日本作物学会中国支部研究集録 第 58 号 遅れ穂の発生したオオムギ・もち性はだか麦品種「キラリモチ」の収穫期前の穂重・粒重の分布 山口大学大学院創成科学研究科 内田多江子・高橋肇・荒木英樹 鳥取大学大学院連合農学研究科 水田圭祐 農研機構西日本農業研究センター 吉岡藤治・高橋飛鳥 オオムギは,子実中に水溶性食物繊維のβ-グルカンを多く含んでおり,近年,ヒトの腸内環境を 改善する機能性食品として注目されている.もち性の品種「キラリモチ」は,うるち性の品種に比べ てβ-グルカン含量が高いことで知られており,窒素を実肥のように後期重点施肥することでさらに 高まることでも知られている.一方,後期重点施肥は遅れ穂を発生させ,収穫期が遅れることでも知 られている.そこで,本研究では窒素の後期重点施肥を実践している生産農家の圃場において,収穫 期前に主稈と分げつ別に穂数ならびに穂重を調査し,遅れ穂の稔実について考察した. 【材料と方法】 本試験は,広島県の生産農家・(株)トペコおばらの実証圃場 5 筆のサンプルを用いて行った.平成 29 年 11 月 13 日に播種し,平成 30 年 4 月 20 日に開花期となり,6 月 17 日(開花期後 58 日目)に収 穫した.5 月 29 日(開花期後 39 日目)は主稈の穂が成熟して垂れており,さらに 6 月 5 日(開花期 後 46 日目)は分げつの多くで穂が垂れていた.これら両日に 5 筆の圃場それぞれの 1.5m×1m から 全個体を掘り取り,主稈の穂と分げつの穂,さらに分げつについては,穂を指でつぶして子実の存在 が確認できないまだ色の青い穂を未稔実穂とした.主稈の穂と分げつの稔実穂は,その数と一穂ずつ の乾物重を測定して一穂重の頻度分布を作成した.主稈の穂と分げつの穂は,脱穀した後,粒重を測 定して粒重の頻度分布を作成した. 6 月 17 日の収穫期には,収穫作業直前に 5 筆の圃場それぞれか ら無作為におよそ 10 株を掘り取り,一穂重,粒重を測定して頻度分布を作成した. 【結果と考察】 分げつの未稔実穂は,ほとんどが 0.2g/穂以下であり,開花期後 39 日目に全穂数の 6.8%であった ものの開花期後 46 日目には 2.1%に低下した(第 1 図).一方,分げつの稔実穂のうち 0.2g/穂以下の ものは,開花期後 39 日目の 4.5%から開花期後 46 日目の 8.3%に増加し,未稔実穂が開花期後 39 日目 から稔実し始めたと考えられた.0.2g/穂以上の穂では,主稈の穂は,開花期後 39 日目の 1.286g/穂 に対して,開花期後 46 日目で 1.270g/穂と増加しなかったものの,分げつの稔実穂は,開花期後 39 日目の 0.888g/穂に対して,開花期後 46 日目で 0.951g/穂と有意に増加した.分げつの稔実穂のうち 1.4g/穂以上のものは,開花期後 39 日目の 8.1%に対して開花期後 46 日目で 7.9%と増加せず,早く発 生した分げつではすでに開花後 39 日目に成熟していたと考えられた.0.2~0.6g/穂のものは 20.6% から 13.9%に減少したのに対して,0.6~1.4g/穂のものが 49.9%から 56.4%に増加しており,サイズ の小さい遅れ穂が開花期後 39 日目から開花期後 46 日目の間にも稔実していると考えられた.開花期 後 58 日目では,さらに 0.6~1.4g/穂のものが 56.4%から 62.6%に増加しており,遅れ穂の稔実がさ らに開花期後 46 日目以降にも進んでいたと考えられた.「キラリモチ」は高β-グルカン化のために 後期重点施肥にすると収穫適期を判断するのが難しいため,施肥体系には注意を必要とする.
日本作物学会中国支部研究集録 第 58 号
※本研究は生研支援センター「革新的技術開発・緊急展開事業(うち地域戦略プロジェクト)」の支 援を受けて行った。