社会系教科教
育学会
『社会
系教科教育学研究』第24
号 2012
(pp.91-100)
公民科[ ̄
倫理] における価値判断力の育成
−エンハンスメン
ト問題に焦
点を当てて−
The Fostering of the Ability for Value Judgments in Civics (Ethics):
Focusing on the Issues in Enhancement
1
問題の
所在
本稿
に
お
いて
,公
民科
「倫
理
」
に
おけ
る価
値
判
断
力の
育
成
を
目指
し
,それ
を実
現す
るため
の
授
業
プラ
ン
を紹介
す
る
。問題
提起
は
次の
3点
で
ある
。
①
現
行
の公
民科匚
倫
理
」は
倫理
思想
史
学
習に
なっ
て
いる
。
②
そ
の
ため
,在
り方
生
き方
の
間
接的
な
学
習に
は
な
っ
て
いるが
,直
接
的
には
関わ
っ
て
いな
い
(1
。
)
③
②
を克服
す
る
ため
に社
会
的
論
争問
題
を扱
った
公
民
科厂
倫理
」の
実践
では
,価値
自体
が
明
確
化
され
て
いな
い。
(2
)
(筆者作成)
社会科というのは社会認識を通
して公民的資質
を育成する教科である
。その中で公民科
「倫理」
は
一見社会認識
を通
さずに直接的に公
民と
しての
道徳性
を育成するものと
して
,成立当初か
ら物議
をかもす
ことになる
(
‰
しか
し社会的知見を教
え込むことだけでは公民的資質の育成には至らな
い
,公
民的資質は複合的なもの
であり,自分自身
での意思決定を行なうという行為もまた公民的資
質に必要であると
,暗記科目脱却の方法と
して
「価値判断
・意思決定」
「合理的意思決定」が近年
注
目され
てきている
。今後,この先行研究の成果
を踏襲
挙
げた問題
しつつ
を克服するべ
,更なる発展を図るために
く本稿を
したためた。
,上記に
2
公
民科厂
倫
理
」に
お
ける価
値
判断
力育
成
方略
問題
克服
の
ため
に
,公
民科匚
倫
理
」に
て価値
判
断
力の
育
成
を
目指
す授
業
プラン
を作成
す
る
。その
際
には
次の
こ
とを踏
ま
える
必要が
ある
。
①
②
③
④
行
壽
浩
司
(長岡京市立長岡中学校)
先哲の思想
を
「道具
」として扱
う。
価値観
形成
を学習過程に組み
込む
。
社会
的論争問題を取
り上げる
。
生徒
にとって匚
身近
な」問題に置
き換える。
(筆者作成)
倫理思想史学習における弊害は
,知識と
して得
た先哲の
思想
を活用できていないか
らである
Oそ
れ
を克服す
るために
,先哲の思想
を用
いて問題を
考察する
。また価値観形成
を学
習過程に組み
込み
,
価値判断
・意思決定及び合意形成
をさせるととも
に
,社会的論争問題を扱
う際に,生徒にとって
「 ̄
身近な
」問題から探らせることで,自らの
問題
と
して在
り方生き方に直接的にア
プロ
ー
チする
こ
とをね
らっている
。大人たちでも議論が尽きない
論争問題
を生徒にた
どらせることで
,その議論に
おいて対立
している価値の明確化がなされ
ること
が望まれ
る
。加
えて,公
民科という教科の
特質と
して
,生徒か
ら厂
遠
い」問題となっていたが
,学
校
という生活環境の中でそれ
らの生命倫理上の論
争問題を導出することが
できれ
ば
,またその枠の
中で様々
な意見が
出揃
えば
,それは生徒にとって
匚
身近な」題材を扱っているといえるのではない
か
。
3
エンハンスメント問題と授業内容の編成
本稿ではエンハンスメント(e
n
h
a
n
c
e
m
e
nt
)問
題を扱った授業プランの作成を行なう。エンハン
ス(enhance)
とは
,高める,強化する,改良す
るという意味であり
,ここでは健康の回復と維持
を
超えて,能力や性質の改良をめざして人間の心
身の仕組みに生物医学的に介入することをエンハ
ン スメ ン ト と定 義 す る(几 具 体的 に は筋 ジス ト
ロ フィ ーの症状緩 和や加 齢 に伴う筋 肉の低 下を 防
ぐための 遺伝子治 療や, ホル モン欠 乏症 によ る背
の低 い子 ど もに対 す るホル モン療法 が, スポ ーツ
選手 のパフ ォーマン ス向 上 のため に使用さ れる こ
と は許 さ れるの かどう か。 ま た, アルツハ イマ ー
痾 の治 療 のため の薬 物 が, 一般人 の記 憶能力 向上
の ために使用 さ れるこ とは許さ れ るかどう か。 不
妊治療 の ための技術 を, 子ど もを 匚
デ ザイ ン] す
る こ と へ 応 用 し て も よ い の か ど う か, 等 で あ
る(‰ 医 学 的 に はエ ン ハ ン ス メ ント は以 下 のよ
う に区分さ れ, 捉え ら れてい る。
疾病 領域 「正 常」 匚より優 れた」 能力・ 資質y
y
。
回午 一二│ 几ぐ
よ 厂
土 屋敦 匚エ ンハ ン ス メ ント 論 争 を め ぐ る見 取 り図 一 歴 史 的 源 泉 と現 在 的 争 点 を 中 心 に ー 」 上 田 昌文 ・ 渡 部 麻 衣 子 緇 『 エ ン ハ ン ス メ ント 論 争[ 身 体 ・ 精 神 の 増 強 と 先 端 科 学 技 術 ]』 社 会 評 論 社 (2008 ) 150 頁 こ の 区 分 を そ の ま ま 採 用 し て 説 明 す る と, 疾 病 状 態 を 匚正 常 」 に 改 善 す る こ と が 治 療 で あ り , 厂正 常 」 を 医 療 技 術 に よ って 匚よ り 優 れ た」 能力 ・ 資 質 に 改 変 す る こ と は エ ンハ ン ス メ ン ト で あ る と い え る。 つ ま り 匡正 な ら ば 許 さ れ る が, 増 強 と な る と 倫 理 的 問 題 が生 じ る と い う こ とで あ る。 そ れ に対 し て , 次 の よ う に医 療 を 捉 え た 場 合 , エ ンハ ン スメ ント も 医 療 の 目 的 に内 包 さ れ る こ と とな る。 医 学 を も っ ぱ ら , 特 定 の 目 標 設 定 (診 断 ・ 治 療 ・ 予 防 ・緩 和) に向 け ら れ た も の とし て捉 え る の で は な く, 患 者 や 顧 客 の 意志 を 第 一 の 行 動 原 理 ( 自 律 原 理 ) と 見 な す な ら ば, も ろ もろ の 医 療 技 術 が さ ま ざ ま な 広 範 な 目 的 の た め に用 い ら れ る こ と に な ろ う。 そ のよ う に 構 成 さ れ た 「 現 代 の サ ー ビ ス 医 療 」(Dienstleitungs-medizin) の 様 々 な 目 標 と し て , 生 活 の 質 の 改 善 , 匚完璧(perfekt) な」 健 康 状 態(wellness) の達 成 等 々 が 議 論 さ れて い る 。 も し そ う し た も の が 医 療 の 目 標 と な る な ら , 性 能 ア ッ プ(Leistungssteigerung) と い う 意 味 で の人 間 的 自然 の 改 良 が 医 療 に 求 め ら れ る こ と に な ろ う 。 こ う し た 前 提 の も と で は, 健 康 な人 は , 医 学 の伝 統 的な 目標 設 定 の外 部 に立 つ 目 的 と み な さ れ る。 と は い え 二 , 三 の 論 者 は, そ の種 の 行 為 が な お も 医 療 の 目 標 の な か に含 ま れ う る の か を 疑 っ て い る 。 生 命 環 境 倫 理 ド イ ツ 情 報 セ ン タ ー 繼 松 田 純 ・ 小 椋 宗 一 郎 訳 『 エ ン ハ ン ス メ ン ト 』 知 泉 書 館 (2007) 6 -7 頁 こ こ に あ る よ う に , 医 療 の 目 的 が 生 活 の 質 (Quality of Li亀 略 し てQOL, 生 命 の 質 と も) の 改 善 で あ るな ら ば , エ ン ハ ン ス メ ント も ま た 医 療 の 目 的 の 一 部 で は な い か , と い う 解 釈 で あ る。 ま た, そ も そ も病 気 と い う 概 念 と主 観 的 社 会 的 要 囚 で 呼 び 起 さ れ る エ ン ハ ン ス メ ント と い う 概 念 が い ず れ も 曖 昧 で あ る た め, 明 確 に治 療 とエ ンハ ンス メ ント と を 分 け る こ と は難 し く, 医 療 を 実 践 す る 上 で 明 確 な 指 針 と は な り え な い だ ろ う と い う 意 見 も あ る(6)。 授 業 内 容 の 編 成 に お い て , 次 の よ う な 流 れで 価 値 観 形 成 を 行 な う 。 ま ず 問 題 の 導 入 にて , Q1: 部 活 動 で , 能 力 の あ る 選 手 だ け を 試 合 に 出 場 さ せ る の は , 賛 成 か反 対 か。 Q2: 能 力 で は な く, お 金 を 監 督 に 支 払 う こ と で 試 合 に 出場 す る こ と は 賛 成 か, 反 対 か 。 Q3: 能 力 を 金 で 買 う こ と が で き る と し た ら , 賛 成 か 反 対 か。(MQ) の 問 い を 生 徒 に 投 げ か け , 自 由 に 議 論 さ せ る。 そ こ で の生 徒 の 意 思 決 定 は 自 分 自 身 の 認 識 の 枠 の 中 だ け で 考 え た 意 思 決 定 で あ る た め, 主 観 的 な 意 見 で あ る。 次 に問 題 の分 析 に 社 会 的 論 争 問題 と し て , エ ンハ ン ス メ ント を め ぐ る 問 題 を 分 析 す る 。 そ の 際, レ ーシ ッ ク手 術 によ って 視力 を 矯正 しパ フ ォ ー マ ン ス が 向 上 し た タ イ ガ ー ・ ウ ッ ズ と, ド ー ピ ン グ に よ る 肉 体 改 造 に よ っ て パ フ ォ ーマ ン ス が 向 上 し た バ リ ー・ ポ ン ス の 違 い を 浮 き 彫 り に す る こ と で 問 題 を 分 析 し て い く。 そ し て 問 題 の考 察 と し て , 匚能 力 を 金 で 買 う こ と が で き る と し た ら , 賛 成 か 反 対 か。」(MQ) につ い て , ベ ン サ ム, ロ ー ル ス , ア リ ス ト テ レ ス , ノ ー ジ ッ ク, サ ンダ ル で あ れ ば な ん と 答 え る か を , 彼 ら の 思 想 を 読 み 取 る こ と で 予 想 さ せ る。 こ の思 想 家 を 取 り上 げ る理 由 は, 今 回 の 問 題 を 生 徒 が考 察 す る 上 で 必 要 な 基 準 を 提 示 し て く れ る思 想 家 だ か ら で あ る。 部 活 動 に て 試 合 に 出場 す る に あ た り , チ ー ム全 体 の利 益 と 個 人 の利益が
しば
しば対立する
。出場できるメンバーに
は限
りがあ
り
,すべての個人の利益を実現するこ
とはできないか
らである
。そのため対立状態
を解
消
,合意を実現するために,ルール
を設定する必
要が
出てくる
。そのよ
うな合意形成に至るまでに
,
問題
自体を分析する必要があ
り
,そのチームの
利
益と個人の利益の対立状態を分析するにあた
り
,
次の
5人の思想家の思想が
,生徒にとってヒン
ト
になると考えられる
。社会全体の
幸福
を最大にす
ることを善とす
るベンサムはチ
ームの利益を優
先
し
,認め
る立場といえる
。ロー
ルスであれば金銭
的格差による不平等が
生
じるエンハンス
メン
トに
反対の立場
をとるかも
しれ
ない
し
,金銭
的,能
力
的に他の部
員よ
り劣っている生徒か
ら優
先的に行
うのであれば
,認める立場をとるかも
しれない。
ア
リス
トテ
レスは医療の
目的
,部活の目的を何に
設定するかで認める立場にも認め
ない立場にも転
用でき
,生徒の解釈に大
きく影響する
。ノー
ジッ
クは個人の選択に委ねるべ
きと
,認める立場をと
るが
,周
りが
エンハンスメン
トをしていた場合
,
干渉され
自己決定権の侵害が生
じるの
であれば認
めない立場をとる
。サ
ンデルであれば個人の利益
よりも社会における価値観や美徳
を重視
し
,それ
を貶め
るの
であれ
ば認めない立場
をとるであ
ろう
。
チ
ーム
の利益
を優
先す
るか
,個
人の利益
を優先す
るか
,その
対立構造
を分析す
る
うえで
,解釈に
よっ
て賛成
・反対の
両方にまたがるロールス
とア
リス
トテ
レス
。チームの利益
を優先するベンサム
。個
人の利益
を尊重するノ
ージック
。社会的価値
を尊
重するサン
デル
を参
考にする
。
この学習過程に
よっ
て
,Q1
∼Q3
の経験知の段階
と異なり,生徒の意
思決定の材料と
して先哲の思想が加わることとな
る
。その際
,先哲の思想
を解釈することで,この
問題に対
して先哲の思想
を匚
道具
」と
して用いな
がら意思決定が
できる
。価値判断
・意思決定にて
個人での意見
を
,合意
形成によって相互主観的妥
当性のある合意を形成する
。チームの利益と個
人
の
利益の
対立で問題を考察する
ことで
,エンハ
ン
ス
メン
トの問題を生徒に分か
りやす
く
,また身近
な題材で考
えることが
できる。
4
エンハンスメン
ト問題を素材にした公民科
「倫理」の授業プラン
授業テー
マ
:『匚
サ
イボー
グ人間』になることができる!?
』
単元計画
:
教科
・科
目
:公民科匚
倫理
」
1。問題の導入
「 ̄
能力のある選
手だけ
を試合に出場させるのってア
リ?」………
1時間
2 3問題の分析
「バ
リー
・ポンス
とタイ
ガー
・ウッズの違い」………
2時間
問題の考察匚
ベンサム
(功利主義)
」匚
ロールス
(リベラリズム)
」
匚
ア
リス
トテ
レス
(目的論)
」匚
ノージ
ック
(自由至上主義)
」
匚
サ
ンダル
(コミュニタ
リアン)
」
3時間
4
。価
値
判断
・意
思決
定匚
能
力
を金
で
買える
と
した
ら」…
……
…
……
…
……
…
…
1時間
5.合
意
形成
匚
ク
ラス
全体
で
ルー
ル
を決
め
よ
う
」…
……
……
…
……
…
……
…
…
1時間
(計
8時間
)
単
元
目標:
(1)生徒
に
と
って匚
身近
な」題
材か
ら,生
命倫
理に
おける社
会
的論
争問
題匚
エ
ンハ
ンス
メン
ト問
題
」を
考
察す
る
ことが
で
きる
。
(2)現
行の
エ
ンハ
ンス
メン
トに
対す
る社
会
的価
値
を分
析
し
,対
立す
る価
値
を明確
化す
る
ことが
で
きる
。
(3)問題
の解
決
を考
察す
る過程
に
おいて
先哲の
思
想
を匚
道
具
」と
して扱
い
,是
非の
解
釈
をす
る
ことが
で
きる
。
(4)
以下の
思
想
家の
思想
を厂
道
具
」
と
して問
題
を考
察す
る
ことが
で
きる
。
①ベンサムの思想
:
匚
最大多数の最大幸福
」②
ロールスの思想
:
匚
公正な機会の均等
」
「 ̄
格差原理」
③ア
リス
トテ
レスの
思想
:
匚
目的論
」④
ノー
ジックの思想
:
「自由至上主義
(愚行権
・自己決定権
)
」
⑤サンデルの思想
:
厂
美徳」厂
スポー
ツの本質」⑥その他
:
厂
Q
O
L」匚
匡正」
(5)価値判断
・意思決
定及び合意形成
を行な
うことが
できる。
学習 指導案 :(表 中 は,Q は発問,A は回 答,T は授業者,Sは生 徒, ①∼⑧ は授業 時間数 を示す。
)
発 問 ・ 指 示 ( 留 意 さ せ る 点 )教 授 ・ 学 習 活 動 予 想 さ れ る 意 見 ・ 獲 得 さ せ た い 知 識 過 程 ① Q1: 部 活 動 で , 能 力 の あ る 選 手 だ け を 試 合 に 出 場 さ せ る の は, 賛 成 か反 対 か 。 Q2: 能 力 で は な く, お 金 を 監 督 に 支 払 う こ とで 試 合 に 出 場 す るこ と は 賛 成 か, 反 対 か。 Q3: 能 力 を 金 で 買 う こ と が で き る とし た ら , 賛 成 か 反 対 か。(MQ ) T: 発 問 す る 。 S:答 え る 。 T:発 問 す る。 S:答 え る。 T:発 問 す る。 S:答 え る。 A1: 『 賛 成 派 の 意 見 』 ・ 目 的 は 試 合 に 勝 つ こ と で あ り , そ の 為 に は 下 手 な 選 手 よ り も上 手 い 選 手 を 出場 さ せ た方 が良 い 。 ・ 下 手 な 人 間 が 逆 に多 用 さ れ れ ば, 上 手 い 選 手 は 不 満 を 持 つ 。 不 満 度 が よ り 小 さ く な る の は , 上 手 い 選 手 が 多 用 さ れ る 方 で あ り , 下 手 な 選 手 は 納 得 す る 理 由 があ る。( 功 利 ) ・ 対 戦 相 手 もベ ス ト メ ン バ ーを 出 し て き て い る 場 合 , こ ち ら もベ ス ト メ ンバ ーを 出 さ な い と 拮 抗 し な い 。 ・ 公 式 戦 で は 上 手 い 選 手 優 先 に し, 練 習 試 合 で は下 手 な 選 手 に も配 慮 す れ ば い い 。( そ の 試 合 の 目 的 によ っ て 場 合 分 け ) 『 反 対 派 の 意 見 』 ・ 部 活 動 の 目 的 は勝 つ こ と だ け で は な い 。 ・ 機 会 が与 え ら れな い の は 不 平 等 で は な い か 。 ・ 下 手 な 選 手 を 出 場 さ せ る 事 に, 上 手 い 選 手 が 納 得 で き る だ け の理 由 が あ れ ば ( 最 後 の 大 会 で あ る, 誰 よ り も練 習 し て い る 等 ), 不 満 度 は上 昇 し な い 。 ・ 序 盤 を ベ ス ト メ ン バ ー, 中 盤 以 降 を 流 動 的 に 選 手 交 代 さ せ れ ば 機 会 の 均 等 が 図 ら れ る 。 A2: 『 賛 成 派 の 意 見 』 ・ 商 品を 売 買 す る よ う に , 出 場 権 も売 買 し た ほ う が , 市 場 原 理 に か な っ て い て 良 い。 ・ 支 払 わ れ た お 金 は 部 費 と し て 還 元 さ れ れ ば よ い の で は な い か 。 多 く の部 費 を 納 め た 選 手 は , 部 活 の 為 に 貢 献 し て い る と い え る 。( レ ガ シ ー プ ロ グ ラ ム の肯 定 派 意 見 に類 似 ) ・ 能 力 と い う 抽 象 的 な も の よ り も, お 金 の方 が 数 値 化 で き る た め , 管 理 し や す い 。 『反 対 派 の 意 見 』 ・ 貧 富 の差 が 出 て , 不 平 等 で あ る。 ・ 賄 賂 で あ っ て , 不 正 だ 。 ・ 試 合 自 体 の 目 的 に そ っ て い な い 。 ・ 貧 乏 大 は お 金 持 ち に 対 し て 不 満 を 持 ち, 前 回 の例 よ り も不 満 度 は よ り大 き くな る。 A3: 『 賛 成 派 の意 見 』 ・ 生 ま れ つ き の 身 体 的 能 力 , 才 能 に 恵 ま れな か っ た 人 も能 力 を 持 つ こ と が で き る。 ・ 能力 が あ れ ば , 試 合 に 勝 て る。( 目 的 は 勝 つ こ と ) ・ 努 力 す る よ り も 確 実 に 能 力 を 持 つ こ と が で き る 。( 少 な い 費 用 で 大 き な 対 価 を 得 る こ と が で き る ) 『 反 対 派 の 意 見 』 ・ 貧 富 の差 が 出 て , 不 平 等 で あ る 。 ・ 能力 は 尊 く , お 金 で や り 取 り す る も の で は な い 。 ・ 真 面 目 に 努 力 し て い た 大 よ り も お 金 で買 っ た 人 の 方 が 能力 を 持 つ の は お か し い 。 問 題 の 導 入② Q4: エ ン ハ ン ス メ ン ト 問 題 と は 何 か。 T:説 明 す る 。 A4: エ ン ハ ン スenhance と は, 高 め る, 強 化 す る, 改 良 す る と い う 意 味 で あ り , こ こ で は 健 康 の回 復 と 維 持 を 超 え て , 能 問 題 の 分 析 力 や 性 質 の改 良 を め ざ し て 人 間 の 心 身 の 仕 組 み に 生 物 医 学 的 に 介 入 す る こ と。 ス ポ ー ツ に お い て も , 遺 伝 子 治 療 か ら ド ー ピ ン グ ま で , あ ら ゆ る 方 法 で エ ン ハ ン ス メ ント が 行 な わ れ る可 能 性 が あ る 。 ド ー ピ ン グ は 効 率 的 に パ フ ォー マ ン ス を 向 上 さ せ る 一 方 で , 副 作 用 な ど に よ り 選 手 の 健 康 を 損 な っ た り 公 平 性 に 問 題 が あ っ た り な ど の 理 由 か ら 禁 止 さ れ て い る が , 近 年 は遺 伝 子 治 療 な ど の 技 術 が進 み, 副 作 用 の危 険 性 な ど は 克 服 さ れ る可 能 性 が あ る 。 ま た , 規 制 対 象 外 の サ プ リ メ ント な ど を 用 い る ケ ー ス もあ る 。 生 命 倫 理 にお い て , 論 争 に な っ て い る 議 題 の一 つ で あ る。 ・ エ ン ハ ン ス メ ン ト 疑 惑 の 具 体 例 と し て バ リ ー ・ ポ ン ス選 手 を 取 り 上 げ る 。
T:説 明 す る 。 ・ バ リ ー ・ ポ ン ス(Barry Lamar Bonds ) は MLB 史 上 最 多 の 7度 MVP を 獲 得 し た メ ジ ャ ー リ ーガ ーで あ る 。 メ ジ ャー 記 録 で あ る年 間73 本 塁 打 (2001 年 ), 史 上 初 の 通 算500 号500 盗 塁 を 達 成 し た。 2006年 に ポ ン ス の 薬 物 使 用 に 対 す る暴 露 本 「Game of Shadows 」 が 出 版 さ れ, ま た2007 年 1月n 日, 2006 年 度 の 検 査 で 禁 止 薬 物 の ア ン フ ェ タ ミ ン に 陽 性 反 応 が 出 た こ と が 明 ら か にな っ た 。 フ ァ ン や米 メ デ ィ ア の厳 し い 反 応 と は 裏 腹 に , 現 役 選 手 の 反 応 は ポ ン ス擁 護 の も の で あ っ た 。 ホ ー ムラ ン は 筋 肉 だ け で はな く , バ ッ ト で ボ ー ル を 捉 え る技 術 や 動 体 視力 も 影 響 す る た め , 薬 物 を 使用 し た か ら と い っ て も そ の 偉 大 な 記 録 は ポ ン ス 自身 の実 力 だ とい う ので あ る 。 ま た, 2000 年 当 時 は 筋 肉 増 強 剤 の使 用 は ル ー ル 上 問 題 が な か っ た 。 し か し 現 在 バ リ ー ・ ポ ン ス は 薬 物 使 用 に 関 す る虚 偽 罪 で 訴 訟 , 実 質 引 退 し , 記 録 に 対 し て も正 当 性 が 疑 問 視 さ れ, 2005 年 に は ノ ー ス ダ コ タ 州 議 会 が メ ジ ャ ー リ ー グ 機 構 に ロ ジ ャ ー ・ マ リ ス の 年 間61 本 塁 打 の記 録 が 正 当 で あ る と主 張 し た 。 Q5: タ イ ガ ー・ ウ ッ ズは レ ー ザ ー 治 療 にて 視力 を 矯正 し , 5度 優 勝 を 収 め た 。 ポ ン ス と ウ ッ ズ の違 い は 何 か 。 T:発 問 す る 。 S:ワ ー ク シ ート を 作 成 し , 答 え る。 A5: ・ ウ ッ ズ は 矯 正 で あ り , ポ ン ス は 増 強 で あ る か ら。 ・ ど ち ら も科 学 技 術 を 使 用 し て い る の で , 許 さ れな い 。 ・ 視力 の 矯 正 は広 く普 及 し て お り 誰 も が そ れ に よ っ て ゴ ル フ の パ フ ォ ーマ ン ス が 向 上 す る 訳 で はな い 。 等 ③ Q6: ス ポー ツ にお い て, 様 々 な 道 具 が 開発 さ れ て い る が, 公 式 戦 で 使 用 が禁 止 さ れ て い る もの もあ る の は なぜ か。 Q7: そ の 背 景 に は ど の よ う な 価 値 が あ る の か。 Q8: 今 現 在 で は こ の よ う な 合 意 が あ る が , 今 後 に お い て も そ れ が 適 合 さ れ る か 。 T:発 問 す る 。 S:資 料 を 読 み取 り ワ ー ク シ ート に記 入 後 , 答 え る。 資 料 (a ) T:発 問 す る 。 S: 資 料 を 読 み 取 り ワ ー ク シ ー ト に記 入 後 , 答 え る。 資 料 (b ) T:発 問 す る 。 S:答 え る 。 A6: 道 具 は 選 手 個 人 が 持 つ 能 力 を 最 大 限 に 引 き 出 す た め に 開 発 さ れ て お り , 匡 正 の 考 え 方 に 近 い 。 自 分 の 能 力 以 上 の成 果 が 出 て し ま う 道 具 に つ い て 禁 止 さ れ て い る 。 A7: 行 き 過 ぎ た エ ン ハ ン ス メ ン ト は ス ポ ー ツ 自 体 の本 質 を 変 え て し ま う 。 A8: ・ 今 後 も 適 合 さ れ る。 ・ 技 術 の 進 歩 に応 じ て ル ー ルを 改 変 し て い くべ き だ。 ・ わ か ら な い 。 等 ④ Q9: 匚能 力 を 金 で 買 う こ と が で き る と し た ら, 賛 成 か 反 対 か。」(MQ ) に つ い て, もし こ の クラ スに ベ ンサ ム, ロ ー ル ス, ア リ スト テレ ス, ノ ー ジ ッ ク, サ ン ダ ル が い た な ら ば, 彼 ら は こ の 問 題 に つ い て ど う 答 え る だ ろ う か。 T:発 問 す る 。 S: 資 料 を 読 み 取 り ワ ー ク シ ー ト に記 入 後 , 答 え る。 資 料 (c) S:資 料 を 読 み取 り ワ ー ク シ ー ト に 記 入 後 , 答 え る 。 資 料 (d ) A9-a ベ ンサ ム( 功 利 主 義 ) な ら こ う 見 る ! → 彼 は 社 会 全 体 の 幸 福 を 最 大 に す る こ と が 善 で あ る と い う 「 ̄最 大 多 数 の 最 大 幸 福 」 を 道 徳 上 の 基 準 に し て い る 。 功 利 主 義 の 観 点 か ら い え ば , 効率 的 及 び 確 実 に 能 力 が 向 上 す る の で あ れ ば, そ れ は チ ー ム 全 体 と し て 善 い こ と で あ る。 A9-b ロ ール ス ( リ ベ ラ リ ズ ム) な ら こ う 見 る ! → 彼 は 自 由 の 権 利 は 平 等 に 与 え ら れる べ き で あ り , 機 会 の 均 等 と 最 も不 遇 な 人 々 へ の 資 源 の分 配 を 目 指 し た 。 ロ ー ル ス の 思 想 を 解 釈 す る と, 金 銭 的 格 差 が 発 生 す る こ と に は反 対 で あ る が , 生 ま れ つ き の身 体 能力 上 の格 差 を 克 服 す る も の と し て , 是 側 非 側 両 方 に ま た が る も の で あ る。 彼 な ら金 が な く, 能 力 の な い 人 間 ほ ど エ ン ハ ン ス メ ント す る べ き で あ り, そ の た め の 費 用 を 周 り の 部 員 が立 て 替 え る べ き だ と主 張 す る だ ろ う。 問 題 の 考 察
⑤ ⑥ S:資 料 を 読 み取 り ワ ー ク シ ー ト に 記 入 後 , 答 え る。 資 料 (e) S: 資 料 を 読 み 取 り ワ ー ク シ ー ト に 記 入 後 , 答 え る 。 資 料 (0 S: 資 料 を 読 み 取 り ワ ー ク シ ー ト に 記 入 後 , 答 え る。 資 料 (a ) (b )(g ) A9-c ア リ ス ト テ レ ス ( 目 的 論 ) な ら こ う 見 る ! → す べ て の運 動 は 形 相 ( エ イ ド ス) を 目 的 と し て い る と ア リ ス ト テレ スは 唱 え , 目 的 論 的 自 然 観 と い わ れ る 。 医 療 の 目 的 は 疾 病 状 態 を 健全 な 状 態 に治 す と い う 匡 正 を 目 的 と し て お り, そ の た め に 開 発 さ れ た医 療 技 術 を エ ン ハ ン ス メ ン ト の た め に 転 用 す る こ と は 本 来 の 目 的 に 反 し て い る と い え る。 し か し 一 方 で医 療 の 目 的 を 生 活 の質 (QOL ) の 改 善 と定 義 す るな ら ば, エ ン ハ ン スメ ン ト も 目 的 に 適 っ た も の と い え る 。 ま た , 部 活 動 の 目的 を 勝 つ こ と とす る か, 人 とし て の成 長 とす る か によ っ て, 是 側 非 側 ど ち ら に も ま た が る も の で あ る。 A9-d ノ ー ジ ツ ク( 自 由 至 上 主 義 ) な らこ う 見 る ! → 規 制 や 強 制 を 排 除 し, 個 々 人 の 自 由 を 最 大 限 尊 重 す る こ と が善 い こ と で あ る と い う の が 自 由 至 上 主 義 ( リ バ タ リ ア ニ ズ ム) で あ る 。 彼 な ら, 他 人 に 迷 惑 を か け な い 限 り で あ れ ば , 利 用 す る か ど う か は 個人 の選 択 に委 ね る べ き だ と す る で あ ろ う。 し か し 自 己 決 定 を 保 障す る 一 方 で , 周 り の人 間 が み な 工 ン ハ ン ス メ ント を し て い た 場 合 に 周 り か ら の 干 渉 が 生 じ, 自 己 決 定 の侵 害 が 生 じ る可 能 性 もあ る。 A9-e サ ン デ ル ( コ ミ ュ ニ タ リ ア ン ) な ら こ う 見 る ! → そ の社 会( 共 同 体) にお ける 価 値 観 や 美 徳 を 重 視 す る。 我 々 の 社 会 は エ ン ハ ン ス メ ン ト に よ っ て よ り も 努 力 に よ っ て 能 力 が 向 上 す る こ と に 美 徳を 感 じ る 。 も し 努 力 が エ ン ハ ン ス メ ン ト に よ っ て 軽 視 さ れ て し ま っ た り , ス ポ ー ツ の 本 質 が 貶 め ら れ た り す るな ら ば , エ ン ハ ン ス メ ン ト は し な い 方 が よい 。 問 題 の 考 察 ⑦ ・ 匚能 力 を 金 で買 う こ と が で き る とし た ら , 賛 成 か 反 対か」(MQ )についてト ウー ル ミ ン 図式 に 今 まで の思 想 家 を 参 考 に 整 理 す る。 T:指 示 す る。 S:ワ ー ク シ ー ト に 自 分 の考 え を 記 入 す る。 * 一 例 と し て 賛 成 派 と 反 対 派 のト ウー ル ミ ン 図式 とし て 予 想 さ れ る も のを 末 尾 にて 示 す 。 価 値 判 断 ⑧ Q10: こ の ク ラ ス で で き た ル ール が こ れ か ら の 社 会 で の ル ー ル だ と し て , ど の よ う な ル ール を 作 る だろ う か。 今 回 出 て こ な か っ た 解 釈 も 考 慮 に入 れ , 議 論 す る。 T:指 示 す る。 S:お互いのト ウー ル ミ ン 図式 を 比 較 ・ 議 論 し , ホ ワ イ ト ボ ー ド に 班 とし て の 意 見 を 記 入 す る 。 そ の後 発 表 し , さ ら に批 判 ・ 検 討 す る。 A10: ・ 金 が な く, 能 力 の な い 人 間 か ら 優 先 し て 行 な う 限 り に お い て , エ ン ハ ン ス メ ン ト は 認 め ら れ る 。 そ の 際 , 金 銭 面 ・ 実 力 面 を ど う 評 価 し て そ の 序 列 を 作 る か , 他 の部 員 で ど れ く らい の費 用 を 負 担 す る の か 等 , 基 準 に お け る 議 論 を 密 に す る 必 要 か お る。( 修 正 過 程 例 1) ・ 努 力 に 対 す る 美 徳 や ス ポ ー ツ の 本 質 が 貶 め ら れ な い こ と に 気 を 付 け な が ら , 今 現 時 点 に お い て 許 さ れ る 境 界 線 を 定 め る こ と と す る 。( 修 正 過 程 例 2) 等 合 意 形 成