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新学習指導要領にみる外国語(英語)科と総合的な学習の時間の関係

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Academic year: 2021

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新学習指導要領にみる外国語(英語)科と

総合的な学習の時間の関係

The Relationships between English and Learning

by Doing Multiple Classes

A new Course of Study text was published in 2017. There are a lot of new educational items or teaching methods written in it which teachers have to try and/or use. Among them, one of the biggest changes was the need for combining English classes and Learning by doing multiple classes.

In this paper, key words for reading the new Course of Study will be explained and ideas to combine those two different classes when we use officially published English textbooks for junior high school students will be proposed.

キーワード:新学習指導要領、総合的な学習の時間、外国語科 1 新学習指導要領  大学の免許課程において、再課程認定に向けて、総合的な学習の時間の指導法をより明確 に、かつ詳細に授業の中で扱うことが必要となった。大学の課程において「必要となる」と いう意味は、教育現場における複数科目の実践がより重要視されていることである、と解釈 することができる。本学部の場合は、教職課程委員会での数回の議論を経て、授業としては 「特別活動の指導法」と「総合的な学習の時間の指導法」を一緒にした授業を2019年度入学 生から適用することという結論にいたった。  同時に、総合的な学習の時間が持つ意味や、他教科/他領域との連携という点を学習指 導要領に照らし合わせると、前記特別活動以外にも「教科との関連性」を考える必要性も認 められる(日本教材システム編集部:2017他)ため、本学部では英語科教育法においても、 総合的な学習の時間との関連が見えるような授業展開を一部実施することとした。  本論文は、この状況を受けて、新学習指導要領が求める外国語(英語)科と総合的な学習 の時間との接点を確認し、筆者の英語科教育法の授業における指導内容にも生かすことを目

石 渡 雅 之

Masayuki ISHIWATA

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的とする。尚、筆者の担当する英語科教育法は、学部の中で中学校教育実践を主として対象 としているものである(授業名称は英語科教育法Ⅰ・Ⅱ)ため、外国語科・総合的な学習の 時間、共に本論文においては中学校の学習指導要領に焦点を当てていくこととする。 2 中央教育審議会答申と学習指導要領  2015年に中央教育審議会より出された「チームとしての学校のありかたと今後の改善方 策について」「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について」「新しい時代の教 育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協議の在り方と今後の推進方策について」 の各答申、及び2016年に出された答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校、及び特別支 援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について」は結果として新学習指導要領の 内容にかなり大きな影響があったと捉えられている(時事通信出版局:2017他)。ここでは 以下に、これらの答申の特徴や、それらを受けた新学習指導要領の内容に見られる特徴を「総 合的な学習の時間」と「外国語科」に分けて整理することとする(注:以下考え方のまとめ に際しては、各答申と新学習指導要領を分析した他、東洋館出版編集部:2017を参考にし た)。 2‒1 各答申と学習指導要領から見られる総合的な学習の時間の考え方  改訂の基本的な考え方としては「探求的な学習を通して、よりよく課題を解決し、自己の 生き方を考えていくための資質・能力を育成することを目指すものであることを明確化」「各 学校の教科等横断的なカリキュラム・マネジメントの鍵となるよう、総合的な学習の時間の 目標は各学校の教育目標を踏まえて設定することを明確化するなど、各学校が設定する目標 や内容についての考え方を明示」した、とまとめることができる。  学習内容の改善については「各学校は総合的な学習の時間の目標を踏まえた探求課題を設 定するとともに、課題を探求することを通して育成を目指す具体的な資質・能力を設定する ことを明確化」「探求的な学習の中で、各教科等で育成する資質・能力を相互に関連付け、 実生活の中で活用できるものとなることを重視」することである、とまとめることができる。  更に学習内容の充実については「教科を越えた全ての学習の基盤となる資質・能力を育成 するため、課題を探求する中で後述するような活動が行われるようにする」とまとめること ができる。そして、ここに書いた「後述するような活動」とは次のようにまとめることがで きる。  ○協働して課題を解決しようとする学習活動  ○言語により分析(比較する、分類する、関連づける)し、まとめたりする学習活動  ○コンピュータ等を活用して、情報を収集・整理・発信する学習活動 である。この中で、2個目の○に注目すると、外国語科(英語)との接点がはっきりと見え

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てくる、と分析することが可能である。  また、学習指導要領の中の「第1 目標」を分析して黒上(2017: 17)が、  ……20年版では、横断的・総合的な学習と探求的な学習との関係について、「and」なの か「or」なのかが議論になってきた。学習領域的に、教科横断あるいは総合的な内容であ ることと、学習のプロセスが探求的であることがともに満たされる必要があるのか、どち らかだけを満たせばよいのかという問題である。文言通りに読み取れば、後者と解釈でき なくはなかった。しかし、29年版では両者が満たされなければならないと読める。つまり、 領域的には横断的・総合的な課題について学習し、その学習のプロセスが探求的であるこ とだ。この点が、明確にされたと理解してよい。  という解釈を述べているのは、総合的な学習の時間と各教科が関連する必要性を考える上 で、大変興味深い見解だと言える。 2‒2 各答申と学習指導要領から見られる外国語科(英語科)の考え方  改訂における基本的な考え方としては「目標において、①音声、文字、語彙、表現、言語 の働きなどの知識及び技能、②コミュニケーションを行う目的、場面、状況などに応じて自 分の考えや気持ちなどを伝え合う思考力、判断力、表現力等、③外国語の背景にある文化に 対する理解を深め、他者に配慮しながら主体的にコミュニケーションを図ろうとする学びに 向かう力、人間性等の育成すべき資質・能力を明確化」「児童生徒が、何ができるようにな るかという観点から、国際基準(CEFR)を参考に、小・中・高等学校を通した五つの領域 別の目標や言語活動等を明記」した、とまとめることができる。  学習内容の改善・充実としては「互いの考えや気持ちなどを外国語で伝え合う対話的な言 語活動を重視し、授業を外国語で行うことを基本とし、具体的な課題等を設定するなどして、 学習した語彙、表現などを実際に活用する言語活動を改善・充実」とまとめることができる。  ここでまとめた新学習指導要領における外国語科の改訂のポイントと、総合的な学習の時 間の改訂のポイントを同時にみながら、次章において具体的に中学校の教科書(英語)を用 いながら総合的な学習を意識した授業展開をする場合、どの単元でどのような展開が可能で あるか?という問題について考えていくこととする。 3 総合的な学習の時間が意識できる各学年の中学校英語教科書の展開  総合的な学習の時間において、学習内容の充実という観点で新学習指導要領をみると「言 語により分析(比較する、分類する、関連づける)し、まとめたりする学習活動」が特徴の 1つとして挙げられる」と前章で述べた。

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 1年生では早い段階で疑問文とその答えを扱うことになる。疑問文の種類として「一般動 詞」や「be 動詞」という動詞の種類に沿った指導が教科の視点からはよく行われるが、総 合的な学習の時間との関係で見ると、答え方の指導で共通点を見いだすことができると筆者 は考える。答えとしては通常「YES ∼」か「NO ∼」を扱うが、この活動を続けることで、 自己の意志に基づいた YES/NO の分類ができるようになると期待される。そしてこの期待 は総合的な学習の時間における期待と合致する点が十分にあると考えられる。つまり「言語 により分析─分類する」の項目が共通項として考えられるのである。  2年生では、比較表現を扱う Unit がある。ここは比較の概念や考え方を扱うところで、 文字通り「言語により分析─比較する」の項目が共通項として考えられるところである。  3年生では、関係代名詞が扱われる Unit がある。関係代名詞の場合、2文が示されそれ を1文にしていく説明や、関係代名詞の多くは、代名詞という言葉が示す通り、文の中に同 じ意味を持つ単語が存在する、という語句同士の関係づけを理解するための指導が行われる ことが多い。このようにみると、ここも「言語により分析─関係づける」の項目が共通項と して考えられる場所であることが分かる。  教科書の各ユニットは、教科の視点(この場合は外国語─英語)から教えることがほとん どであるが、教科を横断する観点を持つ重要性が増した「総合的な学習の時間」が学校教育 に入っている事実を考えると、総合的な学習を念頭におきながら教科の授業プランを考える ことも、新学習指導要領が導入されたこのタイミングでは、大変重要なことになってきたと 言える(注:このような教科実践と総合的な学習の時間とを関連づける考え方については「教 職研修1997年8月増刊号──総合的な学習の実践 No. 3国際理解教育の考え方・進め方」を 参考にした)。 4 カリキュラムマネジメントの3つの側面  第2章において、「カリキュラムマネジメント」という用語を用いて解説を行った。カリ キュラムマネジメントという語が意図するのは、「各学校には、学習指導要領を受け止めつ つ、子供たちの姿や地域の実情等を踏まえて、各学校が設定する学校教育目標を実現するた めに、学習指導要領等に基づき教育課程を編集し、それを実施・評価し改善していくことが 求められる。」(東洋館出版社 ibid: 295)ことである、という説明が一般的で分かりやすい。 そしてこの実現のためには中教審答申(2016年)で「新しい学習指導要領の理念を踏まえて、 次の3つの側面からとらえることが必要である」と説明されている。その3つとは①カリキュ ラムデザイン② PDCA サイクル③内外リソースの活用、である(東洋館出版社:ibid)。以下、 3つの内容を紹介するが、特に後述の①は他教科との連携の必要性を強く述べたものであり、 本論文においては重視したい内容である。

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 ①カリキュラムデザイン   各教科等の教育内容の相互の関係で捉え、学校教育目標を踏まえた教科等横断的な視点 で、その目標の達成に必要な教育の内容を組織的に配列していくこと。  ここを見ると各教科を相互横断的な関係で捉える重要性が書かれている。この点からも改 めて、総合的な学習が、各教科と今後密接に連携をとっていく必要があることが分かる。  ② PDCA サイクル   教育内容の質の向上に向けて、子供たちの姿や地域の現状等に関する調査や各種データ 等に基づき、教育課程を編集し、実施し、評価して改善を図る一連の PDCA サイクルを 確立すること。  ③内外リソースの活用   教育内容と、教育活動に必要な人的・物的資源等を、地域等の外部の資源も含めて活用 しながら効果的に組み合わせること。 5 縦のつながり──小学校から中学校への架け橋をどう考えるか?  外国語科、総合的な学習の時間のあり方について、新学習指導要領を分析していくと、こ れらの教科・領域は、お互いに接点を持つだけではなく、同時に小学校と中学校、あるいは 中学校と高等学校のように学校種を超えて共通する学習目標が存在することが確認できる。 このような事実を踏まえれば、教科を横断する横のつながりと同時に、校種を超える縦のつ ながりにも意識を払いながら実践を行っていくことも必要になると言える。  外国語科から縦のつながりを考えるアプローチとして、中嶋(2009: 39‒40/63‒88)の理論 展開、授業実践例は大変興味深い。氏は総合的な学習の時間が教育現場に登場した2000年 前半から既に総合的な学習と外国語科とのつながりに注目した実践の展開や理論の分析を 行っている。そして、キーワードとしては「センス・オブ・ワンダー」「シュタイナー教育」 「グローバル教育」「アドラー心理学」「ブリーフセラピー」「ホールランゲージ」を挙げ、他 者との協力、学びのプロセスをどのように作るのか?という問題に積極的に立ち向かうこと の重要性を述べている。  この理論的なキーワードに加え、教育実践例として「音読授業」「to 不定詞の授業」「関係 代名詞の授業」「統合的な英語ディベート授業」などを詳細に紹介している。氏の実践例は 中学校の外国語科におけるものであるが、授業の大きな目標とするところは(文法的なター ゲットを除き)小学校や高等学校にも共通するものであると学習指導要領の各教科の文言か ら判断が可能である。このような総合的な学習と外国語科の共通目標を意識した実践例を小 学校─中学校─高等学校と続けていくことは、学校種を超えた授業の強いつながりに結びつ くと考えられ、新学習指導要領導入後も多くの同様の実践が求められると筆者は考えている。

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6 今後の実践に向けて  本論文では、中央教育審議会各答申、及び新学習指導要領の内容を確認しながら「総合的 な学習の時間」と「外国語(英語)」の接点になるポイントを述べてきた。その上で、接点 となりうる具体的な指導箇所を簡単に紹介した。今後、新学習指導要領を見ながら、多くの 具体的な指導例を考え出し、教科を横断させることを目指した教科教育の指導を考えなけれ ばいけないと感じている。  また新学習指導要領については、教科を横断する、校種間のつながりを考える、というこ と以外にもたくさんの教育改革内容が提案されており、それらを1つ1つ意識し、学生に伝 える教職課程の授業運営が今後求められると理解している。 参考文献 中央教育審議会答申(2015) 「チームとしての学校のありかたと今後の改善方策について」 中央教育審議会答申(2015) 「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について」 中央教育審議会答申(2015) 「新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協 議の在り方と今後の推進方策について」 中央教育審議会答申(2016) 「幼稚園、小学校、中学校、高等学校、及び特別支援学校の学習指導 要領等の改善及び必要な方策等について」 時事通信出版局(2017) 『教職教養の演習問題』東京:時事通信出版局 時事通信出版局(2017) 『教職教養の要点整理』東京:時事通信出版局 笠島準一編(2017) 『New Horizon1/2/3』東京:東京書籍 黒上晴夫(2017) 「資質・能力の三つの柱と目標の改訂」『中学校新学習指導要領の展開』(田村学 編)東京:明治図書 中嶋洋一(2002)「他者との協力、学びのプロセスをどうつくるか」三浦孝、弘山貞夫、中嶋洋一(編 著)『だから英語は教育なんだ』39‒40頁 東京:研究社 ────(2002)「英語の授業でクラスを変える」三浦孝、弘山貞夫、中嶋洋一(編著)『だから英 語は教育なんだ』63‒88頁 東京:研究社 日本教材システム(2017) 『平成27年×平成29年 中学校学習指導要領新旧比較対象表』 奥田眞丈(監修)(1997) 『No. 3 国際理解教育の考え方・進め方』(「総合的な学習」授業実践マニュ アル全6巻──教職研修8月増刊号)東京:教育開発研究所 東洋館出版社編集部(2017) 『中学校新学習指導要領ポイント総整理』

参照

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