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教員および保育士養成学部における声楽実技の指導法

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教員および保育士養成学部における声楽実技の指導

著者名(日)

服部 安里, 宇野 雅子, 豊島 久美子

雑誌名

樟蔭教職研究

2

ページ

43-52

発行年

2018-01-31

URL

http://id.nii.ac.jp/1072/00004237/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

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教員および保育士養成学部における声楽実技の指導法

児童学部 非常 勤講師 服部安 里

児童学部 TA 宇野雅 子

児童学部 児童 学科 豊島久 美子

要 旨 : 小 学 校 教 諭、 幼 稚 園 教 諭お よ び 保 育 士養 成 の 学部 に お い て 、 声 楽実 技 は 必 修 科目 と な っ てい る 。 し か し な が ら 、 受 講 者の 多 く は 、 歌唱 や 器 楽 な どの 音 楽 の専 門 的 な 指 導 を 受け た 経 験 が なく 、 読 譜 をは じ め と す る 音 楽 の 基 礎 的 知識 を 持 ち 合 わせ て い な い のが 現 状 であ る 。 本 論 文 で は、 声 楽 初 心 者の 学 生 を 対象 と し た 実 技 科 目 に お い て 、学 生 が 苦 手 意識 を 抱 く こ とな く 技 術を 身 に つ け る た めに は 、 ど の よう な 指 導 内容 が 有 効 か を 検 証 し た 。 さ らに 、 教 育 及 び保 育 の 現 場 で子 ど も たち の 音 楽 活 動 を 指導 す る 際 に 考慮 す べ き 点を 明 ら か に し 、指 導 者 と し て 求め ら れ る 能力 に つ い て も分 析 し た 。教 員 免 許 及 び 保 育士 資 格 取 得 のた め の 講 義科 目 に は 、 学 生 の 能 力 に 応 じた 指 導 が 求 めら れ て い る 。加 え て 、学 生 に 継 続 的 な 音楽 の 指 導 を 提供 す る た めに は 、 音 楽 関 連 科 目 間 の 連 携が 不 可 欠 で ある 。 本 研 究 は、 免 許 取得 を 目 指 す 学 生 に、 よ り 実 践 的な 音 楽 の 技術 と 応 用 力 を 提 供 す る た め の課 題 を 明 ら かに す る 。 キ ー ワ ー ド : 声楽 、 指 導 法、 教 員 免 許 1. はじめに 小学校教諭、 幼稚園教 諭および 保育士養 成を目的 と する学部の多 くは、声楽 実技を必修 科目とし て設置し ている。ま た、教 育・保育現場にお ける音楽 活動の重 要性は申すま でもなく、現場では音 楽が盛ん に用いら れている1。さらに近 年の研究か ら、音楽活 動が子ど も の 心 身 に 良 い 影 響 を 与 え る こ と が 明 ら か と な っ て きており、子 どもの音楽 教育に対す る関心も 多く寄せ られている 2 ,3。一方で 、保育 者の全般 的な質 の低下 が危惧されて おり4、十分な音楽能 力を持た ないまま 現 場 に 出 て し ま う 教 員 や 保 育 士 (指 導 者 )も 少 な く な い。学校や園 における音 楽の質は重 要である にもかか わらず、指導 者の大半が 音楽の専門 家ではな いのであ る 1。そ れど ころ か、 教員 お よび 保育 士養 成大 学(以 後、「 養成大学 」とする)では 、読譜 にも不自 由するよ うな音楽経験 の少ない学 生も多く、限られた 講義時間 数 の 中 で 教 育 お よ び 保 育 の 現 場 に 対 応 で き る 能 力 を いかに育成す るかという ことが重要 な課題で ある。 そこで、本 稿では養成 大学におけ る音楽活 動、中で も声楽実技(歌唱)に焦点 をあて、将 来、教員 や保育士 を目指す学生 にとって、より実践的 な音楽の 技術と応 用力を提供す るための課 題を明らか にし、こ れからの 養成大学のあ り方を考察 する。 2. 小学校教諭、幼稚 園教諭 および 保育士 養成学 部に おける声 楽実 技につ いて 2.1. 各 免 許 状 お よ び 資 格 に お け る 声 楽 実 技 の 位 置づけ 小学 校 、 幼稚 園 教 諭 およ び 保 育士 養 成 の学 部(以 後、「養成学部」と する)における 声楽実技の 内容は 、 各省の定める 科目に沿っ て設定され ている。それ ぞ れの免許状お よび資格に ついては、小 学校教諭お よ び幼稚園教諭 は文部科学 省が、保育士 資格は厚生 労 働 省が 管 轄 して お り 、 その 取 得 条件 (特 別 免 許状 や 臨 時免 許 状 等の 特 例 を 除く)は 下 記 のよ う に 各免 許 状および資格 により異な っている。 2.1.1. 小学校および幼 稚園教 諭 小 学 校 お よ び 幼 稚 園 教 諭 に な る た め に は 教 職 課 程のある大学 や短期大学 等に入学し、法令で定め ら れた科目及び 単位を修得 して卒業し た後、各都道 府 県 教 育 委 員 会 に 教 員 免 許 状 の 授 与 申 請 を 行 わ な く てはならな い5 教育職員の 免許に関す る基準を定 めた「教育 職員 免許法及び教 育職員免許 法施行規則 」によると 、小 学校教諭の免 許状を取得 するには、各学位を有 する 他、二種免許 状の場合は 「教科に関 する科目 」4 単 位、「教職 に関する科 目」31 単位、「 教科又は教 職に 関する科目」2 単 位を、一種免 許状の場 合、「教 科に 関する科目 」8 単位 、「教職 に関する 科目」41 単位 、

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44 「教科又は教 職に関する 科目」10 単位を、専修 免許 状の場合、「教科に 関する科目 」8 単位 、「教職 に関 する科目」41 単位 、「教科 又は教職 に関する科 目」 34 単位取得することが 定められ ている 6 幼稚園教諭 の免許状を 取得するに は、各学 位を有す る他、二種免 許状の場 合は「教 科に関す る科目」4 単位、「教職 に関する 科目」27 単位を、一種 免許状 の場合、「教 科に関す る科目」6 単位 、「教職 に関す る科目」35 単位、「教 科又は教職 に関する 科目」10 単位を、専 修免許状の 場合 、「教 科に関する 科目」6 単位、「 教職に関 する科目 」35 単位 、「教科 又は教 職に関する科 目」34 単位取得する ことが定 められ ている6 このうち 声楽実技 に関する 講義は 、「教 科に関す る科目」に該 当する 。「教 科に関す る科目」 は、国 語(書写を含む)、社会 、算数、 理科、生 活、音楽 、 図画工作、家 庭及び体 育(これら科 目に含ま れる内 容 を 合 わ せ た 内 容 に 係 る 科 目 そ の 他 こ れ ら 科 目 に 順ずる内容の 科目を含む。) であ る。修得方 法はこ れらのうち、一以上の科 目について 修得する ものと されており、二種免許状 で最低 4 単 位、一種 及び専 修免許状では 幼稚園教諭 免許状では 最低 6 単 位、小 学校教諭免許 状では最低 8 単位を 取得すれ ば良い ことになって いる6 2.1.2. 保育士資格 保育士に なるために は、都道府 県知事の 指定する 保 育 士 を 養 成 す る 学 校 そ の 他 の 施 設 で 所 定 の 課 程・科目を履修し 卒業する か、保育士試 験に合格し 、 保育士資格を 取得した後 、保育士登 録を受け 、保育 士証の交付を 受けなくて はならな い7。保育士養成 大学に関連す る取得方 法は前者 である。 この場合 、 保育士資格の 取得基準を 定めた「児 童福祉法 施行規 則第 6 条の 2 第 1 項第 3 号の指定保 育士養成 施設の 修業教科目及 び単位数 並びに履 修方法」 によると 、 「必修科目」にある全て の教科目に ついて、および 「選択必修科 目」か ら 18 単位以上 、「 教養科目 」か ら 10 単位以上 を取得する ことが定め られている8 このうち 声楽実技に 関する科目 は「必修 科目」で ある「保育の 表現技術 」が該当 する 。「保育 の表現 技術」では身 体表現、音 楽表現、造 形表現、言語表 現等の表現活 動に関する 内容で構成 されてお り、音 楽に関しては 下記の内容 が挙げられ ている9 (1)子どもの発達と 音楽表現に 関する知 識と技術 (2)身近 な 自然 や もの の音 や 音色 、人 の 声や 音楽 等 に親しむ経験 と保育の環 境 (3)子ど も の経 験 や様 々な 表 現活 動と 音 楽表 現と を 結びつける遊 びの展開 したがって 養成過程に おいて、小 学校およ び幼稚園 教諭に関して は、全教科 の単位を取 得しなく ても免 許を取得する ことが可能 となる。声 楽実技に 限らず 、 音 楽 に 関 す る 科 目 全 般 を 受 け な く と も 制 度 上 は 免 許状を取得し 、現場に出 ることがで きてしま う。保 育 士 資 格 に 関 し て は 、 音 楽 表 現 に 関 す る 単 位 が 4 単位分必修と されている が、その中 に声楽が 指定さ れているわけ ではない。 こうした 現状の中で 多くの養成 大学にお いて、声 楽実技を開講 しているこ とは有意 義であろ う。 し かしながら、シラバスを 見るとその 内容の多 くは技 術的な内容に 偏っており 、現場での 実践力に 繋がっ ているのか疑 問を持たざ るを得ない 。限られ た授業 時間数の中で 、学生たち が卒業後、現場で通 用する 力をつけるた めには、今 一度カリキ ュラムを 見直す 必要があると 考える。 2.2. 小学校、幼稚園および保育園(所)における現状 次 項 に お い て 新 た な カ リ キ ュ ラ ム の あ り 方 を 考 察するにあた り、現場の 現状や課題 を調べた 。関連 する研究は多 いが、ここ ではその一 部を取り 上げた い。 例えば、大野ら(2013)は現在幼稚園や保 育所に就 職している卒 業生 131 名を対象に 保育現場 におけ る音楽表現活 動に関する 調査を行っ た4。その結果 、 保育現場での 童謡の活用 状況を見る と、園の 形態を 問わず高頻度 で童謡がう たわれてお り、特に 民間保 育所では回答 者の 97%が「とて も良く歌 う」/「良 く歌う」と 答えた 。また 、園におけ る童謡の 必要性 を問うと、各 園では総じ て「必要性 を強く感 じてい る」との回 答が多かっ た。そ の一方で 、現場 に出て からは仕事の 多忙さ故、歌やピアノ 伴奏の習 得が困 難であること や、「童謡を 知らない 」/「やっ ていな い」ことが、保育士間や 保育の仕事 そのもの に影響 してくるとも 記されて おり、概ね 100%の卒業生が 短 大 教 育 の 中 で 童 謡 を 習 得 す る 必 要 性 を 感 じ て い た。 また、中 野ら(2012)は、幼稚園および 保育園 150 箇 所 を 対 象 に 保 育 現 場 で 行 わ れ る 音 楽 活 動 に 関 す るアンケート を行った1。その結 果、現場で の歌唱 について重 視すべき要 素を見ると 、「 音程の正確 さ」、 「表情の豊か さ」、「 リズムの正 確さ 」が上位を 占め ている。ま た、現場の指導 者が短大 での音楽教 育で

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45 望むことを見 ると、ここで も「応用力」や「 表現力 」、 「音程やリズ ムの正確さ 」、が 挙がって おり、これ らの能力が重 視される一 方で、現場 に出るまで に十 分に育成され ていないこ とが窺える 。 他にも、早川ら(2012)は免許状 更新講習に 参加 し た 小 学 校 教 員 を 対 象 に 歌 唱 指 導 に 関 す る ア ン ケ ートを行っ た10。その結果、多くの 教師が歌唱 指導 に つ い て 問 題 意 識 や 苦 手 意 識 を 持 っ て い る こ と が 明らかにな った。 さらに 、「楽 しい指導 法」や 「意 欲を喚起する 指導法 」など 、現場で 子どもたち にど のように対応 すると良い のか、現場 の教員から は実 践 的 な ア ド バ イ ス を 求 め る 声 が 多 い こ と も 分 か っ た。 また、安 藤(2015)は「初等 音楽科教 育法」の講義を 受 け る 教 育 学 部 の 学 生 を 対 象 に 音 楽 経 験 な ど に 関 するアンケー トを行っ た11。その結 果から、教師と し て 持 つ べ き 音 楽 の 基 礎 力 が 不 十 分 な 学 生 が ほ と んどであるこ とが明らか になった。在学中に 様々な 指導内容や指 導法を知り 、自らが授 業を構築 できる 実践力を身に つける必要 性が指摘さ れている 。 他にも、イ ンターネッ ト上には、指導者の 歌に関す る 悩 み や 対 処 法 に 関 す る 記 事 が 多 く あ る( 例 : 12 ,13) 歌 唱 や 合 唱 な ど に 関 す る 指 導 書 も 多 数 出 版 さ れ て おり(例 : 1 4,1 5)、教育および保育現 場のタイ プを 問 わ ず、童謡など の歌唱指導 に悩む指導 者の多さ が窺え る。我々 、教員養 成を担う大 学におい て、こ れらの 解決は急務で ある。そ こで、我 々は現状 を踏まえ 、 対策案を以下 に考察して いく。 3.教員お よび保 育士養 成課 程にお ける声 楽関連 科 目の現状 3.1. 各大学における声楽関連科目のシラバス分析 養 成 課 程 に お け る 声 楽 関 連 科 目 が ど の よ う な 内 容で実施され ているのか 、その現状 を分析す るため 、 養成学部を持 つ大学のシ ラバスを調 査した。なかで も 講 義 の 指 導 内 容 が 実 際 の 教 育 現 場 に お い て 通 用 するかという 観点から分 析した。 その結果 、講義で使 用する課題 曲が学生 には難し いのではない か、という ことが問題 点として 明らか になった。具 体的には、音楽の専門 教育で取 り上げ るようなコー ルユーブン ゲンやコン コーネ 50 番、 イ タ リ ア 歌 曲 な ど を 教 材 と し て 用 い て い る 大 学 が 散見したが、これらの課 題は高校以 前に音楽 に関す る 専 門 教 育 を 受 け て い な い 学 生 に と っ て は 理 解 し 難いものであ る。なぜな らば、コー ルユーブ ンゲン は無伴奏で歌 う、音程 を取るた めの練習 曲であり 、 本 来 は ピ ア ノ な ど の 平 均 律 で 調 律 さ れ た 楽 器 で 音 を取るのでは なく、自分 の耳で音を 取り練習 するも のでもある。正しい発声 がある程度 理解でき ている 者 が 正 し く 使 用 す れ ば そ れ な り の 効 果 が 得 ら れ る が、発声はお ろか読譜に も慣れてい ない初心 者の学 生 が 時 間 に 制 約 が あ る 講 義 の 中 で 使 用 す る に は 難 易度が高すぎ る教則本 である。 次にコン コーネは 、 伴奏はあるが 、響きを保 ったまま母 音唱で歌 唱する ための練習曲 であり、歌 詞がない。抑揚は学 びやす いものの、教 育現場では あまり使用 しないほ ど音に 高低さがある ため、こち らも限られ た時間の 講義に 使用する必要 はない教則 本と考える 。そもそ もこれ らの課題とし て使用され ている練習 曲は、実 際の教 育 お よ び 保 育 の 現 場 で は 教 材 と し て 使 用 さ れ る こ とはほとんど ない。した がって、こ れらの課 題曲を 教材として用 いる意図が 明確ではな く、単な る練習 曲として使用 しているの であれば、その必要 性を再 考すべきでは ないだろう か。さらに は、無伴 奏で歌 わせることや 、歌詞がな い曲に抑揚 をつける という ことは、音楽 に対する興 味を失わせ る可能性 すら考 えられる。 このよう に、教員や 保育士養成 学部にお ける声楽 の講義内容は 、音楽の基 礎知識を持 たない初 心者の 学生への配慮 が欠けてい るのが現状 である。 3.2. 教育および保 育現場 での教 材用 書籍の 分析 本論文で は、市販 されてい る音楽教 材用書籍 が、 子 ど も た ち に 楽 曲 を 教 え る に 当 た っ て わ か り や す い内容となっ ているか という観 点から 、『や さしく 弾ける保育の ピアノ伴 奏』(新星出 版社)を 取り上 げて分析した。こ の書籍は、カ ラー刷り で見やすく 、 曲 に よ っ て は 初 心 者 に も 上 級 者 に も 対 応 し た 伴 奏 方法が提示さ れており、童謡等の歌 詞に対す る古い 言い回しの意 味などが 掲載され ていた。 たとえば 、 文部省唱歌「 かたつむり 」では、歌 い初めの「でん でん」につ いて、わらべ唄と して歌わ れる中で 、子 どもたちがか たつむりに 貝の背から「出よ出 よ」と 呼 び か け た 言 葉 が 訛 っ た も の と 考 え ら れ て い る と いう解説がさ れている1 6。またこの 本は、所 々に指 番号が振って あり、初心 者でも指使 いに迷う ことの ないように工 夫されてい る。さらに 本の最後 にコー ド表も掲載さ れており、和音伴奏で 対応する ことも できる。 このよう な教材用書 籍は指導者 にとって 、便利で

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46 非常に使いや すいものと なるであろ う。しか しなが ら歌いやすさ や弾きやす さを求める あまり、メロデ ィラインが簡 易化され、原曲のメロ ディとは 異なる 曲に編曲され ているもの もある。童 謡は作曲 者と作 詞 者 が メ ロ デ ィ に 込 め た 思 い を 表 現 す る 作 品 で あ る。したがっ て、可能な かぎり原曲 のメロデ ィライ ンに忠実に歌 うことが望 ましい。こ のような 点から 考えると、初 心者向けの 教材には、原曲の良 さを消 し て し ま う ほ ど の 簡 易 化 が 施 さ れ て い る と い う 短 所があること も分かる。指導者を養 成するた めの講 義で使用する 教材につい ては、内容 の長所と 短所を よく理解した うえで、選 択すること が必要だ ろう。 3.3. 子どもへの歌 唱指導 に求め られ る能力 ここでは 、子どもた ちへの歌唱 指導につ いて、特 に「歌う」こ とをどのよ うに指導す れば子ど もたち の表現力を高 めることが できるのか 、先行研 究をま とめる。教育 や保育の現 場で子ども たちをど のよう に指導すべき かを考える ことにより 、教員養 成学部 において、学 生に提供す べき要素を 考察する 。 鍛冶ら(2006 年)は、 幼稚園の 歌唱指導 の際には 教師が確かな 音程で歌う ことや、幼 児の自分 なりの 表現を大切に 育てること 、幼児の声 域の個人 差を理 解 し て 指 導 し て い く こ と が 重 要 で あ る と 述 べ て い る17。これは、子ども に歌を教え る際には、指導者 自 身 が 正 確 な 音 程 で 歌 う こ と が で き な け れ ば な ら ないというこ とである 。したが って養成 学部では 、 正 確 な 音 程 で 歌 う こ と が で き る よ う に 学 生 を 育 成 しなければな らない。さ らに、“自 分なりの 表現を 大切に育てる ”とあるよ うに、曲の 音楽的特 徴や歌 詞の意味など を理解する 力や、自分 の理解し た気持 ち を 他 者 に 伝 え ら れ る よ う な 表 現 力 を 身 に つ け る ことも重要で ある。加え て鍛冶らは 、指導法 や教材 の 研 究 を 引 き 続 き 行 っ て い く こ と が 必 要 で あ る と 提案している 。教員を目 指す学生に 対し、具 体的に どのような力 を身につけ させるのか 、より明 確な目 的を持って教 材を選び、指導方法を 検討する ことが 重要である。 宮脇ら(2007 年)は、平成 16 年まで各 都道府県 主催(厚労省 委託)で 行われて きた「保 育士試験 」 の実技試験の 課題曲に ついて分 析し 、「ピア ノはバ イエル」「 声楽はコ ンコーネか コールユ ーブンゲン 」 から出題する 都道府県が 圧倒的に多 く、逆に 養成校 も こ れ に 準 じ た 授 業 を す る と い う 悪 循 環 も 見 ら れ ると指摘して いる1 8。しかしながら このよう な悪循 環を受け、平成 17 年度から始まっ た「全国 統一保 育士試験 」(全国 保育士養 成協議会 主催)の 音楽課 題が「幼児の歌唱 教材の弾き 歌い」のみ(2 曲)と 改定された。 そのため宮 脇らは、平成 18 年度まで はテキスト(「声 楽教本: 森田百合 子他著、 教育芸 術社」) をそのま ま使い 、「コン コーネ 」「コ ールユ ーブンゲン 」「リ ズム打ち 」を特に 重視して 授業を 行ってきたが 、平成 19 年度からは 同じテキ ストを 使いながら、 副教材とし て、幼児の 歌唱教材 69 曲 を選曲し使用 している 。さらに 、出来 るだけ「実践 力を身につけ る」という 教育目標を 掲げ、ソ ルフェ ージュ的内容 も「歌唱 教材」の中で取 り上げ 、コン コーネ、コー ルユーブン ゲン等の基 礎練習に 時間を 割かない方針 に変えた 。その結 果、(1)こど ものう た(2)あそびう た(3)歌唱(4) 理論・そ の他、 の 4 分野を並 行させなが ら授業を構 成してい る。教 職に就くため にも、その 後の実践の 場でも、必要と なるのはほと んどが童謡 等であるた め、実践 力を養 うには良い指 導法であろ う。 「歌う」ことは子ど もたちにと っても比 較的容易 に体験できる 音楽表現の 一つであ る19。しか しその 体験のありか た如何で、子どもたち の成長、発達に 及 ぼ す 効 果 は 全 く 違 う も の と な る こ と は 想 像 に 難 くない。この 点につい て小野は 、もし優 れた曲を 、 適切な指導の もとに体験 することが できたな ら、子 どもたちは、必ず「歌う 」ことを楽 しみ、音 楽の喜 びを知ること ができるだ ろうと指摘 している 。また 、 何よりも「歌 う」喜び を知り 、「歌 」を心の 支えと して生きる事 は、子ども たちの未来 に力と安 らぎを もたらすこと に繋がると 述べている 。歌を含 む幼少 期の音楽活動 が、子ども たちの脳の 発達を促 し、心 と体の健全な 成長に大き な影響を与 えること は、さ まざまな研究 により実証 されてい る20。これ らの研 究の結果は、多感な年齢 の子どもた ちがどの ような 音楽体験をす るかによっ て、子ども の将来に 与える 影響も異なる ことを示唆 している。言い換え るなら ば、子どもた ちに音楽を 指導する教 師の指導 のあり かたが、子ど もたちの可 能性を左右 するほど に重要 であるという ことである 。 さらに武 田(1980 年)は、「幼児の 歌唱指導 は、 聴唱法によっ てなされる 為に、その 導入段階 の指導 のあり方は、幼児に対し て後々まで も影響を 与えて 行く。つま り、歌 を覚える手 段が、楽譜を媒 介とし てではなく、 範唱を聴 きながら の模唱で あるため 、 そ の 曲 の 持 っ て い る 音 楽 的 な 味 わ い は も ち ろ ん の

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47 こと、リズムや旋 律などの 音楽的要素 面、また発音 、 発声などの表 現技能面の すべてが、耳に訴え た感覚 的な指導でな ければなら ない。」と述べ ている 2 1 武田は、子ど もたちの成 長過程にお いて、音 楽との 初期の関わり は、耳から の情報が優 先される と指摘 している。つ まり子ど もに歌唱 を指導す る際には 、 指導者がお手 本となる 歌を歌え なければ ならない 。 したがって、教育や保育 の場面で指 導をする 教員に は、正確な音 程やリズム は言うまで も無く、言葉の 意味や発音、その他様々 な要素を的 確に再現 し、子 ど も た ち の 好 奇 心 を か き 立 て る よ う な 表 現 力 を つ けた歌い方が 求められる 。教員の養 成には、よりよ いお手本とな る範唱が出 来るように 、耳を通 して子 ど も た ち の 心 に 響 く 歌 唱 を 目 指 せ る よ う な 講 義 が 必要である。 以上のこ とから、子 どもたちの 歌唱は、彼らの成 長 過 程 に お い て も 心 の 豊 か さ や 表 現 力 を 高 め る こ と に 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る こ と が 明 ら か と な った。子ども に歌を教え るためには 指導者の 抑揚の ある範唱が不 可欠である 。つまり、指導者を 目指す 学生が学ぶ教 員養成課程 においては 、正確な 音程で 歌うことや、曲調や歌詞 の意味を反 映した抑 揚のあ る歌い方がで きるよう、講義におい て学生を 育成す ることが重要 である。そ のためには 、講義内 容や使 用する教材に ついての検 討も必要で ある。宮 脇らに よると、採用 試験課題と してコンコ ーネやコ ールユ ーブンゲンを 用いるとこ ろが少ない ことから 、これ ら の 課 題 を 養 成 課 程 の 講 義 で 使 用 す る 必 要 性 に つ いて改めて検 討すべきで あろう。 3.4. 養成課程にお ける声 楽の指 導法 の提案 3.4.1. 既設の講義内容 に関す る問題 点 養 成 課 程 を 有 す る 大 学 に お い て 展 開 さ れ て い る 声楽関連科目 には、いく つかの問題 点がある 。授業 回数が限られ ており、課 題曲 1 曲に 割く時間 が少な いため、受講 する学生は 、童謡等の 歌詞の意 味を理 解し、抑揚を つけて表現 するまでに は至って いない のが現状であ る。そのた め、学生が 教職に就 いた際 に、指導する 子どもたち に、歌詞の 意味や音 の強弱 を伝えること ができず、指導方法に 悩む教師 を生み 出しているこ とも事実で ある2 2 さらに、養成課程を もつ各大学 のシラバ スからは 、 「歌う」とい うことに対 し、初心者 の学生が 無理の ない発声で歌 えるように することや 、どのよ うに表 現 を す る の か 楽 譜 か ら 読 み 解 く 方 法 を 教 え る こ と が考慮されて いないこと が分かる。 たとえば S 大学のシラ バスでは、声楽単独 の講義が なく、器楽や 表現の授業 で少し童謡 等を扱う のみと なっている。 また N 大学では、 声楽演習 Ⅰで日本歌 曲を 4 曲、 声楽演習Ⅱで 外国歌曲 を 7 曲教えて いる。声 楽の講 義とは別に弾 き歌いの講 義もあるの で、そこ で童謡 等を扱ってい ると推察す るが、そも そも教育 および 保育現場で日 本歌曲、ま してや外国 歌曲(イ タリア 語)などを教 えることは 皆無に等し い。声楽 単独の 講義がカリキ ュラムに組 まれている のであれ ば、歌 曲 等 よ り は 童 謡 等 を よ り 深 く 教 え て も よ い の で は ないだろうか 。 特に、大 学入学以前 に音楽に関 する専門 教育を受 けていない学 生は、音楽 や楽譜とい うものに 多少な りとも苦手意 識を持って いると思わ れる。そ のよう な学生に、ま ずは歌うこ とへの興味 を持たせ るべき ではないだろ うか。教材 としてコー ルユーブ ンゲン やコンコーネ 50 を使用すること、 ならびに オペラ の 一 部 分 を 抜 粋 し た 重 唱 な ど を 授 業 に 取 り 入 れ て いる大学もあ るが、初心 者にそのよ うな専門 的な課 題を与えるこ とは、苦手 意識を抱か せる一因 になる だろう。ま た、教 育や保育の 現場にお ける、子ども たちへの音楽 教育にとっ ても、直接 的には必 要では ないだろう。さらに、音 程や強弱を 学ばせた いので あれば、コー ルユーブン ゲンなどを 用いずと も、直 接、童謡を教 材として指 導してもよ いのでは ないか と考える。 さらに、表現力をつ けるための 訓練、と くに感情 を込めて歌う ことについ ては、具体 的な指導 内容を 示している大 学は少ない 。感情を込 めて歌う ことに より、歌って いる人間も 、またその 音楽を聴 いてい る人間も、音 楽の喜びを 感じ取るこ とができ る。感 情を込めた演 奏をするた めには、歌 詞の意味 やその 楽曲の時代背 景を理解し ておく必要 がある。しかし ながら、現行 の講義内容 からは、学 生自身に 表現力 を身につけ、子どもたち にも指導が できるよ うな力 を養うための 教育内容に なっていな い。 な に よ り 学 生 に 音 楽 へ の 興 味 を 抱 か せ る よ う な 講義内容にな っていな いことが 大きな問 題である 。 興味を持たな ければ練習 がおろそか になり、練習を しなければ上 達せず、上 達しなけれ ば自信に も繋が らない。そし て自信の 無いまま 教育現場 に立つと 、 口 を 大 き く 開 け る こ と や 大 き な 声 を 出 す こ と を 躊 躇し、結果と して音程も リズムも曖 昧な歌い 方をし

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48 てしまうこと になる。学 生たちが将 来、教育 現場で 教える時、範 唱の時点で 曖昧な歌い 方をして しまう と、子どもた ちも曖昧に しか歌えな くなって しまう 恐れがある。教員や保育 士資格の取 得を目指 す学生 にとっての声 楽の授業内 容は、学生 本人の実 技能力 にとどまらず 、将来相対 することに なる子ど もたち の 多 様 な 経 験 の 質 に も 影 響 を 及 ぼ す こ と な の で あ る。 3.4.2. 声楽の指導法の 提案 では学生 に対して、どのように 指導すれ ば、音程 を正しく取ら せることが できるだろ うか。こ こでは 「うれしいひ なまつり(図 1)」を例 に取り上 げて考 える。 図 1 「うれしい ひなまつ り」 (『やさしく弾ける保育のピアノ伴奏16』より抜粋) この曲は歌詞 が 4 番まで あるが、1 番から 4 番 まで の全てで同 じ歌い 方ができ る小節 はほとん どない 。 たとえば、歌い出しの 小節につ いては 、3 番だけ「き ーんの」と 、一 拍目裏の八 分音符を 延ばして歌 うこ とになってい る。一 番難しいの は、短 3 度が 2 回続 きながらリズ ムが早くな る「五 人囃子の 」の部 分で あろう。こ こは歌詞 が 1 番か ら 4 番まで 、前の 小節 と続いた 6 文字の途中・ 歌詞が 4 文字・歌詞が 3 文字+1 文字と 、それぞれ パターン が分かれる ので、 同じ音程・リ ズムでも歌 い分ける必 要がある 。 したがっ て、やみく もに歌わせ るのでは なく、リ ズムや節回し の違いを具 体的に提示 し、それ ぞれに 応 じ た 歌 い 方 が 出 来 る よ う に 注 意 し な が ら 講 義 す る必要がある 。小学校、幼稚園や保 育所など の現場 で子どもたち に範唱する 際も、細か なリズム に注意 し て 行 わ な け れ ば 曲 本 来 の 良 さ が 伝 わ り に く く な る。 子どもた ちは、適切 な指導がな ければ往 々にして た だ 大 き な 声 で 叫 ぶ だ け の 歌 い 方 を す る 傾 向 に あ る。大声で叫 ぶだけでは 歌唱とはい えない。そのよ うなことを避 ける意味に おいても、教師によ る最初 の 範 唱 は 子 ど も た ち に と り き わ め て 重 要 で あ る た め、範唱を行 う前に慎重 に楽曲分析 を行って おくこ とは大切なこ とである。 また、学 生には音程 を正しくと って歌え る力を身 につけさせな ければなら ない。たと えば、長 3 度の 音程を、曖昧 に短 3 度に 近い音程で 歌うと、曲調が 一変し明るい 曲(長調)から暗い曲(短調)になっ てしまう。そ のためには 、学生が自 分の声を 良く聞 き、音程に注 意を払う 訓練をし なければ ならない 。 さらに、音程 を正確に歌 うためには 、口の開 け方や 息の使い方に 勢いが必要 となるが、自信のな い学生 は 口 を 大 き く 開 け て 歌 う こ と を 躊 躇 し て し ま う 傾 向が強い。そ のため、 音程が曖 昧になっ てしまう 。 指導をする教 師が、リ ズム、音程、強弱など にも注 意 し つ つ 自 信 を 持 っ て 歌 わ な け れ ば 子 ど も た ち に も自信の無さ が伝わるで あろうし、子どもた ちも曖 昧なお手本に したがって 歌ってしま うだろう 。どの よ う な 歌 い 方 が 正 確 な 音 程 の 確 保 に つ な が る の か を具体的に示 しながら、学生に自信 をつけさ せてい くことが必要 である。 さらに、歌詞の意味 を理解させ 、言葉の フレーズ に注意し、抑 揚をつけて 歌えるよう に、歌詞 を分析 し て 歌 い 方 を 考 え る 方 法 を 指 導 す る こ と も 重 要 で ある。学生た ちが自ら歌 詞の意味を 考え、表 現に工 夫ができるよ うになれば 、将来、現 場で子ど もたち に 教 え る と き に も 表 現 力 豊 か に 歌 え る よ う 指 導 で きるであろう 。 歌詞の分 析をするた めには、ブ レスにつ いても教 えなければな らない。歌 唱にはブレ スは必須 のもの であるが、そ のブレスを とる場所を 十分に検 討した うえで選択し なければ、歌詞の意味 が変わっ てしま う。学生には 、子どもた ちに範唱す る時には ブレス の位置に十分 注意し、言 葉の意味が 通るよう に歌う よう、常に意 識させるこ とも大切で ある。歌 詞の意

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49 味をよく考え るならば 、ワンフ レーズの『途中 』で ブレスをする(例えば「あか りを」というひ とかた まりのフレー ズを 、「あ・ かりを」 のように フレー ズを分断して ブレスをと ってしまう )ことも なくな るであろう。また学生が 将来、教育 や保育の 現場で 伴奏を行う時 には、子ど もたちの成 長に応じ た対応 をし、ブレ スを『 待つ』こともでき るように なるだ ろう。 くわえて 、各曲に適 した声で範 唱するこ とも重要 である。楽 しい曲なの か、悲 しい曲な のか、曲想に 合 っ た 声 で 歌 う こ と を 心 が け る べ き で あ る と 同 時 に、指導をす る子どもた ちにそれを わかりや すく伝 える方法につ いても、学 生とともに 考えるこ とが大 切である。 ただ、「大きな 声で歌いま しょう 」「元気 に歌いま しょう」と子 どもたちに 言うだけで は、音程 を度外 視して、やみ くもに声を 張り上げて 怒鳴って 歌う結 果となる恐れ がある 。「楽しく 歌いまし ょう」「優し く歌いましょ う」「やわ らかく歌 いましょう」など、 子どもたちの 年齢や理解 力に応じて 言葉を換 え、イ メ ー ジ を 膨 ら ま せ る 表 現 を 多 用 す る こ と に よ り 曲 想を形作る工 夫をするな らば、子ど もたちの 捉え方 も変わるので はないだろ うか。 3.5. 養成課程にお ける音 楽関連 科目 のあり 方 教 員 免 許 お よ び 保 育 士 資 格 の 養 成 課 程 を 持 つ 大 学の多くが、音楽に関す る講義コマ 数を増や す余裕 はないのが実 状である。限られた講 義時間数 の中で 、 学生に必要な 技術を身に つけさせる ためには 、講義 内 容 や 教 示 方 法 に 工 夫 が 必 要 で あ る こ と は い う ま でもない。最 優先で改善 すべき点と して、音 楽経験 の無い初心者 への配慮が 挙げられる 。各大学 の養成 課程における 音楽関連科 目では、音 楽に関す る能力 (経験)の有 無に合わせ た授業内容(クラス 分けな ど)になっ ていないこ とが多い 。この ため、一部の 学生にとって は内容が難 しく感じら れ、音楽 への興 味を失ってし まっている 実例もあ る23。実際 、本学 においても、楽譜を読む ことができ ない学生 が多く 受講している 。そのよ うな学生 達を、実践の場 、即 ち 子 ど も た ち に 対 し て 歌 を 教 え る と い う 状 態 ま で 育て上げるこ とは、限ら れた講義回 数の中で は、非 常に厳しいこ とである。このような レベルの 学生は 伴奏を弾くこ とに必死と なってしま い、歌唱 が小さ な声になった り、子ども たちが聴き 取ること のでき な い よ う な 曖 昧 な 音 程 や 歌 詞 で 歌 っ て い る ケ ー ス が多い。この ような状況 を改善する ためには 、学生 の能力に応じ た対応が必 要である。たとえば 、楽譜 を読むことに 慣れていな い学生には 、理解の 程度に 応じて、楽譜 の読み方 を教える 必要があ るだろう 。 多くの学生は 、単一譜表 であれば難 なく読む ことが できても、大 譜表の楽譜 になると、譜読みに 尻込み したり時間が かかったり する。その ような学 生には 、 大譜表の中の 全てのドの 位置を教え 、そこか らいま 知りたい音名 を、瞬時に 数えられる ように指 導する ことができる 。すばやく ドレミを読 むことが 出来る と、歌う際に 音程が取り やすくなり 、楽曲を 覚える ことも容易に なる。図 2 に示したと おり、大 譜表で は、中心のド を基準とし て、中心よ り低いド と中心 より高いド は 180°反転した位置に ある。こ のドの 位置だけでも 把握すると 、楽譜を読 むことに かける 時間の短縮が 期待できる 。 図 2 大譜表におけ るドの位 置 す ば や く 楽 譜 を 読 む こ と が で き る と そ れ だ け 自 信にも繋がり 、音楽への 苦手意識も 軽減され るので はないだろう か。 一方で、演奏の際に は楽譜だけ に頼らず 、耳をつ か っ て 曲 を 覚 え る 方 法 を 教 え る こ と も で き る だ ろ う。初心者に 対しても経 験者に対し ても、一 つの曲 を耳から覚え ることによ って、すな わち、何 度も繰 り返して曲を 聴き、かつ 歌わせるこ とで、そ の曲を レパートリー に増やすこ とが可能と なる。学 生に曲 を 聴 か せ る と き は 講 師 が 実 演 す る こ と だ け で は な く、CD や DVD などを活用しても同 様の効果 を得る ことが期待さ れる。さら に、音符通 りに歌詞 を読む 「リズム読み 」も 、効果的な 練習の方 法である 。リ ズ ム 読 み の 状 態 で 感 情 を 込 め て 唱 え て 練 習 を す る と、明確なリ ズムの再現 や歌詞にメ リハリを もたせ ることにもつ ながる。こ のように、より効率 的にレ パ ー ト リ ー 曲 を 増 や す 練 習 方 法 を 教 え る こ と も 必 要である。 また、よ りよい発 声を目指 すことも 重要であ る。 声は、軟口蓋 から鼻く うを抜け て出すと よく通り 、 かつ喉に負担 なく発声で きる。しか しながら 、この よ う な 発 声 に は 各 器 官 の 運 動 機 能 を コ ン ト ロ ー ル することが不 可欠であり 、その方法 を言葉だ けで説

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50 明をすること はきわめて 困難である 。なによ り、発 声方法につい ての基礎を 持たない学 生にとっ て、各 器官の動かし 方をイメー ジすること は難しく 、説明 に 対 す る 学 生 各 々 の 受 け 留 め 方 や 実 践 の 仕 方 が 異 なるため、集 団での指導 には充分に 注意しな ければ ならない。 くわえて 、表現力 を高める 指導も不 可欠であ る。 曲を覚えても 、ただ楽譜 通りに歌う だけでは 、聞き 手 に は 歌 詞 の 意 味 ど こ ろ か 歌 詞 そ の も の で す ら 伝 わらない。感 情を込めて 歌えるよう にするた めには 、 歌 詞 の 意 味 や そ の 曲 の 時 代 背 景 を 理 解 し た う え で 歌うことが重 要である 。また 、童謡等 には、現代で は 使 わ な い よ う な 言 い 回 し が 含 ま れ て い る こ と も 多い。作曲さ れた時代の 背景、当時 の日本の 風景や 伝承なども合 わせて学 生に考え させるこ とにより 、 将来教育現場 に立ったと きには、子 どもたち に歌の 内容を詳細に 伝えること ができるだ ろう。 教 育 や 保 育 の 現 場 で は さ ま ざ ま な 場 面 で 数 多 く の曲を子ども たちに教え ることにな る。した がって 、 教員や保育士 を目指す学 生にとって は、童謡 等のレ パートリーが 豊富であ ることが 望ましい 。しかし 、 現行の講義方 法・内容の ままである と、講義 で扱え る童謡の曲数 は少ないの ではないだ ろうか。自分が 単に知ってい る曲よりも 、歌いなれ た曲の方 が他者 へ教えやすい ことは当然 のことであ る。将来 教職に 就き、子ども たちに歌を 教える立場 になる学 生には 、 できるだけ多 くの童謡を 取り上げ、レパート リーを 増やすことに 貢献すべき だと考える 。 そのため には、コー ルユーブン ゲンやコ ンコーネ 50、オペラの 一部分を抜 粋した重唱 などを授 業に取 り入れるより も、その時 間を童謡等 の指導に 当てる べきではない だろうか。そして一つ の曲を時 間をか け て 深 く 丁 寧 に 分 析 す る 方 法 を 講 義 に 含 め る べ き ではないだろ うか。 4. おわりに 本論文で は、小 学校・幼稚園教諭 の免許 、および 保育士資格の 取得を目指 す学生を対 象とした 、音楽 (声楽)の指 導方法につ いて分析し 、問題点 と改善 のための提案 を述べてき た。即戦力 となる教 員や保 育士を育成す るためには 、学生たち により多 くの童 謡を教えるべ きであるが 、いずれの 大学にお いても 、 現 状 の カ リ キ ュ ラ ム で は 音 楽 関 係 の 開 講 科 目 数 が 不足している 。少ない講 義数でいか に効率よ く教え ることができ るかが、今 後の課題に なるだろ う。限 ら れ た 授 業 コ マ 数 で よ り 効 率 的 に 講 義 す る た め の 一案として、音楽関連科 目間の連携 を充実さ せるこ とができるの ではないか 。たとえば 、声楽と ピアノ の講義を展開 している学 部であれば 、両者の 講義内 容に連続性を もたせ連携 させると、学生の理 解にも 経時的な効果 を期待でき るであろう 。 例えば、本学大阪樟 蔭女子大学 では、声 楽の授業 が 1 年生の前 期と 2 年生 の後期にあ り、器楽(ピア ノ)の授業 が 2 年生前期 と 3 年生後 期に開講 されて いる。このカ リキュラム 編成を利用 し、声楽 と器楽 の 講 義 で 共 通 の 曲 を 教 材 と し て 用 い る こ と を 提 案 したい。声楽 の授業では 童謡の歌唱 指導を行 い、器 楽の授業時に は同じ曲の 伴奏付けや 、弾き歌 いの訓 練をすること で、科目間 に連続性を 持たせる ことが 可能となるだ ろう。学生 にとって耳 なじみの ない曲 であっても、授業間で連 携し同一の 曲を継続 して用 いるならば、曲への理解 も深まり、演奏技術 の向上 も見込めるで あろう。な により、学 生のレパ ートリ ーを増やすこ とにもつな がる。 この案を 実現するた めには、カ リキュラ ムの改訂 や双方の指導 者陣との連 携も必要と なるため 、解決 すべき問題が 多いことも 事実である 。しかし ながら 、 養成課程とし て、社会で 即戦力とし て活躍で きる人 材を育成する ことが求め られている 以上、学 生の能 力 に 応 じ た 対 応 を 積 極 的 に 考 え て ゆ か な け れ ば な らないことは 明らかであ る。 中央教育 審議会によ る答申「こ れからの 学校教育 を 担 う 教 員 の 資 質 能 力 の 向 上 に つ い て 」( 平 成 27 年 12 月)では 、「 子供たちに 、知識 や技能の 修得の みならず、こ れらを活用 して子供た ちが課題 を解決 するために必 要な思考力 、判断力、表現力及 び主体 的 に 学 習 に 取 り 組 む 態 度 を 育 む 指 導 力 を 身 に 付 け ることが必要 である」とし ている2 4。これは、音楽 に関しても当 てはまるこ とである。音楽を指 導する 際には、音楽 的な知識の みならず、音楽を通 して何 を伝えるのか 、また音 楽で何が 表現でき るのかを 、 子どもたちに 経験させる ことが重要 である。 保育士や 幼稚園教諭 、また小学 校教諭は 、様々な 経 験 の 入 り 口 に い る 多 感 な 時 期 の 子 ど も た ち と 密 接に関わる職 業である。人生の初期 段階で出 会う多 様な刺激が、その後の子 どもたちの 嗜好や特 技など に影響するこ とは論を俟 たないが、そのなか でも音 楽 と い う 刺 激 が 子 ど も の 発 達 に 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る こ と は 様 々 な 研 究 が 指 摘 し て い る こ と で ある20。換言すると、保育所や幼 稚園、また 小学校

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51 などにおいて 、音楽をど のように指 導するか によっ て、子どもた ちの将来へ の可能性が 左右され るとい うことでもあ る。 本 研 究 で は 、 養 成 大 学 に お け る 声 楽 実 技 (歌 唱 ) のあり方を考 察してき た。これ らの分析 の結果は 、 養成課程を持 つ大学には 、子どもの 教育に関 わる職 業を目指す学 生たちが、多様な経験 のスター トライ ンにいる子ど もたちに対 し、可能な 限り質の 高い音 楽 を 提 供 で き る よ う 指 導 す る 義 務 が あ る こ と を 示 している。教 育者を目指 す学生が、自信をも って教 育の現場に立 つことがで きるよう、養成課程 におけ る 音 楽 関 連 科 目 の 教 育 の 質 を さ ら に 向 上 さ せ て い かなければな らない。 引用文献 1) 中野研也・河野 久寿(2012)「保 育現場で必 要と される音楽能 力と幼児音 楽教育との 関連」仁愛 女 子短期大学研 究紀要第 44 号.pp.71-78. 2) 柏瀬愛子・佐 地多美・中村美 保子・藤田ま ゆみ (1975)「教員養成課程をも つ大学にお ける音楽 教 育 の 一 考 察 ( そ の 二 ) 」 名 古 屋 女 子 大 学 紀 要 21.pp.167-173. 3) 登啓子(2012)「保育における音 楽表現活動 の検 討 」 埼 玉 学 園 大 学 紀 要 ( 人 間 学 部 篇 ) 第 12 号 . pp.267-273. 4) 大野恵美・赤井 裕美(2013)「保 育現場の音 楽表 現活動の実 態と短 大教育の 在り方 に関する 研究-保育者養成校 における音 楽教育-」湘北 紀要第 34 号. pp.1-29. 5) 文部科学 省初等中等 教育局教職 員課「教員 の免 許 、 採 用 、 人 事 、 研 修 等 「 教 員 免 許 状 に 関 す る Q&A」」. http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoin/m ain13_a2.htm (2017 年 9 月 22 日閲覧). 6) 文部科学 省初等中等 教育局教職 員課(2009)「教 育職員免許 法及び 教育職員 免許法 施行規則(教 員 免許課程認定 関係条文抜 粋)」. 7) 全国保 育士養 成協議会 「保育 士試験 Q&A-保育 士資格を得る には」. http://www.hoyokyo.or.jp/exam/qa/01.html (2017 年 9 月 22 日閲覧). 8) 厚生労 働省「 児童福祉 法施行 規則第 6 条の 2 第 1 項第 3 号の指定保育士 養成施設の 修業教科 目 及び単位数並 びに履修方 法(平成 22 年 7 月 13 日 厚生労働省告 示第 278 号改正版)」. http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kodomo /shikaku/hoikusi-youseisisetu.files/130523.pd f (2017 年 9 月 22 日閲覧). 9) 厚生労 働省(2003)「「保育 の表現技 術」の 内容 (参考資料 2)」. http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901 000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/000009 1439.pdf (2017 年 9 月 22 日閲覧). 10) 早川倫子 ・虫明 眞砂子(2012)「歌唱指導 にお ける教師力 の育成 について-免 許状更 新講習の 実 践を通して-」 岡山大 学教師教 育開発 センター 紀 要第 2 号.pp.60-70. 11) 安藤江里(2015)「初等教 員養成に 必要と され る音楽経験 に関す る一考察 :模擬 授業の有 効性 」 川口短大紀 要 29 巻. pp.189-203. 12) 保育士転 職通信「 保育士 だけど歌 が下手 で苦 手な人が悩 む 4 つのパタ ーンと解決 法」.http:// 保育士信.com/song-conquerovercome/ (2017 年 9 月 22 日閲覧). 13) 保育ひろば「 保育士なの に音痴な 場合の対処 法とは?」. https://hoiku-hiroba.com/special/blog/usefu l/資格/保育士なの に音痴な場 合の対処 法とは/ (2017 年 9 月 22 日閲覧). 14) 富澤裕(2010)『歌唱・合唱指導 のヒント こん なときどうす る?【 音楽指導ブ ック】』.音楽之 友 社. 15) 飯田清美(2016)『子どもノリノ リ歌唱授 業 音 楽+身体表 現で”歌 遊び”68 選』. 学芸みら い 社. 16) 新星出版 社編集 部(編)(2015)『やさしく 弾け る保育のピア ノ伴奏』新 星出版社. 17) 鍛冶礼子 ・小林直 実・紫 竹英恵・ 宮野モ モ子 (2006)「幼児への歌 唱指導 につい ての一考 察-自 分から歌う 時の声 域-」千葉大 学教育 学部研究 紀 要第 54 巻.pp.63-68. 18) 宮脇長谷 子・山 田美穂子(2007)「保育者 養成 における音 楽指導 に関する 一考察(その 2)-歌唱 教材理解の 現状と 課題-」静岡 県立大 学短期大 学 部研究紀要(21).pp.49-55. 19) 小野文子(2006)「子ども の成長と 音楽: 聴く ことから歌うことへ」中国学園紀要 5.pp.125-129. 20) 福井一(2010)『音楽 の感動を科 学する ヒ トは なぜ”ホモ・カント ゥス”にな ったのか 』化学 同 人.

(11)

52 21) 武田道子(1980)「幼児の 歌唱指導 :導入 時に おけるつまづ きとその治 療」静岡大学 教育学部 研 究報告(教科教育学 篇)11.pp.119-130. 22) 山﨑正彦 ・佐野 靖(2011)「いま、 若手音 楽教 員 は ど の よ う な 課 題 に 直 面 し て い る の か ? ! 教 師歴 1〜10 年程度の教 員に対 するアン ケート か ら 見 え て く る も の 」 音 楽 教 育 Vent, Vol.17. pp.26-30. 23) 豊島久美子・ 服部安里(2016)「教員および保 育 士 養 成 学 部 に お け る ピ ア ノ 実 技 の 自 主 練 習 に関する研 究」大 阪樟蔭女 子大学 子ども研 究, Vol.7. pp.81-86. 24) 文 部 科 学 省 初 等 中 等 教 育 局 教 職 員 課 (2015) 「 こ れ か ら の 学 校 教 育 を 担 う 教 員 の 資 質 能 力 の向上につい て〜学び合 い、高め合う 教員育成 コミュニテ ィの構 築に向け て〜(中央 教育審議 会答申)」.

The Teaching Methods of Vocal Skill at the Teachers College

Faculty of Child Sciences, Department of Child Sciences, Part-time Lecturer

Anri HATTORI

Faculty of Child Sciences, Department of Child Sciences, Teaching Assistant

Noriko UNO

Faculty of Child Sciences, Department of Child Sciences

Kumiko TOYOSHIMA

Abstract

In the faculties for training elementary school teachers, kindergarten teachers and nursery teachers,

vocal practical skills are specified as compulsory subjects. However, most of the students do not have

experience receiving specialized music such as singing music and playing instruments, and also do not

have basic knowledge of music including reading score.

In this

paper

, we examined what kind of guidance contents should be effective for students to acquire

music skills without any difficulty in practical subjects for beginners of vocal music

.

Furthermore, we

clarified what kind of points should be considered at teaching children's musical activities in education,

and also analyzed the ability required as a

teacher.

Teaching subjects for getting teacher

’s

licenses and

childcare professional qualifications are requested according to the student's abilities. In addition, in

order to provide continuing music instruction to students, cooperation among music related subjects is

indispensable. This research clarifies tasks to provide more practical music

skill

and applied power to

students aiming for

getting teacher’s

license.

参照

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