2020年1月30日受稿,2020年3月2日受理 帯広大谷短期大学社会福祉科 〒080-0335 北海道河東郡音更町希望が丘3番地3 メージは、子どもへの接し方や保育観、学級での 活動の持ち方などに反映され、保育者の保育態度 に密接に関連していることが示唆された」とし、 「自尊感情がどのように育まれるかは、個人の職 場や家庭での立場、個人的特性によって異なるこ とを示唆していると考えられる」と述べている。 保育者個々が、物心両面からのゆとりをもち、 保育に満足感と自信をもって臨む姿こそが理想で あることはいうまでもない。 一方で子育てをめぐる環境が変化していくな かで、保育者にはその専門性を日々向上させてい くことも期待されている。その手段である研修の 現状をみると、研修の頻度や内容等に大きな開き があるとともに、その体制や進め方が十分に組 織化されていない現状も指摘されている(野崎, 2019)。裏を返せば、保育者の専門性の向上が保 育者自らの研修意欲に頼らざるを得ない側面が少 なからずあるということである。 Ⅰ. はじめに 幼児教育の質を左右するものとして保育者個々 の資質が重要な役割を果たしていることは自明 のことである。「幼稚園教育要領解説」第1 章「教 師の役割」では、「この安定感をもたらす信頼のき ずなは、教師が幼児と共に生活する中で、幼児の 行動や心の動きを温かく受け止め、理解しようと することによって生まれる。その時々の幼児の心 情、喜びや楽しさ、悲しみ、怒りなどに共感し、こ たえることにより、幼児は教師を信頼し、心を開 くようになる」としている。幼児と向き合う保育 者自身にまず心の安定を期待し、ゆとりをもった 接し方の重要性を暗に説いているものである。 勝 浦(2017)は、保育者の保育態度と保育者 自身の自尊感情との関係について、「自尊感情イ キーワード : 幼稚園教諭 認識 資質向上 要 約 : 本稿では、職務に関連した保育者の認識を把握し分析することから、保育現場で仕事を進 めていくうえでの課題や、期待する研修内容等について明らかにすることを目的とした。 結果、現在の仕事に満足しているとする割合が85.7%に達し、そうした満足だとする認識 が、自身の保育者としての力量を高めたいとする認識と正の相関にあることが示された。他 方、「園の運営のあり方」「上司や同僚との関係」等に疑問や不信を抱くことが、仕事への 満足感を下げる要因となっていることが推察された。 職務についての自己評価の結果は、高評価群61.5%に対し低評価群38.5%であった。保育 歴3〜4年頃までは比較的評価が低いものの、以後安定した自己評価が示され「15年以上」 で23.5%が十分果たせていると回答した。保育者として今後身につけたい事柄として「子ど もへの対応力・指導力」「配慮を要する子どもの理解・対応」が5割を超える高さを示し、 続いて「子どもの心理等の専門的知識」「子ども理解のスキル」が上位を占めていた。
野崎 司春
Shiharu Nozaki
Kindergarten Teacher's Awareness of Work Based on a Questionnaire Survey to Teachers
職務に関連する幼稚園教諭の認識から
保 育 者 個 々 に と っ て の 研 修 に つ い て、三 好 (2016)は、研修で最も重要なことは保育者の意 欲に働きかけていくことだと唱え、「よい循環を 生んでいくためには、成果と課題の可視化が重要 な意味を持つと考える」としている。また、武藤 ら(2017)によると、今後どのような研修を希望 するかについては、保育者の所属の違いや経験年 数によって異なっていることが明らかとなったと している。 幼児教育の質の向上は、保育者の資質に依ると ころが大きいと言われるなか、その背景として保 育者個々の仕事へのモチベーションが少なからず 影響を与えていることが考えられる。職務を遂行 するうえで保育者の関心がどこに向いているの か。また、仕事への満足の程度はどのようなもの であり、さらに、自身の日頃の職務遂行をどのよ うに自己評価し、自身が今後身につけていかなけ ればならない事柄はどのような内容ととらえてい るのか。 そうした現状の把握は、各園の運営をより質の 高いものへと推し進めるうえで重要な意味をもつ ものと考える。 Ⅱ. 研究の目的 本研究では、日頃幼稚園教諭が職務を遂行する なかで抱いている認識を調査・分析することで、 保育者がより意欲的・積極的に働くうえで課題と なっている事柄や、保育者が求めている研修の内 容等について明らかにすること。そのうえで、そ の結果から得られる示唆をもとに、今後の園の運 営の改善に資することにある。 Ⅲ. 調査の方法 調査は、北海道A 地方の中核都市及びその近隣 にある幼稚園(全てが私立幼稚園)の正職員の教 諭を対象として行なった。事前に各園の園長に対 し、調査の趣旨と方法を電話で説明したうえで、 質問紙「保育に向き合う認識等に関するアンケー ト調査」及び回収用封筒を郵送し、調査用紙の配 布と回収を園長に委ねた。各園では、園長から対 象となる教諭に質問紙及び回収用封筒が渡され、 受け取った教諭は記入後に回収用封筒に調査用 紙を入れ、封をしたのちに園長に提出する方法を とった。 調査の依頼及び回収の時期は、2019 年 11 月末 から12 月中旬であった。 調査で得られた回答は本研究のみに利用され、 園や個人が特定されることがないよう配慮する旨 を明記した。 Ⅳ. 調査の結果 1.回収率及び回答者の属性 調査を依頼した園の数は16 園。協力のあった 園の数は15 園(93.8%)であった。調査用紙を回 収できた件数は103 件で、その全てを有効の扱い とした。各園の正職員数は未確認である。 調査では、回答者の属性として延べの保育の 経験年数を保育歴として尋ねた。集計に当たっ て は、保 育 歴 を「0 〜 3 年」30 件(29.1%)、「4 〜 7 年」30 件(29.1%)、「8 〜 14 年」25 件(24.3%)、 「15 年以上」17 件(16.5%)に区切り、不明が 1 件 (1.0%)であった。 2.「仕事への満足の程度」と「特に気にかけ ていること」 (1)「仕事への満足の程度」 「現在の幼稚園教諭としての仕事にどの程度満 足していますか」との問いに、「とても満足してい る」「どちらかというと満足している」「どちらか というと満足していない」「満足していない」の4 つの選択肢から回答を求めた。 満足の程度を、保育歴と無関係に単純集計する と、「とても満足」19 件(18.4%)、「どちらかとい うと満足」65 件(63.1%)、「どちらかというと不 満足」8件(7.8%)、「満足していない」6件(5.8%)、 「無回答」5 件(4.9%)であった。 また、「とても満足している」と「どちらかとい うと満足している」とを合計して「満足群」として みると84 件(85.7%)となり、先に OECD が公表 した「国際幼児教育・保育従事者調査2018 -質
の高い幼児教育・保育に向けて-」で示された「全 体としてみれば、この仕事に満足している」割合 80.7%におよそ符合する結果ともなっている。な お同様に「不満足群」は14 件(14.3%)であった。 無回答を除き、保育歴ごとの満足の程度をグラ フにしたものが図1 である。 仕事への満足の程度を保育歴ごとにみると、 「どちらかというと満足」がどの保育歴において も突出して高い結果を示している。さらに「とて も満足」と「どちらかというと満足」を合計すると、 「0 〜 3 年」83.4%、「4 〜 7 年」83.3%、「8 〜 14 年」 76.0%、「15 年以上」82.4%となり、保育歴とは無 関係に高い割合を示している。 また、「とても満足」の割合は、保育歴が浅い ほど高くなる傾向を示し、最も高い「0 〜 3 年」で 26.7%に達している。 (2)「特に気にかけていること」 「現在の仕事を遂行していくうえで、自分自身 または園の現状について特に気にかけていること はどのようなことですか」と尋ね、以下の選択肢 から3 つ以内での回答を求めた。 ・ 勤務に支障をきたすことのないように自分自身 の健康を管理すること ・ 家族や友人との関係も含めた私生活上の悩みや 負担を軽減していくこと ・ 計画立案・実践等において自身の保育者として の力量をもっと高めること ・ 子どもたちの保護者と自分との関係が深まり相 互理解が進むこと ・ 職場の上司や同僚との関係においてもっと働き やすい環境となること ・ 現在の園の教育方針や行事計画等運営の基本が 見直されること ・ 園の研修のしくみを立て直し保育者一人一人の 研修機会を拡充されること ・ 担任の決定や業務の分担の際本人の意向が反映 されること 図2.特に気にかけていること(%) 図1.仕事への満足の程度(%) 5.9 41.2 23.5 5.9 17.6 17.6 76.5 35.3 76.5 0 76.5 0 48 24 0 0 16 48 40 32 4 60 0 43.3 30 6.7 6.7 20 33.3 26.7 56.7 10 50 0 27.6 17.2 6.9 0 10.3 10.3 65.5 65.5 10.3 44.8 0 20 40 60 80 100 その他 給与・休暇等の待遇改善 いわゆる雑務等の軽減 担任等に本人の意向反映 園の研修機会の拡充 園運営の基本的な見直し 上司や同僚との関係 保護者との関係、相互理解 自身の保育者としての力量 私生活上の悩みや負担 自分自身の健康管理 0~3年 4~7年 8~14年 15年以上 26.7 56.7 3.3 6.7 20 63.3 10 6.7 12 64 12 4 5.9 76.5 5.9 5.9 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 0~3年 4~7年 8~14年 15年以上
・ 子どもと向き合うこと以外のいわゆる雑務等が 軽減されること ・ 給与や休暇などの面で働き甲斐のある職場環境 になること ・その他 3 つ以上の選択肢を選んだ 2 件を無効として有 効回答101 件の集計を行なった。その結果を保育 歴ごとにグラフにしたものが図2 である。 全 保 育 歴 の 件 数 を 単 純 集 計 し、多 い 順 に み ると、「自分自身の健康」「自身の保育者として の 力 量 」が 共 に52 件(51.5%)、「 保 護 者 と の 関 係、相互理解」43 件(42.6%)、「給与・休暇等の 待 遇 改 善 」40 件(39.6%)、「 上 司 や 同 僚 と の 関 係」33 件(32.7%)、「いわゆる雑務等の軽減」24 件(23.8%)、「 園 運 営 の 基 本 的 な 見 直 し 」16 件 (15.8%)、「私生活上の悩みや負担」7 件(6.9%)、 「園の研修機会の拡充」「担任等に本人の意向反映」 が共に5 件(5.0%)、「その他(保育のあり方を職 員・保護者で共有すること)」1 件(1.0%)であっ た。 保育歴の違いによる結果をみると、「自分自身 の健康」及び「上司や同僚との関係」において、保 育歴が増すほどに高くなることが示された。 「自身の保育者としての力量」を挙げたのは「8 〜14 年」が顕著に低く 32.0%であるのに対し、最 も高いのは「15 年以上」の 76.5%であった。 また、「0 〜 3 年」では「保護者との関係、相互理 解」が顕著に高い結果となった。 (3)「仕事への満足の程度」との相関 次に、「仕事への満足の程度」と「特に気にかけ ていること」との相関をみた。 先の「満足群」と「不満足群」の2 つの群と「特 に気にかけていること」との相関をグラフに表し たのが図3 である。 「自身の保育者としての力量」と「園運営の基本 的な見直し」において2 つの群の間に顕著な差が 表れている。χ二乗検定の結果においても、この 2 項目のみに有意差が示され、それぞれの P 値は 「園運営の基本的な見直し」が0.0066、「自身の保 育者としての力量」が0.0421 であった。また、「い わゆる雑務等の軽減」及び「担任等に本人の意向 反映」は有意差までには至らないまでも、両群の 間に差が表れている。 2.「職務についての自己評価」と「今後身に つけたい事柄」 (1)「職務についての自己評価」 「幼稚園教諭としての現在のご自分を総合的に 評価するとどのようになりますか。率直にお答え 願えますか」との問いに、「職務を十分果たせてい ると思う」「どちらかというと果たせているほう である」「どちらかというと不十分さがあるほう である」「職務を果たしきれていない」の4 つの選 択肢から回答を求めた。 保育歴とは無関係に単純集計すると、「十分果 たせている」7 件(6.8%)、「どちらかというと果 たせている」56 件(54.4%)、「どちらかというと 不十分さがある」34 件(33.0%)、「果たしきれて いない」4 件(3.9%)、「無回答」2 件(1.9%)であっ た。 7.1 42.9 7.1 14.3 7.1 42.9 42.9 35.7 14.3 7.1 50 0 38.1 26.2 3.6 4.8 11.9 29.8 42.9 57.1 7.1 51.2 0 10 20 30 40 50 60 その他 給与・休暇等の待遇改善 いわゆる雑務等の軽減 担任等に本人の意向反映 園の研修機会の拡充 園運営の基本的な見直し 上司や同僚との関係 保護者との関係、相互理解 自身の保育者としての力量 私生活上の悩みや負担 自分自身の健康管理 満足群 不満足群 図3.仕事への満足の程度との相関(%)
無回答を除き、保育歴ごとの自己評価をグラフ にしたものが図4 である。 職務についての自己評価は、「どちらかという と果たせている」と回答した割合が最も高く、ま た、保育歴が「4 〜 7 年」以降から高まっていく傾 向が示された。特に「15 年以上」では「十分果たせ ている」と回答した割合は23.5%に達している。 また、「十分果たせている」と「どちらかという と果たせている」を合計し「高評価群」としてそ の 割 合 を み る と、「0 〜 3 年」40.0%、「4 〜 7 年」 70.0%、「8 〜 14 年」64.0%、「15 年以上」76.4% であり、保育歴「0 〜 3 年」が顕著に低い結果を示 している。 (2)「今後身につけたい事柄」 「幼稚園教諭としてのご自身を振り返り、今後 さらに身につけていきたいと考えることはどのよ うなことですか」との問いに、以下の選択肢から 3つ以内での回答を求めた。 ・ 保育の理念や今日的な課題についての知識や最 新の情報をもつこと ・ 子どもの心理や成長・発達に関する専門的な知 識を深めること ・ 子どもや親を取り巻く社会情勢の変化や実態に ついての知識や情報をもつこと ・ 職場の上司や同僚との関わりかたのスキルを向 上させること ・ 保護者や地域の方々との関わりかたのスキルを 向上させること ・ 子どもへの言葉かけや働きかけなど、子どもへ の対応力・指導力を向上させること ・ 個々の子どもの成長や心の変化等に気づけるよ うな子ども理解のスキルを向上させること ・ 発達障害等により配慮を要する子どもの理解と 対応に関する知識等を身につけること ・ 音楽や運動、読み聞かせなど、指導に必要なさ まざまなスキルを向上させること ・ 指導計画を作成したり新しい環境を構成したり するのに必要な力量を高めること 図4.職務についての自己評価(%) 図5.今後身につけたい事柄(%) 3.3 36.7 53.3 6.7 6.7 63.3 30 0 0 64 24 4 23.5 52.9 17.6 5.9 0 10 20 30 40 50 60 70 0~3年 4~7年 8~14年 15年以上 0 5.9 0 5.9 76.5 17.6 23.5 17.6 17.6 35.3 64.7 23.5 8 4 4 24 72 32 72 12 12 16 20 16 3.7 7.4 3.7 14.8 48.1 44.4 70.4 14.8 3.7 14.8 40.7 7.4 0 10.7 21.4 21.4 21.4 42.9 60.7 25 14.3 3.6 46.4 7.1 0 20 40 60 80 100 社会人としてのマナー お便り・文書類の執筆能力 指導計画作成に必要な力量 音楽や読み聞かせなどのスキル 配慮を要する子どもの理解・対応 子ども理解のスキル 子どもへの対応力・指導力 保護者等との関わり方のスキル 上司や同僚との関わり方のスキル 社会情勢や実態についての知識 子どもの心理等の専門的知識 保育の理念や今日的な課題 0~3年 4~7年 8~14年 15年以上
・ お便りの編集や報告文の作成など様々な文書類 の執筆に関する能力を向上させること ・ 社会人として求められる身だしなみや接客等の マナーを身につけること 有効回答数は98 件で、それを保育歴ごとに集 計しグラフに表したものが図5 である。 全保育歴の件数を単純集計し、多い順にみる と、「子どもへの対応力・指導力」58 件(59.2%)、 「 配 慮 を 要 す る 子 ど も の 理 解・ 対 応 」51 件 (52.0%)、「子どもの心理等の専門的知識」40 件 (40.8%)、「子ども理解のスキル」36 件(36.7%)、 「保護者等との関わり方のスキル」「音楽や読み聞 かせなどのスキル」17 件(17.3%)、「社会情勢や 実態についての知識」15 件(15.3%)、「保育の理 念や今日的な課題」12 件(12.2%)、「上司や同僚 との関わり方のスキル」11 件(11.2%)、「指導計 画作成に必要な力量」8 件(8.2%)、「お便り・文 書類の執筆能力」7 件(7.1%)、「社会人としての マナー」3 件(3.1%)であった。 保育歴「15 年以上」で「子どもの心理等の専門 的知識」及び「社会情勢や実態についての知識」が 顕著に高い一方、「子どもへの対応力・指導力」「子 ども理解のスキル」「音楽や読み聞かせなどのス キル」は低い結果であった。 保育歴との関連でみると「配慮を要する子ども の理解・対応」「社会情勢や実態についての知識」 「保育の理念や今日的な課題」は、保育歴が増すほ どに高くなる傾向にあり、一方、「子ども理解のス キル」は保育歴が浅いほど高くなる傾向が示され た。 また、「0 〜 3 年」で「指導計画に必要な力量」及 び「保護者との関わり方のスキル」をあげるのが 比較的高い結果となった。 (3)「職務についての自己評価」との相関 「職務についての自己評価」の回答を「職務を十 分果たせていると思う」「どちらかというと果た せているほうである」を合わせた「高評価群」59 件(61.5%)と、「どちらかというと不十分さがあ るほうである」「職務を果たしきれていない」をあ わせた「低評価群」37 件(38.5%)との 2 つの群に 集約し「今後身につけたい事柄」との相関をグラ フに表したものが図6 である。 χ二乗検定を行いP 値を測定した結果、両群に 有意差が示されたのは、「配慮を要する子どもの 理解・対応」;P 値 0.0214、「保育の理念や今日的 な課題」;P 値 0.0354、「子ども理解のスキル」;P 値0.0440 であった。有意差には至っていないも のの「子どもの心理等の専門的知識」及び「音楽や 読み聞かせなどのスキル」において両群に開きが みられた。 Ⅴ.まとめ 「仕事への満足の程度」をみると、どの保育歴に おいても高い満足の基調にあることが示された。 「とても満足」とする割合は、保育歴が浅いほど高 くなり「0 〜3年」においては 26.7%と 4 人に 1 人 図6.自己評価との相関(%) 2.7 8.1 8.1 10.8 29.7 51.4 59.5 13.5 13.5 18.9 56.8 2.7 3.4 6.8 8.5 18.6 66.1 27.1 59.3 20.3 10.2 13.6 32.2 18.6 0 10 20 30 40 50 60 70 社会人としてのマナー お便り・文書類の執筆能力 指導計画作成に必要な力量 音楽や読み聞かせなどのスキル 配慮を要する子どもの理解・対応 子ども理解のスキル 子どもへの対応力・指導力 保護者等との関わり方のスキル 上司や同僚との関わり方のスキル 社会情勢や実態についての知識 子どもの心理等の専門的知識 保育の理念や今日的な課題 高評価群 低評価群
が挙げていた。 仕事を遂行していくうえで「特に気にかけてい ること」の結果を概観したところでは、自身の健 康や保育者としての力量といった自身を振り返る 視点からの項目と、保護者や上司等との人間関係 に起因する項目を挙げる割合が高かった。一方、 保育や業務の進め方など職場の運営のあり方に関 する項目を挙げる割合は比較的低かったものの、 「給与等の待遇改善」や「いわゆる雑務等の軽減」 への期待は少なからずあることが判明した。 保育歴との関連からは、保育歴が増すほどに 「上司や同僚との関係」「自分自身の健康管理」を 挙げる割合が高くなる傾向が示された。また、「自 身の保育者としての力量」を挙げる割合が「8 〜 14 年」の層で顕著に低い結果となっている背景に ついては、今回の調査からは不明である。 次に相関関係をみると、現在の仕事に満足して いるとの「満足群」と、現在特に気にかけている こととして「自身の保育者としての力量」を挙げ た層との間に正の相関が示された。仕事への満足 感と、より一層保育者としての自分を高めようと する積極的な認識とのあいだに強い結びつきがあ るものと推察できる。 一方、「園運営の基本的な見直し」を挙げる割合 は不満足群が満足群より有意に高い結果となり、 園の運営のあり方に対する疑問や不信が、仕事へ の満足感を下げる方向に作用していると推察され る。同様に「担任等に本人の意向反映」「上司や同 僚との関係」についても満足の認識を下げる要素 となっているものと考えられる。 以上のことから、正職員の幼稚園教諭にあって は、仕事への満足感を背景に保育者として自身を より高めようとする研修への意欲が潜在的に強く あることが推察される。そのような積極的な姿勢 に応えるために研修等の機会の拡充やニーズに対 応した研修の組織化が期待される。 他方、園の運営のあり方や人間関係など園の現 状について改善を求める認識も少なからずあるこ とが確認された。仕事への満足感を下げる要素に ついて園の現状を点検し、日頃からていねいに対 応し可能な範囲で改善を図ることが求められてい る。 「職務についての自己評価」をみると、高評価群 61.5%に対し低評価群 38.5%であった。個々の教 諭の自己評価には、職場の人的環境や担当する子 どもの実態など様々な要因が絡んでくるものであ る。「0 〜 3 年」の評価は経験の未熟さから低い評 価となっているものの、保育歴が3 〜 4 年あたり を境として自信をつけ、より安定した自己評価に つながっているものと推察される。 「今後身につけたい事柄」では、「子どもへの対 応力・指導力」「配慮を要する子どもの理解・対応」 が5 割を超える高さを示しており、続いて「子ど もの心理等の専門的知識」「子ども理解のスキル」 が上位を占めていた。いずれも子どもへの指導に 直接結びつく内容であり、先に高い割合で明らか となった「自身の保育者としての力量」形成の中 身そのものと考えられる。今後の研修の内容とし て優先されるべき項目であろう。 保育歴との関連からは、「配慮を要する子ども の理解・対応」を挙げる割合が保育歴が増すほど に高く出ているが、これは、配慮を要する子ども を担当する層の違いが反映したものと考えられ る。 相関をみていくと、まず、「配慮を要する子ども の理解・対応」と「高評価群」に高い相関が示され た。この選択肢を挙げた層は相対的に保育歴が高 くなっており、また、保育歴が高いほど自己評価 も高いという実態が反映しているものと考えられ る。「保育の理念や今日的な課題」についても「高 評価群」との相関がみられたものの、この選択肢 を挙げた層も保育歴が高い層が相対的に高くなっ ており、同様のことが考えられる。 一方、「子ども理解のスキル」については「低評 価群」との間に相関が示された。子どもとの良好 な関係を維持し効果的な指導や働きかけを行う際 の基盤となる子どもとの関係づくりへの不安が、 自己評価を下げる要因となっている可能性を示唆 するものである。
引用文献・参考文献 勝浦美和(2017)「保育者のもつ自尊感情イメー ジの構造-保育態度との関連-」子育て研究 第8 巻 3-15 三好年江(2016)「保育者の意識変容と保育内容 の改善を目指した園内研修-気付き・意欲・同 僚性に注目して」新見公立大学紀要 第37 巻 107-114 武藤久枝、三品陽平、千田隆弘、藤原辰志、梶美 保(2017)「幼児教育セミナーにおける保育者 の受講意識」現代教育学研究紀要 第10 号 63-70 文部科学省(2018)「幼稚園教育要領解説」フレー ベル館 116-118 文部科学省初等中等教育局幼児教育課(2007) 「自己点検・自己評価のためのチェックリスト 100」幼稚園における学校評価の推進に関する 調査研究協力者会議(第2 回)配布資料 野崎司春(2019)「園内研修の実態と園長の認識 との関連について-園長への質問紙調査を通し て-」帯広大谷短期大学紀要 第56 号 1-8 OECD(2019)「国際幼児教育・保育従事者調査 2018 -質の高い幼児教育・保育に向けて-」 鈴木文代(2009)「保育の質の向上に関わる実証 的研究-子どもの気持に沿える言葉かけの意識 化を図る-」愛知教育大学幼児教育研究 第14 号 35-43 柳 晋、星野真由美、栗山宣夫(2017)「保育者の 困り感と研修内容の要望について-幼稚園免許更 新講習受講者へのアンケート調査の分析」育英 短期大学幼児教育研究所紀要 第15 号 51-67