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<総説>カルシウム拮抗薬と不整脈 利用統計を見る

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カルシウム拮抗薬と不整脈

杉山 篤・橋本敬太郎

  由梨医科大学薬理学教室 抄録:ジヒドロピリジン系以外のカルシウム拮抗薬は、洞房結節と房室結節の遅い内向きカルシ ウム電流を抑制することにより、上室性不整脈およびリエントリー性不整脈を改善あるいは抑制す る。この抑制作用はカルシウム拮抗薬に固有の電気生理学的特性に基づくものである。カルシウム 拮抗薬は虚血や薬物により誘発した自動能不整脈、再潅流不整脈にも有効であるが、これはカルシウ ムチャネル遮断の結果生じる二次的な作用による。最近,カルシウム拮抗薬としての作用の他にナ トリウムチャネルも抑制するベプリジル,純粋なカルシウム拮抗作用に加えて㎜群薬類似の有効性 を示す薬物も開発されてきたので,そういった観点からの分類が今後必要になるかもしれない。 キーワード カルシウム拮抗薬,不整脈,激発活動 1 はじめに  最初に臨床導入されたカルシウム拮抗薬はベ ラバミルで,それは冠血管拡張薬としての有効 性に基づいたものであった。その後の臨床経験 により,上室性頻拍に対する抗不整脈作用が注 目され,カルシウム拮抗薬はVaughan WiL liamsによる抗不整脈薬分類のIV群として追加 された1>(表1)。心房細動や心房響動時の心 室拍動数の抑制およびリエントリー回路の一部 または全部が房室結節に含まれる上室性頻拍の 停止が可能であるのは,ベラバミルが房室結節 の伝導を抑制することに由来する(図1)。現在, ベラバミルに匹敵する抗不整脈作用を示すカル シウム拮抗薬としては,ジルチアゼム,ベプリ ジル,ガロバミルなどがある。一方,ニフェジ ピンなどのジヒドロピリジン系カルシウム拮抗 薬の上室性頻拍抑制効果は,1)血管選択性が 高く,過度の降圧なく上室性頻拍有効用量を得 難い,2)頻度依存性をほとんど示さないため 〒409−38山梨県中巨摩郡玉穂町下河東1110 受付:1995年1月9陰 受理:1995年2月28日 高頻度で興奮する組織における内向きカルシウ ム電流に対する有効性が低い,3)血圧降下に 伴う交感神経系の反射により,房室結節および 洞房結節に対する直接的抑制効果が相殺され る,という3つ理由で認められない。  心房細動,心房粗動,房室回帰性頻拍,心房 性頻拍などの上室性頻拍の治療におけるカルシ ウム拮抗薬の使用法については専門書に譲り, ここでは不整脈発生におけるカルシウムチャネ ルの役割,我々の研究室で行っているイヌ心室 性不整脈モデルおよび最近開発したtriggered activity不整脈モデルに対するカルシウム拮抗 薬の抗不整脈作用,第3世代のカルシウム拮抗 薬の特徴を申心にまとめる。 巫 自動能不整脈とリエントリー不整脈  患者の個々の不整脈の発生機序を正確に診断 することは,臨床電気生理学的検査に制約があ るため困難である。動物実験の不整脈において も,その発生機序を知ることは困難なことが多 いが,理論的に発生機序から自動能不整脈(正 常自動能の異所性充進,異常自動能の出現)と

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表1.抗不整脈薬の分類 クラス Vat…ghan Wllliams分類 新しい分類 代表的薬剤 Ia APD, ERP 低刺激頻度から抑制 i結合・解離遅い) ジソピラミド,キニジン vロカインアミド,アプリンジン tレカイニド,プロパフェノン sルジカイニド 1 Na `ぎ不ル制抑 Ib APD, ERP Z縮 iERP/APD増大) 高刺激頻度でのみ抑制 i結合・解離速い) リドカイン <Lシレチン β1選択性(+) アテノロール H β受容体遮断 β1選択性(一) プロプラノロールなど 極短時間作用型 エスモロール Kチャネル選択性(一) アミオダロン 斑 Kチャネル制御 Kチャネル選択性(+) ソタロールなど 」租管選択性(+) ニフェジピン Iv Caチャネル抑制 心臓選択性(+) ベラバミル,ジルチァゼム SinghとVaughan Wiliiamsのオリジナル分類(1972)に基づく分類。あるクラスに分類される薬剤の中 に,他のクラスの特性を示すものもある。たとえばクラスIIの抗不整脈薬であるプロプラノ寒川ルはク ラスIVの作用も示す。 洞房結節 の興奮 カルシウム 拮抗薬で抑制 カルシウム 拮抗薬で抑制 ナトリウム 拮抗薬で抑制

ヒス束 β刺激薬で促進 図1.カルシウム拮抗薬による上室性頻拍抑制の作    用部位。主たる作用部位は洞房結節と房室結    節である。

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リエントリー不整脈とに分類されている。表2 は不整脈の発生機序を心筋細胞電気生理学のパ ラメーターを用いてまとめたものである。  1.自動能不整脈  自動能不整脈の大部分は洞房結節以外の異所 性自動能の充進により発生する。房室結節の自 動能は4相の脱分極を起こす外向きK電流の減 少あるいは内向き電流の相対的増加で起こる が,この部位の静止膜電位は浅いので,内向き 電流としてはカルシウム電流が重要な役割をは たしている。心室プルキンエ線維の自動能充進 も,4相の相対的内向き電流の増加により起こ る。内向き電流としてはIf電流という過分極 により活性化される電流が知られており,ナト リウムとカリウムによる電流ではないかと考え られている。従って,カルシウム拮抗薬はこの 心室プルキンエ線維の自動能に対して有意な作 用を示さない(図2)。  我々の研究室ではビーグル犬に心筋梗塞を発 生させたり薬剤を投与することにより,発生機 序の異なる3種類の心室性自動能不整脈を作製 し,抗不整脈薬の薬効評価に用いている2)。冠 結紮不整脈は,ハロセン麻酔下で,前下行枝を 結紮し作製する。ジギタリス不整脈は,ベント バルビタール麻酔下で,ウアバインを静脈内投 与して作製する。アドレナリン不整脈は,ハロ 表2.不整脈の発生機序 発生部位 イオン機序 不正脈抑制機序 異所性自動能充進 房室結節 Ca電流奮,β受容体含 心室プルキンエ線維 Na電流奮,β受容体奮 Na電流↓,β受容体↓ 自動 異常自動能発生 心房および心室プルキ Cai↑ Ca電流↓, Na・Ca交換奮 能不正脈 早期後脱分極 x延後脱分極 ンエ線維 i場合により心房,心室) リなど) (Na澄, Na・Ca交換↓) 総ー胞体よりの振動性 晶晶胞体Ca放出チャネル↓ 選択性陽イオン電流↓ ウ常心筋Na電流↓ Ca放出 Na・Ca交換電流発生 非選択性陽イオン電流 興奮伝導時間延長 心房,心室筋,プルキ Na電流↓,膜容量食, Na電流奮?(自動能含) ンエ線維,副伝導路 細胞内部抵抗↑ 膜容量↓ リ 細胞内チャネルδ

Na電流δ(完全ブロック発生) トノ 書 房室結節 Na電流・導,膜容量愈, Ca電流含? (自動能芸) 1不正 細胞内部抵抗奮 膜容量↓ 細胞内部抵抗畢 脈 不応期短縮 心筋各部位 K電流奮 K電流↓ CaまたはNa電流↓ CaまたはNa電流奮? (自動能奮) ナトリウムチャネルを抑制すれば,心室プルキンエ線維における自動能は抑制され,伝導も悪化する。これによりリエ ントリー回路を途絶できる可能性がある。カルシウムチャネルを抑制すれば,房室結節の自動能は抑制される。細胞内 カルシウム濃度が減少することは,遅延後脱分極の発生に対しても抑制的に作用すると考えられる。房室結節の伝導の 抑制はWPW症候群の発作性頻拍や,房室結節回帰性頻拍を抑制するし,脱分極した病的な心房筋や心室筋の伝導を抑 制し,各種のリエントリーに対し抑制的に働くかもしれない。一方,再分極または不応期に関しては,カリウムチャネ ル,特に圭k,1、。,lk1電流の関与が明らかになっている。クラスm薬はikを抑制することが知られており,不応期を適度 に延長するものは,リエントリー性不整脈に抑制的に作用すると考えられている。

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べラバミル

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5 4 3 2 1 2 84 0 ︷ ⊆惹\2$8   ︵εε\輯ε︸ 癒繍黒田佃翻台   蝸爆儀鞭    0 撒酬ll欄ll酬lll醐lllll ll階lllllll ▲ 10μ9 壌田in 図2.ベラバミルのプルキンエ線維自動能に対する 作用冠血流量を約50%増加させる量のベラバ ミルはプルキンエ線維の自動能に作用を及ぼ さない。 セン麻酔下で,アドレナリンを持続注入して作 製する。ベラバミル(0ユmg/kg),ジルチア ゼム(O.l mg/kg)およびベプリジル(1mg/kg) はアドレナリン不整脈には有効であったが,他 の不整脈モデルに対しては抗不整脈作用を示さ なかった3)。アドレナリン不整脈に対する抗不 整脈作用は,アドレナリンによる細胞内へのカ ルシウム流入の増加を抑制したためと考えられ ている。  最近,自動能不整脈の原因として注目されて いるものにtriggered activity(撃発活動)があ る。心臓では細胞内のカルシウム濃度の増加は 一定の低い範囲であれば,貯蔵部位である筋小 胞体に取り込まれるので,カルシウムtran、 sientの増加により収縮力増強が起こるので生 体には有利である。しかし,カルシウムの増加 につれ,筋小胞体に取り込みきれなくなり,さ らにナトリウム/カルシウム交換機構の能力を 越えると,静止状態におけるカルシウム濃度が 上昇し,静止張力の増加,自動能の充進,振動 性の後脱分極を起こし,心筋収縮力の低下や不 整脈を発生するようになる。ジギタリス中毒に よる不整脈の原因は振動i生後電位によるとされ ており,単離心筋細胞標本において証明されて いる。カルシウム拮抗薬や外液のカルシウム濃 度を減少させることなどで抑制されることも示 されている。  生体位心臓など臓器レベルでのtriggered activityによる不整脈モデルとして,我々の研 究室では,ジギタリスまたはアドレナリン投与 下で心室電気刺激によって誘発される心室性期 外収縮をtriggered activityとして用いている。 最近報告したtriggered activityによる不整脈 モデルの概要およびこの不整脈に対するカルシ ウム拮抗薬の作用を以下にまとめる。

 1)生体位の心臓に誘発したtriggered

act1Vlty  雑犬を人工呼吸下に左開胸し,刺激電極を左 心室に年魚後,ウアバイン30−40μg/kgを静注 した。自発性の心室性期外収縮が出現する前に, 連続刺激を心室に与えると心室性期外収縮が刺 激中断直後に誘発された。連続刺激の刺激間隔 を短くするにつれ,誘発される期外収縮数は増 加し,連結時間は短縮した。ベラバミルなどの カルシウム拮抗薬は大量用いてもこの心室性期 外収縮を完全には抑制しなかったが,誘発され る期外収縮の数は有意に減少させたので,一種 の抗不整脈作用があると考えられた4)。  2)生体位の心臓局所に誘発したtriggered act1Vlty  上記と同様に開胸し,左前下行枝を自己血液 で潅流する回路を作製し,ジギタリスまたはア ドレナリンを局所投与することにより,電気刺 激後に期外収縮を誘発した。ベラバミルなどの カルシウム拮抗薬は,アドレナリンで誘発した triggered activityを少量で抑制したが,ジギタ リスで誘発したtriggered activityに対しては 大量を用いないと抑制しなかった。このことは 同じtriggered activityでも発生機序には差が あることを示している5)。  3)イヌ血液潅流心筋標本に誘発したtrig− gered activity

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 標本は心室中隔と右室の乳頭筋を用いて作製 し,乳頭筋先端およびヒス束領域に電極を接着 し,供血犬の動脈血を用いて交叉潅流した。標 本は,プルキンエ線維に由来する自動能を示し, 自発収縮数は約40beats/minであった。乳頭筋 の等尺性発生張力および乳頭筋先端の表面電位 を連続記録した。ヒス束領域の電極を介して刺 激間隔600−200msecで15回連続刺激を行ない, 5秒間の無刺激時間をおいてまた刺激するパ ターンで心室刺激を繰り返し,期外収縮が誘発 されないことを始めに確認した。その後,ウア バイン40μg/kgを供血犬に静注すると,標本 の自発収縮数は20−30beats/minに徐々に低下 した。約10分後より標本において,電気刺激に より期外収縮がレ2個誘発されるようになっ た。期外収縮は刺激間隔が短いほど出現頻度が 増加し,連結期は短縮した(図3)。リアノジ ンはこの期外収縮の発生を抑制したので,この 期外収縮は遅延後脱分極により発生していると 考えられた。ベラバミルは冠血流量を増加させ るような高用量でのみtriggered activityの発 生を抑制した。一方,テトロドトキシンやクラ ス1抗不整脈薬のようなナトリウムチャネル拮 抗薬は,このtriggered activityをより抑制し たことから,不整脈の薬物治療に際しては,原 因となる異常自動能を抑制する以外に,正常伝 導の抑制も抗不整脈作用として重要であること が示唆された6)。  2.リエントリー性不整脈  リエントリーが発生するには興奮が心筋の一 部で異常に遅く伝導し,それ以外の心筋が不応 期を脱したところを再度興奮させることが必要 である。この伝導路が安定した回路を作る場合 に持続性の異常興奮の発生場所となり,頻拍が 発生する。房室結節の伝導は,脱分極電流であ るカルシウム電流の減少で遅延することが知ら れている。WPW症候群における発作性リエン トリー性不整脈の治療としては,房室結節の伝 導を改善するか,またはさらに抑制して伝導の 遮断をおこせばよいことになる。一方,心室内 や心房内のりエントリーは,ナトリウム電流の 減少で起こっていると考えられるが,虚血など の条件が関与すれば,カルシウム電流にも関係 した伝導が起こっている可能性もある。薬物に

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図3.イヌ摘出血液潅流心筋標本に誘発したtriggered activity刺激間隔を短縮   するにつれて期外収縮の連結時間は短縮し,数は増加した。乳頭筋の静   止張力は2gであり,収縮力の実記録中の横線の間隔は1gに相当する。    また,心室電位の実記録中の横線の間隔は1mVに相当する。

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よりナトリウムまたはカルシウム電流を増加さ せて伝導を速めるか,あるいは逆に,伝導をさ らに抑制し,一方向性のブロックを両方行性の ブロックにすれば,リエントリーは起こりにく くなるはずである。ただし,脱分極電流である ナトリウムまたはカルシウム電流を増加させる ことは自動能も促進されることになるので,実 際にはi薬物で脱分極電流を抑制するのが普通で ある。WPW症候群による不整脈はナトリウム 電流に依存した副伝導路の存在が必要条件なの で,カルシウム拮抗薬だけでなく,ナトリウム 電流の抑制薬でも発作性頻拍を抑制することが できる。 璽 虚血一再潅流不整脈に対するカルシウム拮         抗薬の作用  虚血時および再潅流時不整脈にカルシウム拮 抗薬が有効であるという報告は多くの研究室か ら報告されている7)。この作用機序は十分に解 明されているわけではないが,可能性として以 下の2つが考えられている。1)カルシウム拮 抗薬にはエネルギー保存作用があり,虚血時の ATPの消費速度を遅延させる。 ATPは細胞内 外のNa+/K+一ATPaseポンプのエネルギー源 であるので,この機構が破綻すると細胞外カリ ウム濃度は急増し,電気的に興奮しやすい状態 になる。2)ATPの形のエネルギーは細胞内 カルシウム分布の調節,再潅流時の細胞内カル シウム著増の防止にも必要である。細胞内カル シウムが増加すると,外向きカリウム電流が活 性化され,活動電位持続時間が短縮するので, 不整脈をきたしやすい状態となる。したがって, カルシウム拮抗薬の予防投与時にみられる ATP保存作用により,虚血時および虚血再潅 流時の不整脈発生頻度が低下することが期待で きる。このような効果はスローチャネル遮断の 結果生ずる二次的作用であり,その固有の電気 生理学的特性に基づく一次的作用である上室性 頻拍抑制作用とは異なる。虚血時および再潅流 時不整脈の防止という点では,ジヒドロピリジ ン誘導体も他のカルシウム拮抗薬の効果と同等 である7)。 lV 抗不整脈作用を有するカルシウム拮抗薬  不整脈の発生機序におけるカルシウムチャネ ルの役割を理解すれば,カルシウム電流を抑制 するカルシウム拮抗薬に抗不整脈作用が期待で きることも容易に理解できる。抗不整脈作用を 有するカルシウム拮抗薬としては比較的心臓に 選択性を持つベラバミルおよびジルチアゼムが あげられ,抗不整脈薬として使われているのも このためである。ニフェジピンを代表とするジ ヒドロピリジン系のカルシウム拮抗薬は血管拡 張作用が主体であり,反射性の交感神経系の興 奮により心拍数の増加や房室伝導の促進が生じ る。図4にカルシウム拮抗薬の自動能,伝導, 収縮,冠血流量に対する作用をイヌ血液潅流心 筋標本を用いて検討した結果を示す8)。不整脈 の発生機序で述べたように,心筋カルシウム チャネルの抑制で効く不整脈は房室結節の自動 能充進や房室結節を含む上室性リエントリー性 不整脈などで,不整脈全体の中では限られたも のである。カルシウム電流に関係した早期およ び遅延後脱分極による心室性不整脈にも有効な はずであるが,クラス1抗不整脈薬に比べはる かに有効性が低い。ベラバミルやジルチアゼム     ぬ   ベラバミル        ジルチアゼム ベプリジル 図4。カルシウム拮抗薬の自動能,伝導能,収縮力,   冠血流量に対する作用の選択性。ニフェジピ   ンを代表とするジヒドロピリジン系のカルシ   ウム拮抗薬は血管拡張作用が主体である。

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は,心筋カルシウムチャネルに対する作用のほ かに,弱いながら心室性不整脈を抑える可能性 を有するナトリウムチャネル抑制作用も持つ。 新しいカルシウム拮抗薬のうち,この心筋カル シウムチャネル以外に多種類のイオンチャネル を抑制することによる抗不整脈作用を期待して 開発された薬に,ベプリジルやガロバミルがあ る。また,電気生理学的にカルシウムチャネル を含め多数のチャネルを抑制するものにクラス 皿に分類されているアミオダロンがある。これ らの薬物には,虚血性病変に起因する不整脈に 対する電気生理学的効果および虚血改善効果の 両者による抗不整脈作用が期待されている9)。 以下に,最近注目されているカルシウム拮抗薬 および関連する薬物について述べる。  1.ベプリジル  日本国内では1992年から発売されているカル シウム拮抗薬であるが,欧米では狭心症治療薬 として既に使われていた。化学構造的には,ベ ラバミルともジヒドロピリジン系カルシウム拮 抗薬とも異なる。電気生理学的には平滑筋およ び心筋の電位依存性カルシウムチャネルを抑制 し,心拍数を減少させ,房室伝導を抑制するが, 冠血管拡張作用を基準にすると房室伝導の抑制 はニフェジピンより強く,ジルチアゼムとほぼ 同程度である(図4)。ベプリジルはナトリウ ムチャネルも抑制することが知られている。そ の抑制様式はリドカインに類似のfast kinetics

に分類され,CAST(Cardiac Arrhythmia

Suppression TriaDで催不整脈作用で問題に なったフレカイニドなどの属するslow kinetics 薬とは異なる。ナトリウムチャネル抑制作用に はカルシウムチャネル抑制よりやや高い濃度を 必要とするが,その差はあまり大きくないので 臨床使用上もその効果は期待できると考えられ ている。このようなカルシウムおよびナトリウ ムチャネルの両方を抑制する作用はベラバミ ル,ジルチアゼム,ガロバミルにも共通の性質 であるが,ベプリジルは特有の性質としてik チャネルも抑制し,クラス皿の薬物と同様に心 筋活動電位および不応期を延長する。その他, ナトリウム/カルシウム交換抑制作用,受容体 依存性カルシウムチャネルの抑制作用,平滑筋 のカルモデュリンに対する拮抗作用も有する。 これらは心筋内カルシウム濃度調節に関係して いるので,抗不整脈作用の一部を担っている可 能性がある。イヌ心室性不整脈モデルに対して は,従来のカルシウム拮抗薬が有効であったア ドレナリン不整脈には有効であったが,ナトリ ウムチャネル抑制薬が有効であるジギタリス不 整脈には抗不整脈作用を示さなかった。しかし, 臨床第3相試験では予想以上に,上室性および 心室性不整脈に対して有効性が認められてい る10)。1日3,000個以上の期外収縮が認められ た患者に対して,ベプリジル1日200mgある いはジソピラミド1日300mgを4週間投与し, 1日の期外収縮総数,Lown分類による重症度 の変化から両薬剤の有効性および安全性を比較 したところ,心室性期外収縮数の改善度はべプ リジルで68%,ジソピラミドで49%,自覚症状 を加えた全般改善度ではそれぞれ70%,5!%と 判定された。上室性期外収縮に対しては,ベプ リジルで65%,ジソピラミドで36%有効と判定 され,ジソピラミドを上回る成績であった。安 全性に関して問題になるのはQT延長と,そ れに伴う倒錯頻拍(torsade de pointes,以下 TdPと略す)の発生である。ヨーロッパの成 績では,70歳以上の女性,利尿薬に伴う低K 血症を合併している患者にTdPの発生を多く 認めたが,使用前にQTの長い患者を適応か ら除外することにより,安全に使える薬と報告 されている11)。薬物動態に関しては,経口吸 収は良好であるが,肝臓初回通過効果により生 体内利用率は約60%とされている。血中半減期 は33時間と他のカルシウム拮抗薬に比べ著しく 長いのが特徴である。また,肝臓で酸化的代謝 を受けるので尿中への排泄はほとんどない。  2.ガロバミル  ベラバミルの誘導体でD−600としてカルシ ウムチャネルを抑制する薬理学的手段として電 気生理学者が長年用いてきた薬物である。カル シウム拮抗作用はベラバミルの2,5倍強力であ

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り,ベラバミルと同様に高濃度でナトリウム チャネルを抑制するので,上室性頻拍および心 室性不整脈に対し,抗不整脈作用を示すことが 期待され,現在国内で臨床治験:が行なわれてい る。イヌ心室性不整脈モデルに対しては,従来 のカルシウム拮抗薬と同様に,アドレナリン不 整脈は低い用量で抑制したが,ナトリウムチャ ネル抑制薬が有効性を示すジギタリス不整脈に は有効性を示さなかった5)。また,冠動脈2段 結紮による心筋梗塞24時間後の亜急性期の心室 性頻拍に対してはほとんど抑制作用を示さな かったが,心室頻拍の程度が軽い48時間後の不 整脈に対してはわずかな抑制が観察された。こ の作用はベラバミル,ジルチアゼムなどには見 られなかったので,ガロバミルの優れた抗不整 脈作用を反映するものかもしれない。しかし, 臨床でどのような抗不整脈効果が期待できるか は不明である。ガロバミルは生体位心臓局所に 誘発したtriggered activity(前述)に対しても 抑制作用を示し,遅延後脱分極によるtrig− gered activityにはカルシウム拮抗薬が有効で あるという理論に一致した。欧米での臨床成績 はカルシウム拮抗薬として,上室性期外収縮お よび発作性上室性頻拍に対し有効性が認めら れ,心房細動の心室拍動数減少作用はベラバミ ルの約2倍であったと報告されている。国内で の第D:相試験では,心室性不整脈に対する治験: も行なわれたが,有効率はあまり高くなく,上 室性不整脈に対しての有効性を探る方向で開発 が進められている。薬物動態においては,経口 吸収は良いが,肝臓での初回通過効果が大きく, 生体内利用率は15%と低く,血中半減期も3時 間位と短いことが報告されている5)。  3.アミオダロン クラス誌略として国内ですでに発売されている が心臓外の副作用の発生が多いため,orphan drugに近い扱いを受けている9)。本来のカルシ ウム拮抗薬とはいえないが,静脈内投与した際 には,血圧低下,房室伝導抑制,冠血管拡張な どカルシウム拮抗薬としての薬理作用を呈す る。アミオダロンの急性効果はカルシウム拮抗 作用とナトリウムチャネルに対するリドカイン 型の抑制作用の両者が主体であるが,数週間か ら数か月を経て,クラスm薬の特徴である心筋 活動電位の持続時間の延長や心電図上のQT 延長が起きてくる。このQT延長はカリウム チャネルに対する作用と考えられるが詳細な検 討はされていない。また,アミオダロンは甲状 腺機能を低下させたり,肺線維症を発生させる 作用があることも報告されている。抗不整脈作 用に関しては,他の薬物が無効な例に有効な場 合や,植え込み型除細動器と併用することがあ るように,他の薬物にない強力な抗不整脈作用 が認められている。また,上室性不整脈にも心 室性不整脈にも有効である。CASTに匹敵す る大規模臨床試験が欧米で行なわれており,不 整脈患者の予後を改善することが期待されてい る。長期投与の場合,徐脈や房室伝導抑制といっ たカルシウム拮抗薬としての作用は認めにく く,TdPの発生も少ない。イヌにアミオダロ ンを静注した際,徐脈,血圧低下はおこるが, QTの延長は認められなかった。イヌ不整脈モ デルに対しては,アドレナリン,ジギタリス, 冠結紮不整脈のいずれにも有効であり,他のカ ルシウム拮抗薬とは異なる作用によると考えら れる。さらに,静注後10分以上経ってから抗不 整脈作用が発現し,血中濃度との相関が認めら れないといった従来の抗不整脈薬のいずれとも 異なる結果が得られている。  4.硫酸マグネシウム  マグネシウムは生体内でカルシウム,カリウ ム,ナトリウムに次いで豊富に存在する陽イオ ンである。細胞内陽イオンとしてはカリウムに

次いで2番目に豊富であり,Na+/K転

ATPaseをはじめ300以上の酵素反応に関与し, 生体の各種機能に重要な役割をはたしている。 マグネシウムは古くから非特異的な抗不整脈薬 として経験:的に用いられており,近年では特に TdPに対する予防,停止効果および心筋梗塞 後の重症不整脈に対する臨床的有効性が報告さ れている12)。Na+/K+一ATPase刺激が細胞内 カルシウムoverload抑制に関係し,ナトリウ

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ム,カリウム,カルシウム電流を減少させると 報告されている13)。硫酸マグネシウムは血液 潅流心筋標本対にして,用量依存的に洞房結節 自動能,房室伝導および心室内伝導,乳頭筋収 縮力をいずれも抑制し,冠血流量を増加させた。 イヌ心室性不整脈モデルに対しては,従来のカ ルシウム拮抗薬と同様に,アドレナリン不整脈 に有効であったが,冠結紮不整脈に対しては無 効であった。以上のように,マグネシウムはカ ルシウムに拮抗的に働くように見えることから “天然のカルシウム拮抗薬”と呼ばれることもあ る。しかし,ジギタリス不整脈に対しても有効 であったように,従来のカルシウム拮抗薬には ない薬効も示すことから,細胞内カルシウム動 態に及ぼす効果についてはさらに検討が必要で あると思われる。 V まとめ   カルシウム拮抗薬の抗不整脈作用には固有の 電気生理学的特性に基づくもの,およびカルシ ウムチャネル遮断の結果生じる二次的な作用に よるものとがある。最近,カルシウム拮抗薬と しての作用の他にナトリウムチャネルを抑制す るベプリジルや,純粋なカルシウム拮抗作用に 加えてIII群薬類似の有効性を示す薬物なども開 発されてきたので,新しい観点での分類が今後 必要になるかもしれない。 文 献 1)Singh 8N, Vaughan Wimams EM:. A薮)urth   class of antiarrhythm孟(=actionP Effect of vera−    pam11・n・uabain t・xicity,・R atrial and ven−    tricular intracellular potentials, and on other    features of cardiac funct云on. Cardiovasc Res    l972;6:109−119. ︶ 2 ︶ 3 ︶ 4 ︶ 5 ︶ 6 ︶ 7 ︶ 8 ︶ 9 10) 11) 12) 13) Hashimoto K, Haruno A, Ma£suzakl T, Sugiyama A, Akiyama K. Effects of anti− arrhythmic drugs on canlne ventrlcular arrhythmla models:Which electrophyslologic− al charaαeristics of drugs are related to their effectlverヒessP Card圭ovasc Drugs Ther 1991; 5:805−818. K.omori S, Ishii M, Hashimoto K. Anti− arrhythmiC effeCtS Of COrOnary vaSOdilatOrS On canine ventricular arrhythmia models・JPn J Pharmaco韮1985;38:73−82. Akiyama K, Hashimoto K。 Effeαs of lido− caine, dls・pyramide and verapamil on the in viv・triggered ventricu1鼓r arrhythmia ln dlgi− talize(i canine heart・JPn J pharrnacol l990; 53:419−426. Matsuzakl T, Haruno A, Hashlmoto K. Effects of gallopamll, a Ca2+channel blocker in models of ven宅ricular arrhythm1a ln dogs. Kur J Pharmacol l993;231:36距370. Suglyama A, Motomura S, Hashimoto K. Utl− 1izat量on of an isolated, bloo({perfuse(玉can量ne paplllary muscle preparatlon as a model to assess efficacy and advers呈ty of class I anti需 ar漁ythm童。 drugs・JPn J pharmacol l994;66: 303−316. Parratt JR. Blockade of c盆lcium channels: Effects on ve織tricular arrhy宅h斑童as ar重sing as段 result of myocardial ischemia and reperfu− sion. In:Parratt JR ed. control and man− ipuiation of calcium movement, New York: Raven Press,1985:367−385. Taira N.1)ifferences ln car(liovascular profile among calc蚤um  a廼tagon量sts・ Am J Cardid 1987;59:24B−29B. 橋本敬太郎.抗不整脈作用を有する新しいカル シウム拮抗薬.Cllnical Calcium l994;4:9−15. 飯沼宏之.カルシウム拮抗薬 塩酸ベプリジル. Current Therapy l993;11:199−202。 Coumel P. Safety of beprldil:From revlew of the European data. Am J Cardiol l992;69: 75D−78 D. AIωra BM. Ischemic heart dlsease and mag− nesium. Magnesium 1988;7:57−67. Adaniya H, Hayaエnl H, Hiraoka M, Sawano− bori T. Effects of magnesium on polymorphic veatr蓋cular tachyc我rd量a induced by aconotine・ JCardlovasc PharmacoB 994,;24,:72レ729.

参照

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