:03-5841-7803 FAX:03-5841-8465 E-mail:[email protected] 10.用語解説: (注1)染色体:遺伝情報を担うDNA とタンパク質の構造体。ヒトの細胞では、父親と母親 に由来する23 組 46 本の染色体をもつことが知られている。 (注2)ダウン症:減数分裂の異常に起因して、21 番染色体を一本余分に受け継ぐことにより 生じる病気。 (注3)動原体:細胞分裂時にスピンドル微小管(注4)が結合する染色体上の部位。 (注4)スピンドル微小管:細胞分裂のときに染色体を分ける分裂装置で、細胞の両極から伸 びた細い糸状のタンパク質(微小管)の集合体。 (注5)還元分配:減数分裂の式に起こる染色体の分配過程で、相同染色体を分ける過程を指 す。 (注6)組み替え:父方と母方由来の対応する染色体(相同染色体)のDNA の間でつなぎ換 えが起きること。これにより、相同染色体の間に交叉による結合が生じる(図1右)。 (注7)シュゴシン:染色体の動原体に局在する保存されたタンパク質で、動原体の接着を守 る働きがあり、2004 年に Nature に本研究グループにより報告された。 (注8)ツーハイブリッド法:タンパク質の相互作用を、酵母細胞を用いて遺伝学的に検出す る方法。

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11.添付資料:

図1:皮膚などの体細胞で起きている細胞分裂(体細胞分裂、左)と精子や卵子などの生殖細 胞で起きている細胞分裂(減数分裂、右)。今回発見した減数分裂の司令塔である「マ イキン」は減数分裂に特有の特徴を作り出す。マイキン欠損マウスでは、減数分裂の染色体 分配が異常になる。

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図2:マイキンを欠損していない通常のマウス(野生型マウス、左)とマイキン欠損マウスの染色 細胞における染色体と動原体を染色した図。マイキン欠損マウスの動原体において、減数分裂前期 の未熟な分離が見られる(右図、点線内)。これは、動原体の一方向性制御が欠損していることを 意味する。

参照

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