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「生涯学習概論」及び教職科目におけるオンデマンド型オンライン授業に関する考察

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Academic year: 2021

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第 1 節 大学における 3 つの授業方法:

「対面型」、「同時双方向型」、

「オンデマンド型」

2020 年春以降の新型コロナウィルス感染症 拡大の影響によって、大学においても従来の 「対面型」(キャンパスへの通学、教室での集合 学修を行う)の授業の実施が困難となり、授業 方法に関する様々な対応が必要となった。 大学の授業の方法としては、大きく「対面 型」と「オンライン型」(通信機器を利用して WEB 上で行う)とに分けられるが、「オンラ イン型」にさらに「同時双方向型」と「オンデ マンド型」に分類できるであろう。

「同時双方向型」は Zoom や Microsoft Teams などを用いて、同一の時間帯に、相互通行的な コミュニケーションによって授業を行うもので あり、「オンデマンド型」は大学のポータルサ イ ト や 授 業 ツ ー ル な ど を 利 用 し て、教 員 は WEB 上で授業資料や事前収録録画等を提示 し、受講生は授業資料を読んで課題への回答を 行うという形態をとるものである。 受講生と他の受講生とが、また、受講生と教 員とが、時間、及び、空間を共有するか否かと いう点からは、「対面型」は(リアルな)時間 と(リアルな)空間を共有する。「同時双方向 型」は(リ ア ル な)時 間 を 共 有 し、空 間 は (WEB を介して)バーチャル的(疑似的)に 共有する。「オンデマンド型」は時間も、空間 も、共有しない(即ち、教員、受講生は、それ ぞれ基本的には別の時間に別の場所で、同一の 授業に関わる)ということとなる。 よって、「同時双方向型」の授業は「対面型」 の授業の実施形態に可能な限り近づけようとす る方向性をもつのに対して、「オンデマンド型」 は一見したところ、教材の郵送と課題への回答 の返送、それに対する添削という形をとるかつ ての「通信教育」(あるいは、それを WEB 上 で行う電子版)のように、教育方法としては 「対面型」とは異種のもの、しかも、今回の感 染症拡大のような異常事態に対応するための 「止むを得ざる」方法であり、あくまで代替的 な手段であるかのように見えるかもしれない。 実際、「対面型」のリアルな時間的共有・空 間的共有に比べて、「オンデマンド型」で交わ すことができる情報量は視覚的にも聴覚的に も、また、それ以外の「人間的」な交流という 点でも、かなり限定され、いわゆる「顔の見え ない」関係性にとどまることは否めない。 そこで、あらためて「対面型」、「同時双方向 型」、「オンデマンド型」のそれぞれに関して、 どのようなメリット(長所)とデメリット(短 所)をもつかを考えてみよう。

特別寄稿

「生涯学習概論」及び教職科目における

オンデマンド型オンライン授業に関する考察

奥 村 旅 人 ・ 長谷川 精 一

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「対面型」のメリットは、上記のように、視 覚的にも聴覚的にも、また、それ以外の「人間 的」な交流という点でも、交わすことのできる 情報量が圧倒的に多いことであろう。受講生と 教員、また、受講生どうしで、疑問に思ったこ とを質問し、それに返答することや、ひとつの テーマに関してディスカッション、ディベー ト、議論などを行うことが、リアルタイムで可 能である。 逆に、「対面型」のデメリットとしては、そ のようなディスカッション、ディベート、議論 などに積極的に関わらなくても、とりあえず教 室内に居るだけで「出席点」にはなる、あるい は、一方向的な講義形式の場合には、黙ってお となしく座席に座って聴いていれば、一定程 度、授業に「参加」したことと見なされるとい う点である。(抜き打ち小テストの実施などが ない限り)一回ごとの授業内容に対する受講生 各自の理解がその場で確認されるわけではな い。即ち、授業内容への理解が十分でない受講 生がいたとしても、それは表面化せず、そのよ うな受講生間の差異とは無関係に、教室内の時 間は進んでいく。 「同時双方向型」のメリットは、同一の空間 にいなくても、通信機器を利用して、バーチャ ルな「場」の共有が可能なことであろう。教室 内と同等とは言えなくとも、一定程度の意思疎 通、意見交換をリアルタイムで行うことができ る。「同時双方向型」のデメリットとしては、 通信環境の差異や機器操作のスキルの差異によ って、十分な学修環境が提供されない受講生が 出る場合があること、また、そのような受講生 によって、「場」を共有しているクラス全体で の授業の流れが滞ってしまう可能性があること である。 「オンデマンド型」に関してはどうか。上記 の「対面型」や「同時双方向型」のメリット は、そのまま「オンデマンド型」のデメリット となると考えられる。「オンデマンド型」にお いては、時間的・空間的な共有がないことを前 提としているので、交流、意見交換、リアルタ イムのコミュニケーションなどに関しては、 「オンデマンド型」は不利な方法である。 それでは、逆に、「オンデマンド型」のメリ ットはないのだろうか。口頭でのやりとりが主 となる「対面型」や「同時双方向型」とは異な り、「オンデマンド型」では、文章(文字)に よる資料と課題の提示とそれに対する文章(文 字)での回答というプロセスが中心となる。ま た、「オンデマンド」(On Demand:ユーザーの リクエストに応じてコンテンツを配信するこ と)という語義の通り、受講生は(教員が定め た一定の期日・時間の範囲内で)自分が学修し たい時間、場所を選んで、繰り返しゆっくりと 資料を読み、じっくりと課題に取り組むことが 可能である。これらの特徴は、文章(文字)を 書くことによる自己の思考の明確化・深化を生 む可能性を秘めていると考えられる。「書く」 という行為は、一種の「自己内対話」であるか らである。 また、課題に対して十分な回答をするために は、資料として提示された授業内容に対する一 定の理解が不可欠なので、「対面型」や「同時 双方向型」の場合のように「ただ座って聴いて い る」だ け で は 対 応 で き な い。「対 面 型」や 「同時双方向型」の授業における口頭でのリア ルタイムでの発言(これも、他の受講生が聴い ている中で実行するには、かなりの「勇気」を 必要とするものであるが)とは異なる、持続的 な意志と地道な努力が「オンデマンド型」で は、実 は、求 め ら れ る の で あ る。そ の た め、 「オンデマンド型」においては、「ただ座って聴

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いている」タイプの受講生の一定数が途中から その科目を放棄することになりがちであるが、 一方で、教員側から見ると、そのように毎回の 課題に着実に取り組み、自分自身の考えを文章 にまとめていくことをくり返すうちに、思考を 深め成長していく受講生の姿を(視覚的には見 えないとしても)知ることができることは、大 きな喜びでもある。 本稿では、「オンデマンド型」の授業に関し て、「知識を理解する」ことを主目的とする事 例について第 2 節で、また、「考えを深める」 ことを主目的とする事例について第 3 節で述べ たい。

第 2 節 「オンデマンド型」の

オンライン授業の実践例

本節では、「オンデマンド型」のオンライン 授業に関して、「知識を理解する」ことを主目 的とする場合の実践例として、2020 年度前期 に集中講義として行った「生涯学習概論」の場 合について記す。

Soai University Portal(https : //portal.soai.ac.jp /)の「クラスプロファイル」に PowerPoint の 提示資料をアップロードし、受講生には個々の デバイス(PC、スマートフォン、タブレット 等)からアクセスし、提示資料を読んでもら い、Google Form を用いて作成した課題に回答 してもらうという方法を取った。 このようなオンデマンド型の方法では、受講 生は一定の指定された時間内に、各自の都合に 応じて受講することができ、提示資料を繰り返 し読むことが可能であるため、自分のペースに 合わせて学修を進めることができるというメリ ットがある。その反面、教員や他の受講生と時 間・空間を共有して双方向的なコミュニケーシ ョンを行うことが難しいというデメリットもあ る。よって、この方法は、教員や他の受講生と の間での質疑応答や議論を行うには効率が良く ないが、それまでにもっていなかった知識につ いて初めて学び、理解していくことが主目的と なる場合の方法としては、適していると考えら れる。 この方法において必要な工夫としては、提示 資料の 1 単位(PowerPoint のスライド 1 枚分) に収める説明の分量をできるだけ抑えて、ステ ップ・バイ・ステップで、少しずつ、しかし、 確実に、提示する知識を理解してもらえるよう にすることが重要である。同時に、この科目は 「概論」であるので、当該分野(「生涯学習」) について初めて学ぶ受講生に、この分野に関し てできる限り包括的・網羅的に概説しなければ ならないという課題があり、そのためには、ス ライドの枚数はあまりに少ないと受講生の理解 が進んでいかない。他方、授業において受講生 に提示する教材の総量には自ずから限界があ り、スライドの枚数があまりに多いと受講生は 消化不良を起こしてしまい、結局、理解が進ま ない。これらの相矛盾する 2 方向を見据えつ つ、どのような着地点を見出すかという点が難 しい。 全 15 回の授業の内容は以下の通りである。 第 1 回:ガイダンス 第 2 回:社会教育・生涯学習とは何か 第 3 回:社会教育・生涯学習の理論的系譜 第 4 回:生涯学習の「空間」−社会教育施 設について− 第 5 回:生涯学習の理論① 第 6 回:生涯学習の理論② 第 7 回:生涯学習の理論③ 第 8 回:若者の「居場所」の喪失と創出 第 9 回:若者の「たまり場」とは

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第 10 回:労働と青年の学習 第 11 回:働く人々の学び−労働学校①− 第 12 回:働く人々の学び−労働学校②− 第 13 回:子どもの貧困と学び−子ども食 堂− 第 14 回:講義のまとめ 第 15 回:最終レポート 「第 1 回」では、授業の概要、成績評価の方 法、オンラインでの授業への参加の方法に関し て説明し、メール・アドレスを提示して、わか らない点があれば、担当者にメールで相談する ようにと記した。受講生の間で、通信環境に差 異があることを意識し、対応することが必要だ からである。 「第 2 回」は、「生涯学習」という言葉を学ぶ 前に、類似概念である「社会教育」という言葉 を押さえておく必要があることから、社会教育 について法律的定義と本質的概念との 2 義を説 明し、その後、生涯学習という概念は、教育 を、学校に限らず、時間的にも空間的にも拡張 した概念であり、いつでも(時間的拡張)、ど こでも(空間的拡張)、誰でも、学ぶことがで きるという考え方であることを示した。そし て、社会教育と生涯学習との共通点として、① 生涯すべての発達段階にある人を対象にしてい ること、②ノンフォーマルな教育が中心になっ ていること、③現実の課題解決を目的にしてい ること、④自発的・自主的な学習を重視してい ること、⑤学習の内容と方法が多様なこと、を 挙げ、これらの特徴は全て、学校教育と対比的 であることを説明した。そして、この回の課題 として「学校教育と社会教育、あるいは生涯学 習の違いについて、あなたの考えるところを述 べなさい」という設問への回答を求めた。 このように生涯学習の概念に関する基本的な ことがらに関して説明した後に、「第 3 回」で は、生涯学習という考え方がどのように生ま れ、どのように日本に持ち込まれたのかについ て、「第 4 回」では、現在の生涯学習・生涯教 育行政は「社会教育行政」を踏襲していること が多いことから、社会教育制度の歴史につい て、学修する。 続 い て、「生 涯 学 習」の 理 論 と し て、「第 5 回」では、マルカム・ノールズの教育理論と J. メジローの変容学習論について、「第 6 回」で は、P. フレイレの意識化理論と D. A. コルブ の経験学習理論について、「第 7 回」では、ユ ーリア・エンゲストローム の「拡 張 的 学 習」 論、及び、「状況に埋め込まれた学習」理論に ついて、それぞれ学んでいくが、ここでは、提 示資料の例として、「第 6 回」のスライドの一 部を、以下に記す(ゴチック字体部分は、実際 のスライドでは、赤字で示した)。 1 生涯学習概論 「第 6 回」 2 今回のテーマ P. フレイレの意識化理論について学ぶ。 D. A. コルブの理論を中心に、経験学習理論 について学ぶ。 3 1.フレイレの教育思想 「世界の中にある存在」と「世界とともにあ る存在」の二項対立 4 1.フレイレの教育思想 世界の中にある存在…自らが抑圧されている 状況について客観化できず、宿命的な世界観 を有した「沈黙の文化」に生かされた存在。 動物と同じ状態。

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5 1.フレイレの教育思想 世界とともにある存在…自分たちが生きてい る社会構造が分かっている状態。 →教育は、人間を人間化するための営みでなけれ ばならない (中略) 20 4.経験学習における生涯発達 生涯発達の段階… ○第一段階「習得」 ○第二段階「個別化」 ○第三段階「統合」 21 4.経験学習における生涯発達 習得の段階…基本的学習能力や認知構造の習 得が指標となる。 個別化の段階…フォーマル教育やキャリアト レーニング、仕事や生活上の経験を通じて達 成される。 統合の段階…社会的要請と自己達成ニーズと の間の葛藤の解決や客体としての自己をそれ に関連させて認識していくことを経験するこ とによって実現される。 続いて、「第 8 回」では、近年、青年の「居 場所」の喪失が叫ばれている現状について、歴 史的経緯に関して解説し、「第 9 回」では、「仲 間がいつも集まっている場所」であり、「生活 集団と学習集団をまるごと組織して、仲間相互 の信頼関係を築き、協働の時間と空間を共有す る重要な場」である「たまり場」について考察 し、「第 10 回」では、青年が抱えている課題と して、労働関係の問題について扱う。さらに、 働く人々の学習について、「労働学校」の事例 として「第 11 回」では、1920∼30 年代の大阪 労働学校に関して、「第 12 回」では、現在も活 動を続けている京都労働学校を紹介する。「第 13 回」では、子ども食堂の取り組みに関して 取り上げる。「第 14 回」では、講義全体の流れ を振り返り、要点を確認する。「第 15 回」で は、「最終レポート」として、「生涯学習の理論 あるいは生涯学習事業を一つ選び、その概要と 限界について、1000 字以上で述べてください (講義の中で扱ったものでもそうでなくても構 いません)」という課題を提示する。

第 3 節 「オンデマンド型」の

オンライン授業の工夫

前節では「オンデマンド型」のオンライン授 業に関して、「知識を理解する」ことを主目的 とする場合の実践例として 2020 年度前期に行 った授業に関して記したが、本節では、「考え を深める」ことを主目的とする「オンデマンド 型」の授業に関する方法上の工夫に関して述べ たい。 まず、「工夫の 1 つめ」は、課題の設定に関 してである。「知識を理解する」ことを主目的 とするタイプの授業においては、受講生が新た に知ることとなると思われる内容(例えば、第 2 節の事例でいうと、「生涯学習」という概念、 その理論的な系譜や各種理論の概要など)につ いて資料等で提示した知識を受講生が正確に理 解しているか否かを確認するための課題が主と なる。一方、「考えを深める」ことを主目的と するタイプの授業においては、提示した資料を もとに受講生が思考を深めていくことができる ような課題を設定するように工夫することが必 要である。 この点に関しては、資料に示した題材に「正 解」が書かれているのではなく、受講生が自ら の頭を使って考えて、自分自身にとっての「最 適解」を見出そうとするように「問い」が提示

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されていることが望ましい。資料を読んでみる と、すぐに答えが見みつかるというのではな く、頭をひねって考えてみても簡単にはわから ない。しかし、何かどうも気にはなる。そうい う問いである。 例えば、教職科目(「教育原論」、「教育史」 等)の授業において、「教育」ということがら をテーマとして考える場合、以下のような設問 が考えられる。 〈問い①〉 「教育は誰のためになされるのでしょうか。 次の 2 つの中から選び、どうしてそちらを 選んだのか、その理由を述べてください。 (1)教育される人自身の成長のため (2)教育される人が自分の属している社 会(共同体)の構成員として適切な 行動をすることができるようになる ため 〈問い②〉 (1)を選んだ人は(a)に、(2)を選んだ 人は(b)に、それぞれ理由とともに答え てください。 (a)それでは、教育される人が属してい る社会(共同体)は、どうして公的 な費用をかけて教育を行うのでしょ うか。 (b)それでは、教育は、教育される人自 身の人生のためではなく、その人が 属する社会(共同体)の存続・発展 のために行われるのでしょうか。 〈問い③〉 (a)に答えた人も、(b)に答えた人も、次 の(3)に、そう考える理由とともに答え てください。 (3)教育される人が望んでいる「人とし ての生き方」と、教育をされる人が 属する社会(共同体)の人々が望ん でいる「人としての生き方」が相容 れないものだった場合、教育される 人はどのようにすべきでしょうか。 これらの「問い」は、後述の「工夫の 3 つめ」 へとつなげていくものであるが、それを示す前 に、「工夫の 2 つめ」について記しておきたい。 「工夫の 2 つめ」は、大学のポータルサイト や授業ツール等において、受講生と他の受講生 との意見交換を可能とする仕組み(「掲示板」 の機能など)を活用することである。「掲示板」 や「チャット」は、受講生がテーマにそって自 分の意見や質問などを投稿し、互いに議論する 場として適している。上述のように、「オンデ マンド型」のデメリットとして、受講生と他の 受講生、受講生と教員との間の意見交換や質疑 応答などの相互コミュニケーションの機会が乏 しいという点があるが、「掲示板」や「チャッ ト」は、それを補うものとして有効である。受 講生が自分の意見・考えを他の受講生の意見・ 考えと比較することは、自分の「考えを深め る」という観点からも、意義が大きい。 さて、「工夫の 3 つめ」は、各回の授業内容 を構造化するという点である。即ち、ひとつの テーマを採り上げる際には、1 回の授業で 1 テ ーマを扱う場合と、複数回の授業で 1 テーマを 扱う場合とに分けられるが、授業の全体計画を 立 て る 段 階 で、複 数 回(例 え ば 第 8 回、第 9 回、第 10 回の 3 回分というように)で 1 テー マを扱う場合に、(例えば、第 8 回に 3 分の 1、 第 9 回に 3 分の 1、第 10 回に 3 分の 1、という ように)各回の内容を、ただ 1 つのテーマをい くつかに細分化して示すということではなく、 複数回の中で回を追って「考えを深める」こと が実践されていくように、授業内容とその構成 を考えるということである。

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具体的な事例で説明しよう。全 15 回の半期 の 授 業 の う ち、第 8 回、第 9 回、第 10 回 で、 「教育は誰のためのものか」という 1 つのテー マを扱うとする。例えば、以下のような授業計 画が可能であろう。 ☆第 8 回:「教育は誰のためのものか」(1) ○導入:(上記の「工夫の 1 つめ」で示し た)〈問い①〉、〈問い②〉、〈問い③〉 ○資料の提示(具体的な事例での検討: 「学校教育における内心の自由」につい て考える *資料①:フランスの公立学校での「ス カーフ事件」(フランスの公 立学校においてイスラム教信 者の女子生徒の着用するスカ ーフが問題となり議論がなさ れ、宗教的な標章を禁止する 法律の制定へと至った事件) に関する資料 *資料②:日本の公立学校における「君 が代起立斉唱問題」(日本の 公立学校の学校儀式におい て、教員への「君が代」起立 斉唱の強制や不利益処分に対 してしばしば訴訟が提起さ れ、違憲、及び、合憲の裁判 所の判決が出されてきた問 題)に関する資料 ○課題:資料①、及び、資料②を読んで考 えたことを「掲 示 板」に 記 す こ と。 (←受講生は自分の意見を「掲示板」 に書き込むとともに、他の受講生の 意見を読み、質問をしたり、議論を したりすることが可能) ☆第 9 回:「教育は誰のためのものか」(2) ○導入:第 8 回の資料①、資料②から考え るべきことに関する説明 ▽「学校教育における内心の自由」と 「ライシテ」(laïcité) ▽「(「君が代」を)歌わせたい校長の論 理と歌わせないと主張する教員の論 理」 ○資料の提示(具体的な他の事例でのさら なる検討:「特攻隊」と学校教育との関 係について考える) *資料①:「『特攻隊の遺書』先人への敬 意と感謝」(服部剛『先生! 日本ってすごいね』より) *資料②:上原良司(自由主義者を自認 した特攻隊員)の手記、大西 瀧治郎(特攻隊の発案者のひ とり、海軍中将)関係史料、 小泉信三(慶應義塾塾長)の 特攻隊賛美 ○課題:資料①、及び、資料②を読んで考 えたことを「掲 示 板」に 記 す こ と。 (←受講生は自分の意見を「掲示板」 に書き込むとともに、他の受講生の 意見を読み、質問をしたり、議論を したりすることが可能) ☆第 10 回:「教育は誰のためのものか」(3) ○第 9 回、第 10 回の内容をふまえて考え るべきことについての説明 ▽学校空間の「非宗教化」(政教分離、 laïcité)と「宗教化」(明治期以降敗戦 までの日本の学校における「天皇教」 布教) :内心の自由を保障する教育と内心の 自由を無化する教育

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▽「特攻隊」の歴史が意味すること :「共同体のための個の死」の美化は なぜ可能となったのか? ▽リベラリストにとっての教育、コミュ ニタリアンにとっての教育 :個の「根本的なアイデンティティ」 と教育との関係 ▽「普遍性」と「特殊性」 :各 共 同 体 内 に お け る 個 の「犠 牲」 ──歴史から学んで、避けるべきこ とは? :共同体が個人に付与するアイデンテ ィティに対する違和感。「否定性」・ 「残余」を通じた連帯の可能性 以上、「オンデマンド型」のオンライン授業 に関して検討してきたが、2021 年 1 月現在の 段階で、新型コロナウィルス感染者数は増大の 一途をたどり、さらに変異種の存在も報じられ ている。大学においても、従来と同じような 「対面型」を十全に復活できる見通しが立たな い現状のもとでは、WEB 学修ツールの進歩に 期待するとともに、「同時双方向型」、「オンデ マンド型」の授業、及び、複数のタイプをミッ クスした授業の方法上の工夫が、より一層、必 要となるであろう。

参照

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