• 検索結果がありません。

三重韻七行付訓本(原三重韻)について-有刊記本の分類とその関係-

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "三重韻七行付訓本(原三重韻)について-有刊記本の分類とその関係-"

Copied!
35
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

︵原

韻︶について

ーー有刊記本の分類とその関係

 澤 成 博

  聚分韻略︵三重韻︶付訓本は九行本を嗜矢とし、その後多くの版を重ねるが、時代が降るにしたがい、半葉あたりの行数は概ね九行 ←七行←六行←五行へと減じている。九行本のうち、刊年明らかな最古のものとしては慶長十七年版が知られているが、これに無刊年       ︵注1︶       ︵、圧2︶ ながら山田忠雄先生蔵本︵二本︶と福島俊翁氏蔵本があり、その先後関係については先に論じたことがある。したがって、付訓本類の 異 同、とりわけ付音と付訓のカナ︵以下、付刻カナと記す︶が如何なる経路を辿り付刻されていったのか、その関係が次に問題となる が、七行本のうち、特に寛永年間に開版されたものを従来、寛永諸版として一括して扱うことが多く、その異同については余り明確に なされてこなかったようである。そこで、本論文では寛永諸版を中心に現在までに知り得た点を左の項目にしたがって述べることによ       ハはヨ  り、これら七行付訓本類の異同について取り敢えず明確にしておこうと思う。 一   七 行 付 訓 本 は甲・乙・丙の三類に大別できる 1 見出し字について 2 漢文注について 3 付刻カナについて

(2)

和 洋 女 子 大 学 紀 要   第 三十二集︵文系編︶      二 ︵注1︶ 叙上の他に﹁洛陽二条通二王門町開版焉﹂なる陰刻刊記の一本が別にあり、慶長十七年版と同じ頃の開版と見倣されている。 ︵ 注2︶ ﹁三重韻付訓本の原初形態について﹂︵﹃國語史學の爲に﹄︿第二部﹀昭和61年5月︶ ︵注3︶ 七行付訓本としては延宝二年版、元禄五年版なども存するが、これらは増補本である。本調査の対象はそれ以前に成立した、奥村三雄

氏の言われる﹁原三重韻﹂︵﹃聚分韻略の研究付駝財棚締㍊酬﹄昭和48年6月︶としての七行本であることは言うまでもない。なお、七行付訓     本には刊記を有しない無刊年本︵﹁刊記墨丁﹂と﹁無刊記﹂の二種︶が存するが、本論文では有刊記本のみを扱い、無刊年本についての考     察 は別に論ずることにする。 一

七 行 付

訓本は甲・乙・丙の三類に大別できる

       ま     有刊記七行付訓本は、寛永三年版より慶安三年版に至る十九の版が認められるが、本文はすべて百二十七丁オ最終行で終わっており、 尾題﹁聚分韻略入聲終﹂も同ウ第二行に位置している。今、序・祓1無刊年本は別にしても、大概の有刊記本には序︵五葉︶、蹟二葉︶       ハ    を有するーの書体の違い、そこにおける訓の有無、本文を含む単辺・双辺などの別により分類を試みると左表の如くなる。このうち、 単 辺と双辺の違いに着目すると、七行付訓本は甲・乙・丙の三類に大別することができる。   体 裁 の相違がそのまま本文の内容に↓致するとは必ずしも言えないが、七行付訓本に関する限り、かなりの相関性が認められるのも 事 実であるー勿論この場合、同類どうしの間に違いが存しないという訳ではない。しかし、それらの違いを別にして他の類との関係 を見ていくと、各類に所属する版種は他の類とは異なる幾つかの共通点が見出される  。以下、これについて明らかにしていくこと にする。 ω

§三年叉月吉ヅ水楽町藷助兵衛   ︵国会図嘉藁゜・F㌣∪・]・⑳三§・出忠雄先生蔵本︶

②   寛永五年/道伴梓行       ︵国会図書館蔵本゜。巳ふ−。o㌫零む・︿﹂⑳No。﹀︶ ③

寛水七歳隈三月吉日       ︵国会図書館蔵否・・﹂ω已山田忠雄先生蔵本︶

(3)

ω   寛永八年      ︵未見︶ ⑤   寛永九壬申仲/春吉旦新刊行      a本   ︵国会図書館蔵本゜。巳゜・。−oo一切自。。︿﹂OωN>・山田忠雄先生蔵本︶ ⑥   寛永九壬申仲/春吉旦新刊行       b本       ︵拙蔵本︶ ⑦   寛永九壬申仲/夏吉旦新刊行      c本       ︵山田忠雄先生蔵本︿未見﹀︶       り  ⑧   寛永癸酉三月吉旦/中野氏道伴新刊行     [木記]       ︵山田忠雄先生蔵本︶       二条 ⑨   寛永拾五寅歳孟春吉辰/  仁左衛門       ︵国会図書館蔵本斗︺°。声ω−品∀ oo   寛永十六年/五月吉日梓      ︵国会図書館蔵本。。=ふ−。〇一器ぺ・。︿﹂Φω⇔﹀・慶応大学図書館蔵本︿ト。NO−ω⑳−﹂﹀︶ ω 裏撹壬午下夏士・日/柳馬場通二条下町/士。野屋権兵衛新板 ︵国会図圭臼館蔵本・.≒・。−・,9﹃・§N>.山田中雄先生蔵本︶ ω

寛永岬下夏吉旦/三條通菱屋町/林甚右衛門新板   a本                                              ︵国会図書館蔵本゜。=﹄−oo㌫自む・︿﹂⑦置﹀・山田忠雄先生蔵本・酒井憲二先生蔵本︶ ⑬   寛永甲申初冬上旬/書林豊興堂新梓刊        b本      ︵山田忠雄先生蔵本︶ ⑭  正保二歳四月吉旦/中野氏道伴新刊行    [木記]a本      ︵拙蔵本︶ ㈲ 正

保二配初冬/野田弥兵鳳     b本     ︵国会図書館蔵奎﹂﹂°・・由§・・︿曇﹀︶

08 正

保三丙戌初冬新板       ︵山田忠雄先生蔵本︶

      ザ       なヨ  oo  正保丁亥孟冬日/書林豊興重校刊      [木記]      ︵未見︶ ⑱  慶安元年      ︵未見︶ ⑲

慶安三庚寅年/三條通菱屋町/林甚右衛門刊.圧4.       ︵拙蔵本︶

重韻七行付訓本︵原三重韻︶について︵三澤︶      三

(4)

和 洋 女 子 大 学 紀要 第三十二集︵文系編︶      四                                                                       無 刊 年 本 ︵ 無 刊 記︶⋮⋮−−−本調査対象外 ※   但 し、蹟文は単辺になっており、序・践︵単辺 対 双辺︶による分類は寛永二十↓年b本に限り例外となる。

(5)

︵注 1︶ 慶安三年版は普通六行本に位置付けられているが、拙蔵の一本は﹃伊呂波韻﹄︵正保二年 林甚右衛門︶との合綴ながら、上記刊記を有      する七行本である。なお、本論文では﹃国書総目録﹄、奥村三雄氏 前掲書 、奥野彦六氏﹃江戸時代の古版本﹄などに依り、七行付訓本      の版種を十九︵﹃国書総目録﹄にある正保五年版八国会・亀田▽は正保二年版の誤りである︶としたが、更に追加される可能性もある。 ︵注2︶ 書体の違いとは、即ち楷体か行体かということであるが、これに依る違いが左の如く若干認められる。         ω   例えば、序文第一丁を見ると、行体は訓の有無に関係なく各行とも十一字であるのに対し、楷体では十二字になっている。したがっ          て、序文末尾の行も行体は第五丁ウ最終行、楷体は同第三行目となるが、楷体には、その残り四行に乾坤門・時候門などの門名が各         行 三 門ずつ表示されている。         ②  序文第二丁以降に見られる門名を、行体は黒地白抜きの陰刻で示しているが、楷体にはこのような陰刻表示は見られない。ーな          お、これに関しては行体においても相違が認められ、序文が双辺のものは﹁虚者/以爲雨部﹂︵四丁ウ第二行∼第三行︶が陰刻になっ          ていない。         ③  践文後半葉は行体では五行存するが、その第五行目に存する﹁其後﹂の文字が、楷体では前行に位置し、四行になっている。         但 し、右⑧に関し、行体四行の版種も認められる。寛永十九年版と正保二年a本の二本である。両者の関係︵字体は酷似しているが同      一ではない︶は、その第四行﹁秋晦日一山翌一寧讃書其後﹂において、他の行体︵以下、﹁五行本﹂と仮称︶に対して左の如き字体の相違       や 不備がともに認められることから、正保二年a本は、恐らく、寛永十九年版を冠彫したもの︵但し、本文は寛永十九年版と同一ではな       く、カナが追加されている︶であると見倣すことができる。           ① 五 行本は﹁秋・山・受・護・書﹂などの字を他行と同様に行体につくるが、寛永十九年版・正保二年a本は楷体かそれに近い書           体につくり、行体としては不統一となっている。           ② また、同じ行体でも﹁晦﹂の字を五行本は﹁擁、寛永十九年版・正保二年a本は﹁堕につくる。           ③ この他、寛永十九年版・正保二年a本には﹁其後﹂に存する送り仮名﹁ノ・二﹂がない。         ところで、右の相違︵五行と四行︶は、寛永十九年版の刊記が三行であることを考慮に入れると、七行本である以上、五行のままにし       て置くとどうしても一行分多くなってしまい、第五行目の二字︵﹁其後﹂︶を前行に移さざるを得なくなった︵その際に①・③のような不       備 が 生 じてしまった︶という事情があったのではあるまいか。なお、第四行目において以上の操作が可能であったのは、第一行十一字、 三 重 韻 七 行 付訓本︵原三重韻︶について︵三澤︶      五

(6)

和 洋 女 子 大学紀要 第三十二集︵文系編︶      六     第二行十二字、第三行十三字であるのに対し、第四行では二字分に相当する﹁寧﹂の字もあって十字︵五行本︶しかなく、他行に比べて     字 数 が 少 なかったことに依るものと思われる︵←注7の写真参照︶。 ︵ 注 3︶ 刊記︵﹁豊興﹂は﹁豊興堂﹂とあるべきか︶等については、川瀬一馬氏﹃古辞書の研究﹄︵榔頁︶に依った。 ︵注 4︶ 七行付訓本の刊記はすべて践文後半葉に認められるが、本書では本文百二十七丁ウ第四行以降に上記刊記が刻されている。但し、別の     版 のものが一部混入している取揃本であり、序・駿を存しないが、本書が寛永二十一年a本の後印本であることは間違いない。 ︵ 注 5︶ 去声廃韻十二の位置に関し、寛永七年版と他の七行付訓本との間には相違が認められる。寛永七年版がその位置︵三十八丁オ第四行︶  を第一行に置くために三十八丁を更に一葉設けている︵版心には﹁又三十八﹂とある︶ことに依るのであるが、これは寛永七年版の大き      な特徴と言える。 ︵注 6︶ 序・祓に関しては寛永十五年版において新たに彫られたものであるが、本文は寛永三年版と同一である。寛永十五年版が他の版に比べ      て摺刷のよくない箇所︵国会図書館蔵本の八・十丁は別の版のものである︶がまま見られることも、本文に関する限り寛永三年版の後印      であることを物語っていると言えよう。 ︵注7︶ 改装本であり、序文を有しないが、改装の際に除去されたものと見倣し、ここに収めた。なお、寛永九年版に関し、a本とb本の刊記      は左に示す如く酷似しているが、 つ一つの文字は同一ではない。特に、第三行︵祓文︶の末字﹁季﹂の書体は明らかに異なっている。                                                             本                                                     蔵                                                     館

       ゜     ﹁

                                                    書

      本

                                                    図      b                                                     会

      年

                                                    国      9                                                     a       一                                                     年                                                             永                                                                                                          一

(7)

1 見出し字について   見出し字に関し、甲・乙・丙との間には、左の関係において文字の違いがそれぞれ若干認められる。   ω   甲類 対 乙類 対 丙類     ① 上

声 紙旨止韻四 気形門 軒︵甲類︶ー・胚︵乙類︶ー胚︵丙類︶

  この見出し字の漢文注は﹁人名﹂であり、﹃廣韻﹄の﹁鹸﹂︵大也⋮︶とは一致しないが、﹁集韻﹄に ⋮引春秋傳、呉有太宰踏。或杁 不 =句読点は筆者。以下同様︶ とある。丙類の﹁胚﹂が﹁⊥踏﹂と同義であることが判る。また、乙類の﹁胚﹂は﹃名義抄﹄︵観智院本。 以 下 同様︶に﹁都飴﹂︵僧下六九︶が認められることから、これもこの中間に存する異体字と見倣すことができる。一方、甲類の﹁紅﹂ は﹁不=を﹁王﹂の字の如くつくるが、これは﹁不=の誤りであろう。   ②

甲類対乙・丙類

    ① 上

声 銑彌韻十六 態藝門 俊︵甲類︶ー挽︵乙・丙類︶

この見出し字の漢文注は﹁傭 ﹂であり、﹃廣韻﹄の﹁挽﹂には 備挽 とある。甲類の﹁俊﹂の字は、﹃名義抄﹄﹁大漢和蔚典﹄などは検出されない。   ③

乙類対甲・丙類

                                        ︹類︺      ︹甲・丙類︺    

①去声 書祭韻八 

虚 押 門

 繋 

→← 

繋     ② 入

声 合蓋韻十六 態藝門 拉 

ー 

拒   これについては、次の如く判断できる。   ① この見出し字の漢文注は﹁縛1﹂であり、﹃廣韻﹄の﹁繋﹂には縛繋又⋮とある。乙類の﹁繋﹂は﹁繋﹂の通字︵﹃名義抄﹄ ︿ 法中一二五﹀︶であるが、甲類丙類の﹁繋﹂の字は、﹃名義抄﹄﹃大漢和齢典﹄などには検出されない。   ② この見出し字の漢文注は﹁折也盧/合切﹂であり、﹃廣韻﹄の﹁拉﹂には折也⋮⋮盧合切とある。甲類丙類の﹁拉﹂は﹁抵﹂ 三 重 韻 七 行 付 訓 本 ︵原三重韻︶について︵三澤︶      七

(8)

洋女子大学紀要 第三十二集︵文系編︶      八 の 俗 字 ︵ ﹃名義抄﹄︿佛下本六三V︶であり、文脈を満足しない。  この他、左の如き字体の相違も認められる。                                        ︹乙類︺      ︹甲・丙類︺     ◎ 上 平

声支脂之韻四 乾坤門岐 ∼ 

◎  下平声 先仙韻一   態藝門  疫    →←    痙     ⑧  同   庚耕清韻八   態藝門  勅    →←    勅        ユザ           ◎  上声  寝韻二十七   虚押門  寝    ー    滞        ヨ      ⑧  去声  宥候幼韻二十九 虚押門  就    ー    就     ㊦  入声  陪饗昔韻十二  器財門  壁    →←   壁       ︵注4︶     ㊤  同   職徳韻十四   気形門  鯛    ー    鯛   ω  丙類 対 甲・乙類                                        ︹丙類︺      ︹甲・乙類︺     ① 上 平

声江韻三  乾坤門 瀧 

ー 

瀧     ② 上 声

 瑛恭撮韻二十九複用門 嶢 

→← 

娩       ︹注5︶     ③ 入

声 屑蒔韻十 

虚押門 鉄 

→← 

鉄  これについては、次の如く判断できる。   ① この見出し字の漢文注は﹁南人/名濡﹂であり、﹃廣韻﹄の﹁瀧﹂には南人名濡⋮とある。甲類乙類の﹁瀧﹂の字は、﹁瀧﹂ の 誤 り︵﹁瀧﹂︿上平声冬鍾韻二気形門V、﹁籠﹂︿同生植門﹀などは甲類乙類も丙類と同様につくる︶である。   ② この見出し字の漢文注は﹁雲雨/ーー﹂であり、﹃廣韻﹄の﹁溌﹂には雲雨克。詩云有涛凄凄とある︵﹁凄﹂は﹃説文﹄雨雲 起 也、﹃廣韻﹄雲見︶。丙類の﹁峻﹂︵﹁涛﹂と同韻︶は嶢磁山。日没庭  ︵﹃廣韻﹄︶であり、文脈を満足しない。一方、甲類乙類の﹁娩﹂ の 字 は ﹃ 廣 韻﹄﹃集韻﹄に見られないが、﹃大漢和辞典﹄に依ると入声合韻の所属であり、意義も異なる︵﹃玉篇﹄轟名︶。両者とも誤り

(9)

である。 ③ この見出し字の漢文注は﹁少也﹂であり、﹃廣韻﹄の﹁歓﹂には少也。説文日器破也⋮とある。﹃廣韻﹄、丙類の﹁鋏﹂は﹁訣﹂ の 異 体 字 ︵ ﹃名義抄﹄∧僧中二二﹀︶であるが、甲類乙類の一,鉄﹂は﹁刺也﹂︵﹃廣韻﹄︶であり、文脈を満足しない。  この他、左の如き字体の相違も認められる。                                        ︹丙類︺      ︹甲・乙類︺       ︵注6︶     ◎  上平声 支脂之韻四   時候門  碁    →←    碁    

◎同 

同   

気形門 彌  ー  彌

    @ 同   魚韻六     態藝門  暮    →←    響     ◎

同 

虞 模 韻 七    

気形門 鰭  →←  纏

      ︵注7︶    ⑥︶去声  遇暮韻七    虚押門  暗    ー    賠       ︵注8∀     ◎ 入声  屋韻一     支体門  殻    →←    殼          なお、右に関し、甲類所属の寛永七年版と乙類所属の寛永十年版とを別にするならば、この対立は更に左の二例を加えることができ       り  る︵aは寛永七年版が、bは寛永十年版が丙類と一致する︶。                                         ︹ 丙類︺      ︹甲・乙類︺    a 上声  感敢韻二十八  支体門  髭    →←   髭     b 入声  屋韻一     気形門  虚    ー    慮これについては、次の如く判断できる。  a この見出し字の漢文注は﹁髪/垂白ハ﹂であり、﹃集韻﹄の﹁髭﹂には 髪垂見⋮ とある︵﹃廣韻﹄髪垂︶。甲類乙類の﹁髭﹂の字 は、﹃名義抄﹄﹃大漢和離典﹄などには検出されない。   b この見出しの字の漢文注は﹁姓也﹂であり、﹃廣韻﹄の﹁虚﹂には ⋮又姓。虚子賎是也 とある。甲類乙類の﹁慮﹂の字は﹃廣 韻﹄﹃集韻﹄に見られないが、﹃大漢和鮮典﹄に依ると入声質韻の所属であり、意義も異なる︵﹃玉篇﹄愁克︶。 三 重 韻 七 行 付 訓本︵原三重韻︶について︵三澤︶      九

(10)

和 洋 女 子 大 学 紀要 第三十二集︵文系編︶      δ ︵注 1︶ 七行付訓本は、九行付訓本と同様に門表記を欠如する︵前記 拙論皿頁︶。 ︵ 注2︶ 乙類の﹁寝﹂は﹁滞﹂の異体字︵﹃名義抄﹄︿法下五五V︶である。なお、七行付訓本はこの見出し字の漢文注を﹁潰也﹂とするが、﹁潰﹂      は﹁漬﹂の誤りである︵﹃廣韻﹄の﹁掃﹂には 漸也。漬也⋮ とある︶。 ︵注 3︶ 七行付訓本は九行付訓本同様に﹁幼﹂の字を欠如する。 ︵注 4︶ この他、﹁即・卿一︵入声職徳韻十四虚押門・複用門︶が同様の関係になっている。 ︵ 注5︶但し、正保三年版は﹁鉄﹂を﹁鉄﹂に改めているため、この例は除外すべきかもしれない。 ︵ 注 6︶ この見出し字の漢文注は﹁周年﹂であり、﹃廣韻﹄の﹁碁﹂には 鯛時取棋肚 とある。﹃名義抄﹄には﹁碁﹂の字は検出されないが、﹁碁﹂      ︵佛中一〇二︶に﹁メクル﹂、﹁棋﹂︵法下一九︶に 碁二今 とあり、﹁周年﹂の漢字注が認められることから、﹁碁﹂は﹁碁﹂の異体字で       あることが判る。 ︵ 注 7︶ この見出し字の漢文注は﹁朗也﹂であり、﹃廣韻﹄の﹁曙﹂には 明也。朗也 とある。甲類乙類の﹁膳﹂の字は、﹃大漢和餅典﹄に依       ると﹁礁﹂と同義とあるが、﹃名義抄﹄の﹁賠﹂︵佛中=二九︶には﹁アブ﹂、﹁暗﹂︵佛中九九︶には﹁明・ホカラカ・サトル・アブ﹂とあ       り、ともに﹁アブ﹂の訓が認められることから、﹁胎﹂は﹁暗﹂の異字体として通用していたことが判る。 ︵ 注8︶ 寛永七年版は﹁殼﹂の﹁支﹂を﹁支﹂につくるが、丙類の字体とは明らかに異なっている。 ︵ 注 9︶ これは、両本に訂正が多く見られることに依るものである。 ︵ 注10︶ 但し、aは寛永七年版では﹁髭﹂になっており、丙類と全くは一致しない。なお、乙類所属の寛永十年版を除くと、前項③︵乙類 対       甲・丙類︶の関係においても、左の一例を追加できる。    

  ①上平声虞模韻七気形門

賠 ︵ 類︶ ー 蛛︵甲・丙類︶        この見出し字の漢文注は﹁蜘ー﹂であり、﹃廣韻﹄の﹁蛛﹂には  ︵竈⋮亦作蜘蛛︶同上 とある。乙類の﹁蛸﹂は去声號韻の所属であ       り、意義も異なる︵﹁蛤﹂の字は﹃廣韻﹄に見られないが、﹃集韻﹄に 轟名。蜴也 とある︶。乙類の誤りである。 2 漢文注について

(11)

漢文注に関し、甲・乙・丙との間には文字の違いが若干認められるが、その対立は前項と同様に四通り見られる。 ω

甲類対乙類対丙類

① 上 平

声支脂之韻四 複用門 偲圏閂窃︵甲類︶→←糟醐友切︵乙類︶ー嬬川喫切︵丙類︶

 ﹃廣韻﹄偲嚇贈馴酬友とある。甲類丙類の注﹁明犬﹂、﹁明大﹂では文脈を満足しない。 ②   甲類 対 乙・丙類                                       ︹ 乙・丙類︺  

①去声寅至志韻四 虚押門 臓暴也  

甲類は変、﹁暴一の﹁日﹂を﹁口﹂につくる。       は  

②同 髄榛醸韻三十二態藝門 窒軒   甲類は変、﹁下﹂を﹁口﹂につくる。

③  乙類 対 甲・丙類                                        ︹甲・丙類︺   ① 上 平

声元蒐痕韻十三 食服門 禅揮同  

乙 類 は﹁輝﹂の﹁巾﹂を﹁申﹂につくる。

同 寒桓韻十四 気形門 俊官卿素  乙類は﹁狸﹂の獣篇を禾篇に、﹁児﹂を﹁見﹂につくる。

  ③上声 尾韻五  生植門 卉水  

乙類は﹁水﹂を﹁木﹂につくる。

  ④去声 眞至志韻四 態藝門 奨珊馳肝秘  乙類は﹁吏﹂を﹁芙﹂につくる。

    ⑤ 入 声

 屋韻一  生植門穀楮也  

乙 類 は﹁楮﹂の木篇を禾篇につくる。  これについては、次の如く判断できる。 ① ﹃廣韻﹄輝嬢/蟹揮阯とある。乙類の注﹁輝﹂の字は、﹃名義抄﹄﹃大漢和離典﹄などには検出されない。 ②﹃廣韻﹄稜藩醐とある︵﹁竣﹂に反切は見られないが、同一の小韻である﹁酸﹂に素官切とある︶。甲類丙類の注﹁狙﹂は﹁貌﹂ の異体字︵﹃世尊寺本字鏡﹄︿第二冊七三オV︶であるが、乙類の注﹁税﹂︵或は﹁税﹂︶の字は、﹃名義抄﹄﹁大漢和蔚典﹄などには検出 されない。 三 重 韻 七 行 付訓本︵原三重韻︶について︵三澤︶       =

(12)

和 洋 女 子 大学紀要 第三十二集︵文系編︶      三

③ ﹃廣 韻﹄卉轟魏名とあり、三重韻と一致しないが、﹃詩経﹄︵小雅、出車︶に﹁卉木﹂︵草木の意︶の熟語が認められる。甲類丙類 の 注 ﹁卉 水﹂では文脈を満足しない。

④ ﹃廣韻﹄姦麗恢一奨阻翻とある︵﹁晶﹂に反切は見られないが、同一の小韻である﹁備﹂に平秘切とある︶。乙類の注﹁実﹂ の 字 は、﹃名義抄﹄﹃大漢和嚇典﹄などには検出されない。但し、乙類の﹁突﹂は﹁囮﹂と﹁大﹂との間が若干離れているため、﹁輌﹂を 削除する理由が何かあったのかもしれない。

⑤ ﹃廣韻﹄穀躰とあり、三重韻と一致しないが、﹃説文﹄に楮也⋮とある。乙類の注﹁楮﹂の字は、﹃名義抄﹄﹃大漢和辞典﹄な どには検出されない。   この他、左の如き対立も認められる。                                        ︹甲・丙類︺     ◎  下平声 先仙韻一    複用門  援 混ー音圓    乙類は﹁圓﹂を﹁圓﹂につくる。       な  

◎  同   肴韻三     態藝門  焦 暢響娠    乙類は変、﹁國﹂の﹁或﹂を﹁虫﹂につくる。     ⑧

同 

庚 耕 清 韻 八   虚 押

門 廣墳也  

乙 類 は ﹁ 績﹂の糸篇を﹁苦﹂につくる。     ◎  上声  銑彌韻十六   態藝門  践 ー踏      乙類は﹁踏﹂の﹁水﹂を﹁禾﹂につくる。     ⇔ 去声  緯韻三     乾坤門  巷 街−     乙類は変、﹁街﹂の﹁圭﹂を﹁車﹂につくる。   ω 丙 類 対 甲・乙類                                        ︹甲・乙類︺     ① 上 平

声虞模韻七 

態 藝

門 謳と  

丙類は﹁柾﹂を﹁桂﹂につくる。        ペモ ヨ 

② 下 平 声 麻 韻 六

器 財 門

 珈漱  

丙 類 は﹁節﹂を﹁飾﹂につくる。

③ 去 声

 霧祭韻八  態藝門 隣難悟  丙類は﹁踏﹂を﹁齊﹂につくる。

      なき

同 敬諄勤韻二十六器財門幡灘嬬  丙類は﹁童竺を﹁董﹂につくる。

(13)

  これについては、次の如く判断できる。

① ﹃廣韻﹄証髄とある︵﹁柾﹂邪曲也⋮∧﹃廣韻﹄﹀︶。丙類の注﹁証桂﹂では文脈を満足しない。

② ﹃ 廣韻﹄珈漱とある。甲類乙類の注﹁節﹂では文脈を満足しない。

③﹃廣韻﹄隣識又濟肚とある。丙類の注﹁齊﹂は、﹃集韻﹄の﹁踏﹂︵︿齊韻▽説文登也⋮︶に或作隣、齊⋮とあり、﹁踏﹂の省 文 で あることが判る。両者とも文脈を満足する。

④ ﹃ 廣韻﹄燈螺露馳とある二幡﹂に反切は見られないが、同一の小韻である﹁張﹂に猪孟切とある。﹁緒﹂は﹁吊也﹂∧﹃説 文﹄﹀︶。甲類乙類の注﹁書﹂は﹁蓋﹂の異体字︵﹃名義抄﹄︿僧中一四V︶であり、文脈を満足しない。七行付訓本では﹁描﹂︵下平声 粛 宵韻二態藝門︶の漢文注をすべて﹁ 書﹂︵﹁書︹の異体字︶につくることから、恐らく、﹁書﹂のつもりで﹁書﹂と刻してしまったも のと思われる。この他、左の如き対立も認められる。                                         ︹ 甲・乙類︺     ◎  上平声 東韻一     態藝門  忠 −節     丙類は﹁節﹂の竹冠を草冠︵三画︶につくる。

◎  同   冬鍾韻二    乾坤門  印 臨︵注5︶   丙類は﹁臨﹂の﹁⊥﹂を=﹂につくる。     ⑧ 同   支脂之韻四   気形門  鵬 鴛−     丙類は﹁鴛﹂の﹁囲﹂を﹁臨﹂につくる。     ◎

同 

文欣韻十二 

押門 般衆也  

丙 類 は﹁衆﹂を﹁衆﹂につくる。

⑧  下平声 章談韻十三   器財門  鐸醐      丙類は﹁劒﹂の﹁刀﹂を﹁刃﹂につくる。     ㊦  入声  阻萎昔韻十二  支体門  脊 皆ー     甲類乙類の﹁比﹂は変、丙類は﹁北﹂につくる。     ㊤ 同   治押韻十八   虚押門  爽 −持     丙類は変、﹁持﹂の手篇を木篇につくる。   なお、見出し字の場合と同様に、甲類所属の寛永七年版と乙類所属の寛永十年版とを別にするならば、この対立は更に増加する︵d        は両本とも丙類と一致するが、a・c・e・9は寛永七年版が、b・fは寛永十年版が丙類と一致する︶。                                         ︹ 甲・乙類︺ 三 重 韻 七 行付訓本︵原三重韻︶について︵三澤︶       三

(14)

和 洋 女 子 大学紀要 第三十二集︵文系編︶      西

 a 下平声 草談韻十三   支体門  疾 ㎞概     丙類は﹁問王﹂を﹁胸上﹂につくる。     b 同   盤添韻十四   器財門  帽 相      丙類は﹁惟]を﹁帷﹂につくる。    C 去声  髄添臓韻三十二 器財門  粟 るノ     丙類は﹁ ノ﹂を﹁ー版﹂につくる。

d同 同   虚押門鑑趨餉  

丙 類 は﹁走色﹂の﹁走﹂を﹁美﹂につくる。

 e同 同   虚押門臓纈卵  丙類は﹁配﹂の﹁目﹂を﹁昔﹂につくる。

f同 同   複用門 碑聾ハ  丙類は﹁載﹂を﹁繊﹂に、﹁電共﹂を﹁電光﹂につくる。

    g 入声  屋韻一    生植門  宿憎      丙類は﹁憎﹂を﹁菖1﹂につくる。   これについては、次の如く判断できる。  a ﹃廣韻﹄疾鳩紅とある︵丙類の﹁胸﹂は﹁胸﹂の異体字︿﹁天正十八年本節用集﹄など﹀︶である。甲類乙類の注﹁問王﹂では文 脈 を満足しない。

b  ﹃廣韻﹄帽酬縮噸酩噺とあり、三重韻と全くは一致しないが、﹁幡緯﹂の﹁緯﹂は﹁帷﹂と同義︵﹃廣韻﹄一説軍帳也︶である。甲類 乙 類 の 注 ﹁惟﹂は批惟、醜面⋮  ︵﹃廣韻﹄︶であり、文脈を満足しない。  C  ﹃廣韻﹄栗潴池⋮湘品旧梨版.とある。甲類乙類の注﹁ 1﹂における第二番目の略符号は、最初のそれとは異なり、片カナの﹁ノ﹂ の如く刻し、﹁版﹂の字の初画の如く見える。恐らく、甲類乙類の刻し忘れと思われる。

d  ﹃廣韻﹄髄美拍池.艶俗とある︵丙類の﹁美﹂は﹁美﹂の異体字︶。甲類乙類の注﹁走色﹂では文脈を満足しない。   e ﹃廣韻﹄臓酒酷珠厚とある︵寛永七年版を除く七行付訓本は﹁味﹂を﹁未﹂につくるが、口篇の省文である事実が証明されぬ限り、 文 脈 を満足しない︶。甲類乙類の注﹁配﹂の字は、﹃名義抄﹄に﹁観﹂︵僧下五九︶の俗字として認められないこともないが、﹁イタハル﹂ とあり、音心義が異なる。

f  ﹃廣韻﹄潭吸心とあり︵﹁潭﹁の俗字は﹁碑一であるパ﹃名義抄邑法中四、∨が、七行付訓本は﹁碑﹂に誤る︶、三重韻と]致しない が、﹁繊﹂に 繊潭、電光⋮ とある︵丙類の﹁繊﹂は﹁繊﹂の俗字△﹁正字通﹄,Mである︶。甲類乙類の注﹁裁﹂は、﹁廣韻⋮の﹁裁﹂に

(15)

裁細。又山韮也。今通作裁⋮ とあり、﹁繊﹂とは意義が異なる。また、甲類乙類の注﹁電共﹂も文脈を満足しない。   g  ﹃廣韻﹄宿縮/...とある。甲類乙類の注﹁憎﹂の字は、﹃名義抄﹄﹃大漢和辞典﹄などには検出されない。恐らく、甲類乙類が略符 号 ︵﹁ー﹂︶を漢字の一部と見倣し、立心篇にしてしまったものと思われる。 ︵注 1︶ この韻目番号を七行付訓本は九行付訓本同様に﹁二十二﹂に誤る。 ︵注2︶ この見出し字︵肴韻︶は﹃廣韻﹄に見られないか、﹃詩経﹄︵大雅、蕩︶に 魚焦干中國 とある。七行付訓本は﹁干﹂を﹁工﹂につくる     が、これでは文脈を満足しない。 ︵注3︶ 但し、正保三年版は﹁飾﹂の﹁食﹂を﹁食﹂に誤る。 ︵注4︶ 但し、正保三年版は﹁書=の﹁田﹂を﹁日﹂に誤る。 ︵注5︶ ﹁縣﹂は﹁縣﹂の異体字︵﹃名義抄﹄仏佛下本二一▽︶であるが、寛永十九年版と正保二年a本は﹁縣﹂につくる。 ︵注6︶ 但し、aは寛永七年本では﹁胸王﹂となっており、丙類と全くは一致しない。 3 付刻カナについて   甲・乙・丙との間には、付刻カナ︵付音・付訓︶の違いや有無に関する違いがそれぞれ認められる。 ω  先ず、カナの違いに関する三類の対立は、例えば付訓のみを取上げて見ても、左の関係においてそれが認められる。   ω

甲類対乙類対丙類

    ① 圭 ︵入

声 屑辞韻十 

態藝門︶ヲイテル︵甲類︶→←ヲイホレタリ︵乙類︶ーヲイホルタリ︵丙類︶   この見出し字の漢文注は﹁八十爲/1﹂であり、﹃廣韻﹄の﹁藁﹂には 老也。八十爲素。亦作書 とある。﹁董﹂、﹁董﹂︵﹁字鏡紗﹄       ヲイボレ      イタル ∧ 天 文 本。以下同様。巻四老部﹀ヲヒイナム︶に右の訓は認められないが、﹃廣本節用集﹄に 老惇⋮⋮⋮ ー至 とある。老い至れば 惇れるのは常のことであり、甲類の訓﹁ヲイテル﹂は﹁ヲイホル﹂の誤りと判断できる。一方、丙類の訓﹁ヲイホルタリ﹂は﹁ヲイホ 三 重 韻 七 行 付 訓本︵原三重韻︶について︵三澤︶       一五

(16)

    和洋女子大学紀要 第三十二集︹文系編︶      =ハ レタリ﹂の誤りであること、明らかである。   回

甲類対乙・丙類

                                           ︹甲類︺      ︹乙・丙類︺     ① 磯 ︵上 平 声 微

韻五  態藝門︶イ・ウス ー イ・ウエ ︵ウエルの訓は共通︶

    ② 衣 ︵

同 

同   食服門︶キモ  →← キモノ 

︵ キヌ・コロモの訓は共通︶     ③ 灌 ︵

同 虞模韻七  態藝門︶ヤスシ →・ ヤスル

    ④ 潭 ︵ 上

声  韻二十四 複用門︶ヌメルエ ー ヌメル

    ⑤ 魏 ︵ 去 声

 虞至志韻四 態藝門︶スツ  ー ハツ

    ⑥ 檜 ︵

同 

泰 韻 九     食 服

門︶ナマツ ー ナマス

    ⑦ 漏 ︵

同 宥候幼韻二十九時候門︶ウカツ ー ウカフ 

︵ モ ル の 訓 は 共 通︶     ⑧ 蹴 ︵ 入 声

 屋韻一  態藝門︶ヲル  →← ケル

  右 に関しては、次の如く判断できる。   ① この見出し字の漢文注は﹁飢也﹂である。﹁鱗﹂︵﹃廣韻﹄穀不熟︶の訓は﹃色葉字類抄﹄︵前田家本。上七ウ︶に﹁イヒウヱ﹂、﹃名 義抄﹄︵僧上一一〇︶に﹁⋮⋮ウへ・ウフ・イヒニウヘタリ・イヒウへ爪﹂︵﹃倭玉篇﹄︿慶長十五年本。以下同様。上、食部百二﹀イ・ ウヘス︶が認められる。甲類の訓﹁イ・ウス﹂は﹁イ・ウエ﹂の誤りか、﹁イ・ウヘス﹂の脱と判断できる。   ② これは、言うまでもなく甲類が﹁キモノ﹂の﹁ノ﹂の字を刻し忘れたものである︵﹃名義抄﹄︿法中二二六﹀キ牛︶。   ③ この見出し字の漢文注は﹁朧同/又﹂︵﹁曜﹂は﹁纏﹂の正字∧﹃名義抄﹄法下一二〇﹀︶である。﹁朧﹂︵去声遇暮韻七態藝門︶に       ヤスル  は漢文注﹁痩也/又﹂とあり、﹁ヤスル﹂の訓が三類ともに認められる︵﹃名義抄﹄∧佛中一二九﹀ヤせタリ、﹃易林本節用集﹄痩痩 醜︶。甲類の訓﹁ヤスシ﹂は﹁ヤスル﹂の誤りと判断できる。   ④ この見出し字の漢文注は﹁泥ー﹂である。﹃名義抄﹄の﹁浮﹂︵法上三〇︶には乙類丙類の訓﹁ヌメル﹂の名詞形﹁ヌメリ﹂が認 められるが、甲類の訓﹁ヌメルエ﹂では意味が通らない。或は、﹁ヌメル也﹂とすべきところを誤って﹁エ﹂と刻してしまったのであろ

(17)

うか。   ⑤ この見出し字の漢文注は﹁葱ー/塊同﹂である。﹃名義抄﹄の﹁塊﹂︵佛中一二︶には﹁或塊字﹂とあり、﹁塊﹂、﹁塊﹂︵法中一〇 一 ︶ には両者の訓﹁ハチ⋮⋮スツ⋮﹂、﹁ハヅ﹂が認められる。但し、甲類の訓﹁スツ﹂は注文の意に合致しないと見るべきか︵﹁塊﹂は        サンカン      キ ﹁ 葱 也﹂∧﹃説文﹄﹀であり、﹃廣本節用集﹄には 悪顔⋮⋮ 悦麟 とある∧﹃名義抄﹄法中九六 ハツ﹀。また﹁意﹂∧下平声箪談韻十        ハヂカホ      ハヂ       シ    三 態藝門﹀には漢文注﹁塊也﹂とあり、﹁ハチ・ハツル﹂の訓が三類ともに認められるが、﹁スツ﹂の訓はない︶。   ⑥ この見出し字の漢文注は﹁魚ー﹂であり、﹃廣韻﹄の﹁檜﹂には魚檜。説文日細切肉也とある︵﹃名義抄﹄︿佛中=五﹀ナ マ ス︶。甲類の訓﹁ナマツ﹂は﹃音訓篇立﹄の﹁檜﹂︵天上ニウ︶に認められるが、これでは﹁鯨﹂の意になってしまう。   ⑦この見出し字の漢文注は﹁ー/刻﹂であり、﹃名義抄﹄の﹁漏﹂︵法上一二︶には﹁モル⋮⋮ウカツ⋮⋮﹂︵﹃色葉字類抄﹄∧前田 家 本。下一〇四オ﹀モル。盧候也。 剋也。水下也︶の訓が認められる。乙類丙類の訓﹁ウカフ﹂は﹁ウカツ﹂の誤りと判断できる。   ⑧この見出し字の漢文注は﹁腸ー﹂︵﹁賜﹂は﹁践也﹂︿﹃廣韻﹄﹀︶である︵﹃名義抄﹄︿法上八五﹀化ル、﹃易林本節用集﹄ケル︶。 甲類の訓﹁ヲル﹂は﹁ケル﹂の誤りと判断できる。   内 乙 類 対 甲・丙類                                            ︹乙類︺      ︹甲・丙類︺     ① 著 ︵ 上 平

声支脂之韻四 生植門︶メトキ ー ツキメ

   

②隈︵同 灰胎韻十  虚押門︶ヲツル ・ー ウツル

    ③ 綱 ︵ 下 平

声陽唐韻七  器財門︶ヲホツナ →← アミ

    ④ 瘡 ︵ 上

声 梗歌静韻二十三態藝門︶ヤスル ー ヤスシ

    ⑤ 轡 ︵去 声

 寅至志韻四 器財門︶クツラ →← クツワ ︵クツワツナ∧或はクツワツラ﹀は共通︶

   

⑥悔︵同 隊代韻十一 態藝門︶クウル ー ツウル ︵クイの訓は共通︶

   

⑦姪︵入声 屑蒔韻十 

気形門︶ヲイ  →← ヲチ

    ⑧

惇︵同 藥鐸韻十一 器財門︶ヒツキ ー ヒツ 

︵ ハ コ の 訓 は共通︶ 三 重 韻 七 行 付 訓 本 ︵原 三 重韻︶について︵三澤︶       一七

(18)

和 洋 女 子 大 学 紀 要  第三十二集︵文系編︶      六     ⑨ 阻 ︵

同 阻饗昔韻十二 虚押門︶サハル ー ハサル ︵サ・ウの訓は共通︶

    ⑩ 測 ︵

同 職徳韻十四 態藝門︶ハカル →← ハタル

    ⑪ 亟 ︵

同 同   虚押門︶スミヤカ ー スミカ ︵シバくの訓は共通︶

  右 に関しては、次の如く判断できる。   ①この見出し字の漢文注は﹁ー策/也﹂であり、﹃廣韻﹄の﹁著﹂には嵩︵ヨモギ︶麗。笠者以爲策。説文云著、生千歳三百童。 易以爲敷⋮⋮、﹃集韻﹄の﹁策﹂には ⋮⋮一日著也⋮⋮ とある。乙類の訓﹁メトキ﹂は﹃倭玉篇﹄の﹁著﹂︵中、艸部百五十︶に﹁メ トギ﹂︵﹃名義抄﹄︿僧上六﹀メト・メトハ・キ、﹃易林本節用集﹄メドギ 艮草︶が認められるが、甲類丙類の訓﹁ツキメ﹂では意義が 異 なる。   ②この見出し字の漢文注は﹁下墜/也﹂である︵﹃名義抄﹄︿法中三九﹀オツ、﹃倭玉篇﹄︿下、阜部三百九▽ヲツル︶。甲類丙類の 訓 ﹁ウツル﹂は﹁ヲツル﹂の誤りと判断できる。   ③ この見出し字の漢文注は﹁紀ー﹂であり、﹃廣韻﹄の﹁綱﹂には綱紀。説文日維紘。縄也とある。乙類の訓﹁ヲホツナ﹂は﹃伊 京 集﹄の﹁綱﹂︵﹃名義抄﹄︿法中一二一﹀ツナ、﹃倭玉篇﹄︿下、糸部三百六十九﹀ヲ・ヅナ︶に認められる。↓方、甲類丙類の訓﹁ア ミ﹂は﹃音訓篇立﹄の﹁綱﹂︵人上ニウ︶に認められる︵﹃字鏡紗﹄の﹁綻﹂∧﹁綱﹂の異体字。巻五糸部﹀ヲホツナ・アミツナ・アミ︶ が、これでは注文の意に合致しない二紀綱﹂は小綱と大綱の意である︶。   ④この見出し字の漢文注は﹁痩/ー﹂であり、﹃集韻﹄の﹁猪﹂には痩、謂之瘡とある︵﹃廣韻﹄痩瘡、﹃名義抄﹄︿法下一二五﹀ 痩、﹃倭玉篇﹄︿中、﹁部百借七﹀ヤスル︶。甲類丙類の訓﹁ヤスシ﹂は﹁ヤスル﹂の誤りと判断できる︵←回i③︶。   ⑤この見出し字の漢文注は﹁馬ー﹂であり、﹃名義抄﹄の﹁轡﹂︵佛中六〇︶には﹁⋮⋮クツハ・クツハツラ﹂︵﹃倭玉篇﹄︿下、絡 部 三 百 七 十二﹀クツワ、﹁衛﹂︹上、行部百十▽クツハツナ︶の訓が認められる。乙類の訓﹁クツラ﹂は﹁クツワ﹂の誤りと判断でき る。   ⑥ この見出し字の漢文注は﹁改﹂である︵﹃名義抄﹄∧法中九四﹀クユ、﹃倭玉篇﹄八上、心部八十﹀クユル︶。乙類の訓﹁クウル﹂        ミヅカラクゥ ソミヲ はヤ行上二段動詞﹁クユ﹂の変化形であり、例えば﹃廣本節用集﹄には 自悔・罪⋮⋮ が見える。甲類丙類の訓﹁ツウル﹂は﹁クウ

(19)

ル ﹂ の 誤 りと判断できる。   ⑦ この見出し字の漢文注は﹁梯﹂であり、﹃廣韻﹄の一,姪﹂には姪梯。公羊傳云兄之子⋮⋮とある。﹁姪﹂の字はこの他入声 質術櫛韻四気形門にも認められるが、そこには漢文注﹁兄弟之子/⋮⋮﹂とあり、﹁ヲイ﹂の訓が三類ともに認められる︵﹃名義抄﹄︿佛 中一二﹀ヲヒ、﹃廣本節用集﹄ヲイ︶。甲類丙類の訓﹁ヲチ﹂は﹁ヲイ﹂の誤りと判断できる︵なお、﹁ヲチ︵ヂ︶﹂の訓は﹁舅﹂︿上声 有厚拗韻二十六気形門﹀。﹁叔﹂︿入声屋韻一気形門﹀などに認められる︶。   ⑧ この見出し字の漢文注は﹁棺﹂であり、﹃字鏡⑨﹄の﹁惇﹂︵巻二木部︶には﹁⋮⋮ヒツキ﹂︵﹃名義抄﹄∧佛下本=四﹀マカ リキ・エツリ・オホドコ︶の訓が認められる。甲類丙類の訓﹁ヒツ﹂は﹃倭玉篇﹄の﹁檀﹂︵中、木部百四十五。﹃廣韻﹄函也。又日小 棺︶に﹁ハコ・ヒツキ﹂の訓とともに認められるが、﹁ヒツ﹂は箱の意︵例えば、﹁ヒツ﹂の訓は﹁櫃﹂にも認められる仏﹃名義抄﹄佛下 本一〇二Vが、﹁櫃﹂は﹃廣韻﹄に 櫃俵 とあり∧七行付訓本では去声宣至志韻四器財門にあり、﹁ヒツ・カラヒツ﹂の訓が認められ る﹀、﹃集韻﹄の﹁置﹂には 説文匝也。或作彊、櫃⋮⋮ とある︶であり、注文の意に合致しない。   ⑨ この見出し字の漢文注は﹁擬也﹂であり、﹃倭玉篇﹄の﹁阻﹂︵下、阜部三百九︶には﹁⋮⋮サワル﹂、﹃名義抄﹄の﹁擬﹂︵法中二︶ には﹁サハル⋮⋮﹂の訓が認められる。甲類丙類の訓﹁ハサル﹂は﹁サハル﹂の誤りと判断できる。   ⑩ この見出し字の漢文注は﹁度也﹂である︵﹃名義抄﹄︿法上四二▽ハカル︶。甲類丙類の訓﹁ハタル﹂は﹁ハカル﹂の誤りと判断 できる。   ⑪ この見出し字の漢文注は﹁急也﹂であり、﹃名義抄﹄の﹁亟﹂︵佛上七五︶には﹁スミヤカニ⋮⋮﹂の訓が認められる。甲類丙類 の 訓 ﹁ スミカ﹂は﹁スミヤカ﹂の脱と判断できる。   ⇔  丙類 対 甲・乙類                                          ︹丙類︺       ︹甲・乙類︺     ① 夷 ︵上 平

声支脂之韻四 虚押門︶タイラカ ー タイラク︵グ︶︵エヒス・タイラカナリの訓は共通︶

    ②

章︵下平声草談韻十三 虚押門︶ヲヨソ  →← ヲヨフ

   

③髪︵同 同  

用門︶ケミタレ ー ケミタレカミ

三 重 韻 七 行 付 訓本︵原三重韻︶について︵三澤︶       一九

(20)

和 洋 女 子 大 学 紀要 第三十二集︵文系編︶      二〇     ④ 徴 ︵ 上 声

 紙旨止韻四 態藝門︶せムル  →・ サムル

       ︹注2︶     ⑤ 批 ︵

同 同  

虚 押

門︶サ・ラナミ →← サ・ナミ 

ム の 訓 は 共 通︶     ⑥ 沸 ︵ 去 声

 未韻五  虚押門︶ワク  →・ フク  

︵ タキルの訓は共通︶     ⑦ 懸 ︵

同 願恩恨韻十六態藝門︶イタツカワシ→← イタップ

    ⑧ 溢 ︵ 入 声

 質術櫛韻四 虚押門︶アフル  ー コチル  ︵アマルの訓は共通︶

    ⑨ 羅 ︵

同 錫韻十三 態藝門︶コシヨ子 ー カシヨ子

  右 に関しては、次の如く判断できる。   ① この見出し字の漢文注は﹁平1﹂であり、﹃世尊寺本字鏡﹄の﹁夷﹂︵﹁夷﹂の通字く﹃名義抄﹄僧下一〇七▽。第二冊一〇五ウ︶ には両者の訓﹁タヒラク・タヒラカ﹂︵﹃名義抄﹄︿佛下末三四﹀タクラク:・タヒラカナリ、﹃倭玉篇﹄︿下、大部二百八十三▽タイラカ ナリ、﹃易林本節用集﹄タイラク︶が認められる。丙類が甲類乙類の訓を改めた理由は不明であるが、恐らくこれは、﹁タイラカナリ﹂ が ﹁ 夷﹂の付訓として認められることから、﹁タイラク﹂とすべきところを丙類が誤って﹁タイラカ﹂と刻してしまったのではないかと 思 わ れる。   ② この見出し字の漢文注は﹁及/也﹂である︵﹃名義抄﹄∧法下七三Vオヨフ、﹃易林本節用集﹄ヲヨブ︶。丙類の訓﹁ヲヨソ﹂は﹁ヲ ヨ フ﹂の誤りと判断できる。   ③ この見出し字の漢文注は﹁髭/ー﹂であり、﹃廣韻﹄の﹁蓼.﹂には髭肇。毛垂︵﹃集韻﹄∧侵韻﹀髪鰍見︶とある︵﹃字鏡紗﹄︿巻 四 影 部 ﹀ミタレカミ、﹃倭玉篇﹄︿上、影部六十﹀ミダレガミ︶。甲類乙類の訓﹁ケミタレカミ﹂は﹁ケ﹂と﹁カミ﹂が同義であることら、丙類が後者を削除したものと思われるが、﹁ケミタレ﹂では落着きが悪い。   ④ この見出し字の漢文注は﹁五音/羽﹂︵﹁五音﹂とは宮・商・角・徴・羽の五声を言い、﹁徴羽﹂は正音の意︶であり、﹃名義抄﹄ の ﹁ 徴﹂︵佛上三八︶には﹁⋮⋮せム⋮⋮﹂︵﹃天正十八年本節用集﹄せムル︶の訓が認められる。甲類乙類の訓﹁サムル﹂は﹁せムル﹂ の 誤 りと判断できる。但し、﹁せムル﹂の訓は注文の意には合致しない。   ⑤ この見出し字の漢文注は﹁水清﹂である。﹁批﹂の訓は﹃名義抄﹄︵法上四三︶、﹃音訓篇立﹄︵天上四三ウ︶に﹁サ・ラナミ﹂、﹃倭

(21)

玉 篇﹄︵中、水部二百五十二︶に﹁サベナミ﹂が認められる。丙類が甲類乙類の訓を改めた理由は不明である。   ⑥ この見出し字の漢文注は﹁泉ー﹂である︵﹃名義抄﹄︿法上二八﹀禾ク︶。甲類乙類の訓﹁フク﹂は﹁ワク﹂の誤りと判断できる。   ⑦ この見出し字の漢文注は﹁煩也﹂である。﹃名義抄﹄の﹁懸﹂︵法中九三︶には﹁心マトフ・ウレフ・イキトホル・禾ツラハシ・ イタム⋮⋮﹂とあり、右の訓は認められないが、﹁煩﹂︵佛下本三一︶には﹁⋮⋮イタツカハシ﹂︵頁部︶があり、﹃倭玉篇﹄の﹁煩﹂に は両者の訓﹁イタヅガハシ・イタヅラ﹂︵上、頁部舟五・下、火部二百八十四︶が認められる。丙類が甲類乙類の訓を改めた理由は不明 であるが、或は、丙類の訓﹁イタツカワシ﹂の方が甲類乙類の訓﹁イタツラ﹂よりも勝ると見るべきか。   ⑧ この見出し字の漢文注は﹁満1﹂であり、﹃名義抄﹄の﹁溢﹂︵法上三︶には﹁アブル・コボス︵コボル︶・アマス・ミツ・アツマ ル ・ イタス﹂の訓が認められる。甲類乙類の訓﹁コチル﹂は﹁コホル﹂の誤りと判断できる。   ⑨ この見出し字の漢文注は﹁市米﹂︵﹃廣韻﹄市穀米・⋮−︶であり、﹃名義抄﹄の﹁粂﹂︵﹁擢﹂の俗字く﹃廣韻﹄▽。法下三三︶には﹁買 米﹂の漢字注が認められる︵﹃新撰字鏡﹄︿天治本﹀の﹁羅﹂︿巻四、十七ウ﹀には﹁買米也。与祢加不﹂とある︶。甲類乙類の訓﹁カ シ ヨ子﹂は﹃名義抄﹄の﹁裸﹂︵法下三四︶、﹃倭玉篇﹄の﹁輝﹂︵中、米部百七十六︶などに認められるが、﹁裸﹂、﹁輝﹂は﹃廣韻﹄に 浮 米、説文日漬米也、とあり、﹁羅﹂とは意義が異なる。恐らく、﹁買米﹂︵カヒヨ子︶を﹁カシヨ子﹂に誤ったものと思われる。一方、丙 類 の 訓 ﹁ コ シ ヨ子﹂は﹁カシヨ子﹂の誤りであろう。   なお、右回・内・⇔には、この他、左の如き対立も若干認められる︵括弧内の漢数字は韻目番号である。以下同様︶。   ㈲   甲類 対 乙・丙類     ①

機︵上平声五・器財︶クツワツラークツハツラ︵ハナカワの訓は共通︶②断︵同十二・支体︶クイシワルーク

   

イシハル︵ハクキの訓は共通︶③歌︵上声二十三・虚押︶タスク→←タスクル④乞︵去声五・態藝︶アトウ→←ア

   

タウ︵コウの訓は共通︶⑤繹︵入声十二・虚押︶ツラヌクーツラヌ

  ω 乙 類 対 甲・丙類     ①

随︵上平声四・虚押︶シタカウ→←シタコウ②馴︵同九・気形︶ムマ︸ウマ︵﹁餌﹂︿上声四・気形Vも同様︶

    ③ 辮 ︵ 上 声 十

六・態藝︶コトハル→←コトワル④縮︵入声丁態藝︶ヌキンツーヌキンス⑤肋︵同十四・支体︶

三 重 韻 七 行 付 訓 本 ︵原 三 重韻︶について︵三澤︶       三

(22)

   和洋女子大学紀要 第三十二集︵文系編︶      三      はヨ     

カタハラ→←カタワラ︵ム子の訓は共通︶⑥逼︵同十四・虚押︶セマル→←セムル︵ツムルの訓は共通︶⑦極︵同

       い る      十 四・虚押︶キハムル →← キハム   ω   丙 類   対   甲・乙類     ① 緋 ︵ 上 平 声

五・気形︶ソヘムマ→←ソエムマ②沮︵同六・虚押︶ト・マルートムル︵ハ・ム仏ハ\ムVの訓

     り ら     

は共通︶③胸︵同七・複用︶タチモトウル→←タチモトヲル④瞑︵同十二態藝︶イカリ→←イカル⑤累︵上

   

声四・虚押︶カサヌ→←カサナル︵ワツライの訓は共通︶⑥積︵去声四・虚押︶アツムーアツマル︵ツムの訓は共通︶

      は   ②   付 刻カナの有無に関しては、乙類と丙類とにおいて左の如き違いが認められる。   ω   先 ず、乙類丙類には甲類に存しないカナが左の如く認められるが、両者の間には、例えば乙類﹁せ﹂に対し、丙類﹁セ﹂にする などの表記上の対立が見られるものもある︵なお、両者の間に違いが見られる場合は※を付し、乙類のカナを示した︶。  ︹付音︺     ④  上平声ー演︵四・支体︶1ーシ 湖︵七・乾坤︶‖コ        り ア           ㈲   下 平 声   泉︵一・乾坤︶11せン 振︵十一・態藝︶‖ヲウ 勤︵同・同︶1ーリウ 兼︵十四・生植︶目ケン 籔︵同・器財︶11せン     ω 上 声   願 ︵ 四・気形︶1ーシ鎧︵同・同︶目キ耳︵同・支体︶1ージ歯︵同・同︶1ーシ意︵同・態藝︶1ーキ偉︵五・虚押︶‖                       イ 魯︵七・乾坤︶1ーロ 鷹︵九・気形︶1ーサイ︵ナイの音は共通︶ 嬬︵同・支体︶11子イ       ぱ       ω   去 声   −涙︵四・支体︶‖ルイ 睡︵同・態藝︶1ースイ 覗︵︵同・同︶1ーシ 志︵同・同︶‖シ 讐︵同・同︶目ヒ 慮︵六・態        な   はり                藝︶‖リヨ 霰︵十九・乾坤︶‖せン 殿︵同・同︶‖テン 院︵同・同︶1ー ヱン 堰︵同・同︶1ーエン     ω   入 声 −擢︵三・複用︶1ーカク︵クハクの音は共通︶ 潤︵同・同︶1ーサク︵シヤクの音は共通︶ 決︵十・虚押︶1ーケツ 拭︵十               四・態藝︶Uシヨク搭︵十六・態藝︶1ータフ  ︹付訓︺       なロ      ㈲   下 平 声 ー董︵七・生植︶‖ハシカミ 勤︵十一・態藝︶‖チカラアハス 兼︵十四・生植︶1ーアシ     ㈲  入声 ー轍︵十・虚押︶1ーワタチ︵トヲルの訓は共通︶ 怯︵十九・態藝︶Uヲソル

(23)

回  また、乙類丙類には、右以外にも他の二類に存しないカナがそれぞれ左の如く認められる。 1 乙類にのみ存するカナ   ︹付 音︺   鯉︵上声四・気形︶‖リ 碑︵同四・同︶目ヒ 氏︵同四・同︶目シ   ︹付 訓︺  ー隈︵上平声十・乾坤︶1ークマ︵ミツキハの訓は共通︶ 涙︵去声四・支体︶1ーナンタ 節︵入声十・生植︶1ーフシ 快︵同             十・器財︶‖タマ 蔑︵同十・虚押︶1ーナイカシロ︵サクルの訓は共通︶ 法︵同十九・態藝∀Uノツトル︵ノリの訓は             共 通︶ 級︵同十九・食服︶1ーコロモノクヒ 笈︵同十九・器財︶‖フバコ︵ブタの訓は共通︶ H 丙類にのみ存するカナ   ︹付 音︺  1頗︵下平声五・虚押︶‖ハ 磐︵上声七・器財︶Hド

      ハぱじ 

  ︹付 訓︺   南︵上声二・乾坤︶1ーカイコ︵ミチの訓は共通︶ なお、右に関し、丙類にのみ認められるカナが少ないのは、乙類の中に右回ー1以外にも丙類と同じカナの存するものが三本︵寛永 十 年版・同十六年版・正保二年a本︶あるためであって、丙類に存するカナが少ないという訳ではない。例えば、上声・去声の付音を 取 上 げて見ても、丙類には左のカナが認められる︵正保二年a本については他の二本に比べてそのカナの数は少なく、※を付した見出

      はロ 

し字に認められるのみである。以下同様︶。   ㈲  上声 1只︵四・虚押︶1ーシ 此︵同・同︶‖シ 拙︵五・時候︶1ーヒ 鎧︵同・気形︶‖キ 題︵同・同︶‖キ 尾︵同・支体︶11

      

            ビ︵丙類ヒ︶ 偉︵同・光彩︶1ーイ 宣︵同・虚押︶‖キ  俳︵同・複用︶‖ヒ 渚︵六・乾坤︶‖シヨ 慮︵同・同︶‖

      ※︵注14︶※ ※※※

            シ ヨ   楚 ︵ 同・同︶‖ソ  杵︵同・器財︶‖シヨ 庚︵七・乾坤︶1ーユ  峻︵同・同︶nル 土︵同・同︶1ート  瀞       み                   ︵ 同・同︶1ーコ 浦︵同・同︶1ーホ  圃︵同・同︶目ホ  午︵同・時候︶1ーコ 古︵同・同︶‖コ 虎︵同・気形︶1ーコ                     祖 ︵同・同︶‖ソ  部︵同・同︶‖ホウ 姥︵同・同︶1ーホ  主︵同・同︶‖シユ 腋︵同・支体︶1ーフ  肚︵同・同︶11                    ト  股︵同・同︶1ーコ 吐︵同・態藝︶1ート 取︵同・同︶1ーシユ  技︵同・同︶‖シユ 撫︵同・同︶1ーブ  輔︵同・                    同︶1ーホ  弩︵同・器財︶1ード  舗︵同・光彩︶”ホ  敷︵同・数量︶Wスウ  甫︵同・虚押︶1ーホ  杜︵同・同︶11                    ト  現︵八・乾坤︶1ーケイ  抵︵同・態藝︶1ーテイ 沌︵十三・複用︶目トン 三 重 韻 七 行 付 訓本︵原三重韻︶について︵三澤︶       二三

(24)

  和洋女子大学紀要 第三十二集︵文系編︶      茜      き                   ω  去声 −楓︵四・生植︶‖シ 魏︵五・乾坤︶nキ  霧︵七・乾坤︶1ーブ︵丙類フ︶  路︵同・同︶目ロ 露︵同・同︶1ーロ       ば       な        ぷ                  庫 ︵ 同・同︶1ーコ 鷺︵同・気形︶1ーロ 附︵同・支体︶Uフ 悟︵同・態藝︶1ーコ 護︵同・同︶1ーコ 則︵八・                   態 藝︶1ーケイ 貰︵同・虚押︶11せイ︵丙類セイ︶  貝︵九・気形︶1ーバイ  帯︵同・複用︶‖ハイ  狽︵同・同︶目

       ぎ         

 ば ほ                 ハイ︵寛永十年版バイ︶  派︵十・乾坤︶1ーハイ  被︵十二・態藝︶1ーハイ 襯︵十三・器財︶‖シン  溶︵同・虚           押︶‖シユン 順︵同・同︶‖シユン 抹︵十九・乾坤︶11ヘン

       ロめ 

また、寛永十年版と寛永十六年版との間では、前者にあって後者に認められないカナが左の如く存するが、これらのカナも丙類には       ︵注17︶ 認 め られるものである。 ︹付 音︺           ω 上 平 声ー誰︵四・虚押︶1ースイ 髄︵七・気形︶1ーコ 躯︵同・支体︶Uク 棲︵八・態藝︶11せイ︵丙類・正保二年a本セイ︶   旬   下 平 声 ー仙︵一・気形︶‖せン︵丙類セン︶   ω  上声 ー髄︵四・支体︶1ースイ 喜︵同・態藝︶1ーキ 東︵十五・虚押︶1ーカン

       ぷ       

ぐ   ④  去声 ー侍︵四・態藝︶1ーシ 記︵同・同︶1ーキ 義︵同・同︶目キ 智︵同・同︶1ーチ 避︵同・虚押︶1ーヒ 瑞︵同・同︶n

       ︵注18︶      ※

          ズイ︵丙類スイ︶ 備︵同・同︶目ビ︵丙類ヒ︶ 利︵同・同︶1ーリ 自︵同・同︶‖シ 兎︵七・気形︶Uト           ㈲ 入 声 1八︵九・数量︶1ーハツ 舞︵十一・生植︶1ータク 癖︵十二・態藝︶11ヘキ ︹付 訓︺

      

  ω  上平声1斯︵八・態藝︶1ーサクル 迎︵十・虚押︶‖カヘル 鵬︵十五・気形︶1ーミツトリ

      ︵注19︶

  ω  下平声ー央︵八・複用︶‖ナカバ︵丙類ナカハ︶ 丁︵九・時候︶‖ヒノト   ω  上声 −該当例なし

     み

  ω 去 声 ー祓︵十二・態藝︶1ーハラウ︵丙類ハラフ︶ 蒜︵十七・生植︶‖ヒル︵ニラの訓は共通︶ 悼︵二十二・態藝︶Hイタ

      

          ム   破 ︵ 二 十 三 ・ 虚 押︶‖ヤフル 夜︵二十四・時候︶1ーヨル 下︵同・虚押︶Uクタル        ハロ            ㈲  入声 ー紘︵四・複用︶1ーカウハシ 掲︵七・気形︶1ーイヌ 罰︵同・態藝︶1ーツミス 抗︵同・虚押︶1ーウコク 筈︵八・器

(25)

      ※︵注21︶※ ︹.壮⋮μ︶※

              財︶1ーヤハス︵ヤサキの訓は共通︶ 桔︵九・生植︶1ーワラ 機︵十・複用︶Uアナトル︵ニクムの訓は共通︶ 邑︵十                      五・乾坤︶1ーサト︵ムラの訓は共通︶  揖︵十七・器財︶‖カチ  裏︵十九・器財︶‖ツ・ム   但 し、寛永十年版と寛永十六年版の二本には、丙類に存しないカナも認められる。左は上声・去声における両本にのみ認められる付を示したものであるが、この場合も寛永十年版の方に多くのカナが認められることから、寛永十年版は七行付訓本中最も多くのカナ を有するものであることが判る。但し、これら二本が乙類に所属するもの︵正保二年a本も同様︶であることは、付刻カナの多い点を 除 けば、それの認められない他の乙類と共通︵付刻カナに関して言えば、ω1内、次項②ー内 1など︶していることにより証明でき る。   A 寛永十年版・同十六年版の両本にのみ存する付音     ④  上声  里︵四・乾坤︶‖リ 士︵同・気形︶”シ 堅︵六・乾坤︶nシヨ 所︵同・同︶Uシヨ 暑︵同・時候︶Uシヨ 呂︵同・               気形︶1ーリヨ 旅︵同・同︶目リヨ 侶︵同・同︶目リヨ 汝︵同・同︶1ーシヨ 園︵同・態藝︶日キヨ 楮︵同・生植︶1ー               チヨ 黍︵同・同︶ロシヨ     ⑥  去声 ー忌︵四・態藝︶1ーキ 憲︵同・同︶‖キ 鋸︵六・態藝︶‖キヨ 恕︵同・同︶nシヨ 助︵同・同︶”シヨ 與︵同・虚               押︶uヨ   B 寛永十年版にのみ存する付音     ω  上声  重︵二・虚押︶目チヨウ 披︵四・虚押︶日ヒ 雨︵七・乾坤︶‖ウ 府︵同・同︶目フ     ㈲   去 声 ー撞︵三・態藝︶hタウ 離︵同・虚押︶目リ 署︵六・態藝︶1ーシヨ 嘘︵同・同︶目キヨC 寛永十六年版にのみ存する付音     ④  上声 ー蛙︵三・気形︶1ーハウ 癸︵四・時候︶1ーキ     ω  去声 i鼻︵四・支体︶1ーヒ 事︵同・態藝︶Wジ   内  この他、乙類丙類には、他の二類に存する左の付訓を削除する場合がそれぞれ若干認められる。   1 乙類 対 甲・丙類 三 重 韻 七 行 付訓本︵原三重韻︶について︵三澤︶       二五

(26)

和 洋 女 子 大 学 紀要 第三十二集︵文系編︶      云     ④  入声 1① 酢︵藥鐸韻十一・複用門︶1ース   この見出し字の漢文注は﹁酬同﹂であり、﹃廣韻﹄の﹁酢﹂には 酬酢。蒼頷篇云、主苔客日酬、客報主人日酢 、﹁酬﹂には 報 也 ⋮⋮ とある。甲類丙類の訓﹁ス﹂では注文の意に合致しない︵﹁酢﹂が﹁ス﹂の意になるのは去声暮韻∧倉故切﹀所属の﹁酢﹂︿﹃説 文﹄瞼也﹀であり、藥鐸韻︿在各切﹀の﹁酢﹂とは意義が異なる︶。  

H丙類対甲・乙類

    ④  上平声ー① 青︵魚韻六・気形門︶1ーミル ②齊︵齊韻八・虚押門︶1ート・ノウ・ヒトシの﹁ヒトシ﹂     ㈲  下平声ー③ 描︵瀟宵韻二・態藝門︶1ーウツス・エカクの﹁ウツス﹂ ④荘︵陽唐韻七・複用門︶目ヒロシ・タ・ヨウの﹁タ・                ヨウ﹂⑤鎗︵庚耕清韻八・複用門︶1ーホコ⑥莫︵青韻九・生植門︶‖クサ⑦莚︵同・同︶1ーシベ・クサクキ                 の ﹁ シ ベ ﹂ ⑧瘤︵尤候幽韻十丁支体門︶nコフ・シイ子・フスへの﹁コフ﹂     ω 上 声 ー⑨踊︵腫韻二・気形門︶‖マユ・カイコの﹁カイコ﹂⑩酷︵齊韻八・食服門︶目アマザケ⑪綻︵同・光彩門︶n         アカシ   これについては、次の如く判断できる。   ①この見出し字の漢文注は﹁姓又/相也﹂であり、﹃字鏡紗﹄の﹁青﹂︵巻一月部︶には﹁ミル﹂︵﹃名義抄﹄︿佛中一二〇﹀マツ︶ の 訓 が 認 められる。漢文注には﹁又相也﹂︵﹃名義抄﹄の﹁相﹂︿佛中七六﹀ミル︶とあるが、﹁青﹂の所属が気形門であることから、丙 類 が これを不適当と見倣し削除したとも考えられる。   ② この見出し字の漢文注は﹁等也/又﹂であり、﹃名義抄﹄﹃倭玉篇﹄の﹁齊﹂︵佛中一〇二・下、齊部四百十︶には﹁ヒトシ﹂の訓 が 認 められる。丙類が甲類乙類の訓を削除した理由は不明である。   ③ この見出し字の漢文注は﹁1書﹂︵﹁書﹂は﹁書=の異体字∀であり、﹃集韻﹄の﹁描﹂には書也︵﹃廣韻﹄描書也︶とある。甲 類 乙 類 の 訓﹁ウツス﹂では意義が異なる︵﹁描﹂は﹃倭玉篇﹄八上、手部六十一﹀に﹁ヱカク﹂∧﹃易林本節用集﹄では﹁裏﹂﹀とあ る︶。   ④ この見出し字の漢文注は﹁槍﹂であり、﹃名義抄﹄の﹁ ﹂︵法上二五︶には﹁大水﹂の漢字注が認められる。甲類乙類の訓﹁タ・

参照

関連したドキュメント

HS誕生の背景 ①関税協力理事会品目表(CCCN) 世界貿易の75%をカバー 【米、加は使用せず】 ②真に国際的な品目表の作成を目指して

2 学校法人は、前項の書類及び第三十七条第三項第三号の監査報告書(第六十六条第四号において「財

(当時のリーガルテキスト)  84.71 Automatic data processing machines and unit thereof; (略) 8471.60-Input or output units, whether or not containing storage units in the

[r]

ニューゲイト監獄の教誨師はロンドン市参事会によって任命された︒教誨師はニューゲイト・ストリートに地租を免除された住

[r]

[r]

添付資料 1.0.6 重大事故等対応に係る手順書の構成と概要について 添付資料 1.0.7 有効性評価における重大事故対応時の手順について 添付資料