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在宅の高齢者における入眠前後の自律神経反応と主観的評価

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そ の 他

在宅の高齢者における入眠前後の

自律神経反応と主観的評価

The Subjective Evaluation of Sleep and the Autonomic Nervous Responses During Sleep Onset in Elderly at Home

田中美智子

) Michiko Tanaka

江上千代美

) Chiyomi Egami

松山美幸

) Miyuki Matsuyama

津田智子

) Tomoko Tsuda

野末明希

) Aki Nozue

長坂 猛

) Mou Nagasaka 日常生活下での高齢者における睡眠状態と入眠前後の自律神経反応を明らかにすると ともに,これら睡眠に対する主観的評価との関係について検討することを目的とした. 対象は地域で自立して生活している 65 歳以上のઊ名(男性અ名,女性ઇ名)で,自宅で の睡眠をセンサーマット型睡眠計で測定し,睡眠中には心拍計を装着した.心拍計で RR 間隔を計測し,心拍変動により自律神経系の反応を分析した.入眠後に RR 間隔の延長, 自律神経系の活性の指標である SDNN や交感神経系の指標としての L/T の低下が認め られ,高齢者は睡眠により交感神経系が抑制されることが示された.睡眠に対する主観 的評価との関連では,睡眠時間,在床時間が長いと睡眠の評価も上昇した.自律神経と 主観的評価の関係では,入眠前と入眠後で関連が認められた.これらの結果より,入眠 前と入眠後の早い段階の自律神経反応が睡眠評価に影響していると考えられ,高齢者の 睡眠援助に入眠前から副交感神経系を高め,交感神経系を抑制する自律神経系を調整す るケアが必要であるといえる. キーワード:高齢者,入眠,自律神経反応,睡眠の主観的評価

Key words:elderly,sleep onset,autonomic nervous response,subjective evaluation of sleep

Ⅰ.はじめに

高齢者人口は平成 30(2018)年 10 月の報告では 3,558 万人で,総人口に占める割合は 28.1%であり, 2065 年においては 38.4%に達し,国民の約 2.6 人に 人が高齢者となると推計されている(内閣府 2019). 超高齢社会において,高齢者の健康への取り組みは重 要な課題である.そのなかで,70 歳以上の 30%近く に不眠がみられ(井上 2012),不眠が継続することは 単なる休息が取れないということではなく,心身にも 影響を与えることが考えられる.また,高齢となると 受付日:2020 年  月 31 日 受理日:2021 年  月  日

)宮崎県立看護大学 Miyazaki Prefectural Nursing University )福岡県立大学 Fukuoka Prefectural University

)宮崎大学 Miyazaki University

連絡先:田中美智子 宮崎県立看護大学 〒880-0929 宮崎県宮崎市まなび野 3-5-1 TEL:0985-59-7712 FAX:0985-59-7771(代表)E-mail:[email protected]

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疾病を有することで,その疾病が睡眠に影響するとと もに,睡眠状態が疾病の状況にも影響を与え,悪循環 を起こすことも考えられる.このため,日常生活下で 高齢者の睡眠状態を的確に把握し,快適な睡眠を確保 することは必要不可欠なことである. 睡眠は年齢とともに変化し,特に高齢となると生体 リズム位相に変化が生じ,中途覚醒や早期覚醒の増 加,睡眠時間が短くなるとともに,深い睡眠が不足す るなどの特徴が現れる.入眠困難はどの年齢層でも 20%程度にみられており,高齢者に特徴的な変化では ない.しかし,高齢者の場合,睡眠前半の REM 睡眠 が増加するという報告(三島 1999;小曽根・島崎 2018)もあり,中途覚醒や早期覚醒の問題だけでなく, 入眠後の早い段階での睡眠への影響も考えられる. 高齢者を対象とした睡眠評価について文献検討した 報告(佐々木 2018)によれば,睡眠評価方法におい て,主観的睡眠評価では OSA 睡眠調査票 MA 版が多 く用いられており,客観的睡眠評価ではアクチグラフ やシート型睡眠計を用いている.主観的な評価のみに 依存した報告(水上ら 1999;坂口ら 2017)は在宅な どで行われており,客観的に調べた方法では,睡眠段 階などを調べるために実験室での測定(Brandenberger et al. 2003;佐藤ら 2000)が認められるが,対象者に とっては非日常的な睡眠状態を測定していると考えら れる.近年,心拍 RRI と睡眠深度の関係を自律神経系 の側面から検討した研究が認められる(岡ら 2008; 谷田ら 2011)がまだ少ないのが現状である. 自律神経反応は加齢により変化し,交感神経活動が 活性化し,副交感神経活動が抑制されることが認めら れている(阿部ら 2003;Crasset et al. 2001).また, 睡眠時には副交感神経活動が活性化し,交感神経活動 は抑えられるが,高齢者での睡眠や覚醒と自律神経の 関係は心拍変動では明らかな変化が認められていない (Crasset et al. 2001).加えて,睡眠の前半のレム睡眠 に影響があると示されており(三島 1999;小曽根・ 島崎 2018),レム睡眠時には交感神経系が優位となる ことが示されている.これらのことから,高齢者の睡 眠前半には,交感神経系が抑制されにくくなり,睡眠 状態に影響が生じることが考えられる. そこで,日常生活下での高齢者の睡眠状態およびそ の入眠時の自律神経反応について明らかにするととも に,これらの変化と従来用いられている睡眠に対する 主観的評価との関係について検討することを目的とし た.

Ⅱ.用語の定義

入眠とは,就床後,はじめて睡眠段階(,,, ,REM)のいずれかと判定された区間に移行する ことと考えるが,本研究では,今回,使用したセン サーマット型睡眠計の眠り SCAN が示す寝付き時間 までとする.

Ⅲ.研究方法

ઃ.研究対象 地域で自立して生活している 65 歳以上の高齢者男 女名(平均値±標準偏差 71±6 歳 男性名,女性 名)で,呼吸器や循環器の重篤な疾患に罹患してい ない者で,眠剤を服用していない者とした.対象者の リクルートは,公開講座などの参加者に呼びかけ,興 味のある方を紹介してもらうスノーボールサンプリン グ法を用いた. ઄.実験条件 2011〜2014 年の 9〜12 月に行い,就寝場所は自宅で, 寝室の室温および湿度は 23.2±4.9℃および 67.3± 9.9%の条件下であった. અ.測定項目 睡眠についてはセンサーマット型睡眠計(眠り SCAN,パ ラ マ ウ ン ト ベ ッ ド 社 製 )( Kogure et al. 2011)と睡眠日誌を用いた.センサーマット型睡眠計 では就床時刻,出床時刻,寝つき時間,睡眠時間,入 床時間,夜間離床回数,睡眠効率を測定した.睡眠日 誌には,活動状況や疲労度,中途覚醒の回数,睡眠に 対しての主観的評価などを記載した.日誌以外に睡眠 に対する主観的評価として OSA 睡眠調査票 MA 版 (OSA sleep inventory MA version)(山本ら 1999)

を用いた.この調査票は 16 項目因子から構成され ており,睡眠の質を件法(〜点)で判定でき る.第因子:起床時眠気,第因子:入眠と睡眠維 持,第因子:夢み,第因子:疲労回復,第因 子:睡眠時間である.睡眠日誌の主観的評価は視覚ア ナログ尺度(Visual Analog Scale:VAS)を用いた. 前日の睡眠についてこれまでの睡眠と比較して,10 cm の線上の上端を 10 点で最良の睡眠,下端を点 で最悪の睡眠として評価してもらった.活動状況につ

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いては「最も活動した状況を 10 点満点とすると,そ の日は何点か」の問いに回答してもらい,疲労度は が最も疲れた,が全く疲れていないとした件法を 用いた.自律神経反応を測定するために,心拍計 (myBeat WHS-1,ユニオンツール社製)を用いて心 電図を測定した.心拍計に記録された心電図のデータ は専用のケーブルでコンピュータに取り込み RR 間隔 を表示させた.この RR 間隔の時系列データは自律神 経反応の解析に用いた.RR 間隔の n 番目と n+1 番目 で散布図を描き,その分布についてローレンツプロッ ト法(Toichi et al. 1997)を用いて,L(対称軸方向 の広がり)とT(対称軸を横切る方向の広がり)を調 べた.このときの L/T を交感神経系の指標,Log L× T を副交感神経系の指標とした.また,心拍変動の 時間領域の解析として,RR 間隔の標準偏差を SDNN とし,自律神経活性の指標,連続して隣接する RR 間 隔の差の乗の平均値の平方根を rMSSD とし,副交 感神経系の指標に用いた.これらの解析は区間分 間とし,時系列データとして算出した. આ.測定手順 心拍計を左胸部に貼用し,就寝前にその日の活動状 況と疲労感を睡眠日誌に記入した.その際,センサー マット型睡眠計と心拍計の電源を同時に入れ,就寝し た.起床後,電源を切り,睡眠日誌に睡眠状態などに ついての記入を行った. ઇ.分析方法 睡眠効率は次の式にて算出した.睡眠効率(%)= 睡眠時間/在床時間×100 VAS で測定した点数(10 点満点) を 10 倍し,100 点満点として用いた.OSA 睡眠調査票から算出した 因子の得点は,各因子とも母集団の標準化得点の平均 が各因子とも 50 点に変換したものを用いた. 各対象者は〜 夜の測定を行い,測定した各夜の 睡眠において個人内の平均を算出した後,名の結果 を中央値と最大値と最小値,および平均値で示した. 睡眠状態と自律神経系反応,睡眠の主観的評価の関連 はすべての睡眠を対象とし,Spearman の相関係数を 求めた.ただし,電極の外れ,体動によるノイズ,調 査用紙の記入漏れのデータは分析から除いた.入眠前 から入眠 90 分の自律神経系の反応の変化はノンパラ メトリック法の Friedman 検定を用い,有意差があっ たものに関しては Wilcoxon の符号付き順位和検定を 行った.統計処理は SPSS ver.24.0 を用い,統計学的 有意水準は%未満としたが,Friedman 検定後の Wilcoxon の符号付順位和検定の場合は有意水準を補 正し,統計学的有意水準を 1.7%とした. ઈ.倫理的配慮 対象者には実験の主旨と目的,自由意思で拒絶また は参加の撤回ができること,プライバシー保護には注 意することなどを書面と口頭で説明し,参加の同意を 得た.この研究は研究倫理委員会の承認(2009 年 11 月,福岡県立大学)を得て行った.

Ⅳ.結果

各対象者は〜 夜の測定を行ったが,心拍計の外 れなどの結果を除外し,VAS と睡眠状態もしくは自律 神経反応の関係は 21 夜分の睡眠を分析対象とし,OSA 睡眠調査票との関係に関しては,調査票の不備があっ た夜を除外し,20 夜を分析対象とした(表ઃ). 表ઃ 対象者の概要 対象者 No. (才) 性別年齢 夜間測定数 測定できなかった夜と理由 日常的睡眠時間(分) その他:日常生活/運動習慣  65 女性 夜 夜(電極外れ,ノイズ) 390 仕事/ジャズダンスとエアロビクス  66 男性 夜 夜(電極外れ) 420 仕事/自転車エルゴメーター  70 女性 夜 夜(ノイズ) 300 仕事/ウォーキング  72 女性 夜 360 農作業  74 女性 夜 夜(電極外れ) 300 ウォーキング  80 男性 夜 夜(ノイズ) 420 ウォーキング  80 男性 夜 夜(電極外れ,記入漏れ) 420 体操/ウォーキング 77 女性 夜 360 農作業

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ઃ.高齢者の睡眠状態 表઄に対象者名の睡眠状態を示す.在床時間,睡 眠時間,睡眠効率および寝つきの中央値はそれぞれ 412 分,370 分,89%および 14.5 分であった.離床回 数は回から回で,中央値は回,平均値も回で あった.活動状況の得点は点から点で,中央値は 5.5 点であり,疲労度は点から点の範囲で,中央 値が点であった.睡眠に対しての主観的評価の VAS は中央値が 70 点で,最低 55 点,最高は 88 点であっ た.OSA の各因子は母集団の標準化得点の平均を 50 点に変換したものを用いているが,中央値が 50 点で あったのは OSA 第Ⅴ因子であり,他は 50 より低 かった.平均値に関してはどれも 50 未満であった. 睡眠日誌に記載された入眠時の状態は,「テレビを 見ていた」「ラジオを聞いた」「CD を聞いた」「ただ 横になっていた」「閉眼していた」などであった. ઄.高齢者の入眠による自律神経系の反応 入眠前後の RR 間隔の経時的変化を図ઃに示す. RR 間隔は入眠前にくらべると入眠 30 分後には延長し, その状態が 60 分までみられ,90 分には短縮した(P= .092).心拍変動の時間領域の分析による SDNN と rMSSD の経時的変化を図઄に示す.SDNN は入眠後 30 分で低下するが,その後,増加し,入眠前と同程 度となった(P=.086).rMSSD の変化は認められな かった.ローレンツプロット法による L/T および Log L×T の経時的変化を図અに示す.入眠前の L/T にくらべると入眠 30 分後には低下し,その後,増加し た(P=.009).Log L×T の変化は認められなかった. અ.高齢者における睡眠パラメータ,自律神経反応と 主観的評価との関係 睡眠に対する主観的評価である VAS もしくは OSA 睡眠調査票の各因子を従属変数とし,各睡眠パラメー タ,疲労度,活動状況,自律神経反応をそれぞれ説明 変数とした相関係数について表અに示す.VAS およ び OSA 第Ⅰ因子は在床時間,睡眠時間および睡眠効 率と有意な正の相関(P<.05)を示したが,寝つき, 前日の活動状況および疲労度に関しては有意な相関が 図ઃ 入眠前後の RR 間隔の経時的変化 0 は入眠前の値,それ以降は入眠後の経過時間を示す. Friedman 検定で P=.092,*;P<.05 vs 入眠前. 表઄ 高齢者の睡眠状態(n=8) 項目 中央値(最小−最大) 平均値 在床時間(分) 412(342-594) 437.5 睡眠時間(分) 370(292-516) 387.1 睡眠効率(%) 89(77-96) 88.0 寝つき(分) 14.5(9.0-58.0) 24.4 離床回数(回) 1(0-3) 1.0 夜間覚醒回数(回) 1(0-4) 1.5 活動状況(点) 5.5(3.0-9.0) 5.8 疲労度(点) 3(2-5) 3.1 VAS(点) 70.0(55.0-88.0) 71.0 OSA 第Ⅰ因子:起床時眠気 48(39-55) 47.6 OSA 第Ⅱ因子:入眠と睡眠維持 46(40-49) 45.8 OSA 第Ⅲ因子:夢み 45(38-58) 46.2 OSA 第Ⅳ因子:疲労回復 48(42-51) 47.4 OSA 第Ⅴ因子:睡眠時間 50(31-57) 47.8

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認められなかった.OSA 第Ⅱ因子は睡眠時間と睡眠 効率と有意な正の相関が認められた(P<.05)が,在 床時間との関係は傾向あり(P<.1)を示し,活動状 況とは負の相関(P<.05)であった.OSA 第Ⅳ因子 とは在床時間と睡眠時間との間に有意な正の相関が認 められた.入眠前の自律神経反応においても,VAS は rMSSD に関しては正の相関(P<.05)があり,OAS 第Ⅲ因子では相関がある傾向(P<.1)が認められ た. SDNN に関しては VAS で正の相関がある傾向 (P<.1),L/T に関しても VAS において負の関係が ある傾向(P<.1)が認められた.VAS においては 入眠後の自律神経反応には有意な相関が認められな かったが,OSA 睡眠調査票の結果では OSA 第Ⅳ因子 と入眠 60 分後の RR 間隔(P<.01),OSA 第Ⅴ因子 と入眠 30 分後の L/T(P<.05)に有意な正の相関が 認められ,OSA 第Ⅲ因子と入眠 30 分後の SDNN, 図઄ 入眠前後の SDNN および rMSSD の経時的変化 経過時間の 0 は入眠前の値,それ以降は入眠後の経過時間を示す.A は SDNN を示し,Friedman 検定で P=.086,B は rMSSD を示し,Fried-man 検定で P=.241. 図અ 入眠前後の L/T および Log L×T の経時的変化 経過時間 0 は入眠前の値,それ以降は入眠後の経過時間を示す.A は L/T を示し,Friedman 検定で P=.009,B は Log L×T を示し,Friedman 検 定で P=.494.*;P<.05,†;P<.1 vs 入眠前.

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rMSSD もしくは Log L×T とに正の相関(P<.1) がある傾向が認められた.

Ⅴ.考察

本研究は日常生活下での高齢者における睡眠状態と 入眠前後の自律神経反応について明らかにするととも に,これらの変化と睡眠に対する主観的評価との関係 についても検討した. 睡眠の研究では,実験室などで測定される場合,初 回の測定は第夜効果といわれ,入眠潜時などの延長 が 認 め ら れ て い る( Agnew et al. 1966;堀・宮 下 1969).しかし,自宅での睡眠測定を行った研究では, 第夜と第夜の睡眠評価において,両日の睡眠時間 および入眠潜時などに有意な変化はないという結果が 示されている(小西ら 2012;田中ら 2012).このよ うに自宅での睡眠を検討することは,日常的な状態を 把握することができ,高齢者の睡眠の実際を捉えるう えでよい測定条件であると考える. ઃ.高齢者の睡眠状態 今回の対象者の睡眠時間は 292 分から 516 分と 224 分の幅があり,個々人によって大きな違いがあった が,睡眠効率は最小でも 77%であった.高齢となる と睡眠効率も低下し,70%台にまで低下するといわれ ており,65 歳では 80%台,75 歳以上では 77%,85 歳では 75%以下となり,年齢とともに低下している (三島 2015;Ohayon et al. 2004).睡眠時無呼吸が生 じると,中途覚醒が増え,さらに睡眠効率は悪くなる (豊島ら 2004).今回の対象は 65 歳から 80 歳と年齢 の幅があることから,睡眠効率にも違いが生じている と考えられる.また,今回は睡眠中の呼吸状態につい 表 3-1 高齢者における睡眠パラメータ他と主観的評価との関係 在床時間 睡眠時間 睡眠効率 寝つき 活動状況 疲労度 VAS(n=21) .471* .610** .485.362 .037 −.147 OSA 第Ⅰ因子:起床時眠気(n=20) .550*. .651** .580** −.017 −.174 −.215 OSA 第Ⅱ因子:入眠と睡眠維持(n=20) .424† .500* .583** .023 −.475−.323 OSA 第Ⅲ因子:夢み(n=20) −.115 −.021 .243 .233 −.140 .104 OSA 第Ⅳ因子:疲労回復(n=20) .553* .560** .306 −.004 .003 −.152 OSA 第Ⅴ因子:睡眠時間(n=20) .220 .288 .268 −.136 .000 −.110 Spearman の相関係数を示す.*;P<.05,**;P<.01,†;P<.1 表 3-2 高齢者における入眠前後の自律神経反応と主観的評価との関係 入眠前の RR 入眠 30 分後 の RR 入眠 60 分後 の RR 入眠前の SDNN 入眠 30 分後 の SDNN 入眠 60 分後 の SDNN 入眠前の rMSSD 入眠 30 分後 の rMSSD 入眠 60 分後 の rMSSD VAS(n=21) .299 −.016 .086 .371† .155 .249 .432* .262 .200 OSA 第Ⅰ因子:起床時眠気(n=20) .184 −.282 .288 .238 .159 .262 .182 .062 .183 OSA 第Ⅱ因子:入眠と睡眠維持(n=20) .101 −.347 .173 .245 .080 .089 .217 .130 .054 OSA 第Ⅲ因子:夢み(n=20) .266 −.264 .207 .342 .419† .319 .426† .400† .266 OSA 第Ⅳ因子:疲労回復(n=20) .338 −.180 .574** .371 .156 .240 .286 .234 .370 OSA 第Ⅴ因子:睡眠時間(n=20) .073 −.155 .062 .135 −.077 .023 .005 −.158 −.253 入眠前の L/T 入眠 30 分後 の L/T 入眠 60 分後 の L/T 入眠前の Log L×T 入眠 30 分後 の Log L×T 入眠 60 分後 の Log L×T VAS −.379† −.249 −.175 .300 −.047 −.154 OSA 第Ⅰ因子:起床時眠気(n=20) −.234 .135 .055 .237 .141 .082 OSA 第Ⅱ因子:入眠と睡眠維持(n=20)−.102 .098 .035 .271 .142 .062 OSA 第Ⅲ因子:夢み(n=20) −.358 −.026 −.074 .320 .386† .349 OSA 第Ⅳ因子:疲労回復(n=20) −.121 −.126 −.180 .337 .244 .200 OSA 第Ⅴ因子:睡眠時間(n=20) .128 .460* .403† −.034 .237 −.308 Spearman の相関係数を示す.*;P<.05,**;P<.01,†;P<.1

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ては調べていないので,無呼吸などが生じている可能 性も否定できず,これらのことが睡眠効率バラツキを 大きくさせた結果となったと考えられる.睡眠に対し ての主観的評価は VAS では最小が 55 点で 50 点より よい評価であったが,最大は 88 点であり,最大と最 小では 33 点の差があった.OSA 睡眠評価票による評 価は OSA 第Ⅰ〜OSA 第Ⅳ因子までは 50 点未満であ り,特に OSA 第Ⅱ因子に関しては最大でも 49 であり, 入眠と睡眠維持に問題を感じていたことになる.離床 回数は回の者もいたが,夜につき平均〜回は 覚醒する中途覚醒が認められており,睡眠維持に影響 を与えていると考えられる.高齢者は中途覚醒や早朝 に目覚める早期覚醒による睡眠障害が報告されており (Kim et al. 2000;三島 2015),今回もこれまでの報 告同様,中途覚醒が認められた. ઄.高齢者における入眠前後の自律神経反応の変化 RR 間隔の経時的変化は入眠後 RR 間隔の延長が認 められ,その後短縮した.自律神経系の活性の指標で ある SDNN は入眠後に低下し,その後,増加するが入 眠前よりは低下した状態で経過した.この SDNN の 結果は睡眠によって自律神経系の全体的な活動が抑制 されたことを示している.副交感神経系の指標である rMSSD および Log L×T は変化が認められず,交感神 経系の指標である L/T に関しては,入眠前にくらべる と入眠後低下し,交感神経系が睡眠により抑制されて いた.これまでの報告(阿部ら 2003;Brandenberger et al. 2003;Yeragami et al. 1997)で,高齢者では若 年者に比して,覚醒時では交感神経系の活性が高い状 態で,副交感神経系が抑制された状態であると示され ている.また,睡眠中でもこの様相は同様で,加齢に 伴い副交感神経活動指標の HF 振幅値の低下と交感神 経活動指標の LF/HF 比の増加が認められている (Crasset et al. 2001;岡ら 2008).今回の入眠前後の 結果では睡眠により交感神経系は抑制されているが, 副交感神経系には影響が認められなかったことは, Crasset ら(2001)の報告の交感神経系,副交感神経 系ともに影響が認められなかったことと反している. 筋交感神経に関して,ノンレム睡眠で減少し,レム睡 眠が高い値となり(阿部ら 2003),心拍変動の結果で もノンレム睡眠の HF はレム睡眠にくらべ増加し, LF/HF はレム睡眠にくらべ低下したことを示した (Busek et al. 2005).しかし,睡眠時にみられる無呼 吸により頻回の覚醒が生じる場合,ノンレム睡眠時に 交感神経系が低下せず,亢進した状態となり,循環器 系への影響について報告している(Leuenberger et al. 1995;清水 2008).高齢者においても血圧と夜間覚醒 回数との関連性がみいだされており,この夜間覚醒は 交感神経機能の亢進と血圧上昇が影響し,さらに睡眠 の質を低下させる可能性を示唆している(青沼・松田 2017).今回,血圧や睡眠時の無呼吸などの障害につ いて調べていないが,今後は検討する必要がある.血 圧や睡眠時の無呼吸などの状態を把握したうえで,自 律神経系の過度な変化ではなく,睡眠による交感神経 系の抑制,副交感神経系優位といった生理的な反応が もたらされるような介入についても検討する必要があ る. અ.高齢者における睡眠パラメータ,自律神経反応と 主観的評価との関係 睡眠パラメータと VAS や OSA 睡眠評価票による 各因子との関係で,睡眠時間や在床時間が長ければ, また,睡眠効率がよければ睡眠に対する主観的評価は よかったが,寝つきとは関係が認められなかった.活 動状況や寝る前の疲労度とにも関係が認められなかっ た.島本ら(2014)の行った文献研究では運動と睡眠 の関係において,被験者の年齢や体力レベルに相応し い運動であれば,質の高い睡眠を獲得するのに有効で あるとした報告が多いと示している.12ヵ月の歩行運 動介入において,介入期間中の歩数増加を維持した対 象では,日中の眠気および睡眠の質に対する改善効果 が示されたという報告(青木ら 2017)もある.今回 の調査では活動状況との関係は認められなかったが, 日常生活のレベルでの活動状況であるため,運動とし ての適切な負荷とはなっていなかったことが考えられ る.しかしながら,活動状況の違いによって,入眠前 の自律神経にどのような影響を与え,それが睡眠に関 与するか否かは今後,さらなる検討が必要であると考 える. 入眠前後の自律神経系との関係では入眠前の SDNN および L/T と VAS は相関する傾向が認められ,副交 感神経指標の rMSSD に関しては有意な正の相関が認 められた.この rMSSD に関しては OSA第Ⅲ因子とも 相関する傾向が認められた.このため,入眠前の自律 神経の状態が睡眠の評価に影響を与えていることが示 唆される.また,本研究の睡眠日誌に入眠までの時間 について,テレビ鑑賞と記載している者がいた.就寝 前にメディアを利用することで,睡眠の質に悪影響を

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与えるといわれており,このようなメディアの睡眠へ の影響は自宅での調査で明らかになることである.睡 眠時間を一定時間確保したとしても就床直前の行動で 脈拍の低下率が小さく,その睡眠が不満であったと示 した報告(植野ら 2012)も認められている.北堂 (2005)の報告においても,入眠前の自律神経系の状 態で睡眠の質が決定すると報告しており,スムーズな 入眠を導くためにも副交感神経系を高め,交感神経系 を抑制する介入の開発を検討している.今回の結果で も入眠前に交感神経系の反応が高いと睡眠評価が悪 く,副交感神経系の反応が高ければ睡眠評価がよいと いう結果が示された.また,SDNN は自律神経系の 活性を示す指標であるため,この値が高い方が睡眠の 主観的評価がよいという結果であった.就寝の 60 分 前から副交感神経系が活性化し,30 分前には交感神 経系の活性が抑制されるという報告(白川・水野 2008)もあり,これら自律神経系の状態が入眠に影響 を与えていることは今回の結果からも示すことができ たと考える. 入眠後の自律神経活動で,入眠 30 分後の SDNN, rMSSD および Log L×T と OSA 第Ⅲ因子との間に相 関がある傾向が認められた.副交感神経系が高ければ OSA 第Ⅲ因子の夢みにはよい影響がある.この第Ⅲ因 子は気がかりや睡眠状態の質に関係しているともいわ れており(成澤 2015;谷田 2010),入眠後の早い段階 で副交感神経系が優位となると睡眠の質が得られると 考えられる.他の OSA 第Ⅴ因子と入眠後 30 分と 60 分 の L/T に相関が認められ,交感神経が高い状態にあ ると,睡眠時間を十分に取ることに繋がると考えられ る.入眠困難者の寝つきの悪さは,各脳波段階の潜時 の延長と交感神経活動の上昇を示し,交感神経系が優 位となることで入眠に影響を与えることを示唆した (成澤ら 2019).さらに,青沼ら(2017)は高齢者の なかでも睡眠時に交感神経系の亢進が生じた場合,徐 波睡眠が得られず中途覚醒につながる可能性を考察し ている.これらのことより,入眠前から入眠後の状態 を睡眠の生理的な反応である,交感神経系の抑制と副 交感神経系の亢進に導くことが重要であることが示唆 された.

Ⅵ.今後の課題

今回,高齢者の自宅での睡眠状態と自律神経反応に 着目し,その経時的変化と睡眠に対する主観的評価も しくは睡眠パラメータとの関係について検討した.睡 眠により副交感神経系には影響しなかったが,交感神 経系の抑制が認められた.また,主観的評価とは睡眠 パラメータである在床時間,睡眠時間および睡眠効率 には正の相関が認められ,自律神経反応との関係は入 眠前の自律神経反応と主観的評価に相関がある傾向が 認められた.今回入眠前後での検討を行ったが,高齢 者には中途覚醒,早期覚醒が多いため,睡眠全体を通 して,血圧や呼吸の変化も含めた検討が必要であると 考える.また,日中の活動状況が入眠前や睡眠中の自 律神経系にどのような影響を与えるのかを詳細に検討 すること,さらに,今回の高齢者の対象者数が少な かったことなど課題も残る.高齢者ということで,性 周期の考慮をしなくてもよいと考え,男女を総合的に 検討した.しかし,Kim ら(2000)の報告では,高齢 でも心拍変動の結果には性差が認められている.この ため,対象者数も含め,性差に関しても今後検討して いく必要があると考える.

Ⅶ.結論

入眠前後の高齢者の自律神経反応や自宅での睡眠状 態に着目し,その経時的変化と睡眠に対する主観的評 価もしくは睡眠パラメータとの関係について検討した. 入眠後に RR 間隔の延長,SDNN や L/T の低下が認 められ,高齢者は睡眠により副交感神経系の亢進は認 められないものの,交感神経系が抑制されることが示 された.睡眠に対する主観的評価との関連では,睡眠 時間,在床時間が長いと睡眠の評価も上昇した.自律 神経との関係では,入眠前後で関連が認められた.こ れらの結果より,入眠前および入眠後の早い段階の状 態が睡眠評価に影響していると考えられ,高齢者の睡 眠援助に入眠前後に副交感神経系の活性を高め,交感 神経系を抑制する自律神経系を調整するケアが必要で あるといえる. 謝 辞:本 研 究 は JSPS 科 研 費 の 助 成 を 受 け た も の (23593466)である. 文献 阿部正人,神林崇,清水徹男(2003):高齢者の睡眠・覚醒に 伴う自律神経機能の変動,Geriatric Medicine,41(4),500-503.

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参照

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