児童に於けるPersonal Spaceの発達と性差注1
は じ め に
人 と人 との間にある空間は単に物理的空間であ るばか りでな く,また人間的な歪みをもった空間 で もある。Little(1965)は この人 と人 との問に介 在す る空 間を personalspaceと呼び, これを 「ある特定の個人を取 りま く空間であ り,そ の中 で他人 との相互交渉 の大部分が生起す る領域 であ る」 と定義 した。彼は この定義に基づ い て per -Sonalspaceを研究 して きた (Little,1965,1968, Littleら,1968)注2.Kuethe(1962a)は,2つの 対象を 「この2つは同 じ部類に属す る」 と教示 し て被験者に与 えるとい くつかのSOCialscllema あるいはplanがっかわれ るとい う事実 を兄 い出 した。 この対象が人であ った り,人 のシンボルで あった場合,そ こに使われた シ-マは社会的なシ エマと考 えて よい と思われ る。彼は この社会的 シ -マ (SOCialschema)を様々な側面か ら研究 し て きた (Kuethe,1962a,1962b,1963,1964a, 1964b)注30 Little (1965)は この社会的 シ-マの概念 と方 法を援用 しなが ら自分 自 身 のpersonal space に関す る研究を展開 してい った。 この意味では, Littleのい う personalspace とは SOCial personalschemaであるといった方が よ り適切 である と 思われ る。 personalspaceは 個 々人 の内部に於ては SOCialschemaとして形づ くら れてい るのである。 しか し, このシエマが個 々人 の発達のプロセス の中で どんな風に形成 されてい くのかについては まとま った研究がな く,あま り詳 しくは分 ってい ない。 本研究では社会的 シ-マ SOCialscllema として のperSOnal spaceの概念が発達的にみ て どの ような プロセスを経て形成 されてい くのか について研究 したい と思 う。
井
原 成
男
本研究 の目的は perSOnalspaceschemaの 発達 と,それが何才で確立 され るかをKuetheと Littleに よって発展 させ られてきた方法を使 って 明らかにす ることである。 対人距離 と知 り合いの程度 (strangeness)に は反比例 の関係があるのではないか とい う仮説 を 使いなが ら,我 々は次のよ うな 目的を 追 求 し た い。(a)性差 の形成は何才か。(b)シルエ ットを使 っ た投影的方法が Hall(1964)のい うpersonal
spaceについての距離の次元に対応 しているか どうか。荘 4
万
法
被 験 児 本研究で対象に したのは東京都江東区立第二砂 町小学校の児童である。 4年生43人 (男児16名 , 女児19名),5年生39人 (男児17名,女児22名), 6年生43人 (男児21名,女児22名) の合計111人 であ った。 この3学年を対象 として選 ん だ の は Jones&
Aiello(1973)に よるものである。彼 ら は性差が5年生で確立す ると考 えている。 実 験 材 料 本実験で使われた材料は以下の通 りである。 Iカー ドボー ドシ- ト。10枚の18×25cmの カ ー ドポ- ドシ- ト。(1枚は練習用である。)各条 件を説 明す る教示が カー ドボー ドの上に記入され ている。 教 示 条件 (Condition)1. この2人は初めて会い ました (Stranger)0 2人 とも男の人(Male)で す。 条件2.この2人は知 り合いです (Acquaint -ance)0 2人 とも男の人です。 条件3.
この2
人は仲の良い友人 ど う L で す - 51-(Friend)0 2人 とも男の人です。 条 件4. この2人は初めて会いま した。 1人は 男の人(M ale) 1人は女の人(Female)です。 条 件5. この2人は知 り合いです。 1人は男の 人, 1人は女の人 です。 条件
6.
この2
人は仲の良い友人 ど うLです。 1人は男の人, 1人は女の人です。 条件7. この 2人は初めて会いま した。 2人 と unfamiliarlly I familiarity 手 続 き それぞれ の被験児は 自分の クラスで,集団法に よってテス トされた。実験の説 明を したあ とで, 実験者はそれぞれ の被験者に実験材料を渡 し,吹 のように教示 した。「ここに20枚 のシルエ ッ トが あ ります。 10枚は男の人,あ との10枚は女の人で す。」練習のあ とで被験児に次 の ように話 し た。 「この2人は5分 ぐらい話を します。 カー ドの上 Tablel.Breakdownofsituation. Se
x
o
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j
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s
Male-A.Iale Maze-FemaleFemale-Fehale Stranger Conditionl 4 7Acquaintance 2 5 8
触
Fig.1. Maleandfemalefigures(Kuethe'smethod)・
も女の人 (Female)です。 条 件8. この 2人は知 り合いです。 2人 とも女 の人 です。 条件9. この 2人は仲の良い友人 ど うLです。 2人 とも女の人です。 Ⅰ 糊
Ⅱ シルエ ッ ト(M aleand femalefigures)0 男性の姿をあ らわ した シルエ ット10枚 と女性の姿 あ らをわ した シルエ ッ ト10枚。 に書いてあることばをみて よ く理解 してか ら線の 上に シルエ ッ トを貼 りつけて下 さい。好 きな よう に貼 りつけてか まいません
。
」各 カー ドボ ー ドシ ー トには線が書かれている。 この線はそ こが地表 面であることを しめ し,その上 に各被験児は シル エ ッ トを立てて貼 りつけるのである。結
果
結 果 Ⅰ 4年 :Table2ほ 4年生における全体的な傾向 の結果を しめ した ものである。各細胞 の数値は2 つのシルエ ット間 (身体の中心か ら中心間) の距 離の平均値である。知 り合 い の 程 度 (st range-ness)の要因が有意であった(F-ll.29,P< .01)0 Table 2か ら分かるように2着問の距 離 と知 り合いの程度 (strangeness)の問には反比例の 関係がある。性差(sex ofobject)の要田は有意 でなか った。 しか し,平均値 の傾 向か らみると,Table2. MeanscoresofinterpersonaldistancesforGrade4(lotal).
2着間の距離は男性 と女性の組み 合わや (M-F)において最 も大 き く女性同志の組 み合わせ (F-F) において最 も小 さい ことが推測で きる。 〔M-F>M -M > F-F〕 Table3は男児についての結果 であ り,Table4は女児について の結果である。 男児については知
Table3. MeanscoresofinterpersonaldistilnCeSforGrade4(male).
Table4. MeanscoresofinterpersonaldistancesforG rade4(female).
Tilb]e5. MeanscoresofintcrpcrsonaldistancesforGrade5(total).
Table61MeanscoresofinterpersonaldistancesforGrade5(male).
Table7. MeanscoresofinterpersonaldistancesforGrade5(femele).
しか し,男児につ いて も女児につ いて もい えることは ,性 の要 因 に ついて男性 と女性 の組 み 合 わ せ (M-F)において個 体間距離 が最 大であ り,女性同志 (F-F)の組 み合わせにおいて最小 であ った と い うことである。 5年生 :Table5は 5年生 につ い て の結果 である。 知 り合い の程 度 の要因 のみが有意 であ った (F -16.99,P< .01)02着 問 の距離 と 知 り合い の程度 の問に反比例 の関 係が あ った。Table6は男児につ いて の結果 ,Table7は女児 につ いて の結果 である。 男児につ いて も女児について も知 り合いの程度 の要 田のみが有意 であ った (m ale :F-4.86,P< .01,femal e:F-16.39,P< .01)。 男児につ い て も 女児について も,対 象 の性差 の要 因は有意 でなか ったが , 2着 問 の 距離 は男性 と女性 の組 み 合 わ せ (M-F)に おいて最大 であ り,女 性 同志 の組 み合わ せ (F-F)にお いて最小 とい う傾 向 を み せ た。 〔M-F>M-M> F-F〕 各条件間 のTテス トの結果 を し め した Fig.2 か ら も同 じ傾 向を 読 み とれ る。 5年 生 は大 まか にみ て 4年生 と同 じ傾 向を もってい る と結論で きそ うで あ る。 6年生 :Table8は 6年生 につ いて の結果 である。 知 り合い の程 皮 (strangeness),性 の要 因(sex) ともに有意 で あ っ た (st range-ness:F-82.79,P< .01,sex:F -13.20,P< .01)。しかし男児につい ては知 り合いの程 度 の要 田のみが
り合いの程度 (strangeness)の要因のみが有意 有意 であ り(F-22.66,P< .01)<Table8,Table
であ った(F-7.03,P<.01)。女児については知 り 9>,性 の要 田については有意 でなか った。Table
合いの程度 (strangeness)対象の性差 (sex of 8,9,10か ら対 象の性について,男性 と女 性の組み object)の両要因 ともに有意であった (strange一 合わ せ (M -F)に お い て 2着 問の距離 は最大 とな ness:F-7.45,P<.01,sex :F-5.79,P
<.
o
l
)
。
り, 男 性 同 志 の 組 み 合 わ せ (M -M )に お い て 最 小-+Numberscorrespondtothosefoundin Table1
●◆- p<.02 一・・・→p<.05
T (total) M(maleSs) F(femaleSs)
Fig.2. T-testbetweencorrespondingconditionsinGradeS・ Table8. MeanscoresofinterpersonaldistancesforGrade6(total).
Table9. MeanscoresofinterpersonaldistancesforGrade6(male).
TablelO・ MeanscoresofinterpersorLaldistaricesforGrade6(female).
Fig.3.T-testbetweencorrespondingconditionsinGrade6.
となる傾 向のあることが分か っ た。〔M-F> F-F>M-M〕男 児について も女児について もこ の幌向は同 じである。 4年生 と5年生では男性 と女 性の組み合わせ(M-F)での対 人距離が最大で,女性同志(F-F)の対人距離が最小であった ことを振 り返 ってみると
,6
年 生では男性同志の組 み 合 わ せ (M-M)と女性同志の組み合わ せ (F-F)の順位が入 れ 変 っ ていることに気づ く。 この理 由 について考察するために Fig.3 か ら各条件間のT
テス トの結果 をみてみ よ う。そ うす ると,性 の要田について,男性 と女性の 組み合わせ(M-F)と男性同志 の組み合わせ (M-M),あるい は男性 と女性の組み合わせ (M -F)と女性同志 (F-F)の間 にのみ有意であるこ と が 分 か る。つま り,条件(Condition) 1と条 件4 (1⇔ 4),条件4 と条件7 (4く→7)にのみ有意 なのであ って,条件1と条件 7 (1← 7) の間では有意ではな い。 こ うい う理 由で我 々は男性 同志の組み合わせ(M-M)と女 性 同志の組み合わせ(F-F)を 傾向 としてのみ比較す ることが で きる。 これ までにのべた結果 か ら対象の性差の要因は小学6 年にな っては じめて,そ して男 性 と女性の組み合わせ (M-F) とそれ以外 の組み合 わ せ ( M-M,F-F) との問にのみ存在 し は じめると結 論 で き る。 〔 M-F>M-M,F-F(cf.Jones&
Aiello,1973)〕 6年 男児について 相 互 作 用 が有意 で あった (F-49.76,P <.01)。これは,上 でみた傾向が見知らぬ人(Stranger),知 り合い (Acquaint -ance),仲のよい友人(Friend)に対 してそれぞれ 異 っていることに よるものであろ う。対人問の躍 動 ま見知 らぬ人(Stranger)としての男性 と女性 (M-F)の組み合わせにおいて最大であるが,仲 の良い友人(Friend)としての男性 と女性の組み 合わ塘(M-F)においては最少になっている。6年 男児は性のちが う見知らぬ人同志を より離れて話 していると感 じ,性のちが う仲の良い友人同志は より近づいて話す と考えているのである。 この傾 向は女児の被験者群においては見 られなか った。 いってみれば, 6年になると男児の被験者 と女児
Tablell. ResuIIsofT-testingbetweenmaleandfemaleSsundereachcondition.
++p<.005 ● p<.01
Table12. Actualdistancesintowhichthepaper6guredistanceslVereConverted. Condition No. Grade4 5 6
1 100 146 101 2 59 GLI 49 3 33 41 39 4 110 192 148 5 65 82 64 6 41 63 48 7 87 131 108 8 61 81 51 9 36 38 38 qiy
0
50 100 150 @Fig・4・ Hall'Sconceptualizedpersonalspacezonesshowingwhereeach conditionfallくGrade4).
Ⅰ. intimatezone(farphase)
II. casual-personal2:One(closephase) 11Ⅰ・ casual-personalzone(farphase)
lV. social・consultativezone. - 55-の被験者では反応が有 意に異 って くるとい う ことなのである。
3
学年を通 じてみ ら れた一般的傾向 知 り合いの程度の要 因については3学年 と もに有意であ り,それ は男児について も女児 について も同様であっ た。 したが って,対人 問の距離 と知 り合いの 程度の間には反比例の 関係があると結論で き る。 性差の要田は6年全 体, 6年女児, 4年女 児において有意であっ た。 したが って,男性 と女性の組み合わせで の対人距離を最大に し て しま う傾向は特に女 児において顕著である と結論できる。一万 , 6年の男児において性 差 の要因が 有 意 で な く,知 り合いの程度 と 性差の要因問の相互作 用のみが有意であった とい う事実は,上の結 論をもうひ とつ別な方 法で支持 しているとい えよう。 当児は2つのシルエ ットを仲の 良 い 友 人 (Friend)としての男性 と女性の組み合わせ(M-F)については よ り近 づけておいてい る。 これ らの ことか ら6年生にお いて被験児の間に性差が確立 された こ と が 分 か る
占
春吉 果 I Tablellは各条件下の男女間 (被験児)のTテ ス トの結果である。 4年生に も5年生に も有意差 は認め られなか ったが, 6年 に お い て は 条 件 (condition)2と条件 6が 1% レベルでそ して条 件4, 5,7
においては0.5% レベルで有意であ る。 条件1は見知 らぬ人で男同志 (St rangerxM-M),条件2は知 り合いで男同志(Acquaintancex M-M),条件4は見知らぬ人で男性と女性 (Stra n-gerxM-F),条件6は仲の良い友人で男性 と 女 性(FriendxM-F),条件7
,見知 らぬ人で女同志 (StrangerxF-F)である。 この結果か ら,被険 児の男女差は,見知 らぬ人 と勇性 ・女性の組み合 わせ(M-F)を軸に してお こっているといえよう。Table9,TablelOか ら,知 り合いの程 度 に ついて も対象の性差について も,対人問距離は男 児 よ り女児の方が大 きい ことが分かる。 したが っ て,6年生において対人間距離の性差が明らかにな り,この傾向は知 り合いの程度(Strangeness), 対象の性差 (sex ofobject) の両要因について
0
50 100 150 顕著になると結論づけることができよう。 結 果 Ⅱ Table12は シルエ ッ トに よってえられた距離を 実際 の物理的距離に換算 した ものである。Table 12か らFig.4, 5, 6が えられた。 Ⅰは密接距離 (遠方相)Ⅰ.個体距離 (近接相)Ⅲ.個 体 距 離 (遠方相)Ⅳ.社会的距離である。 Fig.4か ら分かるように条件 1, 4,7 (見知 らぬ人Stranger) は個体距離 (遠方相)に,条 件2, 5, 8(知 り合い Acquaintance)は個体 距離 (近接相)に,条件3, 6, 9 (仲の良い友 人 Friend)は密接距離 (遠方相)に 入 っ て い る。< 4年> Fig.5か ら条件 1, 4,7 (見知 らぬ人St ran-ger)は社会的距離 (近接相)に,条件 2, 5,8 (知 り合い Acquaintance) は個体距離に,条 件3, 6, 9(仲の良い友人 Friend)は密接距 離 と個体距離 (遠方相)に入 っていることが分か る。< 5年> Fig.6をみると,条件 1,4,7(Stranger)は 個体距離 (遠方相) と社会的距離,条件2, 5, 8 (Acquaintance) は個体距離 (近接相),条 件3
,6,9
(Friend)は密接距離にそれぞれ入 っ ている。< 6年> 5年, 6年において他の領域に投入 しているの は条件4, 5, 6であ り,これは性のちが う組み @ Fig・5・ Hall●sconceptualizcdpersonalspacezonesshowingWhereeach conditionfallくGrade5). O Fig.6. Hall'8COnCePtuatizedpersonalspacezonesshowingwhereeach conditionfallくGrade6). - 56 合わせつま り男性 と女性の組み 合わせである。 結果か ら,被験児は見知 らぬ 人(Stranger)とは社会的距離 あるいは個体距離 (遠方相) で 話 をし,知 り合 い の 人 (Ac-quaintance)とは個体距 離 で 話 し,仲の良い友人(Friend) とは密接距離 (遠方相)で話す と考えているとい う結論をひ き だ して よい ように 思 う。 し か し,それが性のちが うシルエ ッ トの組み合わせである場合には 他の距離滞に とびだ し,対人問 距離が最大になって しま うので ある。
考
察
本研究 の結果を以下のよ うに要約す ることがで きる。 知 り合いの程度について 各学年について対人距離 と知 り合いの程度 の間 には反比例の関係のあることが分 った。つま り, シルエ ッ ト問の相互作用 の距離は2老問の知 り合 いの程度 の知覚に よって影響を うけるのである。 2つの シルエ ッ トが 「仲の良い友人」 と見な され た場合有意に接近 して関係 し, も し 「見 知 ら ぬ 人」 と見 なされた場合には有意に遠 ざか って関係 す るとい うことが予想 され る。 対象 の性差に よって も違いが生 じることが分 っ たので,personalspaceに放ける性の要因につ いて も論 じなければならないだろ うと思 う。 この 点につ いて次にのべてみたい。 対象の性差と被験児の性差について 性の要因について,(1)この要田が6年生におい て有意になること(2)異性 とよ り距離を とって交渉 す ることが女児の被験者群において殿著であると い う2つ のことが分 った。反対に,男児について みると異性で見知 らぬ人 とは よ り距離を とって交 渉す るが,異性であって もそれが仲の良い友人で ある場合には よ り接近 して交渉す るとい う結果が えられた。つま り,異性に対す る反応 のシ-マは 男児 と女児で臭 っている。 性差 について調査 した研究 の多 くは異性同志が より接近 して交渉す る傾向があることを指摘 して いる(Evans,1973)0Kuethe(1962,1964)もまた 男性 と女性の組み合わせ のシルエ ッ トは よ り接近 して置かれ る傾 向があるとしている。 しか しなが ら, これ らの研究はアメ リカの文化圏での成人に よって えられた結果であるとい うことを思い出し ていただ きたい。 本研究では男性 と女性問の対人距離は最 も大 き い (異性同志は より距離をおいて交渉す る) とい ラ,前述 の傾 向 とは逆 の結果がえられたが, この 結果については2つの解釈が可能である。(1)日本 での PerSOnalspaceのパターンはアメ リカ文化でのそれ とちが っている。(2)子 どもの perSO nalspaceのバク-ソは大人 のパ ターンとは異 なる。子 どもでは,異性の対象 との問に とる対人 距離はその対象のもっている関係性に よって しだ いに分化 し,その後,大人 のperSOnalspaceの バク-ソに同化 してい くとい う2つ の 解 釈 で あ る。 これについては(2)の可能性が大 きい。 とい うの ち, 日本での大人の被験者について の 結 果 は6 年男子 の傾向に もみ られた ように,ア メリカ文化 でのパ ターンと同 じ傾 向をみせたか らである。 し か し,大人 の被験者 の数が少なか った(N -3)の で結論 を下す ことはで きない。 さらに被験者 の数 を増や して組織的な突験を行 う必要がある。
Meisels& Gurdo(1969)は 「子 どもは成長 す るにつれて社会的状況を以前 よ りも っ と上 手 に,快適に処理できるようにな り;そ の結果異性 - の関心を深めてい くのである」 とのべている。 彼は異性 どうしの対で,女児が異性 との問に よ り 大 きな距離を とって しま うとい う結果について, 性役割 の同一視 とい う社会化のプ ロセスがそ こに 働いていることを指摘 している。
Heshka& Nelson(1972)が説 明す るところ に よれば,女性が男性 よりもず っと大 きく相手 と の間に距離を とるとい う事実は,男性には攻撃的 であることや 自発的であることが奨励 され,女性 には用心深 くかつ慎み深い ことが よしとされ る と い う社会化のプロセスの観点か ら解釈す ることが できるとされている。本研究 の結果に よって も女 児は男児 よ り相手 との間に より大 きな距離をとる とい う事実が確認 された (結果 Ⅰ)0 シルエ ッ トによって得 られた距離 と実際の距離 との対応 シルエ ッ トに よってえられた距離が実際 の物理 的距離に対応 しているとい う事実に よって,シル エ ッ トに よる結果は実際 の空 間行動を反映 してい るとい うことが示 された。すなわ ち,被験児は仲 の良い友だち と密接距離で話 し,見知 らぬ人 とは 個体距離 (遠方相)あるいは社会的距離で,そ し て知 り合い とは個体距離で話す のである。 これ は Hall(1964)の4つ の距離帯におけ る実際の空 間 行動を反映 している。 - 57
-ちなみに,密接距虻 (遠方相)は非常に親密な 関係のお こる距離 ,個体距離は とて も親 しい人 と の間に とる距離,個体距離 (遠方相)は個人的な 関心事について話 され る距離,そ して社会的距離 は非個人的 (impersonal)な仕事や社会的交渉に たい して とられ る距離帯である。 persomalspaceの確立
最後に personalspaceは何才で確立 され る か とい う問題に簡単に 触 れ て み た い。 Evans (1973)は児童に於け るpersonalspaceの研究を 概観 して,personalspaceが確立す るのは
1
2
才 であると結論 してい る。本研究で も,(1)6年で性 差が有意になる,(2)6年 の傾向は大人のパターソ と同 じものに近づいている,(3)6年において安定 した結果がみ られた とい う3点を板 拠 に し て, personalspaceは小学校6年生において確立す ると結論 してお こ う。結
論
結果か ら以下 の結論が えられた。 (1) 対人問距離 と知 り合いの程度 の問には反比例 の関係がある。 (2) 対象 の性差 の要田は6年生で有意になる。 (3) シルエ ッ トに よる対人距掛 まその対が異性同 志であるとよ り大 きくな る。 この傾向は特に女 児の被験者群において顕著だ った。 (4) 男児の被険老群について,異性に対す るとき の対人距離は対象 の特性に よって (対象が見知 らぬ人であるか仲 の良い友人である か に よ っ て)変化す る。personalspaceの分化が6年 においてお こる。 (5) 女児は男児 よ り2着間の距離を大 き くとる傾 向がある。 (6) シルエ ッ トを使 った結果は実際 の物理的距離 と行動を反映 しているよ うに思われ る。 (7) personalspaceは小学校6年生において確 立す る。要
約
personalspaceの発達 を小学校 4,5, 6年 の男児54名,女児63名について調査 した。被験者 は カー ドに記入 されたい くつか の状況について好 きな よ うに,シルエ ットに した人物像を貼 りつけ て対人距離をつ くった. 主 な結果は次のようなものだ った。(1)対人距離 と知 り合いの程度 の反比例の関係が4, 5, 6年 で成立 している。(2)対象の性差 の要因は6年にお いて有意になる。(3)シルエ ッ トを使 って えられた 結果は実際 の物理的距離 と空 間行動を反映 してい る。結果について,性役割 の同一視 とい う社会化 のプロセスがお こっているとい う観点か ら考察が 加 えられた。 参考.引用文献Evans,G.W.& Howard,R.B,1973 Personal space,Psychol.Bull.,80,334-344.
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日本教育心理学会第17回総会発表論文集114-115. 井原成男 1975bPersonalspaceの発達的研究(2),
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注
1.春稿は(Ihara,N.1978TheDevelopmentof PersonalSpaceinJapaneseChildren,Jour -nalofChildDevelopment,vol.14,42-51.) 杏
日本文に書 き改めた ものである。文中の表や図は原 文 の まま用いた。 2. Little(1965)はpersonalspaceを 「一連 のの びちぢみ (auctuate) す る同心円であ り,それぞ れの円はある特定の型 の相互作用に必要な領域 であ る。 またその中で他人 との相互作用 の大部分がお こ る個人の身のまわ りの領域である」 と定 義 し て. personalspaceの社会的相互作用の面を強調 して い る。 3. Kuethe(1962a)は
,
「個人は種 として.民族 とし て,また宗教をもってい るとい う理由で,他の人間 と つ るんだ認知的一単位 として考え られ る」(傍 点 引 用老) とし,「社会的知覚に於ける原理を形成 し て い るこの単位は,それが人間対象 も含んだ ところの 状況を構成できるよ うに楼能 している限 りに 於 て "社会的 シ-マ" あるいは "反応セ ッ ド として考 えることができる」 として,社会的 シ-マの概念を 定義 した。4
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Hall(1959,1966)は communicationの中で 空間が果たす非言語的な表現の働 きに注 目し,個人 を中心 として同心円状に拡が る領域を区切 る,質の ちが った4つの距離帯を設定 して, これに,近い方 か ら順に密接距離 ・個体距離 ・社会距離 ・公衆距離 と名づけた。彼は最初, この距離帯を,二人の間の 声 の質の変化す る場所を目安 として8つの距離帯を も うけていたのだが,後になって,文化的要因を重 視 し,さらに対人的な相互作用に注 目す るとい う観 点か らこれを上述 した4つの距離帯に改変 し,それ ぞれの距離帯に近接相 と遠方相をもうけ,結局8つ の距離帯を設定 したのである。彼はさらにこの距離 帯の質を区別すべ く,距離帯がちが うことに よって 筋覚,温度感覚.喚覚.視覚,発声聴覚が内容的に どの ように変化 してい くか とい うことを詳細に渡 っ て調べ表にしている(1966,177-178)。 ここでは, この距離帯が異なることに よって,相互作用の質が どのように変化 して くるか とい うことについて説 明 しよう。 まず,(1)密接距離一近接相 (0-15cm)は 最 も触覚が使用 され る距離帯である。 これは極めて 密接な関係のい となまれ る距経である。彼は これを 愛執 慰め,保護の距離であると呼んでいる。逆 に この距虻は格闘の距離でもあるO即ち,この距離帯 は身体的接触 (involevement)の可能性が最大の 距離なのである。(2)密接距離一遠方相(15-45cm) は身体的接触の可能性は手な どに限 られてい るが, なお身体的 involvementの大きい 足巨雄 帯 で あ る。ffallは この密接距離 の使い方が文化によって 異なっていることを強調 している。(例えばア メ リ カ人は他人が この範囲に入 って くると不快感を感 じ るが, アラブ人はそ うでない とのべてい る。)次に. 彼は個体距離 をと りあげている。 これは生物が自然 な状態 で相手 との間に保つあわ(bubble)のような ものである。 この距離帯(3)の近接相(45-75cm)は 自分の手足で相手に何かを しかけることのできる距 離帯である。 この距離は極 く親 しい人 々の間でとら れ る距離 であるとい うことか ら密接距離 の遠方相 に も似た性質をもっている。「妻が夫の個体距雄 帯 の 中に入 ってきても何んのことはない。 しかし他の村 人がそ うす ると話は全 く別 である」 とHallは説 明 してい る。(4)次に個体距灘 の遠方相(75-120cm) は,
「個人的な関心や関係を論議す ることができる」 距離であるとされている。 この距離 の外にでると身 体的支配は不可能になる。 この距離帯 と次の社会的 距離 の間に 「支配の限界」がある。(5) 社会距離 の 〔図1〕 Hallによる8つの距離帯 Cln 2171055甘侶 鼎 i:::i:.:::::';:'::::I::I::::I;:'.i::,..: 描 .::I:.''i:::i::::;:;i:i'::享.I.:::-:::::::;鶴 首 ・'..::蛋)'磯 一..′ヽ (普.(潤 .、 、ヽヽ.逮)近)ヽヽヽ(社 : .::':':::::':::::.:::::;':::::I::■.:一●::''.◆■..■.:..: :::::::..:. I...‥'.;I.;:;';::.::.;;;;::I.A.'.:;;:'::;;:.;':I:,
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