Kobe Shoin Women’s University Repository
Title
マチヤの空間論理(1) : 住空間の史的展開過程に関する研究
(その 18)
Author(s)
島村 昇(NOBORU Shimamura)
Citation
生活科学論叢(Review of Living Science)
,
No.35:1-19
Issue Date
2004
Resource Type
Bulletin Paper / 紀要論文
Resource Version
URL
Right
マ チ ヤ の 空 間論 理(1)
住 空間の史的展開過程 に関す る研究(そ の18)
島
村
昇
1.マ チ ヤ空 間 の 薮 理 論 -ゐ り 山 3 4 一 一 一 一 -■ 1 1 1 1 〒 唖 ■ 1 5 卍 口 ' -1 ︻ -⊥ ■ 目 マチヤの来歴 街 区の変 容過稚 町家 の空 閲諸量 理論値 と現状値 宅地ユニ ッ トと宅地 型 宅地型 と街区内戸 数次
2.マ チ ヤ 空 間 の 意 味 論 2-1 2-2 2-3 2-4 2-5 2-6 ミ チ と トオ リ カ ド と ニ ワ オ モ テ と カ ド カ ドグ チ と ウ ラ グ チ ク チ ・オ ク とオ モ テ ・ウ ラ ニ ワ と オ ウ エ序
本 稿 は、 本 学 の2003年 度特別 研 究 助 成 を受 け て 行 っ た研 究 の 一部 で あ る 。 マ チ ヤ研 究 は 、 マ チ ヤ 発 展 史 の 主軸 を成 す 京 マ チ ヤ か ら始 め る の が至 当 で あ る と考 え られ る の で 、 本 稿 は 京 マ チ ヤ を 研 究 対 象 と して い る 。研 究 の 目的 と して は 、 街 路 、街区 、 町 、 マ チ ヤ4者 の 関 係 を 数 理的 に 解 明 す る こ と、 い ま一 つ は4者 の空間 が 住 人 に どの よ う に認 知 さ れ て い た か を空間 呼 称 か ら 判 定 し空間 の 意 味 をた ず ね る こ とで あ る 。 マ チ ヤ そ の もの の空間 構 成 原 理 につ い て は次 稿 に ゆ ず る 。 ユ1.マ チ ヤ 空 間 の 数 理 論 1-1マ チ ヤ の 来 歴 マ チ ヤ と呼 ば れ る住 居 種 が あ る 。農 村 部 の ム ラ ヤ(村 屋)や 山 間部 の ヤ マ ガ(山 家)、 海 浜 部 の ハ マ ヤ(浜 屋)な ど と対 比 して使 用 され る語 で あ り、 今 日い う と こ ろ の都 市 住 居 で あ る 。 したが っ て 、 マ チ ヤ とい う住 居 種 の特 色 はそ の都 市 性 に あ り、都 市 の 発 生 と と も に 古 い。 マ チ ヤ が 巷 舎 、 町 屋 、 町 家 な ど と して表 記 され る の も古 い 来 歴 を もつ か ら で あ る 。 巷 舎 は古 代 の マ チ ヤ で 年 中行 事 絵 巻 に 、 町 屋 は 中世 の マ チ ヤで 洛 中 洛 外 図 屏 風 に 、 町 家 は近 世 以 降 のマ チ ヤ で 各 種 の 史料 や 保 存 物 件 に具 体 的 な姿 を み る こ とが で き る[図1]。 マ チ ヤ の都 市 性 は都 市 の 成 立 を前 提 と して い る 。 わ が 国 の代 表 的 な都 市 は 京(ミ ヤ コ)で あ り、 京 の マ チ ヤ が マ チ ヤ発 展 史 の 主 軸 を成 す 。林 屋 辰 三 郎 『町 衆 』 (中 央 公 論 社 、1964年)で は 、 京 の 居 住 民 を 京 童(古 代)、 町 衆(中世)、 町 人(近 世)と して 、各 時 代 の 様 相 を象 徴 的 に捉 え て妙 で あ るが 、 これ に マ チ ヤ を対 応 させ る と 京童 に対 して は 巷 舎 、 町 衆 に 対 して は 町 屋 、 町 人 に対 して は 町家 と な ろ う。 マ チ ヤ とい う住 居 建 築 に住 人 を対 応 させ る こ と に よっ て 、 マ チ ヤ の 生 きた姿 が イ メ ー ジ され る 。 京 を主 軸 とす る マ チ ヤ の 発 展 も 中世 以 降 には 全 国 的 な広 が り を も っ て発 展 す る 。 各 地 域 の城 下 町 や 宿 場 町 、 門 前 町 、在 郷 町 、港 町 な どの 人 口集 中地 域 にお い て は 、 京 の マ チ ヤ を規 範 と しなが ら も各 地 域 の文 化 的 ・風 土 的 要 因 に よ っ て一 定 の ヴ ァ リエ ー シ ョ ンを もつ こ と に な る。 す な わ ち 、地 域 固 有 の マ チ ヤ の成 立 で あ る。 京 の マ チ ヤ と各 地 域 の マ チ ヤ の変 異 状 況 も重 要 な視 点 で あ る。 しか し何 は と もあ れ 、マ チ ヤ 発 展 史 の 主 軸 を成 す 京 [図1]マ チ ヤ の推 移 古 代 の マ チ ヤ(巷 舎) 中 世 のマ チ ヤ(町 屋) 近 世 ・近代 のマ チ ヤ(町 家) (註)古 代 の マ チ ヤ は年 中 行 事 絵 巻 、 中 世 の マ チ ヤ は 洛 中 洛 外 図 屏 風 を 参 考 に して作 成。 す べ て 間 口 長 さ を 3間 に統 一 して い る。 2
のマ チ ヤ に つ い て の考 察 が 第 一 の課 題 とな ろ う。 そ の考 察 の 第 一 歩 と して 、 マ チ ヤ の 成 立 基 盤 と な る都 市(平 安 京)の 都 市 構 造 、 よ り具 体 にい え ば街 路 と街 区 の 構 成 手 法 とマ チ ヤ の 関 係 につ い て検 討 す る こ と か ら始 め ね ば な らな い で あ ろ う。 1-2街 区 の 変 容 過 程 京 の街 は 伝 統 的 な 町 家 群 に よ っ て 構 成 さ れ て い るが 、 そ れ ら を ま とめ る タ ガ(箱)が トオ リ(通 り、街 路)と 町 組(町 、 町 内)で あ る。 街 路 は 空 間 的 な タ ガ で あ り、 古 代 ・平 安 京 の 昔 か ら現 代 に至 る まで 連 綿 と して つ づ い て きた 都 市 計 画 的 な タ ガで あ る 。 街 路 に よ っ て 囲 ま れ た 街 区 は都 市 の空 間 単 位 と して の性 格 を もつ 。 ま た、 そ の 中 に過 不 足 な く町 家 が 組 み 込 まれ る の で 、 町 家 と い う都 市 住 居 は街 区 と不 可 分 の 関係 を もつ 。 そ の 歴 史 的変 容 過 程 の結 果 と して 現 代 の 街 区 が あ る。 古 代 ・平 安 京 に お い て は 幅4丈(12m)の 小 路 に よ っ て 囲 ま れ た 方40丈(121m角)の 街 区 を 町 と呼 ん だ 。 方4町(16町)は 幅8丈(24m)の 大 路 に よ っ て 囲 ま れ 、 こ の 空 間 単 位(16街 区) を坊 と呼 ん だ[図2]。 こ の 町 が 今 日 の街 区 の 源 で あ る 。 そ の 後 の 街 区 の 変 容 過 程 を[図3]に 示 す 。 変 容 過 程 にお け る主 た る 変 容 点 は 、 正 方 形 街 区 の 中 央 南 北 に 幅2丈(6m)の 細 路(ツ キ ヌ ケ 、 突 抜 け)を 通 して長 方 形 街 区 とな っ た こ と と、 古 代 の大 路 や 小 路 が 街 区 に組 み込 まれ て ト オ リの 幅 が す べ て 幅6mの 細 路 とな っ た こ と で あ る 。 豊 臣秀 吉 に よ っ て ツキ ヌ ケ が 徹 底 さ れ て 以 降 、 京 の街 区 は 南 北 に長 い 長 方 形 街 区 が 圧 倒 的 に 多 くな っ た 。 方40丈 の古 代 街 区 を 出発 点 と して 、 そ の後 ツ キ ヌ ケ が 通 され た 半 折 型 街 区 の 時 代 を経 て 、 次 に ま わ りの街 路 を街 区 内 に 組 み 込 ん だ 半 折 拡 張 型 街 区 に移 行 す る。 半 折 拡 張 型 街 区 は都 市 経 済 の発 展 に よ っ て マ チ ヤ の建 て 込 み が 進 行 し、 オ モ テ(表)に 並 ん で い た マ チ ヤ が 次 第 に街 区 内部 の 共 同 の ニ ワ を個 別 占有 化 し、 半 折 拡 張 型 街 区 を 形 成 す る。 さ ら に マ チ ヤ の建 て 込 み が進 行 して 、 オ モ テ ヤ(表 屋)の 背 後 に ウ ラ ヤ(裏 屋)が 建 ち半 折 拡[図2]平安 京 の 街 区 割 と宅 地 割 閥 」L ____竺____」L張 オ モ テ ・ウ ラ型 の街 区 が 出現 す る。 これ が 今 日の 状 お ほ
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]「 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一]「 -24m12m12m12m24m ■1 520川 (註)1丈 三3.03mと し て 換 算 況 で あ る 。 以 上 か ら 、 現 代 の 京 町 家 の 街 区 は6m街:路(ト オ リ) に よ っ て 囲 ま れ た 南 北127m、 東 西60.5mの 長 方 形 街 区 で あ る 。 し た が っ て 、 街 区 面 積 は7,683m2(0.77ha) と な り 、街 路 を含 め た グ ロ ス 街 区 面 積 は8,845m2(0.88 ha)と な る 。ま た 、こ の よ う な 街 区 に 間 口 長 さ3間(6,5 尺 間 の3間 、6m)の オ モ テ ヤ が 建 ち 並 ぶ と 、1街 区 の 戸 数 は42戸 と な る 。1戸 当 た り の 宅 地 面 積 は183m2 (56坪)で あ る 。 一3一[図3]街 区 の変 容 課程 とマ チ ヤ の戸 数 ・敷 地 面積 時 代 街 区型 図 示 街 区 1街区当たり 戸 数 1戸当たり 甑地鰍 古 代 ・中世 方40丈 型 ( 証 ノ ﹁≧ ㌍ ) (12m小 路)一一 一一 121m-1-一 一 r-1 曼 共同のニ ワ rl 旨 信 ; ⊥_ 121m (12m小 路) 半 折型 1.46ha 78戸 187㎡(57坪) 0,70ha 56戸 125㎡(38坪) 近 世 ・近 代 半折拡張 オモテ型 0.77ha 60戸 128㎡(39坪) 半 折 拡張 オモ テ ・ウ ラ型 0.77ha 42戸 183㎡(56坪) (註)戸 数 は 間 口 長 さ を6,5尺 問 の3問(6m)を ユ戸 と し、 街 区 周 長 か ら算 出 し て い る 。 ま た 、 奥 行 長 さ は 近 世 の 半 折 拡 張 オ モ テ 型 ま で は 間 口 長 さ と 同 じ く3間(6m)と して い る 。1戸 当 た り敷 地 面 積 は 共 同 の ニ ワ を 含 め て い る 。 な お 、1丈 は3.03m。 い ま一 つ の タガ は町 組 で あ る。 街 区 が 空 間 的 な タ ガで あ るの に対 して 、 町 組 は社 会 的 な タガ で あ る。 中世 の 四 面 町(街 区 周 辺 の 町屋 に よ る 町組)か ら、 トオ リ(街 路)を 挟 ん で 向 い 相 う町 組 二 面 町 へ の 移行 は 、共 同 の ニ ワが 個 別 占有 化 に よ っ て消 失 し、 トオ リが 交 流 の 場 と して か け が え の ない 空 間 に な っ た こ と を示 して い る 。 町組 も ま た街 区 の 変 容 と と も に姿 を 変 え た が 、 一 つ の社 会 的 な タ ガ と して 今 日 まで 受 け継 が れ て い る 。 なお 、 上 記 の 街 区寸 法(東 西 方 向 の 短 辺60.5m、 南 北 方 向 の 長 辺127m)を 地 図 上 で 検 証 す る と、 東 西 方 向 の街 区 短 辺 につ い て は 堀 川 通 りか ら河 原 町 通 り ま で1,500mの 問 に22.5街 区 、 街 路21本 (幅6m)を 数 え る 。 これ か ら街 区 短 辺 長 さ を 算 出 す る と61.lmと な り、平 安 京 の 街 区割 か ら求 め た60.5mに よ く一 致 す る。 ま た 、 南 北 方 向 の 街 区 長 辺 につ い て は 中立 売 通 りか ら七 条 通 りま で 3,940mの 間 に29.5街 区 、街 路28本(幅6m)を 数 え る 。 これ か ら街 区 長 辺 長 さ を算 出 す る と127.9 mと な り、 平 安 京 の 街 区割 か ら求 め た127mに よ く一 致 す る 。 京 の 街 区 割 は き わ め て 伝 統 的 と い え る(地 図 は 京 都 市 街 図 、 昭文 社 、2万 分 の1地 図 、1993年 を使 用)。 な お 、 上 記 街 区数 に0.5街 区 な る端 数 の み え る の は、 大 路(幅8丈 、24m)が 介 入 す るせ い とお も え る 。 4
1-3町 家 の空 間 諸 量 以 上 の よ うな 歴 史 的 経 過 を経 て 成 立 した現 代 の 京 町家 の都 市 的 ・空 間 的状 況 を み た もの が[表 1]で あ る 。 京 の 街 の 主 要 な歴 史 的 ・伝 統 的 地 区 は上 京 ・中京 ・下 京 の3区 に含 まれ て い るの で 、 この3区 を採 り上 げ て い る が 、 区 もま た都 市 ス プ ロ ー ル の た め そ こ に お の ず か ら新 旧が あ る。 そ の た め3区 と も 旧街 区 と新 街 区 に 分 け る 。 旧 街 区 が 町 家 地 区 で あ る 。 次 に、[表1]の 各 項 目 に つ い て述 べ る。 (1)地 区 面 積 地 区面 積 に 占 め る 旧街 区 の比 率 は 、 上 京 区32%、 中 京 区32%、 下 京 区33%で ほ とん ど同 率 で あ る。 これ は 市 に よる 区 割 りが 均 等 で あ っ た こ と と関 係 して い よ うが 、 ま た 同 時 に 旧 街 区 の 都 市 ス プ ロ ー ル の エ ネ ル ギ ー の 同等 性 を も示 して い よ う。 (2)街 区面 積 前 項 で も述 べ た よ う に 、 旧 街 区 は歴 史 的 な 街 区 を継 承 してお り、 街 区面 積 グ ロ ス0.88ha(街 路 を含 む)、 ネ ッ ト0。77haの長 方 形 街 区 で あ る が 、 新 街 区 もこ の 街 区 を想 定 し新 旧 の 比 較 を しや す く して い る 。 (3)街 区 数 街 区 数 は 地 区 面 積 を街 区 の グ ロ ス 面 積(0.88ha)で 除 した もの で あ る 。 した が って 、街 区数 の 比 率 は 地 区面 積 の 比 率 に等 しい 。 た だ、 合計 の764街 区 は天 保2(1831)年 の 京 町 絵 図(書 卑 文 叢 堂 竹 原 好 兵 衛 版)の 街 区 数 に ほ ぼ 一 致 す る 。 (4)町 数 町数 は3区 の 合 計 で1,016町 で あ る。 上 記764街 区 との 関係 で み る と1町 は0.75街 区 に相 当 し、 四 面 町 の1町1街 区 に照 らす とや や 小 規 模 化 して い る。 (5)町 面 積 町面 積 は 旧街 区 で は3区 と も0.66haで 等 し く、 町規 模 は一 定 して い る 。 そ れ に 比 して新 街 区 で は か な りバ ラ ツキ が あ り、 平 均2,52haと 規 模 も大 きい 。 新 旧 の対 比 が 鮮 明 で あ る 。 (6)街 区 内 町数 街 区 内 町 数 は町 数 を 街 区 数 で 除 した もの で あ る。 旧 街 区 で は と うぜ ん等 しい値 を と り、1街 当 た りの 町 数 は1.33町 で あ る。 逆 に い う と、1町 は0.75街 区 を 占 め る。 これ は平 均 値 で あ り、 実 際 に は 町 の構 成 は い ろ い ろ あ る[図4]。 新 街 区 の 街 区 内 町 数 が 目立 っ て 少 い の は 町 が 広 範 囲 の 街 区 に及 ぶ か ら で あ る 。 (7)地 区戸 数 各 区 の 戸 数 は 昭 和43年 ・住 宅 統 計 調 査 報 告 に よ り、 こ れ よ り旧街 区 の戸 数(街 区 数 に42戸 を乗 じた値)を 差 し引 い て新 街 区 の 戸 数 と した。3区 の合 計 で み る と、 旧街 区 の 戸 数 は36%で 、 先 の 5
1 ① i [表1]町 家 地 区 の 空 間諸 量 区 地 区 面 積 (ha) 街区面積 街 区 数 (街 区) 町 数 (町) 町 面 積 (グ ロ ス 、ha) 街 区 内 町 数 (町 〉 地 区戸 数 (戸) 街 区内戸 数 (戸) 町 内 戸 数 (戸) 宅 地 面 積 (m2) 上京 区
7・6{lll
旧 街 区 新 街 区 と も に グ ロ ス 0.88ha (街路 を含 む) ネ ッ ト 0.77ha8・2{1驚
57催
L22{1:ll
α72{1:器 2917・{ll:ll8
36{蟹
51{ll
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中京 区73・{lll
831{謙
489{lll
ユ・49{1:llα59{1:ll 3L28・{ll:118
38惟1
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2・3膿
下京 区一
66・{量1
75・{畿
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1・28{1:匿α69{1:墨 2乳72・{11:ll8
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2・8騰
計 ・平 均 ao97{1竃25 λ383{lll19L582{lll'6
1・33{1:llα66{1:ll 8&17・{ll:818
37{ll
56儲
2・8{塗1
(註)地 区 面積 、町 数 は京 都 市 区分 地 図(大 阪 人文 社 、1982年 度 版)、 地 区 の 総 戸 数 は 昭和43年 ・住 宅 統 計調 査 報 告 に よ る。 そ の他 は 筆者 算 出。 数 値 上 段 は 旧 街 区(町 家 地 区)、 下 段 は新 街 区 。宅 地 面 積 は ネ ッ ト街 区面 積(O.77ha)を 街 区 内戸 数 で除 した値(本 文参 照)。 な お 、地 区総 戸 数 の 終戦 前 住 宅率 は、 上京 区84.4%、 中 京区87.9%、 下 京 区79.9%、 平 均84.2%で あ る 。[図4]町 組 の 仕 方 と街 区 数 (0.52街 区)(0.76街 区) (0.48街 区)
麟;L
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(0.64街 区)幽
鰯
國
岡
(1.0街 区) (0.96街 区) (1.0街 区) (凡 例) ,町 を 構 成 す る ・範 囲 (註)町 の 平 均 街 区 数 は0.75街 区 。 地 区面 積 に占 め る 旧街 区 の 面 積 比 率32%に 照 らす と、新 旧 街 区 と も に戸 数 密 度 に 大 き な差 は な い とい え る 。 (8)街 区 内戸 数 街 区 内 戸 数 は地 区 戸 数 を街 区 数 で 除 した も の で あ る。 旧街 区 で は 街 区 内 戸 数 を42戸 に設 定 して い る が 、 新 街 区 にお い て も街 区 内 戸 数 は34∼36戸 で 区 ご との差 は僅 少 で あ り、 ま た 、 旧 街 区 に 比 べ て す こ し少 戸 数 で あ る 。 こ れ は都 市 施 設 を よ り多 く含 む か ら で あ る。 (9)町 内 戸 数 町 内 戸 数 は 地 区戸 数 を町 数 で 除 した もの で あ る。 町 内戸 数 は 町 の 構城 単 位 と して 重 要 な 意 味 を も っ て い る 。 旧 街 区 の 一 定 値(32戸)に 比 べ る と新 街 区 で は78∼148戸(平 均99戸)と 大 き な 差 が あ る。 町 の 面 積 的広 狭 に よる(町 面 積 の 項 を参 照)。 (10)宅 地 面 積 宅 地 面 積 は街 区 面 積(0.77ha)を 街 区 内戸 数 で 除 した も ので あ る。 い う まで も な く旧街 区 で は 3区 を通 して 一 定 値(183m2>を と る が 、新 街 区 で も3区 を通 して か な り近 い 値(214∼226m2、 平 均220m2)を とる 。 た だ し、 平 均 値 で 比 較 す る と旧 街 区 の183m2と 新 街 区 の220m2で は か な りの 差 が み ら れ る 。 新 街 区 の 宅 地 面 積 は 旧 街 区 の1.2倍 で あ る 。街 区 内都 市 施 設 が影 響 して い る。 新 旧 の 街 区 を比 較 す る こ とに よ って 、 旧街 区(町 家 地 区)の 高 密 度 性 、 均 質 性 、 持 続 性 等 が 読 み とれ る。 以 上 の 統 計 的 諸 量 が 具 体 的 な 町 にお い て どの よ うな 実 相 を呈 して い る か を次 にみ て み 一7一た い 。 島 村 、鈴 鹿 他 『京 の 町 家 』(鹿 島 研 究 所 出版 会 、1971年)に 記 録 され て い る 中京 区 の1町 を資 料 とす るが 、 い ま まで に え た諸 数 値 を理 論 値 と し、 具 体 的 な 町 に 現 わ れ る諸 数 値 を現 状 値 と して 、 両 者 の 比 較 検 討 を行 う。 1-4理 論 値 と 現 状 値 理 論 値 と 具 体 的 事 例 の 現 状 値 に つ い て 比 較 検 討 す る と次 の よ う で あ る 。 (1)街 区 面 積 街 区 面 積 の 理 論 値 は グ ロ ス0.88ha(街 路 を 含 む)、 ネ ッ ト0.77haで あ る 。 対 象 町 は 、 街 区 内 町 面 積5,750m2、 街 路 面 積590m2、 計6,340m2で 、 こ れ の1.32倍(街 区 内 町 数)は0.84haで 理 論 値 の グ ロ ス 街 区 面 積0.88haに ほ ぼ 一 致 す る 。 (2)町 面 積 理 論 値 の 町 面 積 は 上 京 区 、 中 京 区 、 下 京 区 の3区 と も完 全 に 一 致 し 、 グ ロ ス0.66haで あ る 。 対 象 町 は 上 記 の よ う に グ ロ ス0.63haで よ く 一 致 し て い る 。 (3)町 並 み の 長 さ 町 家 の オ モ テ 間 口 長 さ の 全 延 長 を 町 並 み 長 さ と し て い る が 、 こ の 町 並 み 長 さ の 理 論 値 は1街 区 に つ き254mで あ る 。 対 象 町 の 町 並 み の 長 さ は196mで あ る 。 な お 、 こ の196mの 中 に は ロ ジ 幅9m (2m幅3本 、1m幅3本)が 含 ま れ て い る 。196mの1.32倍(街 区 内 町 数)は259mで ほ ぼ 完 全 に 一 致 す る。 (4)間 口 数 町 並 み に み え る 建 物 の オ モ テ 間 口 の 数 が 間 口 数 で あ る 。 理 論 値 で は254mを6mで 除 し た42間 口 が こ れ に 相 当 す る 。 対 象 町 は オ モ テ 間 口 数30間 口 を 数 え る が 、 ロ ジ 幅9mを1.5間 口 と し て こ れ に 加 え る と総 間 口 数 は31.5間 口 と な り、 こ れ の1.32倍(街 区 内 町 数)は41.6間 口 と な り 、 よ く 一 致 す る。 (5)間 口 長 さ 間 口 長 さ は 理 論 値 で は6mで あ る 。 対 象 町 の 間 口 長 さ は 、 町 並 み 長 さ(178m)を 間 口 数(31.5 間 口)で 除 し た6.3mで あ る 。 両 者 は ほ ぼ 完 全 に 一 致 す る 。 (6)街 区 内 戸 数 理 論 値 の 街 区 内 戸 数 は42戸 で あ る 。 対 象 町 の 戸 数 は32戸 で あ り 、 こ れ の1.32倍(街 区 内 町 数) は42.2戸 で ほ ぼ 完 全 に 一 致 す る 。 街 区 内 戸 数 は 理 論 値 の42戸 で 妥 当 と 考 え ら れ る 。 (7)住 居 以 外 の 建 物 の 敷 地 面 積 対 象 町 の 場 合 、 住 居 以 外 の 建 物 が 混 在 し て い る 。 そ れ ら の 敷 地 面 積 は 、 倉 庫4箇 所 で648m2で あ る 。 宅 地 ユ ニ ッ ト(183m2)の 数 に す る と3.5ユ ニ ッ ト分 に 相 当 し、1街 区 当 た り に 換 算 す る 8
と4.7ユ ニ ッ トとな る 。 (8)1戸 当 た りの宅 地 面 積 1戸 当 た り敷 地 面 積 の 理 論 値 は、 街 区 面 積(0.77ha)を42戸 で 除 した183m2と な る。 対 象 町 に お い て は 、 町 面 積(5,750m2)か ら上 記 の 住 居 以 外 の 敷 地 面 積(648m2)を 差 し引 い て32戸 で 除 した 値(159m2)で あ る 。 理 論 値 の183m2と 対 象 町 の159m2の 問 に は24m2の 差 が あ る。 これ は非 住 居 系 敷 地 の存 在 とユ ニ ッ トの分 割 に よ る差 で あ る。 (9)街 区 内 の 非 住 居 系 敷 地 対 象 町 に お い て は、 非 住 居 系 の 敷 地 が11%存 在 して い る 。 これ を街 区 に も適 用 す れ ば 、街 区 面 積(0.77ha)の89%(0.69ha)が 住 居 系 敷 地 に利 用 さ れ る こ と に な り、 そ の と き1戸 当 た りの 敷 地 面 積 は164m2と な る 。 街 区 内 の非 住 居 系 敷 地 の 存 在 は、1戸 当 た り の 敷 地 面 積 を か な り減 少 さ せ る の で あ る 。 (10)町 内戸 数 非 住 居 系 敷 地 が 街 区 内 に存 在 す る場 合 、 住 居 と の 関係 で い え ば2つ の方 向 が あ る。1つ は 戸 数 を変 えず に1戸 当 た りの 敷 地 面 積 を削 減 す る方 向 、2つ は敷 地 面 積 を変 えず に戸 数 を削 減 す る方 向 で あ る。 京 に お い て は、 い う まで も な く前 者 の 方 向 を た ど っ て お り、 戸 数 は 堅 持 さ れ て い る。 そ れ が 伝 統 とい う もの で あ ろ う。 そ の 結 果 と して 、理 論 値 の 街 区 内 戸 数42戸 を1.32(街 区 内 町 数) で 除 した 町 内 戸 数(31.8戸)は 、 対 象 町 の戸 数32戸 とほ と ん ど完 全 に一 致 す る。 以上 の よ う に 、 理 論 値 と現 状 値 は 諸 面 に お い て よ く一 致 し、京 の 街 が か な り均 質 な 町 で 構 成 さ れ て い る こ と を改 め て 認 識 す る の で あ る 。 1-5宅 地 ユ ニ ッ トと宅 地 型 マ ク ロ な都 市 的視 点 か ら街 区 と戸 数 、 町 と戸 数 の 関 係 等 に つ い て み て き たが 、 次 に街 区 内 に 入 っ て い る町 家 の実 態 把 握 を行 う。 す で に 明 らか に して い る よ う に、 街 区 は 南 北 に 長 い 長 方 形 を 成 し、長 辺127m、 短 辺60.5mで あ る。 町 家 の 平 均 間 口 長 さが6mで あ る こ とは 確 証 を え て い る の で 、 間 口 長 さ6m、 奥 行 長 さ30.25mの 宅 地 を基 本 宅 地 と考 え る こ とが で き る。 こ の 奥 行 の深 い 宅 地 形 状 か ら、 い わ ゆ る 「うな ぎの寝 床 」 な る コ トバ が 生 れ る[図5]。 基 本 宅 地 の み に よ っ て 街 区 が 構 成 され る の な ら問 題 は な い が 、 こ こ に基 本 宅 地 をい くつ か 統 合 した 大 型 町 家 や基 本 宅 地 を分 割 した ウ ラ ヤ の小 型 町 家 が 組 み込 ま れ て 複 雑 な様 相 を呈 す る 。 前 出 『京 の 町家 』 をみ る と分 か る よ う に、 街 区 内 の 宅 地 の使 い方 に は基 本 的 に5つ の 型 が あ る。 そ れ らは 次 の よ うで あ る。 (1)基 本 宅 地 を そ の ま ま使 用 した 全 奥 行 型(基 本 型) (2)基 本 宅 地 を い くつ か 統 合 した 大 型(統 合 型) 9
(3)基 本 宅 地 を折 半 した オモ テ ヤ(半 折 型) (4)ロ ジで 引 き込 ん だ 一 戸 建 の ウ ラ ヤ(一 軒 ロ ジ型) (5)ロ ジ で 引 き込 ん だ ウ ラ長 屋(ウ ラ長 屋 型) 以 上 の5型 の うち(1)基 本 型 と(2)統 合 型 は 全 奥 行 を使 用 す るの で 裏 地 は生 じ な いが 、(3) 半 折 型 で は 裏 地 が 生 じ、 そ の 裏 地 に(4)1軒 ロ ジ型 や(5)ウ ラ長 屋 型 が 入 る。 つ ま り半 折 型 は一 軒 ロ ジ 型 や ウ ラ長 屋 型 とセ ッ トに な る こ とが 多 い が 、 街 区 の 隅 角 部 で は 裏 地 の 生 じ な い半 折 型 が 可 能 で あ る[図6]。 な お 、(6)半 折 統 合 型 とい う型 も考 え られ な くは な い が 、 この 型 は あ ま りみ られ な い 。 基 本 型 宅 地 を基 準 ユ ニ ッ トと して 、 こ れ の 統 合 、 半 折 に よ っ て 宅 地 型 が 決 定 され 、各 型の宅 地 に 町 家 が 建 て られ て 、 オモ テ ヤ 、 ウ ラ ヤ 、 町 家 の 大 小 、 間 口 ・奥 行 長 さの 大 小 、街 区内の戸数 等 が現 わ れ る。そ れ ゆ え、基 本 宅 地 を1ユ ニ ッ トと して ユ ニ ッ トと宅 地 型 別 の 戸 数 が 対 応 す る。(1) 基 本 型 宅 地 は1ユ ニ ッ ト1戸 、(2)統 合 型 宅 地 は 数 ユ ニ ッ ト1戸 、(3)半 折 型 宅 地 は1ユ ニ ッ ト2戸 、(4)一 軒 ロ ジ型 宅 地 は1ユ ニ ッ ト2戸(半 折 オ モ テ ヤ1戸 、 ウ ラ ヤ1戸) 、(5)ウ ラ 長 屋 型 宅 地 は1ユ ニ ッ ト3戸(半 折 オ モ テ ヤ1戸 、 ウ ラ ヤ2戸)で あ る 。 ウ ラ長 屋 型 宅 地 の 場 合 は、 実 際 には2ユ ニ ッ ト6戸(半 折 オ モ テ ヤ2戸 、 ウ ラ ヤ4戸)あ る い は3ユ ニ ッ ト9戸(半 折 オモ テ ヤ3戸 、 ウ ラ ヤ6戸)程 度 で あ る 。 [図5]街 区 内 の 宅 地 ユ ニ ッ ト 60.5m 302≡ 澗 3025m (10ユ ニ ・'ト 〕 地 宅 本 基 一 分 部 面 東 ー 分 部 面 北 分 部 面 南 , ー 1 一 [ 分 部 面 西 恥 一 ﹁ 明 一 1 ■ ■ 圏 酢 一 ■I II 冒
」
[図6]街 区 内 の 宅 地 型 半 折型 半折型 半折 型 1 半 折統 合 型 一一 !基 本型 統合型 半折型 半折型 一軒 ロ ジ型 ウラ長 屋型 半折型 半折型 一10一1-6宅 地 型 と街 区 内 戸 数 一 軒 ロ ジ 型 宅 地 ユ ニ ッ ト数 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 一 ウ ラ 長 屋 型 宅 地 ユ ニ ツ ト 数 0 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 一 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 2 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 3 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 4 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 5 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 41 43 6 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 .40 42 44 7 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 4ユ 43 45 1 8 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 44 9 27 29 31 33 35 37 39 41 43 45 避'
評
10 30 32 34 36 38 40 42 44 一 11 33 35 37 39 41 43 45 い ま まで の 考 察 に よ り、 宅 地 ユ ニ ッ トな る 概 念 を導 入 す る こ とに よ っ て 複 雑 な街 区 内部 の 町 家 の 集 合 状 況 を形 態 的 、 数 量 的 に把 握 す る こ とが で きる 。 この こ とは 、 長 い 歴 史 的所 産 と して 形 成 され た京 の 町 家 宅 地 の もつ 重 要 な性 格 な い し法 則 性 で あ る。 街 区 周 辺 に3間 間 口 の 町 家 が 建 ち並 んだ 時 点 で 、 宅 地 ユ ニ ッ トの 間 口長 さが 決 定 さ れ、 次 に奥 行 方 向 へ の 延 伸 が ち ょ う ど街 区 の 中央 線 に達 す る まで つづ く。 そ れ は街 区 の東 西 方 向 短 辺 の長 さ の半 分(15間 余)で あ る 。 こ う して 出 来 上 っ た 間 口 長 さ3問 、奥 行 長 さ15間 の細 長 い 長 方 形 の 宅 地 が1ユ ニ ッ トで あ る 。1街 区 は42ユ ニ ッ トか ら成 る 。1ユ ニ ッ トが1戸 と して使 用 され る の が 基 本 的 な姿 で あ るが 、 数 ユ ニ ッ トを統 合 した大 型 の 町 家 や1ユ ニ ッ トを折 半 した半 折 型 町 家 、 ロ ジ で 引 き込 ん だ 一 軒 ロ ジ型 や ウ ラ長 屋 型 な どが あ り多 様 で あ る 。 これ らの 各 型 は 互 に 喰 み 込 ん で 街 区 を過 不 足 な く利 用 す る 。 全42ユ ニ ッ トは各 型 に 変 貌 す る の で あ る 。これ も長 い歴 史 的 経 過 で あ り、町 家 高 密 化 の 結 果 で あ る 。 全42ユ ニ ッ トの 使 用 状 況 をみ る に 当 って 、 まず 最 初 に考 え て お か ね ば な らな い の は非 住 居 系 ユ ニ ッ トの 存 在 で あ る 。 非 住 居 系 のユ ニ ッ ト数 は 、先 に事 例 と し た1町 に お い て は3 .5ユ ニ ッ トで あ っ た 。 これ を1街 区 当 た りに換 算 す る と4.7ユ ニ ッ トに な る。 つ ま り1街 区 に5ユ ニ ッ ト程 度 の 非 住 居 系 ユ ニ ッ トが 存 在 す る とい う こ とで あ る 。 も し、1街 区 に5ユ ニ ッ トの 非 住 居 系 ユ ニ ッ トが 存 在 す る な ら、残 り37ユ ニ ッ トが住 居 系 の ユ ニ ッ トで あ り、 こ れ が 町家 と な る 。 37ユ ニ ッ トの う ち基 本 型 が20ユ ニ ッ トあれ ば そ の 戸 数 は20戸 で あ り、 残 り17ユ ニ ッ トが そ の 他 の宅 地 型 に使 用 さ れ る 。17 [表2]一 軒 ロ ジ型 宅 地 と ウ ラ長 屋 型 宅 地 のユ ニ ッ ト数 と戸 数 ユ ニ ッ トの うち 統 合 型 に10 ユ ニ ッ ト使 用 され た とす る とそ の 戸 数 は5戸(2ユ ニ ッ ト1戸 と して)で 、 残 り 7ユ ニ ッ トが 一 軒 ロ ジ型 と ウ ラ長 屋 型 に使 用 され る が 、 す で に25戸 が 消 化 され て い る の で 戸 数 と し て は17戸 (街 区 の 平 均 戸 数42戸 一25 戸)を 消 化 しな け れ ば な ら な い 。 一 軒 ロ ジ型 とウ ラ長 屋 型 の組 み 合 わ せ と対 応 戸 数 につ い て は[表2]に 示 す 通 りで あ る 。 この 表 に よ (註)一 軒 ロジ型宅地 は1ユ ニ ット2戸 、ウラ長屋型宅地は1ユ ニ ット3戸 。 一11一っ て17戸 に該 当 す る組 み 合 わせ を み る と、 一 軒 ロ ジ 型4ユ ニ ッ ト(8戸) 、 ウ ラ 長 屋 型3ユ ニ ッ ト(9戸)が 求 まる 。 一 軒 ロ ジ 型4ユ ニ ッ トは半 折 オ モ テ ヤ4戸 、 ウ ラ ヤ4戸 の 計8戸 で あ り、 ウ ラ長 屋 型3ユ ニ ッ トは半 折 オモ テ ヤ3戸 、 ウ ラ長 屋6戸 の 計9戸 で あ る。 結 局 、 京 町 家 の 宅 地 型 別 組 み 合 わせ の ポ イ ン トは 、非 住 居 系 宅 地 と統 合 型 宅 地 に よ る 戸 数 減 を 一 軒 ロ ジ型 とウ ラ長 屋 型 の戸 数 増 に よ っ て補 って い る こ とで あ る 。 最 後 に、 基 本 型 、一 軒 ロ ジ型 、 ウ ラ長 屋 型 の3型 に つ い て 、宅 地 内部 の住 空 間 構 成 を例 示 す る[図7]。 2.マ チ ヤ 空 間 の 意 味 論 2-1ミ チ と トオ リ 律 令 制 下 の 町 は長 さの 単 位 で60歩 で あ る が 、60歩4方 の面 積(3,600歩)を も 町 と した 。 平 安 京 の 街 区 は方40丈 で あ っ た か ら、 方66.7歩 で あ り、 面 積 は 約4,440歩 で あ る。 本 来 の 面 積 単 位 と して の 町(3,600歩 〉 と は全 く異 り、 は る か に 大 きい の で あ る。 した が っ て 、平 安京 の街 区 と し て の 町 は ミチ に よ って 区画 され た マ チ の単 位 で あ り、 面積 単 位 を 意 味 す る も の で は な い 。 そ の と き、 ミチ(路)は 町 を造 出 す る た め の 区 画 機 能 を もつ 存 在 と い え よ う。 大 路 、小 路 に み られ る 路(ミ チ)は 、 交 通 機 能 と同 時 に 、 あ る い は そ れ 以 上 に 区 画 機 能 を も っ て い た 。 この区画 機 能 を示 す もの に ミチ 幅 が あ る。 小 路4丈(12m)、 大 路8丈(24m)は 生 活 機 能 を 超 え た 示 威 的 な ミチ幅 で あ る 。 そ の た め 、 平 安 京 に お い て も町 の 真 中 に 幅2丈(6m)程 度 の ツ キ ヌ ケ を通 す と こ ろが あ っ た 。 中世 に入 っ て都 市 の経 済 活 動 が 活発 に な り人 の往 来 が 繁 く な る と、 従 来 の ミチ は 交 通 機 能 に加 え て 交 流 機 能 が現 わ れ 、 こ こ に ミチ は トオ リ(通 り)と 認 識 され る に至 る。 京 の 街 を東 西 ・南 北 に 走 る街 路 に○ ○ 通 り と名 づ け て い る の もそ の結 果 で あ る 。先 の ツ キ ヌ ケ も トオ リで あ る。 中世 以 降 、 しだ い に マ チ ヤ が 高 密 度 化 す る に した が っ て 、 街 区 内部 に直 線 あ る い は 鍵 型 な どの 線 型 で 細 路 を設 け 、 数 棟 の マ チ ヤ を建 て る こ とが 行 われ た 。 この 細 路 が ヅ シ(辻 子)で あ る 。 ヅ シ は 通 り抜 け と行 止 ま りの場 合 が あ る 。 い ず れ に して も トオ リが 都 市 レベ ル の交 通 空 間 で あ る の に対 し て、 ヅ シは 街 区 レ ベ ル の 交 通 空 間 で あ る。 さ らに 、 マ チ ヤ の裏 宅 地 に トオ リか ら ロ ジ(路 次 、 路 地)で 引 き込 ま れ た ウ ラ ヤ が 建 つ 。 ロ ジ 奥 の ウ ラ ヤ が 一 戸 建 の場 合 が 一 軒 ロ ジ、 長 屋 の 場 合 が ウ ラ長 屋 で あ るが 、裏 地 は 街 区 内部 にあ る の で 袋 小 路 型 とな る。 ま た 、 ロ ジ が茶 庭 の影 響 を受 け て数 寄 屋 風 に修 景 され た もの が ロ ヂ(露 地) で あ る。 ロ ヂ に は 外 ロ ヂ と内 ロ ヂ が あ り、 通 路 と な る と こ ろ は 外 ロ ヂ で あ る。 い ず れ に して も、 ロ ジ(ロ ヂ)は 宅 地 レベ ル の 交 通 空 間 で あ る。 ミチ が トオ リに 変 容 し、 街 区 内 部 に ヅ シや ロ ジ(ロ ヂ)が 引 き込 まれ て マ チ ヤ が 高 密 度 に建 て 一12一
[図7]宅 地 型 と町 家 住 空 間 の 構 成 15.4間1515尺 間 に よ る) (基 本 型 宅 地 ) 格
[
, オ モ テ (6)×
一1 1・.・.、:L・ ・盤 擁 磁 名
震 纏 離 業
場)
ダ イ ドコ (4.5) オ ク (6) ∴ ・.㌔㌧幽. 、ニ ワ サ キ け カ ツ 斜1 ・',㌔'、'、 1'一咽 ゲ ンカ ン (3) ウ チ ニ ワ (7)1 釧 ロ1× 一 ウラニワ{2且1 一 (1階)≡
= = ≡ オ モ テ ニ カ イ (6)×
オ ク ニ カ イ (8)[ 1 一 ナ カノ マ (4.5) 一 干.盾 ・,一 ≡ 一 ナ ン ド (3) 量 、 、,' 1ニ ニ倣 披}; ,'r雪 ■1 劃 。一 一 置 一一 ヒ ロ ロ ミ 図 階段・押入・物置を示す一 ()内 数値 は畳 数 を示 す。; 2 _」 工を階, ( 一 軒 口 尋ン 型 宅 地 ) オ モ テ (4.5) x ≡ 「×
オ ク (6) 、三 1 .ワ .サ酷 i-」 ・ニ ワサ 射 一 1 ダ イ ド コ (3) オ ク (6) 1 ≡ ≡ ≡ オ モ テ (415) ダ イ ドコ (4.5> 囑1 -7」. 1, ウ1 チ, 口' ジ' 臨■.. ゲ ンカ ン (3) 囹 ロ1>く レ 〉 1一 ウ チ ニ ワ 1(5) ウラニワ{を.5} ゲ ン カ ン (3) ウチニ ワ 1(6) 囹 ロ ロ ジ17〕 ソ ト苛
帰 ニワ1芒}一 6隈} 一 一 オ モ テ ニ カ イ (6) 〉〈1床ヒ
τ 1 ≡ ≡ 二 : 1 1 1 x 〉〈1床 . 1■-1 } 3 闇 ナ カ ノマ (45) オ ク ニ カ イ (6)1 オ モ テ ニ カ イ (4.5) オ ク ニ カ イ (6) .コ==【 口= l l幽 一
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.iI 〒 一 一ロ ー一 一 一 一 一 昌 一 一聰一 ロー 一 冒 ← 一 \ 」≒L -」 (2階) ( ウ ラ 長 屋 型 宅 地 ) レ レ レ レ 基 本型 半折 オモ テヤ に同 じ 旦 口 ジ イ ドコ{ 皇} x蹴
オ モ テ (4.5) オ モ テ (6) .曼 ケン雷
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所 「 ▲ ▲ 共 ロ ジ(14) 同 黍 灸 唖爪
一 x オ モ テ (6> オ モ テ (6)1 一軒 ロ ジ型半 折 オモテ ヤに 同 じ一
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▼ ▼ 一 一軒 ロ ジ型半 折 オモテ ヤに 同 じ×
オ モ テ (4) ケ ン カ ン (2) ゲ ンカ ン (2) オ モ テ (4) オ ク 〈6) タ'イ ドコ 1(3) ダ イ ドコ (3) オ ク (6) 1 臣 O .軸 臣 O . 一 O . 則 恥 . 下 頃 , 周 (註)島 村 、 鈴 鹿 他 『京 の 町 家 』(鹿 島 研 究 所 出 版 会 、1971年 、19∼20)を 参 考 に し て 作 成 。 一13一込 む と、 トオ リを は じめ とす る交 通 空 間 に マ チ ヤ 内 部 の 生 活 が溢 出 し、 生 活 機 能 が 加 わ る。 そ こ に チ ョウ ナ イ(町 内)な る近 隣 共 同 体 の 空 間 を認 知 す る の で あ る。 ミチ 、 トオ リ 、 チ ョウ ナ イ の 推 移 は 、 巷 舎 、 町屋 、 町 家 の変 遷 過 程 に も対 応 す るで あ ろ う。 2-2カ ド とニ ワ 中 世 の 洛 中洛 外 図 をみ る と、 トオ リ(通 り)に 囲 ま れ た 街 区 の 四 周 に は 町 屋 が 建 ち並 び 、 い わ ゆ る 四 面 町 を形 成 して い る。 四面 町 の 内部 は 町 の 共 同広 場 で 、 井 戸 、 便 所 、 疏 菜 畑 な ど が しつ ら え られ て い る 。 この 時 期 の 町屋 は 後 年 の 町 家 の よ う に奥 行 が 長 くな く、 町屋 背 後 に 広 い裏 庭 が 開 け て い た。 そ の 共 同 広 場 で あ る裏 庭 を どの よ う に呼 ん で い た の か 。 [図8]に 示 す 壷 吉 居 宅 指 図 の1室 に 門 戸(カ ド)と い う室 が あ る。 この 室 は裏 庭 に面 す る お そ ら く ドマ(土 間)の1室 で あ る 。 そ の こ [図8]壷 吉 居 宅 平 面 図(元 禄10年 ・1697) とは 隣 の さ し き(座 を敷 い た室 、 土 座 の 可 能 性 が 大 で あ る)と の 関連 で も首 北 入口 肯 され る。 さ らに 、 さ し きの 上 の お う え(御 上 、床 張 りをほ どこ した 室)と 比 較 す る とな お よ く分 か る 。板 床 の お う え 、土 座 の さ し き、 ドマ の 門 戸(カ ド)と い っ た よ う に 、 床 仕 上 げ の 各 種 が み ら れ る 。右 棟 の 座 敷 は 、 この よ う な 観 点 か らみ る と畳 敷 きの床 の 間 を も つ ザ シ キ で あ ろ う。 上 記 の 室 名 の う ち 門戸(カ ド)が 本(註)伊 藤鄭爾 『中世住居史』(東京大学 出版会・1958年・254) より。 項 の 研 究 目的 に か か わ る 。 一 般 に カ ド は 門 とい う漢 字 が 与 え られ 、 出入 口 近 辺 の空 間 を指 す 呼 称 の よ う に お も え る が 、 こ の 指 図 で は 出 入 口 と は正 反 対 の 裏 庭 に接 す る部 分 に カ ドとい う語 が 使 わ れ て い る 。 否 、 む し ろ裏 庭 の 一 部 を屋 内 に引 き込 ん だ 部 分 に カ ドとい う呼 称 を使 っ て い る と い っ た 方 が 適 当 で あ ろ う。 そ うす る と、 裏 庭 全 体 を カ ドと称 して い た と考 え る こ と もで き る。 この よ うに外 部 空 間 の 呼称 が 機 能 内 化 と同 時 に屋 内 に取 り入 れ られ る例 は ニ ワ(庭)に もみ ら れ る。 農 家 の 屋 内 ドマ が ニ ワ と呼 ば れ る こ とが しば しば あ るが 、 この 場 合 の ニ ワ も前 庭 の機 能 が 屋 内 に 内化 され る と同 時 に呼 称 も 内 化 した の で あ る 。 こ の こ と に つ い て は拙 著 『住 空 間 史 論H、 農 村 住 居 篇 、 京 都 大 学 学術 出 版 会 、2001年)を 参 照 され た い。 な お 、 前 庭 の ニ ワが 屋 内 に移 動 し て 後 の前 庭 呼 称 は カ ドそ の 他 で あ る 。 した が っ て 、 こ の 場 合 の カ ドは前 庭 を指 す こ と に な り、 上 一14一
記 壷 吉 居 宅 指 図 にみ られ る 裏庭 の カ ドとは 、 位 置 関 係 か らい う と相 反 す る 。 カ ドが 門 とい う漢 字 に 当 て られ る こ とに よ っ て 、否 応 な くカ ドが 家 屋 や 宅 地 の 前 面 と 関 係 づ け られ て考 え られ るが 、 上記 の 例 で も分 る よ う に カ ドは必 し も位 置 関 係 を 示 す 語 で は な い 。 そ こ で 、 カ ド本 来 の 語 義 を 、 『岩 波 ・古 語 辞 典 』(岩 波 書 店 、1974年)、 『日本 民 俗 事 典 』(大 塚 民 俗 学 会 編 、 弘 文 堂 、1972年)、 『日本 民 家 語 彙 解 説 辞 典 』(日 本 建 築 学 会 民 家 語 彙 集 録 部 会 編 、 日外 ア ソ シエ ー ツ、1993年)等 に徴 す る と次 の よ う に な る。 2-3オ モ テ と カ ド カ ドの 淵 源 は カ キ ウ ツ(垣 内 、 カ キ ウチ の 古 形)に 求 め られ る。 カ キ ウ ツ は 短 縮 して カ キ ッ。 カキ ツ は転 じて カ イ ト。 この カ イ トが 地域 的 ヴ ァ リエ ー シ ョ ン を も っ て カ イ ド、 カ エ ド、 カ ドな ど とな る 。 そ の 意 味 内容 は 、 垣 内 に よ く表 わ れ て い る よ うに 、 区 画 さ れ た 一 定 の 土 地 を指 す 。 垣 は土 地 を区 画 す る 手 段 で あ り、 生 垣 、 垣 根(屋 敷 林)、 石 垣 な どが あ る。 時代 が 降 る に し た が っ て 、 カ イ トは一 区 画 の屋 敷 地(宅 地)、 農 地 、集 落 、共 有 林 、 同 族 集 団 等 の 広 が り を も っ て 拡 大 す る が 、住 居 に 関 して は カ ドは 宅 地 を指 す と考 え ら れ る 。 したが っ て 、 カ ドの 本 来 的 意 味 の 中 に は位 置 関 係 概 念 は 含 まれ て い な い 。 そ の 意 味 か らは 、 宅 地 内 の どの 部 分 を カ ドと称 して も よ く、前 庭 、 裏 庭 、 側 庭 い ず れ も カ ドに 該 当 す る の で あ る 。 上 に例 と した農 家 の 前 庭 の カ ドも、 壷 吉 居 宅 の 裏 庭 の カ ドも宅 地 内 の カ イ ト で あ り矛 盾 は な い 。 区画 され た 一 宅 地 に は 必 ず 出 入 りす る クチ(口)が あ り、 こ れ が カ イ トグチ (垣内 口)で あ り、 つ ま っ て カ ドグ チ と な り今 日で は 門 口 と書 か れ る 。 マ チ ヤ に は 一 般 に 門 構 え は な くモ ン(門)の クチ(口)で は な く、 カ ド(垣 内)の クチ(口)で あ ろ う。 今 日の 京 町 家 にお い て 以 上 の事 態 は ど の よ う に な っ て い る の か 。 そ れ を判 明 す る た め に オ モ テ (表)と カ ドを 比 較 す る。 京 町 家 の前 の トオ リを指 して オ モ テ ない しカ ドの 呼 称 が 併 存 して い る。 オ モ テ と カ ドは指 示 内 容 が 判 別 しに くい 。 た とえ ば 、 「オ モ テ を掃 除 す る」 と 「カ ドを掃 除 す る」 は 、 い ず れ も当該 町 家 の前 の トオ リ を掃 除 す る こ とで あ る。 この 場 合 の オモ テ と カ ドは ほ ぼ 同 義 語 で あ る。 オ モ テ は民 家 にお い て前 庭 に面 す る 前 通 りの室 を指 し、 また ドマ にお い て も正 面 出 入 口近 辺 の 空 間 を指 す 。 要 す る に 民 家 の 前 室 を指 す 。 京 町 家 に お い て も トオ リ に面 す る 室 を オ モ テ ノ マ(表 の 問)と 呼 ぶ 。 従 来 、 ミセ(店)と 呼 ば れ た室 で あ る が 、 ミセ を開 け な い シ モ タ ヤ(仕 舞 屋)の 発 生 以 降 に使 用 さ れ る よ う に な っ た 呼 称 で あ る。 した が っ て 、 トオ リ に対 す る オ モ テ呼 称 は 、 こ の 住 空 間 呼称 が 拡 大 使 用 さ れ た もの で あ る 。 以 上 の考 察 結 果 か ら、 トオ リ に対 す る オ モ テ呼 称 と カ ド呼称 の 併 存 が 判 明 す る。 す な わ ち 、 オ モ テ は 町 家 住 空 間 呼 称 に 由 来 し、カ ドは 四 面 町 の街 区 空 間呼 称 に 由来 す る。四 面 町 の 内 部 空 間(街 一15一
区空 間)は 、 す ぐれ た カ イ ト(垣 内)で あ り、 町 屋 の 奥 行 きが 短 か く内 部 に共 同広 場 を もっ て い た 中 世 に は、 カ イ トの 意 味 が 十 分 に理 解 で きる が 、 そ の 後 の マ チ ヤ の 発 展 過 程 に お い て 奥 行 方 向 が 延 伸 され 、 つ い に 共 同 広 場 は消 失 して 個 々 の 町 家 の 宅 地 に 占 有 され る こ と に な る 。 壷 吉 居 宅 の 背 後 の カ ド(門 戸)は 、 共 同広 場 の カ ドの 名 残 りで あ ろ う。 つ い に 居 所 の な くな っ た カ ド(垣 内)は 、 共 同広 場 に近 い性 格 を もつ トオ リ に そ の 居 所 を変 え て残 存 す る 。 し たが っ て 、 トオ リの カ ド呼 称 は街 区 空 間 な い し宅 地 空 間 呼 称 に 由来 す る と い え る。 オモ テ が住 空 間 呼 称 に 由 来 す る の とは 異 っ た来 歴 を も っ て い る 。 もっ と も、 両 者 に共 通 点 が な い わ けで は な い 。 そ れ は指 示 対 象 が いず れ も トオ リで あ る こ と以外 に 、 い ず れ も住 み 手 の 側 か ら与 え られ た呼 称 で あ る とい う こ とで あ り、 そ れ ぞ れ が 時代 の 住 生 活 様 式 を反 映 して い る とい うこ と で あ る。 2-4カ ドグチ と ウ ラ グ チ オ モ テ は住 空 間 呼 称 に 由 来 し、 カ ドは街二区 空 間呼 称 に 由 来 す る と した 。 街 区 内 空 間 の カ ド(垣 内)が す べ て分 割 され 町 家 の 占有 宅 地 に移 行 した近 世 以 降 に は 、 カ ド呼 称 は そ の居 所 を な く し宅 地 内 で は 辛 じて カ ドグチ とい う コ トバ に そ の 痕 跡 を と どめ る に至 っ た。 カ ドグ チ は 一 般 に は 門 口 と表 記 され て い るが 、 そ の 来 歴 か ら は垣 内 口 で あ る。 カ ドグチ は町 家 出 入 口近 辺 の 空 間 を指 し、 トオ リに接 す る庇 下 か ら ゲ ン カ ン(玄 関)に 入 っ た 部 分 あ た りで あ る。 カ ドグ チ の語 義 か らみ る と、 この 呼 称 法 は当 を得 て い る 。 町 屋 の 出 入 口 は ま た カ ド(垣 内)の 出 入 口 で も あ っ た か らで あ る 。 こ こ で クチ(口)に つ い て 少 しふ れ て お く。 ク チ は もの の 出 入 りす る 箇 処 で あ り、住 居 や 宅 地 で は出 入 りす る箇 処 す な わ ち 出 入 口 で あ り、 そ れ に 対 す る 反対 語 は オ ク(奥)で あ る 。 この オ ク の 用 例 は壷 吉 居 宅 の室 名 に も現 わ れ て お り、 オ ク ミセ(奥 み せ)が そ れ で あ る 。 ミセ(見 世)は ゲ ン カ ン に接 してお り、 こ こ は い わ ば クチ ミセ(口 店)で あ る 。 そ れ に対 して オ ク ミセ が 定 立 さ れ る 。 1列3段 型 の標 準 的 な 町 家 で は トオ リニ ワ(通 り庭)に そ って3室 が 縦 列 す るが 、 トオ リ に近 い最 前 室 か ら室 名 を並 べ る と、 オ モ テ ・ダ イ ドコ(台 所 〉 ・オ ク で あ る 。 第1室 の オ モ テ に対 し て 第3室 は オ ク と認 識 され て い る。 ミセ とオ ク ミセ の 関係 に類 似 して い る 。 ミセ 対 オ ク ミセ は 営 業 ス ペ ー ス の ク チ ・オ ク 関係 、 オモ テ対 オ ク は居 住 ス ペ ー ス の クチ ・オ ク 関係 が 適 用 され て い る の で あ る 。 同一 系 列 の 空 間 の 位 置 関係 か らす る室 名 で あ る 。 こ の よ う な空 間 関 係 呼 称 法 か らす る と、 上 記 の カ ドグチ に対 す る呼 称 法 もあ る はず で あ り、そ れ が ウ ラ グチ(裏 口)で あ る 。 トオ リ ニ ワの 先 の板 戸 の あ た りを ウ ラ グ チ と呼 び 、 板 戸 を 出 た と こ ろが ウ ラニ ワ(裏 庭)で あ る 。 ウ ラ グ チ の クチ は い う ま で も な く出 入 りす る 箇 所 を指 して い る が 、 カ ドグ チ の カ ドに対 して は ウ ラが 対 置 され て い る の が 注 目 され る 。本 来 、 カ ドと ウ ラ は対 置 一16一
概 念 で は な い か らで あ る。 2-5ク チ ・オ ク と オ モ テ ・ウ ラ い ま まで に 出 た空 間 呼 称 は、 トオ リ、 カ ド、 クチ 、 オ ク 、 オ モ テ 、 ウ ラ の6呼 称 で あ る。 こ の 6呼 称 の うち 対 置 概 念 と な る の は クチ ・オ ク とオ モ テ ・ウ ラ の2対 で あ る 。 そ して 、 京 町 家 に お い て は2対 の 対 置 概 念 が 認 め られ る も の の正 確 に対 置 され て い る わ け で は な い 。 室 呼 称 に お け る オ モ テ と オ ク を み れ ば そ の こ とは 明 らか で あ る 。 本 来 、 オ モ テ に対 して は ウ ラ が対 置 さ れ る べ き だ か らで あ る 。 また 、 カ ドグ チ に対 す る ウ ラ グチ も同様 で あ る。 カ ドと ウ ラ が 対 置 概 念 で な い こ とは 上 に述 べ た が 、 ク チ に対 す る対 置 概 念 は オ ク で あ り、 こ の オ ク は 室 名 に使 用 さ れ て お り、 ト オ リニ ワ に は み られ な い 。 論 理 的 に い え ば、 室 系 列 呼 称 は オ モ テ ノ マ と ウ ラ ノマ 、 な い し ク チ ノマ と オ ク ノ マ とな るべ き で あ り、 トオ リ ニ ワ の 方 は オモ テ グ チ と ウ ラ グ チ 、 な い し クチ グ チ と オ ク グチ とな るべ き と ころ で あ る。 しか し、実 際 に は 室 系 列 呼称 は オ モ テ ノマ に対 して ウ ラ ノ マ で な くオ ク ノマ に な っ て い る。 こ の 場合 は オ モ テ を クチ と考 え て オ ク を使 用 して い る の で あ る。 他 方 、 トオ リニ ワ の 方 は 、 カ ドグ チ の カ ドを オ モ テ と解 して ウ ラ グ チ と呼 び ウ ラ を使 用 して い る 。 こ の場 合 の クチ は クチ ・ オ ク の クチ の よ うに位 置 関係 を指 示 す る クチ か ら、 た ん な る箇 処 概 念 に移 行 して い る。 結 局 、 ク チ ・オ ク と オ モ テ ・ウ ラ の対 置 概 念 は 室 系 列 と ドマ の トオ リ ニ ワ系 列 の 間 で交 叉 的移 動 を生 じて い る の で あ る 。 この よ う な事 態 はマ チ ヤ の発 展 過 程 と強 く結 び つ い て い る 。 中 阯か ら近 世 前 期 に か け て 内 部 に 共 同 広 場 を も って い た 四面 町 が 、 しだ い に町 家 の 宅 地 に 占 有 化 さ れ 共 同広 場 が 消 失 して い く過 程 で この よ うな事 態 が 生 じた と考 え られ る。 中世 の 四 面 町 は 町 組 を もつ 共 同 体 で あ り、 す ぐれ た カ イ トで あ っ た 。 四 周 に建 ち並 ぶ 奥 行 の 浅 い 町屋(2室 程 度)は 、 トオ リ と共 同広 場 を区 切 る 形 で 建 ち並 ん で い た 。 トオ リ と共 同広 場 を連 絡 す る通 路 は 町並 み が 密 に な る に した が って 町 屋 内 部 に 貫 通 す る必 要 が あ っ た 。 す な わ ち 、 トオ リニ ワ の必 要 性 で あ り、 共 同 広 場 へ の 出 入 口 で あ る。 こ れ が カ イ トの ク チ 、 カ ドグ チ で あ る。 した が っ て 、 カ ドグチ は住 空 間 ・町 屋 へ の 出入 口 で あ る 以 前 に カ イ トへ の 出 入 口で あ っ た 。 町屋 が 奥 行 方 向 に延 伸 し、 共 同広 場 を宅 地 に 占 有 して い くと 、 こ こ に 町家 が 形 成 され 、 トオ リ ニ ワの 先 に個 別 的 なニ ワ(庭)が 発 生 す る 。 この 時 点 で カ イ ト(カ ド)は 辛 じて カ ドグ チ に 名 を と どめ る にす ぎ な い存 在 と な る。 こ こ に み られ る ニ ワ呼 称 は、 農 家 に も多 くみ られ る ニ ワ で あ り、 屋 内 か 屋 外 か を問 わ な い 。 ニ ワ呼 称 は 、 トオ リニ ワ、 ナ カ ニ ワ 、 ウ ラニ ワ 、 ニ ワサ キ(庭 先)な ど と して 、 京 町 家 に も多 くみ られ る 。 この よ う なニ ワ呼 称 の 広 が りは 、 古 代 の 巷 舎 以 来 の 伝 統 を示 す もの で あ り、 中世 の 一17一
カ ド内部 の 共 同 広 場 もニ ワ と呼 称 さ れ て い た こ と を推 定 させ る。 農 家 に お け る ニ ワ は前 庭 な い し 屋 内 ドマ を指 し、 いず れ も農 作 業 の補 助 的 な作 業 空 間 で あ っ た。 脱 穀 ・籾 摺 ・精 米 ・俵 詰 な ど の 収 穫 後 の一 連 の 作 業 が 行 わ れ た場 で あ る 。 京 町 屋 の共 同 の ニ ワ は先 に もか か れ た よ う に 、共 同 の 井 戸 や 便 所 が 象 徴 す る よ うに住 生 活 のサ ー ビ ス 的部 門 を受 け もつ空 間 で あ り、 共 同 の ニ ワ を囲 む 個 々 の 町 屋 は食 寝 の住 生 活 と ミセ に よ る 営 業 を司 る空 間 で あ っ た 。 ミセ は営 業 上 トオ リ と不 可 分 の 関 係 に あ り、 人 々 の 往 来 が 繁 くな る に つ れ て町 屋 か らみ る と トオ リ は オ モ テ と して の性 格 を もつ に至 る 。 した が っ て 、 オ モ テ は トオ リ の 別 名 とい っ て よい 。 他 方 、 カ ド(カ イ ト)は 本 来 街 区 内 部 ひ い て は 宅 地 内 部 を指 す もの で あ る が 、 カ ドグ チ の 呼 称 が 残 存 す る こ とに よ っ て、 い きお い トオ リ に面 す る 出 入 口 近 辺 を指 す 空 間呼 称 と して定 着 す る 。 こ こ に オ モ テ とカ ドの 指 示 す る 空 間が 重 な り合 う。 そ の た め 、 町 家 前 面 の ト オ リ は オ モ テ で もあ りカ ドで もあ る とい う、 ま ぎ らわ しい 関 係 が 生 じ る。 2--6ニ ワ と オ ウ エ 壷 吉 居 宅 に み え る室 名 の う ちマ チ ヤ 形 成 に か か わ る もの は 、(1>見 世(み せ)、(2)お うへ 、 (3)さ し き(ザ シ キ)、(4)門 戸(カ ド)、(5)台 所 、(6)座 敷 、(7)仏 前 で あ ろ う。(1) 見 世(み せ)は ミセ(店)、(2)お うへ は オ ウエ(御 上)、(3)さ し き は ザ シ キ(座 敷)、(4) 門戸 は カ ド(垣 内)、(5)台 所 は ダ イ ドコ ロ 、(6)座 敷 は ザ シ キ 、(7)仏 前 は ブ ッ ゼ ンで あ る 。 (1)の ミセ に つ い て は と くに説 明 を要 しな い が 、 トオ リに面 す る位 置 関 係 に注 目す る こ と と、 大 きい 商 家 で は オ ク ミセ を もつ 。(2>の オ ウ エ は トオ リ ニ ワ な ど の ドマ に対 し て床 張 りの あ る 部 分 を指 す 。 ドマ よ り一 段 上 った と こ ろの 意 で あ る。 今 日の京 町 家 に お い て は 、 こ の オ ウエ は オ イ エ と して伝 承 され 、 床 張 りの あ る室 全 体 を指 す 呼 称 と して生 き て い る。 全 国 的 に み る と、 こ の オ ウ エ は オエ 、 オ イ、 オ オ エ な ど と して 方 言 転 化 して い るが 、 ドマ に 対 して 上 足 で 使 用 す る土 座 を指 す 場 合 もあ る 。(3)の ザ シ キ は座 を敷 い た箇 処 の意 で 土 座 を指 して い る と考 え られ る 。 農 家 的生 活 様 式 の名 残 と い え よ う。 (4)の カ ドに つ い て は、 す で に 述 べ て い る の で 省 略 す る 。(5)の ダ イ ドコ ロ は炊 事 ・食 事 の場 を指 す 呼 称 で 、 今 日の 京 町 家 に お い て もダ イ ドコ な る室 名 は残 っ てお り、 トオ リ ニ ワ の ナ ガ シ(流 し)の 前 の室 で あ る 。 この 場 合 は食 事 室 を 指 す が 、壷 吉 居 宅 の 場 合 は 炊 事 場 を指 して い る よ うで あ る。(6)の 座 敷 は 床 の 間 を もつ畳 敷 き の室 で 、 先 の 土 座 の ザ シキ(さ し き)と は 異 る 。 (7)の ブ ツゼ ン は ブ ツマ(仏 間)で 、 仏 壇 の あ る 小 室 で あ る 。 今 日の 京 町 家 に お い て も ブ ツ ゼ ンな る 呼 称 は生 きて お り、 この 場 合 は 必 ず し も小 室 の ブ ツ マ を指 さ さず 、仏 壇 の前 を指 示 す る 場 合 もあ る 。 た とえ ば 、 「ブ ッ ゼ ン に座 る」 とい っ た 場 合 の ブ ツ ゼ ンで あ り、敬 語 に して ゴ ブ ツ ゼ ン(御 仏 前)と 呼 称 す る こ と もあ る 。 一18一
以 上 の7種 の 室 名 は 、 マ チ ヤの 発 展 過 程 を よ く示 して お り、 商 球 と して の ミーヒの 発 生 、 才 ウエ な る揚 昧 の 発 生 、土 座 と して の ザ シキ の 残 存 、炊 事 場 とLて の ダ イ ドコ ロ の確 立 、 畳 敷 きの ザ シ キの 成 立 、 大 型 町 家 にお け る ブ ッマ の 成 立 等 を示 してい る 。 就 中 、 オ ウ エ の 発 生 は ドマ や 土 座 の 生 活 か ら床 張 りの あ る居 住 ス ベ ー ス の 生 権 へ の進 展 で あ り.そ れ は や は1,都 布 住 居 の 先 進 性 と い うに値 す る現 禦 で あ ろ う。 今 日、 オ イエ な る呼 称 が 床 張 りの あ る室 全 休 を指 す1呼称 とLて 並 き て い る の も、 オ ウエ の 価 値 に よ る もの で あ り、 当 時 と して は き わ め て 斬 新 な 都 市 性 を示 す 家 作 で あ った ろ う。 一19一