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関東山地における登山道の土壌侵食と周辺環境との関連性

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(1)関東山地における登山道の土壌侵食と周辺環境との関連性. . 関東山地における登山道の土壌侵食と周辺環境との関連性 藤田 剛1・吉田 圭一郎2. Soil erosion and environmental factors on the mountain trails of Kanto Mountains, Japan Go Fujita1 and Keiichiro Yoshida2 1. Jikkyo Shuppan Co., Ltd., 2 Faculty of Education and Human Sciences, Yokohama National University. Abstract: Trail erosion was investigated at the three suburban mountains of the Kanto Mountains (Mt. Odake, Mt. Togatake, and Mt. Kintokisan), in order to examine the relationships between the degree of soil erosion and environmental factors on the mountain trails. The width, depth, and amounts of soil erosion were greater at the trails of Mt. Togatake and Mt. Kintokisan than those of Mt. Odake. In particular, the trail of Mt. Kintokisan was deeply eroded in comparison to the other mountains. The results from the multiple linear regression models with the lowest AIC demonstrated that trail grade and organic litter were significantly related with the trail erosion in the study areas. The pattern of trail erosion could be regionally varied among the mountains, not only by the differences in use-related factors (e.g., number of hikers), but also by the spatial variations in environmental factors around trails.   Key words: the Kanto Mountains, organic litter, mountain trail, multiple linear regression model, soil erosion. は じ め に  近年,登山道の過度な利用が進み,全国各地で登山道の荒廃が報告されている(中村 2000a) .登山道 の荒廃とは,土壌侵食,拡幅化,複線化,植生破壊のいずれか,もしくはそれらが複合的に組み合わさる ことで進行していく事象のことを指し(渡辺 2008) ,一般に,流水(雨水および融雪水),凍結融解,風 食などの自然的要因と,人のけとばしによる礫・砂の移動,人の踏みつけや人の踏み出しなどによる植生 破壊などの人為的要因との二つにより生じる(依田・小野 1990) .  公園管理や保全上の理由から,登山道の荒廃に関しては古くから研究が蓄積されており(例えば, Bratton et al. 1979 や Quinn et al. 1980 など) ,特に,我が国では登山道の土壌侵食に着目した研究が数多 く行われてきた(例えば,渡辺・深澤 1998 や 渡辺ほか 2004 など) .これは,日本の山岳域では地表面が 侵食を受けやすい物質で構成され,加えて多量の融雪水や雨水が供給されることで,登山道での土壌侵食 が著しいためである(渡辺 2002) .しかし,日本国内で行われたこうした研究のほとんどは,高山帯を対 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― 1 2. 藤田 剛 実教出版株式会社 吉田 圭一郎 横浜国立大学教育人間科学部.

(2) ௕. 藤田 剛・吉田 圭一郎. ൔ੗༂ക. 0. 0.5. 1. . N. km. 0 10. 50. km. 400. N. 800. ay.  . yo. B.  . To k. 10.   Sagami Bay. ‫ ق‬P‫ك‬. 35. . 140. . .  ‫ ق‬P‫ك‬. . 1200. ‫ ق‬P‫ك‬ 1000. 800. 800. 0. ෽લਉ 400. পಠ. 0. 0.5. 1. N. ః৛੊. 0.5. 1. N. km. ঳ಹ੊. km. 図 1.調査対象地の位置(a:大岳山,b:塔ヶ岳,c:金時山). 各調査地の等高線は 200 m 間隔.各山のカッコ内は標高.. 象としており,森林に覆われた亜高山帯より低所の山における研究例はほとんどない(阿部 2001).特に 利用者が多い大都市周辺の山における研究は少なく,登山道の保全を考える上で,こうした地域の登山道 荒廃の実態も明らかにする必要がある(中村 2000b).  登山道の荒廃の程度には,人為的な要因だけでなく,地形や土壌条件などといった登山道周辺の環境条 件も影響することが知られる(Marion and Leung 2001).例えば,朴・浅川(1993)は登山道の傾斜角が 登山道の侵食の要因になることを示しており,また奥村ほか(1986)は登山道内の土壌硬度と侵食量との 関係を示した.したがって,登山道における土壌侵食の状況を理解するためには登山道やその周辺環境に ついても把握する必要性がある.  そこで本研究では,まず登山道の利用者が多い首都圏周辺に位置する関東山地の3つの山(塔ヶ岳,金 時山,および大岳山)の登山道における土壌侵食の状況を明らかにする.また,登山道の侵食形態や土壌 侵食量と周辺環境との対応関係を明示し,それらの関連性を検討した.. 調査地概要  本研究では首都圏から日帰りで登山が可能な奥多摩地域の大岳山,丹沢山地の塔ヶ岳,および箱根山地 の金時山を調査地とした(図 1).  大岳山は関東山地の東縁に位置し(図 1a) ,中生代から古第三紀の堆積岩類(四万十帯)で構成される(貝 塚ほか 2000) .小河内地域気象観測所(アメダス)の平年値(1981 ∼ 2010 年)は,年平均気温が 11.9 ℃, 年降水量が 1,623 mm である.標高 600 m 以上の山地は, スギやヒノキの植林が広い面積を占めるが, ブナ,.

(3) 関東山地における登山道の土壌侵食と周辺環境との関連性. 11. イヌブナ,ミズナラなどの夏緑広葉樹林も分布する.大岳山および調査対象とした鋸山を経由した登山道 の正確な登山者数は把握できなかったが,聞き取りから奥多摩駅を基点とする年間登山者数(ハイキング を目的とした人々を含む)は約 70 万人であった(奥多摩観光協会 私信).  丹沢山地は神奈川県の北西部に位置し(図 1b),新第三紀中新世の広い海に堆積した火山岩類と,それ に貫入した石英閃緑岩類により構成される.最も近い小田原地方気象台(アメダス)の平年値(1981 ∼ 2010 年)は,年平均気温が 15.3 ℃,年降水量が 2,020 mm である.丹沢山地の植生は,標高 700 ∼ 800 m を境に,低標高地はヤブツバキクラス域,高標高地はブナクラス域に区分され(彦坂ほか 2000) ,主に標 高 1,000 m 以上に自然植生が残されている.藤沢ほか(2007)によれば,丹沢山地全域における 2005 年 の年間登山者数はおよそ 25 ∼ 31 万人であり,調査を行った丹沢山地南部の大倉尾根の登山道では年間お よそ 40,000 人であった.  金時山は箱根山地を構成する火山の一つで(図 1c) ,地質は火山の噴出物の玄武岩と安山岩からなる. 近隣の御殿場地域気象観測所(アメダス) の平年値(1981 ∼ 2010 年)では,年平均気温 12.8 ℃,年降 水量が 2,819 mm である.植生は,丹沢山地と同様に,標高 700 ∼ 800 m を境に,低標高地はヤブツバキ クラス域,高標高地はブナクラス域に区分される(彦坂ほか 2000) .自然植生は山頂付近に限られ,大部 分は植林や二次林によって占められている(宮脇 1980) .2010 年度の調査によると,金時山の登山者数は 推計で 12 万 4 千人であり,調査対象とした公時神社を経由する登山道は約 61,000 人が利用した(環境省 関東地方環境事務所 2011) .. 現地調査  現地調査は図 1 に示した調査対象の登山道に一定の標高間隔で設けた調査地点で行った.登山道の標高 差は調査対象とした山毎に異なるため,塔ヶ岳においては標高 50 m 毎,金時山および大岳山においては 標高 25 m 毎に調査地点を設定した.近くに人工構造物が存在した地点を除いた合計 50 地点(大岳山 21 地点;塔ヶ岳 15 地点;金時山 14 地点)の調査データを解析に用いた.現地調査は,林内および登山道内 に堆積するリターの量が一年で最も少なくなると考えられる夏季から落葉直前にかけての期間(6 月∼ 10 月)で,比較的安定した天候が続いた後に実施した. 登山道の侵食状況と周辺環境  登山道で観察される土壌侵食の状況を明らかにするために,各調査地点において登山道の侵食幅,侵食. ௕ 深,および侵食量を計測した.植被がみられない範囲を登山道として定義し,山田(1993)を参考に調査 を行った.すなわち,各調査地点で登山道の両側に杭を打ち,侵食される前の元地形を直線と仮定して糸 を渡し,10 ㎝毎にそこからの鉛直高さを計測した(図 2) .そして,二つの杭の間の長さを侵食幅,鉛直 ෶ ୫ ் ‫ ق‬ః ৛ ੊ ‫ك‬. ෶ ୫ ஥. 図 2.登山道における侵食幅,侵食深,および侵食量の計測方法. 網掛けの部分を登山道の侵食量とした..

(4) 藤田 剛・吉田 圭一郎. 12. 高さが最大になる深さをその地点の侵食深,そして 10 ㎝毎に計測した鉛直高さから断面積を算出した.  登山道における土壌侵食との関連性を検討する周辺環境として,斜面および登山道に沿った傾斜角,堆 積するリターの厚さ,土壌硬度について調査した.傾斜角は,クリノメーターを用いて登山道が通る斜面 全体の傾斜角および登山道に沿った傾斜角を 1°単位でそれぞれ計測した.リターの厚さは,侵食された 登山道の最深点周辺および登山道の外側において,それぞれランダムに 5 地点を計測し,その平均値をリ ターの厚さとした.リターが堆積していない場所は 0.0 ㎝として記載した.登山道周辺の土壌硬度は,登 山道の外側において,山中式土壌硬度計を用いて測定した.ランダムに 5 地点を計測し,得られた数値を 平均したものをそれぞれの土壌硬度とした.山中式土壌硬度計より得られた数値は,次の換算式を用いて 単位面積あたりの力に変換した. 2.  Y = 100 × X /{ 0.7952 × (40 − X ) }   X : 山中式土壌硬度計により得られた数値(mm)   Y : 単位面積あたりの力(kg/ ㎠) データ解析  登山道における土壌侵食の状況について,ノンパラメトリック法の Steel-Dwass 法を用いて多重比較を 行った.登山道における土壌の侵食形態や侵食量と周辺環境との関連性を明らかにするために,対数変換 した侵食幅,侵食深,および侵食量を応答変数として,また,斜面の傾斜角,登山道の傾斜角,登山道内 と登山道外におけるリターの厚さ,登山道周辺の土壌硬度を説明変数として,重回帰モデルにより分析し た.そして,AIC(Akaike’ s Information Criterion)を用いて最も説明力の高いモデルを選択し,登山道の 土壌侵食に関連する変数の抽出を試みた.これらの解析には全て R(ver. 2.13)を用いた.. 結 果 登山道における土壌侵食の状況 ௕‫گ‬  登山道の土壌侵食は調査を行った全ての調査地点においてみられ,土壌侵食量が最も大きい場所は塔ヶ. F

(5) 40. E

(6). 30 20 0. 0. 0. 100. 10. 50. 200. 300. 100. 400. ‫ ؙ‬෶ ୫ ் ‫ك ⋶ ق‬. ‫ ؙ‬෶ ୫ ஥ ‫ك ⋶ ق‬. ‫ ؙ ؙ‬෶ ୫ ୤ ‫ك ⋶૸ ق‬. 150. D

(7). 500. 600. 岳の 1350 m 地点で,侵食幅が 565 ㎝,侵食深が 149 ㎝,そして侵食量が 45,160 ㎠に達していた.. প༝৛. ྶন༝. সৎ৛. প༝৛. ྶন༝. সৎ৛. প༝৛. ྶন༝. সৎ৛. 図 3.各調査地の登山道における侵食幅,侵食深,および侵食量の箱ひげ図 ボックス中央の横線はデータの中央値,ボックスはデータの四分位範囲(25 - 75%)を示す.ボックスの 上下のひげは,四分位範囲の 1.5 倍以内にあるデータの最大(小)値を示しており,そこから外れたデータ をはずれ値として個別にプロットした..

(8) 関東山地における登山道の土壌侵食と周辺環境との関連性. 13. 表 1.登山道の周辺環境の中央値,四分位範囲,最小値,および最大値. 表1 登山道の周辺環境の中央値,四分位範囲,最小値,および最大値 統計量 中央値 四分位範囲 最大値 最小値. 傾斜角(°). リター層の厚さ(cm). 登山道周辺の土壌硬度. 斜面. 登山道. 登山道内. 登山道外. (kg/cm2). 18 (13, 26). 15 (10,18). 0.5 (0.0, 1.4). 2.9 (1.8, 3.7). 7.5 (5.5, 10.4). 43 1. 28 1. 3.5 0.0. 8.0 0.1. 15.5 0.4. 表 2.重回帰分析の結果および AIC を基準として選択された変数とそのパラメータ推定値. 表2 重回帰分析の結果およびAICを基準として選択された変数 変数. 侵食幅. 侵食深. 侵食量. 推定値. p. 推定値. p. 推定値. p. 斜面の傾斜角 登山道の傾斜角. - 0.025. 0.024 -. 0.016. 0.018. - 0.045. 0.056. 登山道内のリター層 登山道外のリター層. -0.196 -0.069. p < 0.01 0.057. -0.225 -. 0.053. 登山道周辺の土壌硬度 AIC. -. - 52.05. -0.495 -. p < 0.01. - 104.19. 142.32.  図 3 には,3 つの山毎における登山道の侵食幅,侵食深,および侵食量についての箱ひげ図を示した. 大岳山,塔ヶ岳,および金時山における侵食幅の中央値(四分位範囲)はそれぞれ 209 ㎝(162 ∼ 241 ㎝), 300 ㎝(235 ∼ 436 ㎝),278 ㎝(232 ∼ 313 ㎠)であった.値のばらつきは大きいものの,登山道の侵食 幅は大岳山で最も狭く,塔ヶ岳や金時山に比べ,有意に異なっていた(Steel-Dwass 検定,大岳山:塔ヶ 岳および大岳山:金時山,p<0.05) .また,侵食深の中央値は,大岳山が 31 ㎝(20 ∼ 42 ㎝) ,塔ヶ岳が 59 ㎝(34 ∼ 70 ㎝),金時山が 101 ㎝(66 ∼ 112 ㎝)であり,大岳山,塔ヶ岳,金時山の順に侵食深が大 きくなった(Steel-Dwass 検定,大岳山:塔ヶ岳,p<0.05;大岳山:金時山,p<0.001;塔ヶ岳:金時山, p<0.05) .  登山道における侵食量のそれぞれの山についての中央値(四分位範囲)は,大岳山が 3,464 ㎠(2,082 ∼ 6,155 ㎠) ,塔ヶ岳が 11,483 ㎠(5,539 ∼ 32,490 ㎠) ,金時山が 19,523 ㎠(12,924 ∼ 22,423 ㎠)であった. 侵食幅と同様に,大岳山の土壌侵食量は他の二つの山に比べ有意に小さかった(Steel-Dwass 検定,大岳山: 塔ヶ岳,p<0.05,大岳山:金時山,p<0.001) . 登山道の土壌侵食と周辺環境との関連性  表 1 には解析に用いた登山道の周辺環境の統計量についてまとめた.また,表 2 には重回帰分析および AIC によるモデル選択によって抽出された登山道の土壌侵食と関連する周辺環境のパラメータの推定値を 示した.  侵食幅に関連する周辺環境として,登山道に沿った傾斜角と登山道内および外におけるリター層の厚さ が選択された.パラメータ推定値の符号から,侵食幅は登山道の傾斜角が急になるほど,登山道内外にお けるリター層が薄いほど増加していた.侵食深に関しては,斜面の傾斜角と登山道内におけるリター層の 厚さが関連する周辺環境として選択された.同様に推定値のパラメータの符号から,侵食深は斜面の傾斜 角が急になるほど,登山道内におけるリターが薄いほど増加した.侵食量では,登山道の傾斜角と登山道 内のリター層の厚さによる重回帰モデルが選択された.推定されたパラメータの符号から,侵食量は登山.

(9) 14. 藤田 剛・吉田 圭一郎. 道の傾斜角が急であるほど,また登山道内におけるリター層が薄いほど増加した.登山道周辺の土壌硬度 は,全てのモデルにおいて選択されることはなかった.. 考 察  本研究の結果から,登山道における土壌侵食の状況が山毎に異なることが分かった.大岳山では塔ヶ岳 および金時山と比べて侵食幅,侵食深,および侵食量が総じて小さく,一方で,塔ヶ岳や金時山では侵食 幅や土壌侵食量が大きく,登山道がより荒廃していることが明らかとなった.また,金時山では他の二つ の調査地に比べて有意に登山道の侵食深が大きかった.  本研究と同様に,既存研究からも登山道における土壌侵食の状況が地域的に異なることがうかがえる. 例えば,大雪山の黒岳などでは登山道において侵食深が大きくなる状況が報告されているのに対し(渡 辺・深澤 1998) ,白山や鳥取県大山における調査結果では(石川県白山自然保護センター 2005,奥村ほか 1986) ,侵食幅の拡大が目立つ傾向が読み取れる.  登山道における土壌侵食の状況の地理的な差異には,山毎に異なる地域的な特徴が影響していると考え られる(依田・小野 1991).これには,登山者数や柵や階段などの人工構造物などといった人為的な要因 や地質,地形などの自然的な要因の違いが影響する可能性が考えられる.しかしながら,本研究では特に 人為的な要因についての調査が十分でなく,登山道における土壌侵食の山域間の差異の原因について明ら かにすることはできなかった.  重回帰分析の結果から,登山道に沿った傾斜角は,侵食幅,侵食深,および土壌侵食量の全てで関連性 が認められた.登山道の傾斜角と土壌侵食との対応関係は多くの研究において言及されている.例えば, Quinn et al.(1980)は,登山道の傾斜角が増すにつれ,踏みつけによる土壌の著しい損失が生じることを 述べ,朴・浅川(1993)は,登山道の傾斜角が登山道の侵食の要因になることを示した.また,彦坂ほか (2000)は,登山道の傾斜角が侵食幅,侵食深,および侵食量の増加と有意に関係することを明らかにし ており,Olive and Marion(2009)は登山道の傾斜の増大にともない土壌侵食量が増加することを示した. 本研究の結果においても,傾斜角が急になるほど侵食幅,侵食深,および侵食量が増加しており,傾斜角 が登山道における土壌侵食に影響を与えてきたことが推察される.  登山道内におけるリター層の厚さも登山道内の傾斜角と同様に土壌侵食との関連性が認められた.一般 に,土壌表面に堆積したリターは雨滴の衝撃から保護し,また地表流の流速を弱めるなど,土壌侵食の進 行を抑制することが知られ,リター層の厚さと土壌侵食量との関係に関する多くの研究が存在する(例え ば,井川原 2002 や若原ほか 2008 など) .しかし, 荒廃した登山道においては既に土壌侵食が卓越しており, こうしたリター層の役割を単純に当てはめることはできない.さらに,登山道内のリター層の厚さが登山 道における土壌侵食の直接的な原因である登山者の踏圧や地表流などによって同様に影響を受けた可能性 も考えられる.ただし一方で,登山道内のリター層と登山道や歩道の荒廃との関連性について言及してい る既存研究もいくつかあり(例えば,Chatterjea 2007 など) ,調査を行った登山道の大部分は毎年大量の リターが供給される落葉広葉樹林帯に位置することを合わせ考えれば,今後十分に検討する余地があると 考える.  本研究では,登山道における土壌侵食の状況が地域的に異なることを示し,また登山道の土壌侵食に関 わる周辺環境について検討した.しかしながら,これまでの研究において関連性が指摘されている表層土 壌の性質や周辺植生についての検討が不足しており,人為的な要因を考慮した登山道における土壌侵食の 状況が地域毎に異なる原因の究明も含め,今後の課題である..

(10) 関東山地における登山道の土壌侵食と周辺環境との関連性. 15. ま と め 1.首都圏からの日帰り登山が可能な大岳山,塔ヶ岳,および金時山において,登山道における土壌侵食 の状況を明らかにし,それらと登山道の周辺環境との関連性について検討した. 2.塔ヶ岳や金時山では大岳山に比べ侵食幅,侵食深,および侵食量が大きく,特に金時山では侵食深が 大きくなっていた. 3.重回帰分析の結果から,傾斜角と登山道内のリター層の厚さが土壌侵食に関連する要因として抽出さ れた. 4.登山道における土壌侵食の状況は山毎に異なる可能性が高く,登山者数の違いなどといった人為的な 要因だけでなく,周辺環境によっても影響を受ける可能性が示唆された.. 謝 辞  本研究は,藤田剛が横浜国立大学教育人間科学部に提出した平成 20 年度卒業論文に加筆修正したもの で,日本地理学会 2009 年度秋期学術大会において発表した.本研究を行うにあたり,横浜国立大学教育 人間科学部の池口明子准教授には終始ご指導およびご協力をいただいた.また,尊仏山荘管理人である花 立昭雄氏,金時茶屋の管理人である小見山妙子氏には有益な情報提供をいただいた.さらに本稿の執筆, 構想の段階において,植之原茜氏,小笠原洋介氏,柴戸健太郎氏,堂崎真紀子氏,野村幸加氏,に貴重な ご意見をいただいた.この場において感謝の意を表したい.. 引 用 文 献 阿倍美和.2001.日光男体山における凍結融解作用と登山道侵食への影響.筑波大学大学院環境科学研究 科修士論文 Bratton, S. P., Hickler, M. G., and Graves, J. H. 1979. Trail erosion patterns in Great Smoky Mountains National Park. Environmental Management 3: 431-445 Chatterjea, K. 2007. Assessment and demarcation of trail degradation in a nature reserve, using GIS: case of Bukit Timah Nature Reserve, Land Degradation & Development 18:500-518 藤沢直樹・杉浦高志・有川百合子.2007.丹沢山塊の登山道実態.丹沢大山総合調査団編『丹沢大山総合 調査学術報告書』582-591.平岡環境科学研究所 彦坂洋信・小林達明・浅野義人・高橋輝昌.2000.丹沢山地における周辺植生に着目した登山道の荒廃要 因の分析.日本緑化工学会誌 25 (3): 221-229 井川原弘一.2002.森林の持つ土壌侵食防止機能.岐阜県の林業 585: 8-9 石川県白山自然保護センター.2005.『白山の自然誌 25 白山登山道の侵食』石川県白山自然保護センター . 貝塚爽平ほか.2000.『日本の地形 / 関東・伊豆小笠原』東京大学出版会 環境省関東地方環境事務所.2011.< 結果報告 > 平成 22 年度の金時山登山者数について. http://kanto.env.go.jp /pre_2011/0512a.html(最終閲覧日:2011 年 9 月 30 日) Marion, J. L. and Leung, Y-F. 2001. Trail resource impacts and an examination of alternative assessment techniques. Journal of Park and Recreation Administration 19: 17-37 松本至巨・尾方隆幸・内川 啓.2006.登山者数からみた北アルプス,後立山連峰の山域区分.地学雑誌 115: 221-235.

(11) 16. 藤田 剛・吉田 圭一郎. 宮脇昭.1980.『日本植生誌(関東地方) 』至文堂 中村洋介.2000a.自然公園における登山道荒廃の過程 - これまでの研究と課題 - 駒澤大学大学院地理学研 究 28: 53-61 中村洋介.2000b.丹沢における登山道荒廃の過程とその要因.地域学研究 13: 25-48 奥村武信・小松原悦夫・田中一夫.1986.大山夏山登山道の浸食状況に関する一考察.鳥取大学農学部演 習林研究報告 16: 97-104 Olive, N. D. and Marion, J. L. 2009. The influence of use-related, environmental, and managerial factors on soil loss from recreational trails. Journal of Environmental Management 90: 1483-1493 朴相獻・浅川昭一郎.1993.大雪山国立公園における登山道に関する研究.環境情報科学 22 (4): 52-61 Quinn,N.W.,Morgan,R.P.C.,and Smith,A.J.1980.Simulation of soil erosion induce by human trampling.Journal of Environmental Management 10: 155-165 山田周二.1993.白山における登山道のひろがりとその速さ.筑波大学水理実験センター報告 17: 65-72. 依田明美・小野有五.1990.登山道の侵食について.地理 11: 298 依田明美・小野有五.1991.登山道の侵食について.( 第二報 ) .地形 12: 76-77 若原妙子・石川芳治・白木克繁・戸田浩人・宮 貴大・片岡史子・鈴木雅一・内山佳美.2008.ブナ林の 林床植生衰退地におけるリター堆積量と土壌侵食量の季節変化‐丹沢山地堂平地区のシカによる影響‐. 日本林学会誌 90(6): 378-385 渡辺悌二.2002.荒廃が進む登山道.これからのあり方,作り方.モーリー 7: 68-71. 渡辺悌二.2008.登山道荒廃の現状とその原因.渡辺悌二編著『登山道の保全と管理』26-39.古今書院 渡辺悌二・深澤京子.1998.大雪山国立公園,黒岳七合目から山頂区間における過去7年間の登山道の荒 廃とその軽減のための対策.地理学評論 71A-10: 753-764 渡辺悌二・太田健一・後藤忠志.2004.大雪山国立公園,裾合平周辺における登山道侵食の長期モニタリ ング.季刊地理学 56: 254-264.

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