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社会開発と地域組織間連携 : 地域組織における共鳴現象と振り子現象を中心に

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(1)社会開発と地域組織間連携 ──地域組織における共鳴現象と振り子現象を中心に── 國 重 正 雄. 1 ‌地域課題解決を目指す社会開発と地域組織 間連携. うと同時に,社宅を追い出され,住まいも同時 に失う事態となったのである.この人達もまた, 職という経済基盤,社宅という生活基盤,そし. 2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災は,. て,会社の上司・同僚という人間関係,社会的. 我が国全体の社会経済に大きな課題をもたらし. つながりを同時に失うこととなった.. た.とりわけ津波による広域的な被害と福島第. さらに,このような地域社会の基盤を失うと. 一原子力発電所事故 に よ る 集落単位 で の 避難. いう問題は,大震災の被害地域ほど象徴的では. は,地域社会のあり方に大きな波紋を投げかけ. ないにしても他の地域でも大変大きなものと. た.津波に襲われた地域では,多くの人々の生. なってきている.我が国の人口自体が 2005 年. 命と家屋などの生活基盤と工場・農地・漁業施. をピークとして減少し始め,人口減少社会に向. 設などの生産基盤が一瞬にして失われた.特に. かいつつある.都市部への人口流出による社会. 原発事故による放射能汚染は,避難地区の指定. 減と少子化による自然減により,山間地域では,. が行われたため,地域社会という人々のつなが. 集落の維持さえ困難となる,いわゆる限界集落. り,生活の基盤を根こそぎ喪失させるという過. が数多く生じている.また,都市部では戦後の. 酷な事態を被災地住民に強いることとなった.. 高度成長期に建設された大規模団地において,. また,大震災後は人と人とのつながり, 「絆」. 急速に高齢化が進展したために,65 歳以上の. という言葉が重要なキーワードとして用いられ. 人口が過半数を占め,買い物難民や高齢者の介. るようになった.生活基盤や経済基盤そして,. 護問題,さらには孤独死といった問題が生じて. 地域社会の人的なつながりである社会的関係ま. いる.. でも失った人々に対し,全国,全世界から支援. 近年では,雇用問題だけでなく,子どものい. の手が差し伸べられ,被災地との新たな「絆」. じめ・不登校・ひきこもり,少年の薬物乱用や. を築き, それまで地域で培ってきた人々の「絆」. 犯罪,ドメスティック・バイオレンスなど様々. を回復しようとするという動きが始まった.. な問題が地域社会の中で顕在化してきた.農村. 一方,大震災に遡ること 2 年半,2008 年 9 月. 部では,農業の担い手の減少や老齢化による耕. のリーマンショックに端を発する世界経済危機. 作放棄地の増大が問題となっている.. により,多くの派遣労働者が解雇,雇い止めと. これまで家庭や近隣社会で解決されてきた課. なり,2008 年の年末には,東京に「年越し派. 題が,現在では解決が困難となりつつある.そ. 遣村」が出現する事態となったことは未だ記憶. して,そのような解決の難しい課題が山積し,. に新しい .解雇された派遣労働者は,職を失. 一層深刻化している2).大震災後の被災地のみ. 1).

(2) 52. 横浜国際社会科学研究 第 18 巻第 6 号(2014 年 2 月). (522). ならず,全国で過疎地域では限界集落の問題,. であろう7).. 都市部ではコミュニティの機能の低下が大きな. そこで,近年顕著となってきた地域社会が抱. 課題となりつつある.. えている貧困や子育て,社会的排除などの様々. その中で地方分権が進展し,1999 年から平. な地域課題の解決に向けて,二つの視点が重要. 成の大合併といわれる市町村合併が進められ,. となっている.. 約 3,200 あった 市町村数 が,2008 年度末 に は. 一つ目は, 「社会開発」という視点である.松. 1,778 に減少した.また,1991 年の地方自治法. 原(1973)によれば,社会開発の概念は第一の. 改正により,町内会・自治会等の地縁団体が認. 定義として「経済開発の進行に併行して,国民. 可地縁団体として法人格の取得制度が導入され. 生活への有害な衝撃を除去または,緩和するた. 3). るとともに ,2004 年の自治法改正により地域. めに,全国的規模において保健衛生,住宅,労. 自治区 が 制度化 さ れ た.そ し て,2005 年 4 月. 働または雇用問題,教育,社会保障に関する社. には地方公共団体が行う地域の活力の再生を総. 会的サービスの発展を図るいとなみ」であるが,. 合的かつ効果的に推進するという目的を掲げ. 第二の定義として,より積極的に「社会の変動. 4). て,地域再生法が施行された .. を慈善に予測しつつ,計画的に国民や,地域住. こうした法制度の整備を含め,これまでコ. 民の生活の諸側面の進歩向上を促す方式として,. ミュニティの再生,再構築を目指すという試み. また,国や自治体の行政施策を,国民や地域住. や検討は数多く行われてきた.コミュニティの. 民の自己の福祉の向上をめざす意欲と行動,さ. 再生あるいは再構築について取り組むことは,. らには人々相互の共同による活動と,有効に. 多様性を有する地域社会を対象にしているた. 結びつけるための方法」とされている(松原,. め,再生に向けても多面的な観点,研究分野か. 1973,p. 8) .中 で も 地域社会開発論 は,貧困層. らの検討を必要としている.社会学や行政学,. を中心とする社会的弱者の生活環境の改善や住. 法律学,経済学,経営学,都市計画等々に及ぶ. 民自身が自立的かつ持続的に維持し発展させて. 大きなテーマである .. いくための社会的能力の育成・強化などを扱っ. コミュニティの再生そのものをテーマとした. てきており(大濱,2007,序文) ,地域における. 文献や研究報告書も数多く提出されてきた.そ. 貧困や子育て,社会的排除などの問題に対して. の中でも,希にある地域再生の成功事例の紹介. は,このような社会開発の分野における知見8). は,他の地域では模倣することが困難であるこ. が,課題の解決に寄与するものと考えられる.. とが多い.地域再生の成功事例の背景には地域. 筆者らは,以前に,社会開発の主な目的の一. 特有の資源があったり,特定の個人の献身的な. つは,人々の福祉生活を向上し,充実させるた. 努力があったりするからである.地域活性化策. めに家庭をはじめとする様々な社会集団の安. を講じても, 潤うのは一部の利害関係者だけで,. 定と発展を図ることであるとし,家庭,市場,. 地域に暮らす人々のためにはなっていないとい. 行政,地域社会 の 4 者 が 社会開発 を 左右 す る. う指摘さえある6).. 主要な主体となっているとした.また,社会開. これまで家庭や近隣社会で解決されてきた実. 発に関する 4 者が自律的に機能するための主な. に様々な課題に対して,単に地域社会の再生,. 要素としては,それらが目的合理性を保つた. コミュニティの再生を目指して解決に臨むとい. めの「規範」,その規範を具現化する「組織」,. うテーマ設定では, あまりに広範で迂遠である.. その組織が管理し,生産・消費の対象とする「資. また,地域社会とは,コミュニティとは一体何. 源」という 3 つの要素に集約できるとした(國. を示すのか,一人ひとりの地域住民にとって明. 重,余語,大濱,1990,pp. 1─4).. 確でなければ,具体的な行動には結びつかない. ここで注意すべきことは,家庭,市場,行政,. 5).

(3) 社会開発と地域組織間連携(國重). (523). 53. 地域社会の 4 つの主体の状況は,当然のことな. らに,中西(2006)は,松山市の社会福祉協議. がら,国ごと,地域ごとに異なっているという. 会,生活協同組合などの実践例をもとに,非営. ことである.加えて,この 4 者の関係の中で. 利・協同組織と伝統的地域住民組織との連携を. は,かつては家庭や地域社会にて充足されてい. 展望し,市社協の組織間のコーディネート役に. たニーズが,市場や行政において満たされると. 期待している.. いうことも生じており,開発主体間には,要素. このように地域組織の取組みを介しての,い. の代替性や補完性も存在していることに留意し. わゆる「新しい公共」による課題解決も確かに. ておかなければならない.本稿の最後に,規範,. 試みられているところではあるが,自治会・町. 組織,資源という 3 つの要素に立ち戻り論考を. 内会などの地域住民組織では,少子高齢化の進. まとめることとする.. 展とともに,役員の高齢化も進み,担い手も少. 二つ目は, 「様々な地域組織の連携」という. なくなっており,住民の組織化が大きな課題と. 視点である.ここでの地域組織とは,一定の分. なっている.. 野に限定することなく幅広く捉え,地域の住民. 社会開発論に関連し,途上国の社会開発,農. 組織,NPO などのネットワーク型の市民活動. 村開発を進める際にも,住民の組織化は重要な. 団体,地域ごとに組織化されている経済団体な. 課題であり,住民の組織形成を大きなテーマと. どとする.具体には自治会・町内会や消防団,. して取り組んできた.重富(2003)は,「住民. 子育てサークル,商店会,商工会,各種の工業会,. 組織を作ること」と「組織を作るメカニズムを. 技能士会,農業の生産組合などの NPO を含む. 農村住民の間に作ること」は別であり,住民の. いわゆる広義の非営利組織のほか,地域自治区. 組織化が効果的,効率的,持続的なものとなる. や土地改良区,市町村までも含むものである.. ために必要なのは,後者の実現であるとしてい. 地域組織や住民の地域活動に関する先行研究. る(重富,2003,p. 214).. として,筆者らは 1984 年に市民活動と行政との. 筆者は,地域社会における団体や組織に注目. 関係を市民が公共的活動を担うという観点から. し,表 1 に示すように,地域活動団体について,. 分析した(神奈川県自治総合研究センター・新. 地域的基盤の濃淡と団体により提供される機能. しい公共サービスの供給方式に関する研究チー. の多寡という 2 つの軸を設定し,これにより地. ム 報告書,1984) .公共私概念 の 変容 を 示 す と. 縁的活動団体,地域ネットワーク活動団体,テー. ともに,昭和 40 年代後半から 50 年代に活動を. マ別地域活動団体,テーマ別ネットワーク活動. 開始した 30 の団体・組織のヒアリングを通じ,. 団体の 4 つに類型化した(國重,2012).. 行政と市民活動団体,市民との関係を整理し,. さらに,地域組織のネットワークについて表. 市民による公共的活動への支援のあり方を提言. 2 のとおり,ネットワークの広さ・狭さと同種・. した.加えて市民活動同士のネットワーク形成. 異種の連携という 2 つの軸により,①会員組織. の意義についても市民団体を直接集めて討議し. 型,②プラットフォーム型,③連合会型,④連. た.1980 年代前半という早い段階で,いわゆる. 絡会型の 4 つを位置づけた.一方,このような. 「新しい公共」についての考え方を示した . 9). 組織間の関係性について,山倉(1993)は R. L.. また,余語(2005)は,途上国,先進国を通. ウォーレンのコミュニティ組織の研究を紹介し. じ行政村以下の「社会単位」の特性と能力の把. ている.組織間関係がどの程度統合されている. 握の重要性を指摘している10).. か,6 つ の 次元11)に よ り,①社会選択状況(各. この他の先行研究として,鈴木・藍澤・高橋. 組織が独立していてほとんど組織間統合が行わ. (2002)は,地域社会の機能・範域・人の縁か. れていない) ,②連合状況(相互依存している組. らみた社会単位に関する研究を行っている.さ. 織が互いの行動を調整するために協定を結ぶ) ,.

(4) 54. 横浜国際社会科学研究 第 18 巻第 6 号(2014 年 2 月). (524). 表 1 地域活動団体の類型と提供される機能 地域活動団体により提供される機能 多 数. 少 数. 濃厚 (狭域). Ⅰ 地縁型活動団体(自治会等) ○環境美化・清掃 ○住民相互の連絡 ○お祭り・イベント開催 ○行政からの広報・連絡 ○街路灯・ 集会施設の維持管理 など. 薄弱 (広域). Ⅱ 地域ネットワーク活動団体 (まちづくり協議会等) ○住民意見の行政への反映 ○予算の配分 ○まちづくりへの参加 など. 地域的基盤. Ⅲ テーマ別地縁活動団体 (老人会,子供会,消防団) ○老人相互の親睦 ○子供を通じた親睦 ○消防・防犯 など Ⅳ ‌テーマ別ネットワーク活動団体 (NPO 法人等) ○地域福祉・保健 ○教育(不登校・引きこもり等) ○芸術・文化活動 など. 出所:國重(2012) .. 表 2 地域組織のネットワークの類型 同種・異種. 連携の広さ. 狭いネットワーク. 広いネットワーク. 同種連携. 会員組織型. 連合会型. 異種連携. プラットフォーム型. 連絡会型. 出所:國重(2012) .. ③連盟状況(組織間関係が公式的第三組織を通. 第二の連携,地域の組織間連携を第三の連携と. じ て 統合 さ れ る) ,④単一的状況(組織内関係. 整理し,これらの連携が相互に影響し合うこと. のごとく,権限を基礎に組織間関係が統合され. で,取組みの効果が高まり,その継続性も維持. る)という 4 つの組織間構造形態を索出したと. されるという指摘を行った(國重,2011b).. いうものである(山倉,1993,p. 13, p. 139) .. 次節 で は 社会開発 に お け る 組織化 と ネット. そこで,本稿では,地域社会における諸課題. ワーク形成の問題を,第 3 節では住民の参加と. の解決を目指すにあたっての社会開発と地域組. 地域組織の規模,第 4 節では地域組織活動の持. 織間連携をテーマとする.組織化にあたっては. 続性と地域組織間連携の問題を取り上げる.最. 住民や市民の参加が重要な要素となる.地縁的. 終の第 5 節では,社会開発の政策的アプローチ. 団体には住民の参加,ネットワーク型活動団体. と地域組織間連携について検討する.. には,市民の参加が鍵となる.その際,住民・ 市民にとって,無理のない参加可能な組織規模. 2 ‌社会開発における組織化とネットワーク形成. がありえるのだろうか.地域の諸課題と地域組. 社会開発論では,これまで地域での組織化,. 織の規模との関係にも注目する.. ネットワーク形成の問題をどのように捉えて. また,地域組織活動の継続性も重要なテーマ. きたのだろうか.まず大濱(2007)に基づき,. である.重富(2003)は組織を作るメカニズム. コ ミュニ ティ・ オーガ ニ ゼーション( CO:. を住民の間に作ることを住民の組織化が効果. Community Organization)のこれまでの系譜. 的,効率的,持続的なものになるために必要と. を振り返っておきたい.. したが,筆者は,地域における行政機関同士の. 表 3 は,19 世紀中葉から 1955 年までのコミュ. 連携を第一の連携,地域組織と行政との連携を. ニティ・オーガニゼーションの考え方を整理し.

(5) 社会開発と地域組織間連携(國重). (525). 55. 表 3 コミュニティ・オーガニゼーションの系譜 時 期. 提 唱 者. 内 容. 19 世紀中葉. 友愛訪問活動. イギリスでの貧困層住民への慈善的施し.キリスト教人道主義とボランティ ア活動を結びつけた善意の市民による組織化. 1897 年. アーノルド・トインビー等 アーノルド・トインビーがサムエル・バーネット等と共に小地域社会に暮ら す貧困層住民による相互扶助的な生活改善を支援する活動を展開. 1917 年頃. セツルメント運動. カーライル・ラスキンやモーリス・キングスレーにより提起された「セツル メント運動」の活動プロセスの中から CO(Community Organization)とい う言葉が生じた. 1939 年. R. P.レイン. 専門組織・専門家の間の組織的連携・統合の重要性を指摘.CO を「地域住民 の欲求・ニーズとコミュニティの社会資源の間の結合・調整を促進する社会 福祉活動の手法」と定義. 1953 年. W. I.ニューステッタ. 1955 年. M. G.ロス. 「社会福祉活動に従事する諸組織間の共同(インターグループ・ワーク)実現 のための技術的手法」として CO を取り上げる 1)住民欲求・ニーズの把握,2)活動プロジェクトの計画,3)プロジェクト 活動の展開,4)リーダーの析出,5)リーダーシップの展開,6)対話・協議 の促進,7)組織活動の社会的展開,8)地域社会との連携,という「CO8 原則」 を提示. 出所:大濱裕(2007)をもとに筆者が表とした.. ている.19 世紀中葉には貧困層住民への慈善的. ( Participatory Local Social Development: 参. 施しについて,善意の市民により組織化され友. 加型地域社会開発)とともに,その目的,対象,. 愛訪問活動という形になっている.1897 年には,. 視点,手法,主体,成果,期間,特徴を比較し. アーノルド・トインビーが「トインビー・ホー. ている.そのいずれの手法においても「組織化. ル」を開設,1917 年頃にカーライル・ラスキン. と関係諸組織の協議・共同」が組み込まれてい. やモーリス・キングスレーにより提起された 「セ. ることが分かる.PRA では住民の集団的討議. ツルメント運動」の活動プロセスの中からコミュ. によるプロジェクト選考と組織形成,PA では. ニティ・オーガニゼーションという言葉が生ま. 組織化,ネットワーク形成,PLSD では関連諸. れた.また,1939 年には R. P. レインが専門組. 組織の協議・共同による経験的能力形成と制度. 織・専門家の間の組織的連携・統合の重要性を. メカニズムの強化となっている.. 指摘.1955 年には M. G. ロスが CO8 原則を提示. 組織化 と 関係諸組織 の 協議・共同につい. した.8 原則の 7 番目には組織活動の社会的展. て,具体的 に は,PRA で は 住民自身 の 協議・. 開を,8 番目には地域社会との連携を挙げてい. チャート・カレンダー等の作成,住民の集団的. る.特に R. P. レインが第二次世界大戦前に CO. 討議によるプロジェクト選定ののち組織形成と. を「地域住民の欲求・ニーズとコミュニティの. なっている.PA では経験的学習と蓄積という. 社会資源の間の結合・調整を促進する社会福祉. ことで,意識化,組織化,能力形成を経てネッ. 活動の手法」と定義したことに注目する.. トワーク形成に至っている.さらに,PLSD で. また,大濱は参加型開発アプローチを表 4 の. は地域社会システムの構造・機能的固有性の分. とおり 3 類型 に 整理 し て い る(大濱,2007,p.. 析,戦略的計画 の 策定 を 経 て 関連諸組織 の 協. 131 ).大濱は,PRA( Participatory Rural. 議・共同による経験的能力形成と制度メカニズ. Appraisal:参加型農村調査手法)などをいわ. ムの強化に至っている.. ゆる「参加型手法」とし,PA(Participatory. 大濱は組織化について, 「地域住民がその生. Approach: 参加型開発手法) および PLSD. 活において直面するところの問題・ニーズは,.

(6) 56. (526). 横浜国際社会科学研究 第 18 巻第 6 号(2014 年 2 月). 表 4 参加型開発アプローチの 3 類型 PRA; Participatory Rural Appraisal. PA; Participatory Approach. PLSD; Participatory Local Social Development. 目的. 地域住民のニーズ・問題の把握と住民 地域コミュニティのエンパワメントと 地域社会の自立的・持続的発展への基 の主体的参加による生活状況の改善 地域社会構造の民主的変革 礎要件の整備・強化. 対象. 開発プロジェクト. 視点. 地域住民の生活実態と社会生態環境の 地域住民の開発主体への転化・育成 相関性 地域住民による開発プロジェクトの選 定. 地域住民の自己組織力 ⑴ 開発 3 要素 ⑵ 家庭の構成要素 ⑶ 地域社会システム ⑷ 集団対応の機能類型 ⑸ 社会領域単位. 手法. 住 民 自 身 の 協 議・チャート・カ レ ン ダー等の作成 住民の集団的討議によるプロジェクト 選定と組織形成. 経験的学習と蓄積 ⑴ 意識化 ⑵ 組織化 ⑶ 能力形成 ⑷ ネットワーク形成. 開発政策・事業の操作化 ⑴ 地域社会システムの構造・機能的固 有性の分析 ⑵ 上記に基づく戦略的計画の策定 ⑶ 関連諸組織の協議・共同による経験 的能力形成と制度メカニズムの強化. 主体. 地域住民 NGOs/政府職員. 地域住民 NGOs/政府職員. 地域住民 NGOs/地方政府/市場. 成果. 地域住民自身の意思決定に基づく開発 地域コミュニティの自治および自立的 地域社会システムの固有性に応じた戦 プロジェクト実施への住民組織 な問題解決能力 略的開発政策および事業計画 地域住民組織の連係による社会変革へ の基礎強化. 期間. 短期. 特徴. 住民参加型プロジェクトの形成ツール 地域コミュニティの主体形成に極めて 地域社会をシステムとして包括的に捉 として利便性を発揮する.ただし,住 高 い 有効性 を 持 つ が,地域 コ ミュニ え,要素分析 の 視点 か ら PRA/PA を 民参加の質は極めて表層的 ティ・システム分析と外部システムと 取り込んだ参加型開発を展開 の連関形成に改善の余地あり. 地域コミュニティ. 中長期. 地域社会システム. 中長期. 出所:大濱裕(2007, p. 131).下線は筆者による.. 往々にして,住民個人の努力によっては解決・. くには,①「資源の動員と交換・結合」:社会. 充足することが困難な場合が多く,特に地域の. 的課題解決に思いを寄せるできる限り広い主体. 社会経済構造に深く根ざしているような場合に. の参加を求め,各主体が保有する様々な資源を. は 集団的・組織的 な 対応・取 り 組 み が 必要 と. 動員すること,②「主体の選択と秩序化」:決. なってくる.組織とはそうした住民の主体的な. 定の重要性や事業の性質に応じて適切に責任を. 自助努力を,住民自身が有する限られた資源を. 持って関与する主体が限定されること,③「リー. 結集し,目的達成に向けて,より効果的に動員. ダーシップ」:保有する社会的パワーを基に調. し展開せしめる開発への集合主体と言える」 (大. 整・安定化機能を担う社会的リーダーの行動が. 濱,2007,p. 101)としている.以上,大濱(2007). 重要,④「学習 と 戦略形成」:主体間 の 相互 の. により,コミュニティ・オーガニゼーションの. 学習から適切な戦略が形成される必要があるこ. 系譜および参加型開発アプローチについて,要. と,以上の 4 課題が存在すると整理している(長. 点を振り返った.. 12) 野,2009,pp. 109─110) .. 一方,長野(2009)は,地域ガバナンスとい. 長野の政策形成,実施のための 4 課題は,大. う観点に立ち,政策形成,政策遂行を論じてい. 濱の整理した 3 つの類型の手法の要点とかなり. る.すなわち, 「ガバナンス」を組織化し,社. 共通した内容となっている.大濱の 3 類型の手. 会的課題解決への「政策」を形成・実施してい. 法を改めて要約すると,①住民の集団的討議に.

(7) 社会開発と地域組織間連携(國重). (527). 57. 表 5 自立と自己改善に向けたコミュニティ・マネージメントの評価 (ドイツ,ノルトライン・ベストファーレン州で 2003 年から実施された評価). 項 目. 概 要. 1. 評価の目的と機能. 社会都市の適用期間は 5~10 年であり,それ以上 1 つの地区に支援を続けることは困難 で,その間に自立できることを目標とする. よりよい方法を目指し,自己改善の手段としての評価を位置づける.. 2. 評価の項目. ①社会経済データ,②目標設定と達成モニタリング,③質的なプロセス分析. 3. ①‌地域分析のための社会経済 データ. 目的は問題地区の抽出.指標としては,人口,福祉,雇用,学校教育,安全,土地利用, 建物・住宅,青少年,健康,投票率など.. 4. ②目標設定と達成のモニタリング 自治体と各対象地区で協力して実施.地区の問題・課題に対し,目標が適切かを評価し, 質的なプロセス分析に基づく実態や変化を把握し,目標や地区の枠組み全体を再度見直 すというフィードバックループを構築する.. 5. ③質的なプロセス分析. プロジェクトの実態把握や協力体制,活性化の状況など,実態把握と分析を中心に置い た評価.. 6. ④-ア ─統合性に関する評価. 1)プロジェクトの統合性 ①インフラ基盤の利用統合性,②目標集団に対する統合性,③テーマ構成の統合性, ④予算や支出に関する統合性,⑤コミュニケーションの統合性 2)参加関係者の統合性 3)シナジー効果による価値創出 ①異なる団体による協働性,②新たな分野への発展,③目的の複合性と付加価値. 7. ④-イ ─調整や協力体制に関する評価. 1)地元のローカル・パートナーシップの構築 2)行政内部局間や異なるレベル間のパートナーシップの構築 3)異なる関係者間のネットワークの構築. 8. ④-ウ ─継続性の確保に関する評価. 社会都市終了後も,コミュニティ・マネージメントを継続できるような状況が形成でき ているかどうかという点からの評価.. 9. 住民参加による活性化と成果. 初期段階の参加がどのように進められたか,どの程度広範囲の人々の参加が得られた か,どの程度オープンな参加を行ったかという点を分析.. 出所:室田昌子(2010, pp. 160─170)を筆者が表にまとめた.. よるプロジェクト選考と組織形成に至る手法,. 有性について,充分な配慮と理解を有している. ②意識化,組織化,能力形成を経てネットワー. 必要があるだろう.その他の要素について,参. ク形成に至る手法,③地域社会システムの構造・. 加型地域社会開発アプローチからも,地域にお. 機能的固有性の分析,④戦略的計画の策定を経. けるガバナンス組織化の考え方からも,共通し. て関連諸組織の協議・共同による経験的能力形. た手法が見出せるというのは大変興味深い.. 成と制度メカニズムの強化の 4 点となる.いず. 組織化に関連し,地域の自立に向けた優れ. れも社会的課題に対して広い参加を求め,課題. た取組みで大変示唆に富むものがある.室田. 意識の共通化を図り,協力関係を構築し,組織. (2010)によれば,ドイツでは「社会都市(Soziale. 化,長野の表現では秩序化されたのち,戦略形. Stadt)」というコミュニティ再生を中核に置い. 成と経験的能力形成を図るというものである.. た衰退市街地再生のプログラムが創設されてい. 相違点といえば,長野が挙げたリーダーシッ. るという(室田,2010,p. 42).. プと大濱が挙げた地域社会システムの構造・機. その優れた取組みの一つが,ノルトライン・. 能的固有性の分析である.この相違点は地域ガ. ベストファーレン州の 30 地区すべての地区で,. バナンスと地域社会開発というアプローチの違. 2003 年 か ら 開始 さ れ て い る 評価手法 で あ る.. いに根ざしている.開発の観点からいえば,少. 表 5 は,その評価項目についてまとめたもので. なくとも地域のリーダーや自治体の政策担当者. ある.評価は自治体と各地区で協力して実施す. は,当該地域社会の構造的あるいは機能的な固. ることになっている.また,地区の問題・課題.

(8) 58. 横浜国際社会科学研究 第 18 巻第 6 号(2014 年 2 月). (528). 表 6 スポーツのフィールド面積とプレイヤーの数 スポーツ名. フィールド(卓球台,コート)の面積. 用 具. プレイヤーの数. 卓球 (ダブルス). 幅 152.5cm ×長さ 274 ㎝×高さ 76cm 面積 約 4 ㎡. ラケットとボール. 2 人対 2 人. テニス (ダブルス). 幅 10.97m ×長さ 23.77m 面積 約 260 ㎡. ラケットとボール. 2 人対 2 人. バスケットボール. 幅 15.24m ×長さ 28.65m(NBA の規格) 面積 約 437 ㎡. ボールのみ. 5 人対 5 人. サッカー. 幅 68m ×長さ 105m(J リーグ等) 面積 7,140 ㎡. ボールのみ. 11 人対 11 人. ラグビー. 幅 70m 以内×長さ 144m 以内 面積 10,080 ㎡以内. ボールのみ. 15 人対 15 人. 出所:筆者作成.. に対して目標が適切かを評価し,表にあるよう. え方も加えつつ検討した.地域社会の諸課題. な詳細な質的なプロセス分析に基づく実態など. の解決には,その課題に即した地域活動分野の. を把握し,目標や地区の枠組み全体を見直すと. 広がりと組織の適切な規模が大事であると考え. いうものになっている.. る.先に述べたように,組織化にあたっては住. 質的なプロセス分析では,新たに整備改善さ. 民の参加が重要な要素となる.そこで,本節で. れた空間とその他のプロジェクトが有機的に結. は,住民にとって,無理のない参加可能な組織. び付けられているかどうか,シナジー効果によ. 規模について検討する.. る価値創出,特に異なる団体による協働性,新. まず,筆者の問題意識を,次のような比喩で. た な 分野 へ の 発展,地元 の ローカ ル・パート. 説明する.. ナーシップの構築,行政内部局間や異なるレベ. 「な ぜ バ ス ケット ボール は 1 チーム が 5 人,. ル間のパートナーシップなど,幅広く詳細なも. サッカーで は 11 人,ラ グ ビーで は 15 人 な の. のとなっている.さらに,持続性の確保に関す. か」.それぞれのスポーツについては,個別に. る評価も位置づけられており,本稿の第 3 節,. それぞれ歴史的な経緯があり,その根拠が存在. 第 4 節に関わる内容がこの評価項目には盛り込. するのかもしれない.しかし,ここではいく. まれている.. つかのスポーツについて,表 6 のようにプレイ. 室田は, 「コミュニティ・マネージメントは. ヤーの数をフィールド面積との関係で論じてみ. 主として衰退市街地を対象としたコミュニティ. よう.. 再生の仕組みであり,地域の環境,安全や福祉,. 表 6 にあるように,卓球は約 4 ㎡ の卓球台. 教育や文化,経済や雇用を含めた包括的な再生. に対して,小さなラケットでシングルスまたは. を行うという特徴を持っている.また,住民等. ダブルスで戦う.テニスのダブルスでは卓球よ. の人の活性化や社会的ネットワークの形成その. り大きなラケットを使い約 260 ㎡ のコートで,. ものも重要な目的としている」 (室田,2010,p.. 2 人対 2 人で戦う.バスケットボールは約 437. 4)と述べている.地域の組織化という観点か. ㎡のコートで,5 人対 5 人で戦う.ボールを蹴. ら極めて実践的な取組みであると言える.. り合うサッカーでは 7 千㎡ あまりのフィールド. 3 住民の参加と地域組織の規模. の中で,11 人対 11 人で戦うルールとなってい る.ラグビーでは 15 人対 15 人で戦う.仮にこ. 前節では,社会開発における地域組織化につ. れらのコートやフィールドが広すぎても狭すぎ. いて,コミュニティ・マネージメントという考. ても,また,プレイヤーの数が多すぎても少な.

(9) 社会開発と地域組織間連携(國重). (529). 59. すぎても,チームはうまく機能しないし,ゲー. 定量以上の物量が集まらないと回収に要する費. ムも成立しないであろう.. 用との関係から,経済的な面において成り立た. 同様のことが,地域社会における取組みにも. ない.スポーツの例でいえば,サッカーの広い. 当てはまるのではないかというのが筆者の問題. フィールドに 2 人対 2 人とか,5 人対 5 人で戦. 意識である.単純に考えれば,集団の規模を大. うようなものであり,ゲームとして成立しない.. きくすれば,集まる労働力が増し,能力のある. 現実的な問題として,本稿の冒頭に指摘した. 人材が増えることから,これまで出来ないこと. ように,全国的には小規模の自治会などが組織. が出来るようになる.不可能であったことが可. を維持することが難しいという状況も生じてい. 能になるということである.. る.例えば岐阜県・瑞浪市のホームページでは,. 一方,集団の規模を拡大すればするほど,組. 単位自治会の適切な規模確保についての指針を. 織を維持するためのエネルギーが必要となり,. 掲載しており,次のような動向と課題を載せて. それは時として膨大なものになる.M. オルソ. いる.瑞浪市における自治会構成世帯の全体的. ンは,集団の規模について,集団規模が大きけ. な動向として,①世帯あたり構成員数の減少(核. れば大きいほど集団目標が実現されにくくなる. 家族化),②高齢者世帯 と 単身高齢者世帯 の 増. という,いわゆる「オルソン問題」を指摘した. 加(高齢化) ,③自治会加入率の低下,④周辺. (M. オルソン,1983,pp. 63─79) .. 地域と市街地中心地における人口と世帯数の減. 木村(2002)によれば,M. オルソンは,こ. 少,⑤子どもの減少を挙げている.. のことを 2 通りの仕方で説明している.ひとつ. これらの要因が小規模自治会に与える影響と. は,集団規模が大きくなると,集団利益のうち. 課題について,①住民の高齢化や世話役となれ. 行為者が得る「分け前の割合」が小さくなり,. る人材の不足により,役員のなり手の不足,役. 他方で組織化のための費用が大きくなるという. 員の負担増(兼職) ,などという問題が起こっ. 考えに依拠するものである.もうひとつは,集. ている.②構成員の減少,少子高齢化の進展に. 団規模が大きくなると,ある 1 人の行為者が集. より,自治会の諸活動への参加者が減り,各種. 団目標の実現に貢献するか否かによって集団の. 事業の実施が困難になってきている.③災害発. 他の成員の負担や利益に与えられる影響が,認. 生時(地震,豪雨,火事等)には,区自体の規. 知されにくくなることに注目するものである. 模が小さいことにより,区民同士の共助の活動. (木村,2002,p. 43) .. が組織的に展開できない可能性が高くなってい. 従って,集団規模を拡大し,不可能を可能と. る,というのである.. していきたいという志向と集団を維持するため. これらの課題,すなわち住民の高齢化,世話. に必要となるエネルギーの調達が困難になると. 役の人材不足,自治会構成員の減少,共助の活. いう,相反する命題が存在することになり,ジ. 動が組織的に展開できない可能性というのは,. レンマとなる.集団規模と集団目標の実現との. 多かれ少なかれ,自治会・町内会における全国. 関係であり,Raub Werner(1988)は「大集団. 的な課題ということができよう.. の ジレンマ( The Large Number Dilemma) 」. そして,これらの自治会規模の拡大のための. と表現している(木村,2002,p. 2) .. 方法として,3 つのかたちが考えられるとして. では,小規模であれば小規模であるほどよい. いる.⑴ 連合区:従前の区組織はそのまま組. のだろうか.組織の活動目的によっては,一定. (区)として存続させ,区長及び各種の役員を. 規模の集団に育たなければ,その目的に即した. 共同で選出する.⑵ 編入合併:小規模な区を. 活動が充分にできないものがある.例えば,リ. 組または複数の班として大きな区に編入合併す. サイクル活動では,回収する古紙やビンなど一. る.⑶ 新区設立:従前 の 区・組・班 の 組織 を.

(10) 60. (530). 横浜国際社会科学研究 第 18 巻第 6 号(2014 年 2 月). 完全に白紙に戻し,合併する区域で新区を立ち. るというのも充分首肯できる結果である.小学. 上げ,現状にあった区・組・班に再編成する.. 校区というのは,児童を持つ保護者にとっては,. 連合区,編入合併,新区設立のいずれが選択さ. 大変分かりやすい区域であり,PTA などを通. れるにしても, このような自治会規模の拡大は,. じて地域の人々のつながりも相当程度形成され. 今後様々な地域で必要に迫られることになるで. ているからである.. あろう.. また,藤原(1995)は,沢田清方が 1991 年 3. そこで,次のような命題を設定することがで. 月に行った「小地域における住民福祉アンケー. きる.. ト 調査」を 引用 し,住民福祉 に つ い て ①小学. 「地域組織は,活動目的に見合った集団の適. 校区の範囲:40.7%,②中学校区の範囲:2.8%,. 当な規模が求められる.大きすぎても小さすぎ. ③単位 の 自治会:56.5% で あった こ と,牧里. ても上手く機能しない.地域組織の活動には,. (1992)が 福祉 コ ミュニ ティの エ リ ア と し て,. 住民が参加しやすい,活動目的に見合った活動. 小学校区が妥当であると指摘したことを紹介し. 範囲(フィールド)と組織規模(プレイヤー数). ている.その理由の一つに, 「ネットワークが. が存在する. 」. 異なる部分の融合・重複・共鳴・協働であると. 活動目的 に 見合った 活動範囲 と 組織規模 が. すれば,様々に異なる住民が存在する最小単位. 整った時に,地域組織は充分にその機能を発揮. として小学校区の範囲を認めることができるこ. することができる.先に示したゲームのフィー. と」を挙げている15).. ルドとプレイヤーの数の適切な関係と同様に,. 一方,自治会・町内会や地域自治組織でなく,. 活動目標に応じた活動範囲と組織規模が,相互. 会員制度をとる市民活動団体はどうなっている. に同調するということが考えられる.本稿では. で あ ろ う か.2000 年度 に 経済企画庁 が「市民. これらの現象を「活動目的に対する組織規模の. 活動団体等基本調査」を実施している.この調. 共鳴現象(Resonance Effect) 」と 呼 ぶ こ と と. 査では都道府県,政令指定都市等が把握する市. する .. 民活動団体は全国で 8 万 8 千団体にのぼる.特. 近年, 地域協働型のまちづくりとして, コミュ. 定非営利活動法人も含むが大部分は法人格をも. ニティ会議,まちづくり協議会,地域自治協議. たない任意団体である.このような会員制度を. 会といった「地域自治組織」の整備に取り組む. とる団体についての調査結果は,次のようなも. 市町村が増えている( (財)地方自治研究機構,. のである16).. 2010) .このような地域自治組織の設置エリア. まず,活動分野は,保健・医療・福祉が 43.1%,. の多くが小学校区(39.7%)となっている.そ. まちづくりが 11.1%,環境の保全が 9.8%,文化・. の他は,小さいエリアから順に,町内会・自治. 芸術・スポーツの振興が 8.9% となっている.活. 会(10.3%) ,集落(5.1%) ,中学校区(5.1%) ,. 動範囲 は,一 つ の 区市町村 の 区域内 が 61.7%,. 行政区 (9.1%) , 地域自治区・合併特例区 (2.6%) ,. 複数 の 区市町村 に ま た が る 区域規模 が 18.8%,. 旧市町村(11.5%) ,そ の 他(14.1%)と なって. 一つの都道府県にまたがる区域規模が 9.2%,複. 13). 14). いる .今後,小規模の自治会・町内会が組織. 数 の 都道府県 に ま た が る 区域規模 が 3.3% と. を維持することが難しくなった場合,連合区や. なって い る.会員数 で は 20 人未満 が 29.6% と. 編入合併が行われることが予想される.この場. 最も多く,20 人以上 50 人未満が 28.7%,50 人. 合,自治会・町内会より一般的に広域である小. 以上 100 人未満 が 13.5%,200 人以上 が 10.2%,. 学校区のエリアに近づく可能性が高まることだ. 100 人以上 200 人未満 が 8.9% と なって い る.. ろう.まちづくり協議会といった新たな地域自. 会員数では,50 人未満の活動団体が全体の約 6. 治組織が設けられる区域の 4 割が小学校区であ. 割を占めているものの,100 人以上の団体は約.

(11) 社会開発と地域組織間連携(國重). (531). 61. % 45. 障害者福祉 (474団体). 40.9. 40. 36.9 35. 児童福祉 (103団体). 32 30. 28.6 26.3 23.3 20.7 19. 18.4. 11.8 9.5. 10. まちづくり (247団体). 9.5 7.7 4.9. 5. 7.9 6.1. 11.7 満. 満. 未 人 50 0 上. 2.6 0.8 0.2 0 0. 犯罪の防止 ( 21団体). 以 0人 20. 以 0人 10. 以 上 人 50. 上. 10. 20 0. 0人. 人. 未. 未. 満. 満 未 人 50 上 20 人 以. 10 人 以. 上. 20. 10. 人. 人. 未. 未. 満. 満. 0. 3.9 1.9 1.7 1.2 0. 上. 14.3. 健康づくり (76団体). 以. 15. 22.7 21.4 19.8. 0人. 20. 22.4 19.4. 50. 25. 28.6. 出所:‌ 「平成 20 年度市民活動団体等基本調査」(内閣府国民生活局)よりグラフ化した.. 図1 市民活動団体の活動分野と会員の人数. 2 割となっている.. る.同種の活動目的では同様の組織規模を示す. 同様 の 調査 で,2009 年 3 月 に 内閣府国民生. データとなっており,共鳴現象を裏付けるもの. 活局 が 実施 し た「平成 20 年度市民活動団体等. である.福祉的な活動分野よりはまちづくり・. 基本調査」がある.この調査も 2000 年度の調. 健康づくりの分野がやや大きな規模,犯罪防止. 査とほぼ同規模の調査であるが,活動分野別団. の活動分野はそれよりも大きな規模で展開され. 体の会員数などのクロス集計がなされている.. ることにある程度の合理性が存在すると想定さ. 図 1 は,市民活動団体の 5 つの活動分野にお. れる.それぞれの活動目的,活動分野に対して,. ける会員数を示したものである.障害者福祉と. それぞれの組織規模が同調・共鳴し,機能して. 児童福祉の会員数のピークは 10 人未満であり,. いると考えられる.. かなり近似したグラフとなっている.また,健. では,子育てサークルではどうだろうか.「子. 康づくり,まちづくりの会員数のピークは 20. 育てサークルの活動に関する調査報告書」 (国. 人以上 50 人未満である.これに対して,犯罪. 立女性教育会館内 子育てサークル研究会)で. 防止 の 会員数 の ピーク は,50 人以上 100 人未. は,子育てサークルの規模を分析している.子. 満および 100 人以上 200 人未満となっており,. 育てサークルは,子どもとサークルに参加する. 3 つのパターンが存在している.地域の様々な. 母親,父親から成り立っている.よって,ひと. 状況により会員数は左右されるものであるが,. つのサークルの人数は,子どもの人数と母親,. 図 1 からは活動分野ごとに会員数の規模のピー. 父親の人数を合わせた人数となっている.この. クが異なっていることがはっきりと読み取れ. 調査報告書 に よ る と,サーク ル の 人数 で,30.

(12) 62. (532). 横浜国際社会科学研究 第 18 巻第 6 号(2014 年 2 月). 名未満 が 23.3%,30 名以上 50 名未満 が 31.2%,. とで連鎖的に他方の役割を導き出す「政府と市. 50 名 以 上 80 名 未 満 が 24.3%,80 名 以 上 が. 民の相乗的な補完関係」を築くことができるの. 17.0% であり,平均は 60.6 名となっている.父. である.政府と市民の間にシナジーが存在する. 親が参加していないサークルの割合は 40.8% と. ことが,さまざまな機関がかかわる開発援助プ. 高い.すなわち 4 割は子どもと母親で構成する. ロジェクトのなかで社会関係資本を活用するた. サークルとなっている.. めの前提条件と考えることができるだろう」と. そ し て,サーク ル メ ン バーの 居住地域 で は. 17) 指摘している(辻田,2001,pp. 123─125) .. 72.9% が同じ区や市町村内の同じ地区,42.7%. 組織間の連携,協働は広がれば広がるほど可. が同じ区や市町村内の異なる地区,13.8% が同. 能性も広がる.他方,前節で示した「大集団の. じ都道府県で異なる市町村,2.6% が異なる都. ジレンマ」と同様に,連携や協働が広がれば広. 道府県という結果となっている. (数値は複数. がるほど,組織間の連携,協働を維持するのは. 回答で全体に占める割合である. )子育てサー. 困難となる.. クルが市町村内の地区内で地域に密着した活動. 辻田が指摘した政府と市民のシナジー論で. が主になっていることが分かる.. は,政府と市民は自らの役割を果たすことで,. いずれの活動目的においても共通している点. 「連鎖的に」他方の役割を導き出すことができ. は,200 人以上の会員数となっているのは極め. るとしている.そして,このような連鎖的な役. て少数となっていることである.M. オルソン. 割の導出は,政府と市民との関係だけではな. が指摘しているように,大規模化のための費用. く,地域組織間の連携についても考慮されなけ. が大きくなり,また個々の会員の貢献度も認知. ればならない.辻田(2001)では,ウールコッ. されにくくなってくるためと考えられる.. クとナヤランの理論を紹介している.グループ. 4 地域組織活動の持続性と地域組織間連携. 内の結束(Bonding)と,異なるグループ間の 連携(Bridging)のうち,開発に不可欠なのは. 前節では,地域組織の組織化と組織が機能す. 後者の異なるグループ間の横断的連携の強化で. るための規模に着目した.それでは,地域組織. ある.なぜなら,特定のグループにリソースが. 活動の持続性に必要なものは何であろうか.. 分配されることを防ぎ,弱者やマイノリティに. 近年では,人々の絆に基づく社会的な関係性. 経済的な機会が与えられるからである,(中略). について,社会関係資本(ソーシャル・キャピ. 政府もコミュニティ間の連携も機能していない. タル)という概念により整理し,社会的課題と. 場合には,政府のサービス提供能力の強化と,. の問題を説明しようとする論文も数多い.辻. 水や衛生が普及していないコミュニティへの進. 田(2001)は,開発援助のプロジェクトにおい. 出とさまざまなコミュニティ間の連携の促進が. て 社会関係資本(Social Capital)の 視点 を 生. 必要である,としている(辻田,2001,p. 132) .. かそうとする場合, 「政府と市民のシナジー」. ここで想起されるのは,第 2 節で見てきた参. (State-Society Synergy)という要素に注目す. 加型開発アプローチのいずれの手法においても. ることが可能である,としている.. 組織化と関係諸組織の協議・共同が組み込まれ. 「政府と市民のシナジー」とは, 「政府と市民. ていることである.地域における組織化だけで. に開発の促進など共通の目的がある際に,政府. なく,関係諸組織の協議・共同が重要であり,. は市民がリソースを有効に使い行動する環境. それぞれの地域組織が自らの役割を果たすこと. (物理的環境と政策環境)を提供し,市民は公. で,他方の役割を引き出すことができると考え. 民としての責務を果たす(civic engagement) .. られる.. このように政府と市民は自らの役割を果たすこ. 同様に第 2 節で紹介したドイツ・ノルトライ.

(13) 社会開発と地域組織間連携(國重). (533). 63. ン・ベ ス ト ファーレ ン 州 の コ ミュニ ティ・マ. り上げる.. ネージメントの評価でも,異なる団体による協. 「かながわ求職者支援センター」は,神奈川. 働性,新たな分野への発展,地元のローカル・. 県により設けられた組織で 2009 年に設置され. パートナーシップの構築,行政内部局間や異な. た.同年 5 月から 2012 年 3 月までの 3 年間で,. るレベル間のパートナーシップを評価の内容に. 延べ利用者数は 4 万 8,420 人,その内訳は,生. 掲げ,統合性に関する評価,調整や協力体制に. 活支援情報 コーナーが 4,021 人,職業相談・職. 関する評価とし,その後の継続性の確保に関す. 業紹介 コーナー利用者数 が 1 万 5,621 人,求人. る評価に繋げている.. 検索機利用者数が 2 万 8,778 人であった.また,. そこで,次のような命題を設定する.. 延べ利用者数に対する実利用者数は,3 万 2,455. 「異なる地域組織間の相互作用により,地域. 人に上った.. 組織間連携の持続性を保つことができる. 」. 同センターでの支援は,主に 3 つに分類され. 地域組織間の連携について,持続性を保つた. る.1 つめはハローワークを通じての支援,2. めには,新たな取組みや提案,働きかけが次々. つめは県・市区社会福祉協議会や市区の福祉事. と誘発される必要がある.具体的には,公的機. 務所,県保健福祉事務所を通じての支援,3 つ. 関相互の連携が基になって新たな取組みが提案. めは県営住宅,市営住宅などの住宅関係の支援. される(第一の連携) .公的機関による働きか. である20).. けが地域社会との連携により,地域社会にもた. 支援の実績から読み取れるのは,行政の各種. らされる(第二の連携) .さらに地域社会にお. の支援事業が重複して紹介されることにより,. ける企業・団体の連携へもたらされる(第三の. 有意義な支援となっていることである.相談者. 連携) .また,その反対方向に地域社会におけ. の多くは,失業という形で労働市場からの退出. る企業・団体の連携から生じた新たな取組みや. を余儀なくされ,住居と職を一挙に喪失してい. 提案,働きかけが,公的機関と地域社会との連. るか,もともと持ち合わせておらずホームレス. 携にもたらされ,その次に公的機関相互の連携. 状態にある人々である.単に就労・職業訓練だ. にもたらされる.新たな取組みや提案,働きか. けでなく住まいを必要とし,さらに生活支援資. けが第一の連携から第三の連携の方向へ,また. 金をも必要としている.. 第三の連携から第一の連携の方向へと振り子の. 同 セ ン ターの 事業実績報告書 で は,14 の 支. ように往復することにより,それぞれの活動が. 援事例を紹介している.その中に「システムエ. 継続性のあるものとなり得るのである.. ンジニアとして働いていたが,突然の解雇と会. そこで,このような効果を「地域組織間連携. 社寮からの退寮により職と住居をともに失った. における振り子現象(Pendulum Effect) 」と呼. 37 歳 の 男性」へ の 支援事例 が あ る.相談内容. ぶこととする18).. は,「現在,ネット カ フェや 漫画喫茶,路上 で. 近年課題となっている生活困窮者に対する相. 生活している.日払いの仕事を時々して生活費. 談支援では,実に多くの関係機関によるネット. を賄っているが,住所がないので求職活動がで. ワークが検討されている .本稿の冒頭に述べ. きない.すぐ住める住居がほしい. 」というも. たように,緊急雇用対策の一環として,2009 年. のであった.その対応としては, 「まずは区役. に各都道府県において「求職者支援センター」. 所を通じ,市のホームレス自立支援施設に一時. が設けられた.生活困窮者である求職者をめ. 入所し求職活動を進めることを指導した.後日,. ぐって,行政の諸機関はどのような形で連携し. 本人から施設に入所後,求職活動するも就職で. てきたのだろうか.行政機関同士の連携の問題. きず施設を退所し,生活保護を受け簡易宿泊施. として,「かながわ求職者支援センター」を取. 設に転居したとの報告があった.そこで,職業. 19).

(14) 64. (534). 横浜国際社会科学研究 第 18 巻第 6 号(2014 年 2 月). 訓練を勧め,県の委託訓練「即戦力」の介護福. 野の上位 5 つは,①住宅の提供,②公共の安全,. 祉サービスコースを受講し,その後,職業相談. ③ホームレスの支援,④高齢者サービス,⑤近. に移行し,住み込み求人に応募し,就職するに. 隣(neighborhood)の改善となっている (Michael. 至った.」というものである(かながわ求職者. 21) J. Rich et al.,2001,p. 190) .. 支援センター,2012,p. 14) .. こうした一連の調査結果の中でも,筆者が. 県の求職者支援センターを訪れ,市の自立支. 最も注目しているのは,「より効果的な協働を. 援施設,求職活動,生活保護,県の委託訓練,. もたらす戦略であること」と「大変価値があ. 職業相談,就職という複数の支援を経ることに. ると認識できること」についての回答である. より,ネットカフェ難民状態の生活から脱する. ( Michael J. Rich et al., 2001, p. 196).効果的な. ことが出来た.一人の住居を失った求職者に対. 協働についての回答で最も高い率であったの. して,複数の公的機関が取り組む複数の支援事. は,市,コミュニティ組織ともに,「市の資金. 業により,自立した生活へ導けた訳である.東. と動機付けを活用したコミュニティを基礎とす. 日本大震災で被災し,失職した人々の相談も,. る 活動 の 開始(市側 82%,コ ミュニ ティ組織. 同センターで数多く受けている.住まいという. 側 63%)」で あった.一方 で,コ ミュニ ティ組. 生活基盤を失い,職業という経済基盤を失った. 織側が大変価値があると回答した中で最も高い. 人々に対しては,行政サービスも多数の面から. 率だったのは「複数のパートナーとプログラム. の支援が必要である.行政機関同士の連携によ. 分野を含む貧困減少と地域再生への包括的で戦. り自立へ誘導することが出来たといえる.. 略的なアプローチを採用すること(70%)」で. 次に,貧困減少について,行政と地域組織と. ある.この回答は市側でも 72% と 2 番目に高. の関係性について検討したい.Michael J. Rich. い値であった.このように,貧困減少と地域再. et al.(2001)は,市役所 と コ ミュニ ティ組織. 生については,複数のパートナーとプログラム. (Community-Based Organization)の双方から. を用意し,包括的に取り組むことが有意義であ. 見た貧困減少と地域再生の協働の取組みを分析. ると考えられているのである.. している(Michael J. Rich et al., 2001) .. Rich らは,戦略的な計画はあらゆる問題の. 具体的 に は 1998 年夏 に 行った 全米 の 人口 5. 解決策ではなく,その協働を高めるための戦略. 万人以上の市長へのアンケートとホームレスの. として,2 つの主要なチャレンジがあるとして. 支援団体, コミュニティの経済開発団体, コミュ. いる.すなわち,1 つめは,参加者には主な利. ニティ活動機関団体,コミュニティ組織改善団. 害関係者 や 影響力 を も つ 人々が テーブ ル に 付. 体といった全米組織から提供されたメールリス. き,様々な団体がそのプロセスを理解しコミッ. トによる調査を分析している.まず,貧困減少. トすること,そして,その促進が上手くいくと. や地域の再生のために市とコミュニティ組織と. いう「内的な成功(internal success)」である.. で,「定期的に不断に協働している」と答えた. 2 つめは,支配層や偏狭なコミュニティの見方. 割合 が,市側 で は 64%,コ ミュニ ティ組織側. に直面した際の「実 行 力( implementation )」. では,43%,双方を合わせた割合だと 49% と. であるとしている22)( Michael J. Rich et al.,. ほぼ半数が協働し合っているという結果が出て. 2001,pp. 199─200).. いる.また,市の人口規模別の協働している割. このように,行政の組織間が連携し,行政と. 合 で は,5 万人以上 10 万人未満 が 62%,10 万. 様々な地域組織が連携することが有意義な活動. 人以上 25 万人未満が 57%,25 万人以上が 51%. となっている事例が存在する.筆者の表現で. と,人口規模の小さい市ほど協働する率が高く. は,第一の連携(行政組織間連携)と第二の連. なっている.さらに協働率の高いプログラム分. 携(行政と地域組織との連携)である.そこで.

(15) 社会開発と地域組織間連携(國重). (535). 65. 次に,地域における組織間の連携について検討. と同様に,同じ行動規範,同じ活動目的を共有. しよう.. できた場合において,両者は連携することが. 鰺坂(2006)は, 「NPO は 地域社会 で 大 き. できる.地縁組織はネットワーク型組織と連携. な力を発揮し始めているが,NPO は狭い地域. することで,より広域なネットワークを獲得す. に根を下ろしたものは少なく,地域の区画性. ることができ,ネットワーク型組織は地縁組織. や 共同管理,代表性 に お い て 弱点 を もって い. と連携することで地域社会に根ざす情報と地域. る.それゆえに地域社会のガバナンスを考える. 住民の支持・支援を得ることができるからであ. と き,町内会・自治会 な ど の 包括的 な 自治組. る.. 織と NPO を初めとする自覚的運動組織の連接. こうした連携が,それぞれの活動の持続性を. のあり方が今後の大きな課題となろう.いいか. 保つことに寄与するであろう.異なる団体によ. えれば,住民自治型=地縁組織(町内会・自治. る協働性,異なるレベル間のパートナーシップ. 会など)とボランタリー・ネットワーク型組織. が活動の持続性に貢献することとなる.換言す. (NPO/NGO)の協同と競争の問題である. 」 (岩. れば,地縁組織がネットワーク型組織と連携す. 崎,矢澤,2006,p. 186)としている.. るには同じ行動規範を通じて,共鳴する必要が. 地域型活動とテーマ型活動の連携手法のタイ. ある.これは「地域組織間の共鳴現象」と呼ぶ. プについて, (財)地方自治研究機構の研究報. ことができる23).. 告書では,そのタイプを 6 つに整理している.. 次に,子育てや若者自立支援の分野において,. すなわち, ①地域自治組織の整備を通じた連携,. 地域組織間連携の問題を考える.. ②地域課題解決を目的とした連携,③活動場所. まず,母親クラブを取り上げる.表 7 は,母. の提供を通じた連携,④テーマ施設を核とした. 親クラブと地域における組織間連携の関係を示. 連携,⑤テーマ型の地域事業・活動を核とした. している.この表 7 から読み取れることは,い. 連携,⑥中間支援組織のコーディネートによる. ずれのクラブでも児童館とのつながりが深いこ. 連携である( (財)地方自治研究機構,2010,p.. と,地域の保育所,幼稚園,小学校等との連携. 35) .この地域型活動とテーマ型活動の連携に. が深いこと,行政の保育課や青少年課との連携. ついて, 「市町村アンケート調査結果では,成. があることが分かる.地域の関係施設や担当の. 果の面で課題がある市町村,また,連携の必要. 行政窓口との関係性が読み取れる.次に読み取. 性を感じていない市町村の割合が高かった.し. れるのは,男女共同参画のネットワークや老人. かし,両者の連携を強化するための手法を導. 会との事業協力,青少年健全育成の分野との連. 入・活用することにより,地域力の向上,地域. 携,さらには,県域の協議会の研修や市外の母. 協働型のまちづくりの進展等の効果を創出する. 親クラブとの連携である.子育てからやや拡大. ことに成功している地域もみられる」と同報告. した分野との連携,市域からより広域的な活動. 書では述べている.. との連携を図って活動を続けていることが分か. 鰺坂(2006)は地縁組織とネットワーク型組. る.. 織の協同と競争の問題とした.しかし,筆者は,. 若者自立支援では,イギリスのコネクション. 地縁組織とネットワーク型組織は,競争よりも. ズ・サービスが著名である.コネクションズ・. はるかに協同が重要であると考えている.第 1. サービスとは,2001 年にイングランドで開始. 節で紹介した中西(2006)でも,両者の連携に. された若者支援組織で,対象は 13 歳から 19 歳. 基づく市民的協同の発展が,高齢社会における. である.イングランドにはコネクションズセン. 地域の福祉的基盤の構築へつながると評価して. ターが 47 存在 し て い る.立石・生田(2011). いる.行政組織間連携や行政と地域組織間連携. によると,バークシャー州レディング市のコネ.

(16) 66. 横浜国際社会科学研究 第 18 巻第 6 号(2014 年 2 月). (536). 表 7 母親クラブと地域における組織間連携 活動タイトル. 母親クラブ名. 組織間連携の具体的内容. 1. 児童館等の関係機関によるサポート つ く ば 市児童館母親 体制で地域組織活動を地域の連携づ クラブ くりの中核に (つくば市). ・つくば市立児童館等との連携 ・地域の保育所,幼稚園,小学校等との連携 ・つくば市都市施設課との連携 ・つくば市男女参画室との連携. 2. 行政,保護者,関係機関,関係団体, 相模原市母親 ク ラ ブ 地域のボランティア等が一体となっ (9 クラブ) て進める子育て支援 (相模原市). ・相模原市こども施設課との連携 ・相模原市保育課との連携 ・相模原市こども青少年課との連携 (地域子育て支援事業の受託) ・相模原市児童館・こどもセンターとの連携. 3. 家庭,地域,行政が協働による「子 鯖江市母親クラブ(20 ・児童館との連携 育てにやさしいまちづくり」 クラブ) ・市外の母親クラブとの連携 (鯖江市) ・さばえ男女共同参画ネットワークとの連携. 4. 児童館と地域組織活動による地域の 篠山市母親クラブ 子育て連携について (篠山市). ・児童館との連携 ・地域の保育園,幼稚園,小学校等との連携 ・老人会との事業協力 ・兵庫県丹波県民局との連携 ・青少年健全育成会味間校区との連携. 5 「地域社会全体で支えていく子育て」 北九州市母親クラブ を目指して (北九州市). ・心豊かな少年を育てる市民大会との連携 ・青少年問題協議会との連携. 6. ・児童館との連携 ・大分県地域活動連絡協議会主催の研修会への参加. 地域組織活動を通じて,安心してこ 別府市母親クラブ どもを産み育てられる社会の実現を めざす (別府市). 出所:‌ 「行政と地域組織の連携に関する事例集~『地域の力を活かし,子どもたちが健やかに育つ環境づくり』を目指して~」 (厚生労働省雇用均等・児童家庭局育成環境課ホームページ)の内容を筆者が表にまとめた .. クションズセンターでは,スタッフ数は各種ア. 題として,各支援団体が体得したノウハウが,. ドバイザーを含め総勢 37 人で,犯罪に関わり. 支援団体間で共有・活用されていない,といっ. をもった経験を持つ青少年への支援,障害のあ. たことが挙げられている.イギリスのコネク. る青少年を対象とする支援,性教育,性にまつ. ションズ・サービスでは,自治体,学校,警察. わる相談業務,妊娠中の青少年や 10 代の親へ. などの公的機関,職業紹介・訓練等の民間企業,. のアドバイスなどとなっている.. ボランティア,慈善団体などが連携しており,. 一方,我 が 国 の 若者自立支援団体 で は ど う. 今後の我が国の若者自立支援策についても示唆. か. 「若者自立支援団体 の 実態調査」 (東京都,. に富むものと考えられる.. 2008)によると団体の運営状況について比較的. 本節の最後に,過疎地域における耕作放棄の. 小規模な団体が多い.スタッフ数(役員数と正. 問題を取り上げ,地域組織間連携と活動の持続. 規職員数の合計)は「5~9 人」が 8 団体(42.1%). 性の問題を検討する.これまでコミュニティや. と最も多い.また, 「1~4 人」とあわせた 9 人. 集落に関して考察してきた.国の各省庁で集落. 以下の団体が 11 団体(57.9%)で,約 6 割を占. に関する調査が数多く行われてきたものの,そ. めている.そこで,1 点目の課題として,小規. の中でも農林水産省は,「集落」という社会単. 模な団体では,専門的な知識・技術を有する支. 位を公式に施策の中で位置づけて展開してきた. 援員の育成・確保が容易ではない.2 点目の課. 数少ない省庁である24)..

(17) 社会開発と地域組織間連携(國重). (537). 67. 既に述べたように,過疎地域を中心に耕作放. 間地域において後継者のいない農家が急増し,. 棄は,大きな問題となっている.西頭は, 「水・. 耕作放棄地が拡大するという危機の中で,土地. 土地資源の管理と組織間交流」という論文の中. 改良区の媒介機能を拡大させることで,行政と. で,耕作放棄地の増加による地域経済の衰退に. 個別経営の間を繋ぎ,水管理の調整を図るとい. ついて危惧の念を示している.. う,地域組織間の連携,そしてある種の行政と. 西頭は,土地改良区が蓄積してきた資本管理. 農村集落の間の「振り子現象」が期待されてい. のノウハウを積極的に評価して,一貫体系をな. るのである.. す「水利」の中核的担い手を位置づけること, また,土地改良区は主として,受益者をまとめ 利害を調整する「組織機能」と水利施設を造成. 5 ‌社会開発の政策的アプローチと地域組織間 連携. し維持管理する「水利機能」の二つをもってい. 地域社会における課題に向けた取組みに資す. ると指摘している(西頭,1994,p. 57) .土地. るものとして,本稿では社会開発の手法と地域. 改良区は,土地改良法や地方自治法に規定され. 組織間の連携を考察した.その中で,一定の取. ている法人であるが,農村地域の混住化が進む. り組む課題と組織の規模との間には,何らかの. 中 で,土地改良区 は, 「地方自治体 の 政策誘導. 関連性があるものとして,共鳴現象(Resonance. (全体)←「媒介機能」の 拡大(土地改良区). Effect)という考え方を示した.課題解決に向. →個別経営の資源管理(部分) 」という図式に. けた行動規範は人々を繋ぐものであるが,地域. 示されるような「部分」と「全体」を統合する. の実情にあった組織規模や行動範囲がある.地. 「媒介機能」を大幅に拡大しなければならない.. 域のリーダーや自治体の担当者などの取組みの. 今後の「媒介機能」の拡大では,4 つの機能. 推進者は,できる限り多くの参加者を募りたい. を強化しなければならない,と指摘している.. という欲求を抑えて,参加者の満足度,貢献へ. すなわち,第一は水利組織の「組織統合機能」 ,. の報酬(自己実現)を考慮すべきである.大き. 第二 は 基幹水利施設 の「維持管理機能」 ,第三. すぎる組織規模であれば,組織を維持するエネ. は資源管理の「総合化機能」 ,第四は「財政機能」. ルギーが膨大なものとなり,長続きしない,持. の強化である.その上で,今後の農村集落の空. 続しないということになるからだ.. 間には,生産的資源管理でカバーされない部分. そこで,地域組織活動の持続性について組織. が拡大すること,そのような空白部分は一般住. 同士の共鳴が連鎖し,振り子のように往復する. 民が資源管理を担わざるをえないこと,今後の. ことでその継続性を保つことを考察した.本稿. 資源管理は,地方自治体の政策誘導=土地改良. ではこれを「地域組織間連携における振り子現. 区の機能拡大=一般住民参加の資源管理システ. 象(Pendulum Effect)」とした.. ム,という新たな重層的組織によって担われる. 実は,地域組織の規模の問題と地域組織間連. ことになると整理している(西頭,1994,pp.. 携の問題は,密接不可分の関係にある.地域組. 57─59) .. 織の規模が小さい場合は,その連合会のような. 専業農家が減少する傾向にあるため,これま. 組織やネットワーク型の組織と連携を図るとい. での農村集落レベルの水管理が空洞化しつつあ. うことが生じる.地域の課題解決に向けて,地. る. 土地改良区が行政と個別経営の間に存在し,. 縁組織かネットワーク型組織かのいずれかが. 媒介機能を拡大する中で組織間の交流を図るべ. きっかけとなる.いずれの組織が動き始めるに. きと主張しているのである.さらに,そこには. しても,地縁組織のみ,ネットワーク型組織の. 中核的担い手とともに一般住民の意識の高揚と. みではうまく機能しないことも多い.共通の規. 参加・支援が必要となっているのである.中山. 範を共有することにより地縁組織とネットワー.

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