行政指導と行政上の計画
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(2) 2. 罪 2. 現行実定法上の計画の種類 計画決定手続. 二. 1計画作成 2. 現行法の計画決定手続 計画の法的効果. 三. 1国民に対する効果. 第一節. 2. 関係行政機関に対する拘束力. 3. 他の計画に対する拘束力. 4. 財源措置等を講ずる義務づけ. 5. その他. 行政指導. 行政指導の意義・概念・種類 1. 行政活動の多様化 消極的な秩序維持を国家活動の中心としていた時代に,国家がその活動形式として主に. 依存していたものは,行政行為,および,行政行為の内容の最終的実現の手段としての, 強制執行ならびに,即時強制としての事実行為であった。したがって,行政法学の焦点も 行政行為の要件,効力,畷症ならびにこれによる救済にあてられていたわけである.しか し,行政活動の内容が消極的な秩序維持行政より積極的な福祉行政-と転換し,また,高 度に技術化・専門化したこと,さらに,社会的・経済的・政治的に流動化し易いことなど 種々の理由から,従来とられてきた行政行為の手段のみでは現代行政に対処し得なくなっ てきたことは周知のとおりである。また,たとえば,国民がすでに行政庁の意思に従う意. 思を表明しているような場合のごとく,いちいち権力的な行為形式をとるまでもなく行政 目的を達し得る時もあり,かかる場合にはできるだけ権力的手段ほ差し控えるにこしたこ とはない。さらに,行政法規が行政行為の手段をまったく欠いており,しかも,何らかの 規制が必要である場合もあろうし,また,行政行為の場合は正式な処分であるため慎重を 期し機敏さに欠けるため,時間的つなぎを充足するための一時的な手段としての規制も必 要であろう(証1)。これらの理由から,行政指導は行政活動の形式の一つとしてひろく利用 されるに至った(証2)o 2. 行政指導の概念 前述のごとく,現代行政において行政指導の果たす役割が重大であるにもかかわらず,. その概念ほ行政法学上必ずしも明確ではない。一般に,実定法上,これに該当するものと 考えられているものは,勧告,指導,勧奨,指示,助言,斡旋,警告などであるが(琵3), 行政指導なる用語自体は実定法上のものでないために,この用語を使用する者の概念設定 日的によって異なってくるからである。しかし,諸説(註4)の必要要素を汲みあげて定義づ ければ,行政指導とは,「行政主体が,所掌事務に閲し,強制力によることなく,行赦客 体の任意的意思にもとづく協力によって,行政目的達成のために行なう,事実行為として の誘導行為」といえようo行政指導と他の行政活動形式との間には次のごとき差をみるこ.
(3) 3. 行政指導と行政上の計画 とができようo. (a)事実行為であること。 行政指導は法的性質をもたない単純な事実行為であって,意思表示やその他の精神作用 の発現作用としての法律行為的・準法律行為的行政行為や公法上の契約ならびに私法上の 合同行為などと異なるといわれる。行政指導は行政目的を達するため行政客体が自発的に 行政主体の要望に従ってくれることを願って指導するわけだから,道路や河川の工事のよ うな単なる物理的な事実行為ではなく,また強制執行の手段としての事実行為のごとく行 政処分が前提となっている強制手段でもなく,また即時強制における事実行為のように強 制力をもつものではない。むしろ願望という精神作用の一形態として表現され,かつその 中には実定法上一定の効果が附与されている場合もあるから,かかる場合は準法律行為的 行政行為に似ている点がないとはいえないかもしれぬ。しかし願望の内容自体の法律効果 は発生するものではないので法的行為に属せしめることは困難であろら.にもかかわらず. 現実的効果をみると単純な事実行為とのみ断定を下しえないものがあることも否定しえな い。. (b)行政指導は特定の相手方に対して行なわれるものである点で行政上の計画とか行政 機関内部における指導とは異なるo行政上の計画は行政機関が行政目的達成のために行な う目標設定行為で,それを行なう理由には秩序だった行政を行なうためであるが,計画が 樹立され公表されれば国民に対して一種の行政指導的役割を果たすことは否定できない。 しかし,その計画内容が特定利害関係人に対して影響ある場合であっても,計画自体ほ特 定の相手方に対して行なわれるものではない点で行政指導と異なる。次に行政機関内部に おける指揮監督作用として,形式的には訓令・通達により,ここで言う行政指導と同じ作 用が行なわれることがあるが,行政指導は対国民のものである点で異なる。ただ,自治省 が地方公共団体に対して行なう助言・勧告などの指導や,文部大臣の国立大学学長に対す る勧告(大学の運営に関する臨時措置法),あるいは主務官庁の行なっている公社・公団等 の特殊法人に対する指導などは行政機関内部における作用といいえない部分を有してい る。たとえば国立大学は憲法二三粂で保障されている学問の自由の中心的担い手であり, その意味では市民的自由の担い手であるoしたがって単に国立だということから文部省と の関係を行政棟構の内部的なものと考えられない。このような意味からは,文部省の行なう 指導は私立大学に対するのと同じくここでいう行政指導の中に含めて解する余地があるo 3. 行政指導の種類. 分類は種々の観点からなしうるが,機能的に眺めれば次の二つに分けることができよう。 (1)助成・助言的指導. 国民あるいほ企業に対する助成・促進を目的として行なわれる. 指導で,実地指導も含まれる。営農指導,生活改善指導,経営指導,職業指導,保健指導など。 公益に障害を与えるおそれのある行為の予防・抑制・統制など (2)規制。監督的指導 のために行なわれるものo. これには権力発動の予備的段階として行なわれる場合と然らぎ. る場合がある。青少年の補導,違反建築の防止,抑制,企業の集団化・系列化の行政指導 など。.
(4) 4. 荒. 秀 珪. 1)元来指導なる概念は上級行政棟関の指揮監督の一つとして,いわゆる特別権力関係に服する割こ 対して行なわれる一作用としてとらえられてきた.この意味で,行政指導の一般化ほいわゆる特 別権力関係の一般権力関係-の浸透化を意味する。また,特殊なものとして,人事院の勧告(国 家公務員法3),行政管理庁の行なっている各行政機関の業務状況に関する勧告(行政管理庁設置 置法2⑯),会計検査院の,法令・制度又は行政等に関する改善の意見表示叉ほ要求(会計検査院 法36, 37),地方公共団体における監査委員の勧告(地方自治法242 ⅠⅠⅠ)などがある。 日本ではある問題や事件が生ずると,全てが行政の責任として社会やマスコミが追及するので, 行政府としては何らかのを措置とらぎるを得なくなる。ここにも行政指導の必要性が生ずる。 2)新聞に表われた若干の具.体例をあ搾れば次の如きである.米穀・都市交通料金値上による便乗値 10 1 上抑制の経済閣僚協議会の行政指導(42 3),自治体に対する自治省の指導通達(43 5), 2 無秩序な市街化締出しのための電気・水道供給拒否に関する建設省の行政指導(43 18),工 4 業立地法案提出見送りのため通産省行政指導を強める(43 3),ビールの便乗値上抑制の行政 指導(43・4・6),日本通運の経営刷新のための運輸省の行政指導(43・4・22),清酒の便乗値上 5 抑制(43 10),自動車整備についての不当な修理,部品代を請求する悪徳業者を締出すため 5 の通達による行政指導(43 29),宅地開発の業者に対する道路・水路用の公共用地の無償提 供,学校などの公共用地の低価格提供の行政指導(横浜市) (43 9・ 1),自動車産業界えの行政 指導(43・9・28),都立大学えの自衛官受験拒否に対する東京法務局の勧告(44・4・ 18),接着 剤(カゼイン)原料の加工牛乳えの使用禁止(通達による)の行政指導(44・6・12),失業保険 6 金でまかなわれた講習が終って資格をとれば再び雇っている擬装解雇の改善勧告(44 17)等。 ・. ・. ・. ・. ・. ・. ・. ・. ・. ・. I. ・. ・. ・. ・. いずれも朝日新聞による. 3)これらの外に,要望,要請,注意なども挙げられている. 4) ① 「行政主体が一定の公の行政主体が一定の公の行政目的を達成するため,行政客体の一定の行 為(作為・不作為)を期待して,それ自体法的拘束力なく行政客体に直接働きかける行政の行為 形式」塩野宏「行政指導」行政法講座6巻18貢, ㊨ 「行政機関が,相手方の同調を求め,誘導 169-170 することによって,その意図するものを実現しようとする作用」成田他「現代行政法」 頁, ㊨ 「行政機関が,その権限に属する公行政に関する事項について,特定の個人または法人そ の他の団体を相手方として,その意図する行政秩序を実現するための協力的行為(作為・不作 為)を求める願望の表示としての非強制的な事実行為である。」新井隆一「行政指導」成田・ 南・園部編行政法講義下, ④ 「行政機関がある行政分野に属することがらについて,法令の執 行,適用として,特定の個人,法人,団体等に強権的に命令・強制したり,またほ,任意的では あるが,法令の根拠に基づいてそういう者に対し指嵐 勧告,助言などをするのではなく,法令 の根拠に基づかないで,行政機関として,このようにしたい,ありたいと希望し,願望すると ころを,相手方の自発的な協力,同意の下に実行するように働きかけること」林修三「いわゆる ① 「行政指導とは,行政機関が,その所掌事務に 行政指導について」行政と経営8号17頁, 属することがらについて,特定の個人,公私の法人,団体等に非権力的・任意的手段をもって働 きかけ,相手方の同意または協力の下に,行政機関がかくありたいと望む一定の秩序の形成をめ ぎして,これらの老を誘導する一連の作用をさすものとすべきであろう」成田頼明「行政指導」 『現代の行政』現代法4巻132頁。 右の林説ほ,法令にもとづかないもののみを行政指導として把えている。その理由ほ,実定法 上勧告等の行政手段が規定されておる時にそれを行使することは,通常のノーマルな行政であっ て特に論ずべきものでなく,実定法上何らの根拠もない時に行なわれる行政指導こそ問題とされ るとするものの如きである(ジュリスト座談会27頁雄川氏発言)。しかし,実定法上の根拠とし ての行政指導に関する規定をみると,その主体・客体・内容・手続・形式のいづれの点からも完 備しているものは皆無といってよく,極めて漠然としたものであり,その意味でほ法令の根拠に もとづかない行政指導と実質的には大した差異はないと言える。したがって法令に根拠あるもの は法令上の規定の限度でのみ特殊な取扱いをうければよく,それ以外の点では法令に根拠をもた ざるものと同じ扱いをしてよいと解される。さらに法令の根拠の有無に関係なく機能的にほ殆ど 同じ作用をはたすといえるのであって両者を区別する必要ほないといってよいであろう。.
(5) 行政指導と行政上の計画 ニ. 5. 実定法における行政指導. 1. 具. 体. 例. 実定法においてほ前述のように勧告,指導,勧奨,指示,助言,斡旋,警告,援助など の語が使用されているが,経済法,土地法,社会保障法をほじめ多くの分野にわたって定 められている。. (a)勧告. 独禁法48,下請代金支払遅延防止法7,中小企業近代化促進法7,割賦販売. 法10,輸出入取引法32の2,百貨店法9,小売商業調整特別措置法17,. 18,織維工業. 設備等臨時措置法40,建設業法34,宅地建物取引業法21,農産物価格安定法8,. 8の2,. 森林法9,鉱業法88,. 61, 68の9,港湾法51,環 89,石炭鉱業合理化臨時措置法60, 境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律61,職業訓練法21, 33,文化財保護法36, 37, 47, 77,中部圏開発整備法18, 19,近畿圏整備法17, 18,首都圏整備法29, 30,育 都圏の近郊整備地帯及び都市開発区域の整備に関する法律29,国土総合開発法11の2,. 13の3,住宅地区政良法34,都市公園法21,自然公園法47,防災建築街区造成法51, 新住宅市街地開発法42,公共施設の整備に関連する市街地の改造に関する法律62,都市 計画法80,下水道法37の2,水道法41,道路整備特別措置法27,水防法35の2な ど。. (ち)指導(いわゆる実地指導を含む)企業合理化促進法11,中小企業基本法24,中小 企業近代化促進法10,宅地建物取引業法21,自作農維持資金融通法6,農業協同叡合法 73の10,入会林野等に係る権利関係の近代化の助長に関する法律17,砂利採取法41, 熱管理法15,住宅建設計画法9,国民健康保険法4,緊急失業対策法16の3,文化財保 護法47,精神衛生法43 法10. (保健指導),. ll. 指導)・児童福祉法19. (訪問指導),身体障害者福祉法8 (新生児の訪問指導),. 17. (療育指導),生活保護法27,. (更生相談,指導),母子保健. (姓産婦の訪問指導), 43,. 19. (未熟児の訪問 62,身体障害者雇用促進法3,4。. (c)勤奨. 企業合理化促進法11,熱管理法11.. (d)指示. 繊維工業設備等臨時措置法17,機械工業振興臨時措置法6,宅地建物取引業. 法20の2,農業協同組合法94の2,公営住宅法26,医療法35ⅠⅠ,生活保護法27。 (e)助言. 宅地建物取引業法21,入会林野等に係る権利関係の近代の助言に関する法. 律17,砂利採取法41,身体障害者雇用促進法5,職業訓練法33,首都圏の近郊整備地帯 及び都市開発区域の整備に関する法律29,住宅地区政良法34,都市公園法21,自然公園 法47,新住宅市街地開発法42,公共施設の整備に関連する市街地の改造に関する法律 62,土地区画整理法123,都市計画法80,道路整備特別措置法27,水防法35の2o (∫)斡旋 農産物価格安定法8,防災建築街区造成法51。 (g)警告. 水道法36。. (A)援助. 首都圏の近郊整備地帯及び都市開発区域の整備に関する法律29,住宅地区. 政良法34,都市公園法21,新住宅市街地開発法42,公共施設の整備に関連する市街地の 改造に関する法律62,土地区画整理法123,都市計画法80,道路整備特別措置法27. 2実定法上の行政指導の分析.
(6) 6. 荒. (a)行政処分との関係. 秀. 行政処分と何ら関係なく行なわれるものもあるが,何らかの意. 味で関係をもっているものもある。中でも権力的作用を背後に控えながら,明文によって 権力手段が前面に出てくることを予定している場合とそうでない場合とに分けられる。例 えば騒音規制法ほ,必要な限度で騒音防止方法の改善又は特定建設作業の作業時問の変更 を勧告することを定め,この勧告をうけた老がそれに従わない時には改善又は時間の変更 を命ずることを規定している(15. Ⅰ)し,また,水道法によると,厚生大臣等が職務怠慢な. 水道管理者の変更に関する勧告をなし,水道事業者もしくほ水道用水供給事業者等が従わ ない時は,給水を継続させることが当該水道の利用者の利益を阻害するとき給水の停止の 命令をすることができることとなっている(36ⅠⅠ,. 37)。これらの規定ほ,できるならば権. 力的手段によらずに行政指導の段階で行政目的を達しようとする趣旨であるから,行政処 分がこの勧告の結果をまって行なわれることが望ましいとしても,この勧告を欠いて行政 処分が行なわれたとしても当該処分は手続上の暇庇を問われないと解すべきであろう1)。. また,立法例では右のように勧告に前哨的地政を与えるようなものでなく,勧告と処分と を併記しているものもある。文化財保護法36,. 37,. 77は重要文化財や国宝等ならびに(特. 別)史跡名勝天然記念物の管理・修理・復旧につき必要な措置を命C,叉ほ勧告すること ができる旨規定している。 (b)法的拘束性 (1)一般に行政指導は行政客体に対し,その指導内容の実現については法的拘束力をも たないといえる。ただ,実定法上全然法的拘束力なしといい切れないような表現がなされ. ているものもある。しかし,かかる場合においても,その違反行為に対しては何ら罰則規 定ほおかれていない望)。例えば輸出入取引法32の2ⅠⅠは不適格役員の解任の勧告がなさ れた時は, 「当該輸出組合,輸入組合又は輸出入組合ほ正当な理由がない限り当該勧告に係. る役員を総会の議決で解任しなければならないと」強い義務づけを規定しているし,これ よりやや弱い表現でほあるが生活保護法62でほ保護の実施機関が被保護者に特定の必要 な指導・指示をしたときにほ,これに従わねばならない旨の規定がおかれているo. しかし. 前者の場合にほ違反行為に対する罰則規定はおかれていない.後者の場合にも罰則規定ほ おかれていないが同条3項で指導・指示に従わない時には,保護の変更・停止叉ほ廃止を することができることとなっている.この場合も指導・指示に従わないことから直ちに 保護の変更・停止・廃止が行なわれるということではない。なお,独禁法48による勧告 をうけた老ほ応諾の有無の通知義務が課せられており(同条ⅠⅠ),さらに応諾したときは委 員会は審判手続を経ないで当該勧告と同趣旨の審決をすることができることとなっている (同法ⅠⅠⅠ項,公取の審査および審判に関する規則20・. 21)0. 1)さらに酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律でほ,大蔵大臣の共同行為の勧告の規定があ り,勧昔が命令発動の前提条件となっており,また勧告に従った行為についてほ独禁法の適用 を除外することとなっている(84, 93)0 Ⅰ項で保護機関が被保護者に対して生活の維持,向上その他保護の目的達成 2)生活保護法は27 に必要な指導,指示をなしうることを定め,同条3項はその指導・指示ほ被保護者の意に反し 強制しうるものと解釈してはならない旨を定め,強制力をもたぬことを注意している。.
(7) 7. 行政指導と行政上の計画. (2)報告義務. 指導内容の実現についての拘束力以外のものとしてほいくつかの義務規. 定がおかれている。勧告にもとづきとられた措置につき報告を求められることがあり(中 定部圏開発整整備法19,近畿圏整備法18,首都圏整備法29ⅠⅠ,. 30),また,独禁法48ほ. 勧告に対する応諾の通知義務を課しているo (3)資金助成その他必要な措置をすることが定められている場合. 一般には行政指導を うける者に対する助成であるが,時には行政指導を行なうこと自体に資金助成が定められ ている場合もある.. 農産物価格安定法8. ⅠⅠ(農林大臣ほ勧告をうけた生産者団体が販売調整を行なうに必要. 37ⅠⅠⅠ(勧 な時は,必要な資金の斡旋その他必要な措置を行なう)守,文化財保護法36ⅠⅠ, 告に基づいて行なう措置につき要する費用の全部又は一部を国庫負担とすることができ. る)などが前者であり,後者の例としては公営住宅法27 用の国からの交付),あるいは生活保護法43. (知事の行なう指示等に要する費. ⅠⅠ(社会福祉法人等の行なう指導についての市. 町村長の補助)などがあげられる。 (c)要. 件. (1)行政指導の内容について基準が法定されている場合. 殆どの規定は行政指導を行な. う事項を定め,かつこれが発動される時と限度につき行政庁が必要と認める場合に発動し うる旨を定めている.もっとも,このことは法律の留保をどう解するかによって問題性が 異なってこよう。いくつかの例を示せば「知事は保護施設の運営について必要な指導をし なければならない」(生活保護法43Ⅰ)とか,下請代金支払遅延防止法7は,下請業者の給 付の受領,下請代金及びその遅延利息の支払い,不利益な扱いをやめることなど,下請事 業者の利益を保護するために必要な措置をとるべきことを勧告するとか,. 「主務大臣は,企. 業の合理化の促進のため必要あると認めるときは,事業者に対し原単位の改善に閲し必要 な指導又は勧奨を行なうことができる」. (企業合理化促進法11)とか,. 「百貨店の活動が中. 小企業の活動に影響を与えるような場合必要と認めた時に百貨店にそのような行為をしな いことを勧告することができる」(百貨店法9)などである。その他勧告にあたって特に配 慮すべき事項を注意的に規定している場合もある。例えば騒音規制法15 ⅠⅠⅠは,勧告・ 命令を行なうにあたっては,当該建設工事の円滑な実施について特に配慮しなければなら ないと定めている。 (2)申出を前提とした行政指導. 元来,行政指導は行政主体側が一定の行政目的に誘導. 規制するために行なうものであるから,行政客体の意思・要望に関係なく行なうものであ るが,行政客体からの申出を前提として指導が定められている場合もある。例えば「需給 構造その他経済的事情の変化に即応して事業の転換を行なおうとする申出あったとき,そ の転換が中小企業の近代化の促進に資するものであると認めるとき,転換を円滑に行なう ことができるようにするため必要な指導を行なう」 (中小企業近代化促進法10 I)0 (3)他の機関の意見をきくことが要求されている場合. 一般的には審議会の意見聴取を 規定していることが多い。例えば中小企業近代化促進法7ⅠⅠⅠ,中央卸売市場法7の3, 政経工業設備等臨時措置法17,職業訓練法21,中部圏開発整備法19,近畿圏整備法18.
(8) 8. 荒. 秀. 等であるが,特殊な場合として大臣に協議しなければならぬ場合もある。例 整特別措置法18. 小売商業調. ⅠⅠⅠ。. (4)勧告の前行行為が必要とされている場合. 勧告を行なう前提行為として警告するこ. とが要求されている場合がある。すなわち水道法36. ⅠⅠほ厚生大臣が水道技術管理者変更 の勧告をなしうることを定めているが,これは当該管理者が職務を怠り,警告を発したに も拘らずなお継続して職務を怠った場合になしうることとなっているo (5)公表すべきことが定められている場合. これほ勧告内容を当事者に対してのみなら ず利害関係者ならびに一般国民にその旨を知らしめ注意を喚起すると共に世論に訴え,行 政客体を勧告内容に従わしめんとするものであるが,若干表現上のニュアンスほある。石 炭鉱業合理化臨時措置法60,61,農産物価格安定法8の2 (公表することができる),百貸 店法9. (公表しなければならない),下請代金支払遅延防止法7. (公表するものとする)等 がその例である.一般にほ勧告がなされたことの公表であるが,最後の例は「勧告に従わ なかった時ほ,その旨を公表する」こととなっている。また,公表を告示により行なうこ とができるとしている例もある(割賦販売法10ⅠⅠ)。 (6)行政楕導の形式が法定されている場合. 一般的に形式が法定されていることは極め て稀であるが,独禁法48の勧告については,事実及び法令の適用,違反行為を排除する ための具体的措置を記載し,委員長ならびに議決参加の委員の署名押印がある勧告書謄本 によることとされ,さらに,勧告を応諾するか否かを通知すべき期間,応諾したときほ委 員会ほ勧告と同趣旨の審決をする旨を記載した通知書を添付することとなっている(公正 取引委員会の審査及び審判に関する規則20)0 三. 1. 行政指導と法治主義. 行政指導と法律の留保 法律の留保については侵害留保説,全部留保説,社会留保説等があるが,侵害留保説に. よれば,行政指導自体は「人民の権利・自由を侵害し,国民に新たな義務を課する公権力 の発動たる行為でほなく,また,結果的に,国民が不利益を蒙っても,もともと相手方の 任意に基づいてなされる行為であるから,とくに法律の根拠を要しない」とされ,全部留 保説の場合ほ完全な全部留保説は別として, 「高権的活動に属する授益的行為またほ国庫的 活動に属する授益的行為について法律の根拠を要するとする説によるとしても,行政指導 ほ,それ自体,授益的行為でも国庫的活動でもないから,やほり法律の根拠を要しないと いうことになりそうである」1)0. 一つの行政機関(例えば通産行政の)に権限授与がなされていることほ,個々の通産関 係の明文の法規で与えられていなくても,既存の法律に積極的に抵触しない範囲において 広い意味での行政の自由が,広い意味での法により認められていると考えないと現実の行 政の進展に応じきれないといえるo. しかし,これに対して,非常緊急事態として生じたも. のであればとも角,経済や客観的状勢で予測不可能な突然変異がそれほど起るとほ思えな 1)成田. 行政指導149京.
(9) 行政指導と行政上の計画. いから,行政指導につき一般的に法律の根拠を不要とすることに疑問をもつ考え方も多 い2)。さらに,一般的に行政客体の主体的意思を前提として行なわれる行政指導や,知的 サービスの提供としての行政指導(情報の提供・技術的援助・相談等)ほ法律の根拠不要 と解しながら,権力的行為形式の代替物としての性格をもつもの,すなわち,その通用力 が内容の説得性によるのでなく一種のサンクションにより裏打ちされている場合など,私 人の主体的意思決定の可能性を著しく削減せしめる方法により介入するときには,具体的 な法律の根拠が必要ではないかとの疑問8)早,さらに,しばしば行なわれるような行政指 導などについては法律の根拠を要すると解する説などがある4). 右の学説の対立点とほ別に,実定法により行政指導が根拠づけられていることをどう理 解するかについて「理論上,法律に根拠がなければ行なえないからとくに根拠規定を設け たというのではなくて,法律で規定すれば権威が重くなるとか,あるいほ正規の強権的な 行政処分にすると国会を通りにくいから,せいぜい勧告というところでとどめようという ような立法政策的な考慮で規定が設けられている」とする説5)があるが,可能な限り実定 法上の根拠づけを行なうことが法律による行政の原理から要請されると考えるのが妥当で あろう。 行政指導の法的限界. 2. 行政機関の行なう行為は法律に違反しえないこというまでもないが(法律の優先の原 則),行政指導も行政機関によって行なわれる以上,この原則が適用される。前述¢実定法 の分析の項で示したように,実定法上規定されている行政指導の中には種々の要件(塞 準・形式5)・手続等)が定められているものがあるが,かかる場合ほ,この規定に従わなけ れば違法・不当の問題が生じえようo. また,実定法規が存しない場合でも,法令全体の趣. 旨・目的を害するような行政指導ほ許されないと解しえよう。この法令違反に閲し,条理 法が含まれるか否かが問題となる。行政指導も公行政の一作用として行なわれる以上,比 例原則,平等原則,信義則等の適用をうけると解するのが正当であろう6). 四. 行政指導に対する救済. 1. 行政争詮. (a)行政上の不服申立. 行政指導が行政上の不服申立の対称となるか否か紘,当該行政. 指導が実定法にもとづくものであれぼその根拠法に不服申立が認められている場合ほ別と して,一般に行政不服審査法上の「行政庁の違法叉ほ不当な処分その他公権力の行使に当 たる行為」. (同法一条一項)か否かで決定される。しかし行政指導自体は法的効果を生ぜし. 2)ジュリスト座談会における雄川・金沢・矢沢,山内諸氏の発言より 前掲24貢 3)塩野 矢沢発言 44貢 4)ジュリスト前掲 5)実際をこほ種々の形式が行なわれ,文書・通達の如き形や,単に口頭でしたり,場合によってほ 内面指導として業者の会合に出かけて口頭で話すこともあるという。ジュリスト前掲42京成 田氏発言 6)成田前掲154真. 9.
(10) 10. 秀. めない任意的な事実行為であるから「行政庁の処分」には原則として含めることはできな い1)。しかし「公権力の行使」に含まれないか否かは,これを消極的な不作為(二条二項) のみを含ませる趣旨と狭く解せば2)否定的な結論になるが,それにとらわれずに広く解せ ば積極的に解しうる余地もでてくるo特に司法権による行政訴訟でない行政棟閑による行 政上の不服申立の場合にほ,単に違法性の問題だけでなく不当性をも判断しうること,な らびに処分庁あるいは上級監督庁という行政棟関白身の手によるものであるから,一概に 審理しえないすることにほ疑念が残ろう。特に行政上の不服申立制度の太質が権利救済だ けでなく,不服申立人の申立を契機に行政機関が自己の行為を反省することにもあるとす れば,この場合に審理を否定しなくてもよいようにも思われる.もっとも,遵法・不当な 行政指導に従わないことを理由になんらかの行政処分がなされれば,その処分を争う段階 で当該行政指導の違法・不当を争いうるが,行政指導の違法性が行政処分に承継されると は思えないので余り意味がないといえよう。 (b)行政訴訟. 行政指導が行政訴訟で争われる場合としては取消訴訟ならびに無効等確. 認訴訟であろう。これらの訴訟は行政処分ならびにその他の公権力の行使を審査の対象と するが,行政処分とは,行政庁が,法に基づき優越的な意思の発動または公権力の行使と して,人民に対し,具体的事実に閲し,法的規制をなす行為,とか,国民の権利義務の 形成・確立をなさしめる効力をもつ権力的行為といわれている。したがって行政指導がこ れに該当するかどうかであるが,行政指導が直接に法律効果と結びついている場合のはか は該当しないと解されている。ただ直接に法律効果を生じるか否かについてほ,例えば行 政指導に従わないことに対して罰則規定があるとき(旧石油資源探鉱促進臨時措置法21) あるいほ,役員解任の勧告がなされた時「総会の議決で解任しなければならない」と規定さ れているような場合ほ処分と解しえようo. また勧告の応諾の有無の通知義務や(独禁法48. ⅠⅠ),勧告によりとられた措置についての報告義務が課せられる場合(首都圏整備法29ⅠⅠ, 30等)も問題になろうがこの義務違反に対して罰則も定められていないので処分とほ解し えない。. 「公権力の行使に当たる行為」にほ事実行為も含まれるが,行政指導ほ同じ事実行為であ っても法的効果をもたないものであるから,抗告訴訟の対象となる事実行為にほ事の性質 上入りにくいといえようo. ただここで問題となるのほ行政指導のもつ現実的機能である。行政指導は,前述のごと く原則として直接法的効果をもたないが,これに従わない時に不利益な取扱いをすること, あるいは従った時に利益供与(補助金の交付・融資の便宜供与)を示唆するとなると,形 式上は権力ー強制力を要素とする-によらずとも,心理的に強制されることとなるo そこで行政指導を潜在的公権力行為とみるべきでないかとの疑問が生ずる。このことほ行 1)雄川. 行政争訟乾68貢「斡旋・勧告・事実上の通知その他相手方その他の関係者の法律上の 地位に法棒的変動をもたらさない行為は,これを訴訟によって排除する意味がないから,抗告 訴訟の対象とほならない。」 2)成田「行政指導」現代の行政161京. ,.
(11) ll. 行政指導と行政上の計画. 政指導が極めて有効でありながら正式処分でないということから来る行政庁側の安易さか らくる濫用,ならびにこれを受ける側の行政庁-お上に一対す服従意識に思いをいた する肯定し易すくなるのであろうo これに対し「このような見解の趣旨は一応理解できる が,受けるべき不利益が明確に予知される場合はともかくとして,行政庁の権利利益の侵害 を未然に防止する予防的救済手段が制度的に確立されていないわが国の現行の行政訴訟制 度の下でほ,将来なんらのかたちで強制処分または不利益を受けるかもしれないという単 なる可能性の段階でほ未だ救済を受けるに熱した状態にあるとはいえない」とする反論が あり一般的見解といえよう。この見解は更に続いてこのように解してち,行政指導に従わ ないことを理由として,後に許可や免許の取消し,下命,申請の却下,補助金の不交付決定な どのが処分なされた場合には,その段階で当該処分をとらえ,遡って行政指導の違法性を 争うことは可能であるから,救済の途が全く閉ざされているわけではない」畠)と述べられる が,とも角不利益処分がなされなければ争えない点に問題は残されているといえようo 次に判例をみると最高裁は保険医に対する知事の戒告処分が行政事件訴訟特例法にいう 処分に当るか否かにつき「一指定取消ほ,『故意に不正叉ほ不当な診療,報酬請求を行っ たもの』のはか,戒告の事由たる『重大なる過失により不正又は不等な診療,報酬請求』 を『しばしば行ったもの』に対して行われることとなっているので,戒告理由がたび重な ることによって一層不利益な指定取消を受ける虞れのあることほ首肯し得るとしても,戒 告を受けたこと自体が指定取消の事由とはなっていない。いいかえれば,戒告を受けた者 は将来指定を取り消される虞れはあるとしても,それは,戒告の事由がたび重なることに ょるものであって,戒告という行政上の措置を受けたこととは直接の関係はない。従って, 本件戒告ほ,所詮,被上告人に対し何等かの義務を課するとか権利行使を妨げる等法的効 果を生ずるものでほないといわなければならない。もっとも,本件戒告は,前叙のごとく 行政上の指導監督措置であって,制裁を目的とするものでないとほいえ,それによって被 上告人の名誉,信用等を害することは,否定し得ないところである。しかし,行政事件訴 訟特例法上の行政処分といい得るた捌こほ,当該処分がそれ自体において直接の法的効果 を生ずるものでなければならないことは,当裁判所の判例とするところである。それ故, 本件戒告ほ,仮りに遵法でありこれに対する損害賠俵の請求が可能であるとしても,行政事 件訴訟特例法によってその取消を求めることは許されないもの,といわなければならない」 と述べているが(最判昭和38・6・4民集17巻5号670頁以下),塩野氏は,戒告が行政指 導に属するか否かに疑問を残しながら右の最高裁の理論を次のごとく整理しているo「一 第一に,行政指導の存在そのもの,あるいほ行政指導に従わなかったことが,法律上次の 処分の要件となっているときは,その取消を求めることができる。第二に,行政指導が爾 後の行政主体の行為と事実上の関係を有するにすぎない場合には,取消訴訟ほ認められな い。第三に,行政指導により損害が発生した場合には,損害の補填ほ別個の訴訟によるべ きであって,取消訴訟を認めるべきでない」4)と。5) 4)塩野前掲29-SO貢 3)成田前掲162-163貢 成田氏は行政救済にのってこない時の救済方法として,被保全利益 5)ジュリスト前掲42京で の問題が残るとしながら,民事訴訟の位処分はできないかと述べているo.
(12) 12. 荒. 秀. なお,労働基準法85条(昭和31年6月改正前の)による災害補償に関する行政官庁 の審査またほ仲裁の結果につき, 「一審査員の審査決定は何れも災害補償に関する紛争を 出来うる限り簡易迅速に解決せしめる為めに認めらたた一種の勧告的性質を有するもの で,国民の権利義務に法律上の効果を及ぼすものでなく,原告ほこれによって法的拘束を 受くるものでなく,従ってこれが取消を求むる為,訴訟を提起する必要もなく,叉その 利益も無い」. (高松地判昭和25・7・24労民集1巻4号681貢,同旨,最高判昭和31・10・30民. 集10巻10号1324頁)とする判決がある。 2. 損書胎償. 損害賠償の原因となる不法行為は法的行為たると事実行為たるとを問わな. いが,国家賠償法上の「公権力の行使」についてほ,国家統治権に基づく優越的な意思の 発動としての作用と解する説と,本来の意味での公権力作用の外に,私経済作用を除く非 権力的行政作用を含むものと解する説が対立する。国家賠償制度は,行政行為そのものを 争いその公定力を失なわしめることを目的とするのでなく,いわば損害の実質を填補する ことを目的とするものであるから,取消訴訟における「公権力の行使」よりも広く解する のが合目的的であろう(取消訴訟で請求棄却されても損害賠償が認められる場合があるこ とを考えよ).この考えに立てば行政指導による損害賠償は公行政の性格をもつところから 国家賠償によることになるが,行為者の故意・過失などの不法行為の要件の認定ほ困難で あろうoただ行政指導ほ強制力による一ものでなく相手方の任意による同意によって行なわ れるものであるところから,その損害の発生には行政指導に従った者自身の責任も存在す るところに問題がある。相手方が「行政指導によって生ずるであろう損害を認識しながら 全く自由な判断でこれに従ったような場合ほ『同意ほ不法行為の成立を阻却する』の法理 により,損害賠償ほ認められないであろう」が,損害の認識のない場合は勿論のこと,撹 害の認識のある場合での『同意』も,対等な当事者における私法上の同意と全く同一視し うるかどうかほ考慮せねばならぬ要因であろう。 判例としては次のごときがある.税務署長が農業協同組合に対して組合員の所得税を一 括して納付することを勧奨したので,その組合は組合員の所得税をとりまとめた。しかし 組合はその金を他に流用したため納税者が損害を蒙った事件につき,第一審は,税務署長 が組合の経理状態を十分に調査せずにかかる勧奨をした点に過失ありとして勧奨と損害の 間に因果関係を認めたが,第二審はこれを否定した。否定の-論拠としてほ勧奨に従うか 否かについて納税者の自由な選択にまかされていることが述べられている(盛岡地判 30・9・13下級民集6巻9号1993頁,仙台高判. 第二節. 昭和. 昭和31・11・22下級民集7巻11号3337頁)0. 行政上の計両. 行政上の計画の意義・問題点・種類. 一. 1. 意義・問題点. 行政上の計画(プランニソグ)ほ,行政上の目的達成のための行政機. 関軒こよる目標設定行為といえよう.政策達成のためには各種基本法の制定やその他の法令 で国の施策などが明記される場合が多くなったことから解るように,法令自身がその根本 方針を設ける場合もある。また,法令は単に行政機関にその設定権を根拠づけ,あるいは.
(13) 行政指導と行政上の計画. 13. 根本方針設定の大綱のみを法今が定め,その具体化を行政機関にゆだねる場合もある。時 にほ地方公共団体の長の作成による第○次綜合開発計画などのように,何らかの',あるいは 直接的な法令の根拠なくして作成される場合もある(法令の根拠に基づく計画を「法制上 の計画」,根拠のない計画を「事実上の計画」と呼んでいる).このように法令に根拠をも ち,あるいはもたずに,行政棟閑の手によって行政目標を設定することを行政上の計画と いう。. この計画策定の必要性は,諸利益の綜合調整の下に行政を行なうという消極的見地のほ かに,積極的行政目的の整序ある遂行を目標とし,無秩序な場当り的行政による,法律生 活の安定にあることはいうまでもない。かかる要請は行政ある限り当然に要求されるもの で,古くから国防・防災・都市計画など存し,戦前戦中も,具体的には北海道柘植計画, 東北振興計画,生産力拡充計画,物資動員計画また旧耕地整理法(明治42年法律30号) に基づく耕地整理計画・換地計画などのごとく,計画概念は存在していたといえる。しか しこれらの計画ほ綜合行政の観点からのものではなく個別的な公共事業の実施計画にとど まることが多く,また政策の分野に属するものであり,行政法学の対象として論じられる ことは殆どなかったといえる。その理由としてほ,単純な秩序維持のごとき消極的行政活 動の下では国家の干渉規制は最少限度に抑えることを本則としたこと,ならびに計画自体 が法律上規定されることが少なかったことをあげえよう。しかし,現代行政においては保 安・衛生等の警察的規制とは異なり,個々の私人に対する規制の枠をこえた全体的な視野 の下での規制の必要な分野があること,そしてかかる分野では,綿密な計画を前提として のみ有効な結果を期待しうること,またその計画樹立も情報革命,技術革新にともない過 去に比し長期予測がかなり可能になったこと,また各行政機関に分掌されている各行政作 用が綜合的な計画の下に行なわれないと円滑を欠き,動きがとれなくなるほど有榛的相互 関係にあること,さらに住民参加の下で計画を樹立し公表したもとでの方が国民の積極的 協力をえて行政活動がしやすいことなどの理由から,計画の重要性が次第に注目されるに 至った.そのために実定法上,計画なる語が多く用いられるに至ったが,その概念自体が 種々の類型を含み明確化されていないといえる。その中には,従来の行政行為の概念で理 解しうると思われるものと然らざるものとがあり,その区別の基準,ならびにその法的性. 質は未解明と言ってよいo. また,. 「法律による行政の原理」1'に対し,国会によらざる行政. 戦前における行政上の計画は法律の根拠にもとづかない 1)計画行政と「法律による行政」の原理 ものが多かった。その理由は行政活動に広範な裁量を与えておかねばならぬ体制的要求があった といえよう(金沢良雄「経済法における計画」北大法学論集16巻2・3合併号205-6貢).も っとも,現在でも法にもとづかぬプランメ-キングがなされているが,多くの実定法において昂 明文で計画につき根拠づけをしている.これほ計画策定を「法律による行政」の原理に立ち返ら せ,現代行政における嫡出子としての地位を与えようとする現象としてとらえることができよう .いわば計画を法の中に組み込み,法律により根拠づけることにより「法律による行政」の原理 に沿わしめると共に,行政府の責任の明確化,裁量の濫用の防止,計画作成における慎重性なら びに計画の実効性を期待しているものと思われる. 44年3月の自治法改正により地方公共団体 作成の綜合開発計画も,地方公共団体の議会の議決を経た「行政運営の基本構想」に則したもの 項,都市計画法15条3項). でなければならなくなった(自治法2条.
(14) 14. 荒. 秀. 府の樹立する計画が,実ほ行政の大綱を決定し(経済復興計画,国民所得倍増計画,財政 投融資計画等を想起せよ),法律は行政目的達成のプロセスからみると単に技術的機能し か果たさない場合があるのではないか,また然りとせば計画作定にあたっての国民参加の 形式はいかにあるべきか,また基本計画が下位段階の計画で乱されてほその意義がなくな るが,諸々の計画相互の関係と計画の斉合性の問題,とりわけ当該計画はいかなる拘束力 をもつか,さらに計画変更にもとづく損害賠償など,種々の問題が提起されている。 2. 現行実定法上の計画の種類. (a)全国計画・地方計画・地域計画. 例えば国土総合開発法における全国総合開発計. 画,都道府県総合開発計画,二つ以上の都府県の協議による地方総合開発計軌. ならびに. 内閣総理大臣が指定する地域での特定地域総合開発計画等のごとく,計画の対象となる地 域の相違による分煩(その他,森林法4,. 5での全国森林計画と地域森林計画,災害対策. 基本法2での基本計画と地域計画など).これらは特に斉合・調整が必要となる. (b)長期・中期・短期・年度計画. 計画期間の長短による区別.例えば土地改良長期計. 画(土地改良法4の2Ⅰ)辛,長期見通しに即して15年を一期とする全国森林計画(森林 法4),. 5年毎の住宅建設五箇年計画(住宅建設計画法4,. 5,. 6),毎年度当該年度以降の. 5年間の石油供給計画(石油業法3),関係行政模関の長が実施のために作る年度計画(国 総法12),労働大臣が毎年作成する港湾調整計画(港湾労働法3)等o空) (c)基本計画・実施計画. 計画の具体化の程度の差による区別o計画の中で最も根幹と. なるのが基本計画(目標計画・準備計画とも呼ばれる)で首都圏整備法21,住宅地区政良 法6,水資港開発基本法4,災害対策基本法2⑧,. 34,. 35,石炭鉱業合理化臨時措置法3, 林業基本法10,中小企業近代化促進法3,雇用対策法4Ⅰ,などに規定されているo実施 計画は事業計画,処分計画などで具体例としては土地改良法の実施計画(97,. 99,100,. 100. 100の2),中小企業近代化促進法4,石炭鉱業合理化臨時措置法4その他多く規定され ている。. なお,基本計画の語を用いずに国文は地公団の施策という語で同じ趣旨を表現している 場合もあり(中小企業基本法3, 4,観光基本法2, 3),また雇用対策法のように雇用対策 基本計画には国の施策の基本となるべき事項が定められねばならぬとされている場合もあ り(同法3,. 4),また,前述の都市計画法のごとき規定もある.. (d)法的に重要なものとして,法的拘束力の有無により拘束的計画・非拘束的計画の分類 がある。これほ国民および行政機関等に対して当該計画が何らかの法的拘束を与えるか否 なお,計画と法の関係として,計画策定にあたり法令がその計画内容に何を盛りこむべきかを ⅠⅠ,5 ⅠⅤ, 6 ⅠⅠ, 明確化せず,計画策走者の裁量にまかせている場合もあるが(住宅建設計画法4 雇用対策法4ⅠⅠ,港湾労働法3ⅠⅠ,森林法4ⅠⅠ, 5ⅠⅠ,石炭鉱業合理化臨時措置法3ⅠⅠ,石油業 法3ⅠⅠ等),何らかの具体的目標を定めるべきことを要求しているもの,また,計画策定にあた って法令が何らかの基準を示している場合もある(都市計画法13,住宅建設計画法4ⅠⅠⅠ,雇用 対策法4 ⅠⅠⅠ,ⅠⅤ,職業訓練法4ⅠⅠなど)0 2)一般的に10-15年を目途とするものを長期計画, 3-7年を目途とするものを中期計画, 1-2年 のものを短期計画とよぶ。.
(15) 15. 行政指導と行政上の計画. かによる区別で後述の三「計画の法的効果」の項で若干触れる.なお,行政拒織の外部にい る利害関係人に対し拘束力をもつ計画を「対外的拘束力を伴う計画」と呼ぶ場合もある.8) ニ. 計画決定手続. 1. 計画作成. 計画決定の面で特に重要なことは利害関係者や関係行政棟閑の意思をいかに反映させる. のかである.計画作成はいわばヴィジョン作りなので,一応行政庁の自申裁量に属すると 考えられ,その計画が具体化される段階で国民の意思反映をはかれば法治主義の要請をみ たすのではないか,また現実的にヴィジョン作り-の国民参加といっても,その作成ほ素 人の一般国民には不可能で現実としては専門知識を有する老に依らざるをえず,さらに, 個々の利害関係人の意見をことごとく尊重していると,反対のための反対により計画作成 が必要以上に困難になること等は我々が屡々経験・見聞するところである。そのためか, 現行実定法の多くは利害関係者からの意見聴取ほ殆ど審議会や議会の議決などの形で十分 に行なわれているとの擬制をとっているものと思われるが,この方法が国民の意思を公正 に反映しているかどうかが問題とされている。 2. 現行法の計画決定手続 現行法の計画決定手続は概略左のごとくに分類することができる。. (a)関係行政機関の長が関与する場合(1)関係行政棟閑の長と協議を要するもの(水資 ⅠⅠⅠ,道路整備緊急措置法2,国土総合開発法10ⅠⅠ, 源開発促進法4Ⅰ,特定多目的ダム法4 住宅建設計画法5. V,雇用対策法4. 岸法23は関係海岸管理者との協議)0. VI,災害対策基本法40. ⅠⅠⅠほ内閣総理大臣との協議,港. (2)関係行政機関の長の意見の聴取を要するもの(都. 市計画法18Ⅰ,水資源開発促進法4Ⅰや特定多目的ダム法4ⅠⅠⅠは知事の意見,下水道法 4ⅠⅠは厚生大臣の意見,土地改良法4の2ⅠⅤは関係行政擁関の長と知事の意見,国総法 7 Ⅰ Ⅰは関係行政機関の長や関係都道府県の意見,住宅建設計画法4, ・首都圏整備法22 5, 6でほ市町村長の意見,港湾労働法3 ⅠⅠⅠは必要あるときにのみ知事その他関係行政機 関の意見を要求している)0. (3)関係行政摸関の同意を要するもの(国総法10ⅠⅠは関係. 都道府県の同意,都計法19Ⅰは市町村の都市計画につき知事の承認,なお18ⅠⅠⅠでほ認 可制がとられている)。 (b)審議会の意見聴帝または調査審議を必要とするもの(河川法16ⅠⅤ,水資源開発促 進法4Ⅰ,高速自動車国道法5,土地改良法4の2,古都保存法5,自然公園法12,首 3)この外,計画の対象の広狭により,綜合的全般的な事項を対象とするものを「綜合的計画」と(国 土綜合開発計画・新産都市建設基本計画など),特定の事務・事業を対象とする「特定計画」,あ るいほ「部門別計画」 (森林計画や道路整備計画など)の分類,さらに目的による分類として経済 計画(国民所得計画等),産業計画(機振械興計画等),社会計頑(中小企業指導計画等) ,国土開 発計画(国土綜合開発計画等),地域開発計画(新産業都市建設基本計画等),防災計画(防災基 本計画・公害防止計画等),資源保護計画(保護水面管理計画等),資源開発計画(水資源開発基 本計画等) ,財政計画(財政再建計画等),事業計画(都市計画等),その他公務員の能率増進計画 44年3月経済企画協 等等があ搾られている.土地政策研究委員会報告(成田委員・原田委員) 会79貢以下.
(16) 16. 荒. 秀. 都圏整備法22Ⅰ,住宅建設計画法5Ⅰ,雇用対策法4,港湾労働法3,中小企業近代化促 進法3・4o国縫法7Ⅰほ国総審議会の調査審議を経ることを定め,. 7の2および10ほ. 内閣絶理大臣が国総審議会に諮問することとなっているoなお観光基本法5ほ国の施策を 政府は毎年観光政策審議会の意見をきき,文書で作成し国会-提出しなければならぬとさ れている)0. (c)議会の議決を必要とする場合(特定多目的ダム法4ⅠⅠⅠの知事の意見ほ議会の議決 を経ねばならず,国縫法8の地方総合計画の場合は当該都道府県の議会の議決を経ねばな らない)0. (a)閣議の決定を必要とする場合(水資源開発促進法4Ⅰ,道路整備緊急措置法2但書, 土地改良法4のⅠⅠ,国総法10の2Ⅰ・ⅠⅠ,住宅建設計画法5Ⅰ,雇用対策法4)0 (e)関係行政機関以外の者の意見聴砺など,利害関係者の参加を認めている場合(都市 計画法16は必要と認める時には公聴会等の措置を講ずるものとし,共同講の整備等に関 する特別措置法5Ⅰは関係公益事業者の意見を求め,特定多目的ダム法4ⅠⅠⅠでほダム使 用権の設定象走者の意見をきかねばならぬこととなっている。) (f)計画決定後,利害関係者の意見申し出や異議申出を認めている場合(都計法17. ⅠⅠ. は都市計画実の縦覧後意見書の据出を認め,また,共同講の整備等に関する特別措置法5 は整備計画に対する占用予定者から意見書を提出させ,これにより変更することがでるき とし(同旨森林法7),首都圏整備法22ⅠⅤは公表された事項に利害関係を有する者の意 見を申し出ることができるとしている。) (ど)公表義務. 計画作成の段階で利害関係者への参加を認めていない代りに,これを公. 表することにより計画を周知せしめ法律生活の安定をほかっている場合が多い。しかし, 公表をいつ行なうか,どの程度の公表をするかについては若干の相違がある.一般的なも のの例としては災害対策基本法39ⅠⅠ,. 40ⅠⅤ,. 42-44各ⅠⅤ,特定多目的ダム法4ⅠⅤ,水. 資源開発促進法4ⅠⅤ,公共用水域の水質の保全に醜する法律4II,土地改良法4の2V, 国総法10の2ⅠⅠⅠ,首都圏整備法22ⅠⅠⅠ等があるが,自然公園法12ⅠⅤは公園計画決定 のとき概要公示,雇用対策法4VIIほ閣議決定のあった時遅滞なく概要を公表,港湾労働 法3ⅠⅤほ計画を定めた時遅滞なく告示することを定めている.なお都計法の場合は計画 案の縦覧ならびにそれに対する意見書を認めると共に(17). ,計画決定後は告示ならびに公 衆の縦覧に供せしめ,かつ都市計画ほ告示があった日から効力を生ずるとしている(20)。 三. 計画の法的効果. 1国民に対する効果. 一般に計画はマスタープランはもちろんのこと,その他のもの も,内容・相手方ともに具体性がないため行政処分としての効果はないといわねばならな. い.しかし実定法上,若干の具体的効力が規定されている場合もある.特定多目的ダム法 16 Ⅰは建設大臣が基本計画を作成した時,基本計画にダム使用権の設定予定者として定め られた老以外の老の設定の申請を却下しうることとしている。次にある計画が樹立され公 告されるとその結果,建築行為等が禁止・制限される場合がある。住宅地区政良法9,土 地区画整理法76の事業計画がそれである。かかる計画ほ法規を補充する立法行為と解す.
(17) 17. 行政指導と行政上の計画 る説が一般的のようであり,判例もそのように判断している(最高昭和41・2・23)(琵1)が,. 計画の公告により権利状態の悪化が具体化することは否定しえないのであって,抗告訴訟 の対象となる行政処分と解する説もある(成田他「現代行政法」168-9頁,ジュリスト別冊,土. 地収用判例百選96頁以下ならびに末尾文献参照)oまた,計画が具体的な行政処分のごとき法 的効果でなく,いわゆる行政指導の基準としての機能を果たす場合(職業安定法27Ⅰ,中 63は開発 小企業近代化促進法4ⅠⅠ, 7)もあり,また,石炭鉱業合理化臨時措置法61, 計画にもとづいて事事業計画を届出ることを採掘権老に義務づけているo 2 ②が石油供給計画を石油精製業許 例えば石油業法6 関係行政機関に対する拘束力 可の一基準としているように計画カミ行政庁の行なう行政行為の基準となっている場合もあ る。 3. いわゆる上位計画と下位計画等の計画相互. 他の計画に対し拘束性を認めている場合. 間に斉合・調整が要求されている場合が多いo災害対策基本法39,. 40,. 41,河川法11・. 16ⅠⅠ,高速自動車国道法5ⅠⅠ,公害対策基本法18,住宅建設計画法6V,職業訓練法4 ⅠⅠ,公営住宅法6,中小企業基本法4,森林法4などo国総法7ⅠⅠも前述の四計画を定 め,その斉合調整をはかっていたが,これらの計画と無関係に,多くの開発立法が無秩序 に乱立された(北海道・東北・北陸・中国・四国・九州などの各地方の開発促進法'大都 市を目的とした首都圏・近畿圏・中部圏の整備法,その他,新産業都市建設法,工業整備 特別地域整備促進法,離島振興法,山村振興法,産炭地域振興臨時措置法等). 。上の現象の. 理由としては開発目標の動揺,政党政治の介入,官庁のセクショナリズム等があげられて いるが,かかる状態では計画の実効性が保たれず,また行政の統一性が乱され,公共投資 や事業が無駄に行なわれるため整理統合が強く望まれている.新都市計画法では都市計画 が全国綜合開発計画に適合し,一体性,総合性を保つことを定め(同法13),市町村の都 市計画ほ都道府県のそれに適合することを要求すると共に,抵触した場合には都道府県の それを優先するものとしている(同法15ⅠⅠⅠ)0 4 財源措置やその他の手段・措置を講ずる義務づけをしている場合. ただこの義務づけ. は法的義務というよりは努力目標である。道路整備緊急措置法3,水資源開発促進法13, 河川法13,国縫法11の3,公営住宅法7,中小企業近代化促進法6,石炭鉱業合理化臨 時措置法6,観光基本法4,中小企業基本法5,林業基本法11等。 5. その他,水資源開発促進法のように損失補償に対する配慮規定がおかれている場令も. ある(同法14)o 注 区画整理法七六条の如き建築行為等の制限は, 「当該事業計画の円滑な遂行に対する障害を 除去するための必要に基づき,法律が特に付与した公告に伴う附随的な秋和ことどまるものであ. 1)判旨. って,事業計画の決定ないし公告そのものの効果として発生する権利制限とはいえない.それ故・ 事業計画ほ,それが公告された段階においても,直亀特定個人に向けられた具体的な処分では なく,また,宅地・建物の所有者又は賃借人等の有する権利に対1,,具体的な変動を与える行政 処分ではない」とし,続いて事業計画は,一連の土地区画整理事業手続の根幹をなすものであり ,その後の手続の進展に伴?て,仮換地の指定処分,建物の移転・除却命令等の具体的処分が行.
(18) 18. 香 なわれ,これらの処分によって具体的な権利侵害を生ずることはありうる。しかし,事業計画そ のものとしては,さきに説示したように,特定個人に向けられた具体的な処分でほなく,いわば 当該土地区画整理事業の青写真たるにすぎない一般的・抽象的な単なる計酎ことどまるものであ って,土地区画整理事業の進展に伴い,やがては利害関係者の権利に直接変動を与える具体的な 処分が行なわれることがあるとか,また,計画の決定ないJ公告がなされたままで;相当の期間 放置されることがあるとしても,右事業計画の決定ないし公告の段階で,その取消又は無効確認 を求める訴えの提起を許さなければ,利害関係者の権利保護に欠けるところがあるとほいい難く, そのような訴えほ,抗告訴訟を中心とするわが国の行政訴訟制度のもとにおいては,争訟の成熟 性ないし具体的事件性を欠くものといわなければならない」oこと,さらに「そもそも,土地区画 整理事業のように,一連の手続を経て行なわれる行政作用について,どの段階で,これに対する 訴えの提起を認めるべきかほ,立法政策の問題ともいいうるのであって,一連の手続のあらゆる 段階で訴えの提起を認めなければ,裁判を受ける権利を奪うことになるものとほいえない。右に 説示したように,事業計画の決定ないし公告の段階で訴えの提起が許されないからといって,土 地区画整理事業によって生じた権利侵害に対する救済手段が一切閉ざされてしまうわけではない. すなわち,土地区画整理事業の施行に対する障害を排除するため,当該行政庁が,当該土地の所 有者等に対し,原状回復を命じ又ほ当該建築物等の移転若しくほ除却を命じた場合において, それらの違法を主張する老は,その取消(又は無効確認)を訴求することができ,また,当該行 政庁が換地計画の実施の一環として,仮換地の指定又は換地処分を行なった場合において,その 違法を主衷する者ほ,これらの具体的処分の取消(叉ほ無効確認)を訴求することができる。こ れらの救済手段によって,具体的な権利侵害に対する救済の目的は,十分に達成することができ るのである」.したがって, 「土地区画整理事業計画の決定は,それが公告された後においても, 無効確認訴訟の対象とはなL得ないものであって,これと同趣旨に出た原審の所論判断は,相当 であり,論旨は,排斥を免れない」。としている。これに対L五人の裁判官の反対意見が附され ている。. なお本件については学説にも賛否両論がある。賛成のものとしてほS・H・E時の法令571号, 雄川一郎・法学協会雑誌84号1号,柳寸章三郎・青山法学論集8巻4号があり,反対のものと しては,南博方,判例時報447,岡久男・甲南法学7巻4号,荒秀・自治研修89号があり,解 説として渡部吉隆・法曹時報18巻4号,上野国夫・法律のひろば19巻6号,藤田宙靖・ジュ リスト別冊土地収用判例百通96貢がある。 本項にぉける参考文献. 金沢良雄「経済法における計画」北大法学論集16巻2・3合併号,金沢良雄 経済法(有斐閣 法 律学全集),成田他 現代行政法166貢以下,久世公尭「マスター・プラ/の法的意義・その法的地 位と法制化の可能性」ジュ1)スト414号 都市再開発と住宅所収,成田療明「計画行政と地方自治・ 特に地域計画行政との関連において」自治論文集所収,成田瞭明「国上計画と地方自治 若干の法律 問題」ジュリスト430号16頁以下,宮沢弘. 新国土計画論.
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