持続可能な経済・生活基盤構築の試み - トセパン協同組合(メキシコ)のケーススタディ -
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(2) 第6巻. 1.は. 第3号. じ. め. に. 1987年 に持 続 可 能 な発 展 概 念 が 提 示 され て 以 来,地 域 の 発 展 を 環 境 保 全 と両 立 して 進 め る こ との 必 要 性 は広 く認 識 され て き た。 途 上 国 援 助 の 場 面 で も,持 続 可 能 性 に配 慮 した 開 発 方 法 ・援 助 方 法 が 模 索 され て い る。 しか しな が ら,個 々の 案 件 で は環 境 保 全 よ りも,開 発 に よ る便 益 が 重 視 さ れ る傾 向 に あ る。 現 状 で は,具 体 的 な 手 法 の 開 発 も課 題 で は あ る が,将 来 的 な,持 続 可 能 な 社 会 の 具 体 像 自体 も模 索 が 続 いて お り,い くつ か の モデ ル ケ ー スの 提 示 が 求 め られ て い る。 気 候 変 動 に関 す る政 府 間 パ ネ ル の 報 告 な ど に見 られ る よ う に,世 界 中で 気 候 変 動 の リス クが 認 識 され る と と も に,具 体 的 な 兆 候 と され る現 象 が 観 察 され て い る。 途 上 国 にお いて も,平 均 気 温 の 上 昇 や 降 雨 パ ター ンの 変 化,台 風 の 巨大 化 な どの 影 響 で,森 林 破 壊 の 進 行 に よ る生 態 系 破 壊 の 危 険 性 が 高 ま って い る(IPCC;2007)。 持 続 可 能 な 発 展 と は,「将 来 の世 代 の欲 求 を満 た しつ つ,現 在 の 世 代 の 欲 求 も満 足 させ る よ う な開 発 手 法 」 で あ る。 同概 念 は,1987年 ン ト委 員 会)で 提 案 され,1992年. 環 境 と開 発 に関 す る世 界 委 員 会(ブ ル ン トラ. の 地 球 サ ミ ッ トで 国 際 社 会 の 目標 と して 共 有 され た 。. 具 体 的 に どの よ うな 開 発 手 法 や 経 済 発 展 の 経 路 が 持 続 可 能 で あ る と いえ るの か につ いて の 合 意 は未 だな いが,持 続 可 能 性 を 評 価 す る指 標 の 開 発 は試 み られ て い る。 我 々の 生 活 は 資 本 が 生 み 出す サ ー ビス に支 え られ て い る と い う点 に着 目 し,経 済 発 展 の 過 程 で お こ る資 本 量 の 変 化 に着 目す る こ とが 一 般 的 で あ る。 ただ しこ こで い う資 本 に は,社 会 資 本 な どの 人 工 資 本 に加 え て,鉱 物 資 源 な どの 天 然 資 源 や 森 林 や 海 な どの 自然 の 生 態 系 と い った 「自 然 資 本 」 も含 ん で い る。 ハ ー トウ ィ ック は,自 然 資 本 が 減 少 して いて も,人 工 資 本 が 増 加 す る こ とで 資 本 の 総 量 が 変 わ らな いか,増 加 して いれ ば持 続 可 能 性 が 維 持 され て い る と い う 「弱 い持 続 可 能 性 」 指 標 を提 案 した。 これ に対 して,Daly(2008)は,人. 工 資 本 は時 間. と と も に減 耗 して い くの で,長 期 的 な 評 価 の た め に は,自 然 資 本 の 変 化 に着 目す る こ とが 適 切 で あ る と して,「 自然 資 本 が減 少 して い な い こ と」と い う強 い持 続 可 能 性 概 念 を 提 唱 し た。 ダ ス グ プ タ(2007,p.173)は,「. あ る経 済 の生 産 的基 盤 は,人 工 資本,人. 資 本,知 識 だ けで な く,制 度 を も含 む。 これ らが合 わ さ って,財. 的 資 本,自 然. ・サ ー ビス の生 産,分 配,. そ して 利 用 を決 定 す る。 あ る社 会 の 生 産 基 盤 と は その 福 祉 の 源 で あ る。」 と指 摘 す る。 人 々が 地 域 で 生 活 し続 け る た め に は,地 域 に対 す る福 祉(さ 一2(204)一. ま ざ まな サ ー ビ ス)が 継 続.
(3) 持続可能な経済 ・生活基盤構築の試み. トセパ ン協同組合(メ キ シコ)の ケー スス タデ ィ(坂 田). 的 に提 供 され る必 要 が あ る。 持 続 可 能 性 を評 価 す る た めの 指 標 と して,本 研 究 で は ダ ス グ プ タの 生 産 基 盤 に着 目 した。 生 産 基 盤 の 維 持 管 理 体 制 と,そ れ を べ 一 ス と して 生 み 出 され る事 業 の パ フ ォー マ ン ス を,メ キ シ コ に お け る ケー ス ス タ デ ィの 成 果 を も と に分 析 した 。 個 別 地 域 の 持 続 可 能 な 発 展 を 評 価 す る試 み は は あ ま り見 られ な い。 特 に地 域 の 環 境 保 全 に加 え て 生 活 の 安 定 性 に着 目 して 持 続 可 能 性 を評 価 した研 究 は見 られ な い。 経 済 学 にお い て ケ ー ス ス タ デ ィが 少 な い 理 由 は定 量 化 と一一 般 化 が 困難 な こ とが 原 因 で あ る と考 え られ る。 しか しな が ら,持 続 可 能 な 発 展 の よ うな 萌 芽 的 な 概 念 の ば あ い に は,概 念 的 な 研 究 と 併 せ て,個. 々の ケ ー ス ス タ デ ィを 積 み 重 ね る こ とで,概 念 の 具 体 化 と現 実 的 妥 当 性 の テ ス. トが 可 能 にな る と考 え られ る。 メ キ シ コの プ エ ブ ラ州 で コー ヒー を 中 心 と した 森 林 農 法 を い とな む トセ パ ン協 同 組 合 (TosepanTitaniske,以. 下,ト セ パ ン とす る)は,生. 物 多 様 性 を 重 視 した 生 産 方 法 を と る. こ とで,持 続 可 能 な 発 展 を 目指 して い る。 トセ パ ンで は,地 域 の 生 産 基 盤 を 整 備 ・充 実 さ せ る こ とで 安 定 的 な 生 産 力 の 確 保 を 進 め る と と も に,フ ェ ア トレー ド(公 正 貿 易)と 呼 ば れ る手 法 で,環 境 保 全 に配 慮 した生 産 物 を消 費 者 に届 け る工 夫 を して い る。 メ キ シ コ 自体 が 急 速 に発 展 す る 中で,同 地 域 もや は り近 代 化 が 進 ん で い る。 今 後 さ らな る近 代 化 が 予 想 され るな か で,ト セ パ ンの 取 組 は持 続 可 能 で あ り続 け るの か,同 組 合 の 取 組 を 調 査 した 。 トセパ ンの 持 続 可 能 性 を 評 価 す る た め に,コ ー ヒーの 生 産 場 所 で あ る森 と,地 域 内で 運 営 され る金 融 シ ス テ ム,組 合 の 運 営 を 担 う人 材,歴 史 ・文 化 の 継 承 の4点 が 重 要 で あ る。 以 下 の 分 析 で は,こ の4点 が 地 域 の 持 続 可 能 性 を 考 え る うえ で 重 要 な 生 産 基 盤 とな る と考 え る。 本 論 文 は,以 下 の よ う に構 成 した。 第2節 で は,ト セ パ ンの 生 産 基 盤 の 現 状 と維 持 管 理 体 制 につ いて 評 価 した。 第3節 で は,生 産 基 盤 か ら生 み 出 され る コー ヒー を は じめ とす る 財 や サ ー ビス を活 用 した個 々の 事 業 につ いて 分 析 を行 う。 第4節 で は結 論 と して,ト セ パ ンの 方 向性 を含 めて,今 後 の 課 題 を 検 討 した。. 2.ト. 2.1調. セ パ ン協 同 組 合 の 生 産 基 盤. 査概 要. トセ パ ン に お け る 調 査 は,㈱ 事 後 的 な 問 い 合 わ せ と い う3段 2007年10月4日. ウ ィ ン ドフ ァー ム 社 ス タ ッ フ に よ る 事 前 説 明,現. 地 調 査,. 階 で 行 っ た。. か ら14日 の 日程 で,現. 地 調 査 を 行 っ た 。 調 査 は10日 間 に わ た り,農. 一3(205)一. 場の.
(4) 第6巻 他 に,生 産 ・加 工 設 備,住 て は,㈱. 居,食. 生 活,近. 第3号. 隣 都 市 な ど の 調 査 を 実 施 した 。 現 地 調 査 に 当 た っ. ウ ィ ン ドフ ァ ー ム 社 と 任 意 団 体 で あ る トセ パ ン ジ ャ パ ンの 協 力 を 得 た 。. コ ー ヒー ・ エ コ ツ ー リズ ム. オール スパ イ ス. 生活必需品 の供給. 生産. 合 農 地 ・森 林. サービスの活用. 地域金 融 人材育成. 歴 史 ・文 化 の継承. 生産基盤 図1ト. 2.2ト. セ パ ンの 全 体 像. セ パ ン概 要. トセ パ ン は,メ. キ シ コ の プ エ ブ ラ 州 の 山 岳 地 方 に あ る 町,ケ. ツ ァ ラ ンを拠 点 と して い. る(1)。メ キ シ コ シ テ ィ か らケ ツ ァ ラ ン ま で の 所 要 時 間 は バ ス で6時 トセ パ ンの 組 合 員 数 は5,300世 帯 で,ケ テ ィ に 広 が っ て い る 。 一一 般 的 に,コ と 言 わ れ て い る が,彼. ツ ァ ラ ン を 中 心 に し た7つ. の 地 域,66の. コ ミュニ. ー ヒ ー 栽 培 に 適 し て い る 標 高 は600∼1,200メ. ー トル だ. らが 暮 らす 地 域 は,標. ヒ ー 生 産 を 営 む 組 合 員 は,標. 高400∼900メ. ル で は オ ー ル ス パ イ ス を,200メ. 間 弱 で あ る。. 高200∼900メ. ー トル に 及 ぶ 。 こ の う ち,コ. ー トル 内 に 暮 ら して お り,標. 高200∼400メ. ー. ー ト. ー トル 以 下 で は トウ モ ロ コ シ や サ トウ キ ビ を 生 産 す る 組. 合 員 た ち が 暮 ら して い る 。(ウ ィ ン ド フ ァ ー ム;2007) トセ パ ンの 主 要 作 物 は コ ー ヒ ー と オ ー ル ス パ イ ス で あ り,両 両 者 の 内 訳 は 作 柄 に よ っ て 異 な る が,コ あ る トウ モ ロ コ シ は20%程. 占 め る。. ー ヒー の 方 が 少 し多 い 程 度 で あ る 。 ま た,主. 食で. 度 を 地 域 内で の 生 産 で まか な って い る。. トセ パ ンの 全 体 像 を 図1に 経 営 す る 農 地 と 金 融,人. 者 で 全 体 の90%を. 材,歴. 示 し た 。 生 活 と 経 済 を 支 え る 生 産 基 盤 は,森 史 ・文 化 の 継 承 に 分 け られ る 。 以 下,こ. 林 農 法 に よ って. れ ら につ いて 調 査. (1)ケ ツ ァ ラ ン は,ケ ツ ァー ル の 町 と い う意 味 で あ る。 ケ ツ ァー ル は火 の 鳥 の モ デ ル と も言 わ れ る 美 しい鳥 で あ るが,ス ペ イ ン人 へ の 献 上 品 な ど と して 利 用 され,調 査 地 域 周 辺 で は乱 獲 の た め に ケ ツ ァー ル は絶 滅 した 。 た だ,ケ ツ ァー ル を神 と して 尊 重 す る習 慣 は 後 述 す る踊 り に も色 濃 く 残 って い る。 -4(206)一.
(5) 持 続 可 能 な 経 済 ・生 活 基 盤 構 築 の 試 み 結 果 を 紹 介 し,検. トセ パ ン協 同 組 合(メ キ シ コ)の ケ ー スス タデ ィ(坂 田). 討 を 行 う 。 生 産 基 盤 か ら生 み 出 さ れ る 財 ・サ ー ビ ス に つ い て は,次. 節で. 検 討 す る。. 2.3農. 地. トセパ ンの 主 要 作 物 で あ る コー ヒー とオ ー ル スパ イ ス は,森 林 農 法 と呼 ばれ る生 産 方 法 に よ って 生 産 され て い る。 森 林 農 法 と は例 え ば コ ー ヒーの 単 一栽 培 と は異 な り,一 つ の 農 地 で 多 様 な 作 物 を 混 栽 して 育 成 す る手 法 で あ る。 森 で で き る作 物 は,主 な もの で も20種 類 以 上 あ る。 トセパ ンの 組 合 員 が コー ヒー を 栽 培 して い る農 地 の 大 半 は,天 然 の 森 で はな い。20世 紀 初 頭 に は主 に牧 場 で あ っ た りサ トウ キ ビの 栽 培 場 で あ っ た。 トセ パ ンが 活 動 を 始 めた1970 年 頃 も,一 部 が コ ー ヒーを 単 一 栽 培 す る農 地 に変 わ って い た他 は,状 況 は ほ とん ど変 わ っ て いな か っ た。 その 後,森 林 農 法 に取 り組 み 始 め た こ とで,様 こ とで,約30年. 々な 植 物 を 人 為 的 に植 え る. の 間 に現 在 の よ うな 一 見 す る と 自然 林 と見 分 け が つ か な い状 態 が で き あ. が って い る。 森 林 農 法 は,森 の 生 態 系 を 維 持 しな が ら,農 業 を 営 む 手 法 で あ る。 同 じよ う に森 林 の 生 態 系 を維 持 す る政 策 手 法 に,日 本 の 自然 公 園 法 が あ るが,こ の 場 合 に は,生 態 系 を 保 全 す る もの の,木. 々の 伐 採 や 搬 出 は認 め られ な い。 その た め,自 然 環 境 と共 生 して きた 人 々の. 営 み は 行 う こ とが で き な い 。 森 林 農 法 に お け る 自然 と人 間 の 関 係 に近 い もの を 探 す な ら ば,い わ ゆ る里 山が それ に 当 た るで あ ろ う。 日本 の 里 山 は,薪 炭 林 と して 地 域 住 民 が 日常 的 に利 用 す る場 で あ り,人 間 が 手 を 入 れ な が ら自然 と共 生 して きた 。 自然 公 園 が 存 在 す る こ とで 人 は生 活 す る こ と はで き な い が,森 林 農 法 の場 合 に は,森 の 恵 を利 用 す る こ とで 人 々 は暮 らす こ とが で き る。 つ ま り,生 態 系 が 豊 か な 森 林 を 維 持 しな が ら生 計 を 立 て る森 林 農 法 は,保 全 と経 済 を 両立 させ る仕 組 み で あ り,「森 林 農 法 は 自然 公 園 よ りもベ ター な 解 で あ る」 と,森 林 農 法 の 研 究 者 で あ るバ トリシ ア ・モ ーゲ ル は述 べ る。 森 林 農 法 に は これ 以 外 に も農 薬 の 必 要 性 が 少 な い こ と と生 活 を安 定 させ る と い う メ リ ッ トが あ る。 森 の 中で コ ー ヒーを 栽 培 す る こ とで,本 来 コ ー ヒーが 望 む 環 境,す な わ ち背 の 高 い木 が 作 る 日陰 の も とで コー ヒー が 成 育 す る こ とが で き る。 また,コ ー ヒー を は じめ と す る各 種 の 有 用 な 作 物 が 森 の 中 に点 在 して 植 え られ て い る た め,同. じ種 類 の 植 物 間 の 距 離. が 適 度 に保 たれ て い る。 その た め,病 害 虫 が 広 が りに くい うえ に,生 態 系 が 豊 富 な た め 自 然 の 天 敵 な どが 存 在 し,害 虫 の 発 生 も少 な い。 生 活 の 安 定 と い う意 味 で は,コ ー ヒー 以 外 にオ ー ル スパ イ スや マ カ ダ ミア ナ ッツ,シ ナ ー5(207)一.
(6) 第6巻. 第3号. モ ンが トセパ ンの 現 金 収 入 と して 利 用 され て い る。 ま た,商 品 作 物 以 外 に生 産 者 が 自家 消 費 す る た めの 作 物 も多 く植 え られ て い る た め,現 金 収 入 が 減 って も,と た ん に飢 え る こ と が な い。 ま た,自 家 消 費 用 の 作 物 も余 剰 分 は近 隣 の 市 場 で 販 売 す る こ と も あ る。 そ の 他, 森 に植 え られ て い る植 物 を 表1に 示 した。 た だ し,森 林農 法 も,森 に コー ヒー の木 を植 え た だ け で収 穫 が期 待 で き る わ け で は な い。 コ ー ヒー につ いて は,定 期 的 な 切 り戻 しや 植 え 替 え,有 機 肥 料 の 補 給 な どの 管 理 が 必 要 で あ る。 ま た,さ ま ざ まな 植 物 が 適 度 に分 布 す る よ うな 知 恵 が 必 要 で あ るた め,ト セ パ ンで は定 期 的 に研 修 を 行 って い る。. 表1森 コ ー ヒ ー,オ. 食用. ー ル ス パ イ ス,カ. ボ チ ャ,シ. ナ モ ン,マ. 柑 橘 類(数 種),レ モ ン,ハ ヤ ト ウ リ,バ ニ ラ,リ ロ,香 草),薬 草 数 種,蜂 蜜,ト ウモロコ シ. その他. 2.4人. で採取できる有用な植物. チ ャ マ キ(装. 花),建. カ ダ ミ ア ナ ッ ツ,イ ン ゴ,コ. モ(Yuka),. リ ア ン ダ ー(シ. ラ ン ト. 材. 材 育成. 外 部 者 や 女 性 な ど さ ま ざ まな グル ー プ に,雇 用 や 社 会 参 加 の 機 会 を 提 供 す る こ とで,人 材 育 成 と地 域 内で の 雇 用 を 実 現 して い る。 都 会 か ら遠 く離 れ た地 方 で 雇 用 を 生 み 出す こ と は容 易 で はな いが,自 立 を う ま く支 援 す る こ とで 産 業 の 創 出を 実 現 して い る。. ・外 部 人 材 の 活 用. 森 林 農 法 を 中心 に した農 村 の 活 動 と して ,ト セ パ ン に は多 くの 研 究 者. や 専 門 家 が 関 わ る。 都 会 か ら研 究 者 や 専 門 家 が 訪 問 す る こ とで,外 部 の 状 況 を 知 る こ とが で き る と 同時 に,外 部 の 視 点 か らの 自 らの 位 置 づ け を客 観 的 に評 価 で き る。 研 究 者 は,ト セパ ンの 活 動 を研 究 対 象 と して,研 究 成 果 を あ げ る と 同 時 に グ ル ー プ に対 して ア ドバ イ ザ ー と して の 役 割 を果 たす 。 ま た,研 究 発 表 を通 じて,ト セ パ ンの 取 り組 み を 広 く紹 介 す る。 研 究 者 以 外 に も さ ま ざ まな 技 術 を持 っ た専 門 家 が 運 営 に関 わ って い る。 い くつ か 例 を 挙 げ る と,例 え ば,ト セ パ ンの ロ ゴ(女 神 が コ ー ヒーの 枝 を 持 つ 意 匠)な. どを デ ザ イ ンー 般. を担 当 して い るの は,メ キ シ コ シ テ ィ に住 む デザ イ ナー で あ る。 また,後 述 す る訪 問 者 用 の 宿 泊 施 設 で あ る トセ パ ン カ リの 建 物 設 計 と建 築 指 導 を 行 っ たの は,プ エ ブ ラ州 の 州 都 プ エ ブ ラ に住 む 建 築 家 で あ る。 同氏 は比 較 的 育 成 が 容 易 で 成 長 の 早 い竹 を 建 物 の 骨 組 み とす 一6(208)一.
(7) 持 続 可 能 な 経 済 ・生 活 基 盤 構 築 の 試 み る こ と で,地. トセ パ ン協 同 組 合(メ キ シ コ)の ケ ー スス タデ ィ(坂 田). 元 で 手 に 入 れ る こ と が で き る 素 材 を 活 用 し,し. 物 を 提 案 し よ う と して い る(2)。こ の 他 に も,中. か も 自分 た ちで 建 て られ る建. 間 技 術 を 用 い た 生 活 方 法 や,農. 薬 を使わな. い 森 林 農 法 の 栽 培 技 術 の 確 立 な ど を 担 当 して い る レオ ナ ル ド氏 も 外 部 の 出 身 で あ る 。. ・地 域 の 女 性 の 自立. 地 域 の 女 性 た ち は 日本 の 生 活 改 善 運 動(学 校)に 似 た 活 動 を グル ー. プ を作 って 実 践 して い る。 女 性 団 体 の 活 動 は,長 い もの で28年 の 歴 史 が あ り,集 落 単 位 で グル ー プ を つ くって い る。 現 在14グ ル ー プ に290名 が 参 加 して い る。 女 性 グル ー プ の 活 動 は 当初 は トセパ ン と は別 に行 って い たが,現 在 は協 力 して 活 動 して お り事 実 上 トセ パ ンの 女 性 部 会 の よ うな 印 象 で あ る。 これ は一 つ に は,ト セ パ ンの 結 成 が 当 初 は女 性 主 導 で 行 わ れ た と い う歴 史 的 な 背 景 も あ る。 グル ー プで は,年 長 の 女 性 か ら伝 統 的 な 技 法 や 文 化(刺 繍 の 方 法 や 集 落 特 有 の 柄 な ど) を学 ぶ ほか,新 しい情 報 も積極 的 に取 り入 れ,共 有 す る役 割 も持 って い る。2005年 か らは, 料 理 コ ンテ ス トを 開 催 して い る。 地 域 の 伝 統 料 理 だ けで はな く,イ タ リア ンや フ レン チな ど外 国 の 技 法 を組 み 合 わ せ た料 理 も 出品 され,受 賞 して い る。 女 性 グル ー プ は グル ー プ 内,グ ル ー プ間 の 交 流 を ベ ー ス に して,収 益 事 業 を行 って い る。 起 業 の た め に必 要 な 資 金 は後 述 す る地 域 の 金 融 機 関 で あ る トセ パ ン トミンか ら借 り入 れ, 店 舗(パ. ン屋,手 工 芸 品 屋,雑 貨 屋,建 材 屋)や 工 場(ト ル テ ィー ヤ工 場)を ケ ツ ァ ラ ン. に開 業 した。 伝 統 的 な 手 工 芸 品 を 製 作 し販 売 す る工 房 も も う けて い る。 この 工 房 で は製 品 の 製 造 以 外 に も手 芸 体 験 な どの 地 域 文 化 を 知 る た めの 体 験 学 習 も提 供 して い る。 体 験 学 習 は,ト セパ ンで 進 め るエ コ ツー リズ ム と連 動 して い る。. ・ トセ パ ン の メ ン バ ー は,30代. トセ パ ン で 中 心 的 な 活 動 を 担 っ て い る 人 々 は 非 常 に 若 い 。 代 表. 半 ば の ナ サ リオ で あ る 。 ナ サ リオ 以 外 の ス タ ッ フ も 大 半 が20代 か ら30代 で あ る 。. こ れ に 対 して,ト. セ パ ン ト ミ ンの 代 表 で あ る ア ル バ ロ は,設. 立 当 初 か らの メ ンバ ー で あ り. 60前 後 で あ る 。 トセ パ ン の 理 事 も60代 が 多 い 。 古 参 メ ン バ ー が 理 事 と し て 後 見 す る な か で,運. 営 を徐 々 に若 者 に任 せ て い る。. トセ パ ンの 中 心 地 で あ る,ケ は 本 来,地. ツ ァ ラ ン に は 雇 用 は ほ と ん ど な い 。 農 業 を 継 ぐ以 外 の 若 者. 域 を 離 れ て 大 都 市 に 出 ざ る を 得 な い 。 しか しな が ら,現. 在 の 厳 しい経 済 環 境 の. (2)た だ し,プ エ ブ ラ州 で は竹 は 自生 して いな い 。 そ の た め,ト セ パ ンで は建 材 用 に竹 を 特 別 に栽 培 して い る。 木 材 を 販 売 用 に 回 して い る こ と と,木 よ り も成 長 が 早 い た め,地 域 に と って 栽 培 す る価 値 の あ る資 源 と考 え られ て い る。 -7(209)一.
(8) 第6巻 も と で は,例. 第3号. え ば メ キ シ コ シ テ ィ に 出 て も 暮 ら して い くの は 容 易 で は な い 。 そ こ で,ト. パ ンが 若 者 を 雇 用 す る こ と で,若. セ. 者 が 地 域 か ら流 出 す る こ と を 防 い で い る 。 例 え ば,筆. 者. が 訪 問 時 に 主 に 交 流 し た トセ パ ン の ス タ ッ フ で あ る オ ク タ ヴ ィ オ ・オ ド ゥ ン ・ホ セ の 三 名 も トセ パ ンが な け れ ば 都 市 に 行 か な け れ ば な らな か っ た 。 オ ク タ ヴ ィ オ と オ ド ゥ ン は,家 が 自作 農 で は な い た あ に 地 域 に残 って 農 業 を 営 む こ と は そ もそ も で き な い。 ホ セ の場 合 は,ト. セ パ ンの 創 立 メ ン バ ー の 孫 で あ る が,長. 男 で は な く,実. 家 の 跡 を 継 ぐこ と はで きな. い。 その よ うな 若 者 た ちを グル ー プが 雇 用 す る こ とで 地 域 に残 って い る。 こ の 他 に も,ト. セ パ ン ト ミ ン で 地 域 に 対 す る 広 報 を 行 う ス タ ッ フ の 例 で も,ト. 仕 事 が 魅 力 的 で あ る と 述 べ た 。 こ の ス タ ッ フ(テ で あ る 。 女 性 の 場 合 に は,優. イ リー)は,20代. 秀 で あ れ ば 都 市 に 出 る 以 外 に,地. セ パ ンの. 前 半 の 女 性 で,元. 教師. 域 の 教 師 にな る と い う選 択. 肢 も あ る よ う だ 。 しか しな が ら,教 師 は 社 会 的 地 位 が 高 い 職 業 で は な く,「教 師 に な る しか な い 」 と い う 側 面 が あ る よ う だ 。 テ イ リー の 場 合 に は,教. 師 を 続 け る よ り も トセ パ ン で 働. く こ と を 選 ん だ 。 今 後 も で き る 限 り働 き 続 け た い と 述 べ て い た 。. 表2預. 金 ・貸 出 残 高 の 推 移. 貸 出総額. 預金総額. 2003. 8. 7. 2004. 11. 9. 2005. 15. 5. 2006. 25. 25. 2007. 37. 32. 単 位:百 万 ペ ソ ※2007年 は9月 まで で あ る. 2.5金. 融. トセ パ ン ト ミ ン は1998年 現 在 は,国 は,現. に 設 立 が 決 定 さ れ,翌 年,業. 公 認 の 金 融 機 関 と な る べ く,手. 務 を 開始 して い る金 融 機 関 で あ る。. 続 き を 進 め て い る 。 トセ パ ン ト ミ ン と い う 言 葉. 地 の 人 々 が 使 う ナ ワ ッ ト語 で,「 み ん な の お 金 」 を 意 味 す る 。 自 分 た ち で 必 要 な お. 金 を 自 分 た ち で 集 め て,み (QualityofLife)の. ん な の た あ に 使 お う と い う 趣 旨 で あ り,地. 向 上 を 目 的 と して い る 。. 預 金 ・貸 し 出 しの 状 況 を 表2に. 示 し た 。 貸 出 総 額 ・預 金 総 額(残. を 見 せ て い る 。 貸 出 総 額 が 預 金 総 額 を 上 回 る の は,貸 る と 思 わ れ る が,こ. 域住 民の生活 の質. も に順 調 な 成 長. 出総 額 が 貸 出累 計 額 で あ るた めで あ. の 点 は 十 分 に 確 認 で き て い な い 。 こ の 間,加 -8(210)一. 高)と. 入 者 数 も 増 加 して お り,.
(9) 持 続 可 能 な 経 済 ・生 活 基 盤 構 築 の 試 み. トセ パ ン協 同 組 合(メ キ シ コ)の ケ ー スス タデ ィ(坂 田). 調 査 時 点 で は5,300人 で あ っ た 。 現 在 で は トセ パ ン ト ミ ン に 預 金 を 持 つ こ と が トセ パ ン の 組 合 員 の 要 件 と な っ て い る た め,ト あ る こ と と 生 産 者,あ. セ パ ンの 組 合 員 数=加. 入 者 数 で あ る 。 な お,組. 合員で. る い は 有 機 コ ー ヒー の 生 産 者 で あ る こ と は 異 な る 概 念 で あ る 。. 同 行 の 主 な 機 能 は,住. 民 へ の 貸 し付 け に よ り,住. 民 の 生 活 を 安 定 さ せ る こ と と,ト. セパ. ン 内 で の さ ま ざ ま な 事 業 に 投 資 ・融 資 を 行 う こ と で 資 金 提 供 す る こ と で あ る 。 こ れ ら の 事 業 全 体 を 行 う た め に,ス. タ ッ フ を30名 程 度 雇 用 して い る 。. 途 上 国 の 一 般 的 な 住 民 は,資. 金 が 必 要 にな って も低 利 で 融 資 を 受 け る機 会 は少 な い。 一. 般 的 に は 貸 し 付 け 利 子 率 が100%を 子 率 が 高 い の は,イ レ率 は 平 均 して7%程. 超 え る こ と も 珍 し く な い 。 途 上 国 が 先 進 国 と比 べ て 利. ン フ レ率 が 高 い こ と が 一 つ の 要 因 で,2007年. 当 時 の メキ シ コの イ ン フ. 度 で あ り,一 般 的 な 貸 し付 け 利 率 は イ ン フ レ率 を 考 慮 して も 先 進 国. よ り も 高 い(3>。 トセ パ ン ト ミ ン は,住. 民 の 生 活 の 質 の 向 上 を 目 的 と して 設 立 さ れ た(4)。地 域 住 民 の た め. の 金 融 機 関 と して マ イ ク ロ フ ァ イ ナ ン ス の 役 割 を 果 た す と 同 時 に,地. 域産業への資金供給. の 役 割 も担 って い る。 ま た保 険 事 業 も営 ん で い る。 マ イ ク ロ フ ァ イ ナ ン ス と して は,具 み を 作 る こ と と,貸. 体 的 に は住 民 が 必 要 な と き に資 金 を 借 りられ る仕 組. 出 金 利 を 低 く して,借. り入 れ が 住 民 の 生 活 を 破 綻 さ せ る の で は な く,. 改 善 す る こ と に 貢 献 す る こ と を 目 的 と して い る 。 地 域 産 業 へ の 資 金 供 給 と して は,自. 前 で 銀 行 を 設 立 し た こ と で,ト. セ パ ン 自身 の 事 業 の. 幅 も 広 が っ て い る 。 そ れ ま で は 補 助 金 や 外 部 か らの 借 り入 れ に 依 存 して い た が,自 し た 資 金 で 自 由 に 事 業 を 展 開 で き る よ う に な っ た 。 トセ パ ン が2006年. ら調 達. に 購 入 した 生 豆 の 焙. 煎 か ら袋 詰 め を 一一 貫 して 行 う 機 械 も トセ パ ン ト ミ ン か らの 借 り入 れ に よ る も の だ 。. ・預 金 の 必 要 性. 従 来 ,零 細 農 民 や 小 作 農 で あ っ た ナ ワ ッ トの 人 々 は貧 しか った こ と と,. 金 融 機 関 の 利 用 が 不 便 で あ っ た こ とか ら,貯 蓄 の 習 慣 は根 付 いて いな か った 。 必 要 な もの は現 金 が 入 っ た と き に購 入 す るの が 一 般 的 で あ っ た。 貯 蓄 が な いた め に,生 活 の 中で 急 に 現 金 が必 要 に な っ た ば あ い に は,高 利 貸 しか ら100%以 上 の利 子 率 で 借 り入 れ る こ と とな る。 稼 ぎ手 が 病 気 にな っ た ば あ いや,コ ー ヒー の 不 作 が 続 い た ば あ い に は,こ れ らの 資 金. (3)1994年 のNAFTA締 結 と95年 の 通 貨 危 機 を 経 験 した後,経 済 は 徐 々 に安 定 の 方 向 に 向 か って い る。 政 府 は3%前 後 の イ ン フ レ ター ゲ ッ トを 設 定 し,こ れ を 目指 して い る(国 際 金 融 情 報 セ ン ター(JCIF)よ り)。 (4)な お,生 活 の 質 の 向 上 とい うキ ー ワー ドは トセ パ ン 自体 の 目的 で もあ り,滞 在 中,折 に 触 れ て 言 及 され た 。 -9(211)一.
(10) 第6巻. 第3号. に頼 る こ と にな り,そ の 後 長 期 にわ た って 苦 しい支 払 いが 続 く。 最 後 に は農 地 を 失 い小 作 農 に な っ た り,家 族 を 長 期 の 労 働 に 出 さな けれ ばな らな いケ ー ス も多 い。 トセパ ン トミン は,こ の よ うな 問題 を解 決 す るた あ に,預 金 の習 慣 付 け と利 便1生の 向上, そ して 低 利 の 貸 し付 け制 度 の 充 実 と い っ た さ ま ざ まな 工 夫 を 行 って い る。 トセ パ ン トミン が 人 口7万 人 の地 域 で5,300口 座 もの 口座 を短 期 間 で 開設 で き た の は,こ れ らの努 力 の 成 果 で あ る と考 え られ る。 預 金 の 習 慣 付 け につ いて は,預 金 の 必 要 性 と お金 を 貯 め る方 法(現 金 収 入 の 方 法 と現 金 の 節 約 方 法)に 関 す る啓 発 努 力 を 行 って い る。 預 金 の 習1貫が 根 付 いて いな い地 域 で 預 金 を して も らう た め に は まず,預 金 を す る こ との メ リ ッ トを 説 明 して い る。 啓 発 活 動 で は,預 金 を す る余 裕 を 生 み 出す 方 法 を 説 明 す る こ とが,預 金 を 獲 得 す るた め に有 効 で あ っ た と担 当者 は述 べ て い る。 具 体 的 に は,ま ず,い か に して 日 々の 生 活 で 貯 蓄 をす る余 裕 を持 て るの か,ど. う い う もの が 「貯 蓄 」 と いえ るの か,と. い った 点 で あ る。 い. ず れ も現 金 収 入 が 限 られ て い る農 民 向 けの 話 が 中心 で あ っ た。 前 者 につ いて は,森 林 農 法 を進 め る こ とで,自 給 率 が 高 ま り,食 糧 を買 う た め に必 要 な 現 金 支 出が 減 る と い う話 な ど で あ る。 後 者 は,例 え ば家 畜 を 飼 う こ とで,い. ざ と い う と き に販 売 して 現 金 収 入 を 得 る こ. とが で き る た め,こ れ も貯 蓄 の 一 種 だ と い う話 で あ る。 ちな み に,家 畜,特. に鶏 な どの 家. 禽 は,家 庭 か ら出 る廃 棄 物 を 食 べ させ て 育 て る こ とが で き るの で,家 禽 を 飼 う こ とで 追 加 的 な 支 出 は必 要 な い。 人 々が 預 金 の 習1貫を 持 つ た め に,貯 蓄 目的 の は っ き り した 口座 を 提 供 して い る。 た とえ ば,子 ど もた ちが 預 金 の 習 慣 を つ け る た め に,金 利 を 優 遇 した預 金 口座 を 子 ど もた ち に プ レゼ ン トした り,家 族 の 祝 い事 の た めの 口座 を 設 け る こ とで あ る。 な お,預 金 金 利 は,目 的 に よ って それ ぞ れ 異 な る金 利 が 設 定 され て い るが,9∼13%で. あ る。. 利 便 性 の 向上 につ いて は,交 通 が不 便 な地 域事 情(5)を考 慮 して,ス タ ッ フが100以 上 の 村 に 出 向 いて,窓 え て,ケ. 口業 務 を 行 って い る。 ま た,市(い. ち)な ど に 出店 す る人 々の 利 便 性 を 考. ツ ァラ ン に設 けて い る店 舗 は 日曜 日 も業 務 を行 って い る。 店 舗 はケ ツ ァ ラ ン に あ. る本 店 以 外 に,遠 方 の 村 に2カ 所 支 店 を 持 って い る。 融 資 は,家 庭 向 け と事 業 向 けの 二 種 類 に分 け られ る。 家 庭 向 けの 金 利 は1∼3%と. 非常. に低 い。 物 的 担 保 も必 要 で はな い。 住 民 に と って は,安 心 して 借 りる こ とが で き る存 在 と な って い る。 トセ パ ン トミン に 口座 を 持 つ こ と は,先 述 した よ う に,ト セ パ ンの 組 合 員 に. (5)自 動 車 の 保 有 は一 般 的 で な い 。 町 まで の 乗 り合 い バ ス を 利 用 す るか,徒 歩 が 一 般 的 で あ る。 ト セ パ ンの 代 表 で あ るナ サ リオ 氏 も本 部 で 会 合 が あ る と き には2時 間 の 距 離 を 歩 い て くる。 -10(212)一.
(11) 持 続 可 能 な 経 済 ・生 活 基 盤 構 築 の 試 み. トセ パ ン協 同 組 合(メ キ シ コ)の ケ ー スス タデ ィ(坂 田). な る 条 件 で も あ る 。 トセ パ ン の 様 々 な 事 業 に 参 加 す る た め に,ま な ら な い 。 つ ま り,ト. ず は 口座 を 作 らな けれ ば. セ パ ンの 組 合 員 数 は 口 座 数 で も あ る 。 た だ し,口. つ と は 限 らな い た め,組. 合 に 関 わ っ て い る 世 帯 数,家. 座 数 は一 世 帯 に一. 族 を含 め た住 民 数 は正 確 に は把 握 で. きて い な い。 家 庭 向 け の 融 資 で は,出. 産 時,病. 気 ・事 故 な ど の 緊 急 事 態,住. ぎ 融 資 な ど が あ げ られ る 。 も ち ろ ん,コ. 宅 ロ ー ン,そ. の他のつな. ー ヒ ー 生 産 に 必 要 な 苗 の 購 入 時 の 融 資 や,不. の 生 活 支 援 な ど に も 利 用 さ れ て い る 。 融 資 を 受 け る た め に は,ト. 作時. セ パ ン に 口座 を 持 って い. る必 要 が あ る。 事 業 向 け の 融 資 は,ト. セ パ ン 自 体 の 事 業 の よ う に 大 規 模 な も の も あ る が,女. が 小 規 模 な 事 業 を 興 す 場 合 に も 利 用 さ れ る 。 こ れ ま で に,ト ル テ ィ ー ヤ が 製 造 さ れ る),べ. 一 カ リー,建. 材 屋,ハ. ル テ ィ ー ヤ 工 場(半. 法 で 生 産 して お り,地. 自動 で ト. ン デ ィ ク ラ フ トの 店 な ど が 女 性 グ ル ー. プ に よ っ て 設 立 さ れ た 。 女 性 グ ル ー プ 以 外 へ の 融 資 と して は,地 事 業 が あ る 。 苗 の 製 造 事 業 で は,コ. 性 グル ー プ. 域 に植 物 の 苗 を 供 給 す る. ー ヒーや オ ール スパ イ スな どの 苗 を オ ー ガ ニ ックな 手. 域 で 有 機 農 業 を 営 む 生 産 者 に 供 給 して い る 。. 事 業 向 け の 融 資 を 受 け る た め に は い くつ か の 条 件 が あ る 。 そ の 中 で 重 要 な の は,人 保 の 存 在 で あ る 。 トセ パ ン ト ミ ン か ら融 資 を 受 け る た め に は,そ し,あ. れ ま で に トセ パ ン で 活 動. る 程 度 貯 蓄 を 行 っ て い る 必 要 が あ る 。 そ の 活 動 の 中 で,5∼7人. で 作 り,グ. の グル ー プを 地 域. ル ー プ の 連 帯 責 任 と して 融 資 を 受 け る 。 こ の 仕 組 み は,一. ク ロ フ ァ イ ナ ン ス で 行 わ れ て い る 方 法 で あ り,焦. 般 的 に途 上 国 の マ イ. げ 付 き の リ ス ク を 低 くす る 効 果 が あ る と. いわ れ て い る。. 表3コ. 有機栽培. ー ヒー 生 産 量 の 推 移 と内 訳. 慣行栽培. 合計. 有機栽培の割合. 2002. 1,454. N/A. 1,454. 100.0%. 2003. 1,904. N/A. 1,904. 100.0%. 2004. 1,954. 1,482. 3,436. 56.9%. 735. 2005. 2,384. 3,119. 76.4%. 2006. 3,446. 1,941. 5,386. 64.0%. 2007. 2,777. 1,425. 4,202. 66.1% 単 位:Qq(46kg). プエ ブ ラ州 全 体 の 生 産 量. 13,885. トセ パ ンの コー ヒー が 占め る割 合. 30。3%. トセ パ ンの 有 機 コー ヒー が 占あ る割 合. 20.0%. 一11(213)一. 的担.
(12) 第6巻 2.6地. 第3号. 域 文化 の継 承. 若 い 頃 に 地 域 を 離 れ,定. 年 間 近 に 地 元 に 戻 っ て く るUタ. う 。 こ の よ う な 人 々 の 増 加 に よ り,地 な っ た りす る な ど,様 る と は い え,若. ー ンが 日 本 で も 増 え て い る と い. 方 で は 農 業 の 担 い 手 が 増 え た り,消. 々 な 効 果 が 期 待 さ れ て い る 。 一 方 で,彼(女)ら. い 頃 に 土 地 を 離 れ て し ま っ て い る た め,地. は,地. トセ パ ンの 場 合 に は,ト. 元 出身 で あ. 域 の 暮 ら し ・文 化 を 十 分 に 学 ん. で い な い 。 そ れ ら に 十 分 に 触 れ る 前 に 都 会 に 出 て し ま っ て い る た め,Uタ 地 元 に 住 み 続 け る 人 と 比 べ る と,地. 費活動が活発 に. ー ン と は い え,. 域 文 化 の 体 験 量 が は る か に 低 い(6)。. セ パ ン 全 体 で 数 十 人 の 若 者 を 雇 用 して い る た め,彼(女)ら. が. 地 域 で 年 を と る 過 程 で 様 々 な 行 事 や イ ベ ン トを 体 験 し,自. 然 に 文 化 を 継 承 して い る 。 や が. て は,彼. らが 地 域 の 行 事 を 運 営 して い く. らが40∼50代. に な る と,若. 者 を 指 導 しな が ら,自. こ とが で き る。 トセ パ ンが 活 動 す る 地 域 で も,地. 域 文 化 の 継 承 は積 極 的 に行 わ れ て い る。 筆 者 が 滞 在 中. に も,ボ. ラ ドー レ ス と い う 儀 式 が ケ ツ ァ ラ ンで 開 催 さ れ た 。 こ の 儀 式 は ケ ツ ァ ラ ン だ け で. な く,そ. の 周 辺 の 村 で 継 承 さ れ て い る 儀 式 で あ る 。 ボ ラ ドー レ ス と は,数. さ の 柱 か ら,縄. 十 メ ー トル の 高. で 体 を 結 ん だ 人 々 が 回 りな が ら降 りて く る 儀 式 で あ る 。 ア ス テ カ 文 明 の 頃. か ら行 わ れ て い る と 言 わ れ て お り,神 わ れ わ れ が 訪 問 し た 時 期 に は,ト と ケ ツ ァ ー ル の ダ ン ス の2種. に捧 げ る儀 式 で あ る。. セ パ ン 設 立30周 年 の 式 典 が 行 わ れ て お り,ウ. 類 の 踊 りが 披 露 さ れ た 。 ウ ァ ウ ワ ス は,足. ァウワス. で つ か ま った 十 字. 型 の 棒 が 縦 に 高 速 で 回 転 す る 儀 式(ダ. ン ス)で,神. 南 北 そ れ ぞ れ の 神 を 象 徴 して お り,ア. ス テ カ カ レ ン ダ ー の 動 き を イ メ ー ジ して い る 。 先 述. し た ボ ラ ドー レ ス と ウ ァ ウ ワ ス は,20歳. に 捧 げ る 踊 りで あ る 。 十 字 の 棒 は 東 西. 前 後 の 男 女 が 踊 る 踊 りで あ っ た 。 一 方,ケ. ル の ダ ン ス は こ ど も た ち 中 心 の 踊 りで あ る 。 こ ど も 達 は,数 覚 え る た め に,毎 は,希. 週6時. 十 種 類 あ る と 言 わ れ る 踊 りを. 間 程 度 の練 習 に参 加 す る必 要 が あ る。 これ ら の ダ ン ス を習 うの. 望 し た も の だ け で す べ て の こ ど も が 習 得 して い る わ け で は な い 。. ま た,経. 済 活 動 の べ 一 ス と な る 農 地 で も,農. 地 を 森 林 に 近 い 形 に 近 づ け る こ と で,在. の 植 物 が 戻 っ て き て い る と い う。 現 地 の 自 然 の 森 に は 約1,000種 が,地. ツ ァー. 域 の 先 住 民 は350種. 来. の 植 物 が あ る と言 わ れ る. を 伝 統 的 に 利 用 し て い る 。 在 来 植 物 の 利 用 方 法 に 関 し て も,世 代. の 異 な る 農 民 同 士 の 交 流 を 増 や す こ と で,知. 識 の 伝 承 を 意 識 的 に行 って い る。. (6)筆 者 が 以 前 調 査 した 鹿 児 島 県 の 離 島 で は,高 校 を ど こで 過 ご した か が 地 域 文 化 の 継 承 に と って 重 要 で あ る とい う。 中学 生 を 終 え た まだ こ ど も と も いえ る年 代 で,高 校 に行 くた め に 島 を 出 て し ま う と,地 域 の 伝 統 を 継 承 し に く くな る と言 わ れ て いた 。 -12(214)一.
(13) 持 続 可 能 な 経 済 ・生 活 基 盤 構 築 の 試 み. 3.生. 3.1コ. トセ パ ン協 同 組 合(メ キ シ コ)の ケ ー スス タデ ィ(坂 田). 産 基 盤 か ら生 み 出 され るサ ー ビス. ー ヒ ー の 生 産 と加 工. メ キ シ コ の コ ー ヒー 産 業 は,2007年 占 め る 販 売 額 は1%に. も 満 た ず,主. 現 在 で 世 界 第6位. の 生 産 量 で あ る 。 た だ し,輸. 要 な 輸 出 産 品 と は な っ て い な い 。 しか しな が ら,国. 出に 土. の 大 部 分 を 占 め る 農 村 部 に お い て は トウ モ ロ コ シ と 並 ん で 貴 重 な 換 金 作 物 で あ る(FAO (2008))○ トセ パ ンの 主 産 物 は コ ー ヒー で あ る 。 コ ー ヒー は,有. 機 栽 培 認 証 を 取 得 した 農 地 か ら の. も の と そ う で な い も の の 二 種 類 が あ る 。 生 産 量 の ほ ぼ60%が コ ー ヒ ー の 生 産 量 の 推 移 を 表3に. 示 した。. 組 合 員 は 基 本 的 に 研 修 を 受 け て,後 機 栽 培 で な い コ ー ヒ ー は,現 や,組. 有 機 栽 培 認 証 を 受 けて い る。. 述 す る森 林 農 法 で 栽 培 した コー ヒー を 出荷 す る。 有. 在 有 機 栽 培 の 認 証 を 取 得 す る べ く取 り 組 ん で い る 畑 の も の. 合 員 以 外 が 栽 培 し た コ ー ヒー を 買 い 取 っ た も の で あ る 。 トセ パ ン が 生 産 物 の 認 証 を. 受 け て い る 機 関 は,Certimex(http://www.comerciojusto.com.mx)と の 機 関 で,オ. ー ガ ニ ッ ク(有. オ ー ガ ニ ッ ク 認 証 は2000年. 機 栽 培)認. か ら,フ. い うメキ シコ. 証 と フ ェ ア ト レー ド認 証 の 両 方 を 取 得 して い る 。. ェ ア ト レ ー ド認 証 は2007年. 一 般 に コー ヒー の 品 種 に は ア ラ ビ カ種 と ロ ブ ス タ 種 が あ る. か ら 取 得 して い る 。 。 トセ パ ン で 生 産 す る コ ー. ヒ ー は す べ て ア ラ ビ カ 種 で あ る 。 ア ラ ビ カ 種 の 方 が 高 品 質 で あ る と 言 わ れ て お り,主. に レ. ギ ュ ラ ー コ ー ヒ ー と して 利 用 さ れ る 。 ロ ブ ス タ 種 は 低 価 格 の レギ ュ ラ ー コ ー ヒ ー に ブ レ ン ドと して 混 ぜ られ た り,イ コ ー ヒ ー の 収 穫 は,各 熟 す る わ け で は な く,少. ン ス タ ン トコ ー ヒ ー の 主 原 料 と して 利 用 さ れ る 。. 組 合 員 が そ れ ぞ れ 行 う 。 こ の 地 域 の コ ー ヒ ー は,同 しず つ 熟 して い く た め,熟. し た 果 実 か ら収 穫 す る 。 そ の た め,森. の 中 の 木 を 一 本 ず つ ま わ りな が ら手 で 摘 む 。 収 穫 し た 果 実 は 水 に 浸 して,果 え で,ト. 皮 を 外 した う. セパ ンに納 品 す る。. 組 合 員 や 地 域 の 生 産 者 が 収 穫 し た コ ー ヒ ー は,加 トセ パ ン地 域 は 高 温 多 雨 で 多 湿 な の で,天 乾 燥 さ れ た 豆 は 機 械 選 別 さ れ た 後,倉. 工 場 に運 ばれ 工 場 で 機 械 乾 燥 させ る。. 日 乾 燥 は 基 本 的 に 行 な わ ず,機. 庫 で 保 管 さ れ,受. に は 生 豆 の 状 態 で 出 荷 さ れ て い る が,ヨ. 械 乾 燥 で あ る。. 注 を 受 けて 出荷 され る。 日本 向 け. ー ロ ッパ 向 け に は 焙 煎 した も の を 粉 に ひ き,袋. め して 出 荷 して い る も の も あ る 。 トセ パ ン で は,メ た め,こ. じ房 が 同 時 に. キ シ コ 国 内 の 需 要 拡 大 を め ざ して い る. の 加 工 設 備 は 今 後 さ ら に 利 用 度 が 高 ま る と 考 え られ る 。 当 然 な が ら,生 一13(215)一. 詰. 豆 で 出荷.
(14) 第6巻. 第3号. す る よ りも加 工 して 袋 詰 め に した方 が 利 益 率 も高 い。 焙 煎 か ら袋 詰 めの 行 程 は機 械 が 一 貫 して 行 う た め,ほ とん ど人 手 はか か らな い。 な お,こ の 機 械 も トセ パ ン トミンが 出資 して 購 入 設 置 した もの で あ る。 組 合 員 と して 生 産 に参 加 す る た め に は,組 合 が 実 施 す る3日 間 の 研 修 を 受 け る必 要 が あ る。 研 修 を受 けて 畑 が 一 定 の 条 件 を満 た した組 合 員 の コー ヒー は有 機 農 法 で 栽 培 した コー ヒー と して 認 め られ る。 な お,組 合 に参 加 して いな い生 産 者 の 生 産 物 は,組 合 員 に対 す る 買 い取 り価 格 の6割 の 価 格 で 買 い取 る。 加 工 段 階 に お いて は,取. り除 い た果 皮 を 環 境 中 に放 出す る こ と に よ る水 資 源 の 汚 染 に も. 配 慮 し,果 皮 は,回 収 して 堆 肥 化 して い る。 乾 燥 後 の 豆 を 生 豆 と して 出荷 す る際 に取 り除 か れ る 外 皮 もた い 肥 化 は も と よ り,日 本 に お け る も み殻 と同 様 に 多 様 な使 い 方 が な され る。 例 え ば,滑. りや す い と こ ろ に散 布 した り,覆 土 と して 利 用 す るな どの 事 例 は滞 在 中 も. 見 られ,基 本 的 に土 壌 還 元 され て い る。 慣 行 農 法 に よ って 生 産 され た苗 の 場 合,種 や 苗 段 階 で 農 薬 が 使 用 され るた め,こ れ らを 使 用 す る と有 機 栽 培 認 証 を受 け る こ とが で きな い。 そ こで トセ パ ンで は苗 木 を 育 成 す る専 門 の 会 社 を設 立 し,有 機 農 法 で の 種 苗 生 産 を 行 な って い る。 ま た,受 粉 を 促 進 す るた めの 蝶 も 自前 で 育 て て い る。 苗 の 育 成 に も コー ヒー の 果 皮 な ど を た い肥 化 した もの が 利 用 され て い る。. 表4農. 森林農法. 組合員の平均作付面積 コー ヒー の 本 数 収. 慣行農法. 3.2森. 法 の 違 い によ る 収 入 の 比 較. 量. 0.9ha lhaあ 1本. た り 約1,500-2,500本 あ た り 年 間2キ. ロ. 出荷 額. 3。5ペ ソ/kg(実. 平均年収. 2×2,000×0.9×3.5=12,600ペ. 組合員の平均作付面積 コー ヒー の 本 数. 0。9ha. 収. 1本 あ た り 年 間2キ. 量. lhaあ. の ま ま)程. 度 ソ. た り 約4,000本 ロ. 出荷 額. 2。3ペ ソ/kg(実. の ま ま)程. 平均年収. 2×2,000×0。9×2。3=16,800ペ. 度 ソ. 林 農 法 に よ る生 活 モ デ ル. 森 林 農 法 を 営 む こ と で,コ の 品 質 が 向 上 す る た め,買. ー ヒ ー の 生 産 量 自 体 は 減 少 す る 。 た だ し,生 い 取 り金 額 は 高 くな る 。 ま た,森 一14(216)一. 産 す る コー ヒー. 林 か ら とれ る様 々な 作 物 が.
(15) 持 続 可 能 な 経 済 ・生 活 基 盤 構 築 の 試 み 日 々 の 食 卓 に 上 る た め,食. トセ パ ン協 同 組 合(メ キ シ コ)の ケ ー スス タデ ィ(坂 田). 費 の 低 下 に も貢 献 す る。. コ ー ヒ ー に よ る 平 均 所 得 は,12,600ペ ∼15. ,750ペ ソ,1ペ. 倍,納. ソ ー 約10円)。. 入 価 格 が お よ そ3分. 場 合 に は,こ. の2で. ソ/年. 程 度(表4参. 照)と. 試 算 さ れ る(7>。(9,450. コ ー ヒ ー を 慣 行 農 法 で 栽 培 し た 場 合 に は,収 あ る た め,お. お よ そ16,800ペ. こ か ら さ ら に化 学 肥 料 ・農 薬 代 を 支 払 い,日. ソ程 度 で あ る。 慣 行 栽 培 の. 々 の 食 材 費 が 必 要 で あ る 。 ま た,. 慣 行 栽 培 の 買 い と り価 格 は 国 際 相 場 に よ っ て 大 幅 に 変 化 す る た め,収 食 糧 の 大 半 を 森 林 に よ っ て ま か な う こ と が で き る メ リ ッ トは,食 くつ か 考 え られ る 。 ま ず は,食. 量 はお よそ. 入 は 安 定 しな い 。. 費 が 助 か る以 外 に も い. 糧 が コ ー ヒ ー と 同 じ場 所 か ら得 ら れ る た め,現. 金獲得のた. め の 主 要 な 業 務 で あ る コ ー ヒー の 管 理 と 同 時 に 食 糧 を 得 る こ と が で き る 。 す な わ ち,食 生 産 の 手 間 を 最 低 限 に 抑 え られ る 。 次 に,食 の 収 入 が 不 安 定 で も,最. 3.3販. 売 方 法:フ. 糧 が 自 給 で き る と い う こ と は,コ. 糧. ー ヒー か ら. 低 限 の 生 活 は保 障 され る こ とを 意 味 す る。. ェア トレー ド. 作 物 の で き る量 や 質 に よ って 収 入 が 左 右 され るの は,農 業 を営 む 以 上,基 本 的 な 市 場 原 理 で あ り,受 け入 れ るべ き リス クで あ る。 この た め,豊 作 で よ い作 物 が た くさ ん で き て も, 価 格 が 大 幅 に低 下 し,収 入 が 減 る こ と も あ る。 しか しな が ら,コ ー ヒー の 国 際 価 格 は,国 際 市 場 で 決 定 され て い る。 地 域 の 産 物 の 価 格 が 国 際 市 場 の 動 向 に よ って 左 右 され る と い う こ とは,地 域 の作 柄 と価 格 が 連 動 しな い こ と を意 味 す る。 そ の た め,仮 に地 域 が 不 作 で あ って も国 際 的 に は豊 作 で あれ ば価 格 は低 下 す る し,逆 も ま た あ り得 る。 途 上 国 の 生 産 者 は,設 備 投 資 は も と よ り,種 苗 の 購 入 の た め に借 金 を して い るケ ー スが 多 く,外 部 的 な 要 因 に よ る作 物 の 価 格 変 動 が 致 命 的 にな る可 能 性 が あ る。 この 点,ト. セパ ンで は,先 述 の と お り自分 た ちで 種 苗 を 育 成 し,種 苗 会 社 へ の 支 払 い も. 最 低 限 に抑 え て い る。 ま た,自 分 た ちの 種 苗 会 社 を持 つ こ とで,新 た な 雇 用 も生 み 出 して い る。 資 金 に関 して は,自 前 の 銀 行=ト セ パ ン トミ ンに よ り,低 利 で の 資 金 調 達 を 可 能 に して,リ. ス ク を さ らに軽 減 して い る。. 一 方 ,ト セ パ ン 自身 の努 力 に加 え て,販 売 方 法 の 工 夫 も行 って い る。 そ れ が フ ェア ト レー ドと呼 ばれ る取 引 方 法 で あ る。 フ ェ ア トレー ドで は,生 産 物 を 平 均 的 な 市 場 価 格 よ り も高 く設 定 す る以 外 に,長 期 契 約 と先 払 い と い う取 引 方 法 で,生 産 者 が 抱 え る リス クを 軽. (7)我 々 の 訪 問 した,ド ン ・ル イ ス の 森(ウ ェ ン ビ オ)で の 話 で は,1ha当 た り の 平 均 収 量 は,15Qq =675kgで ,1本 当 た り2kgの 収 穫 と す る と,300本 程 度 しか 植 え て い な い こ と に な る 。 ル イ ス の 場 合,コ ー ヒ ー の 割 合 が か な り少 な く,収 量 が5haで50Qq程 度 と い う こ と で あ っ た の で,年 収 が5,625ペ. ソ と試 算 され る。 -15(217)一.
(16) 第6巻. 第3号. 減 す る(8)。 一 般 的 な市 場 取 引 に比 べ る と,途 上 国 の生 産 者 に と って は安 心 で き る シス テ ム で あ る。 フ ェ ア トレー ドは,通 常 の 取 引 で は外 部 性 と して 考 慮 され な い生 産 過 程 で の 環 境 負 荷 や 生 産 者 の 生 活 を 内部 化 して い る。. 3.4ツ. ー リズ ム. 物 見 遊 山 と は一 線 を画 す 旅 行 形 態 と して提 案 さ れ た の が エ コ ツ ー リズ ムで あ る。 エ コ ツ ー リズ ム は,「環 境 教 育 的側 面 を不 可 欠 な要 素 と して組 み込 ん だ,地 域 文 化 観 光 の 一 形 態 (深見 他,2003)」. と定 義 され る。 定 義 か らは,環 境 教 育 を 行 え る能 力 を 持 つ ガ イ ドが 同行. す る こ とが 不 可 欠 で あ る と考 え られ るが,日 本 で の 実 態 は必 ず しもそ う はな って いな い。 単 に 「自然 に親 しむ 」 こ とや 「自然 生 態 系 が 豊 か な 場 所 を 見 学 す る」 こ とが 含 まれ て いれ ば 「エ コ ツ ア ー」 と い う名 称 が 利 用 され て い る。 エ コ ツ ー リズ ム は,そ も そ も地 域 環 境 を保 全 す る こ とが 重 要 な 目的 で あ る と され,そ の た めの 理 解 を深 め る と 同時 に,人 々の 行 動 を 変 え る契 機 とな る こ とを 目指 して い る。 定 義 に環 境 教 育 が 含 まれ て い るの は,ま さ に その た めで あ る。 た とえ ば,単 な る 「そ ば打 ち体 験 」 で も,方 法 に よ って は単 な る観 光 や 体 験 に もな る し,地 域 が そ ば と関 わ って きた 文 化 や 歴 史 を学 ぶ こ とが で き るエ コ ツ アー に もな りう る。 エ コ ツ アー につ いて は,地 域 住 民 が 行 って い るか,そ. うで な いか を 基 準 にす るケ ー ス も あ るが,地 域 住 民 に も地 域 文 化 や 環 境. に関 心 を持 たな い ケー ス も あ る。 か え って 地 域 住 民 の ほ うが 世 界 で 起 こ って い る 自然 環 境 の 衰 退 に鈍 感 で,周 辺 環 境 に悪 影 響 を 与 え る こ と に鈍 感 な ケ ー ス も多 い。 トセパ ンの ミ ッシ ョン は,地 域 文 化 を 維 持 す る こ と と 自然 生 態 系 を 保 全 す る こ との 両 立 で あ る。 それ ゆえ,ト セ パ ンを 訪 問 し,ス タ ッフ に取 り組 み を 紹 介 して も ら う こ と 自体 が す で にエ コ ツ アー で あ る と考 え る こ と もで き る。 ただ し,そ れ で は トセ パ ンの 取 り組 み が 見 え な くな って しま う た め,以 下 で は,環 境 教 育 関 係 の 機 能 に焦 点 を 当 て て,宿 泊 施 設 と, 個 別 の プ ロ グ ラ ム につ いて,訪 問 者 の 形 態 別 に検 討 す る。. 3.4.1滞. 在 拠 点:ト. セ パ ンカ リ. トセ パ ン カ リ は 宿 泊 施 設 や 研 修 施 設,食. 堂 を 含 む エ リ ア で あ る 。 対 象 と して い る の は,. (8)ブ ラ ウ ン(1998)は,フ ェ ア ト レ ー ドを 包 括 的 に 解 説 し て い る 。 ま た,フ ェ ア ト レ ー ドの 基 準 と し て,ATO(AlternativeTradeOrganization)の 取 引 基 準 を 紹 介 し て い る(p.334)。ATO で は,生. 産 物 の 種 類,加. 工 の 過 程,対. 象 と な る 現 地 生 産 者,対. 証 を 行 っ て い る 。 認 証 機 関 と し て は,現 と も有 名 で あ ろ う。. 象 国,そ. の ほか の 条 件 に よ って 認. 在 はFLO(FairtradeLabelingOrganization)が. 一16(218)一. もっ.
(17) 持 続 可 能 な 経 済 ・生 活 基 盤 構 築 の 試 み. トセ パ ン協 同 組 合(メ キ シ コ)の ケ ー スス タデ ィ(坂 田). 組 合 関 係 者 の 研 修 と外 部 者 の 受 け入 れ で あ る。 後 者 につ いて は,主 に メ キ シ コ国 内の 学 校 か らの 学 生 と,そ れ 以 外(一 年 々増 え て お り,2006年. 般 人)に 分 け る こ とが で き る。 トセ パ ン カ リへ の 訪 問者 は. に は1,854人(前. あ っ た。 宿 泊 施 設 の 稼 働 率 は70%だ が,フ. 年 比34%増)の. 訪 問者 と298人 の組 合 員 の使 用 が. っ た。 訪 問 客 の 自宅 は メ キ シ コが 多 いの は当 然 で あ る. ラ ンス ・ ドイ ツ ・日本 か らも訪 れ る人 が あ る。. トセ パ ンカ リを 拠 点 と して,キ (ウ ェ ン ビオ),チ. ャ ンプ用 の 場 所(ケ. イ バ ー ニ ャス)や,森. 林農法 の森. ボ ス トックな どの 環 境 教 育 スペ ー スが 地 域 に散 在 して お り,ガ イ ドの 案. 内で,利 用 者 の 要 望 に応 じた体 験 が 可 能 で あ る。 トセパ ンカ リの 宿 泊 施 設 は も と も と,組 合 関 係 者 の 研 修 施 設 及 び研 修 時 の 宿 泊 施 設 と し て 建 設 さ れ た(9)。トセ パ ン に関 わ る生 産 者 で車 を保 有 して い る生 産 者 は ほ とん どい な い。 トセパ ンの エ リア は車 で2時 間 半 か か る場 所 まで 広 が って い る た め,ト セ パ ン に来 る まで に徒 歩 で 数 時 間 か か るの が 通 常 で あ り,研 修 の た め に毎 日通 う こ と は事 実 上 困 難 で あ る。 研 修 対 象 者 は トセ パ ンカ リで 宿 泊 しな が ら,森 林 を 保 全 しな が らコー ヒー や オ ー ル スパ イ ス を生 産 す る方 法 を施 設 内 に設 け られ た農 場 を題 材 に しな が ら学 ぶ 。 また,現 在 幼 稚 園 と して 利 用 され て い る建 物 が 利 用 して い る雨 水 利 用 や 排 水 処 理 シ ス テ ムな どの 中間 技 術 を, 実 地 で 学 ぶ こ と もで き る。. 3.4.2環. 境学習. トセ パ ン を 訪 問 す る 人 々 の う ち,学 生 の た め に は,ト. 生 や 生 徒 は 環 境 教 育 を 目 的 と して い る 。 こ れ ら の 学. セ パ ン 創 設 者 の ひ と りで あ る ドン ・ル イ ス が 所 有 す る 農 場,ウ. が 用 い られ る 。 同 農 場 は,日 れ た 。 ウ ェ ン ビオ は,環. 本 の 財 団 の 支 援 も あ り,環. ェ ン ビオ. 境 教 育 用 の ス ペ ー ス と して 整 備 さ. 境 教 育 プ ロ グ ラ ム と後 述 す る滞 在 型 ツー リズ ムの 試 行 的 な 例 と位. 置 付 け られ て い る 。 今 後 は,ウ. ェ ン ビオ を モ デ ル と して,ト. セ パ ン にか か わ る人 々の 農 場. で も プ ロ グ ラ ムが 実 践 され る可 能 性 が あ る。 ウ ェ ン ビ オ で は,植 て,利. 物 等 の 知 識 が 豊 富 な ガ イ ドが 森 を 案 内 す る。 森 の 中 の 植 物 に つ い. 用 方 法 や 先 住 民 に 伝 わ る エ ピ ソ ー ドの 解 説 が あ る 。 た と え ば,森. に 自生 す る植 物 の. (9)関 係 者 と い う意 味 で は,幼 児 教 育 も 自前 で 行 って い る。 幼 稚 園 は,モ ンテ ッ ソー リ教 育 を2005 年 よ り実 施 して い る。 こ れ は2004年 に現 地 を 訪 れ た深 津 高 子 氏 の影 響 で あ る。 な お,モ ンテ ッ ソー リ教 育 につ いて は,モ ンテ ッ ソー リ(1997)な どが 参 考 にな る。 外 部 の ア イ デ ア を 柔 軟 に取 り入 れ る例 の 一 つ と して 考 え られ よ う。 同 幼 稚 園 は,ト セ パ ンの 活 動 を 十 分 に理 解 した メ ンバ ー に解 放 され て い る。 幼 稚 園 で は,こ ど もた ちの 自発 性 を 重 ん じた 教 育 が 実 践 され て い るよ うで, 訪 問 時 に も こ ど もた ちは,お 絵 か き,積 み 木,粘 土 細 工 で 遊 ん だ り,ラ ンチ ョンマ ッ トを 畳 ん だ り,そ れ ぞ れ 関 心 の あ る作 業 や 遊 び を して 過 ご して いた 。 今 後 は,幼 稚 園 で 育 った こ ど も達 が 成 長 す るに つ れ て,小 学 校 を 運 営 す る計 画 もあ る。 一17(219)一.
(18) 第6巻 う ち,貴. 第3号. 重 な 現 金 収 入 作 物 で あ る バ ニ ラ の エ ピ ソ ー ドが あ る 。 一 般 に バ ニ ラ は 自 然 受 粉 が. 難 し い 植 物 で あ り,手 か し,地. で 受 粉 す るが 難 しい作 業 で あ る うえ に時 間 の か か る作 業 で あ る。 し. 域 で ハ チ ミ ツ を 取 る た め に 育 て て い る 土 着 の ハ チ は,こ. して お り,ミ. ツ を 採 取 す る 過 程 で,受. 近 くで 育 て る こ と は,バ. の 花 の 細 長 い形 状 に適 応. 粉 す る こ と が で き る 。 そ の た め,土. ニ ラ を 収 穫 す る こ と に も つ な が る 。 な お,こ. 野 生 生 物 が 生 活 し一一 見 天 然 林 と 見 紛 う が,1970年 模 な プ ラ ン テ ー シ ョ ン と 牧 場 で あ り,草. 着 の ハ チを 森 の. の 森 に は さ ま ざ まな. 頃 は地 域 の 他 の コー ヒー 農 地 と 同様 大 規. 地 で あ っ た そ うで あ る。. 現 地 で 体 験 で き る プ ロ グ ラ ム と して は,見. 学 の ほ か に,シ. ナ モ ン ス テ ィ ックの 作 成 体 験. が 試 験 的 に 提 供 さ れ て い る 。 森 か ら と れ る シ ナ モ ン の 木 を ナ イ フ や ナ タ で 剥 い て,シ ン ス テ ィ ッ ク を 作 る 体 験 で あ る 。 今 後 は,こ. ナモ. の よ うな 体 験 プ ロ グ ラ ムの 充 実 を はか る こ と. が 検 討 され て い る。 ウ ェ ン ビオ に は,ド. ン ・ル イ ス の 自 宅 も あ り,自. す る こ と が で き る 。 ま た,自. 宅 の 食 堂 で プ ロ グ ラ ム参 加 者 は食 事 を. 宅 を 見 学 す る こ と も で き,地. る こ と も 可 能 で あ る 。 自 宅 で 食 事 を し,見. 域 の 人 々 の 暮 ら しを 直 接 見 学 す. 学 を 受 け 入 れ る こ と で,農. 場 の 所 有 者 は,追. 加. 的 な現 金 収 入 を得 る。 な お,現. 地 の 環 境 教 育 に つ い て,我. 実 践 して い る 参 加 型 学 習(ハ. 々 が 体 験 し,質. ー ト(2000,p.42))と. 問 し た 範 囲 で は,日. 本の環境教育が. い っ た レベ ル に は な い 。 現 状 で は,ガ. イ ド付 き の エ コ ツ ア ー と い う レベ ル で あ る 。 こ の 地 の 環 境 教 育 が 日 本 な ど で 行 わ れ て い る よ うな. 「気 づ き 」 の 契 機 と な る レベ ル,あ. る た め に は,建. 設 中 の キ ャ ン プ サ イ トで あ る ケ イ バ ー ニ ャ ス が 完 成 す る 必 要 が あ る の か も. しれ な い 。 た だ し,実 し,日. る い は 参 加 型 学 習 の 一一 手 段 と して 位 置 づ け ら れ. 際 の トセ パ ン の 生 活 を 考 え る な ら ば,周. 本 ほ ど 人 間 関 係 が 希 薄 化 して い な い た め,環. 辺 環 境 は十 分 に豊 か で あ る. 境 教 育 に求 め る もの 自体 が 異 な って い. る可 能 性 も あ る。. 3.4.3外. 部 者 向 け の エ コ ツ ー リズ ム. 外 部 者 に 向 け て の プ ロ グ ラ ム は 現 在 開 発 中 で あ る 。 プ ロ グ ラ ム は,地 源 を 訪 問 す る こ と,コ. ー ヒー 農 園 で の 体 験 プ ロ グ ラ ム と,ト. 域 の 歴 史 ・文 化 資. レ ッキ ン グ プ ロ グ ラ ムか らな. る。 トセ パ ンの あ る 地 域 に は,ト ク(雄. ヤ ギ の 洞 窟)や. セ パ ン が 周 辺 の 土 地 を 購 入 し保 全 に 努 め て い る チ ボ ス ト ッ. ヨ ワ リ チ ャ ン 遺 跡(9∼10世. カ 族 の 集 会 所 と して 使 わ れ て い た 遺 跡),あ. 紀 頃,ナ. ワ ッ ト族 に 攻 め ら れ た ト トナ. る い は ラ ス ブ リ サ ス の 滝 な ど,さ. 一18(220)一. ま ざ まな 観 光.
(19) 持 続 可 能 な 経 済 ・生 活 基 盤 構 築 の 試 み 資 源 が あ る 。 ま た,観 で,外. トセ パ ン協 同 組 合(メ キ シ コ)の ケ ー スス タデ ィ(坂 田). 光 用 に 馬 を 育 て て い る グ ル ー プ も あ る た め,こ. れ らを 活 用 す る こ と. 部 向 けの 観 光 プ ロ グ ラ ムを 開 発 す る こ とが で き た。. 筆 者 が 参 加 し た 一 日 の ツ ア ー は,ト キ ン グ,滝(ラ. ス ブ リサ ス の 滝)見. レ ッ キ ン グ プ ロ グ ラ ム で あ っ た 。 洞 窟 見 学,ト. 学,滝. 壺 の 上 を 通 る 道,乗. 馬,川. レッ. で の 休 憩 と 盛 りだ く. さん の 内容 だ っ た。 チ ボ ス ト ッ ク の 洞 窟 は,道 窟 で,以. 前 は 住 民 の ご み 捨 て 場 に な っ て い た と い う 。 そ れ を トセ パ ン が 周 辺 の 土 地 を 含 め. て 買 い 取 り,整 り,地. 路 か ら500メ ー トル ほ ど 離 れ た 場 所 に あ る 岩 山 の 下 に あ る 洞. 備 し た 。 洞 窟 の 入 口 に は,コ. ー ヒ ー 豆 の 皮 が 滑 り止 め 代 わ り に 敷 か れ て お. 域 資 源 を 有 効 活 用 し よ う と す る トセ パ ン ら し い 工 夫 で あ る と 感 じた 。 洞 窟 は,も. も と は ケ ツ ァ ラ ン の 中 心 に あ る 教 会 の 地 下 に つ な が っ て い る と い わ れ て い た が,現 50メ ー トル ほ ど入 っ た と こ ろ で 崩 れ て し ま っ て い る。 ま た,古 住 民 が 死 の 世 界 の 精 霊(悪 は お そ ら く,キ. 霊)に. い 伝 承 で は,こ. と. 在で は. の 洞 窟 は先. 捧 げ もの をす る場 所 で あ る と伝 え られ て い る。 この 伝 承. リ ス ト教 伝 来 後 に,土. 着 の 宗 教 を 捨 て させ る た め に伝 承 が 変 容 され た もの. で あ る と 考 え られ る 。 車 を 降 りて15分. ほ ど 谷 底 に 向 か っ て 歩 く と,最. 初 の 休 憩 所 が あ る 。 こ の 休 憩 所 は,大. 人. 数 の 宿 泊 を 可 能 と す る た め,現. 在 い くつ か の キ ャ ビ ン と 中 心 と な る 建 物 を 建 設 中 で あ る 。. キ ャ ビ ン は ケ イ バ ー ニ ャ ス(洞. 窟)と. 呼 ば れ て お り,そ. れ ぞ れ に 形 が 異 な る も の が4つ. る 。 い ず れ も竹 と 鉄 筋 を 組 み 合 わ せ て フ レー ム と して,上 工 法 を 用 い て い る 。 こ れ らの 建 造 物 は,ト. あ. か ら コ ン ク リー トを 塗 る と い う. セ パ ン カ リ と 同 様,手. 作 りで あ る 。 わ れ わ れ が. 訪 問 し た 日 も10人 以 上 の 現 地 住 民 が 作 業 に 従 事 し て い た 。 キ ャ ビ ン は 宿 泊 可 能 人 数 が 異 な っ て お り,3∼4人 あ る 。 ま た,こ. の も の か ら,6∼7人. が 宿 泊 可 能 で あ る と思 わ れ る もの まで 様 々で. の サ イ トで は 川 魚 の 養 殖 プ ー ル が あ り,育. ト レ ッ キ ン グ 中 に は,コ ー ヒ ー 農 園 を 通 過 し た が,こ 森 林 農 法 の コ ー ヒ ー 農 園 と 比 較 す る と,ま 量 が 少 な い か らか も 知 れ な い が,下. 成 が 試 み られ て い る。. の農 園 は慣 行 栽 培 の農 地 で あ った。. ず 木 が コ ー ヒ ー しか な い 。 た だ し,農. 草 は 予 想 以 上 に 生 え て お り,芝. 薬の使用. 生 の よ う な 感 じで あ っ. た 。 一 般 に コ ー ヒ ー が 栽 培 さ れ る 現 場 を 見 た こ と が な い 訪 問 者 が 多 い と 考 え ら れ る の で, 慣 行 農 法 の 畑 も 見 学 で き る こ と で 森 林 農 法 と の 違 い を 実 地 に 体 験 で き る 。 トセ パ ン の 人 々 に は 見 慣 れ た 光 景 か も しれ な い が,両. 者 を 比 較 す る 貴 重 な 機 会 で あ る か ら 少 し詳 し く説 明. す べ きで あ っ た。. 一19(221)一.
(20) 第6巻. 第3号. 論. 4.結. トセ パ ン は も と も と は生 活 物 資 の 共 同購 入 組 合 で あ っ た が,会 員 ネ ッ トワー ク と して は,コ ー ヒー とオ ー ル スパ イ スの 共 同 出荷 組 合 と して の 方 が 強 か った 。 そ の た め,農 業 関 係 者 が 組 合 員 の 大 半 を 占 めて い た。 銀 行 を 設 立 す る こ とで,預 金 者=ト セ パ ンの メ ンバ ー と い う関 係 が 生 まれ た。 銀 行 の 融 資 サ ー ビス に も一 般 の 人 々の 生 活 を 支 え るサ ー ビ スが 多 く含 まれ て い る。 その た め,ト セ パ ン に関 わ る可 能 性 が あ る人 の 母 集 団 が そ れ まで の 農 業 関 係 者 か ら一 気 に地 域 の 人 々全 体 へ と広 が っ た。 ま た,ト セパ ンの 活 動 地 域 は,当 初 は ナ ワ ッ ト族 主 体 の 地 域 の み だ った が,銀 行 設 立 の 前 後 に これ まで の 方 針 を 修 正 し,ト. トナ カ族(ナ. ワ ッ ト族 以 前 に地 域 に住 ん で いた 人 々). の 村 の 加 盟 も認 め た。 この 地 域 の ト トナ カ族 は地 域 で は よ り少 数 の 民 族 で あ り,メ キ シ コ 全 体 で も っ と も貧 しい地 域 の 上 位10位 以 内 に入 る地 域 に住 ん で い る。 トセ パ ンの 活 動 を 通 じて,彼. らの 生 活 向 上 を支 援 して い る。. 多 様 な事 業 を手 が け る こ と と,地 域 に根 付 い た活 動 を す る こ とで,こ れ まで 農 民 しか 関 わ りの な か っ た トセ パ ンの 活 動 に,ケ ツ ァ ラ ンの 住 民 全 体 を トセ パ ン に巻 き込 む こ と に成 功 した点 は,ト セ パ ン トミンの 大 きな 成 果 の 一一 つ で あ っ た。 ま た,設 立 後 わ ず か9年 で あ るが,ト. セパ ン全 体 の な か で も っ と も収 益 を 上 げて い る事 業 に成 長 して い る点 も重 要 で あ. る。 な お,貸 出金 利 の 方 が 預 け入 れ 金 利 よ り低 い点 が 問 題 とな りそ うで あ るが,こ の 点 につ いて は現 在 問 い合 わ せ 中で あ る。 お そ ら くは,短 期 貸 し付 け に よ って 資 金 の 回 転 率 が 高 い こ とで 収 益 を上 げて い る と考 え られ る。 トセパ ンの 持 続 可 能 性 につ いて 評 価 を行 っ た結 果,森 林 管 理 と ビ ジネ スの 両 面 で 持 続 可 能 な事 業 運 営 を して い る こ とが 明 らか にな っ た。 トセ パ ンの 事 業 は,森 林 農 法 に よ る コー ヒー栽 培 を 中心 と しな が ら,複 数 の 作 物 の 育 成 とエ コ ツー リズ ム事 業 の 育 成 に よ り,多 角 化 を図 って い る。 いず れ も森 林 資 源 を 活 用 す る事 業 で あ り,無 理 の な い展 開 で あ る。 新 規 事 業 の 展 開 と会 員 の 拡 大 と い う面 で は,ト セ パ ン トミンが 組 織 を 支 え る役 割 を 果 た して い る。 同銀 行 が 持 つ 啓 発 機 能 は,住 民 の 生 活 を 安 定 化 させ る役 割 も果 た して い る。 近 代 化 につ いて ど う考 え て い るの か は,十 分 に調 査 す る こ とが で きな か った 。 地 域 が 経 済 発 展 す る 中 で,今 後 の生 活 が ど うな るか とい う点 に つ い て は,将 来 的 な 展 望 は あ ま り 持 って いな い。 現 状 で は,む. しろ,森 林 農 法 に よ る地 域 作 りを 充 実 させ る こ と に関 心 が 集 一20(222)一.
(21) 持続可能な経済 ・生活基盤構築の試み. トセパ ン協同組合(メ キ シコ)の ケー スス タデ ィ(坂 田). 中 して い る。 エ コツ ー リズ ム に しろ単 な る観 光 に しろ,地 域 が 旅 行 の 目 的地 とな る こ と は,地 域 社 会 へ の 影 響 が あ る。 単 純 に外 部 の 視 点 で 評 価 す る こ と はで きな いが,ト セ パ ン で も急 速 に価 値 観 の 変 化 が 訪 れ て い る よ う に感 じる。 地 域 住 民 が ツ ー リズ ムの 題 材 と して,地 域 文 化 や 生 活 環 境 を ど こ まで 見 せ るの か は難 し い問 題 で あ る。 参 加 者 に と って,森. を散 策 す るだ けで は,森 林 農 法 を 実 施 す る人 々の 実 情. を知 る こ と に はな らな い た め,地 域 の 文 化 を 学 ぶ と い う需 要 は あ る。 しか しな が ら,農 民 側 に と って み れ ば,自 宅 を 開 放 す る こ と は精 神 的 な 抵 抗 も大 き い。 今 後 は,ト セ パ ン メ ン バ ーの 自宅 に宿 泊 す る こ とな ど も プ ロ グ ラ ム と して は考 え られ るが,現 時 点 で は抵 抗 が 大 き い よ うで あ る。 トセパ ンへ の 参 加 が 自発 的 で あ る点 も問 題 とな る可 能 性 が あ る。 す な わ ち,各 集 落 に は トセパ ンの 参 加 者 と そ うで はな い人 々が 混 在 して お り,ト セ パ ンの 活 動 にか か わ らな い人 に は,エ コ ツ ー リズ ムで 外 部 者 が 地 域 に入 って くる こ と を好 まな い人 が い るの は当 然 で あ る。 エ コ ツ ー リズ ムの 趣 旨を 参 加 者 が 十 分 に理 解 しな い ま ま に,集 落 に外 部 者 を 受 け入 れ る こ と は地 域 で の あつ れ き を生 む 。 同様 の こ と は,日 本 で も起 きて お り,観 光 関 連 産 業 の 従 事 者 と,地 域 住 民,特. に農 業 従 事 者 との 間 で 摩 擦 が 生 まれ る事 例 は多 い。 これ は,観 光. 関 連 産 業 で 得 た収 入 が 農 業 関 係 者 に まで 十 分 に配 分 され な い と い う事 情 も あ る。 トセ パ ン の 場 合 に は,メ ンバ ー にな る こ と 自体 は簡 単 で あ る し,預 金 利 子 と い う形 で 配 当 を 得 る こ と もで き るの で,再 配 分 の 仕 組 み は 日本 の 田舎 よ りも整 って い る印 象 が あ る。 エ コ ツ ー リズ ム は,今 後 トセ パ ンの 大 きな 収 益 源 とな る可 能 性 が あ るが,コ ー ヒー 農 園 を は じめ とす る環 境 観 察 サ イ トに お け る プ ロ グ ラ ム は,今 後 改 善 の 余 地 が あ る。 外 部 者 に と って は,個 別 の 植 物 の 名 前 や その 利 用 方 法 は関 心 が 低 く,む しろ,生 態 系 全 体 の 解 説 や 自然 環 境 と住 民 の 関 わ り方,森 林 農 法 の 紹 介,あ. る い は何 らか の 体 験 プ ロ グ ラ ムを 提 供 し. た方 が よ り満 足 度 の 高 い プ ロ グ ラ ム とな る。 現 に筆 者 も コー ヒー の 森 で の 環 境 教 育 プ ロ グ ラ ム に も参 加 したが,多. くの 植 物 の 名 前 を 覚 え る こ と はで きな か った し,仮 に覚 え た と し. て も今 後 役 に立 つ と は思 え な か っ た。 ただ し,環 境 学 習 の プ ロ グ ラ ムづ く りの 問 題 は,日 本 国 内の 環 境 学 習 施 設 で も 同様 で あ り,今 後 の 開 発 が 望 まれ て い る分 野 で あ る。. 謝. 本 調 査 を 通 し て,資. 辞. 料 が 十 分 に 整 備 さ れ て お ら ず,分. フ ァ ー ム の ス タ ッ フ と トセ パ ン ジ ャ パ ン に は,先. 析 ・入 手 に は 苦 労 し た 。 そ の 中 で,ウ. ィン ド. 方 との コ ミュニ ケ ー シ ョン と翻 訳 の 労 を と って い た. 一21(223)一.
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